死の白翼は優雅に靡く
「新しい事件を予知しました。」
集まった猟兵達の前で、見回しながらそう告げるのはグリモア猟兵の白霧・希雪(呪いの克服者・f41587)だ。
今回はエンジェルとしての純白の翼をはらりと風に靡かせて、ゆっくりと話し始める。
「今回の事件は、ブルーアルカディア──遥かに続く大空と雲海の世界。」
希雪の故郷でもある、この世界は既に戦争が終わり、以前よりは平和が訪れている。しかし、それでもオブリビオンは残っている。
他の世界と比べ優先度は低いものの、それは放置をしていいという意味と同義ではない。
「屍人帝国の大軍勢が、とある平和な王国へ、攻め込もうとしています。」
屍人帝国──雲海の奥、骸の海から現れたオブリビオンで作られた帝国の総称。
今回のものは、天使が集まってできた帝国、らしい。
「それだけならば、現地の兵等だけでも、撃退まではいかずとも抑えることが可能です。しかし──」
この世界は、現地民もある程度の戦力を有する。
もちろん、猟兵ほどではないがUCを扱うものもそれなりに存在する世界。
現地の兵と協力して行う依頼もいくつかある。
「その軍勢は、既に失われた筈の【幻想武装群】で武装しています。」
かつての戦争で打ち破った筈の「天帝騎士団」の王が創造した武装。
常軌を逸した効果を内包するその武器防具群は尋常ならざる被害をもたらすことも考えられる。
「どこから手に入れたのか、圧倒的なまでの力。王国の正規軍や、数多の勇士達では、争うことができても、絶対に勝利は掴めない。|猟兵《私たち》が出なくてはならない力。」
現地の兵にはこの対処は重すぎる。
場合によっては国が一つ消えてしまうことにもなりかねない。
話している希雪の声にも、心が乗っている。
「その軍勢の──狂った白い天使の歌を、声を、耳に入れてはいけません。天使病──他の世界だと翼圧症と呼ばれる病──に感染し、激痛に苦しむことになるでしょうから…」
このように、と、希雪が延ばした手のひらから皮膚を突き破って翼が生える。
希雪はそもそも天使なのでこれが正常なのだが、他のものにとっては違う。
制御もできず、操作もできず、体から激痛とともに生え続ける翼は、しかし自分の体の一部なのだ。もし切り落とそうとしても、それは自分の腕を切り落とすのと同じ激痛を伴うだろう。
「それに、彼女らには幻想武装群がある。それは彼女らにつけられた一つのリングと、そこから生えている黒の翼です。そのどちらかを破壊すればその効力を失います。」
白い翼の中に混じる黒い翼と、その付け根にあるリング。
場所によっては狙って破壊することは難しいかもしれないが、それだけだ。
無力化しなくてはならないならともかく──
「効果は『拡大・浸透』…彼女らの声は広範囲に響き渡り、手や魔術などで耳を塞いでも体の内側に直接響く…とてつもなく危険な組み合わせであることは、想像に難くないでしょう。」
あまり聞きたくなかった話。
防がなくてはならない歌声が、より強く響き、単純な防御は貫通してくる。
激痛を齎す天使病と、音波による物理攻撃が、圧倒的な脅威になり得るということ。
「そんな彼女らを王国に近づけることなく討伐、または無力化した後に、敵将を討ち取ることが、今回の依頼内容となります。」
そんな敵、国へ近づけるなんて論外だろう。
猟兵としての全力を以て、防ぎ切らなくてはならないのだ。
話を聞く瞳に、心に、炎が灯る。
「敵将については…眩いほどの光を纏った天使です。ソレについての見ることのできた光景は少ないですが、一つだけ。」
今回、敵将についての情報は多くないらしい。
そもそも、軍勢自体が強大な為、簡単な任務にはならないだろうが、その上、敵将が強い力を持っているならば──
「大きく翼を開いて、戦場全体を七色の十字架が蹂躙する光景──」
ダメそうだ。どう考えても、強敵っぽい響きがする。
だが、その分、ここで骸の海に放逐できたら大きい戦果となるだろう。
「厳しい相手になるでしょうが、その敵将を倒しさえすれば残る敵軍も潰走し、平和が訪れることになるでしょう。」
敵将を討ちさえすれば、敵兵の全てを殲滅する必要はないとのこと。
「現地で協力してくれる味方も、短時間ならば敵軍の歌声に抵抗できます。一斉攻撃で隙を作り、敵将を素早く倒し切ることができたならば──」
被害を最小限に、依頼を成功させることができる、か。
簡単に言ってくれる、というものだが、それは信頼の証。
信頼には応えなければならない。
「それでは、|門《ゲート》を開きます」
希雪はいつものように振り返り、その両腕と翼を大きく開いて、辺りには白い|霧《グリモア》が満ちる。
「行き先は、ブルーアルカディア。では、ご武運を──」
さて、出陣だ。
カスミ
どうも、カスミです。
獣人戦争が終わってからしばらく経ちましたが、リアルの方が少し落ち着いたので復帰です!
と、言ったところで概要の説明から。
今回の依頼は、ブルーアルカディアに現れた屍人帝国の大軍勢が、とある王国を襲おうとしているので、被害が出る前に撃退しよう、と言った流れとなっております。
この戦闘には、敵へ一緒に攻撃してくれる王国の正規兵や勇士が多数参加しており、連携を成功させれば効果的な攻撃を放ってくれるでしょう。
敵兵は歌声での攻撃を繰り出しますが、それは「幻想武装群」によって強化され、対処は困難を極めます。
第一章では、単純な防御の効かないそんな歌声をどうにかして無力化するか、食らった上で最速で蹴散らすかして、対処してください。
そして、敵兵をある程度減らすと、敵将の姿が見えてきます。二対の翼を持つ堕ちた天使ですが、非常に高い戦闘能力を持ち、猟兵以外には対処など不可能、そんな存在です。
第二章では、どうにかしてそんな強敵を打ち破ってください。
固定のプレイングボーナスは特に設定しませんが、プレイングに応じてボーナスを差し上げます。
第1章 集団戦
『天使病・テルクシノエ』
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POW : 彩唱
自身と武装を【光彩を放つ翼と大音量の歌声】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[光彩を放つ翼と大音量の歌声]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
SPD : 幸唱
【何もかもを魅力する美しい歌声】から、戦場全体に「敵味方を識別する【あらゆる傷から翼を生やす奇病】」を放ち、ダメージと【精神の混濁と混乱】の状態異常を与える。
WIZ : 福唱
【あらゆる存在に祝福あれ】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【体の各部位を破壊しつつ翼が生える奇病】の状態異常を与える。
イラスト:しゃんるー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニクロム・チタノ
どれ程強大な敵がいようと圧政者の侵攻は見逃せない
歌をどうにか出来なくてもやりようはあるんだよ
反抗の加護あり
超重力領域を展開して地面に叩き落とすよ!
確かに歌の効果で視聴覚は奪われているかもしれない、だけどそっちも重力で動くことはできない
反抗の雷装を解放して電撃をくらわせるよ
解放された電撃は地を走り重力で地面に張り付けられているお前達に向かって行く、それを動けないお前達が回避する手段はない
電撃が幻想武装を破壊したみたいだね?拡大・浸透の効果が消えて歌の効果範囲が狭まったよ
ゴルディウスをチャクラムに変えて歌の効果範囲外から一掃させてもらうよ
圧政の軍勢に反抗の鉄槌を!
大きな浮遊大陸の一つ、今回の防衛対象である王国からかなり離れた、開けた草原の上に、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は立っている。
空を見上げれば、ブルーアルカディアの澄み渡る青空。
その端に、輝くような「白」が覆う。
あれが、今回倒すべき敵。
その敵がどれだけ強大であろうとも、圧政者の侵攻は見逃せない。
ニクロムには、「歌」に──グリモア猟兵の説明によれば、敵の攻撃手段であるそれに──対処できる能力は持っていない。
生半可な対抗手段は無いと同じである以上、対策できる猟兵の方が限られてくるのだろうけど──それでも、やりようはあるんだよ。
LaLa La───
微かに、歌声が聞こえてくる。
美しい声だ。
耳を澄ませば、彩深いハーモニーが、鼓膜に響く。
しかしそれは、滅びの声だ。
歌を聴き、歌に呑まれれば──自身もまた、歌の一部となる。
「くぅッ──」
チタノの腕から、身を突き破り翼が生える。
攻撃とは違う痛み。
体をぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような──
もう、ゆっくりしていられる時間はない。
そしてこれは、想定通りだ。
「歌をどうにかできなくてもやりようはあるんだよ」
チタノは「白」へ駆け出す。距離は遠いが、それでもそこは、射程距離内だ。
「反抗の加護あり──」
振るう力は、超重力領域。
歪な翼で空を飛ぶ天使たちにとって、それはあまりにも致命的な能力。
高まり続ける大地の呼び声はその力を増し続け、遂には敵軍の三割ほどを地に叩き落とすに至った。
だが、それには僅かだとしても時間がかかったのも事実。
腕から、体から、足から、顔から、至る所から蠢く翼が皮膚を貫き生え揃う。
「くっ、ぁ──!」
奪われる行動の自由、奪われる視聴覚。そしてその代わりに与えられるのは醜く美しい純白の翼と、激痛。
両者ともに万全とは言い難い被害を受けた。そして先に新たな行動を起こすのは、チタノだ。
「反撃の、雷装──解放ッ!!」
痛む体を無理やり動かして、その身から迸る電撃を余すことなく送り込む。
解放された電撃は地を埋め尽くし、大地に縫い付けられた|天使《お前たち》に向かう。そして、それを回避する手段はないだろう?
視界の奥で、黒い煙が立ち上る。
鳴り響いていた歌は急速に弱まり、遂には聞こえなくなった。
だが、死んだわけではないだろう。おそらく──幻想武装の破壊によって歌の効果範囲が狭まったのだろう。
歌が聞こえぬのならば、これ以上、翼が伸びることはない。
手に持った黄金の球に魔力を注ぎ、円形の刃、チャクラムを生み出す。
体から生えた翼など無視して、舞うようにチャクラムを薙ぎ、そして投げればその凶刃は天使の命を刈り取ってゆく。
白い天使が、紅に染まる。
歌の効果範囲外からの、殲滅。天使達には、為す術も無く。
「圧政の軍勢には反抗の鉄槌を!」
文字通り、それは反抗者の裁きと言える。
圧倒的な反抗の力により、敵軍の力を削いだ。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「歌声か…空気の遮断はどうかな?宇宙空間の真空状態での戦闘を活用」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビットとシールドを利用して空気遮断をしてでの振動完全遮断を行ないリニアロングボウとレーザービームで攻撃を仕掛け敵の攻撃をテレポートで空間飛翔して避け、状況把握をしながら透明化し視聴嗅覚を阻害してそれでも攻撃が当たるならリライズにて反射してフルバーストとヘラ・エウピションによる総攻撃と波状攻撃を仕掛けます。
戦況次第では敵のUCを三女神の加護と粛清をを利用して封印/弱体化させます。
「敵の殲滅こそが勝機の鍵となる」
グリモアの霧に包まれて、新たな猟兵がこの浮遊大陸に降り立った。
名をティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)といい、澄み渡る青空の、その一辺をただ見つめて佇んでいる。
「今回の目標を視認……危険度──高。可能な限り最速の殲滅を推奨。」
どこか他人事のように、機械的にそう呟くティティスは、その|耳《感覚器官》で微弱な空気の振動を感知する。
妙に整った、これは──しかしこの距離で届く確率は──ゼロだ。通常ならば。
超高性能な彼女の|脳《演算装置》は僅かな疑問を作らない。
──検索結果。幻想武装群による強化の込められた「|歌《しゅくふく》」と断定。
演算結果が出たのと、その機械の体に似つかぬ純白の翼が生え出たのは同時だった。
損傷度合は低い。機械の体故に激痛もない。だが、僅かな違和感。
あの歌を聴き続けるのは、まずい。
「歌」の対策に対する検索結果──空気の遮断を推奨。
歌とは、空気の振動だ。喉の震えによって形作られたその「波」はモノを伝い、空気を伝い、それが人間であれば鼓膜を震わせ、認識される。
|この病《天使病》はその「認識」に乗る呪いのようなもの。
歌を歌と認識している間、その存在は歪められ、激痛に自我を堕とされ、彼女らの一部と化す。
「歌声か…空気の遮断はどうかな? 宇宙空間における真空状態での戦闘を活用、敵の歌声を無効化し殲滅する。」
ティティスの腕がゆるりと伸べられ、数多のファンネルが|産声《駆動音》をあげる。
展開されたシールドは空気の流れすらも拒み、徹底的に排除された空気はティティスの体を締め上げる。
しかし、これは慣れたもの。他の世界では、この状態での戦闘が当たり前であることも少なくないのだから。
ティティスの瞳には通常の視界とは別に、常に1分先の未来が映り、敵がどんな行動を行うのか、そしてあの歌がどんな影響を及ぼすのか、その他不測の事態を未然に封殺する。
それでも逃れ得ぬ未来というのが存在するのだが…それは今ではなかったようだ。
群に近づけば近づくほど、空気の振動は酷くなる。
「天使病」だけでなく、その音波もまた武器になり得る程に。
だが、それはティティスには届かない。届くはずがない。
攻撃ではない副次的な作用程度に破られるほど、ティティスのシールドは脆弱ではないのだから。
目標を射程距離内に捕捉──攻撃開始。
ティティスが展開する武装もまた、彼女らに対する圧倒的な脅威だ。
放たれる|光線《レーザービーム》は容易く白い翼を焼き貫き、|光弓《リニアロングボウ》の一撃は容易に命ごと地に落とす。
ティティスの姿はいつの間にやら消えているのもまた、混沌を加速させる。
天使の攻撃は無差別全方位の「音波」による攻撃な為そちらに影響はないが、その全ての攻撃を防がれる他、相手からの攻撃は確実に頭数を減らしているのだ。
「敵の殲滅こそが、勝機の鍵となる。」
ティティス側から見れば、UCを使うまでもない敵。
今回ばかりは、相性が良すぎたのだ。
ティティスの眼には、まだシールドの崩壊は見えていない。新たな攻撃もないようだ。
あと懸念すべきは、この軍勢を指揮する敵将の存在だが──
──と、未来を覗くその瞳に、極彩色の残光が見えた。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
くっ、この歌は…危険だ!
可能ならば歌の効果が出る前にUCを発動させた後、【不屈の意志】を使用
部位破壊・奇病の系統は瞬時に回復されるから、行動は可能だろう
ただ、身を引き裂かれる激痛は受ける事になる
耐性を持っていても気が狂いそうになるかもしれない
でも、そこは根性で乗り切るしかない
だって俺達が負けてしまったら、この苦しみをこの世界の人々が味わう事になってしまうから
そんな事は、決してさせない!こんな辛さを味わう人間が少ない方が良いに決まってるんだから
圧倒的な飛翔速度で肉薄し、敵の翼を刀で一気に纏めて薙ぎ払い
翼の色を確認している余裕はないだろう
刀身に貫通攻撃と鎧無視攻撃を付与し一刀で決めるつもりで勝負!
ほのかに立ち込める|霧《グリモア》の中から、また一人、猟兵が現れる。
見渡せば、ブルーアルカディアの青い空。そしてその一辺に、雲ではない「白」が見える。
「あれが…天使か。」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)はただそれだけを呟くと、さらなる状況把握に努めることにする。
未だ歌の効果範囲内には入っていないようだが、グリモア猟兵の話によると効果範囲が拡大しているらしい。拡大率が不明な以上、いつ効果範囲内に入ってしまうかはわからない。
何せ、背には遠くに王国の城壁がある。つまり、敵は近づいてきているのだから。
La、LaLaLa───
ほんの微細な空気の振動が、鼓膜に伝わり認識される。
これは、歌だ。
呪いの、歌だ。
そしてこの歌は──
突如、ひりょの脚から、白い翼が皮膚を喰い破り生え伸びる。
激痛が、ひりょの体を貫く。
「くうッ! これが『天使病』か!」
微かに歌が聞こえた。それだけで、翼が生える。
翼は自由に動かすことなどできず、生えているだけで激痛が襲う。
体を動かす難易度も上昇し、今はまだ大丈夫だがこれが何本、何十本と生えてしまってはまともな戦闘など不可能だろう。
「くっ、この歌は…危険だ!」
歌。
そこに込められた想いなど、推し量ることもできない。
正気を失った狂気と混沌の歌。
ただ、それでも何かを感じ取ろうとするならば──
「悲痛」と「絶望」に、なるのだろうか。
あれは、元々この世界の「普通の人」だ。
既に取り込まれ、オブリビオンと化しているが、彼女らもまた被害者なのだ。
朦朧とした意識で歌を、呪いを、ばら撒き続け仲間を増やす災害。
それに対抗できる存在は、猟兵のみ。
ひりょの身体に、光り輝くオーラが纏われる。
この歌が病を撒き散らすというのなら──
感染した先から全て、治していけば問題はない。
「この身を削ってでも──戦いを、終わらせる!」
身を裂く激痛は、防げない。
いくら痛みに強く、効力に耐性があったとしても、根本的なヒトの本能は誤魔化せない。
それでも、この身が如何なる激痛に曝されたとしても。
この先へは通すわけにはいかない。
だって、俺たちがこの痛みに負けて、敵をこの先へ通してしまったら──
この苦しみは、この世界の人々が味わうことになってしまうから。
「そんなことは、決してさせるわけには、いかないッ!!」
一般人がこんな辛さを味わう必要なんて、ない!!
ひりょは空を舞う。
その速度は圧倒的で、視界の端に映るのみだった天使の群れは、今やもう目と鼻の先だ。
全身が裂けるような痛みを訴えても、喰らい伸びる翼は即座に治癒される。
狙うのは、たったの一刀。
防御も回避もせず、ただ歌うだけの天使など、これで十分だ!
貫通攻撃付与、鎧無視攻撃付与、範囲拡大、威力増大──!!
「まとめて墜ちろおおおッ!!!」
激痛に負けぬよう歯を食いしばり、力一杯に握り締めた刀を、振るう──!!
振るった刀は、大量に並んだ天使の群れを切り裂いて、その|声《いのち》を奪う。
直撃を免れたものも、風圧と衝撃波で幻想武装が破壊され、歪に生えた翼では発生した乱気流に対処できず、行動不能に陥った。
「よ、し。だいぶ楽になった、か──」
しかし、安心はできない。まだ、敵将がいるはずだから。
まだ敵将が出てこないなら、せめて邪魔されないように天使軍を刈り尽くした方がよいだろう。
決意を胸に、もう一度刀を握りしめる手に力を込める──
大成功
🔵🔵🔵
クゥ・クラウ
戦う前に兵士や勇士に会っておく。
……ワタシは猟兵のクゥ・クラウ。これはアインベル。……よろしく。
あいさつは、大事
アインベルに搭乗。天翼を起動、光の翼を展開して友軍に同行する。
『空中艦隊、実に壮観だね。効率的に戦うためにも彼らの流儀に合わせようじゃないか』
AIのジョン・ドゥが言う。
もしガレオンの艦砲射撃から始まるなら、先行しても邪魔になる。
ある程度距離が縮まってから前に出て、光線砲とサブマシンガンで敵をなぎ払う。
敵の歌声は止められないけど、悪影響を送り返すことはできる。
UC【茨棘の返礼】。アナタたちに、返す。戦場全体からワタシに届けられた歌声の主すべてに。こうすれば味方の助けにもなるはず
グリモアの霧。立ち込めるそれを掻き分け現れたのは、白髪金瞳のレプリカント、クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)だ。
彼女とそのキャバリア、アインベルが降り立った場所は浮遊大陸の上…ではなく──いやそうではあるのだが──遥か上空、空を飛ぶガレオン船の船上だった。
勇士達の前に突如現れた形となる。それに、友軍との顔合わせは大事だろうと、挨拶から入る。あいさつは、大事だから。
「……ワタシは猟兵のクゥ・クラウ。これはアインベル。 ……よろしく。」
それに対し、何やら指揮官っぽい屈強な男が反応してくれる。
「猟兵…というと、我らと共に戦ってくれるのだな。感謝する。
敵軍については──」
「ん、それはわかってる……任せて。」
クゥの戦場を見る力は高い。
これまで経験しデータを積み重ねた数年間で、「オブリビオン」という存在と、それに立ち向かう存在を、知っているから。それに伴う戦場のデータもまた、確かに蓄積されている。
そんなクゥの一言には、勇士達も湧き立つというものだ。
彼らは戦う力を持つが故、屍人帝国の脅威を肌で感じたことのある者も多い。
そして、そんな屍人帝国を追い詰め壊滅させる猟兵の存在は、彼らにとっての光だと、そんな認識が広く広まっているのだから。
「……また、後で。……行くよ、アインベル。」
ガシャンとキャバリアに搭乗すれば、勇士達から感嘆の声が漏れる。
クゥの見た目は神秘的とまで言える少女のソレなのだ。それが猟兵であり、人智を超える力を持つとわかっていても、これほどの目に見える「武威」はなかった。
『空中艦隊、実に壮観だね。効率的に戦うためにも彼らの流儀に合わせようじゃないか。』
この声は、彼女を補助するAIであるジョン・ドゥだ。
お目付け役や教育係など様々な役目を|任せられた《丸投げされた》AIである彼は今もまた、最適な演算を続けているのだろう。
クゥは天翼を起動して、ガレオン船を離れていく。それでも前に出過ぎることはなく、並ぶ形の飛行ではあるのだが。
もし、ガレオンの艦砲射撃から始まるなら、先行しても邪魔になるだけ。
ある程度、距離が縮まってからが……ワタシの仕事時間だ。
そんなことを考えていると、彼女が持つ高度なセンサーが、微細な振動を検知する。
ヒトの持つそれよりも遥かに高性能なそれが検知したのは──歌。
この距離で、もう聞こえるのか──
おそらく、勇士達にはまだ聞こえていないだろう。だが、もうそろそろとなるだろう。なんせ、機体のサイトから覗いた「白」は徐々に大きくなっているのだから。
『敵との距離はおよそ5キロ。大した声量だな。』
ジョン・ドゥの声が聞こえる。
だが、クゥからは返事が返ってこなかった。
クゥの体から生える|純《・》|白《・》|の《・》|翼《・》。
激痛が機械の身体を蹂躙する。実際はそれが損傷による単なる電気信号なのだとわかっていても、その動きは止まる。
「……っ、機械の体でも……関係ない……」
このまま聴き続けていたら、何れは翼塗れになってしまうかもしれない。
たが、歯を食いしばって耐える。
翼が生えるだけで、機械の体が内側から食い潰されるだけで、クゥが止まることはありえないのだから。
「砲撃部隊、発射準備ィ!!」
「「「おう!!」」」
ガレオン船の方から、活気のある声が響いてくる。
その声は、味方の号令だ。
砲撃での攻撃が、始まる。
まだ歌を聴いていないのだろう。その声には僅かな悲鳴も混じっていない。
それは、元々己を鼓舞する声なのだろう。
だが、伝播する。
共に戦う仲間へと。
そしてそれは、クゥも例外ではなかったのだろう。
或いは、偶然かもしれないが──
そして、幾重にも重なる、ズンと響く発砲音を合図に、青空を切り裂く「白」が翔ける。
翡翠色の残光だけを残し敵軍へ肉薄する姿は、一騎当千。若しくは、万夫不当とでも表すのだろうか。
しかし、今の彼女を表す言葉は、一つだけでいい。
「第六の猟兵」と──
輝く機体は、光線砲とサブマシンガンを駆使し、次々と敵を撃ち落としていく。
彼女の体には、途方もない負荷がかかっているはずなのに、止まらない。
それどころか──
「……|敵《アナタたち》の歌声は止められないけど、悪影響を送り返すことはできる。」
【棘棘の返礼】──それは、与えられた状態異常を自動で跳ね返すユーベルコード。
「反応術式、起動。……アナタたちに、返す。」
堕ちた天使を、茨が襲う。
与えるのは、さらなる翼と激痛だ。
La Aaaaarrrr──!!!
堕ちた天使が、また堕ちる。
その身を貫く激痛に、幻想武装もその肉体も、耐えることなんてできやしない。
ばさばさとその翼を動かしても、飛翔することなど──
茨棘が襲った天使は皆一様に、苦悶の表情を浮かべて深い雲海の底、骸の海へと沈んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『眩耀のクルーエル』
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POW : 天より降り注ぐ粛正の刃
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【神々しい翼】から【七色に煌めく十字架光剣】を放つ。
SPD : 我が前に跪け
【支配の極光】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : グリッタリング・フィナーレ
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【七色に煌めく十字架光剣】で包囲攻撃する。
イラスト:TFJ,
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠スピカ・ネビュラスター」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
歌う天使は、その大部分を失い、歌の効力も弱まり始めた。
勇士たちも、さらに湧き上がり残党を狩り始めるのだろう。
だが、忘れてはならない。
この戦場には全てを覆す、虹光の天使がいるのだから──
虹の天使は、音もなく戦場の上空に現れた。
そして、その十字架を掲げ──
戦場に、虹光が満ちる。
それは、全てを均す神の光。
戦場に悲鳴が響く。
だが、ここで退かず、立ち向かうのが「第六の猟兵」だ。
圧倒的理不尽に争う存在が──
さあ、今は、争う刻。
ここが、正念場だ!!
『眩耀のクルーエル』討伐開始──!!!
ニクロム・チタノ
圧政を強いる埒外に同じ埒外の力を以て反抗するのがボクたち猟兵の使命さ
反抗の力を
翼から放たれる十字架光剣を八つの蒼焔の盾を使って防御するよ
攻撃が途切れた瞬間に重力操作能力で敵の重力を一気に増大化するよ
いきなり重力が倍増してバランスを崩したね、超重力槍発射だよ
上手くかわしたみたいだけど回避に夢中になったせいで高度が下がっていることに気がつかなかったみたいだね
この隙は見逃さないよ、反抗の妖刀をくらえ
飛び上がっても油断は禁物だよ、さっき妖刀で斬りつける前にゴルディウスをチャクラムにして投擲しておいたからね
妖刀をくらった後急上昇した反動で戻って来るチャクラムを避ける暇はないよ
圧倒的理不尽に反抗の使命を!
戦場に降り注ぐ、虹色の光。
それは天使の群を率いる敵将の光。
そこからは、圧倒的な圧力と、本能に訴えかける恐怖が十二分に感じられた。
これが、敵将の。『眩耀のクルーエル』の、力。
吹き荒ぶ強風が、強く体を押し返してくる。
「引き返せ」と。
「命が惜しくないのか?」と。
それでも、と、地を踏む足に力を込めて、一歩、前に踏み出す。
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)にとって、そして、猟兵にとって。
圧政を強いる埒外に、屈することなどあり得ない。
「反抗の力を。」
同じ埒外を以て反抗する──それこそが、ボクたちの、猟兵の、使命なのだ、と。
戦場を覆う輝きが、その強さを増す。
放たれるのは、全てを蹂躙し無に帰す【天より降り注ぐ粛清の刃】。
大きく開かれた4対の翼から飛来する、七色に煌めく十字架の光。
それは、光そのものだ。
故に、風切音などが響くことはなく、認識した時には既に体を貫いていることだろう。
超高速の連撃に、チタノも蒼焔の盾を八つ展開して、凌いでいく。
完璧ではない。時には光の剣は防御を抜け、チタノの体を貫くこともある。
だが、その程度でチタノが屈することも、あり得ない。
ただ耐え忍ぶこの時間も、終わりが来る。
永遠に攻撃し続けることは、その性質上不可能だ。
虹色の光を蓄積するための僅かな時間、攻撃は、停止する。
攻撃が、途切れたね。
なら、ここからはずっと、ボクの番だよ。
キッと天使を睨みつけると、不自然に天使の体が下へと落ちる。
もがけど、羽ばたけど、急激なこの変化に対応し切ることなどできず、致命的な隙を晒す。
チタノの展開した圧倒的な“重力”が、天使を捉えた──
「いきなり重力が倍増してバランスを崩したね。」
この隙は、致命的だ。
だが、これだけでは対応されてしまう。大打撃を与えるためには、もっとこの隙を、広げる必要がある。
そのための準備は、もうできている。
放たれるのは、チタノから放射状に展開された八つの槍。
圧縮、圧削、圧壊。隙だらけの体に叩き込まれる圧力の支配は、その1つをとっても絶大な影響を及ぼすだろう。
──だが、回避される。
その翼の全てを大きく羽ばたいて、少しグラつきつつも鋭い飛翔により8つの猛威を躱しきる。
天使は再び十字架を掲げ、その虹光によって全てを塗り潰そうと──
上手く躱したみたいだけど、回避に夢中になったせいで、高度が下がっていることに気が付かなかったみたいだね。
ここは、もうすでにチタノの間合。
重力を使わずとも、槍を飛ばさなくとも、跳躍し手を伸ばせば、届く場所。
「この隙は見逃さないよ、反抗の妖刀をくらえ。」
この刀は、圧政を敷くものに、等しく振り下ろされる反抗の象徴。
『眩耀のクルーエル』もまた、例外などではない。
神速の一太刀は、容易くその翼を斬り裂き、虹の光を打ち砕いた。
天使の、苦しみの混じった叫び声が響き渡る。
そして無理矢理にも飛び上がり、間合いから逃れようとして──
チタノはニヤリと口端を吊り上げる。自らの読みは正しかったのだと。
「飛び上がっても、油断は禁物だよ。」
弧を描き戻ってくる|チ《・》|ャ《・》|ク《・》|ラ《・》|ム《・》は、さらに一枚の翼を斬り裂き、傷を刻み込む。
チタノは妖刀で斬りつけるよりも前に、天使の直上へ帰ってくるようにチャクラムを投擲していた。
確実に、追い詰めるための一手。それは見事なまでにピタリと嵌り、大打撃を与えることに成功した。
「圧倒的理不尽に反抗の使命を!」
妖刀を掲げ、高らかに宣言するその言葉は、この戦闘の「勝利」を感じさせるものだった。
大成功
🔵🔵🔵
クゥ・クラウ
『新たな敵影を確認。集中を。……彼らはこの世界の戦士だ。そう簡単に墜ちたりしない』
AIのジョン・ドゥの言葉に、あわてて敵の姿を追う。光線砲を撃ってこちらに注意を向けさせる。
――はやいッ。
思考を加速させる。《瞬間思考力5、限界突破2》
敵に正確な狙いをつけさせないように軌道を変えながら飛び続ける。当たらないのを承知で弾丸をばらまきながら相手の動きを分析する。
相手はこちらの死角を取って確実に当てにくる……と、思う。狙うのはその瞬間。
UC【アポルオンの光】。爆発するように、機体を中心に光の粒子を放出。これならどこから来ても巻き込める。
エネルギーを、生命力を奪い取り、動きが鈍ったところに止めを撃ち込む。
突如現れ虹色の残光を残しながら猛威を振るう、敵将のオブリビオン。
戦場全体に届くほどの光は全て、“悍ましいほどの速さで飛来する十字架の残光”だ。
ガレオン船にも突き刺さり、穴が空き、勇士達の悲鳴と怒号が飛び交っている。
クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)はそんな光景に、集中を乱される。
敵将の存在……勇士の中に負傷者多数……守りきれない……人命を。『良心』を。
流石のクゥも、敵将と戦いながら勇士達を守りきるなんてことは不可能に近い。
そんなことは、わかってる。わかってる──!
振り切れないこの気持ちに、揺れる。
でも、クゥは決して一人なんかじゃない。
『新たな敵影を確認。集中を。……彼らはこの世界の戦士だ。そう簡単に墜ちたりしない』
意識がスッと、冷静になる感覚。
今までずっと一緒だったAIのジョン・ドゥの言葉に、いつもと同じ安心させてくれる声に、逸る心は落ち着いていく。
ここでワタシがすべきこと……一刻も早く、|アイツ《虹光の天使》を墜とすこと──!
意識を切り替えたクゥの背後から、さらに後押しの言葉が届く。
「俺らのことは大丈夫だ! 存分にやってやれ、猟兵の嬢ちゃんッ!!」
もう、……大丈夫。心配かけて、ごめん。
既にサイト越しにクゥの瞳は敵の姿を追っている。
もう迷いなんて、ない。
「……こっちを、向けッ!」
純白のキャバリア、アインベルから放たれた一条の光線砲は、側面から『眩耀のクルーエル』の翼を掠める。
眩耀のクルーエルは、それに対し視界をやることすらせず、ただ、腕を振るった。
その動きに従いクゥに襲いかかるのは、眩い光を発しながら飛来する十字架の剣。
──はやいッ!
目では追うことすらままならぬ光の線が、アインベルの表面に傷をつけていく。
堅牢なキャバリアを打ち破るほどのダメージではないが、それでもこの速度から、この威力。生身だとまず即死だろう。
ふぅぅ……
息を吐き、集中を高めていく。
世界が、時間が、スローモーションに認識できる。
……やっぱり、はやい。想像以上に……!
認識を最大限まで高めても、まるで敵の斬撃は銃弾のよう。認識はできるが対応は難しいだろう。
それでも、やりようはある。
敵に正確な狙いをつけさせないように軌道を変えながら飛び続ける。
足を止めれば、その瞬間、機体に衝撃が走るだろう。
敵の攻撃は速いが、こちらも速い。スイスイと不規則に空を翔け、虹の光を躱していく姿は、もはや残光しか見ることは叶わない。
一時たりとも気の抜けない極度の集中状態で、僅かな違和感を感知する。
それは──一度に発射される攻撃の総数が、少ないこと。そして、あの天使は、どこへ──
これは──!
『下だ!』
敵の攻撃が速すぎて、レーダーが効かないこの高速戦闘中、頼れるのは自分の眼だけだ。
サイトの補助により通常よりずっと広視野を保てているものの、それでも生まれる死角──それを、狙われた。
幾本かの十字架を携え、4対の大翼をはためかせ。
眩耀の天使が、クゥを襲う。
──だが。
……やっと、近づけた。
「システム、起動。……蝕み、喰らい、滅びを与えるもの──」
最初から、狙いを付ける気など無かった。
ただ、爆発するように。機体を中心とした光の粒子での|全《・》|方《・》|位《・》|攻《・》|撃《・》を──!!
──────!!
音は響かない。その代わりに、全てを埋め尽くす極光が遍く全てを照らし。
【アポルオンの光】──神の名を冠するそのUCは、光に触れた対象の須くを、奪い取る。
光も、魔力も、命も、そして希望も。
手痛いカウンターを喰らった天使は、素早く距離を取るが、先ほどよりも幾分か、遅い。
まだ、まだ終わらない。
戦場に、一陣の風が吹く。それは、猟兵の背中を力強く追い風だ。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「隙を衝かねば脅威を示せぬ『眩耀のクルーエル』…駆逐し撃滅する」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながら“ 我が前に跪け”を視て「無機物にも影響ありか、対処を再計算する」とファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し敵の攻撃を空間飛翔して回避しリニアロングボウとレーザービームで攻撃を仕掛け乱反射をしつつ途中からドローンも創造して展開し参戦させて戦法と戦略を変えます。
配置陣形が完成したらフルバーストとヘラ・エウピションで総攻撃と間段無い連続攻撃を仕掛けて誅滅します。
「輩が無いからと有効化を強制するな!」
虹色の、光。
常識的な話では、それは「光」のもつ多様な色が反射や屈折などの過程を経て自然と選別され、その結果人間の視界に映る赤から紫の7色のことを指す。
ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)にとって、そのような知識など既に知っている。
だが、猟兵も、オブリビオンも、まるでその光が殺傷力を持っているかのように、攻撃を行うことがしばしばある。
実際それは、対処が非常に難しい。光の速さで放射状に全範囲の超射程攻撃を繰り出すなど、まともな方法に頼っていては、どれだけ武を極めようと難しいだろう。常識である。
なら、この敵は?
攻撃は、視認不可能な速度だ。しかし、ティティスのもつ極めて高度で繊細な|瞳《知覚装置》を持ってすれば、視ることが出来る。
──攻撃は、絶え間なく続く十字架の剣のみ。降り注いでいるように見える虹光は、その全てが、悍ましい速度で飛来する十字架の放つ“残光”──
速度は武器だ。
その速度が早くなればなるほど、及ぼす力は増加する。
水ですら、高速で射出すれば鉄をも断ち切るように。
この十字架は、ティティスに対し絶大なダメージを与えることが出来るだろう。
「隙を衝かねば脅威を示ぬ『眩耀のクルーエル』 …駆逐し撃滅する。」
ティティスの長い金髪が風に靡けば、その体は空気に透けるように半透明となっていく。
この場を蹂躙する十字架の剣も、物理攻撃を完全に無視する透過状態へと至ればティティスに痛痒を与える事すらできはしない。
それでも油断せずに、自らがクルーエルへと肉薄する、わずか1分先の未来を常に監視する。
未来視によると……肉薄には、成功する。そして展開したビットや武装での総攻撃を──『我ガ前二跪ケ』。
全てのビットが、その動きを停止させた。
光線が、不自然な方向へと折れ曲がり、当たるはずだった軌道から大幅に逸れていった。
自分の体が、動かせない。
『我ガ前二跪ケ』
脳内に反響するこの言葉に、ただ歯を食いしばるだけ。為す術もなく──
「敵の攻撃は“光”に依存。無機物にも影響ありか、対処を再計算する。」
一度自分が“十字架に串刺しにされた”光景を見たというのに、そのココロに動揺は無く。
機械であるが故の冷徹さ、なのだろうか。
確かなことは、ティティスはもうあのような攻撃に被弾することはあり得ないということだ。
ふわりと両腕を伸べれば、現れ出でるのは無数のビット。
その全てがただ一体の敵を包囲し、矛として、盾として、この戦場を支配する。
いくら速い攻撃があろうと。そして敵がいくら早かろうと。
未来が見えるという圧倒的アドバンテージの前には、霞んで消える運命にあるのだから。
放たれるのは|全武装・総攻撃《フルバースト》。女神の憤怒の如き、単色の光線が幾条と降り注がれる。
「輩が無いからと友好化を強制するな!」
そんな叫び声もまた、全てをかき消す全砲門の解放により彼方へと消え去っていった。
『眩耀のクルーエル』の翼はボロボロになり、放たれる虹色の光はチカチカと翳りが見える。
もうひと押し。あと少し。
猟兵たちよ。勝利は目前だ──!
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
あいつの範囲攻撃はかなりやばそうだ
俺だけならともかく、この場にいる勇士達に甚大な被害が出かねない…
UCを使用後、敵の範囲攻撃が甚大な被害をもたらした光景を思い浮かべ【防衛衝動】を発動させる
UCの効果で普段の【防衛衝動】よりも多くの分身が出現出来たようだ
敵の攻撃範囲内にいる勇士は皆守るべき対象だろう
彼等を十字架光剣から身を呈し庇いつつ、一緒に敵へ攻撃を仕掛けていく
俺の目の前で誰かの命を奪わせるものか!
勇士達の護衛につかずフリーな分身は積極的に接近戦を仕掛けていこう
敵を迅速に倒す事こそが被害を軽減する最善の方法だろうから
護衛についている分身も敵の攻撃を凌いだら、護符による遠距離攻撃で援護だ!
空を舞う、虹光の天使。
その力は、何名かの猟兵の活躍によりかなり削られた。
だが、何事もなく終わることはあり得ない。
元来、生命とは、消えゆくその一瞬こそが、最も眩い輝きを放つものなのだから。
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、虹光の天使を睨みつつ、冷や汗を浮かべる。
「あいつの範囲攻撃は、かなりやばそうだ。
俺だけならともかく、この場にいる勇士達に甚大な被害が出かねない…」
勇士も、弱くはない。
これまでの猛攻だって、それが狙った攻撃ではなかったにしろ、誰一人として死傷者を出さずに乗り切ったのだ。
虹光の天使への攻撃には参加できていないが、その分、散り散りになった天使の兵を減らしている。
猟兵達が今本気で戦えているのは、彼らのサポートあってのものなのだ。
しかし、敵の攻撃は苛烈さを増す。
猟兵を狙い撃ちし、効率的に戦いをしていた序盤とは異なり、その迸る光を全方位に放出して、勇士も、部下も、自身までもを巻き込み猟兵を狙う。
リミッターが外れたのか、それとも奥の手を消費したのか。
その身が朽ち果てる前の、最後の抵抗。
ひりょの脳裏に、その光に、味方が焼き滅ぼされる光景が幻となって映し出された。
見たくない、未来。
そうであってほしくない、未来。
ひりょは恐怖し、だからこそ、一つの力が解放される。
「俺がここに居る限り、誰一人として、犠牲者は出させないッ!!」
幻影、いや、分身。
ひりょと姿形を同じくした分身が10、いや100、いや、300体。
その大多数を、勇士達の守護に向かわせる。
符を貼り、結界を顕現させ、時にはその身を盾として。
「俺の目の前で誰かの命を奪わせるものか!」
勇士達の守護に向かわなかった分身とともに眩耀のクルーエルの元へ飛び、絶え間のない接近戦を繰り広げる。
対するクルーエルは、もはや回避もしない。
分身も、ひりょも、全方位攻撃を回避する術はない。
両者の攻撃で、どちらが先に、力尽きるか。
単純な、勝負だ。
ひりょは持ちうる全てを使い果たすが、それは敵も同じこと。
至近距離からの光は分身を一体、また一体を灼き消して。
ひりょの斬撃はクルーエルの翼を切り落とす。
互いに一歩も譲らぬ最終戦。
持ちうるリソースも尽きてくる。
だが、ここまで来て、諦める訳、ないだろう!
「うおおおおお!!!」
叫びながら剣を上段に構え、振り下ろす。
対するクルーエルは、十字架の剣を向かわせる。
交差する両雄。気迫。
結末は遂に訪れる。
ひりょが振り下ろした剣が、十字架光剣を叩き割り、「眩耀のクルーエル」の身体を真っ二つに切り裂いたのだ。
「勝っ、た──」
勝った。この戦場における猟兵の、そして世界の勝利だ。
しかしひりょも力を使い果たし落下していく。
それを受け止めるのは、ガレオン船を操る勇士達だ。
「ありがとな、猟兵の兄ちゃん!」
「俺たちは守られてばかりだったが、カッコ良かったぜ!」
歓声が、この広いブルーアルカディアの空に響き渡る。
澄んだ青空は、全てを包み込むかのように。
大成功
🔵🔵🔵