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Price of Justice

#クロムキャバリア #ザ・スター #ファーストヒーロー #ミド・バール

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●|清浄なる蒼き死の荒野《ミド・バール》に来訪せし者
 今から百年前……地下深くに埋蔵されているレアメタル『ラズカルクム』鉱床によって『ミド・バール』の地は鉱山業で栄え、次世代型半導体やそれらを使用するコンピュータ機器の製造によって得た利益で多数のプラントが建設された。
 それによってこの地はクロムキャバリア有数の工業地帯へと成長して目まぐるしい発展を遂げたが、暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』による砲撃によって壊滅。この影響で幾多の化学薬品や粉末状に加工された精製過程のラズカルクムが上空へと舞い上げられ、薬品と重金属が混ざりあったことにより発生した人体に有害な酸の雨が不利続け、この地は深刻なまでの土壌汚染と大気汚染に苛まれて動物はおろか人さえも住めぬ地となった。
 今もなお、様々な科学物資や重金属とが混ざりあった蒼き不純結晶がミド・バール一帯を覆い尽くしており、防護マスク無しに粒子レベルの粉塵を吸い込めばたちまちに肺を侵して死に至らしめる。しかし、大災厄を生き延びた人々は奇跡的に無傷であった工業地帯の労働者へ食料を供給していたプラントに身を寄せ合い、ミドの町が生まれた。
 元々は主に工業地帯の労働者へ食料と防護衣などを供給していたプラントであるため、作り出されるのはこの過酷な環境を生き延びるための物ばかりでキャバリアは製造されていない。仮にキャバリアを造るとなれば、かつて軍需産業も参入してキャバリアを製造していた廃プラント一帯に埋没する残骸を回収し、修理を行って使い物にするしかない。
 尤も、今やロストテクノロジーと言っても過言ではない発掘された過去の遺物らは分解された後に他国の侵攻をし得れない死の大地と外界を結ぶ列車で隣接する海運商業が主に他国との交易が盛んな『トリアイナ』まで運ばれ、水や食料、かつて町を襲撃した無法者や重度に汚染された区域が多いが為に未だに特定されていないオブリビオンマシン・プラントで製造されて清浄なる蒼き死の荒野を彷徨う無人型オブリビオンマシンへの備えとしてキャバリアと交換されている。
 先日のオブリビオンマシン騒動では多くの人命が奪われたが、人々は悲しみを乗り越えて何とか対抗の手立てを模索し続けている。
 しかし、この地に新たな災が訪れようとしていたのであった。

「ねぇ、あれは何?」
 呼吸器関係を防護するために交換式マスクを掛けているミドの町の住人のひとりが、雲ひとつもない空を指さした。
 そこに浮かぶのはひとつの黒い点。
 徐々にだが、こちらへと降下してくるのが判ると人々らはどよめき出した。

「鳥か?」
「飛行船じゃないか?」
「馬鹿言え。飛行船のエンジンにラズカリクムの粉塵が入り込んだら、たちまちオジャンだ」
 やいのやいのと野次馬らが騒ぎ立てる中、目を細めながら眺めていたひとりの住民が叫んだ。

「いや、人だ! 空から人間が降りてきている!!」
 ミドの町の住民らは我が目を疑うが、この地は二度も猟兵の手により救われている。
 きっと彼も猟兵の仲間に違いない。
 誰もが希望を胸に空からやってきた稀人を歓迎すべく固唾を呑みながら見守り、マントを吹き抜ける熱風で棚引かせながら男は降り立つ。

『諸君! 我が名はファーストヒーローのひとり、ザ・スター! ヒーローズアースより来訪せし世界最初に結成されしスーパーヒーローチームの一員である!!』
 人々はやはり猟兵であったと歓声が湧き立ち、拍手を送って『ザ・スター』を歓迎しようとしたその時……彼の口からとんでもない言葉が放たれる。

『この地には無数のプラントがあった過去があり、殲禍炎剣の被害を免れた物が密かに稼働している! そのひとつが邪神の複製体≪レディ≫の製造工場である可能性があり、私はこの地をクロムキャバリアより消滅させることを決めた! だが、私も非情ではない。諸君らに猶予を与えよう……10日以内にこの地より去るのだ!!』
 それを聞いたミドの町の住民らは、臆することなく『ザ・スター』へと抗議する。
 確かにここは住むには不便なところだ。
 だけど、自分たちはここで生まれて育ってきた。
 ここが自分たちの故郷なのだ、と。

『諸君らの気持ちは深く分かる。分かるからこそ、宣告も無しの殲滅を我が心を受けて止めたのだ。去らなければ……諸君らはこの殲禍炎剣により、この世から消滅するのだからだ!!』
 ファーストヒーロー『ザ・スター』は飛び上がる。
 それもこの世界では|禁忌《タブー》である、殲禍炎剣の砲撃を招く速度でだ。

「逃げろぉ!!」
 住民たちは蜘蛛の子を散らすように地下シェルターへと走り出す。
 だが、一向に裁きの光は降り注いで来ない。
 不審に思ったひとりの住民が様子を確認しようと外へと出て天を仰げば、そこには信じられない光景が広がっていた。

「あれが……殲禍炎剣の光……」
 遙か上空には謎の光の壁が広がり、その先には殲禍炎剣による怒涛の砲撃による破滅の光が点滅している。しかし、光の壁がそれらを受け止め、吸収することで地上への被害は出ていない。
 アレが消滅すれば百年前と同じ……いや、それ以上の被害がミド・バール全域を灼き尽くすだろう。

『我が心よ……これが私の最大なる譲歩である。|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》! ようやく旅の目的地に辿り着いたというのに、何もせず引き下がれるものか! 他のファーストヒーローたちも呼び寄せ、一気にこの世界を殲滅するぞ!』


●グリモアベースにて
「……という予知を受け、クロムキャバリアに新たな災いが襲来しました」
 グリモアベースに集った猟兵たちを前に、シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は説明を続ける。

「彼の名は、ファーストヒーロー『ザ・スター』。かのジャスティス・ワンにエナジー・ゲートを授けた人物であり、世界最初のスーパーヒーローチーム『ファーストヒーロー』の一員です。彼らには倒すべき宿敵が存在し、その宿敵は世界の|理《ことわり》の外に存在するため、彼らは『自身の歴史介入』を禁じる事で世界の外から宿敵を探しています」
 そのひとりこそ、骸の海を越えてクロムキャバリアへと来訪した『ザ・スター』。
 戦神アシュラの複製体『アシュラレディ』の製造工場がクロムキャバリア内にあるプラントであると睨んだザ・スターであったが、どのプラントが製造工場であるかまでは把握できていない。
 故に確実な方法を選択した……クロムキャバリア内のプラントというプラントを破壊し尽くすと!

「彼は強靭過ぎました。強靭であり過ぎた故に生きながらオブリビオンと化し、今や生活を支えるプラントを破壊する化身となりました。放置していれば、破壊されたプラントの代わりとなる無事なプラントを武力による簒奪で奪い合うのは必定。何としても高高度で立ち退きの期日を迫る彼を倒さねばなりません」
 だが、辿り着くにはそこまで到達せねばならない。

「今回標的にされたミド・バールですが、多くの遺物が埋没されいます。それらを発掘して糧としているのがミドの町。困り果てている住民たちは猟兵たちの助けとなるべく、故郷を守るために助力は惜しまないでしょう。高高度にも達する消失した航空技術を蘇らせ、ザ・スターをお止め下さい」
 そう締めたシグルドはグリモアを展開させ、猟兵たちを送り出すのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 ロボットバトル物であったクロムキャバリアにとんでもない人物がやってきましたが、色々と事情があるご様子。
 しかし、だからと言ってプラントを破壊し尽くすという狼藉を阻止せねば、ですね。

●シナリオ概要
 「【Q】スナークゾーンを解明せよ」についてグリモア猟兵が調査を進めていた最中、突如としてクロムキャバリアに謎のオブリビオン「ザ・スター」が出現するという予兆が発生しました。
 その目的はなんと、「世界全てのプラントの破壊」……!
 生身のまま超高速で飛来した「ザ・スター」は、ターゲットした任意の小国家の「プラント」の遥か上空に、謎のユーベルコード「エナジー・ゲート」を張り巡らせます。
 当然のように|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》から怒涛の砲撃が繰り出されるのですが、それらは何故か尽くエナジー・ゲートに吸い込まれ、消滅してしまいます。
 その状態で「ザ・スター」は殲禍炎剣、またはエナジー・ゲートから「空中戦対応型オブリビオンマシン」の大群を召喚し、反撃できない高高度から有無を言わさずプラントを破壊するつもりです。
 こちらもクロムキャバリア史上初の「超高高度空中戦」で立ち向かわなければなりません!

 第一章は【集団戦】フラグメントとなります。
 殲禍炎剣の無差別砲撃がある為、クロムキャバリアの軍備は基本的に「空中戦を全く想定していません」!
 元々自力で飛行できる猟兵はそれで構いませんが、そうでない場合はキャバリアに「古代の飛行機械」を換装したり、失われた筈の「飛行機技術」を継承したイカレ……もとい稀少な飛行機技士に戦闘機を作ってもらったりしなければなりません。

 第二章は【集団戦】フラグメントとなります。
 ザ・スターがエナジー・ゲートから召喚した「空中戦対応型オブリビオンマシン」との高高度空中戦です。
 空中戦を上手くこなした猟兵には、プレイングボーナスが発生します。

 第三章は【ボス戦】フラグメントとなります。
 ファーストヒーロー「ザ・スター」との空中決戦です!
 ザ・スターは生身で戦いますので、彼よりも巨大で鈍重なキャバリアや航空機類では簡単に翻弄され、一方的に破壊されるかもしれません。
 それに上手く対処できればプレイングボーナスが発生しますので、余裕あればお狙いください。

 それでは正義と正義の激しい闘いにも負けない熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 日常 『空中戦に備えろ!』

POW   :    徹夜で空中戦用の機体や装備を開発する

SPD   :    既にある技術を応用し、飛行手段を編み出す

WIZ   :    幻の「飛行機技士」を探し出し、助力を頼む

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「またお前たちに世話になってしまうな」
 ミドの町は先刻飛来してきた『ザ・スター』により言い渡された事実上の退去勧告に騒然とする中、自警団の代表である青年が耐圧服めいたオレンジ色の防護衣とヘルメットのマスク部分から伸びたホースが胸にぶら下げた空気濾過装置に繋がれた姿で猟兵たちと対面する。見ているだけでも何とも暑苦しく、おもわずむせてしまいそうな出で立ちだが、これも過酷な地で生き抜くためのものである。
 まだ防護マスクを付けていない猟兵に微粒子レベルで漂う死の粉塵から身を守る簡易マスクを手渡すと、今の状況は説明する。

「事態はご覧の通り。ガキの頃から爺さん婆さんから聞かされた『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』の砲撃を、奇妙な壁越しに見せつけれて住民の意見は真っ二つに分かれてしまってる」

 ひとつは、逃げる。
 命あっての物種だ。今すぐここから逃げるべきだ。

 もうひとつは、この場に留まる。
 ここは自分たちが生まれ育った土地だ。
 あの程度の言いがかりに屈する自分たちではない。

「ま、逃げようと言い出している連中は、蒼い砂漠の下で眠っているお宝目当てに他所から移り住んできた山師たちだがな。昔からミドの町に根ざしている住民らは何が何でも残るつもりでいる」
 そうであれば、自警団としてこの町を護っている自分も離れるわけには行かない。
 かくしてミドの町の住民たちは、如何にして我が物顔で立ち退きを迫る余所者を追い払うか集会所で議論を交わしている最中である。

「一応だが反撃の手立てはある。自警団が所有するキャバリア、ピースメーカー。お隣の傭兵派遣で食ってる|小国家《ヘキサ》が随分昔に開発した物だが、その地その地の環境に応じて現地改修できる設計の余裕さから今も改修を重ね続けていて現役だ。ここでは蒼い砂漠から掘り起こした航空機用の部品を使って、脚にホバー推進機能を加えていてな」
 これにより地平線の彼方まで砂漠が続くこの地でも、徘徊する無人機であるオブリビオンマシンに遅れを取らない機動性で撃退している。
 クロムキャバリアにおいてはプラントが作り出す物資に頼らずを得ないが、それも叶わないこの地では『無い物は自分たちで作り出す』をモットーとしている。
 これも百年前の殲禍炎剣によって世界が焼き尽くされる前にあった大工業地帯であった名残であり、その焼け跡となった廃墟から被害を免れた物資を発掘できるという特異性ある地であるからだ。

「これを分解して、飛行用のバックパックに作り直すことを目下検討中だ。まぁ、推進する向きを横から縦に変えただけだが、無いよりはマシだ。あの|デカブツ《ピースメーカー》をホバーで浮かせて進めれるだけの出力はあるが、調整にはそれ相応の日数が必要だ。期限となる10日以内に仕上げないと、だ」
 それと、と彼は念を押すように語りだす。
 ミド・バール全域には、微粒子レベルとなったラズカリクムの粉塵が大気中に漂っている。仮に自前のキャバリアが禁忌の飛行技術を有してしていても、それをキャバリアが吸い込んだりすればエンジンに付着して故障する危険性がある。
 幸いにミドの町にあるプラントでは、ラズカリクムの粉塵を濾し取るフォルターが生産されている。これを加工し、この地に適した防塵機能を付与せねば……である。

「あと、ピースメーカー用のバントライン砲での対空砲撃も検討中だ。元々野戦砲を現地改修してキャバリアに持たせたのが始まりらしいので、その射程を活かせば地上からでも時限信管を使えば高高度の高さまで攻撃は出来るだろうが……命中精度はお察しなのが悩みか」
 これは支援攻撃プランに回すしかないなとボヤくと、何か思い出したような素振りで話が続けられる。

「さっき提示した飛行プランだが、それでは不十分とか信頼性に欠けるのが居れば蒼い砂漠のプラント跡地で掘り出し物を漁るのも手だ。この町には他所で問題を起こして追放されて流れ着いた連中も居る。もしかしたらだが、禁忌の航空技術に興味を抱いた末に手を染めた技術者かもだ。そんなたいそれた真似をした重罪人も、今となれば希望の星だ。今は不問として、この事態打破に一役買ってもらおう」
 しかし、町の外ではオブリビオンマシンが徘徊している。
 その危険を承知で、今もミド・バールの下で眠る人々が自由に大空を飛んでいた遺物を探す時間はまだ残されている。
 どの手段でザ・スターが控える成層圏手前となる高高度の高さまで飛ぶか、各猟兵の手に委ねられた。

「自己紹介が遅れたが、俺の名はユプシロン。またの名をウィル・トゥエニー……この地のプラントで産まれた20番目のウィル型レプリカントだ。改めてとなるが、よろしく頼むぜ」
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
SPD選択

ブルーアルカディア出身なので自分の王国の秘蔵ガンシップ・グリーンフラッシュをキャバリア用飛行ユニットや戦闘機の量産のための資料として提供します。世界が異なるせいで陸戦用のキャバリアとは技術体系も違いますし、グリーンフラッシュは超機動・高火力・制御困難と非常にピーキーな機体なのでどこまで参考になるかはわかりませんが、それでも何らかの刺激にはなるでしょう。この世界のキャバリア「ネオン」も持っているので、両者の違いを比較検討する材料になるかも。そして、うまく飛行ユニットや戦闘機が完成したら、【空中機動】を活かして突貫で乗り手に飛行訓練をします。



「これが|戦闘機《ガンシップ》……実に、実に興味深い! うひひひひ!」
 突貫工事で遙か上空……神の領域と言っても過言ではない高高度の世界を目指そうと、工作機械の稼働音と喧騒が響き合う空気が清浄な地下ガレージの一角で、顔面がツギハギだらけである初老の老人がギラつく目を剥かせる。

「ねぇ……あのお爺さん、本当に大丈夫なの?」
「……Dr.マシキシュタイン。見ての通り、空に憧れ続けて頭がイカれた|飛行機技士《マッドサイエンティスト》だ。失伝した禁忌の航空技術の復活を夢見て研究し続けてきた挙げ句に国を追われ、今はこの町に流れ着いた腕の良いジャンク屋さ。発掘された航空部品を専門に鑑識して貰って世話になってるが、悪い奴ではないのは確かだ」
 何か参考になるかもと王国秘蔵のガンシップ・グリーンフラッシュを資料として提供したメディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)であったが、言葉通り嘗め尽くす勢いでグリーンフラッシュを丹念に調べ上げている様を見て引いてしまう。
 ユプシロンは何時もあんな感じであると呆れ半分に紹介し終えると、鼻息を荒くさせながら放っておけばバラバラに分解する勢いでガンシップを調べ上げているDr.マシキシュタインに尋ねる。

「でだ、爺さん。コイツはどうだ?」
「ぐっふふふ、たまらんのぉ! 高い機動制と高火力、このふたつを両立させる為にパイロットの技量で解決させる制御困難なピーキーさ! やはり戦闘機はこうでなくてはのぅ!!」
 確かに変人であるが見る目はあるとメディアは感心するが、即ちそれはパイロットを選ぶという事実。そして、ザ・スターが告げたタイムリミットまで残すところ10日余り。リバースエンジニアリングによる機体の量産はおろか、パイロットの錬成期間も正直あるかないかという次元だ。それともうひとつ問題がある。

「そして、この超小型なエンジン……あー、お嬢ちゃんの解説だと『天使核』……だったかね? これを再現するには長い歳月を要するかもじゃな」
 天使核、それは|動力《エンジン》として加工されたオブリビオンの心臓である。
 ブルーアルカディアではこの天使核を用いて、飛空艇や魔導機械、浮遊大陸の沈没をも防ぐ『天使核文明』を編み出した。だが、これは素材元がオブリビオンということもあって汚染と暴走の危険性も孕んでいる。
 この世界においてはオブリビオンマシンのコアが素材として活用できそうだが、裏を返せばオブリビオンマシンを組み直すこと以外の何物でもない所業となる。
 オブリビオンマシンがもたらす狂気に抗える猟兵ならともかく、一般人が乗り込めば目も当てられない事態となるのは明らかだ。

「じゃが、何事も試作機からのスタートとなる。まぁ、量産型グリーンフラッシュは諦める形となるが、わしの手で此奴をグレードアップすることは可能じゃ。もしくはこの天使核のみを取り外し、お嬢ちゃんのキャバリアとの規格が合う飛行ユニットのコアとして組み込むことも可能じゃな。どちらもデータが無い分、文字通りお嬢ちゃんにはテストパイロットとして死にものぐるいに頑張って貰わねばならんがのぅ……ひひひ!」
 他国のプラントであれば設計図を入力すれば自動的に試作品を製造することは出来るのだが、ミドの町のプラントにはそのような機能が備わっていない。
 そして、この町においてキャバリアを作るとなれば、頭から脚までの部品を郊外の蒼い砂漠地帯から発掘するか、鉄道を通して持ち込みハンドメイドするしかない。

「強化型グリーンフラッシュかネオン用のフライトユニットのどちらか……そう言われると迷うなぁ」
「迷え迷え。人生とは選択であり、選択とは他の可能性を捨てることじゃて。わしとしてはお嬢ちゃんがどっちを選んだええんじゃがのぅ! だあああ~はははははあ!! 」
 メディアが悩んでいる最中でも刻々とタイムリミットは迫っている。
 ガンシップかキャバリアか、メディアは『選択』と『決断』の崖っぷちに立たされたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星川・アイ
【渡り禽】 アドリブ歓迎
まさかクロムキャバリアで空中戦する日が来るなんてね~……

アタシの装備でやれそうなのが、空間戦闘用のOFを換装した【ジェナス-VspⅡ】と全領域対応型戦艦の【リンドヴルム】だから、これらを高高度戦闘向けに調整しようか
それと多喜さんの新装備の訓練があるようだし、アタシも遥翔 さんと一緒に参加するね
……こっちも初めて使う装備があるしね~、という訳で訓練の最中にジェナスを【キャバリアクロス】化!
唐突で悪いけど、こっちの調整にも付き合ってもらうよ!


数宮・多喜
【渡り禽】
【アドリブ改変大歓迎】

高高度での高速戦闘かぁ……
カブを纏っての【人機一体】形態でなら慣れてるけれど、戦闘時間に難ありだし、粉塵の只中を生身で飛ぶのもぞっとしないねぇ。
そんじゃ最近見つかった、Overed用のリフターでなんとかしてみますかねっと!
プラントで防塵処理を施してもらったら、さっさと訓練飛行開始さ。
流石に自前の身体を動かすのと機体を『操縦』するのは勝手が違うだろうから、
星川さん、久遠寺さん、訓練の相手をよろしく頼むよ!
キャバリアでの『空中機動』と『空中戦』のイロハをアタシに叩き込んでおくれ!
……それにしても、なんだって今頃リフターの格納亜空間が見つかったのかねぇ?


久遠寺・遥翔
【渡り禽】
アドリブ歓迎
俺のイグニシオンはSOWの技術で作られていて、空戦・宇宙戦で真価を発揮する機体だ
既に別の戦場で高高度空中戦も経験しているのでその[戦闘知識]と[メカニック]技術を駆使してイグニシオンを調整
普段の[空中戦]とは違う、この高度に最適なパラメータ設定に機体を仕上げる
巨神レヴィアラクスは本体は留守番だけど、その端末をナビゲータとしてイグニシオンに同乗できるようにしておく
今回の相手は戦闘中も色々と情報を集められるようにしておきたいからな
あとは今回の戦いに向けてアイと一緒に、まだ慣れていない多喜さんの慣熟訓練の相手をつとめる
得られたフィードバックを元にこっちの機体も最終調整だ



「高高度での高速戦闘かぁ……」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は雲ひとつもなく晴れ渡った空を仰ぎ見る。手を伸ばせば届きそうで届かない神々の世界に憧れ、人類は何時か空の彼方まで飽くなき挑戦を挑んできた。
 この世界、クロムキャバリアも例外でなく、高度に発達したロボット工学技術をもってして百年前までは自由に空を飛んでいただろうが、暴走衛星|『殲禍炎剣』《ホーリー・グレイル》による高速飛翔体を狙った無差別砲撃により封じられた。が、それでも人類は何故、危険を犯してまで大空に憧憬を抱き続ける。
 そして今、他世界より来訪せし者の手により、世界の|理《ことわり》が崩れようとしている。

「まさかクロムキャバリアで空中戦する日が来るなんてね~……」
 星川・アイ(男の娘アイドル風プロゲーマー・f09817)も未だ実感が湧かないが、空同様に蒼い砂漠地帯全域を覆うように展開されたエナジー・ゲートと思わしき光の壁が証明している。
 それはアイが持ち込んで今は町の外に着艦している飛行戦艦『リンドヴルム』の姿を捉えた殲禍炎剣が、これを目掛けて砲撃しようとしたもののエナジー・ゲートにより吸収と消失を機器で観測できたのだから事実として受け止めるしかない。

「これを上手く利用できたとしたら、あの暴走衛星を破壊できる日が来るかもな」
 リンドヴルムの貨物室内でミドの町より提供された防塵処理素材を相棒の|バイク型AF《イグニシオン》に施していた久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)は用を弁ずる。
 何らかの手段でザ・スターが用いるエナジー・ゲートを猟兵側が手にすれば、無差別砲撃を無効化して衛星軌道上の殲禍炎剣まで到達することは夢ではない。しかし、それはクロムキャバリアの均衡を辛うじて保たせている楔を消滅させる以外の何物でもない。
 これによりオブリビオンマシンの狂気に囚われた者たちによる航空攻撃や弾道ミサイルなどの破壊手段が取られる事態が頻発することを考えると、殲禍炎剣の破壊は現状維持でこのままにしておいてオブリビオンマシンが発生する事象を何とかすることが先決であるのが最善とも思えてしまう。

「そう言えば、久遠寺さんって他のザ・スター相手とも戦ったことがあるんだろ? 高高度の戦闘はどうだったのさ」
 そして、こうも単純作業を黙々とこなしていればお喋りが弾んでしまう。
 オブリビオンは骸の海より染み出す世界の染み。
 世界最初のスーパーヒーローチーム『ファーストヒーロー』の一員であった『ザ・スター』も、今はオブリビオンとしてクロムキャバリアに災厄を齎そうとしている。
 ほぼ同時多発している事態にあたって対応した彼から何かヒントが得られるかもと、多喜は退屈しのぎがてら質問を投げかける。

「そうだな……俺のイグニシオンはスペースオペラワールドの技術で作られていて、空戦と宇宙戦で真価を発揮する機体だ。だが、星と宇宙では大気があるかないかで環境は大違うでもある」
 さながら禅問答な返事に多喜は首を傾げてしまうが、要点を得た顔持ちで今度はアイが喜々としながら喋りだす。

「もしかして、気圧の差とか物凄く寒いとか? ほら、ジャンボジェット機が飛んでいる高さって言えば富士山とかエベレストよりも高い訳だし」
「正解だ。星の環境にもよるが、地球と同じ条件なら標高が100メートル高くなるにつれて気温は約0.65度ずつ下がり続ける。標高500メートルの高地となれば約3.25度、標高1000メートルでは約6.5度だ」
 それを高度1万メートルに換算すれば、地上との気温差は約65度。
 これを地上の気温を15度と仮定すれば、約マイナス50度の極寒の世界となる。

「あー……それだったら、カブに乗らずで正解だったかもねぇ……」
 旅客機にはあまり乗った経験がないものの、空の旅が地上と変わらない環境で楽しめる外は極寒の世界と聞けば、つくづく人間とは文明で守られているものと実感してしまう。

「だが、それは対流圏内までの話だ。より高度を上げた成層圏と熱圏では、太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子エネルギーを吸収することによって逆に温度が高くなる。これは太陽に近づいたが為ではなく、成層圏内のオゾン層にたまった紫外線の影響などによるものだ」
 熱圏に至っては条件次第で2000度に達すると久遠寺が述べれば、ふたりは当然信じられない顔となってしまおう。

「とは言うが、そこまで行けば空気はかなり薄くなっている。宇宙では空気と一緒に冷却材を放出しないと機体に籠もった熱を排熱できないのと一緒で、溜まった熱は空気がなければ物質を通して伝わってくることはまずないさ」
「空気ってほんと、偉大なんだねぇ」
 この話を聞くと本当に暴走衛星を破壊できるものなのかと訝しんでしまうが、猟兵とは生命の埒外たる存在。ヘリポートを経由してやってきたあちら側の|番犬《ケルベロス》同様、コンクリ詰めされて海底まで沈んだとしても死にはしないが死ぬほど苦しむ程度だろう。
 閑話休題、そうこうして他愛ない会話をしていけば自ずと作業も捗っていく。

「ふぅ、これで終わりだね♪」
「肩が凝りそうだったよ、まったく。まだXデーまで十分時間があるし、新調したJD-Overed専用リフターユニットの調整はできそうだ」
 吸気系、細部に渡る関節部にまで至る防塵処理。
 これも高高度に至る戦闘の最中で不測の事態を未然に防ぐための処置である。
 幸いながらリンドヴルムという空飛ぶ足場は確保出来ているが、それに取り付けなければただただ地上へと落ちていくだけ。
 何かあればすぐに脱出できる地上戦とは異なる戦闘領域、それが空での戦いだ。

「さぁて、気分転換がてら訓練飛行開始さ。星川さん、久遠寺さん、訓練の相手をよろしく頼むよ! 空中戦のイロハをアタシに叩き込んでおくれ!」
「望むところだ……と言いたいが、ユプシロンから言付けを受けている。もし機体の調整で模擬戦を行うのであれば、町の外を徘徊している無人機型オブリビオンマシンの駆除を願うと。ミドの町の戦力は今や空へと向けられている。最悪の事態に陥るのは何とか避けたいのだろう……|渡り禽《RAVENS》の一員として、無下に断る道理はない」
「それに一体倒すごとに町から報奨金が出るんだって。ちょっとしたお小遣い稼ぎが出来るなら、騎兵団らしくそっちでも良いじゃない?」
 確かにそう言われれば、作戦結構時での不安材料となる野良オブリビオンマシンの頭数を今のうちに減らしておくのは合理的判断と言えよう。仮にオブリビオンマシンを発見できずとも、帰投する前に模擬戦を行えば良いだけの話でもある。

「じゃ、それで行こうじゃないか。行き掛けの駄賃稼ぎにさ!」
「こっちも初めて使う装備があるしね~。無人機のオブリビオンマシン相手なら気兼ねなく相手できるし、思う存分戦えるね♪」
「もし哨戒を兼ねた飛行慣熟訓練で発見できなければ俺が相手するが、こちらのフィードバックもある。手加減はしないつもりだから、覚悟しておけよ?」
 教官役の久遠寺が先行する形でリンドヴルムのハッチからイグニシオンを出撃させ、それに続かんとキャバリアクロス化させたジェナス-Vspに身を纏ったアイが続く。

(……それにしても、なんだって今頃リフターの格納亜空間が見つかったのかねぇ?)
 亜空間より転送される謎多きサイキックキャバリア、JD-Overed。
 操縦系統がサイキッカー用の宇宙バイクと酷似しており、さながらバイクに跨る形のコックピットで多喜はふとした疑問を抱く。
 だが、そんな彼女に湧いた小さな疑問は揚力を得るため瞬間的に生じて身体を襲うGの負荷が吹き飛ばしてしまい、蒼い結晶体で埋め尽くされた砂漠に三機の渡り禽はその姿を影と共に映し出しながら空高く飛翔するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ファーストヒーローはいずれも高潔な方達でした。
それがこのような事になったのは本当に痛ましいです💦
せめて犠牲者が出ないよう頑張りましょう。

ユプシロンさんから防護マスクを借り受け、焔天武后の飛行機能強化を依頼いたします。

焔天武后はスーパーロボット故に、低空での高速戦闘は可能ですし、これまでも経験しておりますが、ラズカリクムの粉塵は厄介ですものね。
(焔天武后に)「ですので、ここはこの町の皆さんのお力をお借りしましょう。」と語りかける。

まず第一は粉塵機能付与。
次に脱着可能な飛行戦ユニットの装着(可能なら地上に被害を出さないよう、パージ後は街に帰る自動帰還機能が欲しい所です。)
をお願いいたします。



 ヒーローとはいつの世でも孤独な存在である。
 例え誰に顧みられなくとも、誰に理解されずとも、戦い続けるのは揺るぎない信念と使命があるからだ。
 しかし、誰がヒーローが掲げる『正義』を『正義』であると肯定するか?
 社会その者が『悪』だとしても、自身が『悪』ではないと証明するのは他ならない大衆であり、彼らから理解されずとも『誰かに褒められなくてもいいや』と考えたとき、初めて孤独が味方になる。

(ファーストヒーローはいずれも高潔な方達でした……。それがこのような事になったのは本当に痛ましいです💦)
 古きの八百万の神々の一柱、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は大きく落胆した。植物と活力を司る豊穣の女神として|善悪の二大決戦《ジャスティス・ウォー》では世界ないし人類を庇護する善神として参戦したが、ジャスティス・ワン同様に彼女もまたファーストヒーローらとの面識がある。あるからこそ、あれほどまで己を律して使命に殉じる高潔な精神がオブリビオンとして堕ちてしまったことは今も信じられない。
 ザ・スターが掲げる、余りの残虐さと邪悪さ故に処刑された原初の戦の女神……『戦神アシュラ』のクローン体『アシュラレディ』の脅威は、戦神アシュラとして本来の神性を取り戻さんとするアシュラレディとの戦いで彼女も識っている。識っているからこそ、クロムキャバリアのプラントがアシュラレディのクローン体を生産する秘密工場として機能しているのを破壊するまでは理解できても、すべてのプラントを破壊し尽くす手段だけは賛同できない。

「……せめて犠牲者が出ないよう頑張りましょう」
 だからこそ、彼女は選択する。
 プラントそのものが災いを齎すパンドラの箱だったとしても、それを良き方向へ運用して希望という明日の糧を得る無辜なる人々のために、大先輩だろうともザ・スターの正義を否定してキツいお説教のひとつやふたつをぶつけてやる覚悟を。
 呼吸するたびに息苦しさを感じる防護マスクを付けながら、真紅の装甲持つ美しい女皇帝型のスーパーロボット『焔天武后』を見上げる。

「ですので、ここはこの町の皆さんのお力をお借りしましょう」
 焔天武后自体は低空において高速戦闘は可能で、これまでの戦闘で幾度もそのように機動してきた。
 だが、相手はレジェンドたるファーストヒーロー。彼の元まで到達できようとも、星の名を冠するザ・スターの疾さに付いていけるかまではであり、それは遠い昔の記憶として詩乃は覚えている。更なる疾さ、加えてこの地に適応するための防塵処理を施すべく、詩乃はユプシロンの紹介でとある町工場を訪れた。
 本来は地平線の彼方まで墓標のように点在する大工業地帯だった名残でもある『白骨都市』とも呼ばれている廃墟から回収したジャンクを解体し、まだ使える部品や鋼材などを再加工する町工場であるらしいが、今や鉄火場さながらの騒然さとなっている。ピースメーカー・デザートカスタムの両脚に取り付けられた小型エネルギーインゴットエンジンによるホバーシステムが解体され、新たに飛行ユニットとして再生されようとしている。
 今までは一機分のキャバリアを噴出孔から吐出される高圧力の噴流によって僅かに浮かせていたが、長時間に渡る運用のためにかけられていたリミッターが解除された二基のエンジンが生み出す推力であればあのザ・スターの疾さにも到達できると、詩乃としては非常に頼もしい限りだ。
 後は各キャバリアに対応した形状の外装を取り付けるだけであり、それが完成するまでは焔天武后に防塵処理を施す時間となる。その最中、ふと詩乃はある疑問を抱く。

「ところで、何故ここまで入念に防塵処理を施さねばならないのですか? 何か普通の砂塵と違う理由があるのでしょうか」
「駆動系の保護や町の中に汚染物質を持ち込ませないためでもあるが、ラズカリクムの厄介な性質への対処が一番の理由だ」
 曰く、他のレアアース同様に粘土状の物質として産出される。
 そのままでは何も用途がない希少金属だが、他の金属と合金化することで絶対的な強高度を誇る金属、超高性能な半導体素材、構造上無理のある変形合体が可能な形状記憶合金など無限の可能性を秘めた賢者の石とも言える触媒……それがラズカリクムだ。

「問題は、必ずしも人間にとって有益な物でない存在であることだ。百年前の大破壊で舞い上げられたラズカリクムの粉塵は、同じように舞い上げられた様々な化学物質の粉塵に工業地帯故に汚染された大気と結合し、結晶化されてこの地に降り注いだ。表沙汰となってないが風の噂で聞いたヘキサを襲った地下帝国の|機動獣《モビルビースト》……人間のみならずあらゆる生命体に有害な放射線を放つ装甲もラズカリクムあってのものだ。つまり神にも悪魔になってしまう存在以外の何物でもないのさ」
 仮に粉塵状となったラズカリクムが何らかの拍子にキャバリアと融合すれば何が起きるか分かったものでもない。その為の防塵処理だと改めて説明を受けた詩乃だったが、善神であっても在り方や別なる側面では悪神にもなりうる神のようであると自戒の念を抱かずにはいられない。
 同時にこの地に住む彼らの逞しさに感心するばかりでもあるが、だからこそ自身は善神として在り続けていなければ、だ。

「そうですか……ありがとうございます。ところで相談なのですが、飛行ユニットを切り離した際に自動帰還機能を取り付けることは可能でしょうか? パージした後、地上に被害を与えたくありませんので……」
「こっちも同じ考えでやっているさ。だが、汚染されたラズカリクムの粉塵が舞い上げられた砂嵐がな。どういう理屈なのか分からないが、あれが起きると強力な電波障害が起きてレーダーや無線機どころか赤外線も効かなくなる。電子機器依存のセンサーが利かなくなった保険に一応気圧の変化で感知する高度計で開くパラシュートは付けているが、まだ改善の余地がないか工場の親父さんと話を付けてくるよ」
 時間も物資も限られているが、やれるだけのことはやる。
 人間はか弱き存在だが、だからこそ逞しく生きている。
 そんな彼らを庇護するために詩乃もまた、作戦決行の日まで精一杯やれることはやる所存であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「どーも、正義の忍者、衣更着と申しまっす!ザ・スターの悪事を阻止たいので、ご協力お願いしまっす!」
ユプシロンさんに挨拶、防塵機能の付与や整備、調整してもらう交渉
おいらの「テングリーフ・ホワイト」は自力で飛べるけど…メガスラスター「シューティングスター」で縦にカッ飛んでいくと目立ちすぎるっす
というわけで廃プラント跡地を忍者ゴーグルで偵察っす

敵は化術で迷彩&忍び足からストールのアンブッシュで破壊
UC『収納鏡』に上に行くためサブフライトシステムを確保
最悪機体は『収納鏡』に入れ空中浮遊で自力で空に

一応この地で邪神複製体の生産がないか稼働プラント関係者にこっそり催眠術で情報収集&情報検索で生産履歴確認



「どーも、正義の忍者、衣更着と申しまっす! ザ・スターの悪事を阻止たいので、ご協力お願いしまっす!」
「そいつは頼もしい限りだ。よろしく頼むぜ」
 口と鼻を打綿狸の綿ストールでメンポめいて巻いた家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が威勢よく挨拶すれば、ユプシロンを始めとするミドの町の住民は快く新たな|渡鴉《イェーガー》の来訪を歓迎する。
 衣更着が所有するクロムキャバリア『テングリーフ・ホワイト』だが、本機は空中戦を前提としたトンビのように尖った鼻先を持つ木の葉天狗をモチーフとしたようなキャバリアである。鳥人のような姿でトビによく似た色合いの機械翼で飛翔し、キャバリア用大型推進飛行装置の『シューティングスター』も増設できるとなればこのまま高高度の戦闘はお手の物。あとは吸気系や関節系への防塵処理を施せば問題なしと、アドバイザー兼戦闘機技士であるDr.マシキシュタインも太鼓判を押したのであれば心強い。

「まだ作戦決行まで日にちがあれば、近くの発掘ポイントで使えそうな物が眠ってないか探しておきたいっす。テングリーフ・ホワイトの試運転もしておきたいっすけど、空から見下ろせばザ・スターから丸見えで目立つっす。何か目立たなくて、かつ速い|乗り物《あし》はないっすか?」
「おお! あるぞ、あるぞ! 付いてきたまえ」
 興奮気味に片目のみをぎょろりと器用に見開かせ、鼻息を粗くするDr.マシキシュタインが案内した先は彼の研究所と住居を兼ねた古びたガレージハウス。錆びたシャッターが軋む音を奏でながら開けられれば、そこにはタイヤの代わりに皿状の降着装置が付けられていて、エンジンも航空機用と思わしきエンジンに変えられた奇妙なバイクがあった。

「エアーバイクじゃ。ここいらで発掘された使えそうなガラクタで作った試作品じゃが、安全性はわしが保証するぞ。ひひひひ!」
「だから、町の連中は不安がって乗らないんだろが。この前は制御不能に陥って、危うく空に向かって飛んでいきそうになったろ」
「あーあー、聞こえんのう。わしも齢じゃから、最近耳が遠くてなぁ」
「その時はその時っす。ユプシロンさんから貰ったマップ共々、ありがたくお借りするっす」
 この際だから贅沢は出来ないと、諦め半分に衣更着は乗るとキックレバーを蹴り下ろしてエンジンを始動させる。
 エアーバイクは甲高いジェットエンジン独特な音を唸らせながら火を灯らせ、乗り方の説明通りにレバーを回せばタイヤの代わりに付けられたリフターが反重力の力場を生み出して浮かび上がらせた。

「じゃあ、ちょっくら行ってくるっす!」
 そしてアクセルレバーを回せば急加速し、忍者ゴーグル越しにメーター計を見やればあっという間に速度は100km/sを超えている。砂地によるタイヤへの抵抗もなく砂漠の稜線を縫うように走らせればあっという間に最寄りの発掘ポイントへと到着した。

(これが百年前に|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》で破壊され尽くされたプラントの廃墟っすか……)
 風化したコンクリートの外壁、赤錆びた鉄骨、激しい火災が起きた名残であろう焼け焦げた跡……。これだけでも痛々しいが、渡された放射線測定装置の針も僅かに微動しているのが拍車をかけてくる。
 それでもここはまだマシな方で、この地一帯を汚染させるに至った爆心地でもある付近まで行けば、今も放射線測定装置の針が振り切れるまでに汚染されているという。

「オブリビオンマシンは……この辺りまで来ていないみたいっすね」
 それと新たに加わった、殲禍炎剣による大災害を生き残り今やオブリビオンマシン・プラントと成り果てた残存プラント。もしオブリビオンマシンが闊歩していれば『|収納鏡《ユーベルコード》』に収納しているテングリーフ・ホワイトか忍び寄ってのストールで破壊するところだったが、居なければ居ないで越したことはない。
 こうも阻まれればオブリビオンマシンの生産する場としては打ってつけだが、同時にザ・スターが主張する戦神アシュラの複製体『アシュラレディ』の製造工場もまた在ってもおかしくはない。幸いながらミドの町のプラントは衣更着の見立てでは取り分け怪しい気配は微塵も感じられていない。
 となれば、ユプシロンから聞いたとある話の可能性が脳裏を横切る。

 ──かつてここには、途方もなく巨大な階層都市があった記録がある。

 それが正しければ、衣更着が居る地点は階層都市の地上部となる。
 殲禍炎剣により地上は破壊され尽くされたが、ジオフロントが存在していれば地下にあるプラントはほぼ無傷だ。
 それのどれかがオブリビオンマシン・プラントとなり、そのどれかがアシュラレディの製造工場たるプラントである可能性は否定できない。
 ただ問題は、地下へと進む進入路があるかどうかだ。
 キャバリアという巨人に匹敵する機械兵器を地上に送り出すのであれば相応の搬出口があるものだが、ミドの町の住民たちが生きる糧として白骨都市と名付けられたプラント跡地を回っていてもそれらしい物は発見へと至らず、仮に見つけたとすれば彼らは地下に移住している。
 可能性があるとすれば重度に汚染された区域が怪しい限りだが、重厚なキャバリアの装甲に守られた人間をも被爆させるまでのラズカリクム由来による強力で有害な放射線をどうやって突破するかだ。

「だから地下に続く入口が残っていないか見に来たっすけど……どこも崩落してたり、ちょっとした拍子で崩れそうなところばかりっすね」
 掘り起こせばどうにかなるかもしれないが、何もなかったという可能性もあれば確証までに至らねば無駄な時間の浪費以外の何物でもない。
 無用な不安を町の人々に与えないように伝えた表向きの理由でもある物資探しもめぼしい物は見つからなかったので、衣更着は次の発掘ポイントであるプラント跡地へ向けてエアーバイクを走らせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チェスカー・アーマライト
●鴉と狼

射程はともかく、命中精度だけはどうにもならねー
そこでアンタの |相棒《ワンコ》の目を借りたいのさ
|手間賃《ロイヤリティ》はあたしの報酬の3割から応相談で……ハァ?
……いや、悪いがコイツはあたしの性分の問題だ
無償ってモンがとかく信用ならねーんでね
オーライ、よろしく頼んだぜ

作業場と道具さえ借りれりゃ自分でやれる
それぞれの機体の粉塵対策に、ビッグタイガーの主砲の積み替え
オレルスの飛行ユニットは……スノーボードよろしく足に固定すりゃ行けるか?
(UCは自機に使用)

確かに此処はパラダイスとは言えねー
だがよ、外野にあれこれ口出されんのも面白くねー話だろ
決める権利も義務もテメーだけのモンだ、ってな


ウルル・マーナガルム
●鴉と狼

んーん、お金は別にいいよ
同じ猟兵同士だし
なによりボクの『オレルス』は、キミが紹介してくれたこの世界の企業の力ありきで出来た機体だもん
困ったらお互い様でいいと思うんだけどなぁ
……分かったよぅ
ボクへの信用を買ってもらうって感じだ

防塵装備とトレーラーを借りてプラント跡地へ
もし技術者の人に同行してもらえたら心強いよね
先に防塵処置してもらったハティのホログラム迷彩で隠れて、敵を迂回して探索
チェスカーのリクエストは|多薬室式長射程砲《センチピード》
ボクのには……これ、盾? スノボー? これ飛べるのかな?

先祖代々の故郷って確かに大切だけどさ
こんな劣悪な環境に残るってのも凄いよね
そーいうものなんだねぇ



 蒼い砂塵を巻き上げさせ、古びたキャバリアトレーラーが蒼き荒野を走る。
 簡素な防弾壁代わりとなった鉄板に挟まれた荷台には数機のキャバリアが同乗し、舞い上げられたラズカリクムの砂塵由来の僅かな電波障害が生み出すノイズに耳を傾けながらふたりの猟兵が通信機越しに会話を交わしていた。

「射程はともかく、命中精度だけはどうにもならねー」
「空を自由に飛ぶ相手だとねー」
 チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)の不機嫌そうな悪人面を思い浮かべてしまうぼやきに、ヘッドマウントディスプレイ式の大型ゴーグルを掛けたウルル・マーナガルム(|死神の後継者《ヴァルキュリア》・f33219)は笑みを浮かべながら相槌を送る。

「そこでさっきも言った通り、アンタの『|相棒《ワンコ》』の目を借りたいのさ。|手間賃《ロイヤリティ》はあたしの報酬の3割から応相談で……」
「んーん、お金は別にいいよ」
 何の取り留めもない分前の分配。
 金絡みのいざこざは万物のトラブルとなるのが世の常で、それは傭兵の世界でも共通の不文律である。
 今回の依頼では存亡が掛かっているだけあって、町の規模を考えればよく出せたものだとチェスカーでさえも戸惑いの色を隠せないほどの額であった。その額でも自分の分前から3割分引いても黒字であれば、騙して悪いがと何か裏がありそうなではと訝しんでしまう額を提示できる。
 しかし、その申し出をウルルは即答であっさり断った。

「……ハァ?」
「同じ猟兵同士だし、なによりボクの『オレルス』はキミが紹介してくれたこの世界の企業の力ありきで出来た機体だもん。困ったらお互い様でいいと思うんだけどなぁ」
 そう言われてしまえば、コレで貸し借りは無しという理屈になる。
 
「……いや、悪いがコイツはあたしの性分の問題だ。無償ってモンがとかく信用ならねーんでね」
 ウルルの好意は分かるが、それはそれでこれはこれ。
 こちらにも傭兵としての矜持ってものがある。
 プロとして筋を通してこそ、こちらも後腐れなく仕事が出来るってものだ。

「……分かったよぅ、ボクへの信用を買ってもらうって感じだ。手間賃はキミが提示した額から気が済むまででいいよ」
「オーライ、よろしく頼んだぜ……っと、そうこう話している間に着いたみてぇだ」
 蒼い結晶混じりの砂に半ば埋れているが、朽ちた瓦礫の跡から何処ぞの企業の工場であったことが伺える。絶えず吹き荒ぶ砂嵐によって塗装はすっかりと剥げ落ちた看板が目印となっている、最近になって発見されたプラント跡地であるポイント85。即ち85番目の白骨都市で、手つかずの資源と文明の遺産が埋もれている宝の山だ。
 まだ手つかずと言っても過言ではない都市鉱山へ住民の案内によってふたりがやってきたのは、使えそうなパーツが眠っていないか調査するため。
 既にチェスカーのビッグタイガーとウルルのオレルスには、この地に適応した防塵処理が施されている。しかし、砲の命中精度の向上や飛行手段の模索など互いに問題を抱えており、それらを解決しようとの|遺跡発掘《ディグアウト》である。

「じゃ、ボクとハティは町の人と一緒に行ってくるね」
「互いに得意分野の領分だ。ここはアタシが警戒に当たってるから、任せたぜ」
 ウルルは非武装の発掘に特化された土木用キャバリアの護衛、チェスカーはビッグターガーに要塞攻略用の野戦砲を流用させたキャノン砲が搭載されているのを活かした接近してくるオブリビオンマシンの駆逐。
 時折白骨都市全体を微動させる振動が続いたが、数刻後には両者は合流する。

「よぉ、どうだった?」
「うん! 注文されてた|多薬室式長射程砲《センチピート》に直せそうなのがあったよ。そっちは?」
「斥候らしい奴らを何機か|撃破し《ヤっ》た。やり過ごすのも手だったが、報奨金が出てりゃ行きがけの駄賃稼ぎをさせて貰ったぜ。で、アンタもお目当てのブツは見つけたか?」
「うーん、それがねぇ……」
「なら、掘り出したモンにある盾にエンジンを積んだらどうだい? スノーボードよろしく足に固定すりゃ、案外イケるかもしれねぇぜ」
「え、盾を? なんだかスノボーの板みたいな形だけど……これ飛べるのかな?」
 思いがけない提案を受け、ウルルは悩む。
 確かにそう言われれば出来そうな気もするのが悩ましいところだが、こちらに対案が無い上に期日が迫っている現状を鑑みれば試してみるしかない。
 そうして発掘されたお宝をキャバリアトレーラーの荷台に乗せ、更に重みが増した車体をインゴットエネルギーエンジンが低回転からトルクを効かせた太い排気音を唸らせながら町への岐路に向かう。
 何時しか日は傾き、蒼い砂漠の地平線が赤く染め上げられている。
 貴重な一日を発掘に費やしてしまったが、作業場と道具さえ借りれば十分巻き返せるとチェスカーが自信あり気に語れば、ウルルはその頼もしさにそうだねと相槌を返す。

「そういえば、先祖代々の故郷って確かに大切だけどさ……こんな劣悪な環境に残るってのも凄いよね。ボクだったら列車に乗ってもっと住みやすいところに行くかも」
「確かに此処はパラダイスとは言えねー。だがよ、外野にあれこれ口出されんのも面白くねー話だろ? 決める権利も義務もテメーだけのモンだ、ってな」
 如何に住みやすい土地が他にあっても、故郷はひとつしかない。
 第二、第三の故郷があるとしても、自分自身の|発祥地《ルーツ》はひとつしかない

「ま、この世界は何処に移り住もうが安住の地なんてねー。だったら、住み難かろうが慣れ親しんだ土地で骨を埋めたくなるもんだろ」
「ふーん、そーいうものなんだねぇ」
「そーいうもんさ」
 通信機越しの声から納得しきれないウルルのしかめっ面を思い浮かべつつ、チェスカーはシガレットケースから取り出した人参スティックを口に咥えると軽快にパキリと折ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ストームイーグル』

POW   :    イーグルストライク
【対ステルスセンサーを起動。】【ガンポッド】【ミサイル】【格闘攻撃】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
SPD   :    イーグルアサルト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【対ステルスセンサーを起動して】から【ガンポッドとミサイルの連射、又は格闘攻撃】を放つ。
WIZ   :    イーグルインターセプト
全身に【対隠密電波】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【感知し、ガンポッド・ミサイル・格闘攻撃】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 流星の如く現れた『ザ・スター』の退去勧告を告げられてから10日目。
 ミドの町の住民の総意を伝えるべく、町の郊外には多数のキャバリアが並んでいた。
 ひとつは肩に増設できるサブアームユニットを流用して取り付けられた四基のバインダーにジェットホバーエンジンが取り付けられた、量産型キャバリアのピースメーカー。
 もうひとつは数が限られるジェットホバーエンジンを取り外されたものの、一定の高度までしか届かないにしろ高射砲としての援護砲撃を可能であるバントライン砲を装備し、自らを対空砲台とさせる為にセンサー類を強化したピースメーカー。
 そして、各々の飛行手段を準備した猟兵たち。彼らが自分たちの答えを示す姿をせめて見送ろうと、地下シェルターへ避難する前の住民たちがその瞬間を待ち望んでいた。

「時間だ……イータ、シータ、ラムダ、出るぞ!」
 ユプシロンの号令の元、ありあわせの部材のみで作られたフライトユニットを増設されたピースメーカーがキィンと甲高い響きのエンジン音を一斉に唸らせる。飛行用に改造されたジェットホバーエンジンにより圧縮された空気が熱風となり、蒼い砂塵を舞い上げさせると周囲の視界は蒼く染め上がる。
 一種の煙幕効果を狙ったものであるが、ザ・スターによっては小賢しい小細工でしかなかろう。だが、例え報復としてエナジー・ゲートを解除されて|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》による禁忌を犯した者たちへの裁きの光が下されようとも、ミドの町の住民はこの町と共に殉ずる覚悟はしている。
 百年ぶりに空へと羽ばたこうとするユプシロンたちレプリカントも、自分たちが産んでくれた母なるプラントと育ててくれた父なる故郷を守るため、今飛び上がった──!


『──愚かなことよ。大人しく従っていれば命だけは助かっていたものを……』
 地上を見下ろす神の視点であり座でもある、ここギルガランド大陸の最高峰でミドの町からも大気の条件次第では望むことができる北に聳える大陸の屋根『アトラウス山脈』の頂よりも遥か高い上空1万5千メートル。高度40万メートルの衛星軌道上で地上に目を光らせる殲禍炎剣による砲撃からオゾン層を守るべく、エナジー・ゲートを展開していたファーストヒーロー『ザ・スター』が人々の愚かさを嘆くように呟く。
 彼の見立てでは、生命の生命維持活動が不可能な蒼き死の荒野の地下深くで今も稼働する地下プラント群が戦神アシュラの複製体『アシュラレディ』の製造工場であると睨んでいた。だが、数多くの軍需企業が共同出資した|巨大な秘密地下工場《ジオフロント》として外敵の侵入はおよび核ミサイルにも耐えられる特殊装甲板によって形成された人工地盤は百年前の大災害に耐え、今も暴かれずにいる。
 ザ・スターとしても人類の業により汚染され尽くされた地での探索は困難を極めると考え、その解決法として利用するに至ったのが殲禍炎剣による砲撃。百年前は地上施設のみを焼き払って壊滅させた程度で留まったが、ザ・スター自身が高速飛行することでそれよりも苛烈な砲撃を誘発させて強固極まりない特殊装甲板に侵入孔を開けるという計画であったが……この計画にひとつの障害があった。
 ミドの町である。彼らは文明の遺物に縋り、細々とこの地で生きながらえていた。
 己の使命に殉ずるならば、彼らは尊き必要な犠牲であろう。
 しかし、ファーストヒーローとしての誇りと矜持が|頭の中で語りかけた《・・・・・・・・・》。

 ──十を切り捨て百を救い上げるのではなく、百を救って十も救うべきだ。

 ザ・ヒーローとして、それは|理解《わか》っている。
 遥か昔、若きジャスティス・ワンに|この力《エナジー・ゲート》を授ける際、例え禁忌を破ることになろうとも己の正義に従い貫けを説いたのはこの自分自身だ。
 倒すべき宿敵が世界の|理《ことわり》の外に存在するため、我らファーストヒーローは『自身の歴史介入』を禁じることで、世界の外から宿敵を探していた。
 だが、ザ・スターは己の正義に従い禁忌を破った。
 その結果ジャスティス・ワンを救うことになり、誇り高きファーストヒーローの精神は受け継がれて継承された。

『……だが、それは所詮……理想だ』
 理想と現実。
 ヒーローならば誰もが悩み葛藤する世界の|理《ことわり》。
 クロムキャバリアでは誰もが平和と平穏な世界を望むが、それは戦争と闘争により血で血を洗い続ける現実がある。
 まさにザ・ヒーローの葛藤を体現したかのような世界であり、アシュラレディの製造工場を破壊するべく無辜の人々を殺めるなどヒーローとして言語道断。
 そんな葛藤の末、彼は苦渋の決断を下した。

 ……自らを悪とし、世界を救う。
 例えプラントを破壊した結果、この世界において自身が悪になろうとも、アシュラレディの製造工場を破壊することで世界が救われるのならば、喜んで引き受けよう。
 骸の海を永きに渡り自問自答した末にザ・スターはオブリビオンと化して目的が手段と成り果てたが、まだ彼の心の奥にはヒーローとしての気高き精神が僅かに輝く。
 頭の中で語りかける声との議論で妥協し、10日の猶予を与えたという次第だ。
 だが、ミドの町の住民らは反発した。
 アシュラレディの件はファーストヒーローの誓いによる伏せていたが、仮に語ったとしても理解を得られなかったのかもしれない。
 ヒーローとは孤独なもの。正義の理念を理解と賛同を得ねば、人々の悪となる。

『約束を違えた報復としてこのままエナジー・ゲートを解除すれば、瞬く間に地上は壊滅となろう。……だが』
 己の|正義《こころ》が頭の中で語りかける。
 まだ猶予はある。最終勧告をするべきだと──。

『……よかろう。これが最後の警告だ』
 外界で渦巻く蒼い砂嵐を睨みつけながら、ザ・スターは掌をエナジー・ゲートに向けて掲げた。
 すると、エナジー・ゲートから機械のワシ型キャバリアが躍り出る。
 鳥とは古きより神々の使いとして、数多くの神話や伝承で語られる存在だ。
 機械音の嘶きをあげた鉄の鳥は羽状の可変翼による主翼を展開すると、ブースターを噴射させながら粒子状のラズカリクムが擦れ合いぶつかり合うことで強力な電波障害が起きている蒼き砂嵐の中へと突入した。
 ストームイーグルと呼称される御使いは、主であるザ・ヒーローの意思を実力行使で伝えるべくザ・スターを目指す猟兵とユプシロンらを強襲するのであった。
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

迷った末に、元々乗り慣れていたガンシップ『グリーンフラッシュ』の強化型、『グリーンフラッシュ改』を作ってもらいます。ミドの住民をはじめとした他の多くの参加者たちはキャバリアを飛行させると踏んでの裏読みもあります。急造式の飛行キャバリアとは桁違いの速さで不規則に飛び回りながら、ストームイーグルが量産型キャバリア部隊に攻撃を仕掛けようとすれば遊撃機として横腹を突きながら妨害し、自分に狙いを定めれば銃撃をかいくぐりながら的を自分に絞らせ、キャバリア部隊の上昇を間接的に助けます。【闘龍衝破撃】を応用したソニックブームで足止めすることも忘れません。



「……思ったよりも揺れるな」
 ユプシロンらミドの町のパイロットらが着ていた同じ耐圧服を着たメディアが、改修されたグリーンフラッシュの操縦桿を握り締めて蒼い嵐の中を飛ぶ。
 彼女は雲海に無数の浮遊大陸が浮かぶ世界の出身で所謂高地馴れしている身体だが、ここまでの急激な高度の変化には馴れていない。
 線路を利用したレールの上に鉄板を敷いたのみな即席の滑走路から飛び立ったグリーンフラッシュが高度を上げれば、気圧の変化に伴って生じる耳鳴りがキィンと鳴った。
 ブルーアルカディアでは既に上空であり気圧の変化はそうそう生じないのだが、ここクロムキャバリアにおいては地上からブルーアルカディアの浮遊大陸を目指すようなものである。これにより鼓膜の内側と外側で気圧の差が生じ、内側の気圧の方が外側よりも高くなるため、鼓膜が外側に膨らむような状態となっている。
 よく飛行機に乗ると起きる現象であるが、旅客機と戦闘機では一秒間に上昇する高度差は歴然であって体感する耳鳴りも激しさを増す。それを軽減させるため、気圧を一定に保つ気密性の高いパイロットスーツを着れば多少の耳鳴り程度で抑えられるのはメディアにとって新たな知見となり得たはずだ。

「ネオンの操縦方法だと、ここまで着込まないしね」
 何とも動きづらくむせそうな耐圧服だが、内部を満たす空気が天然の断熱材として機能していれば地上とさほど変わらない快適さがある。不満を言えば頭も覗き窓を除けばすっぽり覆われてしまってる状態。視界が狭まれてしまってる点だが、この際は我儘を言っていられない。微小なラズカリクムがぶつかり合う中で生じた電波障害により、雑音混じりでユプシロンからの通信が入ったからだ。

『敵…機……たぞ!』
 敵機が来た。
 ザ・スターが強襲してきた可能性もよぎるが、こうも電波障害が強ければレーダーやセンサーに頼らず自らの目で確信するしかない。
 蒼い砂嵐の中、目を細めながらメディアが四周を警戒しながらグリーンフラッシュ改を旋回させると光る物が見える。
 それはユプシロンたちミドの町の勇士らが操る四枚羽が付けられたピースメーカーであり、四基のエンジンを巧みに操作して不慣れながらも空中戦を繰り広げていた。

「あれか!」
 唸るマシンガンより迸る火線の先に見える銀の翼。
 ラズカリクムの粒子が生み出す電波障害、更にはユーベルコードと同等の対隠密電波を帯びることでセンサーでは感知されない機械の大鷲、ザ・スターの意思を伝える使いのストームイーグル。
 飛ぶために特化された機体と急造式の飛行キャバリアと比べれば、まさに天と地の差。
 如何に野良オブリビオンマシンとの戦闘で腕を慣らした歴戦のパイロットでさえも手球に取る大鷲は、隙を見るや否やガンポッドによる射撃で飛行用エンジンが搭載されているバインダーを狙って襲っていた。

『クソ……れた! 撤退……る!』
 ストームイーグルは一機だけではなく、数機も居る。
 一機に気を取られたラムダ機が背後を取られ、すれ違いざまの脚部によるクローアームの攻撃で機体とバインダーを接続するサブアームユニットが損壊されたらしい。
 バインダーによって飛行用エンジンが攻撃からある程度守られる設計であるが、急造故に剥き出しとなった接続部が最大の弱点であった。
 このままでは断裂の危険性があると判断したラムダ機は、せめてもの反撃にとありったけの銃弾をばら撒きながら下降して行き、対空砲撃支援用信号弾であるフレアをこれでもかと放出しながら消えていく。
 それを合図に地上からの対空支援が始まった。
 ラズカリクムによる電波障害によって電子攻撃を受けてレーダーが使えない状況であるものの、地上に控えたピースメーカーのモノアイに接続される形で搭載された強化型センサーによって鳥状の熱源が捉えられる。可能な限り味方への被害を抑えるべくタイミングを見計らい、雷鳴を思わせる砲撃音を地上に鳴り響かせながら対空砲撃が敢行される。

「援護が始まったようだね!」
 キャバリアの装甲ならば多少のダメージは抑えられるが、メディアが操るグリーンフラッシュにとって榴弾がバラ撒く微細な破片は致命傷へとなりうる。天使核エンジンの出力を上げながら速度を増すことで生じるGの増加による身体の負荷に奥歯を噛み締めながら耐えつつ、メディアは受ける風圧で固くなった操縦桿を力の限り引き絞る。
 だが、敵もさるものであって、対空攻撃による榴弾が接近するのを感知すれば散開して行き、磁気感応信管によって炸裂した対空榴弾の脅威から逃れる。

「逃がさないよ!」
 蒼い砂塵の中に消えていくストームイーグルの一機を逃さまいと、メディアはよりじゃじゃ馬さが増したガンシップで追跡する。
 あちらは飛行に特化した大鷲なら、こちらはより飛行に特化した形状の戦闘機だ。
 お互いの距離は徐々に詰められていき、蒼い砂塵が薄まったことでストームイーグルの背後を取って照準器にその姿を収めれば搭載された機関砲が火を吹く。
 そして、この銃撃には自らのユーベルコード『闘龍衝破撃』が付与されている。
 機関砲弾が外れようとも、ソニックブームに近い衝撃波が機体にショックを与えて体勢を崩す。メディアの狙いは見事当たり、体勢を取り直そうと一時的に速度を落としたストームイーグルのブースターユニットに照準を合わせ、操縦桿に取り付けられた引き金を強く絞る。

「やった!」
 弾は吸い寄せられるようにブースターユニットに命中した。
 ユニットから火が噴き出せば、筒状の燃料タンクに引火したのだろうか。
 激しい爆発が起こって、機械の大鷲は四散して残骸となって落下していく。

「よぉし、この調子で撃墜させながら上昇だ」
 無数の計器類に混じってある高度計を一瞥すれば、まだ高度はザ・スターとの交戦が想定されている1万メートルにも満たない。
 その間にどれだけの仲間が残るのか……道半ば撤退せざるを得なかったラムダの無念を晴らすべく、グリーンフラッシュ改を旋回させて新たな敵機に狙いを絞るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【渡り禽】アドリブ改変歓迎

さぁてここからは前哨戦と言ったところかねぇ?
ご丁寧にフォルムを鳥に寄せてきやがって……
いいさ、アタシら渡り禽で思う存分食い荒らしてやらぁ!

リフター装備のOveredで『空中戦』を挑みながら、奴らの対ステルスセンサーに『ジャミング』を仕掛けるよ。
そうして電子戦のリソースを磨り潰しながら、『ハッキング』も仕掛けてエナジーゲート関連の情報を『情報収集』する。
ここまでが裏の戦い、ドンパチを忘れてるわけじゃあないよ!
”英霊”をフル射出、『弾幕』を張りながらマルチプルブラスターを横薙ぎに斉射し『範囲攻撃』だ。
やけっぱちで吶喊してきたならクローの『カウンター』で返り討ちにしてやる!


久遠寺・遥翔
【渡り禽】
御使いねぇ……いや、ありゃ鳥だな
そして翼はお前達だけの物じゃないってことを教えてやる

イグニシオンに[騎乗]しての[空中戦]
[メカニック]で仕込んでおいた観測機を起動し、エナジー・ゲートを観測を並行して進める
今は何もわからなくてもここで集めたデータが後の殲禍炎剣攻略に役立つこともあるかもしれない

そして戦闘ではUCを発動し、仲間と連携しての超高速機動戦闘を行う
この戦場を飛び回り焔の太刀ですれ違いざまに鳥を斬り裂いて落としていく[範囲攻撃]
敵の攻撃は[心眼]で[見切り]、[鉄壁]の[オーラ防御]を展開して敵の射撃をこちらに届く前に爆散させつつ格闘攻撃は[残像]を打たせて回避


星川・アイ
【渡り禽】 アドリブ歓迎
いよいよこの日が来たか……
防塵処理(武器改造)も済ませたし、後は実行あるのみだね

リンドヴルムで一気に高高度まで上昇、艦橋部に接続されたジェナス-VspⅡを分離して空中戦だよ
敵集団の攻撃を見切りつつサラマンダの弾幕で突破口をこじ開け、統制を乱した所でUCをキメるよ
その間にリンドヴルムからスカイアイを射出、エナジー・ゲートのデータを集めていくね(情報収集)



 蒼き砂塵に姿を隠し、黒一色に走った白い稲妻の中に翼を広げた鴉が意匠された『渡り禽』の|紋章《エンブレム》が施された|飛行戦艦《リンドヴルム》が飛翔する。
 舞い上げられた蒼い結晶が視界はおろか電波も遮るが、リンドヴルムの艦橋部に接続されたジェナス-VspⅡから電脳魔術をもってしてアイは索敵を行う。
 ザ・スターより告げられた立ち退きまで与えられた10日間、それを『たった』と受け取るか『もある』と受け取るかは個々によって違うだろう。
 特に渡り禽より派兵された三人とって、現地の環境に合わせた防塵処理の他にもエナジー・ゲートが展開されていることによる高機動空中戦の習熟に厄介な性質を持つ微粒子状となったラズカルクムの結晶に対する解析も捗ったと言ったところだ。
 確かに強力な電波障害は発生するものの、リンドヴルムを中心として偵察用小型無人航空機『|EPUAV-19R《スカイアイ》』を通信の中継機とすればある程度改善される。
 尤も、あくまでも改善程度なので、リンドヴルムとスカイアイから一定の距離を取れば通信が取れなくなる。戦車や航空機と言った現代兵器は元より、キャバリアという機動兵器に取っても電波を介した通信回線による即時連絡は命綱であり、連携を断たれることは死活問題でもある。
 故に彼らは敵の急襲を受けて戦線から離脱した同志を収容できなかったことを悔やむ。
 願わくば、無事に地上へと生還できたことを願うばかりだ。

「さぁて、ここからは前哨戦と言ったところかねぇ?」
 スカイアイが捉えた機影がコンソールに表示されると、多喜はこの数日間に渡って演練した特訓の日々を思い出す。重力化の環境故に身体への負荷も掛かりやすいというのもあって、脳みそが上下左右に揺さぶられ、身体がバキバキになりそうだった日々も今となっては懐かしい。最終日は思う存分に英気を養ったので、心身ともに充電は完了済みだ。

「御使いねぇ……いや、ありゃ鳥だな」
 偵察機が捉えた姿に遥翔は息衝く。
 と言うのも、他の小国家に染み出したザ・スターが繰り出してきたのはフライト・パックを装備した人型機であったからだ。
 随分と見くびられた物だという感情が生まれるが、そう言った慢心こそが最大の敵となるのは誰より自分自身がよく知っている。
 人型兵器でないからと侮る理由が何処にある。
 故に遥翔は全力をもって倒すのみ。
 ラズカルクムの微粒子により電波障害が発生しており、満足にセンサーによる感知が出来ずとも、それは相手も同じなはず。
 有視界戦闘となるのはエナジー・ゲートの観測のために打ち出した観測機のデータが送られてこないのが何よりの証明であり、おそらくはザ・スターかあの鳥たちに迎撃されたのも予想される。だからこそ、エナジー・ゲートが何たるかを調べるためにも今はこの蒼い電波障害の嵐を突破せねばであった。

「本当に凄い電波障害だよね。まるでロボットアニメの世界みたい」
 アイがそう言うのも、人型ロボット創作物では何故人型ロボット兵器が主力兵器となりうるかが常に命題となるからだ。
 例えば、このクロムキャバリアでは暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』が挙げられる。これにより航空機はおろか大陸弾道ミサイルも迎撃されるという事態に陥り、結果的にロボット工学の発展が促されて今に至る。
 作品によって理由は千差万別だが、有名どころでは未知の粒子が生み出す強力な電波障害により既存の誘導兵器やレーダー類が封じられたという理由か。それを打破するために新兵器であるロボット兵器が作り出されたというのが概ねの約束であるが、いざ似たような事態に直面するとよく考えたものだと感心してしまう。

「これはアニメじゃないよ、現実さ。ご丁寧にフォルムを鳥に寄せてきやがって……いいさ、アタシら渡り禽で思う存分食い荒らしてやらぁ!」
 多喜は吼えるように息巻き、リンドヴルムの甲板に控えていたリフターを装備したOveredを出撃させる。彼女の身体から伝達するサイキックエナジーで機体に回路めいた線が浮かび上がり、唯でさえ激しい電波障害の嵐へ更なるジャミングを展開する。

「確かにだ。そして翼はお前たちだけの物じゃないってことを教えてやる……行くぜ相棒!」
 多喜に続き、遥翔が闘争心を焔に変えてイグニシオンが翔ぶ。
 この視界の悪さなら、機体の随所より滾る焔が目に見えるビーコン代わりとして役割を果たそう。それは鉄の大鷲も同じで、獲物を見逃さない鷲の目がこの焔を目印に押し寄せよう。現に一機のストームイーグルが対ステルスセンサーを起動させながらガンポッドとミサイルの連射を行って来ているが、センサーで感知されずともその火線の先に敵機が存在している。
 ならば、ユーベルコードの滾りと共に焔を迸らせ、超高速機動戦闘が生み出す煌きとなって敵機とすれ違い、焔の太刀で斬り裂くのみ。
 他のストームイーグルが熱源感知式のミサイルを放って応戦しようとも、吹き出される焔がイグニシオンの形状を模れば、さながら残像の如し。本体も紛う熱量に熱源感知されたミサイルが焔に飛び込めば、その熱によって信管が起爆して誘爆されてしまう。
 人工知能からすれば正しく質量のある分身そのものだが、人間の目から見れば簡単なトリックに過ぎない、まさしく生命の埒外たる存在であればこその|業《わざ》だ。

「流石教官やってくれただけの実力さ、久遠寺さん。恐れ入谷の鬼子母神だがねェ、しごかれたアタシも魅入ってしまうほどだが、ドンパチを忘れてるわけじゃあない。出し惜しみはナシだ、押し切らせてもらうよッ!」
 朧げに感知される機影の群れに向け、多喜は昂らせた闘争心と共にサイキックエナジーを迸らせ、超常の電流が思念波となってレーザー発射機構を搭載した3基のフローティングシールドユニット『BS-F(JD)シールディングオービット"Einherjar"』が射出された。
 電波障害がノイズとなって頭の中に入ってきそうだが、感情の昂ぶりが不快な雑音を掻き消してしまう。
 ストームイーグルがこれらの端末を感知すれば回避運動を始めようとするが、それを見越して手にしているマルチプルブラスターによる銃撃が繰り出される。新たな射線から逃れようと軌道を変えるストームイーグルであったが、それを見越した多喜の思考がEinherjarと伝われば死角より間隙を突いていくる。
 一発一発は重い一撃で無いが、立て続けに当たれば飛行型キャバリアには致命的なダメージとなる。現にストームイーグルの一機がバランスを保てなくなり、それを狙っての連撃に続く連撃で爆散する。

「まだまだ来るよ! こうなったら、アイも出撃だよ!」
 高機動戦闘するキャバリアを相手にしては一方的にやられるだけだと判断したストームイーグルの群れが、渡り禽の旗艦たるリンドヴルムに狙いを変える。
 繰り出されるミサイルはリンドヴルムの対空兵装が迎撃に当たるが、攻撃機のストームイーグルはちょこまかと避けていく。このままではやられるだけだと判断したアイが、艦橋部として艦と接続していたジェナス-VspⅡを切り離して出撃する。
 その際に大口径の四銃身が束ねれたキャバリア用手持ち式ガトリングガン『RS-44XG サラマンダ』を剥き出しの武器ラックから掴み取っており、弾幕の嵐によってストームイーグルの編隊が崩される。

『――これで、墜とす!』
 そして、間髪入れずに繰り出されるUCは『クトネリシカ・ドライブ』。
 瞬間的な加速により生じるGに身体がシートに深く沈み込むが、ビデオゲームさながらのモニター映像がプロゲーマー魂をくすぐってくる。
 最大加速の中で片手に装備していたスレイプニルの銃口からビームソードを展開し、一気呵成にビームの残光を残して斬り抜く。

 かくして渡り禽一行はエナジー・ゲートの謎を解明して探るべく、電波障害の嵐を抜けた先であるザ・スターが待ち構える高高度空域を目指し、敵機を迎撃しながら上昇し続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
無辜の民を殺すのは許さないっす!

環境対策に結界術展開、キャバリアをUC『収納鏡』にしまって一章で入手したエアーバイクに乗り、化術で迷彩しつつ高高度に向け飛行
敵に気づかれて手裏剣で迎撃しつつキャバリア準備
「シーケンス省略、テングリーフ高速起動!行くっすよ!シューティングスター展開!」

敵の攻撃を第六感で見切りながら推力移動で高速度飛行することで敵を後ろにおびき寄せ、敵の不調狙いでラズカルクムばらまき
空中に張った結界術を蹴りながら高速ターンし、化術で残像分身しつつ一直線になった敵にUC『流星突撃槍』
攻撃は結界術で防ぎ、衝撃波で体勢を崩した敵にUC『必殺武装召喚』で出したレーザーガトリングで撃ち落とす



「プラント跡地巡りしている中でテングリーフ・ホワイトに防塵処理を施して貰ったっすけど……コイツのじゃじゃ馬っぷりが気に入ったっす」
 数日間に渡る廃墟同然のプラント跡地調査で乗り回していたエアーバイクだったが、こうも乗り馴れてしまえばザ・スターを相手にするには体格差のあるキャバリアよりもこちらの方が戦いやすいのではという気も芽生えてしまう。
 しかし、だからと言ってこれひとつだけというのも不安でもあり、ひとまずキャバリアは雲外鏡と呼ばれる古びた鏡の中にある空間の歪んだ不思議な無人の屋敷の中に収容。
 あとは自らの呼びかけに応じて自動操縦で起動させれば如何なる事態に直面しても対応可能としていたが、まさかこうもすぐ急変するものとは。

「やっぱり、素直に上がらせて貰えないっすか」
 蒼い砂塵の中から甲高いエンジン音を唸らせるストームイーグルが横切ると、熱を帯びた空気の波でエアーバイクが揺れる。結界術により周囲に空気の層を作ることによってラズカルクムによる影響を避けていたが、まさかこれが空気の壁として機能しようとは。
 辛うじてエアーバイクが揺れる程度だったが、次はこの程度では済まされまい。
 獲物を認識したストームイーグルがブースターから迸る青白い噴炎で軌道を描き、再びこちらへと向き直す。

「シーケンス省略、テングリーフ高速起動! 行くっすよ! シューティングスター展開!」
 このままでは機銃による攻撃かすれ違いざまでの衝撃波による振り落とされると判断した衣更着は、エアーバイクを急減速させると雲外鏡を前に放り投げた。すると、その姿は蒼い砂塵の嵐に消えてしまう。
 そう、文字通り消えたのだ。
 既にエアーバイクの熱せされたエンジンに照準を合わせてた鉄の大鷲が索敵を行いながら消失点を通過しようとしたその時、それは唐突に姿を現した。

「流星の化身……天狗の力を借りて、流星のごときランスチャージっす!」
 鏡越しに発した声の音声認識でクロムキャバリア「テングリーフ・ホワイト」は起動して、流星の名を冠する大型ブースターも既に温められている。
 エアーバイクごと歪んだ空間内へと転移し、乗り換えれば空間内を加速しながら鏡を通して現実世界へと転送。
 ともすれば、既に衣更着が消えたポイントを通過しているストームイーグルの背後を取る形となり、蒼い砂塵の中から反応を出したキャバリアの姿に人工知能は錯乱する。
 何とか振り切ろうとブースターの出力を上げるが、無限とも言えるマヨヒガ空間内で十分に加速しきったテングリーフ・ホワイトを振り切るには時間も距離も足らない。
 ならばと、テングリーフ・ホワイトの背後を取るべく旋回する。速度が速ければ速いほど描くこの長さは大きくなる巴戦において、確実性がある行動と言えよう。

「甘いっすね! おいらの結界術はただ護るだけの物じゃないと教えてやるっす!」
 高速飛行形態のテングリーフ・ホワイトが脚部のみを人型形態の物に変えると、前面に展開した結界術による力場を踏み台として蹴り上げる。
 同時に機体が軋む音と共に強力なGの反動が負荷となって衣更着の身体を押しつぶそうとするが、忍者の並々ならぬ修行に比べれば可愛いものだ。
 奥歯を噛み締めながら操縦桿を握り、視界の縁が徐々に黒ずんでいくブラックアウトに耐えきった衣更着は、結界術を足場として蹴り上げた反動を利用して更に加速する。
 物理法則もへったくれもない軌道変更を受けて、ストームイーグルも逃れようとブースターを加速させようとしたが、ここで機体に不調が生じてしまう。
 そう、ラズカルクムによる影響だ。
 吸気口から吸入された粒子サイズのラズカルクムが蒸散し、燃えきらなかった物がエンジン内やブースターに付着して融合。これにより材質が変質した以外にも計器も狂って異常値を検出したことで|安全装置《リミッター》が作動したのだ。
 急激に速度が低下したストームイーグルに照準を合わせ、テングリーフ・ホワイトは尾翼から放出される粒子を放ちながら一筋の流星となった。

「やぁぁぁってやるっす!」
 それはユーベルコードの輝きとなって、結界術が機体全体を覆う。
 結界に守られたテングリーフ・ホワイトが超音速の衝撃波を伴う強力なランスチャージで激突すれば、その衝撃でブースターを限界まで噴射させていたストームイーグルは爆破四散!
 赤々とした爆炎を突っ切ったテングリーフ・ホワイトには傷一つも付いておらず、次なるストームイーグルに狙いを定めると再び加速させ撃破していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チェスカー・アーマライト
砲身周りに複数付いた薬室を順に点火させる事で超高初速と長射程を実現した|センチピード《多薬室式長射程砲》
一応理屈の上なら成層圏に届くコイツを主砲に積み替えたが、なんせ突貫作業だ
後はぶっつけ本番でデータ取りながら調整するっきゃねー
頼んだぜ、猟犬サンよ

センチピードが嵩張って動きづらいんで固定砲台に徹する
脚部パイルを起動して機体を固定
オレルスを追って射線に乗ったヤツから順繰りにブチ抜いてやる

砲撃の度に爆音と反動でエグいくらい機体が震える
砲身自体は無事でも、機体との接続部だって歪んでくる
数発撃つごとに機体から降りて|ご機嫌取り《メンテナンス》だ
ったく、とんでもねージャジャ馬を起こしちまったな
(笑う)


ウルル・マーナガルム
わおわおーん!
(楽しげに遠吠えの真似)

盾っぽくてスノーボードみたいな飛行ユニット
仮で『イチイバル』って呼ぶね
結構頑丈そうな感じだ

ボクのお仕事は敵を撹乱して囮になる事
ビッグタイガーの射線上へ敵機を乗らせる事
そして、センチピードの命中率上昇の為の〝眼〟になる事
オレルスに同乗してるハティが砲撃のブレとかを計測、正確な弾道予測が出来るよう順次情報を更新
チェスカーの傍にはハティの子機を待機させてデータリンク
ボクのゴーグルと同じ様な感じで狙撃用FCSとしてサポートするよ

対ステルスセンサー……
ステルス状態の機体を優先的に狙うって事かな?
見つかる前提でホログラム展開
ライフルで牽制射撃しながら回避機動を続けるよ



 迫る鉄の大鷲の群れを撃墜しつつ、猟兵たちはより上空を目指す。
 時間が経つにつれて飛行の際に生じた粉塵は収まりつつあり、視界と通信を遮っていたラズカルクムの微細な粒子による煙幕の隙間から徐々にだが太陽が差し込む光がモニターに入り込む。

「さぁて、ここからが正念場だ」
 人型キャバリアに変型する旧式重戦車のビッグタイガー。
 砲撃戦に特化したこれを飛ばすにはフライトユニットが幾つあっても足らず、例え調達しようとも背負った砲身による砲撃が生み出す反動で満足に照準を合わすことは叶わないだろう。
 ならばと、チェスカーは敢えて飛ばずに地上に残った。
 隣で対空砲撃支援を行っている量産型キャバリア『ピースメーカー』が抱える巨砲『バントライン砲』ですら届かぬ空域の成層圏。
 郊外のプラント跡地で掘り出した|多薬室式長射程砲《センチピード》。
 砲身側面から枝状に飛び出た複数の装薬燃焼室を持つ特異な形状により『ムカデ砲』とも呼ばれる物で、原理としては砲弾となる有翼高性能炸薬ロケット弾を長い砲身の側面に等間隔に設けられた薬室内に充填された装薬を電気点火により下から順に点火。これによってロケット弾のみでは得られない高圧ガスにより驚異的な発射速度をもってして毎秒1800メートルにも及ぶ砲口初速を生じさせ、有効射程を150キロメートルすら超える長距離砲撃が可能となる。
 キャバリアが誕生されるより遥か昔、歩兵と野砲が主体であった時代に考案された物だが、この手の巨大砲は解決すべき問題が当時に技術では山積するために研究開発のみで終わった。が、科学技術が発展するに連れてこれらの問題は解決されるとなると、弾道ミサイルを保有できない第三国向けの安価な大陸弾道兵器として、または宇宙空間に物資を輸送するマスドライバーとしての研究が盛んとなった……が、暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』による被害が拡大すれば再びに廃れるどころか禁忌の技術として闇へと葬られる。殲禍炎剣の破壊を試みた者らが尽く蒸発すれば無理の無い話だ。
 これもかつてあった企業がキャバリア搭載用途して研究開発したものであろうが、如何せん歳月が経ち過ぎている。砲身が裂けてしまう事態は元より、補修に思ったより時間が掛かったことでほぼ突貫工事の積み替えとなった。

「後はぶっつけ本番でデータ取りながら調整するっきゃねー……頼んだぜ、猟犬サンよ」
 オマカセクダサイと機械的な合成音声でチェスカーに応えたのは、ちょこんとお行儀よく伏せながらコードで繋がれた四脚機動型スポッターハウンド『ハティ』の子機である。
 これは先日に|相棒《ウルル》より借り受けた物で、ご主人様は今上空で高高度の空をお楽しみに違いない。
 そろそろ電波状況が改善したと見計らって隣で砲撃音が炸裂して機体が揺れる中、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドセットで無線を飛ばすとけたたましい叫び声がチェスカーの鼓膜を突き抜けて脳みそを揺さぶる。

「わおわおーん!」
「……っるセェな、オイ! 犬っころみてぇに叫んでねぇで、状況を報告しやがれ!!」
「あはは、ゴメンゴメン。『イチイバル』が思った以上に快調でさ。お陰で何羽も撃ち落としたところさ」
 多薬室式長射程砲と同じ発掘ポイントで掘り出したキャバリア用のシールドに航空用エンジンを積んだフライトユニット、イチイバル。
 最初は本当に大丈夫なのかと訝しんでいたウルルだったが、オレルスに同乗しているハティと同期させれば思った以上の性能を発揮したと自慢し出す。
 謂わば空中版の騎兵と騎馬。
 元は盾だけあって、キャバリアの重量に耐えきる構造と軽量さによる余剰揚力。
 そして、軍人一族の出身でか偉大なる祖父の才能を色濃く受け継ぐ|天才肌《サラブレッド》である彼女は、瞬く間にキャバリア戦におけるコツを掴んだ。今ではオレルスをイチイバルより|離脱《ジャンプ》させ、空中機動をしつつ死角より攻撃してはイチイバルに戻る超高等戦術もやってのけているとのこと。
 何ともまぁ楽しげそうな声でエゲツねぇとこをやってんなという顔を浮かべながらウルルの報告を受けていたチェスカーだったが、このままだと埒が明かないと自慢話を遮る形で本題を切り出す。

「で、こっちの獲物は残してるんだろーな?」
「勿論! いい感じにそっちの射線に誘導したから確認してよー」
 どれどれとビッグタイガーの観測用カメラアイを絞らせて上空を仰げば、オレルスのビーコン反応の付近で鳥状の物体が飛行しているのが見える。
 だが、他の観測センサーは反応せず、コイツはステルス機の類だと確証する。

「ちっ、中々洒落た的を準備してくれたじゃねぇか。猟犬サンよ、補正頼むぜ」
 確かに地上から狙えば目視に頼らざるを得ないだろう。
 そこでオレルスが〝眼〟となり、対象との距離、ガンナーとなるビッグタイガーを謂わば三角測量という形で結べば不可能という訳でもない。
 そうとは知らずに、ストームイーグルは執拗にガンポッドを唸らせながらオレルスを追走し、ウルルは操縦に専念しながら観測と処理はハティが行う。
 微細にセンチピートの砲口を微調整し、気温や湿度、風向きなどのデータが上空より絶えず送られて修正された情報を元に第一射目が放たれる。
 バントライン砲の比でない砲火が視界を灼き、数秒の内に高高度の高さまでロケット弾は到達したが、その状況をその目で見たウルルは残念そうな声で通信を送る。

「ああ、惜しい! 逸れちゃったよ!!」
「やっぱりか。一発目でキメれば越したものじゃないが、現実はそんなもんさ」
 元より調整ありきの試射だ。
 砲撃による爆音と反動もチェスカーの予想を遥かに超えるので、狙いは良くても土台がブレてしまえばそうなろう。
 ならばと、脚部パイルを打ち直して、より反動を和らげる体勢を強める。
 それに初弾で砲身は目玉焼きが作れるまでに熱を帯び、熱膨張したことで〝たれて〟いる状態が変わった。
 戦車乗りなら感覚で分かる戦車個別の〝クセ〟。
 ニ発、三発となれば更に〝たれが大きく〟なり、弾着点が変わっていく。
 故にベテランの戦車乗りは知り尽くした自分の戦車を何が何でも手放さない。
 ハティより送られるデータを元に自らの感で1ミル単位の手動調整をし、ニ射、三射、四射と行う。これらも外れれば、カートリッジ式の多薬室に収まってる装薬は一発分。

「……だいたい〝クセ〟は掴めた。コイツでキメてやるさ!」
 そして、五射目。
 相変わらず砲炎で視界が遮られて目標が隠れてしまうが、確証は確かにあった。
 ユーベルコードの域にまで高められた腕と感。
 それが正しかったことは、まるで自分のようにはしゃぐウルルの喜びに満ちた無線が証明していた。

「すごい! すごいよチェスカー! ど真ん中に命中したよ!!」
「はっ、あたしを誰だと思ってるんだ。さて、これで砲身共々カンバンだ。装填と機体のチェックをするから、その間に新しい獲物を見つけて呼び込んで気な」
「うん、任せて!」
 通信を終えると、緊張より一時的に解放されたチェスカーが大きく息を吐く。
 ハッチを開ければ、町のジャンク屋組合らが作業用キャバリアに乗りながら熱を帯びたセンチピートの薬室交換を行っている。
 チェスカー自身も機体に不調が生じていないか|ご機嫌取り《メンテナンス》を見て回るが、機体と砲身の接続部が見事歪んでいる。
 勿論、このような事態は想定済みだったので速やかに交換作業が行われるが、コックピット内に戻ると人参スティックを取り出して一時の休憩に洒落込む。
 
「……ったく、とんでもねージャジャ馬を起こしちまったな」
 想像を超える化け物を掘り出したものだと、彼女の乾いた笑い声が狭いコックピット内を響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ファーストヒーロー『ザ・スター』』

POW   :    バスター・ナックル
【拳】を構えて【エナジー・ゲートから降り注ぐ光】を纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つ。
SPD   :    スーパー・ノヴァ
自身の【装備】を【輝く「超新星モード」】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ   :    レミニセンス・ザ・ワールド
常識的な行動を囁く【「ザ・スターの心」の幻影】と、非常識な行動を囁く【「ザ・スターの肉体」の幻影】が現れる。[「ザ・スターの肉体」の幻影]に従うと行動成功率が8倍になる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……高度1万メートル……1万千メートル、2千メートル……」
 低空に滞留する蒼きラズカルクムを含んだ雲海を抜けた先は、雲一つない青空が広がっていた。空気は凍てつくように寒く、気圧の影響なのか心なしに呼吸が苦しくも感じてしまう。
 共に飛び立った仲間のひとりが突如飛来してきたストームイーグルにより脱落したが、ミドの町自警団の代表であるユプシロンと団員である|双子の姉妹《イータとシータ》は高高度の空域に到達した。
 もはや空気中に僅かとしかない酸素を吸気して圧縮している四基のエンジンは悲鳴のような叫びを上げ続けており、突貫工事だったとは言え変人の飛行機技士であるDr.マシキシュタインの設計と理論は正しかったのだろう。
 あとは爆発しないことを祈りながら、チカチカと光り続けている|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》を防いでいるというエナジー・ゲートを展開しているファーストヒーローと名乗ったザ・スターを索敵するが、その姿は何処にも居ない。

「もしかして、私たちにビビって逃げた?」
 場を和ませようとシータの楽観的な声が無線越しに聞こえるが、そんな筈はない。
 奴は町を破壊すると宣言した。
 ああいう手合いは、自らの言葉に背くような奴ではない。
 ユプシロンが警戒を怠らないようにと告げようとした時、双子として製造されたレプリカントの姉であるイータの叫びが無線電波と共に伝わった。

「高速反応検知! シータ、上よ!」
 まさに星の如くの疾さでエナジーゲートから注がれた一筋の光が、イータ機の飛行ユニットであるバインダーを直撃させて爆散させる。それは一度にニ基のエンジンを破壊してみせ、片翼のみとなったシータ機のピースメーカーはバランスを崩して高度を落としていく。

「シータ姉さん、そっちに行ったわ!」
 辛うじて墜落を免れたものの、落下していくだけの機体からハンディマシンガンが放たれ、光の尾を狙うが弾速を超える疾さは瞬く間にシータ機の背後に取り付いた。

「シータ!」
 ユプシロン機のモノアイが捉えて映し出した者の正体。
 それはまさしく10日前に見たザ・スターの姿であった。

『……まさか、人の分際でここまで到達するとはだ』
 奴は今、止まっている。
 ここで撃てば、化け物であっても銃弾の質量で唯では済まないはず。
 しかし、それは仲間の犠牲にしての勝利。
 故にユプシロンは引き金を引くのを躊躇ってしまう。

『だが、所詮人は人に過ぎぬ。一時の感情に惑わされ、己が果たすべき|正義《使命》を果たさぬことが……人の弱さだ!』
 ザ・スターは振りほどこうと乱雑に操作されるバインダーの基部となる二肢に分かれた左右のサブアームユニットを両手で掴み上げ、青いスーツ越しからも分かる太い血管を浮かばせながらもぎ取ってしまう。
 そうすれば、翼を喪ったキャバリアは只々落ちていくだけ。
 イータの悲痛な叫びが、ユプシロンを揺さぶる。

「シータ姉さん、掴まって!」
 だが、辛うじて片翼のみ残った妹のシータ機が姉のイータ機を救出に出た。
 当然ながら、四基のエンジンで一機のキャバリアを飛ばしていたのだから、ニ基のエンジンはニ機分の重量を支えることは出来ない。
 姉妹が乗ったピースメーカーは急激に高度を落とし、電波障害が渦巻くラズカルクムを含んだ雲と砂嵐の中に消えていった。

「それが……世界を救うと言ったヒーローとやらがすることかよ!」
『そうだ。でなければ、私は己の使命を果たすことは叶わない。そして、忘れたか。私が今ここでエナジー・ゲートを解除すれば、貴様たちが引き金となって外界を殲禍炎剣で破壊し尽くすと』
 その言葉にユプシロンは反論することが出来なかった。
 確かに今も殲禍炎剣による砲撃を防いでいるエナジー・ゲートは展開させているのはザ・スター本人である。
 彼としては殲禍炎剣を利用してミド・バール地下にあるかもしれない戦神アシュラの複製体『アシュラレディ』の製造工場を見つけ出すのが目的であって、既に立ち退きの期日である今日を迎えたところで解除するだけの身である。
 自分の行いで自分の故郷を破壊するとは皮肉だろうが、ザ・スターは先ほど敢えてそうしなかったのも事実であった。

『だが、ここまで到達した貴様たちの正義は称賛に値するものであった。故に最後のチャンスを与えよう。私を倒すまでエナジー・ゲートを解くのを待ってやる』
 即ち、それは互いの正義のどちらが正しいかを決める決闘宣言。
 ミドの町の運命を決める決闘が、今開幕される!
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

元々超高速に特化していて紙装甲な自機「グリーンフラッシュ」は、当たれば終わり級の攻撃を放つエナジー・ゲートとは相性が最良だと思われるます。すさまじい上昇加速に耐えながら、紙一重で攻撃を躱しつつ、ザ・スターに肉薄します。すれ違いざまに攻撃を叩き込み、急旋回をして再びドッグファイトを挑むを繰り返します。特にスーパー・ノヴァのデメリットともいえる、ステータスが変わることで攻撃パターンを変更する隙を狙い打ちます。最後にはグリーンフラッシュから飛び降り、自機を囮に自由落下しつつ肉弾戦で必殺技を叩き込みます。

「揺らがない正義、それはただの妄執っていうんだ!」



「くっ……相手は生身だってのに、なんて破壊力なんだ!」
 まさに瞬く星の疾さであった、ファーストヒーロー『ザ・スター』の一撃。
 それはメディアが操るグリーンフラッシュより装甲が強固なキャバリアをも容易く破壊するものであって、まさしく鎧袖一触とはこのことかとメディアの背中に冷たいものが走った。
 翼を文字通りにもがれたイータ機の救出へ共に製造された|双子《レプリカント》の妹である半壊状態のシータ機が向かったが、あの状態では再び浮上するのはまず望めない。隊長機であるユプシロン機のピースメーカーが辛うじて応戦できているものの、速度もさることながら小回りの良さもザ・スター側が上なのは明白。

「目測では、直線の速さは改修したグリーンフラッシュとほぼ互角。けど、旋回性はあちらが上で後ろを取られた時が……負けか」
 グリーンフラッシュの動力は天使核エンジンなので、薄い空気の中でも集気して圧縮させるジェットエンジンと比べれば高高度の環境でも地上とさほど影響は受けない。
 受けるとすれば極低温の環境で耐圧服越しでも身震いしてしまう自分自身であろうが、身体の内に闘気の黒焔を滾らせながらメディアは操縦桿を引き上げた。

『ほう……真っ向勝負を仕掛けてきたか』
 黒きマントをたなびかせながらユプシロン機の反撃を容易く避けるザ・スターめがけ、メディアは一旦グリーンフラッシュの機首を下げると急上昇させた。同じ高度帯では互いを追いかけあう|空中戦《ドッグファイト》となるのならば、どの方向へ動かれても対処が容易い下方からの強襲だ。

『だが、それならばこちらも迎え討つのみ!』
 しかし、それは相手にとっても同じこと。
 ただひたすら一直線に向かってくるのならば、こちらも同じ軌道に乗れば良いだけの話である。
 ザ・スターは自らの五体を超新星爆発を起こしたかのように突然明るく輝き出すと、機銃を放ちながら急上昇し続けるグリーンフラッシュに向かって急降下。、
 より一層と輝きを増す拳を構え、すれ違いざまにグリーンフラッシュの翼を叩き折ろうと加速を強める。

「やはり、そう来たね……!」
 グリーンフラッシュは徹底した軽量化により超高速の飛行性を得た代わり、装甲は紙装甲同然に薄い。
 当たれば一巻の終わり。
 だが、当たらなければどうということはなく、攻撃は最大の防御でもある。
 放っている機銃も元より牽制用で、当たることは端から期待していない。
 信じるのは……己の身体と機体のみ。

「行くよ! グリーンフラッシュ!!」
 徐々に距離が詰まるザ・スターの姿を見据え、メディアの瞳にユーベルコードが発現する一旦の黒炎が視界を飲み込む。
 操縦桿を握る拳を伝い、グリーンフラッシュの機体は暗黒の炎によって覆い尽くされてしまい、両翼も覆い尽くせばその姿は黒き焔の不死鳥。
 装甲が脆弱であれば、それを自らの邪竜黒炎拳による敵味方を識別する暗黒の炎で補ってしまえばいい。
 せめてなら自分自身が飛び出てザ・スター相手に肉弾戦で挑みたいところだが、生憎ながら今のメディアには単身で飛行する手立てはない。ならばと、グリーンフラッシュに自らの想いを代弁をして貰うしか他ならない。

『なっ……!』
 ザ・スターはグリーンフラッシュの翼に拳をぶつける腹づもりだったが、互いにぶつかり合う直前に戦闘機から炎が噴き出したかと思えば黒き炎の鳥と化した。
 本来の機体は暗黒の炎を纏ったことで本来の姿よりも体積は増加し、本来の本体は燃え盛る黒炎の中心部に存在している。
 自らの守りをかなぐり捨てた速度による捨て身の一撃を繰り出そうとした矢先の出来事であって、揺らめく黒炎がザ・スターの身体を呑み込んでその身を焼き尽くさんとばかりに襲いかかった。

「揺らがない正義、それはただの妄執っていうんだ!」
 ほんの僅かであった交差はすぐ終わり、速度が落ちることなくメディアを乗せたグリーンフラッシュは天を目指して翔ぶ。
 メディアは燃え盛る暗黒の炎に身を灼かすザ・スターを尻目にしながら、永き年月を経て妄念と化した正義の弾劾する叫びを上げたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「どーも、衣更着でっす!ザ・スターさん、人々の平穏のため仕留めさせてもらうっす!」
「つかアシュラレディって世界を渡った事ないけど、レディオーシャンと間違えてないっす?」

「小回りは兎も角、最高速はこっちが上っす!流星突撃槍!」
テングリーフにメガスラスターで粒子噴出しながら推力移動しUCもどきの突進攻撃させつつ、UC『キャバリア憑依の術』
化術でラズカリクム粒子に化けることで迷彩して機体から離脱。空中浮遊で敵に忍び寄りアンブッシュ暗殺を仕掛け、怯んだところを綿ストールで拘束、敵を盾にするようにテングリーフの突進串刺し

殲禍炎剣被害を防ぐためジャミング&UC『幻影百鬼夜行』(フレーバー)で上空から迷彩



『ちぃ! 視界が!?』
 燃え盛る黒き業炎はザ・スターを呑み込んだが、それを振り払うようにマントを棚引かせながら脱する。

「どーも、衣更着でっす! ザ・スターさん、人々の平穏のため仕留めさせてもらうっす!」
 高速飛行していたザ・スターの勢いが止まったのを見計らい、衣更着はテングリーフ・ホワイトの中より拡声器越しに意気揚々とした声でアイサツする。
 どろんバケラーの化身忍者と言えども、アイサツは全ニンジャが守るべき礼儀作法。
 ニンジャのイクサにおいて、誉を守るための大前提ともされる礼儀作法。その象徴たるものがイクサに臨んでのアイサツである。
 ニンジャ社会に由来する全てのニンジャにとって、イクサに臨んでのアイサツは名誉のための必須のプロシジャとなり、それはやがて彼らにとって本能と呼べるレベルにまで刻み込まれているのだ。
 早く言えば武士や侍の「名乗り」が作法とされているのに近いが、それはヒーローも同じもの。ヒーローと対峙する敵側もご丁寧に待ってくれる上、一切攻撃をしないのがお約束。故にオブリビオンに身をやつそうが、ザ・スターは己の窮地であろうともヒーローとしての|矜持《お約束》を守っていた。

『我が名はザ・スター! こちらこそ我が怨、戦神アシュラの複製体を製造する工場を破壊する使命を邪魔立てするならば……破壊あるのみ!』
「つかアシュラレディって世界を渡った事ないけど、レディオーシャンと間違えてないっす?」
 高速飛行によるすれ違いのアイサツを済ませテングリーフ・ホワイトを大きく旋回させる中、衣更着はそのような疑念をザ・スターへと投げかけた。
 仮にクロムキャバリア内に戦神アシュラの複製体である『アシュラレディ』のクローン工場があったとして、どうやってそれをヒーローズアースへと送り出しているのか?
 グリモアベースへの襲撃を画策して様々な世界を転移したレディオーシャンという前例が居るものの、果たしてアシュラレディは如何なる方法で送られるのか?

『忘れたか、私がどうやってこの世界へと辿り着いたことを。骸の海は全ての世界と繋がり合っていれば、そこを経由して他世界へと送り出すのは容易いこと。故に私は、世界の安寧のためにアシュラレディを製造するプラントなる工場を破壊せねばならないのだ!』
「じゃあ、今目星を付けているプラントがアシュラレディの製造工場だという証拠や確証はあると言うっすか?」
『ない! 質問を返すが、この地の地下にあるプラントがアシュラレディの製造工場ではない証拠はあるのか!?』
 その返答に、衣更着は言葉を詰まらせてしまう。
 蒼き荒野を徘徊する無人機のオブリビオンマシンが製造されている以上、アシュラレディが製造されている可能性はゼロとは言えない。地下への入口が見つからない以上はまさに悪魔の証明であって、今やっているやり取りも水掛け論でもある。
 しかし、これだけは確かだ。
 己の使命を盾にして、ザ・スターは身勝手な理由でミドの町の住民をこの地から追い出そうとした。確かにこの地は不毛極まりなく、これを機として移住を提案するのは合理的だろう。
 だが、住民たちは断固拒絶した。
 確かに文明の遺産にしがみつくことで生存している厳しい地ではあるが、それでも戦火が耐えず小国家同士が戦争を繰り返す外の世界と比べれば安住の地と言っても過言ではない。そして、彼らは何時かミド・バールに堆積した汚染物質であるラズカルクムを除去できる日を目指して、ミドの町を基軸に除染活動も日々行っている。
 数十年後、数百年後なるか分からないが、彼らはそんな明日を夢見て生活している。如何なる理由があろうとも、如何なる正当性があろうとも、この地に根ざしす住民の想いを軽んじるのはファーストヒーローだろうとも許されない。

『だからこそ、私は己の使命を果たすのみ!』
 再びザ・スターの身体が眩い極光に包まれると、メガスラスターで粒子を噴出させながら飛行するテングリーフ・ホワイトへと強襲する。
 最高速度こそは飛行形態となったキャバリアに分があるが、小回りでは生身のザ・スター側に分がある。上空のエナジー・ゲートが暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』の砲撃により激しく光が点滅する中、徐々にだが両者の距離は縮まりつつあった。

「そうなれば……こうっす!」
 このままでは追いつかれる。
 そう判断した衣更着は、この空域にまで到達する最中に空気中に漂うラズカルクムの粒子を集めたフィルター装置をパージさせ、ザ・スターの視界を遮る煙幕とさせる。

『小賢しい真似を……だが、私には分かる。来る方角は……ここだ!』
 周囲は蒼く染まって電波すらも遮断される中、ザ・スターは意識を集中させて甲高いジェット音が聞こえる。
 その刹那、テングリーフ・ホワイトの機首である白い嘴がラズカルクムの煙幕より姿を見せるが、音のみで予見していたザ・スターはそれをすぐさま掴み上げてしまう!

『どうだ! もはや手も足も出まい!』
 激しい推力をも物ともしないザ・スターの膂力は、ファーストヒーローと名乗るに相応なもので、止めるだけに留まらずミシミシと音を軋ませながら破壊せんと丸太のように太い腕に血管を浮かばせる。

「流石ファーストヒーローだけはあるっす。だけど、あまりにもの脳筋で相手が化けるのが得意な|化身忍者《どろんバケラー 》だってことを失念していたっすね?」
『ぐうっ……!? これは……ッ!』
 今まで拡声器越しだった衣更着の声がザ・スターの耳元で聞こえたその時、彼が首元に巻いている打綿狸の綿ストールがザ・スターの首に絡みついたではないか!?
 ピンと張られた綿ストールの先には、ザ・スターの肩を足場とさせて立っている衣更着の姿があった。
 彼は放出した煙幕代わりのラズカルクムの粒子を隠れ蓑としてコックピットハッチから飛び出しており、自らの化術によってラズカリクム粒子に化けたのだ。
 そして今、テングリーフ・ホワイトを操縦させているのは、座席に貼り付けられた衣更着の本性である信楽焼めいた姿の|妖怪《たぬき》が描かれたあやかしメダル。

「誰も乗ってないのに動くキャバリア、これぞ狸憑きの秘術っす!」
 テングリーフ・ホワイトは、ユーベルコード『キャバリア憑依の術』により遠隔操作されていたのだ。
 キャバリアを操縦しているという認識が、高速戦闘による時間のなさが、ザ・スターの判断を誤らせたのは言うまでもない。

『おのれ、汚いぞ……!』
「忍者に綺麗も汚いも関係ないっす。行くっすよ、テングリーフ・ホワイト! 流星突撃槍!」
 首を締め上げる力を強めれば、テングリーフ・ホワイトを掴み止めているザ・スターの力が緩んでしまう。その機を逃さず、メガスラスターの出力が上昇して白き嘴状の機首がザ・スターの両手から脱し、その勢いで胸に激突させる。
 しばらくの間、ザ・スターはテングリーフ・ホワイトの流星突撃槍により串刺しめいた形で突進を受けていたが、メガスラスターがオーバーヒートを迎えようとして減速し始めたことでようやく解放される。
 衣更着はストールで首を締め上げながらそれを見届け終えると、激しく咳き込むザ・スターの身体を足場として愛機の元へと戻ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
【渡り禽】
あんたのその言葉そっくりそのまま返すぜ
あんたは目先の手段に取りつかれて両方を救うことを諦めた
使命を果たすことを忘れたんだ
そしてそれを覚えている心から目を逸らしている

UCを起動
真の姿となったイグニシオン・ソーリスに[騎乗]しての[空中戦]
ストームイーグルを一機で斬り裂いた高速機動からの連続斬り
それを155体の分身を召喚してひとり相手に一斉に繰り出す
イグニシオンの群れはアイや多喜さんの守り、目くらましとしても何機か割り当てる
奴が輝く超新星モードに変形したら奴との交戦の[戦闘知識]と[心眼]で奴の振舞いから何を強化し、何を削ったのか[見切り]
それに適応する形で回避機動を取るぜ


数宮・多喜
【渡り禽】

あんにゃろう……
いや、まだキレるのは早いか。
奴は追撃をしなかった、って事はまだ世界を護るヒーローの心が迷ってる!
それなら49ersの端くれでもあるアタシが、諭しに行くのが筋ってもんだろうよ!
高高度での空中戦をやりつつのテレパスによるハッキングはかなりヘヴィだけど、やれるかどうかじゃない……やるんだ。
覚悟をキメて応戦しながらザ・スターの精神に思念の腕を伸ばし、『コミュ力』で語り掛ける!
1を殺すのに10を殺すはアンタも本意じゃないだろう!?
『コミュ力』マシマシで『鼓舞』して、肉体の暴走を抑え込んでもらおうじゃないのさ。
そしたら後は任せたよ、アイさん、久遠寺クン!
引導を渡してやってくれ!


星川・アイ
【渡り禽】 アドリブ歓迎
そういや今でもエナジー・ゲート張りっぱなしだったね
それじゃあ……すぐに解除しなかった事を後悔させてやろうか

まずはジェナスに乗って戦う……ように見せかけキャバリアメイル化させて装備。高高度に適した結界も張って空中戦に挑むよ(不意打ち、防具改造、結界術、環境耐性)
敵に纏わりつくように空中機動しながら攻撃を見切りつつ、スレイプニルで距離に応じた攻撃をして多喜さんのUCが当たるよう支援するね
そうして命中したら、追撃としてスレイプニルによるUCで一気に攻めるよ!



 猟兵の一撃を受け、ファーストヒーロー『ザ・スター』は宙を舞った。
 胸は陥没し、傍から見ても肋骨が折れて助かる見込みは到底ない。
 だが、程なくするとしぼんだ風船が膨らむように元の形へと戻ってしまう。

『まだだ……! まだ、私は破れるわけにはいかん!!』
 何たる賦活。何たる生命力。何たる確固たる意思。
 幾年月に渡る遥かなる時を骸の海の中で送ったことで、彼はオブリビオンと化した。
 ファーストヒーローとは言え、この異常な再生力はもはや彼の身体は骸の海に適合した|突然変異体《ミュータント》と言っても過言ではない。

「あんにゃろう……!」
 JD-Overedが捉えた映像の前に、多喜は改めてファーストヒーローと言えども落ちるに落ちた存在と化したと落胆する。
 確かに彼は約束を違えたからと即座にエナジー・ゲートを解除せず、自分たちがこの空域へと到達するまで待ってくれていた。
 まだ世界を護るヒーローの心が迷ってるのであれば、もしかして……と、僅かながら説得できる可能性を捨てきれていなかったが、それが今無駄であると言うことの確証へと変わった。

「多喜、忘れるな。奴はオブリビオンだ。ジャスティス・ワンの記憶の中にあったザ・スターとは姿こそ同じだろうが、その身は骸の海で汚染されきっている。俺たち猟兵が倒すべき存在以外の何者でもない」
「……ああ、久遠寺さん。勿論忘れていないさ。ただねぇ……49ersの端くれとして、ああなるまいな反面教師ぶりを見せられるとね。アタシらのご先達な猟兵さんらもオブリビオンとなっている以上、ああなるまいと改めて思い知らされるよ」
 先の戦争ではじまりの猟兵より告げられた、過去の猟兵は『世界の守護者でも何でもなかった』という衝撃的な事実……。その先に潜むものどもの領域に到達すべく、みずから骸の海に踏み込んだ者も居たとなれば、おそらくザ・スターもその一人なのだろう。
 崇高な使命は破滅的な私利私欲と紙一重。
 そして、オブリビオンと化した存在は救えない存在であるのは、幾多の戦いを得て既に諦めも付いている。

「だけど、文句のひとつやふたつは言っても良いよね。元の性格でエナジー・ゲート張りっぱなしだったけど……すぐに解除しなかった事を後悔させてやろうか」
「ああ、そうさね。例え無駄だと分かっていても、頭の中にテレパスで諭しに行くのが筋ってもんだろうよ」
 エナジー・ゲートを解除しても、あの速度と反応性ならば精密射撃の砲撃も安々と躱せよう。ザ・スターがそれを行わったのは、ヒーローとしての矜持がまだある証拠。
 ジェナスを自らの電脳魔術によってビキニアーマー状のキャバリアメイル化させたアイの言葉に頷きながら、多喜は再び活動を開始しようとするザ・スターの精神に『過去に抗う腕』を伸ばした。

『ぐっ……なんだ!? 今度は別の声が……!』
(「おい、大先輩! 1を殺すのに10を殺すはアンタも本意じゃないだろう!? いい加減、常識的に諌める自分と向き合えってんだ!!」)
 突如、時折語りかけてくる自分自身の声に割り込んで来た多喜の声にザ・スターは困惑する。身体の再生を終えて再び超新星の輝きを纏おうとした矢先の出来事であった。

「効いてるよ、多喜さん! もっと、もっと、アタシの分も言ってやって!」
 酸素が限りなく薄く、なおかつ極地に匹敵する極寒の高高度という環境に適合する結界を張ったアイが、輝きが衰えて動きも緩慢となったザ・スターへと剣状の銃身からビーム刃を展開したXS-11Bスレイプニルで斬りかかる。
 だが、流石はファーストヒーローと言うべきか。
 蓄積されたダメージと多喜による精神攻撃を受けてもなお、その力は十分と言ってもいいほどだ。故にアイは纏わりつくような形で、ゲームで培ってユーベルコードの域となったヒット・アンド・アウェイ戦法『デュアルアサルト』でチクチクとザ・スターに攻撃を与え続ける。
 相手はステゴロで肉弾戦至上主義ならば、距離を取りつつ銃火器モードのスレイプニルで牽制しつつ、相手が勝負を仕掛けてきたり隙があらば剣モードに切り替えたスレイプニルで斬撃をお返しする。

『ええい、煩い! 私には使命を果たす義務がある! 正義の執行に犠牲が伴うと何故分からんのだ!!』
「あんたのその言葉……そっくりそのまま返すぜ。あんたは目先の手段に取りつかれて両方を救うことを諦めた。使命を果たすことを忘れたんだ。そして……それを覚えている心から目を逸らしている!」
 再び輝きが増そうとするザ・スターに向け、|機体《イグニシオン》を蒼白い恒星の焔に纏わせた遥翔が畳み掛ける。
 ストームイーグルを単騎で斬り裂いた高速機動のまま、ゆうに百を超える迸った蒼白い焔の分身を伴って、|太陽を灼く黄昏の剣《ラグナレク・キャリバー》を振り下す。
 質量を持った分身とも言える目くらましであったが、本能的にどれが実物か見切ったザ・スターは極星の如く輝く腕をもって受け止めた。

(「久遠寺さんの言うとおりだ。ザ・スターさんよぉ、本当はアンタも本望じゃなかったんだろ! 正義の心によって稀に禁忌を破るのは最もだが、崇高な精神だった頃のアンタはそれで1の存在だった駆け出し同然のジャスティス・ワンさんを助けたんだろ!! 今もジャスティス・ワンさんは、正義あるファーストヒーローのひとりだったアンタを尊敬し続けて、アンタを目標にヒーローのお手本として次の世代を担うヒーローの幼稚園児たちに眩しかった頃の姿を語り継いでいるんだよ!」)
『ジャスティス・ワン……あの若造が、だと?』
 多喜の叱責を受け、ザ・スターの脳裏に既に忘れてしまった遠い過去の情景が思い起こされる。その世界では善悪の二大決戦『ジャスティス・ウォー』が繰り広げられていた
 その際、窮地に立たされた善側のヒーローたるジャスティス・ワン。
 既に世界の|理《ことわり》の外に存在する宿敵を探し出し討つため、『自身の歴史介入』を禁じており彼を助ける道理など確かに無かった。
 しかし、ファーストヒーローたちは己の正義に従った。
 例え誓いを破ろうとも、善側の劣勢を見過ごせなかったのだ。
 その崇高なる精神はヒーローの模範として、ファーストヒーローの伝説と共に未来へと語り継がれている。
 この事実を初めて知ったザ・スターの心に再び葛藤が生じ、遥翔の一撃を払うまでに至った輝きは徐々に衰えを見せ始めた。

「いいぞ、多喜! アイ、地上でのやった錬成の成果をここに出すぞ!」
「うん! いっくよぉ~~!」
 揺らぎ無き意思に迷いが生じ、ザ・スターの判断が遅れる。
 迸る蒼白い焔とビームによる極光の刃が互いに交差し、如何なる攻撃も弾き返した鋼の身体に確かな手応えある斬撃を刻んだのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チェスカー・アーマライト
●鴉と狼
ゴチャゴチャと喧しーんだよ
要はテメーに好き勝手されちゃ|あたしら《この世界》のたつきの道が成り立たねーって話さ
それとな、テメーは人間をナメ過ぎだ
9回裏ツーアウトだから諦めろってか
クソ喰らえだぜ
決意固めた人間のしぶとさってモンを味わいな!

メイン|薬室《チャンバー》のエネルギーを限界ギリギリまで加圧
エネルギーの爆発力を炸薬代わりに、これ以上ない最大威力の砲弾を叩きつけてやる
跳ね上がった初速の分、側面薬室の点火タイミングのズレもハティの子機に修正を任す
こいつでセンチピードがお釈迦になろーが構うもんか
あの野郎をどうにかできなきゃ|報酬《ペイ》無しどころじゃ済まねーんだからな


ウルル・マーナガルム
●鴉と狼
祖国への忠誠
仲間への献身
力無い人達を守る事
──|大いなる力には大いなる責任が伴う《ノブレス・オブリージュ》
ボクはボクの|責務《正義》を果たす
|死神の後継者《次代の英雄》として
世界は違えど、|英雄《アナタ》の後に続く者として

引き続きボクは囮役
『イチイバル』を楯としても使いながら、オレルスの手に持ったライフルを掃射
一見乱射してるだけの牽制射撃の中に、正確な狙撃を混ぜる
変形中の装備を優先的に狙って邪魔するよ
ほらほら、先にボクを墜とさないとマズイんじゃない?

ザ・スターの攻撃や回避動作のパターンを解析、ハティの子機を通してチェスカーに共有
最高のタイミングで砲撃できるようサポートするよ



『ぐぅうう……ウォオオオオッ!!』
 蒼焔と極光の刃をその身に受けたファーストヒーロー『ザ・スター』が再び吼える。
 再度身体が眩い光に包まれると、猛り立つ雄叫びに呼応してかエナジー・ゲートより降り注がれた光に呑み込まれた。

「やったか!?」
 |異能《ユーベルコード》と|超常《ユーベルコード》が激しくぶつかり合う中を只々様子を窺うように見守るしか無かったユプシロンだったが、光が収まれば僅かな希望が露と消える。
 ザ・スターは今も健在であり、如何に鋼鉄同然の硬度を持つ超人的肉体と言えども致命的な斬撃による傷も、エナジー・ゲートで得られた賦活によって再生されている。

「……相変わらずの化け物っぷりか。だが……」
 ピースメーカーのモノアイが光り、引き絞られた光学レンズがザ・スターの顔を映し出す。会敵当初にあった自身に満ちた顔付きは焦燥感に駆られており、苦虫を噛み潰したかのように歯を強く食いしばっている。

 ──ヤるなら今か。
 吹き荒ぶ気流の乱れで絶えず振動が伝わる機体の体勢を四基のバインダーで修正し、照準を狙って引き金を引き絞る。
 不意打ちによって同時に製造された|同型《ふたご》故に息のあった連携が得意としたイータとシータが離脱したのは手痛かったが、だからこそ彼女らの無念を、町の住民の想いを自分自身が示さねばならない。
 低酸素の環境下における確実な動作、更には地上への落下物を少なくさせるためにケースレス化された弾薬が電気着火されて放たれる。弾頭は徹甲弾化されており、前哨戦のストームイーグル戦において確かな効果を発揮した。
 弾道を確認するために尾を引く曳光された弾丸の幾つかは気流によって流されてしまったが、その内の一発がザ・スターへと吸い寄せられるかのように軌跡を描く。

『……ぬん!!』
 確かに命中した。だが、奴は人間に当たれば血煙に変える質量の弾丸を、先ほど降り注いだ光と同じ輝きを放つ拳ひとつで文字通り弾き返した。
 まさに超人と言うしかない力を前にし、ユプシロンは眉を潜める。
 奴は手傷を負って回復するが、体力の消耗は回復していない。
 だったら、消耗させるのみ。
 拳を掲げ、シータ機に与えた攻撃と同じものを繰り出そうとするザ・スターを照準し、ユプシロンは銃身が焼け付く勢いのまま引き金を引き絞り続ける。
 このままでは接敵されて破壊される運命だったのかもしれなかったが、下界の巨砲より放たれた雷鳴の轟きと空に刻まれた弾道によって生じられる雲をも霧散させる衝撃波が両者を隔てさせる。

「惜っしー! あともうちょっとだったのにー!」
「ちっ! タイミングをミスっちまったか」
 ユプシロン機に入った無線のやり取りはチェスカーとウルルの物であった。
 和気あいあいとしたやり取りであるが、あと僅か数秒の差であったのだろうが空を駆ける流星の如くの疾さであるザ・スターに直撃を与えようとする砲撃である。
 高度が高まれば高まるほど距離による補正もだが、絶えず変化する気流の流れも誤差として大きく影響が出てくる。その中で、ここまで精確に狙いを付けるものかとユプシロンは感心すると同時に背中に冷たいものが走る。
 だが、彼女らに助けられたのは事実であり、ここはふたりの援護に回るのが得策とバインダーの軌道を変えた。

「すまない。助けられたな……援護する。作戦は?」
「ボクらがチェスカーの猟犬になって、獲物を追い込むだけだよ!」
「猟犬か。なるほど、それは良い。では、狩り立てるとしよう」
 ウルルが駆るオレルスは板状の飛行ユニット『イチイバル』で軽快そうにキリモミ回転な曲芸を演じつつ、正確な狙撃を混ぜながら手にしたライフルを掃射してザ・スターを牽制させて動きを阻害させる。

(祖国への忠誠、仲間への献身、力無い人達を守る事……)

 ──|大いなる力には大いなる責任が伴う《ノブレス・オブリージュ》。
 それは物心付く前の幼き自分に、死神と戦場で畏れられた祖父が口癖のように語ってくれた言葉。

(ボクはボクの|責務《正義》を果たす。|死神の後継者《次代の英雄》として、世界は違えど、|英雄《アナタ》の後に続く者として──)
 こんなことを言ったらチェスカーに「何か変なものでも食ったか?」なんて言われちゃうだろうからと、ウルルは自らの目標である偉大なる祖父への畏敬の念を語る。
 その想いは自ずとしてユーベルコードとして発露し、〝素早く、静かに、徹底的に〟、息つく暇も与えない素早い狙撃と的確に急所を捉える精密な狙撃、敵を畏怖させる程の徹底的な狙撃がザ・スターの頭や心臓を狙って撃ち放たれる。
 それに合わせてユプシロン機のピースメーカーもバインダーを巧みに駆使した機動により援護射撃を行い、ザ・スターは防戦を強いられてしまう。

「ほらほら~。先にボクを墜とさないとマズイんじゃない?」
『ええい! 鬱陶しいにも程がある!!』
 あざとそうな挑発を受けてもなお、ザ・スターは一縷の望みを自らの拳に託して眩く光り輝く。実弾兵器には弾数という限りがあり、反撃のチャンスがあるとすればマガジンを交換する|瞬間《タイミング》。
 先程に地上より放たれた砲撃も脅威ではあるが、|あの程度《・・・・》ならば対処できる範疇である。今は速さを代償として守りを固め、反撃のチャンスを伺うべきとザ・スターは判断を下した。
 確かにそれは合理的であり、確かな戦い方だっただろう。
 しかし、それはこちら側も織り込み済み。
 昼にも関わらず地上からでも極星の輝きを放っているザ・スターの姿を、遥か上空から送られてくる観測データを元にFCSが演算した数値と共にチェスカーは狙いを澄ましている。
 相棒の挑発を受けてか、唾を撒き散らすかのようなザ・スターの言葉が絶えず無線に乗ってヘッドセット越しに聞こえるが、彼女は咥えたニンジンスティックの先端部分を舌で転がしながらぼやく。

「……ゴチャゴチャと喧しーんだよ。要はテメーに好き勝手されちゃ、|あたしら《この世界》のたつきの道が成り立たねーって話さ」
 ザ・スターの目的は、不倶戴天の宿敵『戦神アシュラ』の複製体『アシュラレディ』を製造する工場とされるプラントの破壊。
 だが、プラントがオブリビオンマシン・プラントとなろうとも、クロムキャバリアの人々は遺失技術の塊であるプラントにすがらねば生きていくことはままならない。
 そのため、時には世界の崩壊を防ぐ名目で|英雄《ヒーロー》たる猟兵もプラントを破壊すると認知されれば、小国家によっては非難の対象として蔑まれる存在でもある。
 特にザ・スターの場合は、オブリビオン化したことで目的が手段と破滅的な思考となっている。大昔のような理性があれば柔軟に対応したのだろうが、例え崇高な理由と大義があろうとも初手で対話による理解を得ようとしなかった時点で結果は見えていた。

「それとな、テメーは人間をナメ過ぎだ。9回裏ツーアウトだから諦めろってか、クソ喰らえだぜ……。決意固めた人間のしぶとさってモンを味わいな!」
 人は如何なる窮地に立たされても、僅かな希望さえあれば決して諦めはしない。
 ザ・スターの行動は時にはプラントの破壊も辞さない猟兵と然程代わりはしないだろうが、決定的な違いがここにある。
 それを理解して共に十字架を背負い未来へと歩むか、理解せずに只々災害のように暴れるだけ暴れて去るのみか。

「……捉えたぜ。後はとっておきに取っておいた、メイン|薬室《チャンバー》に|動力炉《ジェネレーター》のエネルギー接続ラインを直結。エネルギーを限界ギリギリまで加圧した状態を|ハティの子機《こいつ》にエミュレートして貰ったデータを元に、時間ギリギリまで補正だ」
 ウルルより送られた映像を見ると、今までの火力では仕留めきれるかの確証を得られない。ならば、こんなこともあろうかと一発の砲撃で砲そのものが|お釈迦《スクラップ》になる最終手段を取るまで。
 インゴットエネルギーの爆発力を炸薬代わりに、これ以上ない最大威力の砲弾を叩きつけてやるという物だが、果たしてどれほどの火力かはチェスカー自身も想像にできないものだ。だが、ここでやらねば何時使うというのだ?

「チェスカー、こっちはそろそろ弾切れになりそうだから早く!」
 ウルルの今まで余裕ぶった声が切迫しつつある物と代わり、今のデータを最終調整として冷却を終えたセンチピートの砲身をザ・スターへと向けさせる。

「こいつでセンチピードがお釈迦になろーが構うもんか……あの野郎をどうにかできなきゃ|報酬《ペイ》無しどころじゃ済まねーんだからな」

 ──BLAM!!

 ニンジンスティックを噛み切るのと同時に撃鉄が落とさせ、膨大なエネルギーの炸裂と共に側面薬室も順次点火される。
 これにより生まれる衝撃によって大地が今までない以上に揺れ、大気の衝撃も荒屋のトタン屋根を吹き飛ばすものであった。
 通常砲撃以上に砲身が跳ね上がり、ビッグタイガーも盛大な爆炎に呑み込まれてしまうまでの衝撃が伝わるが、これらによるズレはハティの子機の予測通りのデータであった。
 ユーベルコード『|BIG GUN OF THE ORDER《アイ・アム・スラッガー》』の名の持つ砲撃により放たれた砲弾は表面の弾殻を赫々に溶かしながら火球となって上昇し、自身の執拗に撃ち続けていたニ機のキャバリアが弾切れとなったことで守りを解こうとしたザ・スターの下方より襲いかかる。

『ッ!? これしき……ッ!』
 回避も自慢の拳によって軌道を逸らすこともままならなかったザ・スターは、敢えて受け止めることを選択したが、彼の膂力と輝きを持ってしても止まらない。
 程なくすれば時限信管が作動し、ザ・スターが砲弾を抑えたままの状態で炸裂する。

「やった! やったよ、チェスカー!」
「……ったりめぇだろ。あたしは報酬分の働きをしっかり熟すのがモットーの〝ブッ放し屋〟だからな」
 流石にコイツを間近に無事では済まないだろう。
 ひと仕事を終えてマスクを被り、ハッチを開けたチェスカーはエナジー・ゲートに届くまでに撃ち上げられた砲撃が生んだ爆炎を誇らしげに見上げながら、この大仕事を見事成し遂げたビックタイガーを労うかのように熱を持った装甲を撫でるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
飛行ユニットを装備した焔天武后を操縦し、ザ・スターさんを諫めに参ります

《神力軒昂》で焔天武后に若草色のオーラを纏わせて攻撃力と装甲強化(更にオーラ防御)、ザ・スターさんに能力・装備の制御不能及び再生力機能不全を齎す。

殲禍炎剣の砲撃は武器巨大化した天耀鏡で盾受け・反射できるように備える。

力は制御してこそ十全の性能を発揮します。

暴走状態にあるザ・スターさんの動きを第六感・心眼で予測し、スナイパー・見切りで捉えて、焔天武后のレーザー射撃・一斉発射。
更に念動力・捕縛で捉えて、雷月による光の属性攻撃・衝撃波・2回攻撃で斬ります。

目的と手段にこだわってこそヒーローです。
どうか誇り高い貴方にお戻り下さい。



 地上より放たれた鋼の轟雷は、天の窓を突き破る勢いでエナジー・ゲートの高度にまで達する物であった。
 穿たれた孔から砲弾と共にザ・スターはエナジー・ゲートの内側から外側へと追いやられ、衛星軌道上から高速飛翔体を感知して光の雨の如し砲撃を繰り出す暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》。眼前の距離にて時限信管が作動して爆散して散った弾殻の破片に反応したのか、その勢いはより激しさを増している。

『ぐ……うぅうううう……!』
 光の熱線が爆煙を散らすせば、そこには満身創痍となったザ・スターの姿がある。
 骸の海を渡った強靭なる肉体は度重なる再生の果てに限界を迎えつつあった。

『私の命も、あと僅か……と言ったところか』
 途方もない旅の果てに、ザ・スターは邪神の複製体『アシュラレディ』を製造する|工場《プラント》を突き止めた。
 崇高なる使命を胸に秘め、共に骸の海へと飛び込んだ|同志《ファーストヒーロー》たちも行く行くは自身同様に怨敵が潜伏するこの世界へと到達しよう。
 だが、援軍が到達するまで自身の身体はもはや保たない。
 ならば、ここでエナジー・ゲートを解き、今も上空で高速飛行する猟兵諸共に地上を破壊し尽くして地下空間に続く扉を開けねば……。

 ──止めろ! 約束を反故にするのか!?

 ヒーローズアースを遠く離れ、骸の海を彷徨うこと幾星霜。
 このクロムキャバリアなる世界に到達した際に聞こえた心の声が頭に響く。

 ──強靭すぎるが故に生きながらオブリビオンと化した、哀れな我が肉体よ。
 |汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》……!
 我らが全てに沈黙を貫き、真の敵を探し続けたのは何故だ?
 あらゆる者たちに、真の平和と安らぎをもたらす為ではなかったのか?
 クロムキャバリアの人々は、プラントに依存して生活している。
 それを破壊すれば、この世界の平和は失われてしまうのだ……!

 まるで禅問答のように繰り返されて聞かされる心の声に、ザ・スターもまた反復する形でいつもの言葉を返す。

『……我が心よ、貴様こそ|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》! ようやく旅の目的地に辿り着いたというのに、何もせず引き下がれるものか!』
「|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》……遠い過去にも同様のことを仰っていましたね。ですが、それはそれでこれはこれ。あの時も貴方がたらは世界干渉に反してジャスティス・ウォーで善神側に立ったはずなのでは?」
 聞き覚えがある、鈴のように軽やかながらも威厳に満ちた声であった。
 自身の心の声とは別の声に主に視線を移せば、そこには飛行ユニットを装着した焔天武后をもっててザ・スターを追いかけてきた詩乃……|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》の姿があった。

「お久しぶりです、ザ・スターさん。このような形での再開となられたことはとても残念ですが、スーパーヒーローでした貴方は人の子との約束であっても違えるような御方ではなかったはずです」
『阿斯訶備媛……か。嘗てジャスティス・ウォーの際に共に戦ったお前も、私が果たすべき使命の邪魔立てしようと?』
「はい。私は豊穣神。植物と活力を司る女神であるからこそ、戦火が絶えないこの世界に安寧と豊穣を齎したいのです。そして、目的と手段にこだわってこそヒーローです。どうか誇り高い貴方にお戻り下さい」
『そうか……ならば、邪魔立てする心の幻影共々……お前も破壊するのみだ!』
 ザ・スターは限界を迎えつつある肉体の幻影に従って飛翔する。
 エナジー・ゲートの外側となればザ・スターの行動に反応した殲禍炎剣による砲撃に晒されるが、ファーストヒーローだけあって未だ光の雨を掻い潜る余力を残している。
 そうなれば詩乃も応戦せねばならないが、そうなれば焔天武后の機動も殲禍炎剣の砲撃対象となってしまう。
 だが、そうなった場合の備えは盤石であり、キャバリア用途までに巨大化された一対の天耀鏡が機体に追従するヒヒイロカネ製の神鏡は、暴走衛星が放つ光線にも耐えながらその光の奔流を反射させる。

『流石はヒヒイロカネ製だけある。だが! 超硬の盾であろうが、私の拳に砕けぬ物はない!!』
 まさに流星の疾さでザ・スターは激しさを増一方の殲禍炎剣による砲撃の隙間を縫うように飛び、防戦一方である詩乃を護る一対の鏡を砕かんと襲いかかる。
 大凡の動きは昔と然程変わっていないので、大まかに予測可能な域で直感で躱しながら焔天武后が放つレーザーで牽制する。とは言え、このまま続けば遅かれ早かれ天耀鏡による護りは破られてしまう。
 説得もなお続けるがこうも意固地になれば、如何に平和を愛する女神と言えども最終手段に出るしかない。

「分かりました。世の為、人の為、これより私の神力全開でお相手いたしましょう」
 強い決意を秘めた眼差しでザ・スターを睨むと、詩乃の身体を通して発現した|神威《ユーベルコード》が若草色のオーラとなって焔天武后と天耀鏡に纏わりつく。

『貰ったッ!』
 その直後、ザ・スターの拳は天耀鏡に繰り出された。
 だが、如何なる物をも砕く剛拳は『神力軒昂』によって強化された天耀鏡を破壊することが叶わず、触れた鏡から伝播して危害ある全てを浄化消滅する若草色のオーラがザ・スターに纏わりつく。

『これは……!? 力が、抜けて……ッ!!』
「……神力軒昂により、ザ・スターさんの能力と装備の機能不全及びオブリビオン化に伴い備わった再生力の機能不全を齎させて頂きました。お覚悟、願います!」
 詩乃の神力により焔天武后が扱えるサイズにまで巨大化された、阿斯訶備媛の神力が籠もるオリハルコンで鍛造された懐剣が眩い光を放つ。
 失望と哀れみが入り混じった感情が込め垂れた視線に映るザ・スターの姿が念動力により捕縛され、一閃の稲光と一迅の風と共に焔天武后が翔んだ。
 身動きもままならぬザ・スターの肉体は神威を放つ剣により斬り抜かれ、限界を迎えた身体が塵と化して崩壊を迎え始める。

 ──済まなかった、阿斯訶備媛よ。

 全てが終わり、ザ・スターが骸の海へと還っていく様子をせめて見届けようとする詩乃の頭の中に声が聞こえた。ザ・スターの声である。

「貴方はもしや……」
(『私はザ・スターの心の幻影。骸の海に侵され、諌めても止めることが出来なかった我が肉体の狼藉を止めてくれて、深く感謝する。だが……』)
「全て申し上げなくとも分かります。いずれ、他のファーストヒーローたちも邪神の複製体であるプラントを破壊と世界の殲滅に訪れるのですね?」
(『そうだ。|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》……同志たちも哀れな我が肉体と同じ運命を辿っていることだろう。植物と活力を司る豊穣の女神よ、頼みがある。我が肉体は強靭すぎるが故に生きながらオブリビオンと化した。いずれ再び世界の染みとして復活するだろう。その際は他のファーストヒーローたちも、この世界に到達しているかもしれない……故に託す。我らファーストヒーローが果たすべき使命を。邪神の複製体『レディ』の製造工場を突き止め、破壊する任務を……』)
「はい……勿論、お受けします。私たち猟兵がその責務を代行し、果たしてみましょう」(『分かった……これで心残りなく消滅できる。我が肉体が消えるまで、私がエナジー・ゲートを維持させよう。それまでに地上へ帰還すると良い』)
 その言葉を信じ、詩乃は地上へと帰還する。
 誇り高きファーストヒーローの心の幻影はそれを見届けると、塵となって朽ちていく肉体と共に消滅したのであった──。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月29日


挿絵イラスト