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2キロバイトの災厄

#サイバーザナドゥ #ヤマラージャ・アイビー #大祓骸魂

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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「サイバーザナドゥにばら撒かれた思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』が、新たな事件を引き起こしています」
 サイバースペースの娯楽エリアに仕込まれていた、遅効性の思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』。猟兵達は以前にもこのプログラムにまつわる事件を解決し、回収した『ヤマラージャ・アイビー』の研究を進めてきた。その結果、驚くべき事実が判明したのである。

「研究の結果、ヤマラージャ・アイビーは僅か2KBの極めて短く単純なプログラム……つまり、どう考えても科学的でない、『呪術』の類である事が判明しました」
 あまりにも小容量な為に、どう足掻いてもサイバースペースでこれの蔓延を食い止める事は不可能だっただろう。
 しかし今や、猟兵達はこれが呪術であるという事を突き止めたことで、グリモア猟兵達はヤマラージャ・アイビーに対する『予知』を、いち早く得られるようになった。
「リムのグリモアが示した予知によれば、ヤマラージャ・アイビーはすでに娯楽エリアを離れてサイバースペース全域に密かに浸透し、電脳空間に接続した人々……つまり『サイバーザナドゥの人類全て』の電脳を、ことごとく焼き尽くそうとしています」
 まだ気付いている者はほとんどいないが、これは紛れもなくカタストロフの危機だ。ヤマラージャ・アイビーの真実を知らなければ、通常のセキュリティで対処することはまず不可能。サイバーザナドゥを蝕みつつある恐るべき『呪い』に、対抗できるのは猟兵だけだ。

「リムのグリモアが予知したのは、ヤマラージャ・アイビーに汚染された人間達が主催する人身売買の会場です。まずはここに向かってください」
 表向きは人材派遣会社や職業斡旋場などを装う、事実上の奴隷市場がサイバーザナドゥには存在する。ただでさえモラルや人権を無視した行為にヤマラージャ・アイビーまで関わっているとなれば、尚更無視するわけにはいかない。
「会場を鎮圧し、汚染された人間の身柄を確保すれば、彼らの電脳を使って"感染源"のいるサイバースペースへの侵入が可能になります」
 このため人身売買の犯人たちの生死は問わないが、死体の電脳からサイバースペースに接続する場合は時間制限などの不便が発生する可能性もあるため、その点は注意してくださいとリミティアは言う。今回の依頼目的はあくまでサイバーザナドゥそのものを滅ぼそうとするヤマラージャ・アイビーの発見、そして駆除なのだ。

「サイバースペース内部では、ヤマラージャ・アイビーの影響を受けたオブリビオン『刺青スレイブ・量産型I』との戦闘が予測されます」
 予知によると、ここで遭遇するオブリビオンは「骸魂」と呼ばれる異形を増設された「骸魂オブリビオン」と化している。これがカクリヨファンタズムで見られる「骸魂」と完全に同一の現象かは定かではないが、通常のオブリビオンを超える脅威には違いない。
「刺青スレイブ・量産型Iはメガコーポ『スパイク・シアン』社が販売する、電子戦や情報戦を得意とするオブリビオンです。骸魂オブリビオン化した今回の個体群は、さらに悪霊の【連鎖する呪い】と同じユーベルコードを使用します」
 骸魂オブリビオンと戦う時は、元から持っていたユーベルコードと増設された骸魂に由来するユーベルコード、この二つを同時に操る点に注意が必要だろう。しかし対策さえ取れていれば実力では猟兵が勝るため、そこまで苦戦する敵では無いはずだ。

「骸魂オブリビオンを撃破すれば、さらなる『予知』によってヤマラージャ・アイビーの正確な居場所を特定できます。これ以上事態が深刻化する前に、皆様の力をお貸し下さい」
 ただのプログラムという域を超え、牙を剥きだした『ヤマラージャ・アイビー』。容量2キロバイトの小さな悪意がサイバーザナドゥの全人類の電脳を灼き、カタストロフを起こす前に、その所在を突き止め根絶しなければならない。
 説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、危機迫るサイバーザナドゥへと猟兵達を送り出した。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはサイバーザナドゥにて、暴走を始めた思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』によるカタストロフを食い止める依頼です。

 1章はヤマラージャ・アイビーに汚染された人間たち(オブリビオンではありません)が主催する、人身売買会場に乗り込みます。
 会場を鎮圧して首謀者達を確保すれば、彼らの電脳を通じてヤマラージャ・アイビーの所在に迫ることができます。生死は不問ですが死者の電脳を使うと何かしら不都合が出るかもしれないので、その点はご注意ください。

 2章はサイバースペース内部で、骸魂オブリビオン『刺青スレイブ・量産型I』との集団戦です。
 このオブリビオンはヤマラージャ・アイビーに増設された骸魂の力で、通常のユーベルコードに加えて【連鎖する呪い】(効果はカクリヨファンタズムの解説をご確認ください)を使用します。この追加ユーベルコードにうまく対処できた場合、プレイングボーナスが入ります。

 3章は予知により居場所の判明した『ヤマラージャ・アイビー』との決戦です。
 具体的な内容や戦闘のシチュエーションについては、実際に章が移行してから説明いたします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『人身売買会場に潜入せよ!』

POW   :    人身売買の商品として潜入する。

SPD   :    商品を持ち込む人買いとして潜入する。

WIZ   :    買い手の金持ちとして潜入する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ノキ・エスプレッソ
この世界に帰ってくるのは神隠し以来ですね…
まだ見てない色もあるかもしれないこの世界、滅ぼさせなんかしません。

青いワンピースのお披露目衣装に着替え、ボクのボディも塗料で新品のように色つけして、「バイクのメンテナンスを行う専属エンジニアを探しに来た全身義体の令嬢」を装って会場入り。
「実際にメンテナンスを行わせて決めたい」と言えば、バイクも持ち込めるでしょう。

首謀者が商品を連れてやってきたところでUC発動。バイクのマフラーから出てきた満月色の塗料の持つ捕縛能力で会場にいる全ての人間を拘束します。
首謀者の確保を確認したら商品だけ拘束を解いておきましょう。
…あなたのバイクを見る目の輝き、いい色でしたよ。



「この世界に帰ってくるのは神隠し以来ですね……」
 とあるゴッドペインターの描く色に魅せられ、貧民街から外の世界に飛び出したノキ・エスプレッソ(色を求めて走るレプリカント・f41050)。久方ぶりとなる故郷は灰色とネオンに満ちていて、ひどく色褪せて感じる。それでも見切りをつけるのは早すぎる。
「まだ見てない色もあるかもしれないこの世界、滅ぼさせなんかしません」
 求めるのは未来に進む道のような鮮やかな色。カタストロフが未来を閉ざしてしまったら、見れるものも見れない。
 危険な思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』の尻尾を掴むべく、彼女はしっかりを「おめかし」して人身売買会場に乗り込むのだった。

「おやお嬢さん、ここは初めてで?」
「はい」
 青いワンピースの衣装に着替え、自身のボディも塗料で新品のように色付けして、レプリカントではなく全身義体の令嬢を装うノキ。運営側らしき人間に呼び止められても堂々としていれば、そうそうボロは見えない。こんな場所ならもっと怪しい人間なんてごまんと居るだろう。
「バイクのメンテナンスを行う専属エンジニアを探しに来たんです」
 そう語る彼女の傍らには、愛車の「ヴィヴィッドバイク」が停められている。「人材派遣」を謳うこちらの人身売買会場では、エンジニアのように特別な技能を持った人間も"売買"の対象だろう。この理由ならバイクを持ち込んでいても不自然ではない。

「実際にメンテナンスを行わせて決めたいのですが」
「なるほど、承知致しました。少々お待ち下さい……」
 ノキの要望を聞いた係員は特に疑うこともなく、会場の奥に一度引っ込んでいった。この間に周りを見渡せば、異様な雰囲気で人が人を売り買いする光景が広がっている。あまり希望に溢れているとは言い難い"色"だが、ここの運営がすでに『ヤマラージャ・アイビー』に汚染されていると聞いては見過ごせない。
「お待たせしました。こちらの男が……」
 ほどなくして身なりのいいスーツ姿の男が、首輪を付けられた人間を連れてやって来る。コイツがこの人身売買会場の首謀者の1人だろう。得意げな顔でセールストークを始めようとする男の前で、ノキはユーベルコードを起動した。

「すみません、あなたの話を聞くつもりはないんです」
「え? な、なんだこれはッ……うわぁぁぁッ!!?」
 ノキが【満月の色で包み込め】を発動した瞬間、ヴィヴィッドバイクのマフラーから満月色の塗料が出てきて、周辺にいる人間達を拘束する。月光の如きほのかな黄色に包まれた首謀者は、目を白黒させてジタバタもがくが、塗料の剥がれる様子はない。
「上手くいきましたね」
 顧客のふりをして首謀者を釣り出し、一挙にまとめて捕まえるというノキの作戦は見事にはまった。目標の確保を確認すると、彼女は商品にされていた人々だけ拘束を解いていく。その他の巻き込まれた連中の処置はしかるべき相手に任せよう。

「……あなたのバイクを見る目の輝き、いい色でしたよ」
「あっ……ありがとう、ございますっ」
 塗料の拘束を解きながら、ノキは自分の元に連れてこられた奴隷にそっと耳打ちをする。この男がバイクを見た時、純粋なエンジニアの顔をしていたのを彼女は見逃さなかった。どういった理由で商品になるほど身を持ち崩したのかは知らないが、そんな目ができるなら希望はあるはずだ――彼の未来が色づくことを、少女は人知れず祈るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星詠・黄泉
…眠れ
鬼化して電撃で警備員を気絶させる

変装用の服ゲット
警備員の服に着替える

脱出しにくい場所を重点的に探すか
囚われている人達を探していると檻を見つけた

さっきから私をつけているのは分かっている
電撃を後ろに放ち相手を痺れさせる

囚われた人達の場所を話してもらう
指定UCの効果でUC剥奪の檻を発動して他の相手を閉じ込める

ふむ、そこにいるのか?
UCの効果で相手は腕力など奪われている相手に他の囚われた人の場所を聞き出す


首謀者は他の猟兵殿に任せよう、私が助ける側か…
他の人に助けながら呟いた


『俺達がこの悪夢を終わらせてやる』
『ああ!やってやろうレント!』
かつての旦那とその友が私に言ってくれた言葉を思い出しながら…



「……眠れ」
 『ヤマラージャ・アイビー』感染者による人身売買会場に赴いた星詠・黄泉(星を駆ける剣豪・f43659)は、会場の近くでおもむろに【死相断我】を発動して鬼化すると、裏口に立っていた警備員に電撃を浴びせた。不意の一撃を受けた相手は「ぎゃっ!?」と悲鳴を上げ、ばたりと気絶する。
「変装用の服ゲット」
 非合法な商売をやっている自覚があるなら警備は厳重にしているはず。ならば自分も警備になりすませば場内を自由に移動できる、というのが黄泉の考えだった。もそもそと警備員の服を剥いで着替えた彼女は、まんまとバックヤードへの潜入に成功する。

(脱出しにくい場所を重点的に探すか)
 目的は『ヤマラージャ・アイビー』の手がかりとなる感染者の確保だが、不当に売り買いされる人々のことも黄泉は放っておけない。薄暗い施設内をしばらく歩き回っていると、まるで猛獣を閉じ込めておくような大きな檻と、その中に囚われた人々を発見する。
「ひっ!」「お、大人しくしてますから……!」
 変装中の黄泉のことを本物の警備員だと思ったのだろう、檻から向けられる視線は怯えたものばかりだ。誤解を解くように彼女はゆっくりと一歩ずつ近付いて――ふいに背後にすっと指先を向けると、振り向きもせずに電撃を放った。

「さっきから私をつけているのは分かっている」
「げぇっ?!」
 電撃を浴びて倒れたのは、四肢を戦闘用の|機械化義体《サイバーザナドゥ》に換装した警備員。部外者が服だけ着替えても、いずれは目をつけられると黄泉も分かっていたようだ。バックヤードに響き渡る雷鳴を皮切りに、他の警備員もわらわらと出てくる。
「囚われた人達の場所を話してもらう」
「言うわけないだ……ろ、ぉッ?」
 黄泉は鋭い眼光で【剥奪の檻】を発動し、雷と炎と風と岩による檻で敵を閉じ込める。多少腕に覚えがある程度では脱出も破壊も不可能なユーベルコードだ。奴隷達と同じ立場に落とされた警備員達は、檻に力を吸い取られて倒れる。

「もう一度聞くぞ?」
 筋力を剥奪され立ち上がることすらできなくなった連中に、黄泉は改めて問いを発する。もしこれでも口を割らないようなら、延々と檻の中で這いつくばっていればいい――冷淡な口ぶりから恐怖を感じた警備員達の心が折れるのは、あっという間だった。
「ふむ、そこにいるのか?」
「あ、ああそうだ!」
 どうやら"商品"はひとつの場所にまとめて置いてあるのではなく、いわばジャンル分けのような形で幾つかに分散しているようだ。つくづくモノのような扱いに不快感を抱くが、話した内容には恐らくだが嘘はないように感じられる。

「首謀者は他の猟兵殿に任せよう、私が助ける側か……」
 情報を聞き出した黄泉は【剥奪の檻】をそのままに"商品"が囚われている檻に向かい、錠を破壊して中にいる人々を救助する。二転三転する状況に向こうは困惑していたが、檻から出されれば「ありがとう! 本当にありがとう!」と涙を流しながら感謝と喜びを伝えてきた。
「今の内に逃げるといい」
 自分がここまで通ってきた道を辿れば外まで出られるはずだと、ルートを説明して送り出したのち、彼女はすぐさま次の救出対象がいる場所に向かう。表の会場のほうでは他の猟兵が『ヤマラージャ・アイビー』感染者の確保に動いている頃だろうが、自分は自分にできることを為すまでだ。

『俺達がこの悪夢を終わらせてやる』
『ああ! やってやろうレント!』
 脳裏にふと思い浮かぶのは前世の記憶。かつての旦那と、その友が己に言ってくれた言葉がはっきりと思い出せる。
 現代に転生して立場も随分と変わったが、あの時の彼らに恥じない生き様を貫こう。揺るぎない決意を心に秘めて、黄泉は囚われた人々を救い続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
なるほど、プログラムではなく呪術だったとは。
まあ、どちらの専門でもないわたしにとっては重要な違いというほどではありませんね。
いつも通り、できることをしましょう。

まずは【Ψ:L.ナビゲーター】で、会場の構造と内部にいる人たちの位置情報を収集します。
人の移動を追跡できるようになれば、脱出経路と思われる場所に先回りすることも可能なはずです。
オブリビオンでないのなら、攻撃の必要はないでしょう。
なるべく狭い通路で待ち構え、サイバーウイング「カノン」を展開して封鎖します。
もし抵抗したり別のルートに逃げようとする方がいたら、【念動力】で拘束します。



「なるほど、プログラムではなく呪術だったとは。まあ、どちらの専門でもないわたしにとっては重要な違いというほどではありませんね」
 レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)にとって重要なのは『ヤマラージャ・アイビー』の正体ではなく、それが人に危害を及ぼす危険な存在だという事実だった。そんなものが世界中に蔓延しつつあるというなら、猟兵としてやるべきことは決まっている。
「いつも通り、できることをしましょう」
 まずは感染元の特定と、非道な人身売買グループの鎮圧だ。会場入りしたレナータはサイバーウイング「カノン」に搭載されたレーダーを使って、会場の構造と内部にいる人々の位置情報を収集する。運営側のスタッフから商品にされている奴隷、購入に来た客まで含めるとかなりの人数がいるが、1人も見逃しはしない。

「むむむ……」
 ほどなく【Ψ:L.ナビゲーター】で収集した全情報を把握したレナータ。人の移動を追跡できるようになれば、脱出経路と思われる場所に先回りすることも可能になる。他の猟兵達がヤマラージャ・アイビー汚染者の確保に動きだせば、彼女は持ち前の機動力を活かして待ち伏せにかかった。
「くそっ、どこの差し金だ!」「商売の邪魔しやがって……!」
 なるべく狭い場所で待ち構えていると、すぐにレーダーを使うまでもなくドタドタした足音と悪態が聞こえてくる。
 呪いのプロブラムで思考を破壊された者達。だが彼らは悪党ではあるがまだ骸の海に染まりきってはいない。つまり彼女の敵ではない。

「オブリビオンでないのなら、攻撃の必要はないでしょう」
 目標がやって来たタイミングでレナータは「カノン」を大きく展開し、通路を封鎖する。カーテンのように広がった機械の翼に行く手を塞がれると、連中は「なっ?!」と目を丸くして驚いた。サイバーザナドゥの住人なら多少は機械化で強化されているだろうが、その程度でこの壁は突破できない。
「畜生、どかせねえぞ!」「別の道を行くしか……ぐわっ?!」
「逃がしませんよ」
 抵抗を企てる者や、別のルートに逃げようとする者がいれば、念動力で拘束する。見えないサイキックの鎖に捕らわれた連中はジタバタと暴れるが、「カノン」と同じでこちらもビクともしなかった。装備・能力・練度すべての面で、レナータはこいつらを上回っている。

「殺す気はありませんが、しばらく眠っていてもらいましょうか」
「テメェ、一体何者……ぐぇっ」
 なおも抵抗しようとする連中の拘束を強め、気絶させていくレナータ。自分も相手も負傷一つない鮮やかな手際だ。
 レーダーで再度周囲の反応を探れば、他の脱出路から逃げようとしている生体反応が複数。ここはもう大丈夫だろうと判断した彼女はすぐさま機械の翼から地獄の炎を吹かし、次の目標へと向かった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「衣更着参上!捜索なら忍者にお任せ!っすけど、モノがプログラムってのは初めてっす!?」

【迷彩】から【忍び足】で開催側の人が一人になった所を他の人に気づかれないよう【アンブッシュ】で騒がれないよう拉致、【催眠術】で無力化の上でUC『収納鏡』に放り込んでおく
そしてその人物に【化術】で変身し、同じように無力化していく

バレたら【結界術】で逃がさないようにしつつ、【毒使い】の麻痺毒を使った手裏剣で無力化。殺さないよう急所を避ける【心配り】
全員倒したら、人身売買されてた人達を【救助活動】
収納鏡に入れてた人も出し開催側の人の電脳からサイバースペースへ

人身売買とか相変わらず倫理観終わってるっすね(ため息)



「衣更着参上! 捜索なら忍者にお任せ! っすけど、モノがプログラムってのは初めてっす!?」
 妖怪忍者としてこれまでにも様々な標的を追ってきたであろう家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。そんな彼でも、広大なサイバースペースのどこかに潜む、わずか2キロバイトのプログラムの大元を見つけ出せ、というのは簡単な仕事ではなかろう。
「まずは汚染された人間をとっ捕まえるところからっスね」
 将を射んと欲すれば何とやら。迷彩を纏って人身売買会場に潜入した衣更着は、開催側らしき人物を見つけると抜き足差し足忍び足。警備システムにも感知されないほど音や気配を完全に消して、相手が一人になるタイミングを狙う。

(どんな人混みにも死角はあるっす)
 標的の周りから人がいなくなった瞬間、衣更着は疾風の如くアンブッシュを仕掛ける。背後から飛び掛かって口を塞ぎ、騒がれないようにして物陰に引きずり込む。あまりの早業に誰一人として、会場から人がひとり消えたことに気付く者はいない。
「もがッ?! うぐぐー……ッ……」
 何が起こったかも分からぬうちに拉致された標的は、抵抗する前に催眠術で無力化され【収納鏡】の中にある異空間に放り込まれる。どこかに縛って放置しておくよりも、このほうが見つからないし安全だ。奇襲から一連の流れに十秒とかからない、見事な手並みであった。

「その顔、お借りするっすよ」
 一人目のヤマラージャ・アイビー汚染者を確保した衣更着は、その人物の姿形にどろんと化けて、何食わぬ顔で会場に戻る。化術は狸妖怪の十八番であり、尻尾を出すような素人ではない。開催側になりすませば、他の標的との接触と拉致もより簡単になるという寸法だ。
(人身売買とか相変わらず倫理観終わってるっすね)
 会場を歩いていると、さも当たり前のように人間が商品として売り買いされている様子にため息が出るが、なるべく態度には出ないよう努め。したり顔でここを仕切っている連中を見つけては、片っ端から無力化して収納鏡に放り込んでいく。

「おいお前……なにをしている?」
 そんなことを何度も繰り返していれば、流石に異変に気付く者もいるだろう。だから警戒を露わにした態度で呼び止められても、衣更着は慌てなかった。スーツに化けた忍装束の中から忍者手裏剣を取り出し、結界術で逃げ道を塞ぐ。
「気付かないほうが痛い目を見ずにすんだっすね」
「ぐッ?!」
 相手が銃を抜くよりも速い投擲。麻痺毒を塗った手裏剣が突き刺さると、相手はうめき声を上げてその場に倒れた。
 暫くは指一本動かせないだろうが、殺さないように急所を避ける心配りはしている。うっかり死なせてしまうと、後でこいつらの電脳にアクセスする際に不都合があるかもしれないからだ。

「これで全員っすかね」
 他の猟兵達の活動とも合わせて、会場内の鎮圧は迅速に進んでいた。主催側らしき人物をあらかた捕縛し終えると、衣更着は人身売買されていた人達の救助に向かう。依頼内容とは直接関係のないことだが、だからといって無視することもできない。
「もう大丈夫っすよ」
「た、助かった……!」「ありがとう、恩に着るよ」
 様々な理由から"商品"にされていた人々は、思わぬ救い主の登場に感謝し、取り戻した自由の喜びを噛みしめる。
 彼らの無事を見届けると、衣更着は収納鏡に入れていた連中を外に出し、開催者の電脳から次の戦場へ――ヤマラージャ・アイビーの潜むサイバースペースに向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
究極の呪術は「死ね」で数バイトよ
2KBもあれば充分な呪いを紡げるわな
納得だ

そんな呪術に毒されたからか、それとも元々の外道なのか奴隷売買とはまた胸糞ですこと
奴隷(特に女の子ね!)に危害が及ぶの嫌なんで、裏口から忍び込んでなり替わるとするぜ
【妖狐夢色変化】で美少女奴隷になぁーれ☆ってな
元の奴隷の娘には『夢匣』に入って隠れてもらいましょ。お給料も出すよと説得だ

奴隷として連行にきた主催者たちに、舞台裏で暴力を奮い気絶攻撃で叩きのめしておくよ
ガチガチに縛って猿轡と目隠しをし、財布やスマホを盗んで(?)、水でも浴びせて起こせば電脳への入り口として使えるっしょ

なおアタシは女主催者の電脳を使います
男は苦手だわ



「究極の呪術は『死ね』で数バイトよ。2KBもあれば充分な呪いを紡げるわな」
 由緒ある神社の出身であり、呪術やまじないの類にも詳しい四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は、『ヤマラージャ・アイビー』の正体を知っても「納得だ」と答えた。プログラムとは電子化された言葉の連なりであり、すなわち呪文や言霊にも近しい。「ことば」が持つ霊的な力は一般人が思うよりはるかに強いのだ。
「そんな呪術に毒されたからか、それとも元々の外道なのか奴隷売買とはまた胸糞ですこと」
 ただでさえモラルが崩壊しているサイバーザナドゥで、プログラムに思考を破壊された人間が増えれば、秩序も倫理もないクソみたいな事件が起きるのは必然とさえ言えた。結果的にそれがヤマラージャ・アイビーを特定する手がかりにもなるのだが――そうでなくても無視する気はない。

「アキラキラキラ・マジカルピュア――美少女奴隷になぁーれ♪」
 売り買いされている奴隷(特に女の子)に危害が及ぶのを嫌った燦は、裏口から会場に忍び込み【妖狐夢色変化】で自らが奴隷になり替わった。変化のために姿を借りた娘には「お給料も出すよ」と説得し、『夢匣』パンプキンの箱庭世界に隠れて貰っている。
「こいつが今日の目玉商品か」「なかなか上玉だな」
 ユーベルコードによる完全な変身を見抜ける者はおらず、主催者側のスタッフに連行される形で、燦は楽々と潜入を果たす。向こうは完全にこちらを"商品"としか見ておらず、反抗する気概があるともその力があるとも思っていない。まったくもって間抜けな奴らだ。

「この馬鹿騒ぎも今日でお仕舞いだ」
「あ、なんだお前……ぐえッ?!」
 お披露目前の舞台裏で、主催者達が完全に油断しきったタイミングで、燦はおもむろに暴力を振るう。可憐な美少女奴隷の姿を借りていても、本来の技や力が失われたわけではない。殺したらマズいので刃物は抜かないが、それ以外の点では一切の容赦がなかった。
「ぐえっ?!」「ぎゃひっ!!」「きゃぁっ!!?」
 相手も|機械化義体《サイバーザナドゥ》でそれなりに強化されてはいるが、オブリビオンでもなければ話にならない。ロクな抵抗もできぬまま叩きのめされて、猿轡と目隠し付きでガチガチに縛り上げられる。あまりに手際が良かったため、誰かに騒ぎを聞きつけられることも無かった。

「ラキラキラキア・マジカルピュア☆」
 主催者どもを全員気絶させると、燦は呪文を唱えて変化を解除。元の姿に戻った彼女が最初にしたのは、連中の財布とスマホを回収することだった。この手癖の悪さは流石シーフと言うべきか――咎める者はいないし、仕事は果たしているので問題はない。
「水でも浴びせて起こせば電脳への入り口として使えるっしょ」
 ヤマラージャ・アイビーを追う手がかりとして生かされた悪党どもは、いまだイモムシのような状態で伸びている。
 ちなみに燦自身は女主催者の電脳を使う気らしく「男は苦手だわ」とぼやく。潜入時にあえて女の子と入れ替わったことと言い、彼女の趣味嗜好は常にブレないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西恩寺・久恩
私を裸にしようとした変態さんはお仕置きです
人身売買の商品として潜入した私
そしてボコボコにされた犯人達
(首輪はUC封じだったが問題なく制圧した)

ほら、出口は狭いので一人ずつ逃げてくださいね
囚われた人達の首輪を怪力で握り潰す
皆は避難を開始した


『裸で身体検査までするなんて最低ですね!』
『カモカモカモカモカモ!』
裸にされる程度ならマシな状況ですがね
(久恩はアヤカシエンパイアの妖が捕らえた相手をこれよりも残酷な事をするのを知っている)
何故かマッチョになっているフラウディが犯人に馬乗りになって殴りまくっていた
マッチョのカモカモは犯人にオラオララッシュしていた

辱められても、侮辱されても私は前に進むだけです…



「私を裸にしようとした変態さんはお仕置きです」
 人身売買会場のバックヤードで、肉を叩く鈍い音が聞こえる。直後、カエルが潰れたような「ぐげぇっ?!」という悲鳴と、人が倒れる音。その中心には無表情でたたずむ緑髪の少女、西恩寺・久恩(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)がいた。
「な、なんだよコイツ……」「ただの奴隷のはずじゃ……」
 周りにいるのは人身売買会場を主催する犯人達。会場の商品として潜入した久恩を"商品"らしい格好に着替えさせようとしたところ、ボコボコの返り討ちにされた連中だ。戦闘用の|機械化義体《サイバーザナドゥ》に肉体を換装した腕利きもいたはずだが、まるで相手にならず床に這いつくばっている。

「弱いですね」
 ここに入る時につけられた首輪には、奴隷の抵抗を封じるための仕掛けがあったようだが、そもそも能力や装備など使わずとも常人離れした肉体を持つ久恩にはなんの問題もなかった。純粋な身体能力と腕力だけで生身の少女が大人のサイボーグを蹴散らす。それは魔法よりも魔法じみた光景だった。
「ほら、出口は狭いので一人ずつ逃げてくださいね」
「は……はいっ」
 現場の制圧が終わると、久恩は"商品"として囚われた人達を解放していく。首輪を怪力で握り潰して自由にすれば、相手はあっけに取られつつも彼女の指示に従った。助けが来ること事態も予想外だろうが、目の前で起きたことがまだ信じきれない様子だ。

『裸で身体検査までするなんて最低ですね!』
『カモカモカモカモカモ!』
 避難を始めた人々を見送っていると、久恩の式神である「フラウディ」と「カモカモ」が怒りの声を上げる。一部はヤマラージャ・アイビーの影響もあるだろうが、モラルや倫理観を軽視した行為はサイバーザナドゥにおける根本的な社会問題だ。厳密に言うなら久恩は人間ではなく妖怪だが、だからといってモノのように扱われて良いはずがない。
「裸にされる程度ならマシな状況ですがね」
 とはいえ久恩は故郷アヤカシエンパイアの妖が、捕らえた相手にこれよりも残酷な仕打ちをするのを知っている。
 ヒトですらない本物の外道どもの悪意に比べれば、この程度は軽いもの。不快ではあるが心乱すほどではなかった。

『それでも我慢できません!』
『カモカモカモカモ!』
 主人への辱めに式神達は怒り心頭のようで、饅頭型の少女式神のはずのフラウディはなぜかマッチョと化し、犯人に馬乗りになってボコスカ殴りまくっている。さらには鴨式神のカモカモまでマッチョになって、オラオラとラッシュを繰り出す。
「二人とも、殺さない程度にしてくださいね」
 やりすぎないようにと注意しつつも、久恩は式神達の暴行を止めようとはしない。そこまで情けをかけるほどの相手ではないし、最悪電脳さえ無事であればサイバースペースにアクセスはできるのだ。ヤマラージャ・アイビーの汚染が解けた後も、二度とこんなことをする気が起きないよう思い知らせておくのも良い。

「辱められても、侮辱されても私は前に進むだけです……」
 久恩の口調は穏やかだが、その内には強い心がある。邪悪な連中にどれだけ蔑まれようが、彼女の足は止まらない。
 今はヤマラージャ・アイビーの所在を突き止め、未曾有のカタストロフを阻止すること。優先目標を見据える妖怪陰陽師の目は、どこまでもまっすぐだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…人身売買会場…うーん、こんな物が半ば公然と開かれている辺り本当に末法の世だな…
…ハッキングして適当に架空の会社のデータをでっちあげてー…労働者買いに来ました風に主催者達に接触してー…
…商品の売買のために交渉をしたいと持ちかけて…個室へと移動して…
…【世界鎮める妙なる調べ】を発動…眠らせてしまおうね…
…監視カメラがあるだろうけどそこは自己判断型伝令術式【ヤタ】にハッキングして貰って問題無く取引を続けている画像を流しておこう…
…さて……それじゃあこの電脳から『感染源』を目指していくとしようか…



「……人身売買会場……うーん、こんな物が半ば公然と開かれている辺り本当に末法の世だな……」
 以前から知っていることではあったが、当たり前のように人が人を売り買いする倫理観のなさに、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は溜息を吐く。はなからモラルの崩壊した世界に『ヤマラージャ・アイビー』なんて物騒なプログラムが蔓延すれば、秩序が地に落ちるのは必然か。
「……ハッキングして適当に架空の会社のデータをでっちあげてー……」
 とにかく今は人身売買の主催者達に接触するため、メンカルはお得意の技能を活かして偽の経歴や背景を作り上げ、噂の"人材派遣"会社の闇サイトにアクセスする。ネット上にしか存在しない社名や営業実績も、バレなければこの世界ではリアルのうちだ。

「ご足労いただきありがとうございます。ご連絡いただいた方ですね?」
「……うん、そう……」
 とあるベンチャー企業の代表として労働者を買いに来た風を装い、うまく主催者達とコンタクトを取ったメンカル。
 会場には運営側のスタッフと、商品を買いに来た顧客、そして商品にされた人間達が、それぞれ一目で分かる格好をしている。同じヒトであっても存在する厳然たる線引き――それを視界の端に置きながら彼女は話を進める。
「……まだ買うかどうかは決めてないから……商品の売買のために交渉をしたい……」
「ええ勿論。こちらへどうぞ」
 こんな仕事だからこそなのだろうか、主催者達は表面上ビジネスマンらしい穏やかな物腰で来客を個室に案内する。
 外面だけならまともそうだが、彼らはすでに『ヤマラージャ・アイビー』に電脳と思考を汚染されている。真っ当な良識は期待できないだろう。

「誘う旋律よ、響け、唄え。汝は安息、汝は静穏。魔女が望むは夢路に導く忘我の音」
 なのでメンカルは個室に入った瞬間、交渉をはなから捨てて【世界鎮める妙なる調べ】を発動。「なにを……?!」と驚く間もなく、主催者達は強烈な眠気に誘われた。彼女の目的は『ヤマラージャ・アイビー』汚染者の確保。殺さずに捕らえるなら眠らせてしまうのが一番手っ取り早い。
「だ、誰か……ぐぅ……」「け、警備を……Zzz……」
 いくら個室とはいえ、中で異変が起きればすぐに感知されるのが普通だろう。しかし鳴るはずの警報は沈黙したままで、外から警備員が駆けつけてくる気配もない。この部屋に入った直後から、室内のセキュリティシステムはメンカルに掌握されていた。

「……こういう機械頼りのほうが逆にやりやすいね……」
 自己判断型伝令術式【ヤタ】のハッキングにより、室内に設置された監視カメラにはメンカルと主催者達が問題なく取引を続けている画像が流れている。誰かがこの偽装に気付いた頃には、会場は猟兵達の手で制圧されているだろう。
「……さて……それじゃあこの電脳から『感染源』を目指していくとしようか……」
 相手がよく眠っているのを確認すると、メンカルは主催者の首裏のコネクタから電脳に接続し、サイバースペースへと突入。人知れず電脳空間に蔓延した『ヤマラージャ・アイビー』、その大本を探るべく調査を進めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
私がこの世界に足を踏み入れるのは
今回が初めてですが…
カタストロフの危機を見逃す訳には行きません
今のうちに対処しなくては

なるべく人混みに紛れるようにして
人身売買の会場に侵入
バックヤードや
人を沢山集められそうな場所を探し
売られそうになっている人々を見付けます
首尾良く見付けられたら
白燐蟲に鍵を破壊させる等して解放

見咎められた場合は
脱走した商品を装います
帰りたいだけなんです
ここの事は誰にも話しませんから
見逃して下さい…
捕まりそうになったら桜の癒やしで眠らせます

首謀者達が現れれば
白燐蟲の光で目を眩ませつつ
桜の癒やしを使用して眠らせ確保
動けないように
手足は縛っておきます
ここがまず第一歩
気を引き締めなくては



「私がこの世界に足を踏み入れるのは今回が初めてですが……」
 まるでサイバーパンク小説の世界のように、電脳と|巨大企業群《メガコーポ》に支配されたサイバーザナドゥ。そこで蔓延しつつある危険なプログラムが、全人類の電脳を焼き尽くそうとしていると聞いたことが、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の初来訪の理由だった。
「カタストロフの危機を見逃す訳には行きません。今のうちに対処しなくては」
 暴走する『ヤマラージャ・アイビー』を阻止せんと、薙人が向かった先は"人材派遣"を騙った人身売買会場。ここに件のプログラムの汚染者がいるらしいが、売られそうになっている人達のことも無視できない。二つの目的を彼は同時にこなすつもりだ。

(随分繁盛しているようですね……良くないことですが)
 なるべく人混みに紛れるようにして、ひっそりと人身売買の会場に侵入した薙人は、まずバックヤードや人を沢山集められそうな場所を探す。ここを大規模な市場とみなすなら"商品"はある程度まとめて置いておくものだろう。売られてしまう前に一人でも多く助け出さねば。
「……いました。もう大丈夫ですよ」
 首尾よく目的の場所を見つけた彼は、白燐蟲の力を借りて鍵を破壊し、檻に入れられていた人々を解放する。家畜やペットと同等以下の扱いを受けていた彼らには、地獄で蜘蛛の糸を見た心地だろう。「ありがとう、ありがとう」と、涙を流して何度も感謝する者もいた。

「ここに居るのが全員ではないでしょうね」
 ひとつの"保管場所"で人々を解放しても、薙人はそれで満足しない。バックヤードを歩き回って同様の場所がないか探すが――ここは言うなれば敵地の只中。運営側もセキュリティを用意していないはずがなく、警備の者に見咎められてしまう。
「おい、そこで何をしている!」
「う、うわっ……!」
 恫喝と共にライトで照らされた薙人は、咄嗟に脱走した商品を装った。いかにも怯えたような表情と声音を演技し、弱々しくその場にへたりこむ。侵入者だとバレるよりも、こう振舞ったほうが相手の警戒心も薄れて油断するだろう。

「帰りたいだけなんです。ここの事は誰にも話しませんから、見逃して下さい……」
「駄目だ、さっさと檻に戻……」
 案の定、のこのこと警備員が近付いてきたのを見計らって、薙人は【桜の癒やし】を発動。ふわりと咲き乱れる桜の花吹雪が、包みこんだ相手をたちまち眠らせる。主に一般人を寝かしつけるのに使うユーベルコードだが、この世界の人間にも効いたようだ。
「おやすみなさい」
 警備を起こさないよう静かにその場を離れ、捜索を再開する薙人。商品にされていた人々の救出を順調に進めつつ、会場施設のさらに深部――首謀者達のいるフロアまで足を踏み入れる。『ヤマラージャ・アイビー』に電脳を蝕まれ、すでに理性を失った者たちだ。

「見つけましたよ」
「なッ!?」「なんだお前……は……」
 標的の前に姿を見せると同時に、薙人の白燐蟲が光を放つ。真っ白な閃光に首謀者達の目がくらんだ直後、再び吹き荒れたのは【桜の癒やし】。いかに|機械化義体《サイバーザナドゥ》を装備したサイボーグとはいえど、一般人には違いなく、あっけなく1人残らず眠りに落ちた。
「ここがまず第一歩。気を引き締めなくては」
 無事目標を確保した薙人は、連中の目が覚めても動けないように手足を縛り、ふうと一息。今のところは順調だが、ここから先は何が起こるか分からない。初めて訪れる世界ということもあってか、油断も気の緩みも彼には一切ないようだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
ヤマラージャ・アイビー、名前の時点で連想はしていましたが……
本物なのか、それとも残滓や劣化した複製なのか分かりませんが、放ってはおけませんね

世界観に合わせて白いボディスーツを纏う
商品として搬入されることで潜入
この世界では、完全生身は商品価値が非常に高い筈
移植の臓器、|愛玩奴隷《ペット》、使い道は色々あるのだろう
傷つけて商品価値を下げないように乱暴に扱われることもない筈

高値を付けた買い手に引き渡すため、首謀者が近付いて来たら――【怪力】で拘束を引き千切り、【雷迅拳】を叩き込む
殺さないよう手加減(気絶攻撃)はしたが、しばらくは動けまい
護衛や買い手も手早く片付けましょう



「ヤマラージャ・アイビー、名前の時点で連想はしていましたが……」
 幽世と現世の狭間で倒したはずの敵が――究極妖怪『大祓骸魂』が、まさか本当に姿を現したとなると、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)も驚きを隠せなかった。ただの妖怪の範疇に収まらない強大さ、そして異質さは、実際に対峙したこともあって印象に残っている。
「本物なのか、それとも残滓や劣化した複製なのか分かりませんが、放ってはおけませんね」
 あれが今度はサイバーザナドゥに顕現したと言うなら、またもカタストロフ級の危機が迫っているのは間違いない。
 電脳とテクノロジーの発達した世界観に合わせ、白いボディスーツ姿に着替えたオリヴィアは、いざ『ヤマラージャ・アイビー』の暴走を阻止すべく行動を開始した。

「まさか今日は、こんなレア物を"入荷"できるなんてな」「ああ、ツイてるぜ」
 プログラムに思考破壊された者達が主催する人身売買会場では、大勢の人間が"商品"として搬入・陳列されている。
 これだけ規模が大きくなれば運営に関わるスタッフや仕入れ業者も多く――そんな連中が引き連れる"商品"の中に、オリヴィアは紛れ込んでいた。
(この世界では、完全生身は商品価値が非常に高い筈。移植の臓器、|愛玩奴隷《ペット》、使い道は色々あるのだろう)
 深刻な骸の海汚染に抵抗するため、肉体を|機械化義体《サイバーザナドゥ》に換装することが当たり前になった世界だからこそ、一切の改造を施していないウェットな肉体には希少価値が生まれる。生きたまま好事家に売りつけてもよし、臓器のパーツごとに"バラ売り"してもよし。いずれにせよ業者側にはおいしい獲物だ。

「おい、気をつけろよ」「分かってるって……ほらこっちだ、付いてこい」
 オリヴィアの需要を理解している連中は、傷つけて商品価値を下げないようにする。よって奴隷未満の立場とはいえ乱暴に扱われることはなかった。モノとして下衆な金持ちの目に晒されるのは不快だが、お陰でスムーズに会場に潜入することができた。
「おお来たか。ちょうどお前の買い手がついたぞ」
 スタッフに連れてこられた先で待っていたのは、恰幅のいいスーツ姿の男。態度からしてこの会場の主催者だろう。
 完全生身のオリヴィアはよほど高値が付いたのか、ご満悦の様子だ。『ヤマラージャ・アイビー』に汚染された影響か、あるいは以前からこうだったのか、人としての善性や倫理観はカケラも感じられない。

「さあ、こっちへ……」
 "商品"を買い手に引き渡すため、首謀者がゆっくりと近付いてくる――その瞬間、オリヴィアは両腕に力を込めて、拘束を引き千切った。サイボーグ用に開発された錠や枷を、まさか生身で破壊できる怪力の持ち主がいるとは、業者側も思わなかっただろう。
「なッ?! き、貴様……ぐへえッ!!」
「眠っていろ」
 驚愕する首謀者の土手っ腹に叩き込まれたのは【雷迅拳】。殺さないように手加減はしたが、しばらくは動けまい。
 この男にはまだ用がある。『ヤマラージャ・アイビー』の所在を突き止めるには、生きたままの電脳が必要なのだ。

「お、お前、なにやったか分かって……がはッ?!」「ま、まま待て……うぎゃっ!!」
 その場にいた護衛と買い手たちも、あっという間に徒手空拳のオリヴィアに片付けられる。サイボーグ化したところで所詮は一般人のレベルだ。雷を纏った拳撃で|機械化義体《サイバーザナドゥう》をショートさせられた連中は、首謀者ともども地を這う羽目になった。
「これで鎮圧完了ですね」
 会場のほうを見回しても、他の猟兵達の作戦も上手くいったようだ。もはやここで人身売買が行われることはない。
 上首尾にて依頼の第一段階を達成したオリヴィアは、気絶したままの首謀者の首根っこを掴み、サイバースペースへのアクセスポイントを探すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『刺青スレイブ・量産型I』

POW   :    デジタルタトゥー・ハザード
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【ネットに出回ったデマを信じ込んだ一般大衆】が出現し、指定の敵だけを【遠く離れた安全地帯】からの【罵詈雑言】と【サイバー攻撃】で攻撃する。
SPD   :    ライト・トゥ・ノウ
視界内の対象1体の個人情報を開示する。事前調査を行えば、より多くの能力値・弱点・交友関係等を暴ける。
WIZ   :    嘘も真も拡散しろ!
自身の攻撃ユーベルコードひとつを【デジタル信号】に宿し射出する。威力が2倍になるが、[デジタル信号]を迎撃して反射可能。

イラスト:霊山 魂

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』に汚染された人間による、人身売買会場の鎮圧に成功した猟兵達。
 倒された主催者たちは怪我の大小はあるが、死者はいない。それは彼らの電脳が、ヤマラージャ・アイビーの所在に繋がる手がかりだからだ。

 主催者の電脳を使ってサイバースペースにアクセスした猟兵達は、背筋にぞわりと寒気を感じる。
 まるで待ち構えるかのように、その空間にいたのは多数のオブリビオン。外見は人型のアバターだが、まるで何かに取り憑かれたように目の焦点が定まっていない。

「て、てて敵、敵……排除、排除……」

 彼女達は『刺青スレイブ・量産型I』。電子戦・情報戦に対応した戦力として某企業が開発したオブリビオンだ。
 だが、ここにいる個体はヤマラージャ・アイビーに「骸魂」を増設されている。元々の能力に加えて骸魂の【連鎖する呪い】を操る、カクリヨファンタズムで言う「骸魂に取り憑かれた妖怪」に近い存在になっているようだ。

 ここで彼女達が現れた理由などひとつしかない。ヤマラージャ・アイビーに近付く外敵を排除するためだろう。
 逆に言えばヤマラージャ・アイビーも、これ以上は「探られたくない」と思っているわけだ。猟兵達の行動は、サイバースペースに蔓延した呪いの源を着実に追い詰めている。

 ここで「骸魂オブリビオン」を撃破し、ヤマラージャ・アイビーの居場所を完全に特定する。
 群れなす電子の悪意を感じながら、猟兵達は戦闘態勢を取った。
神臣・薙人
これ以上探られたくないのであれば
猟兵としては先に進む他ありませんね

可能な限り多くの敵を巻き込み
白燐桜花合奏使用
演奏を途切れさせないようにしますが
デジタル信号射出の兆候が見られた際は
白燐蟲をぶつけて迎撃するか
演奏を中止して蟲笛で弾き返す事を優先
威力を増した攻撃は
出来れば受けたくありませんからね

演奏中も敵の動きには注意を払い
攻撃に移行する素振りが見えれば
立ち位置を調節して回避するようにします
連鎖する呪いを受けてしまった場合は
解除方法がありませんから
白燐蟲の治癒で凌ぎます
追い付かなければ一時的に距離を取り
傷を癒してから再度近付きます

私達はこの先に用があるのです
ここで止まっている訳には行かないのですよ



「これ以上探られたくないのであれば、猟兵としては先に進む他ありませんね」
 オブリビオンの陰謀を暴き、阻止するのが自分たちの使命。サイバースペースで『刺青スレイブ・量産型I』と遭遇した薙人は、即座に「初心者用蟲笛」を取り出した。桜の精にして白燐蟲使いである彼は、演奏によってその二つを自在に操る。
「途切れぬ音色を奏でましょう」
 発動するのは【白燐桜花合奏】。華やかな音色とともに桜の花吹雪が舞い、白燐蟲の群れが羽ばたく。ホログラムの幻覚ではなく、全てが現実と等しい実体だ。桜の花びらは刃のように敵を切り裂き、蟲たちの光は癒やしをもたらす。

「て、ててて敵……!!」
 桜の花吹雪に巻き込まれた刺青スレイブは、ダメージを受けながらも視線をギョロリと薙人に向ける。骸魂を増設された影響か、オブリビオンであることを差し引いてもその反応は正気とは思えず――実体化したデジタル信号を矢のように構える。
(させません)
 薙人は演奏を止めぬままメロディを変化させ、白燐蟲に指示を出す。攻撃の射線に割り込むように飛んだ蟲たちは、その身を以て【嘘も真も拡散しろ!】を迎撃した。あれに込められたユーベルコードは通常より威力が増しているのが衝突時の閃光でわかる。

(威力を増した攻撃は、出来れば受けたくありませんからね)
 いざとなれば演奏を中断して蟲笛で弾き返すことも考えながら、薙人は敵のデシタル信号射出の兆候に注意を払う。
 電子戦の専門家である刺青スレイブは、信号の他にもデータを実体化させた攻撃を仕掛けてくるが、そちらは比較的対処は容易だ。
(これは防御するよりも、避けるべきですね)
 笛の音色を途切れさせぬまま、自然な身のこなしと足運びで立ち位置を調節し、回避する。単体なら防げる攻撃でも骸魂の【連鎖する呪い】が付与されていれば、以降ずっと不慮の事故による追加攻撃を受け続ける羽目になる。だから彼はどんな些細な素振りでも攻撃に移行する動きが見えれば、警戒と注意を怠らなかった。

「は、はははい、はいじ、じじじじょ……」
 薙人が【白燐桜花合奏】演奏を続けている限り、蟲と桜による攻撃は終わらない。そうなれば先に力尽きるのは刺青スレイブのほうだ。花吹雪の中で1人また1人と仲間が倒れていくなか、それでも彼女らは攻撃を止めようとしない。
(連鎖する呪いを受けてしまった場合は、解除方法がありませんから)
 回避に徹していた薙人でも、ここまで捨て身の猛攻をされては避けきれない。しかし幸いにも彼には白燐蟲の治癒があった。呪いから生じるバグやエラーを受けた傍から回復で凌ぎ、追いつかなければ一時的に距離を取って、傷を癒やしてから再度近付く。二種のユーベルコードによる同時攻撃を受けても、終始冷静な対応だった。

「私達はこの先に用があるのです。ここで止まっている訳には行かないのですよ」
 そう言って薙人が口から笛を離した時には、周囲にいた刺青スレイブの数は大幅に減っていた。連鎖する呪いもそれを放った元凶の骸魂オブリビオンが倒れれば解除されるようだ。ここはまだ『ヤマラージャ・アイビー』を追い詰める前哨戦――この程度で遅れを取りはすまいと、彼の視線はもっと先を見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「この世界のオブリビオンは常でも企業の奴隷で不遇だけど、いつにもまして哀れっすね」

敵のUCはそもそも攻撃を受けないことで対処

まず妖怪煙を最大放出して煙幕として敵の視界外に逃れ、
UC『妖怪忍法葉っぱ乱舞』の立体映像で【おどろかし】攪乱、
綿ストールに【化術】でサイバースペースの背景を映して隠れ自分が見えないよう【迷彩】。
さらに時間差からUCの時限爆弾で倒しつつ混乱を誘って同士討ち狙い。
「正気じゃないから攪乱し放題っすね」

気づかれたら【結界術】や【敵を盾にしつつ】UC『綿ストール・本気モード』から【見切り】で不運ごとなぎ払っていく。

大祓はスメミマ様が教えた儀式、スメミマ様とはニニギ様の事。つまり…



「この世界のオブリビオンは常でも企業の奴隷で不遇だけど、いつにもまして哀れっすね」
 骸の海を投与した改造生物として作り出され、さらに『ヤマラージャ・アイビー』に骸魂を増設された『刺青スレイブ・量産型I』。とことんまで利用される立場にあるオブリビオンに、衣更着も少しばかり憐憫の情を抱く。もっとも、それで彼が戦いを躊躇することはあるまいが。
「せせせ、殲滅……」「はい、はは排除……」
 まともな思考力を破壊された刺青スレイブ側はなおのこと容赦がない。サイバースペースへの侵入者を察知すれば、データを実体化させたビームや弾幕で攻撃を仕掛けてくる。これらは骸魂による【連鎖する呪い】が付与されており、一度でも当たれば不慮の事故に悩まされることになる。

「そもそも攻撃をうけないことが一番っすね」
 衣更着はまず変化時などに用いる「妖怪煙」をどろんと最大放出し、まっしろな煙幕で敵の視界外に逃れる。これで命中率を落とせるほか、刺青スレイブの【ライト・トゥ・ノウ】で個人情報を開示される心配もない。煙の中へと適当に攻撃を撃ち込んでも、そこに彼の|実体《・・》はない。
「ぽん! 狸忍法奥義、どろんはっぱ乱舞っす!」
「……!?」
 代わりに出てきたのは【妖怪忍法葉っぱ乱舞】で作られた立体映像だ。舞い散る木の葉とともに出てきた衣更着そっくりの幻影は、刺青スレイブたちを大いに驚かせる。反射的に反撃しても、ただの映像なので本体にダメージはない。

「正気じゃないから攪乱し放題っすね」
 敵が立体映像に気を取られている隙に、衣更着は首から広げた「打綿狸の綿ストール」にサイバースペースの背景を化術で映し、忍者の隠れ蓑のように自分の姿が見えないようにする。よくよく観察すれば迷彩を見破れたかもしれないが、あちらの注意力と思考力を鑑みればそう警戒する必要はなさそうだ。
(もっと混乱してもらうっすよ)
 気付かれていないのを良いことに、衣更着はさらにどろんはっぱを時限爆弾に変化させ、敵の近くで時間差で爆発させる。これで敵を倒しつつ混乱を誘って同士討ちを狙う算段だ。脅威に反射的に対応するタイプなら期待できるはず。

「ッ! は、はは排除!」「て、てて敵!?」
 案の定と言うべきか、刺青スレイブたちは仲間を敵と誤認して撃ち合いを始めたが、乱戦になれば流れ弾などのせいで完全な隠密は難しくなる。綿ストールの破れ目から迷彩が剥げれば、彼女らは当然衣更着にも攻撃を仕掛けてくる。
「ま、これはしょうがないっすね。ならおいらも打綿狸の本領発揮っす!」
 衣更着は結界を張ったり近くの敵を盾にしたりして攻撃を防ぎつつ【綿ストール・本気モード】を発動。摩擦係数の減ったストールを長大な鞭のように振るい、迫りくる不運ごと敵をなぎ払っていく。変幻自在の綿の一撃を喰らった刺青スレイブたちは「ガガピッ?!」とノイズのような悲鳴を上げて吹っ飛んでいった。

「大祓はスメミマ様が教えた儀式、スメミマ様とはニニギ様の事。つまり……」
 なおも綿ストールを振るいながらも、衣更着が考えるのはヤマラージャ・アイビーの所持者『大祓骸魂』について。
 旧き伝承や神話の知識から"大祓"という名を紐解くことで、導き出される推察とは。カクリヨファンタズムに住まう妖怪のひとりとして、この一件の元凶が気になっている様子だ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノキ・エスプレッソ
サイバーベースへの侵入成功…
やっぱり気になります。小さな容量が呪いで意思を持っている事が、色を見て感情が作られたボクと似ているのもあるけど…わざわざ目立つような人身売買を行わせた目的はなぜでしょうか?

敵UCによるボクのデータの開示を認知。自分のことは隠すクセに、ボクのことは調べたがるなんて勝手ですね。
…いいよ。ボクだっておまえの色を見てやるからさ!

相手がUCの詳細を解析する前にバイクで突進して、『連鎖する呪い』による攻撃をボクのUCで防ぐ。その衝撃から呪いを再現した塗料を作って戦場全体にばらまく!
不慮の事故で戸惑う敵たちをバイクで轢いていこう!

ボクは隠さないよ。この心の色で描き続けるからッ!



「サイバーベースへの侵入成功……」
 現実空間から電子の世界に飛び込んだノキを待っていたのは、骸魂オブリビオン化した『刺青スレイブ・量産型I』。
 骸魂を増設されたことでさらなる力を手に入れた改造兵士だが、彼女の疑問と思考はこいつらに対して向けられるものではなかった。
「やっぱり気になります。小さな容量が呪いで意思を持っている事が、色を見て感情が作られたボクと似ているのもあるけど……わざわざ目立つような人身売買を行わせた目的はなぜでしょうか?」
 世界中の電脳を焼き尽くすのが目的なら、支配下においた人間にあんなことをさせる意味はない。『ヤマラージャ・アイビー』にはまだ何か別の目的があるのではないか? あるいは最終目的を果たすために必要な、段階的な目標が。

「て、ててて敵、はは発見……」
 ノキの思索を遮ったのは、バグを起こしたAIのように支離滅裂な刺青スレイブたちの声だった。同時に【ライト・トゥ・ノウ】により、こちらのデータが開示されたのを彼女は認知する。もともと情報戦と電子戦を得意とする個体という話だけあって、情報収集はお手の物のようだ。
「自分のことは隠すクセに、ボクのことは調べたがるなんて勝手ですね……いいよ。ボクだっておまえの色を見てやるからさ!」
 どこまで知られたかは分からないが、勝手に個人情報を抜かれるのは気持ちのいいものではない。眉をひそめたノキは愛機『ヴィヴィッドバイク』に跨り、相手がユーベルコードの詳細を解析する前に突進を仕掛けた。軽快なエンジン音が鳴り響き、カラフルなタイヤ痕がサイバースペースに刻まれる。

「は、はい、排除……!」
 外敵の接近を感知した刺青スレイブたちは【連鎖する呪い】を付与した電子文字の弾幕やビームなどを放ってくる。
 ひとつ当たれば延々と不慮の事故による不幸を与え続ける悪霊の呪い。これに対してノキは左手でハンドルを握ったまま、右手で「フラットブラシロッド」を構えた。
「衝撃計算完了……この感覚、色で表すとこうかなッ!」
 長剣サイズの平筆で攻撃を受け止め、その衝撃からユーベルコードを再現した塗料を作りだす【衝撃色の表現】。
 演算力とセンスによりコピーされた【連鎖する呪い】の塗料は、筆のひと振りで戦場全体にばら撒かれ、今度は刺青スレイブたちを襲った。

「「?!!?!?!!!?」」
 呪いの塗料を頭から浴びた刺青スレイブたちは、サイバースペースにおける突然のバグやエラーなど、様々な不慮の事故に見舞われる。想定外の事態に戸惑う敵たちは、傍から見れば無防備で隙だらけ。遠慮なく攻撃するチャンスだ。
「ボクは隠さないよ。この心の色で描き続けるからッ!」
 見たければ見なよと言わんばかりに、敵の視界の真正面から突撃し、バイクで轢き倒すノキ。果たして刺青スレイブが最期の瞬間に解析した彼女の"色"はどんなものだったのか。それはきっと灰色のサイバーザナドゥでは滅多に見られないような、|衝撃的《ビビッド》なカラーだったに違いない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星詠・黄泉
さあ来い
と言いながら刀を引き抜く

呪いとは面倒な事をしてくれるな
【連鎖する呪い】は攻撃で癒えない傷跡をつけられないように立ち回る
対象は人以外の物なども入るので心眼と気配感知で敵の動きを見ながら推力移動で対応します

…取り憑かれているから事前調査はしてないはずだ(レントの名前は『やはり』干渉出来ないようにされているな…)
私の個人情報はキュラ・ディールークという真名
桜花星流星人である事
仕事は護衛など
夫の名前は文字化けしています

だがいい気分ではないな…私にもプライバシーがあるんだぞ
電撃を放ち反撃

ヤマラージャ・アイビーへ行かねばならない、どいて貰おうか
UC死相断我を放ちUC剣刃一閃も発動して敵を切り裂いた



「さあ来い」
 と言いながら「雷鳴刀」を引き抜くのは黄泉。鋭い眼光で見据える先には『刺青スレイブ・量産型I』の集団がいる。
 思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』に骸魂を増設された彼女たちは、サイバーザナドゥでは一般的ではない"呪い"の力を得た。サイバースペースへの侵入者を察知すれば、その力は即座に行使される。
「は、はは発見、ててて敵」「はいじ、じじじじょよ」
 機械敵にバグった音声と共に放たれるデータの弾幕やビームには、全て【連鎖する呪い】が付与されている。これで付けられた傷は癒えることがなく、被害者には不慮の事故が次々と襲い掛かる。解除するには範囲外に離脱するしかない厄介なユーベルコードだ。

「呪いとは面倒な事をしてくれるな」
 【連鎖する呪い】への根本的な対処として、黄泉は癒えない傷跡をつけられないように立ち回る。その対象は人以外の物なども入るので、心眼を研ぎ澄ませて敵の動きと気配を探り、高速の推力移動で対応する、堅実だからこそ実力が如実に現れるモーションだ。
「……き、ききキュラ・ディールーク……桜花星流星人……しょ職業、護衛……配偶者■■■■……」
 回避に徹する黄泉を追い立てながら、刺青スレイブたちはうわ言のように黄泉のデータを呟く。些かバグり気味とはいえ元は情報戦タイプのオブリビオン、視界に入った者の個人情報を暴く【ライト・トゥ・ノウ】は発動中のようだ。

「……取り憑かれているから事前調査はしてないはずだ」
 転生前からの真名まで暴かれたのは多少驚いたが、刺青スレイブたちがこの場で開示した内容に黄泉にとって致命的な情報はない。あえて不自然なポイントを挙げるとすれば、夫の名前だけが文字化けして聞き取れなかったくらいか。
(レントの名前は『やはり』干渉出来ないようにされているな……)
 黄泉はその理由に心当たりがあるようだったが、この場で語ることはしない。大昔のスペースオペラワールドにて、人造人間だった当時の彼女を受け入れ、夫婦となった大切な人。どうやらその人物には深い謎が隠されているようだ。

「だがいい気分ではないな……私にもプライバシーがあるんだぞ」
「がビッ!!?」
 奴らがやっているのは、こちらの大切な思い出や情報を勝手に暴き出す行為だ。クールな表情にかすかな怒りを滲ませて、黄泉は反撃の電撃を放つ。雷鳴刀より迸った閃光はサイバースペースを眩く照らし、刺青スレイブどもに悲鳴を上げさせた。
「ヤマラージャ・アイビーへ行かねばならない、どいて貰おうか」
「「ぎ、ぎぎガッ!!?」」
 間髪入れずに【死相断我】を放ち、【剣刃一閃】の連撃に繋ぐ。瞬間的に鬼化した彼女の斬撃は神速を超え、あらゆる耐性を無視して必ず標的を捉える。まばたきする間もない刹那のうちに、気がつけば敵はバラバラになっており――散らばる骸の雨を優雅に走り抜けながら、星を駆ける剣豪は刀を鞘に収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西恩寺・久恩
第六感と瞬間思考力は常に発動
無意識に指定UC発動

さあ、ぶっ飛ばしましょうか
と拳を鳴らす

【連鎖する呪い】対策は敵に傷つけられないように心眼で見ながら対処する
敵が柱などにUCを使用した場合は推力移動で距離をとる

ん?あれは?
敵がUCを既に使用していたようで一般大衆が居た
私の事を人殺しの妖とか言ってきた

…妖はこの世界にいないでしょう?支離滅裂ですね
罵詈雑言は無視、サイバー攻撃は心眼で見つつ推力移動で回避

『フラウディ・スパーク!』『カモ〜!』
大衆はフラウディとカモカモの光線で消し飛ばす

私の世界にもああいう事言う人はいますからね…妖ってだけで言うのは何ででしょうね?被害者ならまだしも…
怪力で敵を殴り飛ばす



「さあ、ぶっ飛ばしましょうか」
 サイバースペースから出てきた『刺青スレイブ・量産型I』を見て、久恩はぽきぽきと拳を鳴らす。少々変わったものに取り憑かれているようだが、所詮は低級のオブリビオン。この程度の相手を軽くのせないようでは『ヤマラージャ・アイビー』にはたどり着けまい。
「せ、せせ殲滅、はは排除」
 ヤマラージャ・アイビーに思考破壊されているのか、挙動のおかしい刺青スレイブたちは、支離滅裂な言葉を吐きながら襲い掛かってくる。気をつけるべきとしてはその攻撃に付与された【連鎖する呪い】――癒えぬ傷と不慮の事故による追撃か。

「うん……ウォーミングアップは終わりですよ」
 久恩は心眼で敵の動きを捉えながら【超越者の肉体】による異次元の身体能力で攻撃に対処する。【連鎖する呪い】にもっとも有効な対策は、そもそも敵に傷つけられないことだ。第六感や瞬間思考力にも優れる彼女は、相手の動向を先読みするのが抜群に上手い。
(あれにも近付いたらだめですね)
 流れ弾が柱などに当たり、それにも【連鎖する呪い】が付与されれば、事故の巻き添えを喰らわないよう推力移動で距離を取る。身体能力だけでなく総合的な速度や動体視力なども無意識に強化されているため、刺青スレイブの攻撃はまるで掠りすらしなかった。

「ん? あれは?」
 電子の弾幕を避け続ける久恩の前に、ふいに見覚えのない一般人らしき集団が現れる。どうやら刺青スレイブたちは【デジタルタトゥー・ハザード】を使用していたようで、お得意の情報戦によるサイバー攻撃を仕掛けてきたようだ。
『人殺しの妖』『バケモノ』『できそこない』
 浴びせられるのは罵詈雑言の嵐。彼らはオブリビオンではなく、ネットに出回ったデマを信じ込んだだけの大衆だ。
 遠く離れた安全地帯より放たれる批判は、晒される者の精神を苛む。まさにネット社会の闇を体現したような攻撃だが――。

「……妖はこの世界にいないでしょう? 支離滅裂ですね」
 こことは文化も世界観もまるで違うところから来た久恩は、罵詈雑言を無視して刺青スレイブだけを標的に定める。
 サイバー攻撃は他と同様、心眼で観測しつつ推力移動で回避。サイバースペースにおいては物理と大差ない攻撃だ。
『フラウディ・スパーク!』『カモ〜!』
 無視されぎゃあぎゃあと喚く大衆は、式神「フラウディ」と「カモカモ」が光線で消し飛ばしてくれる。反撃されない安全圏から悪口を言うしか能のない奴らは、それだけでたちまち「ひぃ!」とログアウトして逃げ去ってしまった。

「私の世界にもああいう事言う人はいますからね……妖ってだけで言うのは何ででしょうね? 被害者ならまだしも……」
「げぐッ?!!」
 心底理解できない様子で首を傾げつつ、久恩は目の前の敵を殴り飛ばす。重ね重ね情報戦や電子戦に特化したタイプのオブリビオンが、超越者の怪力に耐えられるはずもなく、あっという間にバラバラの電子データに砕け散っていく。
 久恩からすれば、こんなくだらないデマや罵倒にいちいち付き合っている暇などない。今はヤマラージャ・アイビーの所在を見つけ出し、カタストロフの危機を阻止するのが最優先なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
えっと、これを、こうして……?(機械に疎い)

門番の存在こそが核心へと近づいている証ですね

一般大衆の罵詈雑言……?
大方、先の人身売買会場制圧を都合よく捻じ曲げて周知しているのでしょうが
私の戦いは私の意志に基づいて行われるもの
千の嘲笑、万の悪罵に晒されようと、悔いるところは一つもない

「安全圏にいる」という意識が衆愚化を助長しているようですね
ならば、身に迫る脅威を思い出させてあげましょう――槍よ、来い

電脳空間だろうが宇宙空間だろうが、呼べば聖槍は手元に来る(念動力)
穂先から白き雷霆が迸り、轟く神威が大衆に本能的な【恐怖を与える】
蔓延る呪いと共に人の驕りを焼き尽くせ――【灼烈轟雷槍】!



「えっと、これを、こうして……?」
 サイバースペースに入るための端末を、不慣れな手つきでカチカチと操作するオリヴィア。故郷ではこの手のテクノロジーがあまり発達していないこともあって、機械には疎い彼女である。幸い、一度アクセスできれば現実と変わらない感覚で活動できるので問題はないか。
「……は、ははは発見、てて敵……」「はい、排はいじじ除……」
 かくして手こずりつつも無事ログインしたオリヴィアを待っていたのは『刺青スレイブ・量産型I』。『ヤマラージャ・アイビー』に骸魂を増設されたことでバグを起こしているのか、言動は滅裂で不気味な雰囲気を纏っている。しかし脅威度は通常より増していると見ていいだろう。

「門番の存在こそが核心へと近づいている証ですね」
 さっきまで機械に苦戦していたオリヴィアも、いざ戦場に降り立てば凛とした気配を纏い、即座に戦闘態勢に入る。
 そんな彼女に刺青スレイブ達が放つのは【デジタルタトゥー・ハザード】。遠隔地から呼び寄せられた一般人達が、心無い言葉を浴びせてくる。
「一般大衆の罵詈雑言……?」
 人殺し、犯罪者、罪の意識はないのか、などといった取り留めのない罵倒がオリヴィアの耳に入ってくる。情報戦と電子戦を専門とするオブリビオンならば、ネットにデマを出回らせて社会的・精神的に敵を追い詰めるのも朝飯前か。

「大方、先の人身売買会場制圧を都合よく捻じ曲げて周知しているのでしょうが……私の戦いは私の意志に基づいて行われるもの。千の嘲笑、万の悪罵に晒されようと、悔いるところは一つもない」
 しかしオリヴィアの信念はこの程度の悪評で揺らぎはしない。ましてや真相を何ひとつ知らぬ者の、誤解と思い込みからくる罵倒など、これっぽっちも心に響かない。これで戦意を喪失すると思っているなら、刺青スレイブも民衆も大きな勘違いをしているようだ。
「『安全圏にいる』という意識が衆愚化を助長しているようですね。ならば、身に迫る脅威を思い出させてあげましょう――槍よ、来い」
 電脳空間だろうが宇宙空間だろうが、呼べば聖槍は手元に来る。黄金の穂先から白き雷霆が迸り、轟く神威が大衆に本能的な恐怖を与える。万の言葉を尽くすよりも根源的で強烈なインパクトは、ただの一瞬で衆愚どもを沈黙させた。

「蔓延る呪いと共に人の驕りを焼き尽くせ――【|灼烈轟雷槍《ブリューナク》】!」
 技術の発達と引き換えにモラルを失い、神や自然への畏敬を忘れたサイバーザナドゥの者達に、オリヴィアが示すは異境の神槍。凄絶なる白き稲妻がサイバースペースを駆け抜ければ、遠巻きに見ていた一般大衆はみなログアウトし、骸魂に取り憑かれしオブリビオンは灼き穿たれる。
『ひぇ……!』「が、がぎぎぎぐげぇ?!」
 蜘蛛の子を散らすようにいなくなった民衆と、ノイズ混じりの悲鳴を上げる刺青スレイブたち。これで奴らも多少は"畏れ"という感情を思い出しただろう。驕り高ぶり、他を害する者には裁きが下る――雷霆の神威を示したオリヴィアは悠々と先に進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ふむ…骸魂が増設されてる個体が邪魔に来たならやはりここが正解のようだね…

…【起動:応用術式『星符』】から【我が身転ずる電子の精】を発動…
…腕(と装備)及び目を光の粒子に変換…デジタル信号を「視える」ようにしてしまおう…
…そして黎明剣【アウローラ】でデジタル信号を迎撃…反射してしまうよ…
…普通に撃ってきた【連鎖する呪い】は浄化復元術式【ハラエド】にて浄化…
…攻め手を封じたら重奏強化術式【エコー】で強化した雷撃術式で一気に薙ぎ払うとしようかね…

…この先にヤマラージャ・アイビーか…企みを潰すために進むとしようか…



「……ふむ……骸魂が増設されてる個体が邪魔に来たならやはりここが正解のようだね……」
 明らかに通常個体とは異なる『刺青スレイブ・量産型I』と遭遇したことで、メンカルの調査は確信に変わる。サイバーザナドゥにおいてこのような改造を施せるのは、あの『大祓骸魂』――現在は思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』の他には考えられない。
「し、ししし侵入者……」「せせせ、殲滅つつつ……」
 サイバースペースへの侵入者を検知した刺青スレイブたちは、直ちに【嘘も真も拡散しろ!】を発動し、排除行動に移る。デジタル信号に宿すことで威力を増した【連鎖する呪い】は、猟兵にも癒えない傷を与え、不慮の事故を次々に発生させるだろう。

「……【我が身転ずる電子の精】起動」
 これに対抗してメンカルは【起動:応用術式『星符』】でカード化していたユーベルコードを発動。名前を宣言するだけで使えるように圧縮された術式は、瞬時に彼女の腕と目を光の粒子に変換した。その効果はデータや信号に対する直接的な干渉――実体のない電子情報をダイレクトに視たり触れたりできるのが【我が身転ずる電子の精】だ。
「……これでよく"視える"ね……」
 粒子化した彼女の目は刺青スレイブの放ったデジタル信号を視認し、腕と一緒に粒子化した黎明剣【アウローラ】がそれを受け止める。濃紺の刀身が跳ね返した信号は発信源である刺青スレイブの元に戻り、増幅された呪いのシグナルをぶち撒けた。

「ががッ、ガピピィーー!!!?!」
 【嘘も真も拡散しろ!】の弱点は、デジタル信号を反射されてしまうと自分がユーベルコードを受けてしまう点だ。
 威力の倍増した【連鎖する呪い】を受けた刺青スレイブは"不運にも"突発的に発生したサイバースペースのエラーや障害に巻き込まれ、ノイズじみた悲鳴とともに消滅した。
「き、きき、効かない……」「ここ攻撃、変更……」
 これを見た他の刺青スレイブは戦法を切り替え、【連鎖する呪い】を信号に宿さずそのまま放ってきた。これなら威力は下がるが反射される恐れはない。電子戦のプロが多いサイバーザナドゥでは、むしろこのほうが迎撃するのも難しいかもしれない。

「……苦肉の策だね……呪術対策くらいあるよ……」
 しかしメンカルは表情を変えぬまま、浄化復元術式【ハラエド】にて【連鎖する呪い】を浄化する。好奇心の赴くままに異世界の魔術・技術を研究分析してきた彼女は、呪詛や穢れと呼ばれる分野にも詳しい。増設された骸魂による|定型的《テンプレート》な呪いしか使えない刺青スレイブよりも、むしろ精通していると言ってもいい。
「……これで攻め手は封じた……一気に薙ぎ払うとしようかね……」
 実力差を見せつけたところで、メンカルは重奏強化術式【エコー】で増幅した雷撃術式を詠唱。多重展開された稲妻の矢が雷鳴を轟かせ、逃げる間もなく標的を貫く。「ガ、ガピッ」とショートした電子機器のような断末魔を上げて、刺青スレイブたちは骸魂ごと骸の海に還っていった。

「……この先にヤマラージャ・アイビーか……企みを潰すために進むとしようか……」
 周辺の敵を一掃したメンカルは、目を【我が身転ずる電子の精】で変換したままサイバースペースの調査を進める。
 たとえ2キロバイトの痕跡だろうと見逃さない。カタストロフの危機が現実のものとなる前に元凶を見つけだす――どこか眠たげな表情を崩さぬまま、その瞳は真剣であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
おや可愛い女の子
不幸は女の子を成敗せにゃならんことのようだ

稲荷符による呪詛攻撃でさくっと仕留めるぜ
戦闘中なのに社会的な傷を残そうという行為に走られるとモヤモヤしてくる
連続婦女暴行だの書いているのを見切ったら青筋浮かぶぞい
不幸だろうが成敗する覚悟を決める

神鳴抜いて峰打ちで【閃劇殺陣舞台】を始めるぜ
電脳に|電撃属性攻撃《電気ショック》を浴びせ一発昇天させてやる
パンピーが罵詈雑言を飛ばしてきたら殺気で返す
スレイブの持つ端末をハッキングして閲覧者の情報を一部だけ開示して一言返そう
安全圏などない!とね
懲りたら二度と匿名で喚くんじゃねーよ

うわ、誰だ実はぺったんことか|デマ《本当のこと》流しやがったのー!?



「おや可愛い女の子。不幸は女の子を成敗せにゃならんことのようだ」
 サイバースペースにアクセスするなり多数の女性に囲まれた燦は、まんざらでもない様子で軽口を叩く。相手が骸魂を増設されたオブリビオン『刺青スレイブ・量産型I』だと分かっていてこの反応なのだから、筋金入りの女好きだ。
「て、ててて敵……」「ままま抹殺……」
 無論、相手の反応などお構いなしに刺青スレイブは襲ってくる。『ヤマラージャ・アイビー』に思考を破壊されたのと引き換えに得た【連鎖する呪い】は、一度でも被弾すれば延々と不幸に見舞われることになるが――それを食らう前に燦は「四王稲荷符・桃華絢爛」の束を取り出した。

「長引かせたくないしさくっと仕留めるぜ」
「ぐぎッ?!」
 放たれた稲荷符は刺青スレイブの肌にぴたりと張り付くと、封じられた呪詛を解放する。妖狐の巫女であり、仙界で改良を施した符の威力は抜群で、低級のオブリビオンなら取り憑いた骸魂ごと一撃で祓える。最小限の苦痛で済ませるのはせめてもの慈悲か。
「こ、ここここ攻撃……」「けけ継続くくく……」
 しかし刺青スレイブたちは既に【デジタルタトゥー・ハザード】を発動していた。ネットにデマが拡散されてから数十秒後、それを信じ込んだ一般人が次々に姿を現す。彼らは捏造された情報に踊らされて、口々に燦の批判を始めた。

『あいつが連続婦女暴行の犯人か』『あー、人は見た目によらないってヤツね』
「おいこら、随分好き勝手書いてくれるじゃねえの」
 相手が女の子とはいえ、戦闘中なのに社会的な傷を残そうという行為に走られると、流石の燦もモヤモヤしてくる。
 いわれなき罵詈雑言やデマ情報の中に看過できない内容まで混じっているのを見切ると、彼女の額に青筋が浮かぶ。たとえ不幸だろうが成敗する覚悟を決めたようだ。
「悪行三昧は今日までだ。纏めて掛かってきな!」
 愛刀「神鳴」を抜き放ち【四王活人剣[閃劇殺陣舞台]】の開幕を宣言。近くにいた相手に峰打ちを食らわせると、刀身から電気ショックを電脳に浴びせる。「げぴッ?!」と悲鳴を上げて敵が一発昇天すると、間髪入れずに次の標的を狙い定め、再び攻撃を仕掛ける。ダメージが途切れるか対象がいなくなるまで、この舞台に終わりはない。

『うわっ、ひで……ヒッ?!』
 まるで時代劇のような大立ち回りを見て、パンピーどもがまたグダグダと罵詈雑言を飛ばそうとすると、燦は殺気でプレッシャーをかけ黙らせる。さらに刺青スレイブの持つ端末をハッキングして閲覧者の情報を一部だけ開示すると、一言だけ返した。
「安全圏などない!」
『や、やべ……!』
 匿名性を盾にして好き放題批判していた連中にとって、その脅しは効果覿面だったようで。すうっと潮が引くように罵声が止み、群衆がログアウトしていく。ネットのデマを鵜呑みにするようなバカどもと言えばそれまでだが、まるで根性のない奴らだ。

「懲りたら二度と匿名で喚くんじゃねーよ」
 気分悪そうに舌打ちしつつ、周りの雑音が消えてなくなれば、燦は残りの刺青スレイブの掃討に集中する。呪いでも社会的制裁でも有効打を与えられなければ、もはや敵に攻撃手段はない。華麗なる閃劇殺陣舞台で1人残らず成敗される定めだ。
「うわ、誰だ実はぺったんことか|デマ《本当のこと》流しやがったのー!?」
 その途中、9割のデマに紛れ込んだ1割の真実を見てしまったりもしたが、発信源もきっちり仕留めたので大丈夫。
 情報工作と電脳戦に長けたオブリビオンが最期は純粋な力に敗れるのは、これも因果応報というものだろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
ここがサイバースペース……感覚的には普段と違いはなさそうです。
とはいえ初めて入る場所ですから、油断はしないよう注意しましょう。

【C:M.エフェクター】で幻像を展開すれば、少なくとも増設された骸魂の呪いの矛先は逸らせるはずです。
サイバー攻撃に対しては今のところ有効な防御手段がわかりませんけど、使用には少し時間がかかるようですね。
【念動力】と「カノン」を副腕形態に変形させての【自動射撃】で、可能な限り先に倒してしまいましょう。
防御せざるをえない場合は、呪いと同じように幻像で対象を逸らせるか、こちらの攻撃で反射できるか、サイキック【オーラで防御】できるか……順に試してみるしかありませんか。



「ここがサイバースペース……感覚的には普段と違いはなさそうです」
 初めてログインした電脳の世界は、そうと知らなければ分からないほどリアルで精巧に作り込まれていた。五感や身体の動作を確かめても、特に違和感などはない。これなら普段と変わりなく戦えそうだと、レナータは少し安心する。
「とはいえ初めて入る場所ですから、油断はしないよう注意しましょう」
 正面に立ちはだかるオブリビオンの集団を見ると、彼女の表情が引き締まる。『ヤマラージャ・アイビー』に骸魂を増設された『刺青スレイブ・量産型I』――電子戦と呪いの二種の能力を使いこなす厄介な敵だ。対処を誤れば足元をすくわれる羽目になる。

「は、はははい、排除……」「抹さ、さささ殺……」
 増設の影響か、またはヤマラージャ・アイビーの所為か。明らかに正気を失っている刺青スレイブたちは、それでも侵入者を感知すれば攻撃を開始する。骸魂より放たれる【連鎖する呪い】が、終わりなき不幸と事故へと標的を誘う。
(【C:M.エフェクター】で幻像を展開すれば、少なくとも増設された骸魂の呪いの矛先は逸らせるはずです)
 レナータはすぐにユーベルコードを起動し、地獄の炎熱と感覚転写を用いた霊的質量をもつ幻像を放つ。これは物質的な攻撃は防げないが、霊的・魔術的効果に対するデコイとして働く。呪いの信号はそれに引き寄せられるように命中し、相殺された。

「サイバー攻撃に対しては今のところ有効な防御手段がわかりませんけど、使用には少し時間がかかるようですね」
 もう一つのユーベルコードが来る前に可能な限り先に倒してしまおうと、レナータはサイバーウイング「カノン」の各スラスタを副腕形態に変形。念動力のサイキックと合わせて自動射撃モードを起動し、刺青スレイブを攻めたてる。
「ぎ、がひッ!」「ぐげ、がっ?!」
 元は情報戦と電子戦を専門とする量産型オブリビオンのため、物理戦闘は得意ではないようだ。サイバースペースの中でも弾丸や炎のダメージはリアルと同様、限界に達すれば死に至る。ノイズめいた断末魔を遺して、敵は次々に倒れていった。

「せ、せせせ殲滅……」
 それでもプログラミングされた機械のように、刺青スレイブは侵入者の抹殺を優先する。今際の際に放たれた【嘘も真も拡散しろ!】のデジタル信号には、これまでより強力な【連鎖する呪い】が宿っていた。電子化された呪いとは、奇しくもヤマラージャ・アイビーのそれに近い。
「……順に試してみるしかありませんか」
 確実な対処法をすぐには思いつかなかったレナータは、考えつく限りの防御策を直ちに行う。【C:M.エフェクター】の幻像による相殺、こちらの攻撃による反射、サイキックオーラによる防御――サイバースペースの戦闘は初めてでも猟兵としての経験は豊富なだけあって、流石に咄嗟の対応が速い。

「この情報は次の戦いにも活かせそうですね」
 結果としてデジタル信号は霊的な幻には反応しなかったが付与された呪いを相殺する盾としては有効で、サイキックによる反射と防御も可能だった。思念のオーラにより軌道を捻じ曲げられた信号は、発信源やその周辺にいる敵の元に返り、呪いを暴発させる。
「ぎ、がががぎぎっ!!」「ぐぎゃぎぎぎえぇ!!」
 バグじみた挙動でのたうち回りながら、サイバースペース上の不慮のトラブルに巻き込まれ消滅する刺青スレイブ。
 断末魔の絶叫が収まれば、周囲はしんと静寂に包まれ――新たな敵が出てくる気配もないのを確認すると、レナータは戦闘態勢を解除した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヤマラージャ・アイビー』

POW   :    受肉化百鬼夜行
【怪物化した人工タンパク質】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[怪物化した人工タンパク質]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 骸魂オブリビオンと化した『刺青スレイブ・量産型I』を、サイバースペースにて撃破した猟兵たち。
 これにより『ヤマラージャ・アイビー』の所在を隠すものはなくなり、正確な予知が可能になる。ほどなくして後方待機中だったグリモア猟兵より連絡が入った。

 ――現在、ヤマラージャ・アイビーはサイバースペースではなく、現実世界にいると。

 猟兵の動向を察知したヤマラージャ・アイビーは、食肉工場をハッキングして自ら生成した人工タンパク質を用い、現実世界に「受肉」しようとしている。
 これを知った一同は直ちにサイバースペースからログアウトし、グリモアの力で予知された食肉工場に転移した。

『来たのですね 猟兵たちよ』

 果たして、そこで猟兵達を待っていたのは、かつてカクリヨファンタズムに現れた究極妖怪『大祓骸魂』と瓜二つの女性だった。大祓百鬼夜行にて実際に大祓骸魂と対峙したことのある猟兵なら、雰囲気や威圧感まで同じだと分かる。
 これが思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』が現世に受肉した姿だというのか。ここまで来れば偶然の一致で片付けることは不可能だろう。

『あの市場には 私が"求めていたもの"がありました』

『それを潰されてしまったのはとても残念ですが いずれあなたたちは私を見つけると思っていました』

 以前と同じどこか浮世離れした調子で、ヤマラージャ・アイビーは語る。
 自身を「感染」させた人間達に主催させていた人身売買会場。あれにはどうやら彼女の望みが関わっていたようだ。

 実力まで以前の『大祓骸魂』と同じなら、ヤマラージャ・アイビーは極めて強大なオブリビオンだ。
 しかし彼女の「求めていたもの」が何なのか、それを推測しうまく刺激すれば、大きな隙を得られるやもしれない。
 考えうる全ての手段を尽くすべきだ――なにせ目の前にいるのは、かつてカクリヨファンタズムとUDCアース、ふたつの世界を滅ぼしかけた大敵なのだから。

『今の私は わずか2キロバイトの電子の塵 でもこうして肉の体を手に入れた』

『私が|機械化義体《サイバーザナドゥ》の電脳全てを灼き尽くす その備えが整うまであとすこし』

『猟兵たちよ 止められますか』

 かつてと似たような問いかけを、ヤマラージャ・アイビーは再び発する。
 それに対する猟兵達の返答は決まっていた――この世界をカタストロフの危機から救うための、決戦が幕を開ける。
レナータ・バルダーヌ
思考破壊プログラム、人身売買、求めるもの……?
大祓百鬼夜行のときは……いえ、考えるのは程々にしておきましょう。
こちらが隙をみせてしまっては元も子もありません。

相手が数の力を頼りにするなら、こちらも【Ψ:M.エリミネーター】で手数を増やして射撃します。
能力強化を防ぐために人工タンパク質を優先して攻撃し、合間をみて本体を狙います。
その代わり足は止まってしまうので、接近された場合はサイキック【オーラによる防御】と赤熱刃で応戦します。

わたしには小容量のプログラムのままの方が脅威に思えますけど、わざわざ肉体を手に入れたのも目的に関係あるのでしょうか。
やはりわかりませんね……得意な方に任せるとしましょう。



「思考破壊プログラム、人身売買、求めるもの……?」
 ここに至るまでの事件の概要から、『ヤマラージャ・アイビー』が求めるものを考察するレナータ。それが分かれば敵の隙を突くこともできるかもしれないが、なにぶん情報が乏しい。人智も神智も超えた存在の動機を予想するのは簡単なことではなかった。
「大祓百鬼夜行のときは……いえ、考えるのは程々にしておきましょう。こちらが隙をみせてしまっては元も子もありません」
 結局、彼女は小細工よりも正攻法でヤマラージャ・アイビーに挑むほうを選ぶ。強敵だとは理解した上で、遅れを取らないだけの自信と実績があった。サイバーウイング「カノン」がみたび唸りを上げ、地獄の業火が戦場にたなびく。

「おいでなさい」
 ヤマラージャ・アイビーが一言呟くと、妖怪を醜悪に歪めたような異形の怪物が次々に姿を現す。今の彼女の肉体と同様、食肉工場の人工タンパク質を合成して作り上げた【受肉化百鬼夜行】だ。その光景はかつて大祓骸魂が率いた、骸魂の百鬼夜行を思わせる。
「そちらが数の力を頼りにするなら、こちらも手数を増やします」
 対するレナータは「カノン」を副腕形態に変形させ【Ψ:M.エリミネーター】を起動。スラスターの噴射口を銃口にして、強烈な熱線砲を連射する。優先して狙うのは怪物化した人工タンパク質の群れ。奴らがヤマラージャ・アイビーの元に集まれば集まるほど、百鬼夜行全体の能力が強化されてしまう。

「この装備の真価、見せて差し上げます!」
 収束された地獄の熱線を浴びせられた怪物どもは『ギャーッ?!』と悲鳴を上げて炭化する。レナータはさらに工場に保管されている人工タンパク質にも照準を合わせ、受肉される前に元を削っていく。群れとしての脅威はともかく、一匹一匹ならこちらの火力で焼き払えそうだ。
「きれいな焔 でもあなたは動けないようですね」
 しかしヤマラージャ・アイビーはすぐに、レナータが手数を強化する代償に移動力を犠牲にしているのを見抜いた。
 彼女は残っている怪物たちにレナータを取り囲み、標的を散らしながら近付くように指示を出す。一度間合いを詰めてしまえば、接近戦では優位に立てると考えたか。

「確かに足は止まってしまいますが、射撃だけが能ではありませんよ」
 包囲網が狭まるギリギリのタイミングを待って、レナータは赤熱刃を起動。紫色の庇を円を描くように振り払って、周囲に来た怪物をまとめて斬り倒した。わずかに残存した敵の攻撃もサイキックオーラによる防御壁でガード。遠近両方に対応した「カノン」副腕形態の性能を侮ってもらっては困る。
「こちらに頭数を割いたということは、あなたの周りに残ったものは僅かですね」
「まあ これは迂闊でした」
 百鬼夜行という肉壁が薄くなり、無防備となったヤマラージャ・アイビーへ、彼女は間髪入れず砲撃を敢行。紫色に煌めく超高温の閃光が標的を射抜く。かりそめの肉体とはいえダメージは確かにあるようで、微笑む少女の白装束が焦げて黒ずんだ。

「わたしには小容量のプログラムのままの方が脅威に思えますけど、わざわざ肉体を手に入れたのも目的に関係あるのでしょうか」
 現実世界で実体を得るということは、これまでのような暗躍ができなくなるということ。猟兵に追い詰められて腹を括ったのか、さらなる深謀遠慮の途上に過ぎないのか――こうして戦ってみても、レナータには判断がつかなかった。
「やはりわかりませんね……得意な方に任せるとしましょう」
 自分は自分にできることをする、と割り切った考えのもとで戦う彼女の方針は間違っていない。尽きることなき地獄の炎を燃料にした「カノン」の咆哮は、百鬼夜行の受肉を堅実に阻害し、ヤマラージャ・アイビーにもダメージを少しずつ蓄積させていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
その名前はあんたのじゃない
「ニニギつまりエンドブレイカー!の邇邇藝天地我尊。彼がUDCアース生まれなら、ヒルコ様。ならあんたの正体は|なまくらの懐刀《針》で『生と死を繋げ』られる裁縫の権能を持つ、妹のアワシマ様と見たっす」

敵UCを結界術で受け流し、化術と幻影使いで残像を作ってかく乱、第六感と見切りで回避

「全ての電脳を焼くには接続できない所にもプログラムを届ける必要がある。運び人を求めたっすね?だから代替に肉体を作った。破壊させて貰うっす!」

神への敬意を払いUC『魔剣憑依・神斬りの一閃』発動
高速移動で距離を詰め、その根幹である呪詛ごと切り裂く

相手を想う事が愛なら理解は試みるっす
真偽はわからんけど



「その名前はあんたのじゃない」
 思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』とは、かの『大祓骸魂』が所有していた懐刀の名。幽世にて大祓の名を与えられるよりもさらに前、彼女の本質的な名について衣更着は考察を深めていた。彼女が骸魂の元凶にして大いなる邪神の一柱であるならば、古代の神話にヒントがあるはず。
「ニニギつまりエンドブレイカー! の邇邇藝天地我尊。彼がUDCアース生まれなら、ヒルコ様。ならあんたの正体は|なまくらの懐刀《針》で『生と死を繋げ』られる裁縫の権能を持つ、妹のアワシマ様と見たっす」
「それは素敵な名前 だけど私の名前はわからない もう忘れてしまったから 忘れられてしまったから」
 あらゆる知的生命体に忘れられた存在であり、今は自分自身の名前すら忘れてしまった『ヤマラージャ・アイビー』になにを問いかけても、解答が返ってくることはない。衣更着も別に答え合わせが欲しかったわけではないだろう。彼女が何者であれ、確かなのは倒さねばならぬ敵ということだけだ。

「私を覚えていたのは この|生と死を繋ぐもの《ヤマラージャ・アイビー》だけ」
 妖しき光を刃に反射して、数千本に複製される【生と死を繋ぐもの】。その全てはヤマラージャ・アイビーの念力によって操作され、まるで生きているように衣更着を狙う。なまくらだが時間をかければなんでも"殺す"ことができるという妖刀、迂闊に切られるのは危険すぎる。
「全部避けきってやるっす」
 衣更着は結界術で【生と死を繋ぐもの】を受け流し、化術と幻影使いの術で残像を作って敵を撹乱。バラバラに飛来する懐刀の動きを第六感で見切り、避けて避けて避けまくる。忘れられた神といえど規格外の実力だが、こちらも相応の場数は踏んできているのだ。

「全ての電脳を焼くには接続できない所にもプログラムを届ける必要がある。運び人を求めたっすね? だから代替に肉体を作った。破壊させて貰うっす!」
 人身売買会場から一連の行動目的をそのように考察したうえで、衣更着は『魔剣憑依・神斬りの一閃』を発動。魔剣『空亡・蒼』の妖力を身に纏い、全速力で距離を詰めにかかる。相手が本物の神格とあらば、悪友が鍛えた魔剣の真価が発揮される時だ。
「劒さん、その力借り受けるっす!」
 魔剣から解き放たれた妖力の波動には『神』属性特攻の作用がある。それを用いたのは彼なりに神への敬意を払った結果だろう。狙うはかりそめの肉体を構成する根幹、わずか2キロバイトの呪詛。神斬りの一閃が忘却の邪神を断つ。

「久しぶりですね こんなにも深く 誰かの想いを味わうのは」
「相手を想う事が愛なら理解は試みるっす。真偽はわからんけど」
 ぽたぽたと白い肌から紅を流しながら、ヤマラージャ・アイビーは微笑を浮かべる。その妖しげな様相から目を逸らさずに衣更着は応答。答えが正しくなかったとしても、理解するための行為、相手を「慮る」意思には意味がある――こと、この神に対してはそれが重要な価値を持つやもしれないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
この威圧感…
元より強敵であるとは思っていましたが
認識に誤りは無いようですね
止めてみせます
私一人では叶わなくとも
少しでも貴方の力を削ぎましょう

開戦と同時にヤドリギの織姫使用
接敵し植物の槍で攻撃を仕掛けます
負傷時は生命の実で回復しますが
攻撃し体力を削ぐ事を優先
白燐蟲も呼び出し
虞が放たれた際は蟲か槍で相殺を
難しければ回避を試みます
彼岸花は白燐蟲に食い破らせます
…本当は花を散らしたくなどないのですけれど

貴方が求めていたもの
それは恐怖と歓喜、ですか
妖怪は人々の恐れや喜び等を糧とするもの
あの場所にはそのどちらもあったでしょうね
それならば私も恐れる訳には行かない
この体が動く限り
植物の槍を撃ち込み続けましょう



「この威圧感……元より強敵であるとは思っていましたが、認識に誤りは無いようですね」
 現世に受肉した『ヤマラージャ・アイビー』と、直に対峙すればはっきりと分かる。その大本がたった2キロバイトのプログラムに過ぎないとしても、これは放置しておくには危険すぎる存在だ。かつて二つの世界を滅ぼす寸前までいったように、
「止めてみせます。私一人では叶わなくとも、少しでも貴方の力を削ぎましょう」
『では 見せてもらいましょう』
 毅然たる決意をもって、薙人は開戦と同時に【ヤドリギの織姫】を発動。我が身をヤドリギで編んだローブで包み、植物の槍を手に吶喊する。草木に愛されしヤドリギ使いの勇姿に、ヤマラージャ・アイビーは妖しげな微笑で応じた。

「まずは一刺し」
 鋭く尖った植物の矛先が、ヤマラージャ・アイビーの肩を抉る。人工タンパク質で出来たかりそめの肉体とはいえ、傷つけば血は流れるしダメージもある。痛覚もあるだろうに、それでもまったく表情を変えない少女の佇まいからは、名状しがたい不気味さがあった。
『まあ素敵 お返しをしなくては』
 その異質な存在感――神智を超えた|虞《おそれ》を、彼女は【虞神彼岸花】として解き放つ。薙人は咄嗟に蟲たちを呼び出して虞の相殺を図るが、完全に躱しきるには規模が桁外れだ。鉄とコンクリートの灰色に占められていた工場に、鮮烈な紅の彼岸花が咲き乱れる。

「貴方が求めていたもの。それは恐怖と歓喜、ですか」
 ローブに実った生命の実で、虞によるダメージを回復しながら、薙人はヤマラージャ・アイビーにひとつ問う。斯様に人智を超えた存在である彼女が、わざわざ人身売買会場を開催させてまで欲したもの。彼の知識だとその予想は一つしか無かった。
「妖怪は人々の恐れや喜び等を糧とするもの、あの場所にはそのどちらもあったでしょうね」
 規格外とはいえ、あれも妖怪の範疇に属するのであれば、知的生命体の感情をエネルギー源にする点は同様だろう。
 ヤマラージャ・アイビーの返答はなかったが、少なくとも的外れではない確信はあった。悲喜こもごもの感情渦巻く人身売買会場を潰されたのは、あれにとって想像以上の痛手だったのやもしれない。

「それならば私も恐れる訳には行かない」
 ここで自分が虞にひれ伏せば、結局またヤマラージャ・アイビーに糧を与えてしまうことになる。槍を支えに立ち上がった薙人は、ひゅうと蟲笛を鳴らして白燐蟲たちを飛ばし、咲き乱れる彼岸花を食い破らせる。このまま戦況を敵のペースにさせてなるものか。
(……本当は花を散らしたくなどないのですけれど)
 元樹木医であり自然を愛する者としては心が痛んだが、これらが「自然のもの」かと言われれば否だ。狂気じみた愛の具現を散らされることで、ヤマラージャ・アイビーの力は相対的に弱まる。その瞬間、彼女は少しだけ悲しそうな顔をした。

「この体が動く限り、槍を撃ち込み続けましょう」
 敵の些細な隙を見逃さず、植物の槍を繰り出す薙人。散らされた彼岸花の花弁とヤマラージャ・アイビーの血飛沫、ふたつの赤が混ざりあう。最終的に勝利の一助となれるのならば、自分は途中で倒れてもいい覚悟を決めた戦い方だ。
『強いひと 強いいのち そんなあなたたちを私は永遠にしたい』
 彼の心意気を称えながら、いまだヤマラージャ・アイビーも止まらない。死と滅びをもって全てを永遠にせんとする彼女の思想は、定命の者には理解不能であり。ただ確かなことがあるとすれば、現世に受肉した彼女は決して「永遠」などではなく、傷つけば倒せる存在ということだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星詠・黄泉
これが2つの世界を滅ぼしかけたオブリビオンか…おぞましい
私は対峙した敵に対する感想を述べながら戦闘態勢をとる
このままではジリ貧か…ならば
敵のUCに対しては心眼で敵と懐刀を見ながらオーラ防御を展開して防ぎながらUC偽りのMUC オーガ5を発動する

魂よ、鼓動しろ!
鬼の仮面をつけて鬼に変身し加速する性質の宝石を生成してその上に乗り敵に迫る

危ないな…よっ
懐刀は避けきれない場合、加速する性質の宝石をぶつけて相殺する

行くぞ、オブリビオン
指定UCを発動して啼沢斬りと黄泉返りを同時に切り裂いて攻撃
(この時、背景が遅くなっている)

よし、今度は同時に出来たぞ…
啼沢斬りと黄泉返りを同時に放つ事が出来て少し嬉しかった



「これが2つの世界を滅ぼしかけたオブリビオンか……おぞましい」
 対峙した敵に対する感想を述べながら、戦闘態勢を取る黄泉。科学の力を借りて現実世界に受肉した『ヤマラージャ・アイビー』は、ただ佇むだけでも寒気がするほどの|虞《おそれ》を纏っている。あれが世界に滅ぼすに足る力を持っていると、理性ではなく本能で理解できた。
『猟兵たちよ 止められますか』
 ヤマラージャ・アイビーは今一度猟兵の意思を問い、懐刀【生と死を繋ぐもの】を複製する。何百、いや何千もの刃はなまくらなれど、全てが彼女の念力によって意のままに動く。その様はかつての「大祓百鬼夜行」の戦いの再演だ。

「このままではジリ貧か……ならば」
 黄泉は心眼で敵と懐刀を凝視しながらオーラを展開して攻撃を防ぐが、長くは耐えられないだろうとすぐに悟った。
 |生と死を繋ぐもの《ヤマラージャ・アイビー》はなまくらだが、時間をかければ世界すら殺す妖刀。これに対抗するため彼女は【偽りのMUC オーガ5】を発動する。
「魂よ、鼓動しろ!」
 鬼の仮面を被り、宝石の羽衣を纏い、緑の角を生やす。鬼に変身した彼女は「加速」の性質を有した宝石を生成してその上に飛び乗ると、刃の豪雨を潜り抜けてヤマラージャ・アイビーに迫る。さっきまでとは桁外れのスピード、これが彼女の本気というわけか。

「危ないな……よっ」
 避けきれない懐刀に対しては、加速する宝石を弾丸のようにぶつけて相殺する。物体に不朽と再生力を付与する鬼の力があれば、生と死を繋ぐものにも物量負けはしない。ぶつかり合う刃と宝石の破片が、光の雨のようにキラキラと輝いた。
「行くぞ、オブリビオン」
『ようこそ 強き御方』
 その輝きの中を駆け抜けて、敵と肉迫した黄泉は【残夢繚乱】を発動。背景がスローモーションに視えるほどの早業で、概念消滅の「啼沢斬り」と復活無効の「黄泉返り」を同時に放つ。雷光すら置き去りにする超神速の斬撃は、流石のヤマラージャ・アイビーでも回避できない。

「雷雨、降りて溢るる……黄泉の川」
『ああ 素晴らしい剣技です』
 少女の声色は相変わらず穏やかなままだったが、直後に胸元から二筋の刀傷が走り、血飛沫がぱっと華を咲かせる。
 一体いつ切り裂かれたのか、本人を含めて誰も視認できなかった。星の海からやって来た剣豪の達人技に、ヤマラージャ・アイビーも心からの賞賛を送る。
「よし、今度は同時に出来たぞ……」
 黄泉自身、今の一撃には手応えを感じたようで、啼沢斬りと黄泉返りをしっかり同時に放てたのが少し嬉しい様子。
 このままカンを取り戻していけば、その剣技はますます冴え渡る。皮肉にも規格外の強敵との戦いが、彼女を前世の全盛期に近付けさせたのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…なるほど…肉体を得る事が目的…いや…2kbの状態の方が隠れる為には都合が良かったはず…
…準備のために必要…なのかなそれにしてもあの市場で求めていたものがあった…ね
…倫理を無視した人のむき出しの欲望…とかその手の奴だろうか…ちょっとその辺をつついてみるか……?

…ひとまず…神智を越えた虞に対して…【尽きる事なき暴食の大火】を発動…存在を喰らう白色の炎で迎撃…
…外れた所に発生したヒガンバナを含めて白炎の燃料としてしまおう…
存分に大きくなったら白炎を操作…敵を囲むような軌道でぶつけて燃やすとしようか…
…電脳を焼き尽くす前に…お前を焼いてしまうとしよう…



「……なるほど……肉体を得る事が目的……いや……2kbの状態の方が隠れる為には都合が良かったはず……準備のために必要……なのかな」
 プログラムから実体を得て、現実世界に受肉した『ヤマラージャ・アイビー』。これまでサイバースペースに潜伏してきた輩にしては随分と急で大胆な行動に、メンカルは疑問を抱いた。猟兵を迎え撃つためだけではなく、これも計画の一部なのやもしれない。
「……それにしてもあの市場で求めていたものがあった……ね……」
『考え事は 十分ですか?』
 気になることは他にもあったが、敵もあまり悠長に待ってはくれない。超然とした笑みをたたえながら、ヤマラージャ・アイビーは【虞神彼岸花】を発動。その身からあふれ出す|虞《おそれ》が工場に広がり、真っ赤な彼岸花が狂い咲いていく。

「……ひとまず……貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
 考察を中断して、メンカルは【尽きる事なき暴食の大火】を発動。神智を越えた虞に対して、白色の炎で迎撃する。
 これは如何なる存在も燃料にする術式の炎。虞という不可解な概念やエネルギーだろうと、全て喰らって燃え盛る。
『あら大変 火事ですね』
 白炎はメンカルを襲った虞を食らうのみならず、周辺に発生した彼岸花も含めて燃料としてしまう。ヤマラージャ・アイビーは相変わらず悠然としているが、彼女の力は自らの狂愛に満たされた地でこそ最大に高まるはず。その花畑を灼かれたのは痛手のはずだ。

(……倫理を無視した人のむき出しの欲望……とかその手の奴だろうか……ちょっとその辺をつついてみるか……?)
 白炎のコントロールに集中する傍ら、メンカルは考察を再開する。汚染した人間に人身売買会場を開催させたのは、妖怪が知的生命体の感情を糧にすることとも無関係ではないかもしれない。ものは試しという気持ちで、彼女は言葉をひとつ放つ。
「……確かにこんな工場だと……人の欲望を集めるのは難しそう……かな」
『………』
 ヤマラージャ・アイビーの表情に変化はないが、意外に饒舌な彼女にしては珍しく、返ってきた答えは沈黙だった。
 動揺、と呼べるかも分からないほどの、小さな小さな隙。それを察知したメンカルは、すかさず白炎を差し向ける。

「……電脳を焼き尽くす前に……お前を焼いてしまうとしよう……」
 沢山の虞と花を食らって、暴食の大火はもう存分に大きくなった。ぐるりと渦を巻くような軌道を描く白炎は、敵を囲んで逃がすまいとする。水をかけようが障害物を挟もうが、無意味であることは証明済み。ヤマラージャ・アイビーが回避を取ろうとした時には、すでに逃げ場はなく。
『ああ 燃えてしまう 消えてしまう 塵のような 私が』
 人工タンパク質で構成されたかりそめの肉体を、貪欲に焼き焦がす白炎。その中枢にあたる2キロバイトの電子情報にまで、火の手は及ばんとする。サイバーザナドゥとヤマラージャ・アイビー、焼き尽くされるのはどちらが先か――決着の時は遠くないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
2kbでは容姿データは入るわけがない
プログラムの正体は貴女を顕現させるまじない・欠片だけでも憑かれりゃ精神崩壊―でどうでしょ?

何が欲しかったのか…可愛い女の子?
それとも彼女達の|絶望《虞》かな

何れにしても祓うのみ
破魔と火属性攻撃を組み合わせ、清い狐火をぶっ放す
食肉原材だし微妙な匂いに後悔するぜ…

虞が物理的に見えりゃ神鳴で切り払う
概念攻撃なら落ち着いてヤマラージャを見て分析するよ
知らないから怖いのだ
生と死を繋ぐもの―死線なら散々見て来た。勇気をもって虞を祓い、真威解放で彼岸花に稲荷神社の神聖領域を被せてやる

神鳴に破魔符を貼って武器改造し懐刀諸共に斬る
「繋ぐもの」がなくなりゃ成仏するんじゃねえかな



「2kbでは容姿データは入るわけがない。プログラムの正体は貴女を顕現させるまじない・欠片だけでも憑かれりゃ精神崩壊――でどうでしょ?」
 サイバースペースに蔓延した思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』。その受肉体である少女を見つめて、燦は自身の推測を口にする。相手はただ超然と微笑むのみで何も答えなかったが、否定もされないなら的外れということはないだろう。たった2キロバイトの中に、ずいぶんと恐ろしいまじないが仕込まれたものだ。
「何が欲しかったのか……可愛い女の子? それとも彼女達の|絶望《虞》かな」
『ふふ 私についてお詳しいのですね』
 そんな神智を越えた存在――誰からも忘れ去られた大妖怪が求めるものといえば、有力となる候補はやはりそれか。
 妖怪が知的生命体の感情を糧にして生きるのは周知の事実。あの人身売買会場には、ある種の妖怪が喜びそうな感情が渦巻いていた。ヤマラージャ・アイビーにとってもあそこは重要なエネルギー供給拠点だったのかもしれない。

「何れにしても祓うのみ」
『できますか あなたに』
 挑発的に問いかけるヤマラージャ・アイビーに、燦がぶっ放したのは清い狐火。破魔と火術を組み合わせた一撃が、人工タンパク質で構成された少女の体を焦がす。元が食肉原料ゆえか、じゅうと音を立てて立ち込める微妙な匂いに、すこしだけ後悔する。
『私も応えましょう』
 焼き尽くされる前に火の粉を振り払って、ヤマラージャ・アイビーは【虞神彼岸花】を発動。解き放たれた|虞《おそれ》は、常人なら恐怖で狂死しかねないほどのもの。世界を滅ぼすほどの狂気じみた愛が、真っ赤な彼岸花になって戦場に咲き乱れる。

(知らないから怖いのだ。生と死を繋ぐもの―――死線なら散々見て来た)
 虞自体は物理的に視えるものではないが、攻撃の余波で発生する彼岸花から間接的に範囲を推測することは可能だ。
 燦は落ち着いてヤマラージャ・アイビーを見て行動を分析し、勇気をもって虞を祓う。生と死の境を幾度となく越えてきた者だけが到達できる「怖れ知らず」の心意気、神サマ相手だって怯みはしない。
「符術の極意とくと見よ! 御狐・燦が願い奉る。ここに稲荷神の園を顕現させ給え!」
 発動するのは【真威解放・四王稲荷符【陽】】。降り注ぐ無数の破魔符の雨が、食肉工場を稲荷神社の神聖領域へと変化させる。彼岸花の花畑も上書きされ、その上に立っていたヤマラージャ・アイビーの能力は元に戻るばかりか、聖なる気にあてられて弱体化した。

『優れた妖術師かと思えば あなたも旧き神の巫女でしたか』
 不浄を祓い清める稲荷神の神威が、いにしえの大邪神を苛む。この隙に燦は神刀「神鳴」にも破魔符を貼りつけ、浄化の気を帯びるように改造する。狙いはヤマラージャ・アイビー本体と、彼女が所持する懐刀「|生と死を繋ぐもの《ヤマラージャ・アイビー》」だ。
「諸共に斬らせてもらうぜ」
『まあ大変 これは……』
 「繋ぐもの」がなくなりゃ成仏するんじゃねえかな、という予測のもと間合いを詰める燦の動きは、神聖領域の加護でキレを増し。逆に反撃の体勢整わぬヤマラージャ・アイビーを、紫電一閃に斬り伏せる。その手に携えていた懐刀にピシリとヒビが入り、少女の胸元からはぱっと血の華が咲き乱れた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
受肉とは聖三位一体の一柱、父と聖霊と共に拝まれるものの聖誕を意味する
人の作った紛い物の肉を依代に、過去の化身が蘇ることに使うなど、言語道断
その肉も血も魂も、跡形も残さず消し飛ばしてくれる

あの人身売買会場で得たヒント、それは
>人としての善性や倫理観はカケラも感じられない
ということ
これが貴様の欲していたものだ、刮目して見るがいい
理性と善性を削ぎ落した成れの果て、その極致を

聖槍に破壊の魔力を漲らせる(武器に魔法を纏う・全力魔法・限界突破)
荒れ狂う余波だけで怪物化した人工タンパク質を【吹き飛ばす】
【終焉を呼ぶ聖槍】!

全霊の力で【投擲】した聖槍が極限の大爆発を引き起こし、辺り一面を【蹂躙】する



「受肉とは聖三位一体の一柱、父と聖霊と共に拝まれるものの聖誕を意味する。人の作った紛い物の肉を依代に、過去の化身が蘇ることに使うなど、言語道断」
 神聖なる御業を模倣し、サイバースペースから現世に降臨した『ヤマラージャ・アイビー』に、オリヴィアは聖職者として激しい怒りを向ける。食肉工場で合成された人工タンパク質を素材にした肉体は、容姿こそ可憐に整えられていても本質は醜悪で、見ているだけでも虫酸が走る。
「その肉も血も魂も、跡形も残さず消し飛ばしてくれる」
『あなたに それができるのなら』
 証明してみせてください――と言って、ヤマラージャ・アイビーは工場に残された人工タンパク質を用い、怪物の群れを創造する。神と生命を冒涜するが如き【受肉化百鬼夜行】を、よりにもよって怒れるオリヴィアの前で使うとは。虞を司る神でありながら、よほどの恐れ知らずと見える。

「あの人身売買会場で得たヒント、それは『人としての善性や倫理観はカケラも感じられない』ということ」
 心は烈火の如く燃え盛っていても、オリヴィアの思考は冷静だった。ヤマラージャ・アイビーに汚染された者を直に見て、さらにヤマラージャ・アイビーが何かを求めていたと聞いて、彼女が到達した結論。ヒトから理性を剥ぎ取り、悪意や欲望を剥き出しにすることで、得られるものがあるとしたら。
「これが貴様の欲していたものだ、刮目して見るがいい」
 オリヴィアの掲げた聖槍に、魔力が漲っていく。それは神聖さとはまるで遠い印象を受ける、荒々しい破壊の魔力。
 一体何をするつもりなのか、ヤマラージャ・アイビーの百鬼夜行にそれを見届ける気はなく、誘蛾灯に群れる虫の如く殺到するが――。

「理性と善性を削ぎ落した成れの果て、その極致を」
 聖槍の周囲で荒れ狂う魔力の余波だけで、人工タンパク質製の怪物どもは吹き飛ばされ、近付くことすらできない。
 普段は聖遺物として扱われているが、この槍の出自は誰も知らない。オリヴィアが知っているのは、これが本来恐るべき破壊力を秘めた特級の危険物だということだ。
「吼えろ、聖槍。万象を粉砕する嘆きの一撃を今ここに――!」
 使い手の理性と善性という大きな代償を支払うことで、その危険すぎる側面を露わにする聖槍。枷から解き放たれた力はあまりにも純粋な「破壊」に特化されており。これから放たれる一撃が、どんなに致命的な威力を誇るか、容易に想像がついてしまう。

『ああ 素敵』
 理性と善性をかなぐり捨てた純然たる破壊力を前に、ヤマラージャ・アイビーは魅せられた。他の怪物どもが狼狽する中、彼女だけは陶然と目を奪われていて――時間にすれば、ほんの数秒だったかもしれない。だが、それはオリヴィアの一撃を躱す最後の猶予を奪い去った。
「【終焉を呼ぶ聖槍】!」
 全霊の力で投じた聖槍がヤマラージャ・アイビーに突き刺さり、極限の大爆発を引き起こし、辺り一面を蹂躙する。
 一投で三つの国を滅ぼしたという伝説の再現。【受肉化百鬼夜行】は一瞬にして蒸発し、それを率いた主も無事では済まない。破壊の魔力に呑まれていく少女はかりそめの肉体を滅されながら、恍惚とした笑みを浮かべていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西恩寺・久恩
常に第六感と気配感知と瞬間思考力を発動

フラウディ、カモカモ…行きますよ
『頑張りましょう!カモカモ!』『カモ〜!』
式神達に呼びかける

『主さんを守りますよ!』『カモカモ』
敵のUCは心眼で見つつ懐刀を推力移動で回避する
避けきれない物はフラウディとカモカモが展開した結界術で防いで貰う


そろそろ反撃させて貰いましょうか…
私は指定UCの効果でUC無限絢爛天理陰陽術式『無限昇華』を発動

動体視力で敵の懐刀を回避しながら敵に接近する避けきれない懐刀をお祓い棒でシャドウパリィする

無限天理陰陽術式…疾風迅雷!
UCを発動し九字を切りながら敵を殴り飛ばしたり蹴り飛ばした後…

大祓骸魂滅殺…急々如律令!
バックドロップを決めた



「フラウディ、カモカモ……行きますよ」
『頑張りましょう! カモカモ!』『カモ〜!』
 サイバースペースから現実世界に受肉し、ついに猟兵の前に姿を現した『ヤマラージャ・アイビー』。いざ決戦の舞台に上がるにあたって、久恩は式神たちに呼びかける。少女型の「フラウディ」も鴨型の「カモカモ」も準備は万端のようで、気合の入った返事がきた。
『あなたも妖怪のようですが 私が知っているのとは少し違いますね』
 カクリヨファンタズムに隠棲する者たちとは違う、異界の妖怪の気配を感じ取り、ヤマラージャ・アイビーは興味を抱いたようだ。どれほどのものか試すように、複製した【生と死を繋ぐもの】を放ってくる。なまくらとはいえ数千をゆうに超える刃の雨、対処し損なえばたちまちバラバラだ。

『主さんを守りますよ!』『カモカモ』
「助かります」
 久恩は懐刀の軌道を心眼で見極め、霊力による推力移動で回避する。避けきれない物はフラウディとカモカモに結界を展開して防いでもらう。陰陽師と式神の連携プレーはアヤカシエンパイアでは基本戦術だ。三位一体の巧みな守備で敵のユーベルコードを凌ぎきる。
「そろそろ反撃させて貰いましょうか……」
 刃の雨が止んできたところで、発動するのは【無限絢爛天理陰陽術式『無限昇華』】。久恩の髪の毛と尻尾が伸び、紅いオーラを纏った狐神の姿に変身を遂げる。外見の変化だけではなく、霊力や身体能力も大幅に強化されており――とんと軽く地面を蹴っただけで、その身は神速の領域に加速する。

『それが あなたの本当の力ですか』
 ヤマラージャ・アイビーはさらに【生と死を繋ぐもの】を複製し、今度はより苛烈な攻撃を仕掛けてくる。一本一本が念力でばらばらに動く懐刀は、軌道を読むだけで一苦労。しかし、身体能力ともども強化された久恩の動体視力は、それすら見切ってみせる。
「見せましょう、本気を!」
 異次元の運動性で懐刀を避けながら、避けきれないものは鉄製のお祓い棒で弾き返す。日々の筋トレで鍛えた妖怪のフィジカルを下地にした術理、それが彼女の無限天理陰陽術式である。これまでにも数々の妖どもをぶっ飛ばしてきた御業が今、いにしえの大妖怪に炸裂する。

「無限天理陰陽術式……疾風迅雷!」
 肉弾戦の距離まで接近した久恩は、九字を切りながらヤマラージャ・アイビーの周囲を飛び回り「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と言いながら殴り飛ばし、蹴り飛ばす。そして最後は腰のあたりを掴んでプロレスでいうバックドロップの体勢に。
「大祓骸魂滅殺……急々如律令!」
『こんな の はじめて です』
 一喝とともに固い工場のコンクリートへ脳天から叩き落されるヤマラージャ・アイビー。狐神の霊力を込めた打撃は概念まで衝撃を伝え、人工タンパク質でできたかりそめの肉体のみならず、根幹の電子プログラムにもダメージを与える。未知なる妖怪と陰陽の技への困惑もあって、彼女はすぐに立ち上がることすらできなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノキ・エスプレッソ
ねえ、おまえはまだやり残したことがあるんでしょ?

これはボクの推測だけど…おまえはこの世界の人たちを知ろうとして、彼らの本性がさらけ出す人身売買会場を開いた。
だって、UDCアースのように骸の海で永遠にしたいと思えるような動機がなければ、この世界を殺す必要ないでしょ?
さっきのオブリビオンが情報戦に特化していたのも、その思いからじゃない?

どちらにせよ、ボクは望まないよ。過去だけになったら、見逃した物も見逃せなくなるからね。
だから…ボクは未来を守って、おまえの愛する世界を永遠にする。
おまえの思いを色として未来に伝えて、永遠にするよ!

髪色は虹色に染まり、手足から鮮やかな骸の海があふれ出す真の姿となりUC発動。
これがボクの愛する色…さあ、こんどはおまえの番だ!
おまえの愛する世界を見せてッ!

鮮やかな骸の海をバイクで疾走。刀で傷つけられてもUCで修復しつつ突撃し敵をはね飛ばす!
そして飛び上がりつつロッドで追撃、鮮やかな骸の海へと沈めるよ!

刃の輝きの色からその思いを読み取る。
…素敵な色だよ、ヤマラージャ。



「ねえ、おまえはまだやり残したことがあるんでしょ?」
 現世に受肉した『ヤマラージャ・アイビー』、あるいは名もなき古の大妖怪に、ノキはそっと呼びかける。汚染した人間たちを操ってまで、あのオブリビオンにはやりたいことが、求めているものがあった。結果的に猟兵に尻尾を掴まれるリスクを犯してまで欲した、それは一体なにか。
「これはボクの推測だけど……おまえはこの世界の人たちを知ろうとして、彼らの本性がさらけ出す人身売買会場を開いた」
 考えられる仮説は他にもいくつかあったが、これがノキの結論だった。モラルや倫理観の皮を脱ぎ捨てて、剥き出しの感情や欲望が渦巻くあの場所で、この世界の人間たちを、ひいてはサイバーザナドゥという世界を理解する――それこそがヤマラージャ・アイビーの目的だったのではないか。と。

「だって、UDCアースのように骸の海で永遠にしたいと思えるような動機がなければ、この世界を殺す必要ないでしょ?」
 かつて『大祓骸魂』がUDCアースを滅ぼそうとしたのは殺意や悪意ではなく、愛ゆえのこと。狂気じみた愛を行動原理とする性質がプログラムになった今でも変わっていないのなら、"識る"というプロセスは彼女にとって不可欠となる。「さっきのオブリビオンが情報戦に特化していたのも、その思いからじゃない?」
『ふふ あなたも私のことを 知ろうとしてくれたのですね』
 ノキの指摘を受けたヤマラージャ・アイビーは、懐刀を握ったままニコリと微笑んだ。常に超然としていた表情が、今は少しだけ嬉しそうに見える。名前すら忘れられるほど古く、神智を超越した存在である彼女にとって、誰かに理解されることは"喜び"なのかもしれない。

「どちらにせよ、ボクは望まないよ。過去だけになったら、見逃した物も見逃せなくなるからね」
 当たらずとも遠からずな態度を取られ、ノキにそれ以上の答え合わせは必要なかった。まだ見たこともない色を見たい、それが彼女の行動原理だ。この色褪せたサイバーザナドゥにも、どこかに知らない色が残っているかもしれない。人はそれを「希望」や「可能性」あるいは「未来」と呼ぶだろう。
「だから……ボクは未来を守って、おまえの愛する世界を永遠にする。おまえの思いを色として未来に伝えて、永遠にするよ!」
『では 私は「|生と死を繋ぐもの《ヤマラージャ・アイビー》」で あなたたちも過去にして 永遠にしましょう』
 未来か過去か。両者の思い描く「永遠」のカタチが相反するものである以上、この衝突は不可避にして必然である。
 ヤマラージャ・アイビーが複製した【生と死を繋ぐもの】が天を埋め尽くす。同時にノキの髪の毛は虹色に染まり、手足からは鮮やかな「骸の海」が溢れ出した。

「……狂気と呼ばれてもいいよ。それほどまでにボクを動かす、色なのだからッ!!!」
 真の姿となったノキが発動する【きっと赦されざる罪、だけど描き続けたい未来】。それは人体に有害な骸の海で色を描くという、正気の沙汰とは思えぬ行為だった。あふれた色の洪水はたちまち戦場全体を塗り潰し、辺り一面骸の海と化す。
『まあ なんと美しいのでしょう』
 それはヤマラージャ・アイビーを感嘆させるほど美しく、同時に危険な色だった。現世に出現した骸の海は接触したものを溶解させ、骸の海の一部に戻してしまう。たとえオブリビオンでも――いや、骸の海を根源とする存在ならば、なおさら逃れることはできない。

「これがボクの愛する色……さあ、こんどはおまえの番だ! おまえの愛する世界を見せてッ!」
 鮮やかな骸の海をバイクで疾走しながら、ヤマラージャ・アイビーに呼びかけるノキ。これで簡単に終わる相手だなんて思っていない、骸の海へと還元されるまでに彼女が見せる世界の"色"を、この目に焼き付けようと視線を向ける。
『かつて私は素敵な名前をさずかったけれど それはもう忘れてしまった 忘れられてしまった だから私は 私に残されたすべてで 愛しいあなたたちを永遠にしましょう』
 祝詞を唱えるような抑揚で紡がれるヤマラージャ・アイビーの言葉。それに呼応して上空より数千の刃が降り注ぐ。
 時間をかければ世界すら殺すという稀代の妖刀「生と死を繋ぐもの」。複製されたなまくらですら威力は侮り難く、ひと刺しごとにノキの身体には衝撃が走った。

「見えたよ……おまえの色が!」
 それでもノキの突撃は止まらない。骸の海を変換した塗料を身体に塗って、損傷箇所を塗り替えるように修復する。
 鮮やかな色に染まりながら刀の雨を走り抜け、ヤマラージャ・アイビーの元に迫り――そのままの勢いで体当たりを仕掛ける。
『あっ』
「さよなら」
 跳ね飛ばされた少女の躰が宙に浮く。間髪入れずにノキは車体から飛び上がると「フラットブラシロッド」で追撃。
 鮮やかな骸の海へと叩き落とされたヤマラージャ・アイビーは、色と溶けあい混ざりながら、海の底に沈んでいく。

『とどかな かった まにあわ なかった ざんね ん だけど』
『諢帙@縺ヲ縺セ縺』

 人工タンパク質の肉体は溶け、言葉はただのノイズとなり、たった2キロバイトの電子の塵は、ゼロに還る。
 しかしノキは、最期に遺された「生と死を繋ぐもの」の刃の輝きの色から、その思いを読み取った。
「……素敵な色だよ、ヤマラージャ」
 夕焼けや彼岸花を連想させる、美しさに郷愁と哀悼をたたえた赤。それもまた、ゆっくりと骸の海に溶けていく。
 戦いの終わりを告げる静寂が、猟兵たちの勝利を祝福していた。



 かくして思考破壊プログラム『ヤマラージャ・アイビー』による、|全人類電脳焼却《カタストロフ》の危機は阻止された。
 電子の海に紛れた2キロバイトの災厄は、猟兵の尽力により駆除され、この世界はいまだ混迷の中にありながらも、ひとまずの命脈を保ったのである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月04日


挿絵イラスト