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Price of Justice

#クロムキャバリア #ザ・スター #ファーストヒーロー #ミド・バール

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●|清浄なる蒼き死の荒野《ミド・バール》に来訪せし者
 今から百年前……地下深くに埋蔵されているレアメタル『ラズカルクム』鉱床によって『ミド・バール』の地は鉱山業で栄え、次世代型半導体やそれらを使用するコンピュータ機器の製造によって得た利益で多数のプラントが建設された。
 それによってこの地はクロムキャバリア有数の工業地帯へと成長して目まぐるしい発展を遂げたが、暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』による砲撃によって壊滅。この影響で幾多の化学薬品や粉末状に加工された精製過程のラズカルクムが上空へと舞い上げられ、薬品と重金属が混ざりあったことにより発生した人体に有害な酸の雨が不利続け、この地は深刻なまでの土壌汚染と大気汚染に苛まれて動物はおろか人さえも住めぬ地となった。
 今もなお、様々な科学物資や重金属とが混ざりあった蒼き不純結晶がミド・バール一帯を覆い尽くしており、防護マスク無しに粒子レベルの粉塵を吸い込めばたちまちに肺を侵して死に至らしめる。しかし、大災厄を生き延びた人々は奇跡的に無傷であった工業地帯の労働者へ食料を供給していたプラントに身を寄せ合い、ミドの町が生まれた。
 元々は主に工業地帯の労働者へ食料と防護衣などを供給していたプラントであるため、作り出されるのはこの過酷な環境を生き延びるための物ばかりでキャバリアは製造されていない。仮にキャバリアを造るとなれば、かつて軍需産業も参入してキャバリアを製造していた廃プラント一帯に埋没する残骸を回収し、修理を行って使い物にするしかない。
 尤も、今やロストテクノロジーと言っても過言ではない発掘された過去の遺物らは分解された後に他国の侵攻をし得れない死の大地と外界を結ぶ列車で隣接する海運商業が主に他国との交易が盛んな『トリアイナ』まで運ばれ、水や食料、かつて町を襲撃した無法者や重度に汚染された区域が多いが為に未だに特定されていないオブリビオンマシン・プラントで製造されて清浄なる蒼き死の荒野を彷徨う無人型オブリビオンマシンへの備えとしてキャバリアと交換されている。
 先日のオブリビオンマシン騒動では多くの人命が奪われたが、人々は悲しみを乗り越えて何とか対抗の手立てを模索し続けている。
 しかし、この地に新たな災が訪れようとしていたのであった。

「ねぇ、あれは何?」
 呼吸器関係を防護するために交換式マスクを掛けているミドの町の住人のひとりが、雲ひとつもない空を指さした。
 そこに浮かぶのはひとつの黒い点。
 徐々にだが、こちらへと降下してくるのが判ると人々らはどよめき出した。

「鳥か?」
「飛行船じゃないか?」
「馬鹿言え。飛行船のエンジンにラズカリクムの粉塵が入り込んだら、たちまちオジャンだ」
 やいのやいのと野次馬らが騒ぎ立てる中、目を細めながら眺めていたひとりの住民が叫んだ。

「いや、人だ! 空から人間が降りてきている!!」
 ミドの町の住民らは我が目を疑うが、この地は二度も猟兵の手により救われている。
 きっと彼も猟兵の仲間に違いない。
 誰もが希望を胸に空からやってきた稀人を歓迎すべく固唾を呑みながら見守り、マントを吹き抜ける熱風で棚引かせながら男は降り立つ。

『諸君! 我が名はファーストヒーローのひとり、ザ・スター! ヒーローズアースより来訪せし世界最初に結成されしスーパーヒーローチームの一員である!!』
 人々はやはり猟兵であったと歓声が湧き立ち、拍手を送って『ザ・スター』を歓迎しようとしたその時……彼の口からとんでもない言葉が放たれる。

『この地には無数のプラントがあった過去があり、殲禍炎剣の被害を免れた物が密かに稼働している! そのひとつが邪神の複製体≪レディ≫の製造工場である可能性があり、私はこの地をクロムキャバリアより消滅させることを決めた! だが、私も非情ではない。諸君らに猶予を与えよう……10日以内にこの地より去るのだ!!』
 それを聞いたミドの町の住民らは、臆することなく『ザ・スター』へと抗議する。
 確かにここは住むには不便なところだ。
 だけど、自分たちはここで生まれて育ってきた。
 ここが自分たちの故郷なのだ、と。

『諸君らの気持ちは深く分かる。分かるからこそ、宣告も無しの殲滅を我が心を受けて止めたのだ。去らなければ……諸君らはこの殲禍炎剣により、この世から消滅するのだからだ!!』
 ファーストヒーロー『ザ・スター』は飛び上がる。
 それもこの世界では|禁忌《タブー》である、殲禍炎剣の砲撃を招く速度でだ。

「逃げろぉ!!」
 住民たちは蜘蛛の子を散らすように地下シェルターへと走り出す。
 だが、一向に裁きの光は降り注いで来ない。
 不審に思ったひとりの住民が様子を確認しようと外へと出て天を仰げば、そこには信じられない光景が広がっていた。

「あれが……殲禍炎剣の光……」
 遙か上空には謎の光の壁が広がり、その先には殲禍炎剣による怒涛の砲撃による破滅の光が点滅している。しかし、光の壁がそれらを受け止め、吸収することで地上への被害は出ていない。
 アレが消滅すれば百年前と同じ……いや、それ以上の被害がミド・バール全域を灼き尽くすだろう。

『我が心よ……これが私の最大なる譲歩である。|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》! ようやく旅の目的地に辿り着いたというのに、何もせず引き下がれるものか! 他のファーストヒーローたちも呼び寄せ、一気にこの世界を殲滅するぞ!』


●グリモアベースにて
「……という予知を受け、クロムキャバリアに新たな災いが襲来しました」
 グリモアベースに集った猟兵たちを前に、シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は説明を続ける。

「彼の名は、ファーストヒーロー『ザ・スター』。かのジャスティス・ワンにエナジー・ゲートを授けた人物であり、世界最初のスーパーヒーローチーム『ファーストヒーロー』の一員です。彼らには倒すべき宿敵が存在し、その宿敵は世界の|理《ことわり》の外に存在するため、彼らは『自身の歴史介入』を禁じる事で世界の外から宿敵を探しています」
 そのひとりこそ、骸の海を越えてクロムキャバリアへと来訪した『ザ・スター』。
 戦神アシュラの複製体『アシュラレディ』の製造工場がクロムキャバリア内にあるプラントであると睨んだザ・スターであったが、どのプラントが製造工場であるかまでは把握できていない。
 故に確実な方法を選択した……クロムキャバリア内のプラントというプラントを破壊し尽くすと!

「彼は強靭過ぎました。強靭であり過ぎた故に生きながらオブリビオンと化し、今や生活を支えるプラントを破壊する化身となりました。放置していれば、破壊されたプラントの代わりとなる無事なプラントを武力による簒奪で奪い合うのは必定。何としても高高度で立ち退きの期日を迫る彼を倒さねばなりません」
 だが、辿り着くにはそこまで到達せねばならない。

「今回標的にされたミド・バールですが、多くの遺物が埋没されいます。それらを発掘して糧としているのがミドの町。困り果てている住民たちは猟兵たちの助けとなるべく、故郷を守るために助力は惜しまないでしょう。高高度にも達する消失した航空技術を蘇らせ、ザ・スターをお止め下さい」
 そう締めたシグルドはグリモアを展開させ、猟兵たちを送り出すのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 ロボットバトル物であったクロムキャバリアにとんでもない人物がやってきましたが、色々と事情があるご様子。
 しかし、だからと言ってプラントを破壊し尽くすという狼藉を阻止せねば、ですね。

●シナリオ概要
 「【Q】スナークゾーンを解明せよ」についてグリモア猟兵が調査を進めていた最中、突如としてクロムキャバリアに謎のオブリビオン「ザ・スター」が出現するという予兆が発生しました。
 その目的はなんと、「世界全てのプラントの破壊」……!
 生身のまま超高速で飛来した「ザ・スター」は、ターゲットした任意の小国家の「プラント」の遥か上空に、謎のユーベルコード「エナジー・ゲート」を張り巡らせます。
 当然のように|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》から怒涛の砲撃が繰り出されるのですが、それらは何故か尽くエナジー・ゲートに吸い込まれ、消滅してしまいます。
 その状態で「ザ・スター」は殲禍炎剣、またはエナジー・ゲートから「空中戦対応型オブリビオンマシン」の大群を召喚し、反撃できない高高度から有無を言わさずプラントを破壊するつもりです。
 こちらもクロムキャバリア史上初の「超高高度空中戦」で立ち向かわなければなりません!

 第一章は【集団戦】フラグメントとなります。
 殲禍炎剣の無差別砲撃がある為、クロムキャバリアの軍備は基本的に「空中戦を全く想定していません」!
 元々自力で飛行できる猟兵はそれで構いませんが、そうでない場合はキャバリアに「古代の飛行機械」を換装したり、失われた筈の「飛行機技術」を継承したイカレ……もとい稀少な飛行機技士に戦闘機を作ってもらったりしなければなりません。

 第二章は【集団戦】フラグメントとなります。
 ザ・スターがエナジー・ゲートから召喚した「空中戦対応型オブリビオンマシン」との高高度空中戦です。
 空中戦を上手くこなした猟兵には、プレイングボーナスが発生します。

 第三章は【ボス戦】フラグメントとなります。
 ファーストヒーロー「ザ・スター」との空中決戦です!
 ザ・スターは生身で戦いますので、彼よりも巨大で鈍重なキャバリアや航空機類では簡単に翻弄され、一方的に破壊されるかもしれません。
 それに上手く対処できればプレイングボーナスが発生しますので、余裕あればお狙いください。

 それでは正義と正義の激しい闘いにも負けない熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 日常 『空中戦に備えろ!』

POW   :    徹夜で空中戦用の機体や装備を開発する

SPD   :    既にある技術を応用し、飛行手段を編み出す

WIZ   :    幻の「飛行機技士」を探し出し、助力を頼む

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「またお前たちに世話になってしまうな」
 ミドの町は先刻飛来してきた『ザ・スター』により言い渡された事実上の退去勧告に騒然とする中、自警団の代表である青年が耐圧服めいたオレンジ色の防護衣とヘルメットのマスク部分から伸びたホースが胸にぶら下げた空気濾過装置に繋がれた姿で猟兵たちと対面する。見ているだけでも何とも暑苦しく、おもわずむせてしまいそうな出で立ちだが、これも過酷な地で生き抜くためのものである。
 まだ防護マスクを付けていない猟兵に微粒子レベルで漂う死の粉塵から身を守る簡易マスクを手渡すと、今の状況は説明する。

「事態はご覧の通り。ガキの頃から爺さん婆さんから聞かされた『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』の砲撃を、奇妙な壁越しに見せつけれて住民の意見は真っ二つに分かれてしまってる」

 ひとつは、逃げる。
 命あっての物種だ。今すぐここから逃げるべきだ。

 もうひとつは、この場に留まる。
 ここは自分たちが生まれ育った土地だ。
 あの程度の言いがかりに屈する自分たちではない。

「ま、逃げようと言い出している連中は、蒼い砂漠の下で眠っているお宝目当てに他所から移り住んできた山師たちだがな。昔からミドの町に根ざしている住民らは何が何でも残るつもりでいる」
 そうであれば、自警団としてこの町を護っている自分も離れるわけには行かない。
 かくしてミドの町の住民たちは、如何にして我が物顔で立ち退きを迫る余所者を追い払うか集会所で議論を交わしている最中である。

「一応だが反撃の手立てはある。自警団が所有するキャバリア、ピースメーカー。お隣の傭兵派遣で食ってる|小国家《ヘキサ》が随分昔に開発した物だが、その地その地の環境に応じて現地改修できる設計の余裕さから今も改修を重ね続けていて現役だ。ここでは蒼い砂漠から掘り起こした航空機用の部品を使って、脚にホバー推進機能を加えていてな」
 これにより地平線の彼方まで砂漠が続くこの地でも、徘徊する無人機であるオブリビオンマシンに遅れを取らない機動性で撃退している。
 クロムキャバリアにおいてはプラントが作り出す物資に頼らずを得ないが、それも叶わないこの地では『無い物は自分たちで作り出す』をモットーとしている。
 これも百年前の殲禍炎剣によって世界が焼き尽くされる前にあった大工業地帯であった名残であり、その焼け跡となった廃墟から被害を免れた物資を発掘できるという特異性ある地であるからだ。

「これを分解して、飛行用のバックパックに作り直すことを目下検討中だ。まぁ、推進する向きを横から縦に変えただけだが、無いよりはマシだ。あの|デカブツ《ピースメーカー》をホバーで浮かせて進めれるだけの出力はあるが、調整にはそれ相応の日数が必要だ。期限となる10日以内に仕上げないと、だ」
 それと、と彼は念を押すように語りだす。
 ミド・バール全域には、微粒子レベルとなったラズカリクムの粉塵が大気中に漂っている。仮に自前のキャバリアが禁忌の飛行技術を有してしていても、それをキャバリアが吸い込んだりすればエンジンに付着して故障する危険性がある。
 幸いにミドの町にあるプラントでは、ラズカリクムの粉塵を濾し取るフォルターが生産されている。これを加工し、この地に適した防塵機能を付与せねば……である。

「あと、ピースメーカー用のバントライン砲での対空砲撃も検討中だ。元々野戦砲を現地改修してキャバリアに持たせたのが始まりらしいので、その射程を活かせば地上からでも時限信管を使えば高高度の高さまで攻撃は出来るだろうが……命中精度はお察しなのが悩みか」
 これは支援攻撃プランに回すしかないなとボヤくと、何か思い出したような素振りで話が続けられる。

「さっき提示した飛行プランだが、それでは不十分とか信頼性に欠けるのが居れば蒼い砂漠のプラント跡地で掘り出し物を漁るのも手だ。この町には他所で問題を起こして追放されて流れ着いた連中も居る。もしかしたらだが、禁忌の航空技術に興味を抱いた末に手を染めた技術者かもだ。そんなたいそれた真似をした重罪人も、今となれば希望の星だ。今は不問として、この事態打破に一役買ってもらおう」
 しかし、町の外ではオブリビオンマシンが徘徊している。
 その危険を承知で、今もミド・バールの下で眠る人々が自由に大空を飛んでいた遺物を探す時間はまだ残されている。
 どの手段でザ・スターが控える成層圏手前となる高高度の高さまで飛ぶか、各猟兵の手に委ねられた。

「自己紹介が遅れたが、俺の名はユプシロン。またの名をウィル・トゥエニー……この地のプラントで産まれた20番目のウィル型レプリカントだ。改めてとなるが、よろしく頼むぜ」
メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
SPD選択

ブルーアルカディア出身なので自分の王国の秘蔵ガンシップ・グリーンフラッシュをキャバリア用飛行ユニットや戦闘機の量産のための資料として提供します。世界が異なるせいで陸戦用のキャバリアとは技術体系も違いますし、グリーンフラッシュは超機動・高火力・制御困難と非常にピーキーな機体なのでどこまで参考になるかはわかりませんが、それでも何らかの刺激にはなるでしょう。この世界のキャバリア「ネオン」も持っているので、両者の違いを比較検討する材料になるかも。そして、うまく飛行ユニットや戦闘機が完成したら、【空中機動】を活かして突貫で乗り手に飛行訓練をします。



「これが|戦闘機《ガンシップ》……実に、実に興味深い! うひひひひ!」
 突貫工事で遙か上空……神の領域と言っても過言ではない高高度の世界を目指そうと、工作機械の稼働音と喧騒が響き合う空気が清浄な地下ガレージの一角で、顔面がツギハギだらけである初老の老人がギラつく目を剥かせる。

「ねぇ……あのお爺さん、本当に大丈夫なの?」
「……Dr.マシキシュタイン。見ての通り、空に憧れ続けて頭がイカれた|飛行機技士《マッドサイエンティスト》だ。失伝した禁忌の航空技術の復活を夢見て研究し続けてきた挙げ句に国を追われ、今はこの町に流れ着いた腕の良いジャンク屋さ。発掘された航空部品を専門に鑑識して貰って世話になってるが、悪い奴ではないのは確かだ」
 何か参考になるかもと王国秘蔵のガンシップ・グリーンフラッシュを資料として提供したメディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)であったが、言葉通り嘗め尽くす勢いでグリーンフラッシュを丹念に調べ上げている様を見て引いてしまう。
 ユプシロンは何時もあんな感じであると呆れ半分に紹介し終えると、鼻息を荒くさせながら放っておけばバラバラに分解する勢いでガンシップを調べ上げているDr.マシキシュタインに尋ねる。

「でだ、爺さん。コイツはどうだ?」
「ぐっふふふ、たまらんのぉ! 高い機動制と高火力、このふたつを両立させる為にパイロットの技量で解決させる制御困難なピーキーさ! やはり戦闘機はこうでなくてはのぅ!!」
 確かに変人であるが見る目はあるとメディアは感心するが、即ちそれはパイロットを選ぶという事実。そして、ザ・スターが告げたタイムリミットまで残すところ10日余り。リバースエンジニアリングによる機体の量産はおろか、パイロットの錬成期間も正直あるかないかという次元だ。それともうひとつ問題がある。

「そして、この超小型なエンジン……あー、お嬢ちゃんの解説だと『天使核』……だったかね? これを再現するには長い歳月を要するかもじゃな」
 天使核、それは|動力《エンジン》として加工されたオブリビオンの心臓である。
 ブルーアルカディアではこの天使核を用いて、飛空艇や魔導機械、浮遊大陸の沈没をも防ぐ『天使核文明』を編み出した。だが、これは素材元がオブリビオンということもあって汚染と暴走の危険性も孕んでいる。
 この世界においてはオブリビオンマシンのコアが素材として活用できそうだが、裏を返せばオブリビオンマシンを組み直すこと以外の何物でもない所業となる。
 オブリビオンマシンがもたらす狂気に抗える猟兵ならともかく、一般人が乗り込めば目も当てられない事態となるのは明らかだ。

「じゃが、何事も試作機からのスタートとなる。まぁ、量産型グリーンフラッシュは諦める形となるが、わしの手で此奴をグレードアップすることは可能じゃ。もしくはこの天使核のみを取り外し、お嬢ちゃんのキャバリアとの規格が合う飛行ユニットのコアとして組み込むことも可能じゃな。どちらもデータが無い分、文字通りお嬢ちゃんにはテストパイロットとして死にものぐるいに頑張って貰わねばならんがのぅ……ひひひ!」
 他国のプラントであれば設計図を入力すれば自動的に試作品を製造することは出来るのだが、ミドの町のプラントにはそのような機能が備わっていない。
 そして、この町においてキャバリアを作るとなれば、頭から脚までの部品を郊外の蒼い砂漠地帯から発掘するか、鉄道を通して持ち込みハンドメイドするしかない。

「強化型グリーンフラッシュかネオン用のフライトユニットのどちらか……そう言われると迷うなぁ」
「迷え迷え。人生とは選択であり、選択とは他の可能性を捨てることじゃて。わしとしてはお嬢ちゃんがどっちを選んだええんじゃがのぅ! だあああ~はははははあ!! 」
 メディアが悩んでいる最中でも刻々とタイムリミットは迫っている。
 ガンシップかキャバリアか、メディアは『選択』と『決断』の崖っぷちに立たされたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星川・アイ
【渡り禽】 アドリブ歓迎
まさかクロムキャバリアで空中戦する日が来るなんてね~……

アタシの装備でやれそうなのが、空間戦闘用のOFを換装した【ジェナス-VspⅡ】と全領域対応型戦艦の【リンドヴルム】だから、これらを高高度戦闘向けに調整しようか
それと多喜さんの新装備の訓練があるようだし、アタシも遥翔 さんと一緒に参加するね
……こっちも初めて使う装備があるしね~、という訳で訓練の最中にジェナスを【キャバリアクロス】化!
唐突で悪いけど、こっちの調整にも付き合ってもらうよ!


数宮・多喜
【渡り禽】
【アドリブ改変大歓迎】

高高度での高速戦闘かぁ……
カブを纏っての【人機一体】形態でなら慣れてるけれど、戦闘時間に難ありだし、粉塵の只中を生身で飛ぶのもぞっとしないねぇ。
そんじゃ最近見つかった、Overed用のリフターでなんとかしてみますかねっと!
プラントで防塵処理を施してもらったら、さっさと訓練飛行開始さ。
流石に自前の身体を動かすのと機体を『操縦』するのは勝手が違うだろうから、
星川さん、久遠寺さん、訓練の相手をよろしく頼むよ!
キャバリアでの『空中機動』と『空中戦』のイロハをアタシに叩き込んでおくれ!
……それにしても、なんだって今頃リフターの格納亜空間が見つかったのかねぇ?


久遠寺・遥翔
【渡り禽】
アドリブ歓迎
俺のイグニシオンはSOWの技術で作られていて、空戦・宇宙戦で真価を発揮する機体だ
既に別の戦場で高高度空中戦も経験しているのでその[戦闘知識]と[メカニック]技術を駆使してイグニシオンを調整
普段の[空中戦]とは違う、この高度に最適なパラメータ設定に機体を仕上げる
巨神レヴィアラクスは本体は留守番だけど、その端末をナビゲータとしてイグニシオンに同乗できるようにしておく
今回の相手は戦闘中も色々と情報を集められるようにしておきたいからな
あとは今回の戦いに向けてアイと一緒に、まだ慣れていない多喜さんの慣熟訓練の相手をつとめる
得られたフィードバックを元にこっちの機体も最終調整だ



「高高度での高速戦闘かぁ……」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は雲ひとつもなく晴れ渡った空を仰ぎ見る。手を伸ばせば届きそうで届かない神々の世界に憧れ、人類は何時か空の彼方まで飽くなき挑戦を挑んできた。
 この世界、クロムキャバリアも例外でなく、高度に発達したロボット工学技術をもってして百年前までは自由に空を飛んでいただろうが、暴走衛星|『殲禍炎剣』《ホーリー・グレイル》による高速飛翔体を狙った無差別砲撃により封じられた。が、それでも人類は何故、危険を犯してまで大空に憧憬を抱き続ける。
 そして今、他世界より来訪せし者の手により、世界の|理《ことわり》が崩れようとしている。

「まさかクロムキャバリアで空中戦する日が来るなんてね~……」
 星川・アイ(男の娘アイドル風プロゲーマー・f09817)も未だ実感が湧かないが、空同様に蒼い砂漠地帯全域を覆うように展開されたエナジー・ゲートと思わしき光の壁が証明している。
 それはアイが持ち込んで今は町の外に着艦している飛行戦艦『リンドヴルム』の姿を捉えた殲禍炎剣が、これを目掛けて砲撃しようとしたもののエナジー・ゲートにより吸収と消失を機器で観測できたのだから事実として受け止めるしかない。

「これを上手く利用できたとしたら、あの暴走衛星を破壊できる日が来るかもな」
 リンドヴルムの貨物室内でミドの町より提供された防塵処理素材を相棒の|バイク型AF《イグニシオン》に施していた久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)は用を弁ずる。
 何らかの手段でザ・スターが用いるエナジー・ゲートを猟兵側が手にすれば、無差別砲撃を無効化して衛星軌道上の殲禍炎剣まで到達することは夢ではない。しかし、それはクロムキャバリアの均衡を辛うじて保たせている楔を消滅させる以外の何物でもない。
 これによりオブリビオンマシンの狂気に囚われた者たちによる航空攻撃や弾道ミサイルなどの破壊手段が取られる事態が頻発することを考えると、殲禍炎剣の破壊は現状維持でこのままにしておいてオブリビオンマシンが発生する事象を何とかすることが先決であるのが最善とも思えてしまう。

「そう言えば、久遠寺さんって他のザ・スター相手とも戦ったことがあるんだろ? 高高度の戦闘はどうだったのさ」
 そして、こうも単純作業を黙々とこなしていればお喋りが弾んでしまう。
 オブリビオンは骸の海より染み出す世界の染み。
 世界最初のスーパーヒーローチーム『ファーストヒーロー』の一員であった『ザ・スター』も、今はオブリビオンとしてクロムキャバリアに災厄を齎そうとしている。
 ほぼ同時多発している事態にあたって対応した彼から何かヒントが得られるかもと、多喜は退屈しのぎがてら質問を投げかける。

「そうだな……俺のイグニシオンはスペースオペラワールドの技術で作られていて、空戦と宇宙戦で真価を発揮する機体だ。だが、星と宇宙では大気があるかないかで環境は大違うでもある」
 さながら禅問答な返事に多喜は首を傾げてしまうが、要点を得た顔持ちで今度はアイが喜々としながら喋りだす。

「もしかして、気圧の差とか物凄く寒いとか? ほら、ジャンボジェット機が飛んでいる高さって言えば富士山とかエベレストよりも高い訳だし」
「正解だ。星の環境にもよるが、地球と同じ条件なら標高が100メートル高くなるにつれて気温は約0.65度ずつ下がり続ける。標高500メートルの高地となれば約3.25度、標高1000メートルでは約6.5度だ」
 それを高度1万メートルに換算すれば、地上との気温差は約65度。
 これを地上の気温を15度と仮定すれば、約マイナス50度の極寒の世界となる。

「あー……それだったら、カブに乗らずで正解だったかもねぇ……」
 旅客機にはあまり乗った経験がないものの、空の旅が地上と変わらない環境で楽しめる外は極寒の世界と聞けば、つくづく人間とは文明で守られているものと実感してしまう。

「だが、それは対流圏内までの話だ。より高度を上げた成層圏と熱圏では、太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子エネルギーを吸収することによって逆に温度が高くなる。これは太陽に近づいたが為ではなく、成層圏内のオゾン層にたまった紫外線の影響などによるものだ」
 熱圏に至っては条件次第で2000度に達すると久遠寺が述べれば、ふたりは当然信じられない顔となってしまおう。

「とは言うが、そこまで行けば空気はかなり薄くなっている。宇宙では空気と一緒に冷却材を放出しないと機体に籠もった熱を排熱できないのと一緒で、溜まった熱は空気がなければ物質を通して伝わってくることはまずないさ」
「空気ってほんと、偉大なんだねぇ」
 この話を聞くと本当に暴走衛星を破壊できるものなのかと訝しんでしまうが、猟兵とは生命の埒外たる存在。ヘリポートを経由してやってきたあちら側の|番犬《ケルベロス》同様、コンクリ詰めされて海底まで沈んだとしても死にはしないが死ぬほど苦しむ程度だろう。
 閑話休題、そうこうして他愛ない会話をしていけば自ずと作業も捗っていく。

「ふぅ、これで終わりだね♪」
「肩が凝りそうだったよ、まったく。まだXデーまで十分時間があるし、新調したJD-Overed専用リフターユニットの調整はできそうだ」
 吸気系、細部に渡る関節部にまで至る防塵処理。
 これも高高度に至る戦闘の最中で不測の事態を未然に防ぐための処置である。
 幸いながらリンドヴルムという空飛ぶ足場は確保出来ているが、それに取り付けなければただただ地上へと落ちていくだけ。
 何かあればすぐに脱出できる地上戦とは異なる戦闘領域、それが空での戦いだ。

「さぁて、気分転換がてら訓練飛行開始さ。星川さん、久遠寺さん、訓練の相手をよろしく頼むよ! 空中戦のイロハをアタシに叩き込んでおくれ!」
「望むところだ……と言いたいが、ユプシロンから言付けを受けている。もし機体の調整で模擬戦を行うのであれば、町の外を徘徊している無人機型オブリビオンマシンの駆除を願うと。ミドの町の戦力は今や空へと向けられている。最悪の事態に陥るのは何とか避けたいのだろう……|渡り禽《RAVENS》の一員として、無下に断る道理はない」
「それに一体倒すごとに町から報奨金が出るんだって。ちょっとしたお小遣い稼ぎが出来るなら、騎兵団らしくそっちでも良いじゃない?」
 確かにそう言われれば、作戦結構時での不安材料となる野良オブリビオンマシンの頭数を今のうちに減らしておくのは合理的判断と言えよう。仮にオブリビオンマシンを発見できずとも、帰投する前に模擬戦を行えば良いだけの話でもある。

「じゃ、それで行こうじゃないか。行き掛けの駄賃稼ぎにさ!」
「こっちも初めて使う装備があるしね~。無人機のオブリビオンマシン相手なら気兼ねなく相手できるし、思う存分戦えるね♪」
「もし哨戒を兼ねた飛行慣熟訓練で発見できなければ俺が相手するが、こちらのフィードバックもある。手加減はしないつもりだから、覚悟しておけよ?」
 教官役の久遠寺が先行する形でリンドヴルムのハッチからイグニシオンを出撃させ、それに続かんとキャバリアクロス化させたジェナス-Vspに身を纏ったアイが続く。

(……それにしても、なんだって今頃リフターの格納亜空間が見つかったのかねぇ?)
 亜空間より転送される謎多きサイキックキャバリア、JD-Overed。
 操縦系統がサイキッカー用の宇宙バイクと酷似しており、さながらバイクに跨る形のコックピットで多喜はふとした疑問を抱く。
 だが、そんな彼女に湧いた小さな疑問は揚力を得るため瞬間的に生じて身体を襲うGの負荷が吹き飛ばしてしまい、蒼い結晶体で埋め尽くされた砂漠に三機の渡り禽はその姿を影と共に映し出しながら空高く飛翔するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ファーストヒーローはいずれも高潔な方達でした。
それがこのような事になったのは本当に痛ましいです💦
せめて犠牲者が出ないよう頑張りましょう。

ユプシロンさんから防護マスクを借り受け、焔天武后の飛行機能強化を依頼いたします。

焔天武后はスーパーロボット故に、低空での高速戦闘は可能ですし、これまでも経験しておりますが、ラズカリクムの粉塵は厄介ですものね。
(焔天武后に)「ですので、ここはこの町の皆さんのお力をお借りしましょう。」と語りかける。

まず第一は粉塵機能付与。
次に脱着可能な飛行戦ユニットの装着(可能なら地上に被害を出さないよう、パージ後は街に帰る自動帰還機能が欲しい所です。)
をお願いいたします。



 ヒーローとはいつの世でも孤独な存在である。
 例え誰に顧みられなくとも、誰に理解されずとも、戦い続けるのは揺るぎない信念と使命があるからだ。
 しかし、誰がヒーローが掲げる『正義』を『正義』であると肯定するか?
 社会その者が『悪』だとしても、自身が『悪』ではないと証明するのは他ならない大衆であり、彼らから理解されずとも『誰かに褒められなくてもいいや』と考えたとき、初めて孤独が味方になる。

(ファーストヒーローはいずれも高潔な方達でした……。それがこのような事になったのは本当に痛ましいです💦)
 古きの八百万の神々の一柱、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は大きく落胆した。植物と活力を司る豊穣の女神として|善悪の二大決戦《ジャスティス・ウォー》では世界ないし人類を庇護する善神として参戦したが、ジャスティス・ワン同様に彼女もまたファーストヒーローらとの面識がある。あるからこそ、あれほどまで己を律して使命に殉じる高潔な精神がオブリビオンとして堕ちてしまったことは今も信じられない。
 ザ・スターが掲げる、余りの残虐さと邪悪さ故に処刑された原初の戦の女神……『戦神アシュラ』のクローン体『アシュラレディ』の脅威は、戦神アシュラとして本来の神性を取り戻さんとするアシュラレディとの戦いで彼女も識っている。識っているからこそ、クロムキャバリアのプラントがアシュラレディのクローン体を生産する秘密工場として機能しているのを破壊するまでは理解できても、すべてのプラントを破壊し尽くす手段だけは賛同できない。

「……せめて犠牲者が出ないよう頑張りましょう」
 だからこそ、彼女は選択する。
 プラントそのものが災いを齎すパンドラの箱だったとしても、それを良き方向へ運用して希望という明日の糧を得る無辜なる人々のために、大先輩だろうともザ・スターの正義を否定してキツいお説教のひとつやふたつをぶつけてやる覚悟を。
 呼吸するたびに息苦しさを感じる防護マスクを付けながら、真紅の装甲持つ美しい女皇帝型のスーパーロボット『焔天武后』を見上げる。

「ですので、ここはこの町の皆さんのお力をお借りしましょう」
 焔天武后自体は低空において高速戦闘は可能で、これまでの戦闘で幾度もそのように機動してきた。
 だが、相手はレジェンドたるファーストヒーロー。彼の元まで到達できようとも、星の名を冠するザ・スターの疾さに付いていけるかまではであり、それは遠い昔の記憶として詩乃は覚えている。更なる疾さ、加えてこの地に適応するための防塵処理を施すべく、詩乃はユプシロンの紹介でとある町工場を訪れた。
 本来は地平線の彼方まで墓標のように点在する大工業地帯だった名残でもある『白骨都市』とも呼ばれている廃墟から回収したジャンクを解体し、まだ使える部品や鋼材などを再加工する町工場であるらしいが、今や鉄火場さながらの騒然さとなっている。ピースメーカー・デザートカスタムの両脚に取り付けられた小型エネルギーインゴットエンジンによるホバーシステムが解体され、新たに飛行ユニットとして再生されようとしている。
 今までは一機分のキャバリアを噴出孔から吐出される高圧力の噴流によって僅かに浮かせていたが、長時間に渡る運用のためにかけられていたリミッターが解除された二基のエンジンが生み出す推力であればあのザ・スターの疾さにも到達できると、詩乃としては非常に頼もしい限りだ。
 後は各キャバリアに対応した形状の外装を取り付けるだけであり、それが完成するまでは焔天武后に防塵処理を施す時間となる。その最中、ふと詩乃はある疑問を抱く。

「ところで、何故ここまで入念に防塵処理を施さねばならないのですか? 何か普通の砂塵と違う理由があるのでしょうか」
「駆動系の保護や町の中に汚染物質を持ち込ませないためでもあるが、ラズカリクムの厄介な性質への対処が一番の理由だ」
 曰く、他のレアアース同様に粘土状の物質として産出される。
 そのままでは何も用途がない希少金属だが、他の金属と合金化することで絶対的な強高度を誇る金属、超高性能な半導体素材、構造上無理のある変形合体が可能な形状記憶合金など無限の可能性を秘めた賢者の石とも言える触媒……それがラズカリクムだ。

「問題は、必ずしも人間にとって有益な物でない存在であることだ。百年前の大破壊で舞い上げられたラズカリクムの粉塵は、同じように舞い上げられた様々な化学物質の粉塵に工業地帯故に汚染された大気と結合し、結晶化されてこの地に降り注いだ。表沙汰となってないが風の噂で聞いたヘキサを襲った地下帝国の|機動獣《モビルビースト》……人間のみならずあらゆる生命体に有害な放射線を放つ装甲もラズカリクムあってのものだ。つまり神にも悪魔になってしまう存在以外の何物でもないのさ」
 仮に粉塵状となったラズカリクムが何らかの拍子にキャバリアと融合すれば何が起きるか分かったものでもない。その為の防塵処理だと改めて説明を受けた詩乃だったが、善神であっても在り方や別なる側面では悪神にもなりうる神のようであると自戒の念を抱かずにはいられない。
 同時にこの地に住む彼らの逞しさに感心するばかりでもあるが、だからこそ自身は善神として在り続けていなければ、だ。

「そうですか……ありがとうございます。ところで相談なのですが、飛行ユニットを切り離した際に自動帰還機能を取り付けることは可能でしょうか? パージした後、地上に被害を与えたくありませんので……」
「こっちも同じ考えでやっているさ。だが、汚染されたラズカリクムの粉塵が舞い上げられた砂嵐がな。どういう理屈なのか分からないが、あれが起きると強力な電波障害が起きてレーダーや無線機どころか赤外線も効かなくなる。電子機器依存のセンサーが利かなくなった保険に一応気圧の変化で感知する高度計で開くパラシュートは付けているが、まだ改善の余地がないか工場の親父さんと話を付けてくるよ」
 時間も物資も限られているが、やれるだけのことはやる。
 人間はか弱き存在だが、だからこそ逞しく生きている。
 そんな彼らを庇護するために詩乃もまた、作戦決行の日まで精一杯やれることはやる所存であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​