日常とは日々を繰り返す事だ。
人の生きる一日が千差万別である様に、日常もまた人それぞれに存在している。
そのホテルで一日を過ごす人々の日常と言えば、誰もが羨む。という類のものだろう。天を突く摩天楼。屋上のナイトプールは静謐さと妖しさを混じらせて非日常へ誘う。
和と洋、中華もエスニックも取りそろえたレストランはホテルのあちこちで人々の舌と腹を満足させている。
無論、部屋で泊まるとなればその広さ、快適さは生半可なものではなく、ベルの一つでホテルマンが飛んで来て、私はあなたの奴隷ですとばかりに願いを何時だって叶えてくれる。
そのすべては、高いホテル代を代価に与えられているものであるが、このホテルで日常を過ごすと言う人間は、そんな値段をポケットティッシュ程度の価値としか考えない層ばかり。
誰もかれもが鼻をかむ程度の気分で、このホテルでの一夜を過ごす。そんな場所が『邯鄲夢』と呼ばれるホテルであった。
●●●
「なーんか妙なんですよね。何が妙って、それが分からないのが妙って言うか」
通り過ぎ様としているかもしれないあなた達に、グリモア猟兵の少年、ラック・カルスが話し掛けて来る。
なんだなんだと足を止め、振り返ってしまった猟兵がいるのなら運の尽きだ。
目当てを見つけたとばかりにラックはあなた達に近づいてくる。
「気になりますか? 気になりますよね? いやー! 僕も気になってたところなんですよ!」
別に気にはならない。むしろ明日の朝食が目玉焼きかサニーサイドアップかが気になる。そんな猟兵もいるだろうが、そんなあなた達を妨害する様にラックは話を続けて行く。
「とあるホテルがあります。『邯鄲夢』とか、何かそんな難しい字で書くホテルが。客層はお金持ちっていうかセレブっていうか、こう、鼻持ちならない人達が泊まる、そんな場所です」
金持ちというだけで鼻持ちならないと表現し始めるのは、まず心が貧しいのではないか。そんな事を言ってくる猟兵がいるかもしれないが、ラックはそんな自分を傷つける言葉を無視する技能に長けている。
「そのホテル。妙なんですよ。すっごい妙な……こう……わかります?」
わからない。そう返して身も翻す猟兵達に対して、ラックは慌てて呼び止める。
「ま、待ってください待って! 多分、そのホテルに行って、一夜でも過ごしてくれれば、共感できると思うんですよ! どこかおかしいところがあるって……後、何か嫌な予感がするとも……」
自信なさげなラックであるが、表情を見れば、嫌な予感がするという言葉は事実である事が分かるだろう。
「何かが起こりそうな中で、くつろぐっていうのは難しいかもしれませんが、高級ホテルで一夜を過ごせる仕事。何だか良さそうだと思いません? 思いますよね? しかもしかも、何がしかの問題があって解決できれば、英雄みたいな気分にもなれる。お得だと思うんです、僕!」
お得と言うのなら、ホテル代はそちらで出してくれるのか? 猟兵の誰かがラックに尋ねたかもしれない。
「あ、いや……えっと……く、クーポン券なら……ある、かも?」
つまり、わざわざこちらが金を出してまで高級ホテルで何かを警戒しなければならないのか。そんな事を尋ねてくる猟兵に対して、ラックは全力で頷いた。
「み、みなさんの……世界を思う心に期待したいところです! ほ、ほら。僕だってお金に余裕あるわけじゃあないし。あ、けどけど、幸運を祈るくらいなら出来ますから、祈っておきますね!」
さて、こんなラックからの依頼であるが、当たり前だが受けるかどうかは各猟兵の自由である。
ホテルでどんな事が起こるか。気になる猟兵は、向かってみるのも良いだろう。
ゴルゴノプス
こんにちゴルゴノプスです!
今回はUDCアースでの調査的なシナリオです。
とある高級ホテル『邯鄲夢』。そこで起こるかもしれない事件を、みなさんには解決していただきたいと考えております。
最初は日常ですが、もしかしたら徐々に、妙な状況になって行くかもしれませんね。
いろんなプレイングを送っていただければなと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
第1章 日常
『高級ホテルで優雅な一夜』
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POW : プールやフィットネスで汗を流したり、レストランで料理を満喫する
SPD : ホテル内を探検したり、上質な空間で作業に没頭する
WIZ : ホテル内のバーや客室、ロビーなどで静かな時間を過ごす
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
虚偽・うつろぎ
SPD
ホテル内を探検するよ
地下があれば地下から最上階に屋上まで侵入できる全ての階を見て回るよ
従業員になるべく見つかることなく進んでいくスネークごっこさ
見つかったからといって特に何かするわけでもなく探検は続行するんだけどね
エレベーターだけでなく階段でも登り降りするね
入れない階とか見つけれるかもしれないし
調査ではなくてもどうなっているのか知りたくなるからね
なので特に何かあるあけでもなくても探検してまいりやす
「さぁうつろぎ探検隊の結成である。点呼!1!」(1人点呼
「よろしい、ちゃんと全員いるね。ではこれより出発するのである」
「我らの目的は全階層制覇である。何故登るのか、そこにホテルがあるからさ」
西園寺・メア
ふぅん…?妙な高級ホテルねぇ…
グリモア猟兵の勘というのはあながち間違ってないから、乗ってみるのも一興かしら
せっかくの機会だし骨休めの兼ねてスウィートルームを…あら、出せないことはないけど結構な金額ね(お嬢様権限で1部屋取る)
(WIZ)
クラシック音楽をかけて、信じらないぐらい柔らかくて上質なソファーに座りながら持ち込んだ小説を読んで、余韻に浸って、小腹が空いたからルームサービスを取って舌鼓をうって、これなら夕飯も朝食も期待できるわ、と洋食か和食か悩んでるうちにうたた寝をして……あら、気が付いたらもう夜なのね
すっかり暗くなった部屋で仕方なく手探りで電気をつけようとして…
『一夜が始まる』
うぞうぞとホテル内を徘徊する存在がいる。
人々がその優雅さを競い合う様なこのホテル『邯鄲夢』において、人々に悲鳴を上げさせかねないその存在は、ひっそりと、しかし着実に、このホテルを侵食する様に徘徊し続けていた。
その動きは二本の足で歩くのではなく、身体全体を這う様に。その姿には足が無い。だが、腕はあった。二本では足らぬ幾本もの腕が、どこまでも黒々とした水たまりの中から這い出て、その水たまりそのものを動かしている。
息遣いが聞こえる。他に人間はいない。その黒い水たまりから、幾本もの手の輪郭から、息が聞こえるのだ。その水たまりは確かに生きていた。人ならざるその姿で、それでも黒き命を這いずっているのだ。
そうしてその黒き水たまりは遂に声を発する。
「さぁうつろぎ探検隊の結成である。点呼! 1!」
「2」
「うわぁ! もう、びっくりしたなぁ!」
驚くその黒い水たまりことブラックタールの虚偽・うつろぎは、自分一人ての寂しい点呼を始めたところ、続けざまに2と答えられた事に驚いていた。
そんなうつろぎは、後ろ(液体状のブラックタールに背後があるかは分からないが)に少女が一人立っている事に気が付いた。
「点呼に参加したの、君?」
「ええ、どこか寂しそうでしたから」
うつろぎはそんな少女をじろじろと見て(液体状のブラックタールに目があるかは分からないが)から、はーんと納得した様な声(液体状のブラックタールに発声器官があるかは分からないが)を発した。
「ユーももしかして猟兵さんであるか?」
「あなたの姿を見つめながら、特に驚かない人種って、それくらいしかいないと思いますわよ?」
妙な姿の同僚を見つめながら、少女、西園寺メアは返事をした。明かりの元では眩しいその金の髪を、今はホテルの中に潜もうとしているうつろぎの近くにいる事で、やや薄暗くさせながら、それでも高貴さを思わせる笑みを浮かべながら口を開く。
「ところで、いったいあなたは何をしようとしているのかしら? 腹筋? スクワット? ハンドスタンドプッシュアップ?」
「主に筋トレ方面で何がしかし始めようとはしていないであるな。我、そんな筋肉に執着する様に見えるであるか?」
「筋肉はむしろ無さそうですわねぇ」
しみじみと、うつろぎのその水たまりの如き姿を見つめながら西園寺は呟いた。
「無論、筋トレは別の日にする予定故、今は調査をする時と我、考えてる」
「調査? まあ、調査と言いましたの? それはそれは! 丁度良いところですわね。わたくしも、このホテルがどんなところが、じっくりばっちり調査するところでしたのよ!」
「ふぅむ。お互い猟兵であるし、そりゃあそのはずであるが……ついて来れるかね? 我がうつろぎ探険隊は向かうは修羅の道。この謎多き……っていうか今のところ、怪しいところがじっくりばっちり見当たらないホテルの全階制覇を目指しているところだがね!」
「ふっ、その程度の困難。わたくしが越えられないとお思いかしら? うつろぎ探険隊とやらもたかが知れた調査力と言わざるを得ませんわよ!」
「いや、ユーのこと、あんまり知らないし……」
だが、一人で調べるよりも二人で調べた方が事がスムーズに進むだろうとの判断も出来た。うつろぎは西園寺と共にうつろぎ探険隊を結成するという判断が出来たのである。
「では再度、うつろぎ探険隊! 1!」
「はい、2」
「よし、全員いるね。3とか誰か言い始めたりはしないね?」
「あら、言わせる事は出来ますわよ?」
「……誰に?」
「幻夢騎士団長シェイプとか」
「そう……」
あまり深入りするべきではない。少女は見た目通り少女なのだ。きっと多感な時期なのだ。
「よーし、では行くぞ! らの目的は全階層制覇である。何故登るのか、そこにホテルがあるからさ」
「おー」
そんなうつろぎの宣言の元、二人(液体状のブラックタールを人と数えるかは分からないが)はホテルを探り始めた。
高層のホテルだけあって、そのすべてを探索するともなれば、あまりにも体力を消耗する。
ホテルだけあり、多くの階は宿泊室で占められていて、その部屋すべてを調べるというのは難しかった。
階の内、幾つかは食堂の様にもなっており、ビュッフェ形式で料理が並べられたホールもあれば、バーの様な飲み屋や、明らかに値段が時価に見える寿司屋などもテナントとして入っている。
一階は勿論、受付カウンターがあるのだが、ひたすらに広く、来客を列で待たすという事は無さそうな様子。
ホテル全体で目を惹くのは、やはり屋上のプールであろう。夜空の下、薄っすらと水面を照らすライトが、非日常を感じさせてくるそこに、何人かの水着姿の男女が見える。
こういう場所でも混雑しないのが金持ちという事か。うつろぎと西園寺は二人して、そんな優雅と言えるかもしれない景色を眺めてから、やはり一通りを調べて、その場を去った。そうして―――
「ひー。疲れた。何が疲れたって、何も怪しいところが見つからなかったのが疲れたー。あ、けどけど、あのプールは怪しかったね? むしろ淫靡だったね? 絶対こう、お金持ちが不道徳なことをしているだろうね? きっとチューペットを折らずに二人で二本食べてる」
だらだらとした雰囲気を身体全体で表現しているうつろぎ。
ホテル全階の調査を一応は完了させたうつろぎと西園寺であったが、これと言ったものは見つからず、疲労だけが蓄積していた。
猟兵だろうとも身体を使えば疲れもする。故に今はホテルの一室にて、二人して休息を取っているところであった。
「わたくしも、色々と調べてみましたけれど、まあ並と言ったところでしたわね。壁はしっかりと清掃されてますし、デザインも目に五月蠅くありませんが、まだ、真の一流と呼べるレベルには達していない。まだ改善の余地があると判断しましたわ。食事は和洋取り揃えているみたいでしたけれど、どれほどのものか。試してみたいところですわね」
「ごめんね。ユーがまさかホテルの怪しげなところを探してるのではなく、ホテルとしての質を評価してると今知って、驚愕している我でごめんね」
うつろぎは西園寺に謝りつつ、次には自分がいる部屋を見渡していた。
「しかし休むと言っても、この高級ホテルの中ですらかなり上等な部屋で休む我ら。不法侵入であるが、本当にここで良かったのか……」
人が十人くらいいてもくつろげるのでは無いかという部屋に、それでもベッドは二つ。どうにもこの広さで二人部屋らしい。ちなみにベッドのある部屋以外にも、かなり広めの部屋がもう一つある。デカいソファーにデカいテレビ。デカい窓から見えるデカい夜景。
きっとここには巨人か何かが泊まるのだろうとうつろぎは判断し始めていた。
「あら、不法侵入だなどと。わたくしが正式に取った部屋ですけれど」
「あ、そうなの? へー、まさか、そんな……こんな、こんな生活レベルの違いが存在するなんて……世の中はどうしてこうも……」
黒い身体をさらに黒く染めそうになるが、染まるのは心ばかりなので、うつろぎは諦める。そうして、さっそくソファーに身体を埋めてくつろぎ始める西園寺を見て、やはり心の中で何かを諦めた。
「よーし! じゃあ、うつろぎ探険隊はここにくつろぎ探険隊となってしまおう! 我もあのクソでっかいバスタブにお湯と泡をたっぷり入れてから潜り込み、ブラックタール色に染めてやるぅ!」
贅沢出来る時にしておこう。そんな風に心を立て直すうつろぎであったが、西園寺はちらと、ソファーに座ったまま窓の方を見た。
「そうですわね。今日の夜はまだ……何も起こら無さそうですし。うたた寝でもしたい気分」
「ん? 何か、そう思う事でもあったのかな?」
うつろぎは西園寺の反応に、少しばかり引っ掛かりを覚えた。
彼女の言葉は、それとは裏腹に、何かに気が付いた様であったからだ。
「いえ。わたくし達、随分とホテルの中を歩き回り、時間が経っているのになぁと、そう思っただけですの」
「ふぅむ」
西園寺の言葉を聞いて、彼女と同じく、窓を見つめるうつろぎ。
そこに映るのは美しい夜景。この豪奢な一室にふさわしい、何万ドルもしそうな光景だけがそこにあるのみだった。
『一夜が終わる』
成功
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テオドア・サリヴァン
「高級ホテルか…俺にはあまり縁のない場所だな…」
妙な何かと嫌な予感がするというなら何かしらの事件が起こりそうな気がしなくもないが…
【WIZ】
探検してみたいがのんびりとバーで過ごしてみるか。カクテルを飲みながら周りの状況を確認するぞ。1人で飲んでいると誰かしら話しかけてくる可能性もあるかもしれない。そんな時は世間話に付き合うのも良いな。「誘惑」を利用してこのホテルの情報を引き出してみるか。
(バーの雰囲気って静かで落ち着くな…このままボーッと飲んでいたい…)
黒川・闇慈
「ラックさんの説明だと何もわからないのですが……逆に何もわからなさすぎて何が起こるか気になりますねえ。クックック」
【行動】
wizで行動します。
せっかく泊まるのですし、バーでお酒でもいただきましょう。もちろん酔い潰れるわけにはいかないので、ウイスキーをロックで一、二杯程度ですか。
何もないかもしれませんが、一応バーの中でなにがしかの妙なことが起きないか観察しておきましょう。
バーテンさんに話を聞くのもいいですね。コミュ力の技能でホテル内で妙なことが起こったりしたか、聞いてみましょうか。
「最近このホテルで何か奇妙な体験をするとSNSで拝見したのですが……ご存知ですか?」
こういう感じでしょうか。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
ヤな予感、ねぇ…
今まで色々仕事こなしてきたけど、ここまで曖昧なのは初めてねぇ。
ま、一晩過ごせば何かわかるって話だし、ゆっくりしてましょ。
こういうとこのバーならお酒もカクテルも色々種類あるわよねぇ。
高価いから美味しいってわけじゃないけど、少なくとも質が低いのはおいてないはず。
普段そんなにお金使うワケじゃないし、たまにはぱーっと散財しましょうか。
カクテルならあたしのお店で出せるし、ちょっとレシピ盗んでもいいかしらねぇ。
ついでに周りの会話聞いて〇情報収集しとくわぁ。
(なおこの女、ザルを超えタガを通り越し、そもそも酔った記憶がないレベルの蟒蛇というにも生温いナニカである)
月山・カムイ
折角ですから、たまにはゆっくりさせていただきますか
嵐の前の静けさである可能性も、否定できませんが……
POW
ゆっくりするとか言いながら、プールやフィットネスクラブで汗を流す
50mプールをタイムアタックするように何往復もクロールで泳ぎ倒したり
フィットネスクラブでバーベル上げなどで身体に負荷をがっつりかける
結局のところ、足で稼ぐというのが身についているだけに、身体を動かしてないと落ち着かないらしい
正直、少しは落ち着けこの男
目標はフィットネスクラブで全マシン制覇
気づくと任務として来たことを忘れている可能性まであり
一息ついてから、そういえば仕事で来たんだった
等とはっと我に返るのではなかろうか
アレクシス・アルトマイア
一夜を過ごせば、良いのですね
ホテル内の探検とか、楽しそうですけれど…
ホテルの従業員になれるなら、いろいろと分かることもあるかも知れません
なれないなら、なれないという情報が手に入りますので、やってみて損はありません。なれなかったら少しショックですけれど
ええ、ええ。皆さんの素敵な夜の一助となれるよう、勤めさせていただきますね
どちらにしろ、少し探検はしてみたいですね
バックヤードに、エアダクトに、地下収納に、秘密の階層に、プール設備のポンプの装置とか、お客様に見えない場所をこっそり侵入して楽しんでしまいましょう
誰か、一緒に来る方がいればお話もできてさらに楽しいと思いますっ
さて…何が、起こるのでしょうか
庚・鞠緒
POW
ンだよ曖昧なことばっか言いやがって
ま、いいけどよォ金なら仕事でたっぷりもらってっから
一回くらい高級ホテル泊まってみるのもいいさ
といってもどう過ごしたらいいやらわかンねェな
……よし、フィットネス行くか
トレーニングでもしてるわ、割といっつもしてンだけど
ストレッチして、筋トレしてーっと
流石に機材整ってンのかな、UDCも大したモンだけど
……あ、ジャグジーはさすがにUDCにもねェや
これはたっぷり使おう
一応、他の利用客いたらチラっと様子見てみっけどさァ
これでただの客ばっかだったらウチ無駄金使いに来ただけになっちまうんだけど
祇条・結月
特に変わった様子はないんだけど「妙な」ってグリモア猟兵が言うなら、確かめた方がいい、んだろうな。
というわけで実際に宿泊してみようか。……貯金が、また貯金がダメージを受けてる。
錠前師の端くれとしてはこういうホテルの鍵とか気になっちゃうな。もちろん、分解とか無茶な真似はしないけどこういうところに異変がないか調べたい気持ちもあるし自室のドアを【鍵開け】で構造を確認したりなにか違和感がないか確認しておく。
あとは、【罠使い】で自室の確認。高級ホテルに仕掛けとかあるとは思わないけど、できる調査はしておきたいかな。
他の猟兵に情報共有できそうなら、僕が把握したことは伝えておこうかな
アルトリウス・セレスタイト
グリモア猟兵が依頼する以上、何某か起きるのは間違いなかろう
一室確保して寛ぐ、フリをして籠もりホテル内を探る
臘月で分体を出し、自身含め界識でホテル内を分担して捜査
異変を感じる兆候があれば回廊で確認へ
現地で様子を見る
明確に変事であれば本体が転移し、臘月の分体は一旦解除
即応可能なように備える
生物感の薄い、機能の塊のような行動指針
飽くまで用事を片付けに来た考え
できるだけホテル設備に被害がないように、とは考える
マスクド・キマイラ
アドリブ・合流等歓迎
同じ屋敷に仕えるよしみだ、俺も力を貸そうじゃないかっ!
よし……そうと決まれば、筋トレだな
本格的な器具があれば嬉しいが、さて
ここのジムは、俺を満足させることができるかなっ……!?
今日は、下半身を追い込むか
バーベルスクワット、レッグプレス、レッグカール……
鍛える筋肉を常に意識して、一回一回の動作の正確性を保つのが非常に重要だぞ
筋肉を高める現地の同士がいれば、そこから話を聞いてみよう
歓談がてら、トレーニング論や筋肉の情報を交換するのは珍しくもないことだしな
このようなジムで日常的に鍛えているならば、長期滞在者の可能性も高い
核心に迫ることはなくとも、なんらかのヒントにはなるかもしれん
シャイア・アルカミレーウス
うーんラッ君の言うことだしなあ……。でも高級ホテルってのはいい響きだね。勇者的に探索しがいがありそう!
(pow)
まずはブッフェを調査しようか!お腹が空いては戦はできない、一般人が食べても大丈夫か毒味をしなきゃ!うん、これは立派な調査だよ調査!
お腹いっぱい調査したら客室とかも調べていこう。
クローゼットとか額縁の裏とかに小さなメダルとかのアイテムや、怪しいボタンが隠されてないか確認して回収しておかないとね!勇者的に!
……ってお気楽風な感じで、耐毒性のあるお茶で毒対策した上で、「無色多職の夢幻未来」で召喚した「探偵の僕」に離れた所から死角を見てもらいながら調査しようか。
エウトティア・ナトゥア
チーム【依頼掲示板前広場】で参加。
(マニトゥに乗ってホテル内を探検)
妙なホテルのう?とりあえず調べてみるかの。
むむ、あちらの方から美味しそうな匂いがするのじゃ。
これは調査しないといかんのう。
このレストランが怪しいとわしの野生の勘が告げているのじゃ。
重点的に調べて物証(料理)を確保するのがよいじゃろう。
(戦利品の料理をサービスワゴンのように狼の背に載せて夜景の綺麗なナイトプールへ移動)
レニー殿、レモン殿。怪しい所を一通り調べてきたわい。
和食、洋食、中華、エスニック、果てはスイーツ専門店まで調べて集めた物証じゃよ。
これから本格的な調査を行うのじゃが、一緒にどうじゃ?
蛇塚・レモン
<POW>
ナイトプール、都会ワードの響き……!!
(UDCアースの田舎娘、衝撃が走る)
あと料理も美味しそう!!
依頼掲示板前広場のお友達と一緒に行動するよ
まずはレニーさんと一緒にナイトプール!
……そういえば、レニーさんは普段男装だけど、れっきとした女性なんだよね
うわっ! レニーさん、めっちゃスタイルいい……っ!
その水着、超似合ってる~っ!
あ、あたいは見詰められると恥ずかしいんだよっ……!
ビキニは初めてなんだよね……っ
(割と胸は大きく腰回りが細いのが恥ずかしい)
あ、ティアさん!
なるほど、料理の傾向は掴めたよ
本格的な調査!(目を輝かせて)
つまり食べ歩くんだねっ!
レニーさんもティアさんも、一緒に行こっ!
琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】
夜景の見えるナイトプールやってる温水プールサイドにてドリンク片手に優雅にごろ寝
「やあ、レモン。まるでもう朝かと思ったよ。君の水着姿は眩しいね、恥ずかしがらずいつものように元気な姿だともっと魅力的だよ」
ありがとう、僕は女性として見られるよりアスリートとして見られたいよ
鍛えたこの身体で一体でも多く祖国のオブリビオンを…
「おやエウトティア、君もどうだい?」
え?
※アドリブ大好き&楽しみ。追加省略アレンジもご自由に。
チガヤ・シフレット
高級ホテルを満喫できるとは……。流石お仕事、素晴らしい……って、なに、自腹???
くぅ、とほほだ。こうなると全力で楽しむしかあるまい!
しかし、邯鄲の夢とは。このひと時楽しんで。あとは鬼が出るか蛇が出るか。
【POW】
せっかくだ、あちこちうろついて、目についたところで色々と楽しんでみよう。
とりあえず、隅々まで歩き回って、施設の確認とか従業員の様子とか見ながら動いてみよう。
ってプールとかあるのか、プール!
この時期はまだ寒いけど、温水だよな、やっぱり!
水着姿で無防備さらすと何か出てくるとか、そういうあれはないかなぁ?
ということで、しばし泳いで楽しむか!
ひとしきり遊んだら食って寝よう。
ヴィクティム・ウィンターミュート
【WIZ】
あぁん?妙なホテルだぁ?…別にそんな感じしねーけどなぁ。妙な感じっつっても、具体的なことは分かんないんだろ?ま、話半分程度に一泊はしてやるけどさ…。
あらん限りの美味い飯をたらふく食べる。そりゃもう食べる。厨房をひーこら言わせるくらい食べる。そして自室に戻り、ゲームに耽り、だらだらと過ごそうじゃねーか。ちなみに、俺は人前で眠れねえし、完全な安全が確保されてねーと寝ない。だから、夜中でもばっちり異変を感じ取ることができるはずだ。ま、そんなオカルトじみたこととか起きるわけねーか!HAHAHAHA!!
……お、起きねーよな?大丈夫…だよな?はー?ビビらねーし?余裕だし?はー?
アドリブ、連携歓迎
夷洞・みさき
咎の臭いはするようなしないような。
【POW】
プールがあるようだし、そっちで泳ごうかな。
本気で泳ぐのは雰囲気に合わないような気もするけど。
ここは遊び場だから、面白いプールなんかもあるのかな。
初めは運動がてら本気で泳いで、あとは水に浮かんで周りの人達を眺める。
うん、やっぱりプールの水は海水とは違うよね。
味とか粘り気とか。多分。
こんな所で物取りする人はいないだろうけど、荷物の近くには車輪を置いておこう。
同胞達、面白い物があったら教えてね。
泳ぎ慣れして無さそうな人がいたら、ちょっと教えてあげるのもいいかな。
そこそこ良い部屋を借りれたので夜はそちらに。
たまたま誰かと同室になるかもしれないね。
『一夜が始まる』
「高級ホテルか……俺にはあまり縁の無い場所だが……」
と、ぼんやりと呟く猟兵、テオドア・サリヴァンは、そんな縁の無い場所でも、あえてくつろごうとしていた。
具体的には、静かな場所で酒を楽しむ事にしたのである。
ホテル内に幾つかある飲食店。その中の一つに良い雰囲気のBARを見つけるや、彼はさっそく足を運び、一杯のカクテルを注文していた。
座る席はカウンター。目の前でマスターが別の客に対してまた別のカクテルを作っている姿を目にしながら、テオドアは自分が注文した、うっすらと緑がかった半透明の液体を眺める。
(こういう雰囲気……なんだか良いな。落ち着く、ぼーっとこうやって、カクテルを眺めているだけでも―――
「クックック。こういう店は経験がありませんか?」
思考の海にでも沈もうかと言った様子のテオドアに、隣に座っていた客が話し掛けてきた。
黒く長い髪を伸ばし、怪し気に笑うその男を横目に、テオドアは呟く。
「ああ。こうやって、同じ猟兵とじっくり飲むというのも、あまり経験が無いかもしれないな」
テオドアはその男、黒川・闇慈に言葉を返す。二人して、この高級ホテルの様子を探る立場であるはずだが、お互い、今はこの場を楽しもうと酒を嗜んでいた。
「なら、この一時を楽しむと良いでしょう。もしかしたら明日にでも、ここに何かが起こるかもしれない。もっとも、あのラックさんというグリモア猟兵の説明では何が起こるかどころか、本当に起こるかも分かりませんでしたけれど」
お互い、どこかサボってでもいるかの様な思いに、テオドアはやや罪悪感を覚えるが、妙な事が起こって居ないこの場所で、何をすればという思いもあり、黒川と共に酒を楽しむのもやぶさかでは無い気分であった。
「はいはい。くつろぐのは良いけどね。そのためのお酒を私に頼むってどういうこと?」
そんな事を言いながら、BARのマスター……いや、猟兵としてホテルにやってきたはずのティオレンシア・シーディアが、カウンターの向こう側から、黒川の前に勢いよくカクテルを置く。
「おやおや。カウンターに叩きつける様にグラスを置くのは感心しませんね。グラスが割れるかもしれないし、中身が零れれば、どれほどあなたが上手く作ってくれたとしても、すべては無駄に終わってしまう」
「ええ、ええ。そうでしょうよ。けどねぇ……私、この店のマスターではないの。知っていたかしら?」
「知らないわけも無いだろう」
何を当たり前の事をとテオドアは呟きつつ、小さなグラスに入ったカクテルを飲み干してしまう。綺麗な緑色はそこで終わり。夜と店の暗闇が差し込んで来る。
「明かりも無いし、駄目だな。この店は」
「そりゃあ今日は定休日らしいじゃない? だっていうのにあなた達ったら、私がこういう事が出来るからってマスター役をさせて、客として楽しむばっかり」
つまり、この場の三人の状況はと言えばそういうものであった。
明かりも無い定休日のBARで、三人で店の雰囲気だけを楽しんでいる。そういう状況だ。他に人気も無く、やはり酒を一杯飲み干しただけでは寂しさがつのる。
「マスター、オススメのカクテルを一杯」
空のグラスをティオレンシアに渡そうとするテオドア。彼はこの妙なBARの雰囲気に、すっかり馴染みつつあった。
「だからマスターじゃないったら」
言いつつも、ティオレンシアは職業病の如く、オススメのカクテルとやらを作り始める。使う材料は店にあったものを使わせて貰っていた。
泥棒染みた真似に思われるだろうが、実際やってる事は泥棒だから文句は言えない。
「しかし君も豪胆だ。店の商品を勝手に使って、これでマスターではないと来ている」
変わらず笑う黒川であるが、差し出されたカクテルを金も払わず口に含んでいる事を考えれば、同罪と言える。
「一応、別にお店は経営しているのだけれどねぇ。『黒曜宮』って知ってる?」
「残念ながら、さっきも言われた通り、こういう店の経験がな……」
ティオレンシアから二杯目を渡されながら、テオドアはまたグラスの中の色づく液体を見つめる。これだけを見れば、やはり心が落ち着くのであるが、一杯飲む間に、その落ち着きも消え去ってしまうのだから妙なものだ。
「あら、本当に残念。だけれど……せっかく作ったカクテルだけは、私の店の味だから楽しんでね?」
「泥棒染みた事をしているから、素直に楽しめないのは難点だがなぁ」
一応、自分達は仕事をしにこのホテルに来たはずだ。それをつい、思い出してしまうも、とりあえずこのBARでくつろごうと考えたのはテオドア自身。この罪悪感とて受け入れなければならない。
「クックック。楽しんでしまうが吉ですよ。例え今がどの様な状況だとしても、そうする他無いとなれば」
言いながら、黒川もカクテルを飲み干した。
そうして次の一杯を頼むのかと思いきや、彼はBARを見渡す。
薄暗く、外からの光だけが光源となり、黒川達以外には誰もいない、そんな空間。どうして自分達はこんな場所にいるのか。つい考えてしまう。
「そう言えば、夜も更けて来ましたね。夜よりも朝が近い時間帯……と言えなくも無いでしょう」
だが、店は暗いまま。太陽が昇るにはまだ早いと見るべきか。そう考えて、黒川は再びティオレンシアに視線を移した。
「本当なら、こんな時間でも、しっかりホテルの調査を続けるのが常道なのだろうが……」
再び、二杯目のカクテルを飲み干してしまったテオドア。彼もまた、マスター代わりのティオレンシアを見つめる。
黒髪長髪の男二人に見つめられるという気分は、どうにも慣れぬティオレンシアであるが、今は別の事に気を取られていた。
「調査なら、今の私達がしてるでしょ? 何のために泥棒みたいな真似をしていると思っているの?」
「調査にかこつけて、誰もいないBARを楽しんでいるだけ……ではあるけどなぁ」
「いえいえ、そうでもありませんよ」
黒川はそうまとめてから、顔の動きだけで、カウンターの向こう側にある棚を示す。気付いた他の二人も、その棚を見つめる。
棚にもっとも近いのは、マスター役をしていたティオレンシアだった。彼女は棚へと近づくと、一本のボトルを手に取った。
「これ……」
「ああ。さっきまでは無かった」
テオドアは、ティオレンシアが棚からとったボトルを見つめていた。そのボトルは、確かに先ほどまで存在しなかったはずなのだ。
「正確には違いますね」
黒川の方はと言えば、BARの客役をしながらも、その違和感について、さらに深く勘付くものがあるらしい。
そんな黒川の発言に、ティオレンシアも頷いて返す。
「ええ。これ、私がさっきまで使っていたはずのボトルだわ」
その言葉に驚くテオドア。彼は自分が先ほどまで持っていたグラスに目をやろうとして……。
「なるほど、こっちも無くなった」
カウンターに置いただろうか? それとも、手に持ったままだったろうか。どちらだったかは、先ほどまでの事だったのに記憶があやふやだった。
だが、確かに目の前から、自分のグラスが消えていた事をテオドアは確認する。
「窓を見られないのが残念ですね。そちらの方を調査するべきでしたか?」
BARはその雰囲気を重視するためか、窓が存在せず、外を調べる事が出来ないのが難点だと黒川は感じていた。
「いえ……こっちも有益だったと思うわ。けれど……」
ティオレンシアは、手に持ったボトルの重さを確認する。使ったはずのボトルは元に戻り、そうしてその中身もしっかり存在していた。
「……いやな予感がするわねぇ。ずっと前からだけど」
とりあえずはボトルを棚に置きなおすティオレンシア。外の様子はBARから分からないけれど、それでも、夜はまだ始まったばかりだと感じさせられていた。
『一夜が終わる』
『一夜が始まる』
ホテルの廊下を狼がのし歩く。気高さを感じさせながらも、都会の中心に立つ高層ホテルには似合わぬその狼は、それだけでも異質であったが、その巨体もまた尋常では無かった。
強靭な四肢で絨毯の床を踏みつけ、大きな足跡を残して前に進む。
狼は焦らず、狼は走らず、狼は揺るがない。その圧倒的な存在感を誇示するかの様に、唯々、その身体で廊下を進み続けていた。
なお、さらに妙な光景があるとすれば、その狼の背中に少女が乗っており、その少女が乗る以外の部分には、ホテルのあちこちで集めたらしき各種料理が乗せられている事だろうか。
「いやぁ、今宵は実に実に調査が捗ったのう、レニー殿! レモン殿!」
満足気な表情で狼に乗る少女、エウトティア・ナトゥアが、狼の両脇を歩く二人の女性に話し掛ける。
先ほどまで、ホテル内にある食堂やレストランで調査(つまみ食いとは言わない)、調達(強奪とは表現しない)を繰り返していたエウトティアであるが、そんな彼女を見て、両脇の女性の一人、蛇塚・レモンが口を開いた。
「そうだね、ティアさん! あたいもここの料理の傾向は掴めたよっ。食べ歩き……げふん。地道な調査は、着実に成果を収めつつあるねっ」
「いや、まあ……二人がそういう事にするなら良いのだけどね」
はしゃぐエウトティアと蛇塚を見つめながら、最後の一人、琥珀川・れにが苦笑する。一人、どこか男性っぽさも感じられる彼女であるが、今は確かに女性としての姿が強調されていた。
この三人。それぞれがそれぞれに水着姿であったからだ。こちらについては妙な光景とは一概に言えない。この廊下を進む先には、高層ホテルの屋上。ナイトプールが存在しているからだ。
「それにしてもレニーさん! めっちゃスタイル良い……っ! 普段は男装してるけど、れっきとした女性っぽくて、とっても似合ってる~」
「ははっ。ありがとう。けど、僕は女性として見られるよりアスリートとして見られたいかな。君の方こそ、とても素敵な水着だ。ビキニというのは随分と大胆だけどね?」
「あ、あたいは見詰められると恥ずかしいんだよっ……! ビキニは初めてなんだよね……っ」
はしゃぐ蛇塚と琥珀川。 そんな彼女らの雰囲気に乗せられてか、実際狼に乗っているからか、エウトティアの気分も上々と言った様子になって行くが……。
「むっ……」
廊下を抜けた先にある屋上。そこには、ライトアップされたナイトプールが存在していた。そのプールを目的にやってきた彼女らなのであるが、エウトティアは……というより、彼女が乗る巨狼マニトゥは、突然、そのプール手前で止まっていた。
「おやエウトティア。いったいどうしたんだい?」
巨狼に乗る少女に対して、顔を上げながら尋ねる琥珀川。見ればエウトティアは先ほどの表情からは大きく変わって、不安そうな目で自らの狼を見つめていた。
「マニトゥが……何かを警戒しておる?」
エウトティアが言う程に、その巨狼は敵意に相対する様な仕草を見せてはいないが、それでも、ナイトプールへと近づく足取りはかなり遅くなっていた。
「い、いやだなぁ。あたいを驚かすつもりかな? ほら、見てみなって、みんな楽しそうに泳いでるし」
蛇塚が示す様に、ナイトプールには人が何人か泳いでおり、その周囲にはくつろぐ人間の姿も見て取れた。闇夜を薄く照らすライトは、それだけで神秘的な気分を促してくるが、そこまでだ。何か怪しげな雰囲気は無い……はずだ。
「まったくだ。怯える必要も無い時に怯えていると、真に勇気が必要となる時も、やはり怯えてしまうよ?」
蛇塚の不安を消そうとする様に、琥珀川は一歩を踏み出した。三人の内ではもっとも前に進む一歩。それはナイトプールへと近づく一歩。
その一歩を踏み込んだ琥珀川に対して……。
「ね?」
何かが起こる事も無かった。そこは変わらぬ高級ホテルの屋上。普段、都会では見る事の出来ぬ景色が広がる、大人たちのアトラクション。怯えるよりも、楽しむべき場所だと琥珀川は他の二人に伝えてくる。
「もう! ティアさんったら、驚かさないでよー。レニーさんの言う通り、せっかくこんな都会的スポットに来たんだから、あたいはむしろ、いっぱいはしゃぎたい気分っ」
「う、うむ。そうじゃな。怖がる様なところではあるまいな。まったくマニトゥ。お前が妙な動きをするから……む? 空?」
足を遅めていたマニトゥだが、夜空が見える場所までやってくると、上を向く。釣られてエウトティアも空を見上げた。
都会の輝きに負けるかと思えたが、それでも星々が瞬く夜空。この様な場所でも、夜空は変わらず星々を抱いていた。
「空に星が見えるのは、街の光が弱いから……」
ふと、エウトティアの口からそんな言葉が洩れる。
はっと気が付き、エウトティアは次に他の二人を見た。
「レニー殿。レモン殿……ここを去るべきじゃ」
「え? いや、何故。だから怪しいところなんて―――
琥珀川の言葉を遮る様に、エウトティアは首を横に振った。
「街の光が弱い。それだけ夜が深まっているという事じゃ。だと言うのに……怪しいところが無いのはおかしいじゃろ」
エウトティアの言葉で、琥珀川も気が付く。
「今は何時だ?」
夜がやってきて、琥珀川や蛇塚はエウトティアに付き合う様に、ホテル中の料理を食べたり集めたりして、その後に漸くここまでやってきた。
こんな夜遅くに、それでも普通の光景としか思えない程度に人がいるナイトプール。それはつまり……それだけで異質なのではないか?
「ひっ」
蛇塚は悲鳴を上げた。彼女も異変に気が付いた……というより、エウトティアと琥珀川が状況の異質さに気が付いたその瞬間に起こった変化に怯んだと言った方が正しい。
蛇塚が見ていたのはナイトプールだ。そうして今、もっとも怯えているのは、そこにいる人々。
複数人いるそれらの人々は皆、何時の間にか、じっと、蛇塚達三人を見つめて来ていたのだ。
『一夜が終わる』
『一夜が始まる』
フィットネスを汗が舞う。気高さを感じさせるその熱気は己が筋肉のために。尋常ではないその勢いはやはり己が筋肉のために。
主に本日は下半身を鍛えるべくホテル内に存在するフィットネスへとやってきたその男の名はマスクド・キマイラ。熱き思いを胸に秘め。滾る血潮を覆面で隠し、それはそれとして身体を鍛えれるこの環境に満足している男の一人だ。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! 駄目だ! まだだ! まだだ俺! 追い込みがまだ! 足りん!」
バーベルを抱えたままのスクワット。それはマスクド・キマイラの足に負荷を掛け、その苦痛は明日への成長の糧となる。その思いと共に鍛錬を続ける彼に対して、称賛を送る人間もまた存在していた。
「さっきからふんふんうっさいんだよ、おっさん! 黙って大人しく身体だけ動かしてられねぇのか!」
訂正しよう。称賛では無く、それは罵倒だった。罵倒してきた人物、庚・鞠緒をマスクド・キマイラは見つめると、彼女に対して返答する。
「よし、次はレッグプレスだ。今日一日は下半身の日。労わり、責め苦を与え、次なる高みへと昇って貰おう」
「聞けよ話を!」
訂正しよう。マスクド・キマイラの返答は鞠緒に対してではなく自分自身の筋肉に対してであった。あらゆる罵詈雑言よりも、今は筋トレの優先順位が上だ。
「ははは。お兄さん達、随分と愉快ですねぇ」
マスクド・キマイラや鞠緒の近くにあるランニングマシンで走る男が、走ったままの状態で、彼らに話し掛けて来た。月山・カムイである。
「ほう? 俺の今の状態が愉快だと思うのか?」
マスクド・キマイラのその言葉に、月山は笑って返す。
「ええ。私と同じく、随分と身体を動かせば愉快になる性質らしい」
「まったくだ。その通りだよ!」
お互い笑い合いながら、やはり体を動かし続けるマスクド・キマイラと月山。
同じく、このフィットネスでトレーニングでもしようとしていた鞠緒であるが、この二人の仕草に対してはやや引いていた。
「身体動かしながらにこやかに笑い合うなよ、ちょっと……いや、かなりキモいぞ?」
「はっはっは! そうだ俺の太もも。お前の力はまだそんな程度じゃあない!」
「おいこらおっさん! とことんウチの事は無視するつもりだな!?」
鞠緒の言葉に対して返るのは、不敵な笑みのみ。それと飛び散る汗。笑って身体を鍛え合う男二人に対して、話し掛けた事がそもそもの間違いであったかと頭痛を覚える鞠緒だったが、ふと呟く。
「こんなことなら、真面目にホテルの調査でもしとくべきだったか? いや、それも金払って泊ってるホテルじゃあなぁ……」
「はっ、そういえば私も仕事で来たのでした」
「いや、そこで思い出すなよ」
ランニングを続けながら、重要な事に気付いた風を装う月山に、律儀にツッコミを入れる鞠緒。恐らく、あまり納得したくない事であるが、この場においては、もっとも真面目なのは自分かもしれないと鞠緒は思い始めていた。
「こう、意外かもしれませんが、身体を動かすのが趣味というか日課になりつつある身でしてね?」
「いや、全然意外じゃないというか見れば分かるけどな」
「本日はすべてのトレーニングマシン制覇を目標に頑張っている次第なのですよ」
「だから仕事はどうしたんだよ!」
どうにも月山は、かなりの長時間をこのフィットネスで費やしているらしかった。自分もいっそ、そんな風にホテルで遊んでみるかと考え始めた鞠緒であったが、意外な事にマスクド・キマイラがそれを止めた。
「無論、俺の方は仕事のためにここに来たと言って良い」
「の、割には、今も身体を鍛えてるじゃねえか」
「お前は仕事をする時、常に息を止めなければ出来ない性質か?」
「筋トレを呼吸と一緒の枠に当てはめてるんじゃねえよ……」
これ以上、何かツッコムことすら疲れて来た鞠緒であるが、話を聞く姿勢だと取ったらしいマスクド・キマイラは、そのまま会話を続けようとしてきた。
「こういう場所なら、長期滞在の客もいるだろう。そうであれば、このホテルで妙な事は起こっていないかと聞く事も出来る。故に、こうやってトレーニングを続けながら、周囲に溶け込もうとしているんだ、俺は」
「周囲に溶け込むねぇ」
むしろ目立ちまくっているではないかとマスクド・キマイラを見つめる鞠緒であったが、月山の方はマスクド・キマイラの言葉に納得したらしく、走ったままで頷いていた。
「なるほどなるほど。試しに誰かと話してしまえば良かったのですね。ではさっそく……やあ隣の人。調子はどうですか? そういえばあなたも、このフィットネスでさっきから走っていますが、何か変わった事などはありましたかね?」
行動的と言えば良いのか、単純と言えば良いのか。月山は隣のランニングマシンで走っている客に話し掛け始めた。
きっと、妙な男に絡まれたなと客は思う事だろう。鞠緒はそう思ったし、月山の方も、まともな答えが返って来るとは予想していないはずだ。だが……。
「ああ、こうやって身体を動かすと調子が良いね」
「ん?」
客は素直に返答した。返答した上で、そこで終わる。
「えっと、変わった事の方は……何かありましたか?」
肝心な話はそこだと言わんばかりに、月山は繰り返し尋ねてみる。
「……」
「ちょっと?」
返って来るのは沈黙だけだった。これにはさすがの月山も、走ったまま首を傾げる。
「明日の天気はどうなるだろうな?」
「天気予報じゃ晴れだったはずだ」
「え?」
マスクド・キマイラが同じ客に他愛の無い質問をすると、客は素直に答える。
その様子に月山も鞠緒も、不思議な事が起こったかの様に眺めていた。
「仕事のために来たとさっき言っただろう? 知人が助けを求めての仕事だったから、すかさず客から情報を集めようとはしたよ。結果がこれだ」
マスクド・キマイラは二人に話す。このフィットネスの多くの客がこの様子だと。
どういう様子かと言えば、他愛の無い、世間話程度の質問や会話などは出来るのだが、一般的な事がズレた、常識的に尋ねられるとは考えられない質問には、どんな状況だろうとも沈黙で返してくるのだと言う。
「え、なんだよ、それ。何か不気味だな」
「そういえば、横で堂々と客の様子がおかしいなどと話していても、反応する人は私達猟兵以外はいないというのも気になりますね」
少し怯える鞠緒と、具体的な違和感を覚え始める月山。
月山の方は少し考えてから、再び、隣の客に話し掛けて見る事にした。
「怪しい事は本当に無かったですか? 不可思議な現象に襲われたとか荒唐無稽な話でも結構。空にUFOが飛んで来て攫われそうになったみたいな話なら、むしろ興味深いのですが。それと、今朝は何を食べました?」
「ベーコンエッグとトーストだったかな……」
「それが不可思議な現象?」
「……」
やはり、一般的な質問以外は答えてくれいないらしい。まるでロボットを相手にしている様だなと感じる月山であったが、ここに来て、変化が起こった。
「白ご飯、味噌汁、温泉卵、焼き魚、海苔、スクランブルエッグ、ジャムパン、ヨーグルト、オレンジジュース」
つらつらと、朝食に出て来そうな料理を答え始める客。聞いてもいない。いや、ここまで来ると、何が言いたいのかすら分からない。
「お、おいおい。大丈夫なのかよ、この人」
鞠緒が心配そうに見つける中、マスクド・キマイラの方は、変わらずトレーニングを続けていた。
「あまり色々想定外の質問をしたりすると、こうなる。安心しろ。暫くすればまた沈黙する。実際、そうなった」
既に調べた後の事だとマスクド・キマイラは二人に告げる。
だから、月山と鞠緒は未だに朝食に出て来そうな料理を呟き続ける客を見続ける事しか出来なかった。
ただ一つだけ言える事は、確実に、このホテルには何かがあるという事だけ……。
『一夜が終わる』
『一夜が始まる』
「HAHAHA! 今日はたらふく食べる日だぜ! あらんかぎりの胃腸を全力で働かせ、今日は贅沢って概念で内臓を埋め尽くしてやる!」
ビュッフェ形式で料理が並び、時には調理されているホールで、皿を片手に動き回る猟兵ヴィクティム・ウィンターミュートの姿がそこにある。
彼はこの高級ホテルで一泊だけするつもりでやってきており、調査というよりかは旅行気分で食事を進めている様子だった。
「それにしたってキミ、元気だね? カラ元気にすら見えるけど……もしかして、何が起こるかって内心怖がってたり?」
「ぶっ……な、なんだ!? いきなり何だよお前は!?」
あやうく咀嚼していたものを吹き出しそうになったヴィクティム。そんな彼に話し掛けたのはシャイア・アルカミレーウス。同じく猟兵であった。
「おっとごめんごめん。僕も猟兵でさ、いろいろホテルを調査した後に小腹が空いて来たから、ここで食事中。やってる事はキミと一緒さ」
笑うシャイアであるが、食事中と言っておきながら、今は何も持って居ない様子だった。
「ふぅん。けど、真面目っちゃあ真面目だな。こんな高級ホテルにまでやってきて、真面目に調査だなんて、俺は御免だね。来たからには楽しまねぇと。これ食い尽くしたら、部屋でゲーム三昧で一日を過ごしてやるんだよ」
そう無精な事を堂々と言ってのけるヴィクティムに対して、シャイアは苦笑いで返す。
ただ、反論できる内容も無いわけではない。
「食い尽くすのは……無理だとは思うかな」
「んん? え? 何か、あるのか? ここの料理」
フォークの勢いが止まるヴィクティム。高級ホテルとは言え、グリモア猟兵が指定してきた場所だ。もしかしたら裏で、怪しげな策謀が渦巻いていたり、料理に何かを仕込んでいたりするかもしれない。
そんな考えがヴィクティムの脳裏に過ぎって来たのである。
「多分、毒とかは無い……かな。いや、けど、どうなんだろう。一つ一つはそうでも無いけど、ホテル全体がもしかしたら……」
「何だよなんだよ。思わせぶりな事言うなって。どういう根拠があってそんな」
「ああ、ごめんごめん。ちょっと、僕の方はさっきまでホテル内の探索に勤しんでいてね。少しは分かる事もあった」
シャイアの調査は、自らの理想の自分を生み出すというユーベルコードで、探偵の自分を作り出してまで行った調査だった。探偵の自分らしく、結論が出る前は曖昧な事しか分からなかったが、その曖昧さの中ですら、ホテルが妙な状況になっていると知る事が出来ていた。
「だから思わせぶりな事を言うなよ。くそっ、純粋に料理の美味さを楽しめなくなってきた」
実際、ヴィクティムのフォークは止まっている。皿の上には、まだ寿司だの一口ステーキなどが乗ったままなのであるが。
「だからごめんって。けど、注意した方が良い部分もあるかもだよ? このままじゃあ食い尽くせない事は事実だし」
シャイアがヴィクティムの持つ皿の上の料理を指して話す。
「ビュッフェの料理を全部食い尽くすなんてのはあれだろ、比喩表現だっての。さすがに自分でも、全部は無理だろって分かってるよ」
「実際そうなんだけど、そういう事じゃあなく、それ、取ってきた場所からは当たり前だけど無くなってしまうだろう? けど、多分、暫くすれば元通りになってしまうんだ」
「あん?」
シャイアの言葉は、料理人が料理を補充してくる。という意味では無さそうだった。
「時間があるなら、じっくり見ていると良い。本当にじっくりと見なければ、気付けないかもしれないけど……ある時間を過ぎると、このホテルの事象の大半は元に戻る」
「そ、それって……」
「さて。それが何を意味するかについては、僕にもまだ分からないけど、妙なホテルだと言われたここが、実際にそうである事は確からしいね。っと、ごめん。それでもまだ事件と言える事は起こっていないから、食事を楽しんで欲しい」
「はいそうですかって楽しめるかよ畜生! ったく、本当に毒とか入っていないんだろうな、この料―――
ヴィクティムの視線が、ふと、自分の手に移る。
さっきまで食事をしていたのだから、そこに当たり前に料理が乗った皿があるはずだ。だが……自分の手は空だった。
「な、なんだよ。何が起こってるってんだ? どっかに落としたか?」
周囲を見渡してみても、どこかに皿が落ちた様子は無かった。変わらない、ホテルのホールがそこにある。本当に変わらない。変わらない様にそう整えられた様に、元通りのまま。
「ふむ……どうやら、元通りになる時間が過ぎたらしいね」
ヴィクティムの耳には、そんなシャイアの呟きだけが響いていた。
『一夜が終わる』
『一夜が始まる』
高級ホテルに向かう依頼と言う事で、やや気分が昂揚していた彼女、チガヤ・シフレット。自腹であるという事実には若干、気持ちを落ち込ませながらも、ならばいっそと全力で楽しむ事にした彼女。
ホテルの名前が『邯鄲夢』と言うくらいだから、一夜の夢を楽しんでやろうと、屋上のプールまでやってきていた。やってきていたのだが……。
「なんだ? どういう状況だ? これ?」
時間帯の問題か、人が殆どいないナイトプール。いるのはチガヤと、プールの縁で足を屈ませ、プールに溜まる水に手を漬けてパシャパシャと揺らしている女が一人。
(若干ホラーだよな。絶対ホラーだろ。なんだ、あの人。なんで一人で水遊びしてるんだ?)
伺うチガヤに気付いていないのか、女は変わらず水に手を漬けていた。これではプールで遊ぶどころではない。本当に、何で彼女以外の人影がこのプールに無いのか。チガヤは嘆きたいところである。
しかも、ただでさえそんな恐怖できる状況だと言うのに、女の声が聞こえて来るのだ。
「ここで泳ごうとしてみたのだけどね。どうにも海とは違うらしい」
もしかして、自分に話し掛けて来たのだろうか。向こうはずっとこちらを認識していた?
そう思うと背筋がゾクリとする。そういえば、どこからか魚の様な、磯臭さのある臭いも漂ってくる。ここは都会のビルの屋上。そんな臭いが漂ってくるはずが無いのに。
「えっと……もしかして、私に聞いてるのか?」
「ここには、僕と君しかいないしね?」
屈んでいた状態から立ち上がり、こちらを見つめてくる女。笑っている様だが、どこか悲しげにも見える、そんな女はチガヤへと一歩だけ近づいて来た。
「そんなに警戒されると悲しいな。僕も君と同じ猟兵なんだから」
「ほ、本当か?」
とりあえずは頷く女、夷洞・みさき。確かに猟兵なのだが、夜空の下、怪しげにライトアップされたプールに立つその姿は、見る人間を驚かす姿に見えなくも無かった。
「本当本当。ここに泳ぎに来たのは君と同じ。君も随分と楽しみに来たんじゃないかい?」
「え? あ、いやぁ……まあ、そうなんだけどな」
仕事では無く遊び優先。それを咎められたわけでは無いが、若干に罪悪感を抱く。目の前の女、夷洞も別に、真面目に仕事をしている風では無いのだが……。
「……罪悪感っていうより戸惑いだな、こりゃあ」
「何か、引っ掛かるものでもあるのかい?」
「あんただよあんた。こう、雰囲気がすげぇこの場に合っているっていうか……ナイトプールが楽しむための場所って言うのなら、似合ってないかもしれないけどなぁ」
チガヤが最初に思ったホラーみたいという感想。そういう雰囲気があると言う意味においては、夷洞の様子はばっちり似合っていたと言える。
「なら、雰囲気が合っていると表現する方が正しいね」
「どういう意味だ?」
「ここは人が楽しむための場所じゃあない。自分を普通の人間だと思うならね」
言いながら、夷洞は再びプールの方を見た。そこになみなみと溜まる水をじっと、見続けている。
「いや……その、分からねえんだけど」
頭を掻きながら、意味深な夷洞を見つめる。どうにも、剣呑な雰囲気になりつつあった。別に敵意を向けられているわけでは無いのだが。
「ここは……海とは違う」
「そりゃあそうだ。別に海の水を屋上まで持って来てるわけじゃなし、ホテルが海岸に近いって事も無いだろ」
何を当たり前の事をと呆れるチガヤ。そんな彼女の反応を見てかは知らないが、夷洞は言葉を続けて来た。
「試しに、ライトを壊してみよう」
「本気で何するつもりだ!?」
慌てて止めようとするチガヤだったが、慌てるチガヤより即断した夷洞の行動の方が早かった。
彼女のユーベルコードを発動すると、六体の霊がこの場に出現し、プールを薄く照らすライトを砕き始めた。
屋上からカラフルな光が次々と消えて、遂には星空の明かり以外がこのプールから存在しなくなってしまった。
「ああもう……どうすんだよこれ。弁償とかしなきゃ不味い……え?」
「言ったよね? ここの水は、海のものとは違う。もっとも、普通の水とも違うらしい」
明かりが消えたはずのナイトプール。だと言うのに、そのプールの水を、チガヤはしっかり見る事が出来ていた。
彼女の夜目が利いたわけではない。目が見えるのならば、誰だってプールに溜まる水を見る事が出来るだろう。
既にライトアップもされていないそのプールの水は、それでも、自ら輝き、怪しげな光を放ち続けていたのだ。
『一夜が終わる』
『一夜が始まる』
「整理をしましょう」
ホテル内の一室。大きなベッドの上で正座をしながら、何故かホテルマンの制服を着こんだ猟兵、アレクシス・アルトマイアが、他の二人の猟兵に対して話し掛ける。
「例えば、君のその格好についてとかかな?」
部屋にあった椅子に座りながら、妙な格好のアレクシスを見つめる少年、祇条・結月。彼は椅子の近くにあった机などを確認した後、溜め息を吐く。
「ホテルの調度品とかには、妙なところは無いから、出来る事と言えばそれくらいだし」
祇条は妙と言われたこのホテルに、何かの仕掛けでもあるのではないかと調度品やら扉やらを、時には鍵を分解してまで調べていたのであるが、その部分に関しての異変は見つかっていかなった。
「だが、気付ける事はあった。そのはずだろう? そっちの女の格好はともかく」
最後の一人、アルトリウス・セレスタイトが直接床に胡坐をかきながら、他の二人を見つめながら口を開く。
この場の三人は、明確に、このホテルの異変に気が付きつつある猟兵でもある。彼らはそれぞれホテルを調査する中で、それぞれに気付く事があった結果、集まり、相談する事にしたのである。
「こ、この格好についてはその……ホテルの従業員に憧れがあり、働けたらなぁと思っただけで……」
頬をやや染めながら恥ずかしそうに話すアレクシス。実際、彼女はホテルマンの変装をして、働きながら情報を集めようとしていた。
結果、ホテルマンとしては不調に終わったが、別口で分かる事があったのである。
「こほん……えっとですね、変装の自信はあったんです。普通に働いて、普通に世間話をするくらいなら出来るかなと」
「だが、出来なかった……か」
床に座るアルトリウスから見上げられて、少し落ち着かないアレクシス。ベッドの上での正座はおかしかったかなと思いつつ、今さら変えられないので、言葉だけを返しておく。
「出来ませんでした……こう、怪しまれるくらいならともかく、いないものとして扱われるんですよね、他のホテルマンからも、お客の人達からも」
しょぼんと落ち込むアレクシス。だが、それはそれでおかしいとアルトリウスは感じていた。怪しまれるならまだ良いのだ。無視されるというのは明らかにおかしい。
「多分、このホテルで、余計なものが入る余地っていうのは、客の立場しか無いんだろうね」
祇条はアレクシスの話を聞いて、そう結論を出した。このホテル。外観は見事で、内装だって大したものであるが、どうにもその中にいる人間すらも、一定数は調度品の様な、機械の様な存在としてあると感じる。
「しっかりとした自意識があるのは、猟兵連中くらいと考えて良いかもしれないな」
アルトリウスはその感覚が何となくわかる。機械の様に動き、機械の様に役目を果たす。このホテルの中にいる従業員も、客も、そんな風にアルトリウスには見えたのだ。
つまり……ホテルそのものが何らかのシステムとすら言える。
「むしろ俺はそれに馴染めた気がする。幾つか分身を放って……調査をさせて貰ったが、成果は無いものの、分身たちは驚くほどにこのホテルに馴染んでいた」
非常事態が発生すれば、即応できる様に準備していたアルトリウスであるが、むしろ何事も無かった。機械染みた分身たちだと言うのに、このホテルは容易くそれを受け入れたのだ。
まるで、そもそも、そういう存在が居て当たり前だと言わんばかりに。
「当初の目的から外れた上で、何が、妙なところを知ってしまったって言うのは、三人同じみたいだね」
一方の祇条もまた、鍵を分解するまで色々と調べた上で、分かった事があった。
「物を破壊したり消費したりしても、一定時間が経つと元通りになる。さっき分解した扉の鍵も、今は元通りだ。こっそり部屋に入るには、何度も鍵を開けなきゃならない」
「こっそり部屋に入ることそのものがどうかと思いますが……」
呟くアレクシスに祇条は笑って返し、そうしてまた溜め息を吐いた。
「おかしいところがある。それは分かる。僕達が気付いている以上、他の猟兵だって気付いているだろう。けど問題は、何が原因で、何を目的にしているかっていう点だ」
祇条にはそこが分からなかった。ホテル全体に、何かの仕掛けがあって、その仕掛けがどの様に作動しているか。そこまで分かっているのに、そこから先が伺い知れない。どうにもジレンマを感じて、またしても溜め息を吐きたくなった。
「そんなにはぁはぁ言っていると、幸せが逃げて行ってしまいますよ?」
「いや、そんな風な一般論をここで言われても……」
「俺は恐らく、罠だと思う」
世間話が始まりそうなアレクシスと祇条の会話に、アルトリウスも入って来る。そんな彼の方を祇条は向いた。
「罠って、溜め息で幸せが逃げて行くのが?」
「違う。このホテルだ。ホテル全体に存在する何らかのシステムは、ホテルの外から入って来る存在を一旦は受け入れている。つまり、誘っているということだ」
システムだけで物事が回っているというのなら、本来、外部の存在は邪魔だ。しかし、猟兵達は客としてやってきており、客として扱われている。他の客だってもしかしたら、一般人もいるかもしれないし、猟兵達と同じ状況になっている可能性だってある。
「じゃあ、何かが起こるのはこれからってことかな? 罠として誘って、その後に、こう、ガシャーンって」
手でトラバサミを再現しながら、それを閉じる祇条。そのジェスチャーは冗談ではない脅威に思えたが、彼らは猟兵だった。そういう状況で戦う事を生業としている。覚えるのは恐怖だけではなく、闘争心もまたあった。
しかし……。
「罠と言うのであれば、引っ掛かる前に気が付くのはおかしいと私、思います」
ちょこんと手を上げて、アレクシスは発言した。確かにこのホテルは妙で、アルトリウスが何らかの罠であるという言葉は理解できるが、これから、さらに何かが待ち受けているという事に関しては違うのではと思ったのだ。
「では、いったいこの状況は何だと言うのだ? 他に理由があるとでも?」
「んー……そうですね。罠だというのは私も同感なのですが、もし、誰かを引っ掛けようとしているのなら……それは気付かれない内に、既に嵌っている様な、そんなものだと思うのですよねー」
口元に指を置いて、考える仕草をするアレクシス。その彼女の呟きに対して、祇条もまた考える事が浮かんで来た。
「気付かない内に……嵌ってる。足が浸かった沼みたいなもので……徐々に。一定時間が経つと、物が元に戻って……ねぇ、ちょっと、いや、これは……そういう事なのか?」
自問自答する内に、何かに気が付く祇条。だがそれは、答えに近づけた事への喜ばしさより、焦りが上回る。足まで浸かっていたと思っていた自分が、実は腰にまで及んでいた。そんな焦り。
「えっと、いったい何を?」
「待って。今、整理する。ねえ、君。何かこう、いろいろと正確そうな雰囲気があるから尋ねるけど、このホテルに来てから、どれだけ時間が経っている?」
祇条はアルトリウスに尋ねると、今度はアルトリウスが困惑し始める。
「待て。おかしい。妙な。何故だ? 何故、尋ねられて漸く、俺もこんなに焦っている?」
「あのあの。二人して何を気付いたのか知りませんが、もう少し分かりやすくしていただけると、助かるというか」
「だから時間だ。我々猟兵がこのホテルに来てから、何時間が経っているか、そっちは気付いているのか?」
アルトリウスに尋ねられた事の意味が分からず、アレクシスは首を傾げる。
「まだ夜は明けてませんし、その程度の時間なのでは……」
「時間にして一週間は経っている。我々はまず、それに焦るべきなんだ!」
細かな違和感など、その事実に対して大したものではない。
夜が、夜がずっと明けず、それに気付かなければ、ずっと違和感を覚えない。自分達は既に、そういう罠の中に嵌っているとアルトリウス達は漸く気が付く。
「もっとも大きな違和感に対して、気付かない様に、少しずつ埋没させられる。それがこのホテルの……罠?」
祇条の呟きは、恐怖を感じさせるに十分な響きを持っていた。先ほどまで、ずっとその罠に嵌り、そうして徐々に身体を埋められていた様な、そんな感覚。
そうして、アレクシスは恐怖の源泉についてを言葉にした。
「あのですね……じゃあ私達、気付かないまま、このホテルで一夜を過ごし続ける事になるかもしれなかったって事……ですよね?」
『一夜が終わ―――
大成功
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第2章 冒険
『人をだます悪事は見逃すな』
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POW : しらみつぶし。数打ちゃ当たる。そういう戦法での体力勝負
SPD : ネットや聞き込みといった情報で敵を追う
WIZ : 現場捜査や推理でもって敵を追う
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『一夜が終わらない』
『夜が終わらない』
『朝は来ない』
『ただ夢の様に夜が続く』
最初に気付いた猟兵は誰だろうか。ホテルの様子は変わらない。ただ、ずっと、夜が続く。
ホテルマンは客を応接し、客は夢の様な高級ホテルで、優雅な一夜を過ごし続ける。
ずっとずっと。ずっとそれが続いている。
なら、もしかしたら何かが変わったかもしれない。変わった様子を見せないこのホテルで、それでも、猟兵達は気付いてしまったのだ。
終わるはずの夜が終わらない。ならば、もし、このホテルに敵意があるのなら、その敵意に気が付いた猟兵達は、外敵に他ならないのだから。
猟兵達はさらに探る必要があるかもしれない。このホテルの悪意を。このホテルの一夜の先を。
虚偽・うつろぎ
POW時々WIZ
邯鄲夢、邯鄲の夢か
正に夢の中だからこそ優雅な夜は続くって感じだ
現実とは切り離された特殊な空間になっているのかな
従業員は邪神の信者か
ホテル関係者しか入れない場所か
その辺りが怪しそうだけど
それだけに囚われても大事なことを見落とすかもなぁ
ここはやはり今一度ホテル全制覇だね
うつろぎ探検隊を再結成である
今度は従業員や他のお客、入れない部屋を確認しながら制覇していくかな
シンプルにしらみつぶしに調査である
点呼第2弾!
1!
完
アドリブ連携等ご自由にどぞ
アレクシス・アルトマイア
す、少し怖かったですが……気づいたからには、もう大丈夫です……ですよね?(ふるふる)
静かな、深い夜は嫌いではありませんが……それは日が昇る日中あってのことです
どうして、夜のままで……そして、元に戻そうとするのでしょうか
時間が進むことが嫌なのか、太陽が昇るのが気に食わないのか。
このホテルの現象は、どの範囲まで続いているのか。
それがわかるなら、その中心はどこなのか…
このホテルの目的と、その中心点とかを捜査と推理で明らかにしてみせましょう。
ひとりでは限界がありますから、皆さんに助けをどんどん頼んじゃいますよ
今は、直接の攻撃はないようですが
決して油断はしないように。
追い詰められた獣は、牙をむくものです
祇条・結月
思ってたよりも、だいぶやばい……!
急がないと。もう出遅れてる
外とは繋がってるのかな。
スマホでネットを確認して、このホテルの過去の噂なんかを拾えないか調べてみる。
もし時期の特定が必要、とかなら。そうだね。ホテルならロビーには新聞とか置いてるだろうから、その日付を確認しに行く
時間が惜しいからこの後の移動ではどこか部屋へ潜入する時は鍵を分解しないでユーベルコードで合鍵を作って解錠。
他の猟兵に渡せるなら余分に作って預けておく。
まだ大丈夫だと思ってるけど、敵からの実力行使に備えて警戒は怠らない。攻撃があれば苦無【投擲】で反撃しながら足を止めず下がることを優先
……そういえば、支配人室はどこにあるんだろ
「う、うつろぎ探険隊第二弾! 点呼ぉ! 1!」
「に、二!」
黒い水たまりの様なものとその隣に並ぶ銀髪の女が、叫び合いながらホテルの廊下を走っていた。
虚偽・うつろぎとアレクシス・アルトマイアとも表現できる二人の猟兵だが、彼らが無作法に廊下を走るのには理由がちゃんと存在している。
「ど、どうしましょうどうしましょう。気付くだけで、こんな風になってしまうなんてっ」
アレクシスは叫びながら、自身の後方を見やる。
そこには多数の人間が歩く様な速度でアレクシス達へ向かって来ていた。
その表情は様々だ。笑顔、怒り顔、泣き顔、能面の様な表情。相手もいないのに、誰かと話をしている様に口を動かしている人間もいれば、手を動かし、食事をしている風な仕草を続ける男もいた。
共通点はただ、アレクシス達に向かって動き続けているというもののみ。
「ま、まったくである。! 襲い掛かるにしても、必死の形相でも浮かべてくれればまだ気楽なのだがぁ!」
黒い水たまりであるうつろぎもまた、アレクシスと共に逃げ回っていた。足では無く、水たまりから伸びる手で全身を引きずる様な移動なので、若干、それだけでホラーな光景であった。
そんな姿であったとしても、逃げるのはあくまで彼ら。、自分達が何日分もの時間、一夜を過ごし続けていたと気付いただけで、他の客や従業員から追われるという今の状況に陥っている。
「せめて……敵かどうかがはっきり分かればとも……思いますねぇ」
走り続けながらも、逐一、迫る人間達を見やるアレクシス。そのどれもが、アレクシスには完全な敵とは判断できなかった。
何かに操られている様な、そんな様子にも見える。もし、中に人間に化けた何かがいるとしても、それがすべてとはまだ判断できない。もしかしたら一般人も混じっているのでは?
そう思えては安易に撃退も出来ず、逃げ回り続ける事しか出来ない。
「少なくとも、猟兵以外の存在はすべて、敵意を見せ始めていると見るべきだが……うつろぎ探険隊としては、この状況においても、原因を探るべきだと考えている。でなきゃ何時か捕まっちゃうしね!」
「同感ですが、調べるにしてもこの状況では……」
走れば逃げ回る事は出来る。人間達の動きは鈍い。むしろ、それで十分と言わんばかりですらあった。これはアレクシス達の命を奪う事を優先しているというよりは、行動の妨害を優先していると見るべきか。
(つまり……むしろ命の方は奪おうとしていない? 何のために?)
長い夜をこのホテルで過ごさせる。そんな目的、罠がこのホテルには存在している。その罠は、猟兵ですら気付かない内に嵌りかねないものであったが、未だ、いったいなんの目的があるのかが分からないままだ。
「こちらが攻勢に出るとしたら、それが分かってから……だろうか?」
「えっと、声に出てました?」
うつろぎの言葉に、きょとんと聞き返すアレクシス。そんなアレクシスに、うつろぎはその水たまりを震えさせた。首を振るジェスチャーらしい。
「何となく、そう察したのだよ! うむ。隊長たるもの、うつろぎ探険隊の隊員に対しては、それくらい分からなければな!」
不思議な水たまりもあったものだとアレクシスは考えるが、そもそも喋る黒い水たまりというのがおかしい存在だと考え、とりあえずは納得しておく。納得という言葉からは程遠い状況かもしれないが……。
「やるべき事が決まった。この状況でも、ホテルの中を探るべきだ。上から下まで全部。この状況だって変化なのだから、もっと違う何かが見つかるかもしれん」
「分かります。分かりますが、では、この状況でどう探るべきか―――
「やるべきなのは、とりあえず足止め……だろ?」
と、二人がいる場所とは違う方から声が聞こえて来た。その声がした方からは二つの影が跳び出して来た。
一つは人影。アレクシスは先ほど、顔を合わせて話していたのでその影の名前を知っていた。祇条・結月だ。
そうしてもう一つの影はとても小さい。祇条が投げた苦無である。
「なるほどなぁ。そりゃあ、傷付けなきゃ何してもありであるか」
うつろぎは、祇条が投げた苦無が人の集団の足元。その少し前に突き刺さるのを見た。
それで止まる人間達では無いだろうが、そのノロマな足は、突き刺さった苦無に引っ掛かり、何人かが転ぶ。それだけでも、相手の動きを阻害出来たと言えた。
「ホテルに人間が沢山いると言っても、限りはあるはずだよね? ここにこれだけの人数がいるとすれば、ここで足止めするだけでも、他の猟兵の助けにはなる。そうしてその猟兵が何かを探り当てれば、事態は進展する……と、僕は考えるわけだけど」
祇条が提案するのは、役割の分担であった。今、ここで三人は、この人間達を惹き付ける事。どうせ、人を散々に集めてしまっているのだ。その方が手っ取り早いと言う事だろう。
「了解ですが……他が探索を続けてくれれば、光明があると考える根拠は何かありますか?」
もし無ければ、足止めを続けて、体力を消耗し続けるだけだとアレクシスは考える。故に、こちらが行動する理由については、確かなものが欲しいと考える。
「あのぞくぞくと来ている人間だけど、あれらに自意識があると思う?」
話している最中にも集まり、祇条達を囲みつつある人間達。だか、やはりその動きは鈍かった。統一性も無い。ただ、祇条達を囲み、行動を妨害するためだけに動いている、そんな様子だ。
「ただ指示された事を続けているだけで、指示を出す側が別にいると、そういう事であるか!」
うつろぎの言葉に対して祇条は頷いた。
「多分、そうだと思う。そう思って、僕も少し探りを入れてみたんだけど……支配人室とかは見当たらなかったかな、不思議な事に」
分かりやすい場所に、この騒動の原因はいないのかもしれない。それとも、もっと別な形でいるのか……。
「まあですけれど、やるべき事は決まってしまった様にも思えますねっ」
そう言って、アレクシスはナイフを一本取り出して構えた。話をしている最中、立ち止まってしまったのが不味かった。
完全に、彼女らは囲まれているのだ。逃げ出すという選択肢も、これで取れなくなってしまう。
結果、アレクシス、祇条、うつろぎの三人(一つは液体であるが)は、探索は別の猟兵に任せる形で、集まった人間達の足止めを開始する事にする。
「よぉし! 行くぞ、うつろぎ探険隊第三弾! 全員、全力で襲い来る現地住民の妨害を開始せよ!」
黒い水たまりのその言葉を合図に、他の二人を動き出した。
この一夜が、今宵限りである様にと。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
月山・カムイ
まるで、朝の来ない夜に囚われているようですね
何が目的でこの様な状態を引き起こしているのか、が気になる所ですが
そこは他の人にお任せしましょう
私はひとまず、引く事が出来るのかの確認ですね
ホテルの外へ出られるのかの確認
まずはオーソドックスに出口から
駄目なら屋上から無空跳躍を使用して地上へ降りてみる
脱出出来た場合、どうやってによるが
・従業員または他の客を連れて出てみる
・地元UDC組織に連絡を取る
脱出不可能な場合、テレビやスマホでホテルに入ってから何日経ったか
他の猟兵との連絡を取る
等々試してみる
目的が見えないが
取り込んで世界を作り固定する、系統と推測
突破口が無いかを探してみます
レナ・ヴァレンタイン
※他猟兵との絡み歓迎
――邯鄲の枕、という言葉を知ってるか?
一夜の夢の中で栄枯盛衰の一生を経験した「盧生」という男の話だ
ふざけた話だ。ホテルの名前、初めから罠ですと宣言してるようなものだぞこれは
さて、どうすればいいものか…屋上から身投げしてみればショックで夢から覚めるかもしれんが試してみるか?
いや冗談だが
まずはホテル出口、そのあと窓
鍵がかかってるならユーベルコードで無理矢理こじ開けも試みて『敷地から出る』のを試す
あとキナ臭いのはスタッフしか出入りできない場所か
……差し当たって地下施設か怪しいか
ま、分からん分は足で稼げ、だ
ああ猟兵諸君。あまり一人だけで出歩くなよ
不意打ちに反応できなかったら危ないぞ
マスクド・キマイラ
アドリブ・合流歓迎
無限に続く夜、いつまでも続けられる筋トレ
……つまらん。つまらんな
結果の伴わぬ筋トレなど、しょせん単なる自己満足
プロの取るべき行動ではなし……何より、何よりだっ
この千の獣を宿す者、マスクドキマイラを
縛り付けられると思っている、その根性が気に食わんっ!!
と大袈裟なマイクアピールしつつ、入口をストレートにぶち破らんと試み
妨害に対しても、プロレスでぶちのめす
単純明快に見せつつ、意外とクレバー
理由も複数
一.(成功確率は低いだろうが)物理的な手段が通用するか確認
一.人間を模すか操るかする以上、人数に限度があると推測。注意を引きつけ、他の猟兵の援護
一.敵手の分布等からの、重要度の推測の一助
(状況が変わった以上、退路の確保をと考えていたのですが、甘い考えだったかもしれませんね……)
猟兵達へ迫り始めた人間達。それを避けるために物陰に隠れながら、月山・カムイはホテルの出入口がある一階ホールへとやってきていた。
(こういう場所ですから、見張りでもいるかと思えましたが、意外な事にそれは少なめ、それでもいないわけでは無いですが、今の問題は恐らく……)
ホテルの出入口を物陰から観察する。大きなホテルである以上、自動ドアになっているガラス張りの出入口は幾つもあり、あまり他の人間もいないので、隙を見て脱出する事は出来そうな気もするが……。
「ふぅん!」
ホールに特大の声が聞こえて来た。見れば覆面の大男が腕を振り上げ、ラリアットの要領で、ガラス張りの出入口へと腕を叩きつけている。
月山はその男を知っている。マスクド・キマイラとかいう猟兵だ。ジムでひたすら下半身を鍛えていたはず。
その光景そのものが、まあ素っ頓狂な光景であるのだが、大男の力でもっても、出入口はビクともしていない様子だった。
(どうにも、安易に外に出る事は出来なくなっているらしいですね。それと……)
先ほど、出入口を叩いていたマスクド・キマイラに対して、少ないながらも見張りの様に出入口近くに立っていた人間達が動き始める。いや、単にマスクド・キマイラが声を張り上げていたからかもしれないが……。
「むぅ! 本来、観客の乱入はマナー違反だが、リングの無き今、ここはロープの外の場外。バーリトゥードゥーともなれば、熱き拳を叩きつけるのも致し方無しか!」
「待った待った待った待ったぁ!
反撃に出ようとし始めたマスクド・キマイラに対して、たまらず月山・カムイが飛び出すや、他の人間相手に戦い始めようとしたマスクド・キマイラの腕を掴み、引きずる様にその場から逃げて行く。
「なんだ!? またしても乱入者! ならばさらにその乱入者を集め、舞台をさらに盛り上げるのみだ! 今から! このっ俺が! お前にっ! 言うことが!」
「あーはいはい。盛り上がってるとこ悪いんですけどね、今、俺達がするべきはもしかしたら違う事かもしれないんですよ!」
「ほう? とりあえず周囲を殴り付けた上での鎮静化よりも、有効的な方法があるということか?」
「もしかしたらですけどね」
言いながら、迫る人間達から逃げ、また別の物陰に隠れる月山達。やはり、人数自体は少ないおかげか、逃げ切るのは容易い状況だった。
代わりに、考える時間が増えているとも言える。
「よっし、また撒けました」
階段裏のあまり目立たない場所で息を整えつつ、月山は連れて来たマスクド・キマイラを見る。
今、隠れているというのに、堂々とした姿で立っているその男を見ると、頼もしくもあるが、今は時と場合に寄るとも思えてしまう。
「で、次はどうする? 正面から戦うという選択肢が無くなった様に見えるが?」
マスクド・キマイラの言葉は直球だ。行動そのものが直球だからなのか。
尋ねられた方の月山と言えば、マスクド・キマイラが派手な事をしようとしていたから止めた。という行動が先立っていたため、それでは次に何をするのかについては、まだ深くは考えていなかった。
「あなたの攻撃で破れなくなった出入口。ただ私達の行動を妨害するだけの、あの人間達。そうして、さっきまで、この一夜が続いている事に気付けなかった我々。そこから考えられるのは……」
「どうやらこのホテルは、私達をホテルの内に閉じ込めておきたい。と言うところだな」
「!?」
月山とマスクド・キマイラは咄嗟に振り向き、警戒する。自分達以外の声が、この空間から聞こえて来たからである。
そうして、気付いていなかっただけで、そこには体育座りをする様に身体を小さくしながら座っている女性の姿があった。
「君は……敵ですか?」
ホテル内の人間の大半が、何かに操られているかの様に蠢いているこの状況。初対面の相手はつい警戒してしまう月山。
だが、その女性はじっと彼らを見つめながら、首を横に振った。
「一応、あなた達と同じ猟兵だ。こうやってずっと隠れて調べものをしていたくらいには臆病ものかもしれんがね」
その女性の名前をレナ・ヴァレンタインという。帽子とコートから受ける印象は、探偵みたいな印象を受ける女だ。
「確かに、リングに立って宣言しなければ、興行にならないのは事実だ」
「いや、ちょっと黙っててくださいね」
何か分かった様でいて、分かっていなさそうなマスクド・キマイラを脇に押し、月山は尋ねる。
「隠れて調べものと言いましたが、何か、分かる事でもありましたか? こちらは兎に角、情報が欲しい」
「そっちだって気付いている程度の事しか、こっちも分からないな。ただ、これでも探偵をしているんでね。情報を整理は早いつもりだ」
言いながら、メモ帳の様なものをパラパラと捲るレナ。彼女なりに、このホテルで起こった事を書き込んでいるらしい。
「かくいう俺も、間接を極められてからのタップは早いつもりだと自負している」
「ちょっと黙ってるだけじゃなくて、退いてもくれません?」
少し強い言葉だったかもしれないが、話がまとまらないので仕方ないと月山は考える。だいたい、どんな言葉を向けたところで、このマスクド・キマイラはひるまらないだろうし。
「で、そっちはどう、情報をまとめたと?」
「このホテルが、最初は気付かれない様に、そうして次は他の人間を使って逃がさない様に、我々をこのホテルの中におく。そういう構造になっている事は気が付いているな?」
「勿論。で、それが何を意図したものかですが」
「腹の中だ」
「え?」
答えたのはレナでは無かった。まさかのマスクド・キマイラの方である。彼は身体を少しだけ乗り出して、月山達を探す様に移動している人間の一体を見つめながら、そう口にしたのである。
「案外、単純に物事を見た方が、答えは近かったかもしれないな」
レナの方もまた、マスクド・キマイラの方を見ながら、そう言葉を零す。ということは、マスクド・キマイラの言った、腹の中という言葉を、レナは肯定しているのかもしれない。
「ちょっと、それはどういう……」
「物を食べればしっかりと口を閉じるだろう? その後は消化するまでそこに留め置かなければならないし、物には暴れて欲しくは無いし、暴れ出したらこう……ああいうあれが動き出すという……」
「途中から説明が面倒になってません?」
月山が尋ねるも、マスクド・キマイラは笑ったまま。ただ、少しだけ目を反らしている気がした。
「免疫みたいなものだな」
「そう、そうれだ」
レナの発言にマスクド・キマイラは同意するが、本当だろうかと月山は疑う。
「逃がさないが、別に倒れても欲しくない。ただ、このホテルの中で大人しくして欲しい。そうしてずっと、腹の中に収めておく……そういうのが目的なのだ。このホテルは」
レナのその説明には、月山も納得する。今、自分達は追い詰められながらも、倒されていない。一方で逃げる事も出来ない。そういう状況は、レナが語る説明なら理解できるのだ。
「先に待つのは消化か、それとも別の結果か。何にせよ、その結果を待っていると碌な事が無さそうだ」
こうやって、何時までも隠れているのは愚手かもしれない。月山はそう思えて来た。
ならば結局、マスクド・キマイラの様に、正面から挑んだ方が得策だったという事か。
「最初からあなた、答えが分かって行動とかしてたり?」
「勝負の行方が分かるプロレスなぞ、興行とは言えんし、そんな事も無いだろう?」
答えるマスクド・キマイラの姿からは、彼の心の奥は見えて来なかった。そんなもの無いかもしれないが。
「正面から当たるというのも、知恵が無い。狙うなら、やはり頭だろう」
どこかで、このホテルの有様を作り出している物があるはず。レナはそう判断しているらしく、そこを狙うのが得策だと提案してくる。
「しかしですねぇ。ここが腹の中だと言うのであれば、そこから頭を狙えるものですか?」
「関節技を極められた時というのは、危機でもあるが、相手の身体が近くにあるということでもある。やれるさ」
「さっき、間接を極められてからのタップは早いと言っていなかったか?」
「忘れた」
レナに突っ込まれても、マスクド・キマイラはどこ吹く風だった。ただ、ホテル内にいる限りにおいて、敵にも手が届く場所にいるのだと月山も信じる事にした。
「あえて、敵に近い場所に私達がいるとしましょう。つまり、このホテルのどこかに敵の中枢がいるのだとすれば……それはどこか」
「やはり、整理してしまえば簡単だ。このホールが出入口であるとすれば、ここが一番、外敵の流入がある場所と言える。そこに中枢など置かないだろう。むしろ遠ざけようとする。だとしたら……」
レナは上を見る。月山もマスクド・キマイラも同様に。
そうして、何時だって真っ先に正当を進むマスクド・キマイラの方は、分かりやすい言葉を発して来た。
「敵の頭なのだから、勿論、一番上にあるだろうな。屋上には確か、ナイトプールがあったはずだ」
そこに、このホテルの構造を作り出した敵がいる。月山達三人は、そう答えを出した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
黒川・闇慈
「夜を繰り返して何がしたいのでしょうねえ。繰り返すこと自体に意味があるのか、繰り返す中で客から何がしかを集めているのか。疑問は尽きませんねえ。クックック」
【行動】
wizで行動です。
このホテルの目的が何にせよ、元凶をどうにかしないといけませんねえ。一種の儀式と見なした場合、最下層か最上層に何がしかの要石のようなものがあるかもしれません。怪しい物や人を探しましょう。
まず屋上を捜索し、何もなければ地下の一番下の階を捜索します。客として入れないフロアも含めて、一番上と一番下を調べましょうか。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか、あるいは何も出ないのか。試してみましょう。クックック」
【アドリブ・組み合わせ歓迎】
夷洞・みさき
【WIZ】
同じ日を繰り返す。戻る時刻はある程度一定。朝御飯は複数パターン。
プールの水が水ではない、か。
どうやら、一般客の人は普通の人も混じっているようだね。
あとホテルの水は全て同じ根本かな。
つまり、"何か"は今夜という夜に拘っているんだ。それはきっと明日が来なかった。だから明日が解らないんだ。
明日、何があった。
本当に今夜は今日の夜なんだろうか。
維持に力がいる。ホテルを生き物とみれば、水道管はまさに血管だね。
水から咎の臭いを、その根元を探そう。
これは血液にして消化液、そんな物じゃないかな。
良い香りで虫を寄せる花みたいだね。
ちなみに僕ってそんなにホラーかな…?
(頷く六の同胞)
アドリブ絡み大歓迎
ライトアップされ、怪しく輝くそのプール。
一度はライトを破壊され、それでも変わらずに輝いていたそのプールは、今も変わらず、ただそこにあった。
街を見下ろせる程の高さにあるそのプールであるが、今はその妖しさを増した様に不気味になっており、そこには誰も存在していない。
いや、違う。それでも、その妖しさを目指してやってくる人間はいるのだ。猟兵という名のそんな人種は、それこそが目当てだとばかりにそこに立っていた。
真っ先に辿りついた……いや、ずっと、そのプールの水を観察し続けていたのは、夷洞・みさきその人である。
「このホテルの元凶……それがこれである事は分かる。分かるけれど、じゃあそれが、どういう仕掛けかとなれば、まだ僕には判断が付かない。君の方は……どうだい?」
屋上の端にある給水塔から、プールを見下ろす夷洞であったが、その後ろに立つ一人の男に話し掛けた。
この屋上であったばかりの男であるが、プールの様子に負けず劣らず怪しい男でもある。
「何せ、この状況で笑っている」
「笑みを浮かべているのはお互い様では?」
男、黒川・闇慈は確かに笑みを浮かべ、輝くプールを眺めていた。
じっくりと見ていれば分かるのだが、やはりあのプールは輝いている。ライトに照らされているだけでは無く、自ら輝いていた。
「あれ、良く良く見れば、虹色に光っている様に見えるんだけど……それって、何だか愉快じゃない?」
「興味深いと言う意味では同感です」
そうして黒川は考える。あれはどういう存在か。
「来訪した人間に、一夜を過ごさせる魔力を持つのか、それとも幻覚を見せているのか。何にせよ、人の心に巣食い、人を貶める存在である事は確か……ですかねぇ」
顎に手をやって、やはりしげしげと見つめる黒川。そんな黒川の独り言に、夷洞もまた反応した。
「人を貶める……言い得て妙だね」
「ふむ? 確かに。未だこのホテルは、私達をその内に押し留めようとするばかりで、貶めるとまでは行きませんか」
「だが、もしかしたら、これからそうなるかもしれない」
ホテルの中、まるで自意識を無くしたかの様に蠢く客や従業員。あれらももしかしたら、元はちゃんとした人であったかもしれない。けれど、長く続く一夜を続ける内に、遂には自ら考える力すら失ったのだとしたら……。
「僕達だって、途中まではここで何日も夜を続けているとは気付いていなかった。もしかしたら人を……劣化させるのかもしれないね、あの水は。もしかしたら、あの水を源泉にした、このホテル中の水も」
「まるで人を溶かす様ですねぇ。いや、実はこのホテルのバーでカクテルなど一杯飲ませていただきましたが、もしかしたら、あれもそうだったのか」
胃の辺りを擦る黒川であるが、それが事実であったとして、恐怖する程に情緒があるのか分からない。むしろ良いサンプルが取れたと満足しているのかもしれない。
「で、君の方はどうする? あれが元凶だとして……何もしないというのもあれだろう?」
夷洞の言葉に、黒川は頷く。興味深くはある。研究してみる価値はあるかもしれない。けれど、何時までも同じ夜を過ごすというのは御免被る。
「そうですね。いっそ、すべて蒸発でもさせてみましょうか。その結果、どの様な状況になるのかもまた、興味が湧く」
言いつつ、黒川は何かを持ち上げる様に、手の平を上へ向ける。そうして発生するは、幾つもの炎の塊。プールに溜まった水程度なら、容易く爆発、蒸発させられる程のその炎を黒川は構えた。
「君のやる事を邪魔はしないが、事を始める前に、ちょっと思った事があるから聞いても良いかい?」
「どうぞ」
「僕ってそんなにホラーかな……?」
「誰かに驚かれでもしましたか?」
「まあ、ちょっとね」
「そうですねぇ……こういう状況で、お互い、笑っているというのは、確かにホラーかもしれません」
黒川自身、場に似合わぬ表情を浮かべているとは思うのだ。矯正するつもりは無いだけで
「そっか。まあそうだねぇ」
「それが嫌だと言うのなら、ご安心を。この光景も、さっさと終わらせるつもりですの……でっ」
黒川は上を向けた手の平を、プールに向けて振り下ろす。
その動きと同時に、炎の塊たちもまたプールへと落ちて行く。プール程度の水量であれば、一瞬で蒸発してしまうだろうその熱量。
黒川は、そうして渇き果てたプールのその後を確認するつもりであったが……。
「おやおや、あれは……ますますホラーになって来た気がするね?」
「少しあなたとはジャンルが違うかもしれませんけどね」
黒川の炎がプールへと着弾するその直前。
虹色に薄っすらと輝くその水が跳ねた。
それは炎の威力に寄るものでは無い。まるで意識を持っているかの様に水が蠢き、炎を間を跳ね巡り始めた。
炎に寄って屋上が幾つもの爆発に見舞われる中、それでもそれらの水は水が如き柔軟性で巡り、避け、そうして炎が落ち着く頃になると、水である事を捨て始めた。
「普通の水じゃあないとは思っていたけれど……あれこそぞっとする。あんなものが、このホテルの支配人か」
夷洞は水。いや、色はそのままに、固体化し始めたそれを見つめていた。
水の波紋はそのまま皺に、水たまりの様な塊は、そのまま人型に、倒れた状態から立ち上がる様に立体化していくそれは、唯一泡立つ皮膚が水の名残を残していた。
それを表現するならば、薄暗い虹色の人型。人間の輪郭を持ちながら、それは人からかけ離れた姿をしている。
「支配人はどうやらお怒りの様です。粗相をしたのがこちらなのですから、そうもなるでしょうが……」
そうしてプールより発生したそれらは、自らを攻撃した存在。二人の猟兵に対して、いっせいに顔を向けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『星辰の狂気或いは真実を浴びたモノ』
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POW : 泡立つ狂気
戦闘中に食べた【一般人や同じオブビリオンの肉 】の量と質に応じて【全身を覆う丸い鉱物上の何かが爆発的に増加】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 泡立つ脈動
【脈動する異常に発達した筋肉 】【体内からあふれ出す泡のような鉱石状の何か】【鉱石があつまり結晶化した鋭い刃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 泡立つ譫言
【UDCアース上に存在しない言語での譫言 】から【それを聞いた対象者の脳内に冒涜的な光景】を放ち、【沸き立つ強烈な恐怖の感情】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:ゆりちかお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『それ』は星々の彼方からやってきた。
夜の闇の中、輝く星から、ただの一滴がやってきたのだ。
その一滴は、あるホテルの屋上。何の因果か、そこにあったプールへと混ざり……そうして増殖した。
ただの一滴は増え、そうしてさらなる増加を望み始めた。
本能か、悪意か、それともただの現象か。
一滴から増えた『それ』は、自らを増やす媒介として相応しいものを見つけた。
人間と呼ばれる『それ』は、動く水の様なものだった。その身体の殆どを水で構成する『それ』は、『それ』にとっては都合の良い存在だったのかもしれない。
だが、慌てる必要は無い。『それ』には力があった。ほんの少しずつ、周囲を捻じ曲げ、認識を歪め、相手の意識を少しずつ飲み込んで行く。そんな力が『それ』にはある。
だから本当に少しずつ、自分に取り込んで行けば良い。『それ』はずっと、猟兵が現れてからもそう考えている。
もっとも、自分に直接害を向けてくるなら話は別であるが……。
猟兵達は気を付けなければならない。『それ』が現れたのは屋上のナイトプールだけではない。
ホテルの中を蠢いていた人間もまた、『それ』に侵食されているのだ。まだ、人としての質が残っているものは、屋上で起こった変化の後に、その場に倒れるだけであった。
だが、長らくこのホテルの中で、それの侵食を強く受けた人間は、遂には『それ』そのものになっている。
あくまでも人間達の内の一部であるが、『それ』は増える。一体でも逃してはならない。もし一滴でも逃せば、またこのホテルの様な事件が起こってしまうだろう。
ホテル中の『それ』をすべて駆逐しろ。それが今、猟兵がするべき事である。
レナ・ヴァレンタイン
なんだ、誰かが先にパーティーの合図をしたらしい
――構えろ諸君。来るぞ
ユーベルコード起動、“軍隊個人”発動承認
足りない数は私が補う、他は存分に暴れろ
ガトリング、マスケット、リボルバー
そして「対装甲破壊用」のアームズフォートを各25挺複製
敵の手足を重点的に狙い動きを止めて他の猟兵へのアシスト
アームズフォートだけは防御を固めた敵を狙い、鎧砕きの一撃で守りを剥ぐ
こいつら、下手に逃がすとやばそうだ
状況が猟兵優勢になりになり、逃走を図りだした敵は優先的に潰す
やむなく接近戦になればナイフ型の黒剣を突き刺して生命力吸収で抵抗力を奪い、リボルバーの早撃ちで脳天を吹っ飛ばす
ははは、これはまた派手になってきたな!
月山・カムイ
あぁ、なるほど
この状況を構築した存在は、やはり世界を侵す毒であった、という事ですか
あの様に飲み込まれる前に気付けたのは、運が良かったのかそれとも……
屋上へ行く前に状況が切り替わったのを確認
無事だった人は部屋の中へ隔離
もう手遅れな人々を、殺戮捕食態へ移行した絶影にて、残らず喰らい尽くす
遅くなってしまってすいません
そして、助ける事が出来ず申し訳ありません
代わりに世界を侵す毒は、ここで飲み干して、終わりにします
躊躇する素振りも見せず、かつて人であった存在を喰らい尽していく
1Fから屋上まで、虱潰しにオブリビオンの一欠片も残さないという風に
血塗れになって全てを鏖殺しつくして
屍も残さず、喰らい尽くす
プールにて、『それ』らが形を作り始めた頃。ホテルの一階においてもまた、人間達の一部が『それ』へと変じ始めていた。
星々より落ちた虹色に輝くその一滴から始まった『それ』の侵食は、確実に人々へと染み渡り、何時かはホテルからも溢れ出すだろう。
人から『それ』へと成ったのはその証。何時か、このホテルに存在するすべての存在が『それ』に成れば、次に『それ』は外界を侵食し始める。
「あぁ、なるほど。この状況を構築した存在は、やはり世界を侵す毒であった、という事ですか」
月山・カムイは人から成った『それ』を見つめながら、嘆く様に呟く。
手には自らの武器である絶影が一太刀。戦う気概は十分であるが、成ってしまって果てた人には同情を禁じ得ない。
故に、これから自分が何をするべきか。それについても導き出す。
「やれやれ、誰かが先にパーティの合図をしたらしい。奴らの準備通りに事が進めば、これがもっと大規模になっていたと思えば、溜め息も吐いていられないが……そっちの準備は良いかね?」
構えを取る月山に対して、レナ・ヴァレンタインは尋ねる。
場所はホテル一階の出入口近く。大きなホールになっているその空間に、今は隠れもせずに月山とレナは立っていた。
現れた『それ』らは当たり前に二人を見つけ、ホテルから出さないという意思よりも、既にホテルへの侵入者は外敵であるという判断に移りつつあるらしく、二人を囲んでいた。
恐らく、これから襲ってくるつもりなのだ。その鋭い爪か。皮膚に泡立つ様に固まった、丸い鉱石みたいな物体で殴り付けてくるか。何にせよ、数はあちらの方が多い。だからこそするべき事がある。
「ぐっ……ええ、準備は、万端ですよ」
月山は顔を顰めながら答える。彼は自分自身の血液が失われたのを感じて苦痛を覚える。敵の攻撃では無い。自らの血液を代償に、自らの小太刀に力を与えたのだ。
愛刀、絶影の殺戮捕食態。赤く染まる刀身が、今は獲物を求めて歯軋りを鳴らす。そうして次の瞬間、月山は顰めた顔を怒りのそれへと変えながら、怒声を上げる様にに駆け出した。
「さあ走りに回りたまえ! こっちが向かう様に、あっちも来るぞ! そうして構えたまえ諸君!」
レナが声を掛けるのは走り出した月山と、そうして自らが用意した銃火器にもまた声を掛けた。
別に意思なんぞ無いかもしれないが、そこは気分の問題だ。用意した銃火器はガトリング、マスケット、リボルバーそして「対装甲破壊用」のアームズフォート。それだけでは無い。レナの始める戦争はその程度では無いのだ。
「ユーベルコード起動、“軍隊個人”発動承認。足りない数は私が補う……だから君は……」
ユーベルコード、軍隊個人により数を増したそれぞれの銃火器格25挺。それらを念力で操り、迫る『それ』らに向ける。
向けながら、声を向けるのは月山の背中だ。
「存分に助けたまえ! こいつらの牽制は、私の領分だ!」
その言葉を合図に、レナが容易した銃火器達がコンサートでも始めるかのように弾丸を吐き出す。それらの弾は『それ』らの硬質な皮膚へ食い込み、削り、もっとも強大な威力であるアームズフォート『ギャラルホルン』に至っては、肉片すら残さない威力で消し飛ばして行く。
『それ』らを一片でも残してはいけない。そんなレナの意思力が、その火力を高めている様だった。
そんな弾幕と『それ』らの爪や肉片の間を、月山は駆け続けている。襲い来る『それ』もまたいたが、絶影の一太刀が『それ』を喰らい尽くす。
「あなた達に対しては……遅くなってすみませんとしか言えません……」
『それ』が元人なのだとしたら、怒りばかりを向けていられない。だからこそ、すぐにそれを喰らい尽くす。月山はそう考えているし、さらに言えば、倒す事だけに時間を掛けてもいられない。
「助ける事が出来なくてすみません……」
また一太刀。『それ』を喰らう。やはりその動きは最小限に。邪魔の多くは、レナの火力が排除してくれている。だから月山が真っ先にするのは、倒す事では無く助ける事。
「代わりに……まだ変わっていない人たちは助けますから」
『それ』に成らず、未だ人の形となって床に倒れる人を、月山は一人抱える。丁度、ホールの奥。従業員用の休憩室となっている場所へ、中に『それ』らがいない事を確認して放り込んだ。
だが、その行動だけで終わってはいられない。『それ』になってしまった人間も多いが、無防備に倒れたままの人間だってまだまだいるのだ。
(助けられる命は、限界まで助ける。助けられなかった命は)
人命救助を優先する月山は、『それ』らを牽制してくれているレナの方を見た。
「ははは、これはまた派手になってきたな! よう、そっちは順調か!」
笑う様に火器を放ち続けるレナであったが、それでも、倒れた人間達にはその火器を向けてはいなかった。向こうも、助けられる命を助け、そうして、助けられない命は殲滅するつもりの様子。
「ええ、倒れている人たちの安全を確保できたら、私もそうやって戦ってやりますよ」
この1階から屋上に至るまで。『それ』らは一切残さない。すべてを殲滅、駆逐して、このホテルを人間の元に取り戻そう。
月山とレナは二人とも、そんな風に考え、戦いを続けていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
うしっ、ようやくシンプルな話になってきた。奴らを残らず、殲滅しちまえばいいんだろ?オーケーオーケー、楽な話だ。そろそろ、まともな夜を過ごしてえんだ。──静かな夜が、な。
敵を見つけ次第、【先制攻撃】でユーベルコードを使用。奴から音を奪ってダメージを与えて、『泡立つ譫言』も同時に対策する。
いくらUDCアースに存在しない言語だったとしても、音自体が聞こえなければ精神攻撃なんざ通らねえはずだ。
外しても広い空間を相手だけ無音にできる。
【ダッシュ】で距離を詰めて、背後に回り込んで【毒使い】で塗っておいた毒のナイフで【暗殺】だ。
敵は残らず、【追跡】で逃がさないぜ?
さぁ、フューミゲイションの始まりだぜ!!
マスクド・キマイラ
※アドリブ合流歓迎
お前等に人の理を説くのも、違うのだろうな
千の獣の更に外、語り合う言葉も持たぬ者共よ
だから、それでも、
俺の言葉、俺の想い、こいつ<プロレス>で全て語ってやろうっ
間に合う一般人は身を挺してでも、安全な場所へ
襲ってくる手遅れな者は、怒りや悲しみ悔恨を抑えて一息に叩き潰す
陣取るは屋上、ではなくそこへと至る動脈の一つ
階段やホール等の移動の要
仲間が本命を倒すまでの間、建物内からの増援の妨害を試みる
一流のレスラーは、前座もカットもお手の物よっ
目的はこの場を死守し通さない事、特殊ルールだってプロレスのお家芸
その上で周囲の物と肉体を駆使、地形を破壊し利用し尽くし、バトルロイヤルの要領で立ち回る
『それ』らがホテル中に蠢き始めて暫く。
『それ』らの声がホテル中に響き始めてもいた。
『それ』らは何かを囁く様に、何かを呪う様に、何かに罅を入れる様に、その音を発し続けていた。
もしそれが言葉だったとしても、人間の可聴域すら越えたその声の意味を知る事は出来ない。
その尋常ではない音はただ、聞く者に対して恐怖や混乱の感情を湧き立たせるのみであった。
そんな声を出来得る限り聞かぬ様にしながら、廊下を走り続ける猟兵、ヴィクティム・ウィンターミュートは、『それ』の声を掻き消す様に叫び続けていた。
「ったく! 今日はオフのつもりだったんだよちくしょう! 美味い料理食ってな、ふかふかのベッドの上で跳ねてさ! そうしてゲーム三昧のはずだったってのに、何だこりゃあ! 何の冗談だ!?」
耳を塞いでも、隙間から入り込んで来る『それ』の声は、ヴィクティムからくつろぐとか安穏とするという行為を容易く奪って来た。
声の不快さ以上に、その事が今のヴィクティムにとって怒りの原因になっているかもしれない。
(とは言っても、あんまり長く聞き続けたら健康だって悪い音だな。こりゃあ……」
半ば慰安のつもりで来たホテルだと言うのに、体調を崩していれば世話は無い。だからこそヴィクティムは、まずその音から消す事にした。
彼自身のユーベルコード【冬寂(フユノセイジャクガスベテヲダマラセル)】を放つのだ。
「お前らの立てる音も、声も、悲鳴も、絶叫も、怒声も、何もかも……聞くに値しねぇんだよ!」
怒声を混ぜて、自らが作成したプログラムを放つ。目当ては『それ』らの一体ではなく、ヴィクティムが進む廊下の先。攻撃手段でもあるこのプログラムだが、一方、どこかに当たるだけでも、広範囲に音を消す事が出来る。
プログラムが廊下にぶつかった瞬間、ヴィクティムが味方だと思う存在以外の音が、世界より消え去って行く。
『それ』の不快な音も同様だ。おかげで幾らか余裕が出て来たヴィクティムは、手に持った毒の付いたナイフで近くの『それ』の喉を切り裂く。
「一体一体程度なら、相手にし易いが、やっぱ数が多いか?」
続き別の『それ』へと素早く近づき、胸に当たる部分へナイフを突き刺し、引き抜く勢いでまた一体へ。それなりに手早く倒させて貰っているが、倒し切れない敵は出て来るものだ。
「ちっ、逃げ出す知能くらいあるのか?」
中には、ヴィクティムを襲おうとはせず、まったく違う方へと動き始める『それ』もいた。
(こいつらは多分、何らかの形で感染するタイプのUDCだ。なら、一体でも逃がすわけには行かないな!)
故に、逃げ出そうとする『それ』をヴィクティムは追った。追い、上層への昇る階段までやってくる。
どうやら上へ逃げるつもりらしいと、その逃走経路を見上げるヴィクティムであったが……。
「なんだ? あれ?」
見上げる先。丁度、階段の折り返し。踊り場になっているそこに、覆面の男が仁王立ちしていた。
「……! ……! ……? ……!!」
覆面の男が何かを叫んでいる。きっと叫んでいるはずだ。ヴィクティム自身が放ったプログラムのせいで、いっさい聞こえて来ないのであるが、男の様子を見る限りは叫んでいるのだと思う。
もっとも、その怪しげな風貌のせいで、いまいち味方だと思えず、やはりプログラムの影響を受けて音が消えているのだが。
代わりに男は、階段を昇る『それ』に対して、豪快にラリアットを放った。
「え、あ……やっぱ味方か、あれ」
「ふんぬぅうううう!!!」
ヴィクティムが『それ』に敵対するなら味方だと判断した瞬間、覆面男ことマスクド・キマイラの声が踊り場からヴィクティムの居る場所まで響いた。
我が肉体こそが武器だと言わんばかりに放ったその一撃は、階段の一部ごと『それ』を粉砕する威力。いったいどこにその様なパワーが潜んでいるのか。筋肉か。筋線維の一部一部にか。そんな事を考えてしまう一撃に、ヴィクティムは驚嘆していた。
「何故かマイクが不調になって、名乗りも出来なかったが許せ……などとは言わん! 俺の言葉、俺の想い、こいつ<プロレス>で全て語ってやろうっ!」
怒りも含んだマスクド・キマイラの宣言がまたしても響く。声に釣られて、どうやら『それ』らも集まって来ている。
「あー、さっき一体逃げたと思ってたけど、このおっさんに寄せられてたのか?」
「む? どうやら、漸く観客が一人来たらしい。ここいらは居眠りをする客か乱入者ばかりいたが、有難い事だ」
「いや、その……むしろそれならセコンドだろ、俺」
とりあえずは『それ』と戦う意思を持った猟兵同士。マスクド・キマイラの戦いとやらを、娯楽気分で見ていたいと思うところが無いわけでは無いが、今は共同で敵を倒すべきところだろうとヴィクティムは考える。
「それならそれで有難い。何せ、この踊り場を仮のリングと定めたは良いが、盛り上がりに欠けていてな」
「盛り上がりって……うおっ」
良く見れば、マスクド・キマイラの後方には、既に何体もの『それ』が倒れている。いや、粉砕されている。肉が抉られ、バラバラになっているものもあった。
「一撃で倒される敵とやらはあまり良いものじゃあないだろ? しかも元は人と来てやがる。良い気分にはならないな?」
その点はヴィクティムも同感だった。トドメを刺してやる事しか出来ない不甲斐なさ。それは心に影を差し込んでくるものの……。
「だから! 俺が! 今! このやるせなさを力に変えて! リングの上で宣言する! この悲しみを、プロレスに昇華し! 盛り上げてやると!」
「あー! うるせえうるせえ! くそっ! 音消したままにしておけば良かったかな……」
叫ぶマスクド・キマイラに近づきながら、ヴィクティムは耳を塞いだ。不快な『それ』の声を消したというのに、もっと強烈な声が聞こえる様になってしまった。
敵とは思えない相手であるから、消す事もできないから厄介だ。だが……。
(まあ、今は頼りになる味方……って思えば良いよな? こんな状況なら特にだ)
考えながら、ヴィクティムは周囲を見る。マスクド・キマイラも同様だ。
「お前、バトルロイヤルはした事があるか?」
「プロレスなんて未経験だっての」
「そうか。なら、必死になって付いて来い!」
マスクド・キマイラの宣言と同時に、ヴィクティムもまた動き出す。
その周囲。マスクド・キマイラの声によって、それ』らが続々と集まって来ていた。
その脅威の光景に、むしろ我が意を得たりと言った彼らは、再びそれぞれの武器を構えて、戦い始める。
もしかしたら夜が明けるまで、ずっとずっと……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
琥珀川・れに
【依頼前掲示板広場】チーム
エウトティアと多分レモンも。
【ブラッドガイスト】を使用。
一体どころか一片の肉すら残させないよ。
とはいえ、うう…見た目がグロテスクで美しく無い…あんなの取り込みたくはないが、
僕の捕食態も他人から見たらグロテスクだし一緒だろう。全部まとめて僕の中にしまっちゃおうね。
外界と切り離されて穏やかで毎日同じように過ごす幸せは、いつも市民が命がけなダークセイヴァー出身の僕としては少し賛同できるよ…
でもその成れの果てがこれじゃ、間違ってる
※アドリブ大好き&楽しみ。追加省略アレンジもご自由に。
蛇塚・レモン
旅団『依頼掲示板前広場』のお友達と一緒に共闘するよっ!
早速、蛇神様にあたいたちを護って強化させる結界を張って貰うよっ!
なんかごちゃごちゃうるさいっ!
それよりもあたいの歌を聞け~っ!
全力で歌って譫言を自分の耳にいれないように没頭するよ!
歌いながら踊るように蛇腹剣クサナギを振り回す!
(歌唱+気合+範囲攻撃+鎧無視攻撃+衝撃波+ロープワーク)
戦場のアイドルの面目躍如となりたいなっ!
その間に蛇神様が邪眼の念動力で敵をなぎ倒すよっ!
(視力+呪詛+念動力+範囲攻撃+衝撃波+鎧無視攻撃+生命力吸収+なぎ払い)
結界内で強化された斬撃と念動力を喰らえ~っ!
プールの水で増殖したって……
よく体を拭いておかなきゃ……
エウトティア・ナトゥア
チーム【依頼前掲示板広場】で参加します。
何かキモイものがでたのじゃ。
変な病気を持っていそうじゃし、さっさと駆除するのじゃ。
「歌唱」「破魔」「祈り」「鼓舞」使用
あのうわ言はいかんのう。よくない気配を感じるわい。
レニー殿、レモン殿、あれはわしが打ち消すゆえ攻撃をお願いするのじゃ。
水の精霊のを呼び出し破魔の祈りを乗せた歌で対抗して皆を元気付けるかの。
精霊よ!安寧の歌を!
「属性攻撃」「騎乗」「誘導弾」「援護射撃」使用
あとは譫言に対抗する歌を歌いながら爆風を込めた矢による騎射で援護射撃をするかのう。
口を狙い口内で爆風を開放する事で口を使えなくするのじゃ。
「蛇神様の実力、思い知らせちゃうんだからっ! やっちゃえ、蛇神様っ!!」
そんな蛇塚・レモンの声が、今もビュッフェ形式で料理が置かれているホールに響く。
彼女のユーベルコード【戦闘召喚使役術式・崇めよ、偉大なる白き大蛇神様を(バトルサモンコード・メドゥーサ・オア・アイギス)】の力に寄って、料理が並ぶ空間ごと結界が形成され、その場にいる猟兵達の力を強化していく。
無論、戦う相手は、このホールにおいても存在する『それ』ら。
そうして共に戦う友は、琥珀川・れにとエウトティア・ナトゥアの二人である。
彼女らの主な役割であるが、蛇塚は味方の補助を担当している。彼女は自らのユーベルコードを発動するや、次に蛇腹剣クサナギを振り回し、その軌道を自らの念動力に寄って縦横無尽のそれへと変える。
「ううー! 何だかごちゃごちゃ五月蠅いみたいだから気を付けてね、二人とも!」
蛇腹の剣により、『それ』らが一斉に襲ってくる事を防ぐ蛇塚。一方、『それ』らの声は牽制出来ないから厄介だ。さすがに剣では声までを切り裂く事が出来ない。
「確かにこれは五月蠅い……合唱になったらもっとだ。なら、とりあえず、一体一体減らしていく事から始めようか」
そう宣言するのは琥珀川であった。彼女はすぐさまユーベルコード【ブラックガイスト】を発動するや、自らを殺戮捕食態へと変化させていく。
『それ』らに劣らぬ威圧感のある姿へと変化する琥珀川。凶暴そのものな姿のまま、まずは一体、琥珀川は『それ』を飲み込む。が……。
「うう……なんでこんな、美味しそうな料理が並ぶ場所で、こんなグロテスクなのを取り込まなきゃいけないんだ……」
そういう戦い方なのだから仕方ないのであるが、気分はとても悪くなる。『それ』らが現れてから戦い続けている彼女であるが、肉体的なダメージより、今は精神的なダメージが大きい気がする。
琥珀川は三人の中で、積極的な攻撃を役割としているが、攻撃する度に、何かこう……嫌な気分になり続けていた。
「キモイ故、そうなるのも仕方ないことじゃのう。どれ、わしが多少、マシにしてやらなくてはな。精霊よ!安寧の歌を!」
最後のエウトティアは回復の役割だ。ユーベルコード【細流の調べ(ササラガワノシラベ)】により、その歌声で琥珀川の気分を癒す。いや、肉体の方も勿論だが、今はやはり精神的な部分が優先だろう。
(言っちゃあれじゃが、何かを吐き出されてもたまらんしのう)
『それ』を取り込み続けている琥珀川。主に打撃力担当の琥珀川。彼女が戦闘不能になれば、他二人は危機になるから、琥珀川には是非頑張って貰いたいところであった。
「あああ!! けどけど、声も合わさって、やっぱり気分がぁ!」
生真面目に戦い続ける琥珀川であるが、遂には愚痴を叫び出すまでになっていた。かなり限界ギリギリなのだと思われる。
「あっ、そうだ……これ、元は人間なんだよね……平穏に、幸せに過ごしていた人たちで……うん、うん。分かる、その気持ちはとても分かるし……そういうのを僕は取り込んで……」
「いかん! レニー殿がかなりのブルーに入りおったぞレモン殿!」
「多分、メンタル的な部分に、あいつらの声も合わさって、想像以上に追い詰められてるのかも……」
戦い続けてはいるが、あからさまに動きが鈍くなってきている琥珀川。それを見て、他の二人はどうにかしなければと考え始めた。
「まずはあの声を何とかしよう、ティアさん!」
「了解じゃ! レモン殿はわしの代わりに歌ってくれ」
「ええっ!? あたいが!?」
戦場のアイドルを自負する蛇塚であるが、エウトティアの様な、ユーベルコードとして癒しの力を持つ歌は唄えない。
「やつらの声を多少は聞きづらくする程度で良い! 代わりにわしは……」
エウトティアが手製の短弓より風の力が込められた矢を放つ。狙うは『それ』らの胴体では無く口元。声を発する器官に矢を飛び込ませ、込められた風の力により、発声出来ない様にしていく。
倒し切るまでの威力は無いが、声を防ぐ事は出来るだろう。それでもすべての声を消すには、一体一体を狙って行かなければならないため、そこは蛇塚の歌でカバーだ。
「幾らか、気分が向上してくるじゃろ、レニー殿!」
「な、なんとかね……ごめん」
再び戦うため、姿勢を立て直す琥珀川。他二人の援護は上手く行っている様だ。
「謝らなくたって良いよ、レニーさん! あたい達は仲間でしょ?」
「あ、ごめん。歌やめないで。またあの声が頭に響き出して、気分がブルーに……」
「大変じゃん!?」
慌てて蛇塚が歌い出す。チームプレーは上手く行っている方だが、かなり危ういバランスの上かもしれない。三人は三人とも、現状をそう考え始めていた。
(つまり……一刻でも早くこの夜を終わらせないといけないってわけか)
殺戮捕食態のまま、『それ』を打倒し続ける琥珀川もまた、焦りを禁じ得ない。
他の場所にいる猟兵達はどうだろうか。こいつらを上手く倒し切れているだろうか。
「やれやれ数の多い敵を、バラバラに倒していくというのは、どうにも苦労する事じゃのう……」
「~~♪」
矢を放ち続けるエウトティアも、歌い続ける蛇塚もまた、危機感を覚え始める。そうして心のどこかで祈っていた。そろそろ、このホテルの寄るも終わりますようにと。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
テオドア・サリヴァン
「誰も気づかないうちに侵食されてきたのか…」
なんて、恐ろしいものなんだ。だが、こいつを消さなければまた同じことが起きる…!
気を引き締めて戦うとするか。「忍び足」で奴の背後から近づき突き刺す。そのあとに「傷口をえぐる」ぞ。「妖剣解放」で更に斬撃を加えるか。敵の攻撃に対しては「見切り」で避けよう。
「こんなに恐ろしいものがいるというのか…」
俺が今まで戦ってきたどの敵よりもこいつが1番恐ろしいぞ…
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
ふぅ、ホテル中走り回る羽目になったけど…うっわあ何あのグロいの…
え、何?敵が水と同化してて?人間をあんなのにして?逃がしたらまた同じようなことが起きる?…なにその大惨事。
…ま、やること自体は単純ねぇ。一匹残らずブッ飛ばせばいいんでしょ?
考えること少なくなって楽でいいわぁ。
なんか体中堅そうねぇ…
けど、人型ならいくらでもやりようはあるわぁ。近づいて殴る以外に攻撃手段もなさそうだし。
〇クイックドロウから〇鎧無視攻撃の●封殺を四肢狙いの〇スナイパー〇先制攻撃で撃ち込むわぁ。
液体に戻るんならそれこそ好都合。
氷結系〇属性攻撃の弾丸で固めちゃえば、後はどうとでもなるわよねぇ。
西園寺・メア
これがこのホテルでの怪奇現象の真実ですか……
私もこれになりかけていたと思うと背筋がぞわぞわして嫌になりますわね
■戦闘
トライアンフ・アーチでがしゃどくろをトレース操作して戦う
呪詛で強化した鎧砕きで叩き潰して動けなくなった敵を丁寧にブレイズフレイムで消し炭にしますわ
一滴でも残したら大変ですし、一般人が犠牲になるのはつらいですし、とメアなりにお嬢様の気概を見せる
ホテル内のとあるバー。長く続く夜の中、常に休業中であった暗いバーの中で、テオドア・サリヴァンは呟く。
「誰も気づかないうちに侵食されてきたのか…」
外の様子を伺いつつのその発言。バーの外でうろつき続ける『それ』らを見た感想が、そんなものであった。
「はいはい。驚いていないでお仕事をしましょ? こうなった以上、何時までも優雅にカクテルを飲んでくつろいではいられないわよぉ?」
そう言うティオレンシア・シーディアであるが、彼女は彼女で、優雅そうにカウンターの向こうに立ち、グラスを磨いていた。
「くつろいではいないだろ……驚いているし……他の客の看病だってしている」
ティオレンシアの言葉に寄り、外を伺う事を中止したテオドアは、視線をバーの中へと移す。
前までは一人のマスターと二人の客だけしかいなかったこのバーであるが、今は千客万来状態だ。
もっとも、客の大半は気を失った様に倒れている。ホテル内にいる『それ』にならなかった人間達の多くが、このバーに運び込まれているのだ。
「看病と言っても、横にして見守っているだけなんだから、暇ではあるでしょう?」
「実際そうだが、面と向かって言われたくはない台詞の何位かにはなるな、その言葉は」
「はいはい。愚痴っていないで、ほら、次は来たわよ?」
ティオレンシアはバーの出入口に視線を向ける。その扉が開かれるや、人間を二人程かついだ金髪の少女が姿を現す。
「えいしゃおらぁ! ですわっ」
と、金髪の少女、西園寺・メアはお嬢様としての気概を発揮して、バーの中にかついだ人間二人を放り出した。
「おおい!? 投げるな投げるな!?」
放り出された人間二人を慌てて支えるテオドア。すぐにバーの空いた場所へ、その人間二人を横たわらせた。
「あらあら、力持ちねぇ、お嬢様?」
ティオレンシアが現れた西園寺を見つめながら話し掛ける。西園寺の方はと言えば、胸を張りながら頬に手の甲を当てながら返事をした。
「別に、わたくしが持ち上げていたわけではありませんのよ?」
西園寺の発言を聞いて良く見れば、彼女の背後に彼女の二倍の大きさはある髑髏が立っている事に気が付く。
髑髏は彼女と同じポーズで立っており、人間二人を抱えていたのはその髑髏の方であったらしい。髑髏が西園寺の動きをトレースしているため、西園寺が人を担いでいる様に見えたという事だ。
「とは言え、働いてくれている事は事実だわぁ。ちょっと休憩でもして行かない?」
言いながら、ティオレンシアは磨いていたグラスに、ミネラルウォーターを一杯入れて西園寺に差し出す。
その差し出されたグラスを西園寺は暫く見つめ……そうして首を横に振った。
「このホテルの中にある水は、あまり良い気分にならないと思いますから、止めておきますわ」
「あらあら。多分、普通の水よ? これ」
分かってはいるが、気分の問題だと西園寺は考える。
西園寺の方は、このホテルの異変に対して、早々に気が付いており。その異変の原因に対しても、大凡検討が付いていたところもある。故に、ホテルの水には敏感に反応してしまう。
まさか屋上のプールの水がどこにでも存在しているとは思わないけれど、それにしたって、猟兵ですら惑わされる力がこのホテルにはあるのだ。
「事が起こってしまった以上、ゆっくりするのは、事が終わった後にしておきますのよ。こうやって倒れている人の救助もまた、どんどん行っていかなければ」
西園寺が行っている事はつまり、積極的な人命救助だった。『それ』らを撃滅する事も優先するべきだが、『それ』らの習性もまた、警戒するべきだと考えていた。
「あれは人を喰う習性もあるらしいな」
運び込まれた人間の体勢を整えつつ、テオドアが呟く。
『それ』らの禍々しさ。その理由の一つがそこにある。『それ』らが人を取り込む事によって、これだけの数に増加している以上、『それ』らには人を喰らう事によって、力を増幅させる習性があるのだと分かる。
「倫理的な部分でも、実質的な部分でも、一般人が巻き込まれない様な状態にする事は最優先ですわっ。わたくし、そう思いますから、またさっそく救助に向かってみますの」
「あらそう? けど、それは少し待った方が良いわ?」
ティオレンシアは言うや、素早くどこからかリボルバーを取り出し、西園寺の方へ向けていた。
「……あなた、どういう―――
西園寺の言葉を聞き終える前に、ティオレンシアは引き金を引いた。
飛び出した銃弾はまっすぐと、狙いを外れず、西園寺の……その横を通り抜け、彼女の背後に立っていた『それ』へとぶつかった。
「後ろにいる敵に気が付かないくらいに、あなたも消耗している。本当に、少しくらいは休んだ方が良いんじゃないかしら?」
「まあ……確かにその通りかもしれませんわね」
すぐ傍を銃弾が通り過ぎた事に対する驚きと、また、何時の間にか背後に迫っていた『それ』の死骸を見つめる事に対する動揺に、西園寺は休憩の必要性を漸く感じた。
「まあまあ、安心しなさい。あなたの代わりに、こっちのお客様が救助に向かってくれるらしいわぁ」
「そのお客様というのは、もしかして俺の事か、マスター」
「他に誰が?」
それではお客様気分で居られないではないか。そう返したかったが、彼女が構えるリボルバーが怖いため、止めておく事にする。
「わかりましたわ。そこのあなた。わたくしの代わりに、精一杯頑張ってくださいましね?」
「あー……人助けと言うのなら、そりゃあ頑張らせて貰うがな。本当にお客様気分でいられないなぁ」
ぼやきながら、足をバーの出入口へ進ませるテオドア。
「あ、ついでに、扉の前の『それ』も、片付けておいてくれないかしらぁ?」
「あんたが倒したんだからあんたがやって……いや、何でも無い……」
やはり、ティオレンシアが手に持っているリボルバーが怖いテオドアは、言われた通り、『それ』の死骸を脇に退けながら、他の倒れている人間の救助に出掛ける事にする。
(世の中には恐ろしいものがたくさんいるな)
その考えは、『それ』に対するものか、それともティオレンシアに対するものか。
どちらとも決めつけないまま、テオドアは忍び足で進む。ついでにバーの前。その近くにいた『それ』の一体を自らの妖剣で切り裂き、文字通り“掃除”しながら、やはり前に進む。
「ああ、恐ろしい。こんな夜は、さっさと終わらせるに限る」
そうして今度は、もうちょっとマシなバーで一杯やろうかなと、テオドアはそんな事を考えていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アレクシス・アルトマイア
やっと正体を表してくださいましたね。
正直、何をすべきかはっきり分かってほっとしています。
お礼でも言っておくべきでしょうか……
皆さんと協力して、どうやら礼儀も知らない様子のそれを撃ち払って行きましょう。
殲滅すれば良いようですので、ユーベルコードも惜しみなく使って行きましょう。
それにしても、どこからいらっしゃったのでしょうね、この方?たちは。
少し、あなた方のことに興味はありますが…
残念ながら、
あなた方に取り込まれるカタチで知るのは、ご遠慮申し上げます。
容赦なく2丁拳銃や短剣でばんばんずばーっと倒してしまいましょう。
周りの人のサポートもしっかり行ってまいりますよ。
祇条・結月
こうやって、気づかないうちに僕らの世界が侵略されてる、ってことか。
ここはお前たちの「居場所」じゃない。不躾な人たちは鍵をかけて、締め出しておかなきゃ。……なんて、ね
まだ助かる人がいるなら救助が必要もあるし、打って出るよ。
結構頑丈そうだけど【スナイパー】で刃物が通る箇所を狙って苦無を【投擲】、星の彼方の生物でも四肢で動いている以上ダメージは無視できないだろ? 動きを止めて、確実に仕留めていく。ひとりも、逃がさない
味方の猟兵と共闘になる場合は【援護射撃】もこなしていく
……こういうのは、苦手だ。
だけど。君たちが誰かの居場所を奪うのはもっと嫌だから。
……大丈夫、戦える。
アルトリウス・セレスタイト
さて、俺の大道芸がどの程度通じるものやら
まずは手数を確保
臘月で分体を喚び各所へ三人程を組にして送る
以後の行動指針は本体・分体ともに同じ
そして試し
魔眼・円環で正常な状態へ復元できないか試行
成功するなら視認した対象を片端から復元
できないなら魔眼・掃滅で消去
視界に捉えた対象を纏めて消し飛ばす
少なくとも残りはするまい
合間にまだ変じていない者を保護し回廊で安全な場へ送り込む
助かるなら助けておく
助からない者へは概ね、運がなかったという程度
何れにせよ拘るでもなく、反応は薄い
「どうして、夜を繰り返しているのか……ですか?」
ホテル内で『それ』らの掃討を続けている猟兵達の中で、アレクシス・アルトマイアが尋ね返す。
彼女に質問を投げ掛けたのは、祇条・結月であった。彼は自身の苦無を宙に投げ、それをまた受け止めるという仕草を続けながら、再び尋ねる。
「こうやって、気づかないうちに僕らの世界が侵略されてる……それは分かった。けど、なんで夜なんだろう?」
その問い掛けはアレクシスだけに向けた物では無く、もう一人、アルトリウス・セレスタイトにも向けられていた。
三人はホテルの廊下を歩き、そうして『それ』を見つければ倒すという行為を繰り返しているのであるが、それと同時に、このホテルを襲った現象そのものについても考えを続けていた。
「夜をどうして繰り返しているか……か。確かに、どうして夜なのかは謎だな。どうやっているかについてはもう仕組みが分かって来ているが」
「まあ、本当に?」
アルトリウスの言葉に、アレクシアが驚く。三人揃って、『それ』を倒し続けているが、アルトリウスにはそこからさらに踏み込む余裕があるらしかった。
「さっきから、俺の分体をあちこちに送っているのは知っているだろう?」
アルトリウスのユーベルコード【臘月(ロウゲツ)】は、アルトリウスと同じ姿、同じ装備、同じ技能を持つ分身を生み出すものだ。
彼はそれを使い、本体はアレクシスと祇条と共に戦いながら、分身をあちこちへと送り込んでいた。
それはどういう目的かと言えば……。
「出来れば、俺の魔眼で、あの成ってしまった人間達をどうにか出来ればと思って、他の分体に調べさせていたんだがな」
「それは……」
祇条は、アルトリウスの試みがどうなったかについての予想が付いてしまう。『それ』を元の人間に戻す事は出来ない。それが出来れば、そもそもこうやって、三人で『それ』を倒し続けてはいない。
「まあ、気落ちなぞせんさ。助けられないと分かれば、倒す事に専念すれば良い。だが一方で、分かった事もある」
アルトリウスは言いながら、自らの目を指で示す。
「俺の魔眼・円環は、望むものを元の状態に戻そうとする力を持つ。化け物連中を元に戻す事は出来なかったが……分体の内の何体かがホテルの外を窓なんかから見たところ、元の状態の外が映っていた」
「それって……つまり、夜が続いているのはやはりホテルの中だけだと?」
アレクシスが聞いたところ、アルトリウスは頷いた。
「ああ。幻覚というよりは、薄い膜でホテルの周囲が覆われていると言う表現が近いか? つまり、その内側にいる限りにおいて、夜を見せつけられる事になる」
「なるほどね。まさしく僕達はこのホテルに飲まれてる状態ってわけだ」
苦無を投げてはまた掴むを繰り返しながら、祇条は呟いた。そうして何度目かのキャッチの後、それを無造作に投げつける。近くに現れた『それ』へと。苦無は勿論、『それ』の喉へと突き刺さる。
「あらあら」
怯む『それ』に対して、続くアレクシスが黒いナイフをまた投げつける。アレクシスが、祇条が、それぞれに投げつけるその刃物に、身体全体を突き刺され、遂にはハリネズミの様になった『それ』が倒れた。
半ば自分が作り上げたその光景を見つめながら、祇条は呟く。
「……こういうのは、苦手だ」
「それは、何かに飲まれている状態か、それとも、人であったコレを倒す事か?」
「どっちもだよ」
アルトリウスの質問に答えながら、倒れた『それ】を見つめ続ける。それでも、それでもだ。まだ戦えると祇条は心の中で呟いた。居場所を奪われるのはもっと嫌いだ。だからこそ戦う。
「……」
歩きながらも、暫しの沈黙。少しばかり雰囲気が悪くなってきた。
そんな空気を、一旦晴らす様に、アレクシスは口を開く。
「繰り返す夜は、ホテルを包む薄い膜。なんだかそれって、巣……みたいですよね」
そんな単なる印象を、アレクシスは呟いたつもりだった。単なる空気の入れ替えだ。だが、他の二人はその言葉に引っ掛かりを覚えたらしい。
「そうか、このホテルは奴らの巣。やってくる餌を飲み込んで、ゆっくりと育って行き……」
アルトリウスのその言葉に祇条は続く。
「何時かは……巣立つ!?」
もしかして、この先があるのか? 『それ』らが溢れ出したホテルの中において、さらにその先があるのか。そんな祇条の焦りは、アレクシスにも伝染していく。
「あ、あのあの。私達がこうやって一体一体倒している以上、そういう状態にはきっと、ならないはず……ですよね?」
「……」
尋ねられたアルトリウスであるが、問いには答えない。いや、想像できない以上は答える事が出来ないと言う方が正しい。
「分体をもっと増やして、情報を集めた方が良さそうだ。出来れば、他の猟兵とも情報の共有がしたい」
「それは名案ですが……そうも言っていられないみたい……です」
アレクシスはそう言いながら、フィアとスクリームと名付けられた二丁の拳銃を構える。
他の猟兵を気にしてもいられない。戦う必要性が出て来てしまう。
まるで、アレクシス達の話でも聞いていたが如く、三人の周囲に『それ』が集まり始めていたのだ。
「最初から、このホテルは奴らの中。なら、中で起こっている事も、大凡は観察されていたのかも……」
祇条もまた苦無を構えた。他の二人に背中を預け、目の前の『それ』へと、今にも飛び掛らんばかりだ。
「どうして、夜を繰り返しているか……だったか?」
最後にアルトリウスは、最初に尋ねられた質問とまったく同じ言葉を口にする。
「何となく、分かった気がするよ。夜は……奴らの領域だから、夜を繰り返しているんだ」
祇条は自身で、その答えを導き出した。
居心地の良い場所で、じっくりと育つ。それがこいつらのやり方だとすれば、このずっと続く夜は、奴らの領域だと言う事。
「でしたら! ―――やるべき事は決まりましたね」
一発、拳銃から銃を放ち、『それ』の眉間に銃弾を叩き込みながら、アレクシスは宣言する。
『それ』らはきっと、夜が続く場所からやってきた。太陽の昇らぬ、暗い場所からこの世界に、染み入る様にやってきた。
そうして自分達の様な存在に牙を剥く。そんな相手に、やるべき事は一つだけ。
「日の光を取り戻してやりましょう。あなた達にとって、この世界はそんな住み心地の良い場所ではないと、しっかりと理解させてあげましょう」
日の光には足りぬマズルフラッシュを輝かせながら、アレクシスは戦いを始める。
「確かに、ここは奴らの居場所じゃあない。僕らの場所だ」
「さて、俺の大道芸がどこまで通じるものかな?」
祇条とアルトリウスもまた、『それ』相手に戦闘を始めた。このホテルに、日の光を取り戻すために。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
夷洞・みさき
やらかしてしまった…かな。
まぁ、支配人が出てきたのは僥倖と思っておくかな。
ここの名前は君が?それとも元からだったのかな。
でも、『邯鄲夢』とは似合いすぎる事をしていてくれたね。
腹に収めたつもりかもしれないけど、毒魚っているんだよ。
【WIZ】
一体一体相手は大変だからまとめて潰そう。
【恐怖】には自身に釘を刺し正気を保つ事で【呪詛耐性】とする。
水を装った君へ、海の【恐怖】を見せてあげよう。
【UC】にて可能な限りの敵を海水に捕えて【呪詛】を込めた車輪で【踏みつけ】潰す。
君が此処に来たのは偶然だったのかもしれない。
君もこのホテルに呼ばれた口だったりしたのかもしれないね。
己の名を真実にするために、なんてね。
虚偽・うつろぎ
わおー、そうきたかー
いっぱい居るのは良いのだけど何ヵ所にも散らばっているのはやりづらいね
とりあえず数が多そうな所で自爆ってくるかー
場所はまずはプール
他の仲間の活躍でプールいる敵が少なくなっているようなら
他の敵が多そうな場所を探してくるよ
あまり時間は掛けれないから5分以内で移動できる範囲に絞っておくね
巻き込む数は多ければ多いほど良いけど
いつ攻撃を実行するかは直感で決めちゃえ
5分はあくまでも目安なので5分待つ必要はなし
見つけた敵に向かって全力ダッシュそしてダイブして自爆
技能:捨て身の一撃でのジバクモード
対象は範囲内の敵全て
敵の姿を見つけるとダッシュで飛び付いて自爆する質の悪いモンスターみたいな感じ
黒川・闇慈
「さて、そろそろ夜も終わりといたしましょうか。このホテルにいたままだと趣味の研究が滞るので」
【行動】
wizで対抗です。
まずは高速詠唱の技能でUCを使用し、超アストラル体で相手の攻撃に備えましょうか。相手のUCがもたらす恐怖は覚悟の技能で軽減いたしましょう。
攻撃に転じる際は全力魔法の技能を活用してアストラルレーザーを発射します。
『我が身を星幽の彼方へ解き放たん。秘された神秘を今ここに、アストラル・ハイ』
「明けない夜はないということですねえ。もっとも、あなたは朝を迎えられないのですけれども。クックック」
【組み合わせ・連携・アドリブ歓迎】
猟兵達がホテル内で『それ』らを倒し続けている頃、最後の変化がホテルの屋上に訪れていた。
「やらかしてしまった……かな?」
その変化を見つめながら、夷洞・みさきが言葉を発する。
その言葉を向けられた黒川・闇慈は変わらず笑っていた。興味深い状況がずっと続いているのだ。愉快な気分にはなってしまう。
「実験などは、むしろそのやらかしが大切だったりしますよ? ですが、それでも、そろそろ終わりにしたいところですね。ああもなられては、こっちの身がもたない」
屋上のプールから直接に変じた『それ』ら。ホテル内の個体が、その姿で猟兵達へ襲い掛かっていたのに対して、プールから現れた『それ』らは、次の変化へと至る。
複数の『それ』らが、共に喰らい合い始めたのだ。
「数を減らしてくれて結構と思っていた僕は、かなりの楽観主義者だったかな?」
「さて、これからどうするかに寄ると思いますが?」
言葉を交わし合いながら、最後の変化とやらに対して、猟兵二人は動き出す。喰らい合う中で、その質量を二倍にも三倍にも増した『それ』らは、一体の巨大な化け物へと変じたからだ。
ホテルの屋上が狭いと感じる程の巨大さ。黒川達の優に五倍はある体格を持った、巨大なUDC『星辰の狂気』は、猟兵二人をまとめて振り払う様な軌道で、その腕を振るって来た。
「これほどの大きさで、この屋上では逃げ場もありませんね……」
『星辰の狂気』の攻撃に対して、猟兵二人の取った行動はそれぞれのものであった。
『我が身を星幽の彼方へ解き放たん。秘された神秘を今ここに……アストラル・ハイ』
黒川がやった事は、その攻撃に耐える事。勿論、やせ我慢でどうにか出来る攻撃ではない。故に黒川は高速詠唱により自らのユーベルコードを発動している。
【アストラル・ハイ】というその力は、自らを超アストラル体へと変化させるもの。この状態になれば、あらゆる攻撃に対して、肉体への影響が鈍化する。代わりに自分の寿命が減じるという副作用があるものの、些細な事だろう。
『彼方より響け、此方へと至れ、光差さぬ水底に揺蕩う幽かな呪いよ。我は祭祀と成りて、その咎を禊落とそう』
一方の夷洞は、『星辰の狂気』の攻撃そのものを鈍らせる事で攻撃を防いでいた。その力の正体は【浸食領海・潮騒は鳴り響く(シンショクリョウカイ・ワタツミ)】。自らの足元より周囲を侵食する海水が、夷洞を守るかの様に広がり、『星辰の狂気』の腕を受け止めていた。
「やれやれ。ホテルの支配人が出て来てくれた事は僥倖だが、こうも酷い姿とはね? このホテル……『邯鄲夢』だったかい? その名前の割には、最後に待っているのは悪夢じゃあないか」
喋る夷洞を、海水が尚も守っているものの、徐々にその形が崩れ始める。『星辰の狂気』の攻撃は、その威力も見た目相応らしかった。
(まったく、このままだとじり貧かな? どうにか状況を動かさない……と……?)
夷洞はこんな状況だと言うのに『星辰の狂気』から視線を外してしまう。丁度、その大きな頭部の横に、もっと奇妙な何かを見つけてしまったからだ。
「ゴッド……うつろぎ……アタァアアアアアク!!」
空飛ぶ黒い液体。それはそうとした表現できないのであるが、人間の言葉を発していて、まっすぐと『星辰の狂気』の頭部へと向かい、そうして自爆した。
「こ、これは……!?」
さすがの黒川も動揺する。空飛ぶ黒い液体こと虚偽・うつろぎが、突如として現れ、突如として『星辰の狂気』へと近づき、自爆し、しかも『星辰の狂気』の上半身ごと吹き飛ばしたとあれば、そうもなる。
「おおぅ……我、最大のピンチは、我、最大の勝利。HPは残り1かもしれないが、その活躍は今宵一番かもしれないねっ」
べちゃりと屋上へと落ちるうつろぎであるが、余裕があるのか、まだ軽口を叩いていた。
「ええっと……心強い援護に感謝……すれば良いのですかね?」
黒川が尋ねると、自慢げにうつろぎが身体を震えさせる。
「我、すごいでしょ? すごくない? 美味しいところ一気に持って行ってしまった感じで……うん。何か、そうなる気はしてた」
うつろぎが上を(見上げる首も目も無いが)見ると、空が歪んでいた。
星々が瞬くその夜空が大きく歪み、星々が落ちて来ていた。
まるで星々の絵が描かれた幕が、そのまま下りて来る様な、そんな歪み。歪みの先端は、うつろぎに上半身を吹き飛ばされた『星辰の狂気』へと向かうや、その身体をも歪ませる。
歪みは空間の捻じれの様にも見えたが、徐々にその捻じれも解消していく。
だが、元通りの状況に戻るわけでも無かった。いや、さらに前の状況に戻ったとも言える。吹き飛ばされたはずの『星辰の狂気』の上半身が、無事の状態となっていたからだ。
「再生能力持ちかい? これはいやはや……厄介この上無しだねぇ」
夷洞が呟く中、再び戦いが始まってしまう。肉体を再生させた『星辰の狂気』は、再びその四肢を振り回し、屋上にいる外敵たちを弾き飛ばそうとし始める。
「きゃあ! ぎゃあ! HP1だって言ってるじゃん! 攻撃が当たったら我、死んじゃう! うつろぎ探険隊の冒険がここに終わってしまう!」
「……ふむ」
黒い液体にも一分の命でもあるのかと、興味を持った黒川は、咄嗟にうつろぎを抱えると、超アストラル体の身体で『星辰の狂気』の攻撃を避け、時にはうつろぎを庇う。
「えっ……ユー、もしかして我の事、お気に入りにしちゃってる?」
「いえ、もう一度、あの自爆を使えませんか? さっきのあれは、十分な威力があった」
「僕の話聞いてた!? HP残り1だって言ってるじゃん!」
「トドメはあの一撃に任せたい。あの再生する力については、私達が何とかしまよう」
「お願い、話を聞いて!」
うつろぎの返事を無視しつつ、遂にはそこらに放り出し、黒川は次に、攻撃を掻い潜りながら、夷洞へと近づいた。
「話を聞きましたか?」
「僕らであの化け物の再生能力を奪おうって言うんだろう? けど、タネが分からなければ肯定は出来ないよ?」
「あの再生能力は、無限のものではない。空を見上げてみてください」
言われて夷洞はちらりと空を見上げた。そこには変わらない夜空が映り……そうして、その夜空が薄っすらとしている様にも見えた。
「色が……薄い?」
「どうやら、再生する度に、彼らはあの夜空を失うらしい。つまり……とても単純な理屈です」
「なるほど。攻撃を仕掛け続ければ、何時かは力尽きてくれる」
夷洞は納得し、ここが反撃のタイミングだと判断した。敵の攻撃を避け、受け止めるだけの時間なんて退屈だ。やはり全力をぶつけてこその猟兵だろう。
「さっそく始めようじゃあないか。そっちは僕達を腹に収めたつもりかもしれないけれど……毒魚だっているんだよ?」
夷洞のその言葉と共に、空間に大きな車輪が現れた。人間大の大きさの車輪であるが、巨大な『星辰の狂気』に対してはやや小さい気もする。
だが、それでも打撃力となる質量。そうして、先ほど放った海水と共に夷洞がたっぷりと込めた呪詛付きだ。
そんな凶悪さを一気に『星辰の狂気』へと叩き付け、曳き潰そうとする。
そんな車輪に寄る攻撃への援護とばかりに、黒川もまた、その身からレーザーを発し始める。
「な、何その体……すごく便利じゃない?」
「どんどん寿命が削られて行くのですが、それでもよろしければ教えてさしあげますよ?」
「え、えんりょしておこう」
うつろきの軽口を軽口で返しつつ、黒川は止まらず『星辰の狂気』へと攻撃を加え続ける。
車輪に潰され、レーザーに焼かれ続ける『星辰の狂気』。そうして再び、夜空が歪む。歪みは『星辰の狂気』を包み込み、再びその肉体を再生させ始めるも、猟兵二人の攻撃は止まない。
夜空を歪ませて再生を続ける『星辰の狂気』を、限界まで追い詰めて行く黒川と夷洞。
変わらぬ光景が続くと言えるだろうか? いや、この瞬間にも、夜空の黒はどんどん薄らいでいく。
その光景はまるで、これから夜明けを迎えるかの様であった。
「君が此処に来たのは偶然だったのかもしれない。君もこのホテルに呼ばれた口だったりしたのかもしれないね。己の名を真実にするために……けど、夢は夜明けと共に醒めるものさ」
「明けない夜はないということですねえ。もっとも、あなたは朝を迎えられないのですけれども。クックック」
黒川と夷洞。二人は確かに、このホテルの夜が、漸く明けるのを感じていた。
太陽の光が、漸く屋上へと降り注ぐ。
このホテルに続いた夜が、今、漸く終わろうとしている。
だが、まだ『星辰の狂気』は終わっていない。
「ぐっ……やはり、二人であれば一歩足りませんか」
黒川が膝を突く。既に夜の帳は掻き消えて、太陽が照らす青空が姿を見せる。だが、そんな空の下において、未だ『星辰の狂気』はまがまがしい姿を晒していた。
レーザーに寄る攻撃が止まったと見るや、次に夷洞の歯車を腕で払いのけ、残った三人の猟兵を踏みつぶそうと足を上げてくる。
「さあて、お膳立てはしておきました。美味しいところを一気に持っていく時ですよ」
「や、やっぱり我の出番かぁ……」
だが、躊躇している場合では無いとうつろぎ自身も感じている。他の二人の猟兵は、さらなる攻撃の手段が無い様子。動ける猟兵は、HP1の自分のみ。
「や、やってやるさ。やってやるよ! あ、けど、やっぱりちょっと―――
「さあ、最後は派手な目覚めと行こうか」
「あ、ちょっと、やめて。掴まないで!」
うつろぎの発言を無視して、夷洞はうつろぎを掴み、そうして『星辰の狂気』へと投げつけた。
再び『星辰の狂気』の頭部へと向かう事になるうつろぎ。覚悟を決める時がやってきた。
「え、ええい! ゴッドうつろぎ……セカンド……アタァアアアアアック!」
その叫びと共に、うつろぎは二度目の自爆を敢行する。
爆発の威力は十分。HP1も捨てたものではない。そう感じさせる威力は、再び『星辰の狂気』からその肉体を削り取り、そうして……。
屋上を日が照らす。
その夜が明けてしまえば何とも無い。夜明けどころか真昼の光が、直上から降り注ぐのを猟兵達は感じていた。
長い、とても長い夜は終わったのだ。
UDC『星辰の狂気』の侵食はここに終わる。
だが、猟兵達の仕事は終わらなかった。
『星辰の狂気』の本体らしきものを倒し、他の『それ』らも活動を停止するも、その破片やら死体やらは残ったままだ。
それらを完全に焼却か消滅させるまで、猟兵達の仕事は終わらない。そこまでしなければ安心できやしないのだから仕方ない。
そんな仕事の中で、猟兵の誰かが呟いた。
「やれやれ、せっかくの高級ホテルだって言うのに、最後にするのは清掃役の仕事か。現実なんて世知辛いなぁ」
長い、長い夜が明けて、目を覚ます者が待っているもの。それはそんな現実なのかもしれない。
「けど、それでも、夜ばかりの夢よりはマシか」
そんな事を呟きながら、猟兵はまた仕事を再開する。夜では無く、昼間からの、忙しい仕事であった。
大成功
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