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要塞の|雷棲滅鬼悪《ライスメキア》

#アヤカシエンパイア #銀の五月雨 #熾盛

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●対妖要塞
 簾の奥にある気配は、ただそこに在るというだけで後光差すようであった。
 事実、眩いとさえ亜麻色の髪をした男装の麗人たる平安貴族『皐月』は頭を垂れながら思ったかもしれない。
「……御身を狙う妖がある、と」
「はい。近々妖どもとの大きな戦が、この地でおきましょう。あくまで予測です。この事態に坂東武者『世羅腐威無』だけで対処するのは難しい、と」
 簾の奥にある止事無き気配に『皐月』は申し訳無さが先に立つ思いであった。
 先の東国遠征における妖との戦いで、多くの坂東武者たちが傷ついた。
 彼らは傷こそ癒えているが、有事にあってこの地に戻せる数は知れている。未だ東国では平安結界の揺らぎが観測されている。
 予断を許さぬ状況であることは言うまでもない。

「東国の『世羅腐威無』を呼び戻しても、でしょうか」
「なりません。私の身一つのために東国の守りをおろそかにすることは」
 それでは本末転倒であると簾の奥の止事無き方は言う。
『皐月』は、彼女がそう云うであろうと理解していた。如何に止事無き身分、血筋であれど、彼女は己が身を優先しない。
 己が身が妖の囮になるのならば、その身を喜んで差し出すであろう。
 最早彼女が皇族としての重責に囚われる必要はない。
 だが、彼女はそれを是としないのだ。

「あなたの力を過小に思っているわけではないのですよ、『皐月』様。ですが、あなたの報告にもあった……第六の猟兵。かの御方たちの力をお借りできないかと思うのです。迫る妖の災厄が我が身一つ失うだけであったのならば、あの御方たちの手を煩わせるまでもありません。ですが」
「それは――!」
「その通りなのです。我が身に流れる血は」
「なりませぬ。どうか、御身を」
「……では、頼めますか」
『皐月』は頷く。
 簾が僅かに上がれば、そこから差し出されるは一つの文であった。
「どうかこれを第六の猟兵の皆様方へと届けてください。一騎当千たるつわもの。彼らの力が必要とされているのです」
「拝命致しました……|『雷棲滅鬼悪』《ライスメキア》様……いえ、『永流姫』――」

●ヤカシエンパイア
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます」
 彼女はそう言って一つの文を広げた。
 なんだ? と猟兵たちが首を傾げるのを見やり、ナイアルテは頷く。
「アヤカシエンパイアのとある止事無き御方からのお手紙です。これによると、この御方の住まうお屋敷が近く妖との大きな戦いの場になるであろうとのこと」
 つまり、オブリビオンである。
 その戦いが彼女の予知よりも早く予測され、こうして猟兵へと接触を試みられたのだという。

「平安貴族の邸宅とはつまり、強力な陰陽師による『対妖要塞』であるのです。ならば、この邸宅にこもっていれば、と思われるかも知れませんが……どうやら、この邸宅、防御は鉄壁なれど周辺の地域に妖の被害が及ぶことに全く対処ができないようなのです」
 本当に本末転倒である。
 守れど、攻めることができないとは。
 故にこうして猟兵の力を借りたいと文をよこしてきたのだ。
「もちろん、断る理由はありません。この邸宅の力と共に妖と戦うであろう方々と連携して迫る妖の大軍を食い止めましょう!」
 ナイアルテは、さらに告げる。

「どうやら文の送り主の方は女性のようですね。お名前は……ええと、ええと?」
 彼女はどうにも文に記された名前を読めないようだった。
 どれどれ、と猟兵たちが覗き込む。
 すると、そこに記されていたのは『雷棲滅鬼悪・永流姫』という非常に流麗なる筆運びで記された文字があった。
 なんて読むんだこれ、と誰もが思ったかもしれない。
「ら、らい、すご、めっ、おに、あく? ながながれひめ?」
 あ、違うなこれ、と誰もがナイアルテの言葉に猟兵達は確信する。
 もしも、この場に漢字に明るい猟兵がいたのならば、それは『ライスメキア・エイル姫』と読むのだろうと推察する事ができただろう。

「……よ、読めないのは仕方ないじゃあないですか! あっ、誰ですか、今私が過去にデビルキングワールドで『菜医愛流帝』という刺繍の入った長ランを羽織っていたという黒歴史をバラす人は!」
 なんか締まらないな、と思いつつも猟兵達は彼女の元に届けられた文の主、止事無き身分の邸宅へと向かうのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 アヤカシエンパイアのとある平安貴族の邸宅に招かれ、この地に現れると予測される妖の大軍を食い止めるシナリオになります。
 この邸宅は陰陽師たちによって制御された『対妖要塞』です。
 山中にある様はとても不便に思える立地ですが、これこそが特に強力な妖の出現を監視し、即座に対応するための要衝なのです。

 今回は、その一つに住まう止事無き身分の『雷棲滅鬼悪・永流姫』からの願いによって趣、現れるであろう妖の大軍を食い止めることになります。

●第一章
 日常です。
 助力を願う文を送った『雷棲滅鬼悪・永流姫』の邸宅にお邪魔することになります。
 山中の高い位置にある神社にて、皆さんをもてなすために季節の祭りが行われています。
 全てが猟兵たちをもてなすために食事などのできる小規模な市のような賑やかさを醸し出しています。
 所謂、歓待なのです。
 ですが、これもまた『平安結界』の維持にもつながっています。
 この場には男装の麗人貴族『皐月』と社の簾の奥に手紙の送り主『雷棲滅鬼悪・永流姫』が座しています。

 この機会に今回現れる妖の情報を彼らから伝え聞くこともできます。

●第二章
 ボス戦です。
 予測されたように山中にある邸宅に迫らんとするように『妖の裂け目』が生まれ、強力な妖『魂喰の蓮華姫』に率いられた妖の大軍が出現します。
 押し寄せる妖の大軍、その雑兵の多くは平安貴族『皐月』と少数の坂東武者『世羅腐威無』たちが引き受けてくれます。
 皆さんは、この軍勢率いる妖『魂喰の蓮華姫』を倒しましょう。

●第三章
 日常です。
 無事に妖を討伐した皆さんは、裂け目も塞ぐことになります。
 これを喜んだ邸宅の主は戦勝の宴を開いて皆さんをもてなしてくれます。
 当然のことをしたと思われるかもしれませんが、この宴を楽しむこともまた平安結界の維持に必要なことです。
 心ゆくまで楽しんでいくのが礼儀というものでしょう。

 それでは妖迫る邸宅と人々を護るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『季節の祭り』

POW   :    祭りの会場を歩き回り、巡り尽くす

SPD   :    祭りで催される遊戯に挑戦する

WIZ   :    祭りの風景を眺め、歌を詠む

イラスト:del

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アヤカシエンパイアへと転移した猟兵たちが見上げるは、なだらかなる山であった。
 他の世界を知る猟兵たちにとっては物足りない高さの山であった。裾野が広く、登るのは難しくないだろう。だが、緩やかな傾斜が長く続くのは、思う以上に疲弊するかもしれない。
 しかも、階段めいたものはない。
 石畳すらなく、わずかに人の往来があるであろう轍が見えるばかりである。
 転移でどうにかこうにか、一瞬で向かうことはできないのかと思うだろう。だがしかし、これなる道が繋がるのは強力な陰陽師たちによって編み上げられた『対妖要塞』の結界である。
 ならばこそ、直接転移できないのは防衛上において、守りが強固であることを示していた。
 今回は、それが仇となった形であろう。
 妖の大軍が現れても邸宅と中にこもる者は守られる。
 だが、周辺地域はそうもいかない。
 圧倒的に手勢が足りぬとあって、猟兵たちに助力を求めてきたのだ。

「ご足労頂き、感謝致します。第六の猟兵の方々」
 猟兵達を出迎えるのは亜麻色の髪の男装の麗人貴族『皐月』であった。
 星映すような黒い瞳を伏せ、恭しく一礼する所作は美しく見事であった。そして、『皐月』が手で示すのは、坂の上にある神社であった。遠くから出囃子のように笛や太鼓の音が聞こてくる。
「ささやかながら、皆様をご歓待すべく祭りをご用意させていただきました。どうか心ゆくまでお楽しみいただけましたら幸いでございます」
 そう言って示す先にあるのは、所謂、縁日や小規模市の様相を見せる祭であった。
「何を悠長な、と思われるかもしれませんが、これもまた『平安結界』を維持するために必要なことなのです。どうか、お付き合い頂きたく」
『皐月』は小さく猟兵たちに告げる。
 平民庶民たちにとっては、貴族たちの戯れに付き合わされたと思うものもいるかもしれない。
 だが、得てしてアヤカシエンパイアの貴族というものは、こうしたことを隠れ蓑にして人知れず妖の脅威と戦っているのだ。
 ならば、後は楽しむだけでいいのだ――。
八秦・頼典
●POW

まさかこのような形で『永流姫』とのお目通りが叶うとはね
噂のみが一人歩きする謎の姫
その姿を是非ひと目見ようと妖退治と政務に勤しみ続け、気付けばボクの位階は従一位
今のボクが在るのも永流姫の賜物と言っても過言では…心なしか『皐月』殿の視線が痛く感じれるのでここまでにしておこう

あの夜の事には触れず、宮中に触れ回ったどうしようもない噂話を笑い話として懐かしいもうか
いや、本当にこのボクも肝が冷えたさ
あのような根も葉もない噂が宮中どころか都中にも触れ回ろうとはね

さて、ここでのボクは無用な混乱を避けるべく従一位の頼典ではなく、忍び名である一介の平安貴族たるライデンだ
民と同じ目線で歓迎の宴を楽しもう



 思い焦がれたものがある。
 過ぎれば、それは執着にも変ずるところのものであっただろうが、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は己の手元に転がり出た賽の目を見ることはなかった。
 からりとしたものである。
 己が位階は既に従一位。
 平安貴族の中にあっても一握りであることは最早言うまでもない。
 出世街道をひた走る原動力はただ一つ。
 女性に関することばかり。
 ばかり、と言う時点でただ一つでもなんでもないことは、この際置いておこう。
「まさかこのような形で『永流姫』とのお目通りが叶うとはね」
 頼典はなんとも言い難い気持ちになっただろう。

 願うばかりの頃は袖にされ、最早と諦めかければ転がり出る。
 人生というのは往々にしてそういうものなのだ。
「まあ、今のボクがあるのも『永流姫』の賜物と言っても過言では……」
「……」
「おっと、これは『皐月』殿」
「第六の猟兵と呼ばれる方が、よもや」
「そういう堅苦しいことは抜きにしようじゃあないか。この場は、そういう場なのだろう?」
 頼典は周囲を見回す。
 賑やかなる祭。
 ただ貴族の道楽趣味に付き合わされているわけではないのだ。
 そう、これこそが平安結界を維持するための雅なる催し。
 一見すればただの祭であるが、この催しを通じて結界はより強固なものとなっていくのだ。
『皐月』の視線が痛い。
 男装の麗人であると知るのは限られた人間のみであろう。

 女性からの視線とあれば頼典は突き刺さるような視線も悪くないと思ってしまうのだ。
「おめ通りが叶ったということは」
「……此方へ」
 頼典が導かれるままに向かったのは簾かかる社。
 そこに座すのは……言うまでもなく止事無き身分の者であると知れただろう。
 簾の奥からでも後光が差すようなオーラを放つのは、猟兵に助力の文をよこした『永流姫』その人である。

「畏まった挨拶は抜きに致しましょう、陰陽探偵ライデン殿」
 甘やかな声色。
 それでいて爽やかな風すら感じさせる声だった。
 頼典は、その声を聞き、いくつかの点と点とが繋がるのを感じただろう。
「いや、これはなんとも肝が冷える。お声だけで美しき方と知れる所作。いやあ、これはこれは」
「あなたのことは存じ上げております。ですが、此度は第六の猟兵、陰陽探偵ライデン様、と」
「しがらみ多き身へと駆け上がってしまいましたが、そうしていただけると」
「ええ、それではどうか祭をお楽しみくださいますよう」
 頼典は恭しく頭を下げる。
 いくらか語りたいことはあったが、しかしこれが妖に対する務めであると知る。

「此度の妖は……」
「いや、いいさ。まずはこの祭を、せっかく用意してくださった歓待の宴を民と同じ視線で楽しませていただこう」
『皐月』の言葉に頼典は頷く。
 堅苦しいのは抜きにする。祭を楽しみ、結界や『対妖要塞』であるこの邸宅に組み込まれた術式の精度を上げることこそが、予測された妖に対する備えであると理解しているからだ。
「それとも宮中にて駆け巡った噂の再燃をご希望か?」
「……」
『皐月』は息を吐き出す。
 亜麻色の髪が風に揺れて、頼典を見送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葦原・夢路
【POW】
わたくしは他の世界を渡り歩く第六の猟兵様達のように歴戦の強者ではありませんが…。
なればこそわたくしはわたくしに出来ることをいたしましょう。平安結界を維持するのだって大事な役目でございます…このお祭りを楽しみましょう…
『皐月』様の噂は予々より伺っておりましたがこうしてお会いするのは初めてですね。
わたくしには影ながらお支えする事しか出来ませんでしたが少しはお役に立てたでしょうか?
よろしければここを狙っている妖について教えていただけますか?対処の仕方をかんがえましょう。



 人には得手不得手というものがある。
 葦原・夢路(ゆめじにて・f42894)は我が身が猟兵となってから、つくづくそう思うようになっていた。
 他の猟兵。
 第六の猟兵と呼ばれる彼らと同じように他世界へと渡る力を持てど、しかし、自分には歴戦のつわものたる戦績がない。
 経験の差が戦いに如何ともしがたい溝を生むというのならば夢路は己が、この『対妖要塞』たる止事無き身分の方『雷棲滅鬼悪・永流姫』の求めるところの戦力ではないように思えたのだ。

 けれど、彼女はこうして足を踏み出している。
 なだらかなれど山中にある社。
 そこでは華やかに、しかし楽しげに人々が祭に興じているのだ。
「なんと雅で賑やかなことでしょうか」
 夢路は広がる光景に目を見開く。
 これこそが『平安結界』を維持するために必要なことなのだ。
 祭を楽しむこと。
 雅たることを知り、触れ、そして己もまたその中の一つとなる。そうすることで平安貴族たちは『平安結界』を維持してきたのだ。
「お待ちしておりました葦原の夢路様」
 夢路の眼の前に恭しく頭を垂れて現れたのは、男装の麗人『皐月』であった。

 彼女は理解する。
 眼の前の男装の麗人こそが己が化神たちが聞きつけてきた宮中の噂の人である、と。何やら、位階高き貴族の方と噂も一時は渦巻いていたようであるが、今はすっかり落ち着いているようだった。
「『皐月』様、お噂は予予より伺っておりましたが、こうしてお会いするのは初めてですね」
「お恥ずかしい限りでございます。そして、御礼申し上げるのが遅れてしまい申し訳ございません。先日は血止めの薬の提供、まことにありがたく。我ら坂東武者『世羅腐威無』の傷も癒え、東国にて戦線に復帰しております」
「わたくしには影ながらお支えすることしかできませんでしたが、少しはお薬に立てたようですね」
「いえ、多大なる援助、感謝してもしきれませぬ。あれほどまでに上質なる薬を届けていただけるとは思いませんでした。流石は葦原家の御息女」
『皐月』は今一度、礼をと告げて彼女を奥の社へと案内する。

 どうやら『皐月』の主である止事無き身分、夢路に血止めの薬を用立ててほしいと依頼し、また此度猟兵としての力を願った者に引き合わせたいようだった。
「『永流姫』、葦原・夢路様をお連れしました」
「ありがとう。葦原様、此度はご助力感謝いたします。また急なことであったにも関わらず東国の坂東武者に向けた薬の手配、その手腕、質、大変お見事でございました」
「いえ……申し訳ございません。よろしければ、早速、此処を狙う妖のことをお教えいただけないでしょうか」
「はい。此度、この地域に迫るは『魂喰の蓮華姫』と呼ばれる妖」
『永流姫』は簾の向こう側から夢路に声を掛ける。
 甘やかな声であったが、どこか爽やかな風を感じさせる声であった。
 聞いているとひどく落ち着く。
 高貴なる身分であると即座にわかるし、それゆえに妖に狙われるのだとも。

「物質を透過する能力、鋭き牙や爪をもって相対する者の弱点をつく武器を生み出す能力などを持ち合わせております」
「それは……なんと」
「高飛車で傲慢なる性格をしているようです。この性格をうまく利用することもできましょう」
 夢路は頷く。
 敵のことを知ることができるのならば、その対処も考えつくこともできるだろう。
「厳しい戦いとなりましょう」
「ですが、人々の安寧を護るため。この身が役立つというのならば、如何にしても」
「頼もしく思います。どうか頼みました」
 その言葉に夢路は来る妖の襲来に備えるため、人々の祭を楽しむ姿を見やる。
 これを守らねばならない。
 きっと、と夢路は決意するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

土師・智実
雨休み
泥手に挟む
田植唄
繁く生いたる
さいかちの花

岐蝉童子


短冊に書きつけ溜息
「悪くねェ気はするがここじゃねェンだよなァ」

なるべく貴族に会いたくないので特に挨拶せず歌の題材探し兼ね祭りに交じる
「ここのお|姫《ひぃ》さんに会ったこたァあるかい?どんなお人柄だい?」
「詠うならみんなの識るお姫さんじゃねェと意味がねェからなァ」
どぶろくや濁り酒ガンガン飲み周囲にも奢り田植唄やら雑歌やら歌い騒ぐ
そこそこ酔っ払った頃、耳に残った美人で恋多き姫と言う全くの噂の部分だけで添削せず一首読み
短冊に書き付けてから首傾げまた題材探しするために祭りに戻る


白雲の
さ渡る極み
沖津洲に
君見ぬ鳥の
声ぞ悲しき

岐蝉童子



雨休み
泥手に挟む
田植唄
繁く生いたる
さいかちの花

岐蝉童子

「ふむ。悪くねェ気はするが」
 ここじゃあない、と土師・智実(実は皇族のおっさん歌人・f42830)は見るものが見れば、それが最高級であるとわかる短冊に息吹付け書き留めた歌を見やる。
 聞けば猟兵としての力が求められているのだという。
 とは言え、己は皇族。
 身に宿る高貴たるオーラは隠し通せるものではないだろうが、しかし、どこか鬱屈としたような……それでいて何処かこの世のことを猶予期間であるとも斜めに見る彼は目深に被った笠の切れ目から山中に座す『対妖要塞』たる邸宅を見やる。
 どうやらこのわずかに残る轍の先にあるのは神社。
 出囃子の音が風に乗って聞こえてくる。
 周辺では田植えの季節なのか彼が歌に書き留めたような風景が広がっている。

「もっと上か」
 まったく、と智実は息を吐き出す。
 猟兵としての役目は果たすが貴族とはなるべく顔を突き合わせたくはない。
 考えるだけで足取りが重たくなるが、致し方ない所である。
「おっと、これはまた……なんとまあ、賑やかな」
 広がるは神社にて行われている雅たる歓待。
 祭と言って差し支えない様子に、誰も彼もがやや浮かれ気味であった。
「もし、あなたは」
 声が聞こえて智実は笠を被り直して聞こえぬふりをした。

 チラと見ただけでわかる。
 平安貴族。それもあれは男装の麗人というやつである。確実に先んじて聞いた、此処の姫、『雷棲滅鬼悪・永流姫』の縁者の類でろう。
 祭に浮かれる者たちに紛れるようにして智実はかかる声を振り切る。
「さて、無理には追いかけては来ないか。こっちの事情を察してくれたのなら嬉しいが。っと」
「おっとすまねぇ。酒が掛かってやしないかい」
 祭に参加した平民の者だろう。
 手にした酒杯からわずかに酒がこぼれていた。
「いや、こちらこそすまない。と、これもなにかの縁だ。ここのお|姫《ひぃ》さんに会ったこたァあるかい? どんなお人柄か知りてぇんだが」
「あいや、俺等がお会いできるような身分の方じゃあないよ。だがまあ、こんな場所に屋敷を構えてるんだから偏屈なんだろうさ。噂に聞くのはどっちかってーと、ほれ、仕えておられるっていう平安貴族『皐月』様のほうだろうよ」
「というと?」
「さる貴族の中でも位階高き天上人の方とあらぬ噂があるとないとか」
「やれ、京雀らの噂話というやつかい」
 そんなふうに語らいながら智実は振る舞われている酒を飲み干す。

 良い気分である。
 諸々聞きかじったところを聞くに、どうにも『永流姫』と『皐月』がごっちゃになっているようである。
 とは言え、酒の席である。
 どこまで正しいのかは判別できようもないだろう。
「まあ、だが一つ詠んで見るかい」
 短冊を手に取り、さらりと書き記す。

 白雲の
 さ渡る極み
 沖津洲に
 君見ぬ鳥の
 声ぞ悲しき

 岐蝉童子

「ふむ……うん、まあ、うん……」
「おいおい、まだ話は終わってねえぞ。こっちだこっち」
「おっと! こりゃありがたい」
 智実は祭の陽気に引き込まれるようにして、酒宴の席にて注がれた杯を見事に空け、人々の喝采を浴びるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

武富・昇永
人々を守れぬ要塞などなんの意味があるというのだ
それほど大事なご身分ならば都の真ん中にでも住まわせればいいものを

なんてことを言わぬように気を付けないとな!
思うだけならまだしも口に出しては出世に響くゆえな!
腹芸ぐらいできなくては平安貴族はやっていけん!

ひとまず『皐月』さまと『永流姫』さまには軽く挨拶をして
俺は祭りの出囃子を眺めながら屋台の食べ物に舌鼓を打ちつつ
祭りの参加者と交流を深めるのを優先するとしよう
人脈作りは出世に不可欠だからな!

決してこの要塞の在り方に納得できなくて主人と従者とは少し距離を取っておきたいと思っているわけではないのだ!



 武富・昇永(昇鯉・f42970)にとって、人々こそが護るべきものであり、己が上昇志向たるを満たしてくれるものであった。
 他者の存在なくば、己が求めるものは得られず。
 平安貴族として人々を護ることこそが無常であれど喜びであったのだ。
 故に、今己が頭垂れる簾の奥に座す止事無き身分の方に対してわずかに苛立つ感情がないのだと言われれば、嘘になろう。

 そう、昇永はこの『対妖要塞』のあり方について憤慨していた。
 ひた隠しにはしてはいるが、どうにも好きになれない。
 この『対妖要塞』である邸宅は、人々を護るのではなく、眼の前の簾の奥にある『雷棲滅鬼悪・永流姫』を護るためにこそあるのだという。
「民を守れぬ要塞など何の意味もないとお思いですね」
 甘やかな声。
 爽やかささえ感じさせる風のような声色だった。
 簾の奥から聞こえる声に昇永は頭を振る。
「滅相も」
 そういいながらも内心では、『それほど大事な身分ならば京の真ん中にでも住まわせておけばいいものを』と思っていた。
 無論、口に出すことはない。
 思うだけならまだしも、口に出してしまえば出世に響く。
 こうした腹芸くらいできぬのならば平安貴族などやってはいけないのだ。

「いえ、よいのです。まさしく貴方の思う通りなのですから。それに、私が第六の猟兵たる貴方にお頼みしたいことは私の身を護ることではなく、周辺の民を護ることなのです」
「……無論、誠心誠意、そのために働く所存です」
「頼みました」
 昇永はそのばを辞して神社にて行われている歓待の宴とも言うべき祭を見やる。
 己が護るべきは、民。
 彼らの生活を見ていればわかる。
 この地域の人々は、妖の脅威に怯えこそすれ、その殆どが今という生を謳歌している。
 屋台にて舌鼓を打てば、その豊かさがわかるだろう。

 如何なる理由から、この山中に止事無き身分の方が邸宅を構えたのかは言うまでもない。
 妖が出現する兆しを監視するためだ。
 というのならば、妖からこの周辺地域を護る防備もできようはずである。
「いや、自身を護るのではなく……」 
 この邸宅事態が広域を護るのに適していない、というのならば猟兵たちに助力を求めたのも頷けるところだ。
「まあ、いい。今は人脈づくりに勤しませてもらおう!」
 実情を知ったところで、この『対妖要塞』のあり方に納得できるものではない。
 考えも変わるかもしれないが、今の昇永にとっては、人々との交流の方が大切であった。
 自らが守らなければならない者たちの顔を見やる。
 そうすることで力が湧いてくるように思える。

「やあ、やあ、一つこれをもらえるかな。ところで最近の暮らしぶりはどうだい」
 そう昇永は人々に訪ねていく。
 誰もが悪くはない、と答えるだろう。
 ただ、今回のようなお祭り騒ぎは程々にしてほしいとも言ってた。
 急なことであったし、田植えの準備というものも始まる。その人の営みの中にあって、突如として祭を催されるのは、滞るものがあるからだ。
「なるほどな。いや、邪魔してすまなかったな! せめて祭は楽しんでくれ」
 そう言って昇永は人々の言葉を聞きながら、迫る妖の出現を待つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・朔兎
星羅はもしもの時の備えの準備として遅れてくるので先に来た!!

「皐月」殿と「永流」姫は伝聞よりどんな方が聞いてるが、実際あってみないと分からないしな!!皇族として失礼のない態度を心がけるぜ!!

口調は丁寧にできるが、食べ物の欲には逆らえない!!せめて小まめにまわって少しずついただこう!!代金はきちんと、お礼はちゃんと、おいしかったとちゃんという!!

口はちゃんと拭って身だしなみを整えて、お二人にあう!!皇族なんだけど、未熟だから風流で気の利いた振る舞いはできないから、星羅への縁をはなした後、素直にあえたことの嬉しさと綺麗さと凛々しいお姿を素直に称賛する。

未熟でごめん。これが精一杯だ。



 空腹時における誘惑というものには抗いがたいものがある。
 腹の虫が鳴る。
 こいつめ、と源・朔兎(既望の彩光・f43270)は己が腹をさする。
 ぐうぐう、と響く内臓の蠕動の音。
「うう、これを止事無き身分の方の前で響かせるわけにはいかないよな……うん、ダメだよな。なら」
 朔兎は、この『対妖要塞』と呼ばれる邸宅の主である『雷棲滅鬼悪・永流姫』の元へと挨拶に向かう前に邸宅たる社、その神社にて行われている祭へと足を伸ばす。
 挨拶より先に食い気とは、と笑われてしまうかもしれない。
 が、失礼がないようにと思うのまたマナーであろう。

 ならばこそ、朔兎は食欲というものに逆らうことなく屋台や、振るわれているものを受け取る。
「お兄ちゃん、気持ちいい食べっぷりだな」
「こっちもどうだい」
「慌てなくっても、まだあるよ」
 周囲の人々は優しかった。
 このような祭は本来は収穫祭……つまりは秋に行われるものだ。
 けれど、今はむしろ収穫のための田植えであったり、作付けをする季節。あまりにも季節外れの催事に人々は戸惑えど、止事無き身分の方よりの要請とあっては、これに従っているのだ。
 平民庶民たちにとってはよい迷惑であるが、しかし、祭とあっては楽しむのもまた人である。そんな中で朔兎が己の食欲に任せてパクパク食べる姿は人々に笑みを齎すものであった。
「いや、とても美味しいからな。ついつい、食べすぎてしまう。代金は!!」
「いらないよ。そういうのは全部御上の、止事無き身分の方が持ってくれるんだと」
「まったく雅だかなんだか知らないが、忙しい時期に。とは言え、補填してくれるというのならばな」
「そうか! ありがとう! 美味しかった!!」
 朔兎は腹の虫がどうにか落ち着いた頃合いを見計らって人々から分かれて、神社の奥、その社へと向かう。

 簾の奥から後光が差すような雰囲気さえ感じさせる。
 そこに居る、と物言わずとも示すような圧倒的な高貴なオーラを朔兎は感じたのだ。
「此度は文のとおりに之なる身を持って……ええと」
 なんて挨拶するだったか。
 食欲を満たせばどうにも頭のめぐりが悪くなってしまう。満腹でぼんやりしているのかもしれない。
 ちゃんと挨拶をしようとしたのだが、どうにも歯切れが悪くなってしまう。
「構いません。どうか楽に。貴方のような方も戦いに参じてくださった事、感謝致します」
 簾の奥にある『雷棲滅鬼悪・永流姫』は、甘やかでありながら爽やかささえ感じさせる声色で言う。
 笑む様子が見て取れた。

 簾に隠れて見えはしないが、しかし伝わる雰囲気、此方への心遣いというものに朔兎は素直に称賛する。
「よいご縁をえられたのですね。どうか、そのご縁、手放されぬように」
「無論です! 未熟な身なれど、今はこうした所作が精一杯だ!」
「いいのです。背伸びしては、足も攣りましょう。痛みにあえぐのは、成長する証でもあります。ならば、今の己の現状を憂うのではなく、しかと手の内にして進まれるがよろしいでしょう」
 気の利いた振る舞いは朔兎にはできない。
 けれど、自身の真摯な姿勢は彼女に伝わったようだ。
「どうか、その御力、民のために使われますよう」
 そう願います、と彼女の言葉を受けて朔兎は頷く。

 それは無論のこと。
 ならばこそ、朔兎はその場を辞して、迫る妖の出現に備えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

な、なんか雄叫びレベル上がってないです!?

え、えっと。
『永流』さん、『皐月』さんお招きありがとうございます!

必要な儀式ってことなら、遠慮なくごはん、いただいちゃいますね。

むむっ……なるほど、なるほど。この食材にこんな味付けもありですか。
あ、この調味料はじめてです。あとでシェフにお話聞きたいですね!

ふぅ。ごちそうさまでした。

美味しいごはんのお礼は、やはり素敵な演奏で、ですよね!

詠と演奏は別? さすがにそれは解ってますよー。
わたしのは、しっかり返礼の演奏ですから♪

結界が壊れるとかどういうことですか!?
強化されてるに決まってます!

え? この演奏なら妖も大丈夫、ってどういうことですか!?


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまァァァァァァァァすッ!!!
はい、メイド参上です!
皐月様におかれてはご機嫌麗しゅう
永流姫様はお初にお目にかかります!

とか冷静を装ってますが
エイル様とサツキ様が同時にいる?!
というよりライスメキア様がエイル様因子を持つことなど今まで一度も……
あれ?ということは永流姫様が『中心』ですか?もしかして?

とりあえずルクス様……って
もう食べてる!?
あと楽器取り出して何しようとしてますか?!
演奏!?
|詠と演奏は別物ですよルクス様!!《やめて死にたく無い!》

結界壊して無いですよね??
ともあれ皐月様
妖退治はお任せください
分かっていることがあれば教えて頂ければ幸いですが



 祭の出囃子が賑やかに響いている。
 笛の音色。
 太鼓の律動。
 いずれもが楽しげな雰囲気を放っている。
 確かにこの催しは止事無き身分の方からの要請によって行われている。庶民平民たちにとっては良い迷惑である。
 この田植えの季節を前にしてこんなことを行っている場合ではないのだ。
 けれど、そんな不満も楽しげな雰囲気に流されてしまう。

 そんな雰囲気の中に響き渡る絶叫があった。
 もう、絶叫と呼ぶしかないものであった。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまァァァァァァァァァすッ!!!」
 いつもの、となるのは猟兵ばかりであったことだろう。
 催事を行っている庶民たちは皆目をパチクリさせている。
 笛の音色も太鼓の律動も止まってしまって、空白とも言うべき無音にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びだけが残響する。
「な、なんか雄叫びのレベル上がってないです!?」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はあまりの雰囲気に方方に頭を下げ続ける。
 珍しい逆転である。
 大抵の場合、勇者が迷惑をかけるメイドが頭を下げるという図式が完成されていたのだ。
 けれど、今は違う。

 勇者が頭を下げてメイドが叫び倒していた。
「……第六の猟兵の方、でございますね」
 亜麻色の髪が風に揺れる。
 黒い瞳は困惑に染まっていたが、男装の麗人『皐月』が恭しく騒ぎの渦中たる勇者とメイドの前に現れる。
「はい、メイド参上です!」
「惨状ですよ、ほとんど。やばすぎですよ」
「やばくないです。『皐月』様におかれてはご機嫌麗しゅう」
「挨拶は程々に。此方へ。主がお待ちです」
 そう言って二人を『皐月』は奥の社へと案内する。ステラは思った。これだよこれ、と。この塩対応! となんか懐かしくなったようである。
 いいのかな、それで、とルクスは思った。

「ようこそおいでくださいました。ご助力を賜ることができ、慙愧の念に耐えませぬがが……」
「『永流姫』、お初にお目にかかります!」
 ステラは自分が冷静を装っていられるだろうと思っていた。
 ちょっと鼻息荒い気がするし、心拍もちょっとあれだったし、頬も紅潮していた。
 喉から心臓がでそうであった。
 正直言ってやばい。
 なぜなら、彼女にとってこの事態は想定していなかったからだ。
『エイル』と『皐月』が同時に存在している。
『永流姫』は簾の奥にて後光差す影しか見えないが、そのシルエットは女性のものであろう。そして、何より『|雷棲滅鬼悪《ライスメキア》』と名乗っているのだ。
 諸々の思考が彼女の中を駆け巡っていた。
 鼻血でそうだった。

「どうか歓待の宴たる祭を楽しんでいただけたらと存じ上げます」
「これって儀式なんですか?」
「はい、平安結界を維持するためには雅で風流なる催し、その感情が必要となります。民たちには負担をかけますが……」
「なっるほどー! なるほど! では遠慮なくごはん、いただいちゃいますね」
「どうかお楽しみいただけますと幸いでございます」
「行きますよ、ステラさん。ステラさんってば!」
 ステラのフリーズした体を引っ張ってルクスは祭へと歩んでいく。

 勇者であり奏者であり、料理人でもあるルクスにとってアヤカシエンパイアの世俗、特に食事に関しては大いに興味を惹かれるところであった。
「むむっ、この食座にこんな味付けもありなんですね。あ、なんだろう、この香り……初めての香り。シェフはいますか!」
「しぇ、せふ?」
 なにそれ、と人々は首をかしげる。
 まあ、それもそうかとルクスは思いながらステラをぐいぐい引っ張っていく。

 そして、長いフリーズからステラが再起動する。
「とりあえずルクス様……ってもう食べてる!?」
「ステラさんがフリーズしてただけですよ。さ、美味しいご飯の御礼は、やはり素敵な演奏で、ですよね!」
「演奏!?」
 ステラはいつのまにかルクスが楽器を取り出しているのを見て目を見開く。
 やばい。
 これはまずい。
「|詠と演奏は別物ですよルクス様!!《やめて死にたくない!》」
「ルビ芸で本音見えてますよ? それに流石にそれはわかってますよー。わたしのは、しっかり返礼の演奏ですから♪」
「おやめください! 演奏で結界壊しかねませんよ!」
「むぅ、結界が壊れるとかどういうことですか?!」
 失礼な、とルクスは憤慨する。

 雅なこと、風流なことで平安結界が維持されるというのならば、ルクスは自分の演奏であればさらに強化されること受け合いだと思ったのだ。
「さ、『皐月』様ー!? あの勇者を止めてください!?」
「楽器の演奏は民も喜ぶところでは?」
「いえ、そんなものじゃあないですよ、あれは! もはや妖の類ですよ!」
「失礼な!」
 そんなやりとりを賑やかに行いながら、ルクスとステラはじゃれ合う。
 じゃれ合うように見えたのは、『皐月』と周囲の人々だけであっただろう。
 ステラだけが本気でルクスの演奏を止めようと、必死だったのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【菜医愛流帝FC】

今回ばかりはサージェさんの口上を止められない。
なぜならわたしも呼ばれた気がしました!

あ、忍べてはいないよ。

その名が出たあらば、動かざるを得ない。
『菜医愛流帝』がアヤカシエンパイアにも威光を示すというなら、
手となり足となり動くのが会員の務め!

しかも今回は、その世界の偉い人を直接勧誘できるとか!
これはもう平安世界の国教を『菜医愛流帝』に、ってことだね!

『皐月さま』、『永流さま』、そのお考え恐悦至極!

妖?もちろん退治してお見せしましょう
そんなもの、FC筆頭サージェさんと、No2のわたしに宿った『菜医愛流帝』の力なら、一萌必殺。

負けるなど、クノイチが忍ぶくらいありえないことです!


サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
お呼びとあらば参じましょう
ええ、確実に呼ばれた気がします!
私はクノイチ番長、菜医愛流帝FCの筆頭だー!!
え?呼びましたよね?
あと忍べてますから!!

さておき、理緒さんの言うとおりです
いついかなる世界であろうとも
お望みとあらばその威光を示すのが我らの役目!!
平安世界にも『菜医愛流帝』を!

というわけで理緒さ……早い?!
さすがNo2、推し事には無駄がありませんね

というわけでこんにちはー
『皐月』さん、『永流姫』さま
ちょっとFC入りませんか!

ええ、妖はお任せください
世に忍び、影より討つはクノイチの本領ですから!
そう、一萌必殺……って何それ?!
あと、私は忍べてますからね?!
ね!?



 これまで幾度となくキャンセルされてきた前口上。
 最近では前口上がキャンセルされなかったことのほうが稀であった。お決まり、お約束ごと、定番。
 そんな定石を覆しまくってきたのがサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の前口上であった。
「お呼びとあらば参じましょう」
 此処まではいつも言える。
 問題は此処からである。
「ええ、確実に呼ばれた気がします! 私はクノイチ番長、『菜医愛流帝』FC筆頭だー!!」
 やめてー! と何処かで声が響いた気がしたがサージェは無視しておいた。
「え? 呼びましたよね?」
「え、ええと……」
 サージェの眼前にあるのは社。
 その簾の奥に後光のシルエットを見せる『雷棲滅鬼悪・永流姫』は困惑していた。

 第六の猟兵というものが、此処まで突拍子もない存在だとはついぞ思わなかったのだろう。
 だからこそ、現れたサージェの名乗り口上にびっくりしていた。
「今回ばかりは止事無き身分の方の前ということもあって止めるつもりだったけれど、どうしても止められない。なぜならわたしも呼ばれた気がしました!」
 ぴしゃーんと謎の音が響く。
「出囃子の音!?」
『皐月』も面食らっていた。
 ツッコミが追いつかない。否、ツッコミ不在である。ツッコミできそうな人材は後方で転移維持しているグリモア猟兵くらいであったが、距離が遠すぎた。悲しいね。

「あ、忍べてはいないよ」
「忍べてますけどぉ!?」
「まあ、それはいいとして。『菜医愛流帝』がアヤカシエンパイアに威光を示すためには、手となり足となり動くのが会員の務め!」
「『菜医愛流帝』、とは……?」
「おや、ご存知ありませんか!」
「不勉強で申し訳ございません……して、その『菜医愛流帝』とは?」
「番長です!」
 余計にわからん!
 けれど、サージェと理緒の様子を見ていればわかるのかもしれない。それがとんでもない存在であることを。誤解である。完全なる誤解である。
「『皐月』様、『永流姫』様、民のために見返り求めず我が身を粉にせんとするのお考え恐悦至極!」
「え、あ、はい。ご助力を賜ること、大変ありがたく……」
「ところで、FCに入りませんか!」
「え、えふしー?」
「ファンクラブです!」
 ファンクラブもわからないでしょう、と誰かは思ったが、ツッコミは届かなかった。遠いからね。物理的に。

「ゴホン。して、妖についてですが」
『皐月』が複雑骨折している話の腰の骨をなんとか建て直さんとする。
「ええ、妖はお任せください」
「そんなもの、FC筆頭サージェさんと、No.2のわたしに宿った『菜医愛流帝』の力なら一萌必殺」
 聞いたことない四字熟語でたな。
「そう、一萌必殺……ってなにそれ!?」
「やだなーサージェさんってば。わたしたちに『菜医愛流帝』のちからがあれば、負けるなどクノイチが忍ぶくらいありえないことです!」
「私忍べてますからね?!」
「どーんと大船に乗ったつもりでいてください、ねー!」
「ね!?」
 そんな二人の様子を見て圧倒される『皐月』と『永流姫』。
 言葉がでない。
 なんていうか、下手なことを言おうものならば、その場の勢いだけで押し通られてしまいそうだったからだ。

 そんな二人に『永流姫』は。
「ど、どうぞ、よしなに」
 そうとしか言えなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……ふぅむ……ここがアヤカシエンパイア…
…歓迎のために祭りまで開いてくれるとはありがたいね…
…まずは食べ物系の屋台の制覇をしておくとしようか…
…こうした平和・平穏を維持することで「平安結界」の維持にも繋がるのだっけか…これも興味深いところだけど…
…一通り食べ終わったらは皐月達に話を聞きに行くとしようか…
妖についてもそうだけど…『対妖要塞』の仕組みも気になる所だね…
…今の弱点を克服するためには長距離射撃機能か移動機能を持たせるかが手堅いけど…
…その分付け入る隙も生まれると言うのは痛し痒し…現状では今みたいに猟兵の拠点とするのが一番か…何か手段ないかなー…



「……ふぅむ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、初めて訪れた世界、アヤカシエンパイアを見回す。
 サムライエンパイアとは異なる世界だというが、雰囲気は似通っているように思える。
 しかし、彼女の目を引いたのはなだらかな山中にある神社であった。
 そこで今行われているのは催事。
 つまりは、祭。
 季節外れと言えば季節外れであろう。
「……歓迎のために祭まで開いてくれるとはありがたいね……」
 猟兵の助力を得るために無理くりに開かれているのだろう。
 この忙しい時期に、という人々の感情が見えるようだった。けれど、やはり催事というのは楽しいものだ。

 理屈では納得していなかったのだとしても、感情がどうしたって喜んでしまうものなのだ。
「……これは?」
「甘辛いっていやいいのかな。まあ、食べれば力持ちになれるもんさ。知らないのかい?」
 メンカルはとりあえず腹ごしらえをしておこうと神社の境内に開かれている屋台を覗き込む。
 どうやら米を潰して練ったものを大豆発酵の調味料で味付けしたものらしい、と電子解析眼鏡で理解できる。
 力持ち、というフレーズがちょっと気になった。
「どういうこと?」
「ん? ああ、そういう言い伝えがあるのさ。餅と力『持ち』ってな。腹『持ち』もいいし、まあ、何にせよ美味いってことさ」
 そういうもんかな、とメンカルは頷いて口に運ぶ。
 確かにもちもちしている。
 甘さと調味料のしょっぱ辛さがちょうどいい。

「……しょっぱいとあまいは永久機関だからね」
 そうなの?
 メンカルは餅をかじりながら周囲を見回す。
 出囃子の音が響き、賑やかで楽しげな雰囲気がそこかしこに漂っている。
 振る舞い酒もふんだんに飲まれているようで、酒気にメンカルはわずかに鼻をむずむずさせる。
「……こうした平和・平穏を維持することで『平安結界』の維持にも繋がるのだっけか……これも興味深い所だけれど……」
「もし、第六の猟兵の方とお見受け致しますが」
 振り返るとそこには男装の麗人『皐月』の姿があった。
 どうやら祭に訪れた猟兵たちを己が主の元に案内しているようだった。

「『皐月』と申します。此度のご助力賜ることができたこと、大変ありがたく」
「……うん。今から向かおうと思っていた所。妖についてもだけど、『対妖要塞』の仕組みにも気になる所」
「それにつきましては。この『対妖要塞』は防衛のみに特化しており、広域の敵を打ち倒すには向いておりませぬ。故に、迫るは妖の大軍勢に対処すべく坂東武者『世羅腐威無』も配置しておりますが……」
「手が足りない、と」
「そればかりか、予測では大軍を率いる妖に太刀打ちできぬ、とも」
「……弱点はいくつかあるよね。防衛にしか力を避けない、ということ。長距離射撃機能だとか、移動機能をもたせるとかは手堅いけれど」
 メンカルの言葉に『皐月』は頷く。
「移動、という点に置きましてはお気に召されることはございません。しかし、長距離射撃機能、というのは……」

 メンカルは、ああ、と思う。
 射撃となれば、弓矢か投石くらいしか思いつかないのだろう。
「……一日でどうこうできるものではないよね。まあ、言うは易しってもので。多機能に成ればどうしたって」
「はい、隙も生まれます」
「……痛し痒し……やはり現状では守りを固めるのが最善、だね……」
「方策あれば、どうか賜りたく」
 メンカルは何か手段がないかな、と考える。
 何かよいものが浮かべば実行に移すこともできるだろう。どの道、迫る妖の出現、その時まで頭を悩ませるしかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
祭りの喧騒は面白くて好きよ
初めて訪れる世界、見慣れないものも沢山あって
好奇心をくすぐられてしまうわね

『皐月』と、らい……『永流姫』はどんな人達なのかしら
(名前の読み方は『らいすめきあ』で合っているのかしら)
共に戦い、守るべき人の事なら知っておきたいわ
二人と話ができるのなら挨拶に伺いましょう
名前を告げ礼儀を払い、現れる妖についてお尋ねするわ

此度の戦いは、互いの連携も重要と考えているわ
私にできる事があれば遠慮なく言って頂戴
力を尽くしましょう



 自然と体が揺れる。
 人によっては喧騒とも言えるような賑やかな音。
 音色と感じることができたのならば、それは出囃子というものであった。
 笛の音、太鼓の律動。鈴の音色。
 多くが混在し、そこに人々の声が響く。
 音の渦に包まれているように薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思えたことだろう。
 それが面白く感じるし、好ましく感じる。
 多くの感情が一つになっていくようにさえ思えたからだ。

 そして何より、彼女にとってアヤカシエンパイアは初めて訪れる世界である。
 他世界があることを知る猟兵にとっては、新たな世界を知ることは珍しいことではない。けれど、何度経験しても静漓にとっては、好奇心をくすぐられるものばかりであった。
「……これは?」
「風車というものだけれど、知らない?」
 小さな女の子が静漓を見上げて、手にしているくるくる風をうけて回る玩具めいたものを差し出す。
 風に触れるたびにくるくると色が流れていく。
 その光景に静漓は目を見開く。
 面白い、と思ったのだろう。
「こうやって走っていくと、くるくるして楽しいよ」
 そう言って女の子は駆け出していく。その背中を静漓は見送って、膝折る体を持ち上げて神社の奥にある社を見やる。

 そこに此度、助力を求める文を横した止事無き身分の者がいる。
「『皐月』と、らい……」
 なんだったか。
 グリモア猟兵の読み方が間違っていたことだけがわかる。絶対違うなと静漓は思った。
 確か、『永流姫』と言っていたか。
「その出で立ち、第六の猟兵の方とお見受け致しますが」
「あなたは?」
 振り返れば、そこにいたのは亜麻色の髪を持つ男装の麗人であった。
「『皐月』と申します。我が主の元へとご案内を、と」
「そう、此方から挨拶に、と思っていたのだけれど」
「及びませぬ。此方はご助力を乞う身。されど、我が主は座して動けませぬ故にこうしてご足労を願う次第でございます」
 静漓は頷く。

 如何に助力を請われたのだとしても、共に戦う者のことを知りたいと彼女は思ったのだ。
「では、此方も礼儀を尽くさせてもらうわ」
『皐月』に連れられて彼女は社へと向かう。
 そこには簾に覆われながらも、しかし後光差すシルエットがあった。
 女性である、ということは名前から理解できていたが、溢れ出る高貴差というものに静漓は感服する。

「『雷棲滅鬼悪・永流姫』と申します。どうぞよしなに」
「薄翅・静漓と。此度の戦いは、互いの連携も重要と考えているわ。私にできることあがれば遠慮なく言って頂戴」
「そのお言葉、大変心強く思います」
 甘やかな声でありながら、爽やかな風さえ感じさせる声色。
 人を安心させる声色だと静漓は思ったことだろう。
 天性の、生まれ持ったカリスマめいたものを持ちえているのだと彼女は理解できる。

「軍勢率いる妖は『魂喰の蓮華姫』と呼ばれる存在。その力は強大そのもの。他者から奪うことを是とする者……恐らく狙いは私、なのでしょう」
「狙われるの何故?」
「この血に流れるは、妖を滅する血。なればこそ、妖にとっては捨て置くことのできぬもの。絶えればそれでよし。ですが、放置もできぬ、というところでしょうか」
 なるほど、と思う。
 妖を滅する血。
 それは妖にとっては致命的になりえる血筋と言える。
 故に狙われ続ける。だからこその『対妖要塞』にて囲わねばならないというのだろう。そいて、不意に出歩くこともできない、と。
「力を尽くしましょう」
 もともと、そのために来たのだ。
 静漓は頷き、来る妖の出現に備えるべく、その場を辞するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・絹子
ふむふむ、なるほど。なれば、市をまわるとしようかの。
季節の祭りでの市とは、趣深いものであるしな。
こういうものは、特産品とか…名物とか…ありそうなものであるが。はて、何があるのか?
そういうのも、気軽に尋ねていこう。

ん?何も畏まらずともよいではないか。妾は、ただの猟兵であるぞ?(無理です)



 山中の境内。
 その神社は今や市のような賑やかさであった。
 出囃子が鳴り響き、人々の声が聞こえる。
 多くの感情が渦巻くようであり、それが人の営みであることを源・絹子(狂斎女王・f42825)に教える。
「ふむふむ、なるほどの」
 此処はとある止事無き身分の方の邸宅の一部。
『対妖要塞』であることを平民庶民は知るところではないのだろう。
 なんでこんな辺鄙な場所に、と彼らは思っているだろうし、この田植えなどの作業をしなければならない時期に突発的に祭をしなければならないのかとさえ思っている。

 当然といえば当然であろう。
 庶民たちにとって、平安貴族たちは遊んで暮らしているようにしか見えないのだ。
 だが、その実、平安貴族たちは『平安結界』を維持するためにこうした催しをたとえ、遊んでいると思われてもおこなわなければならないのだ。
「説明できぬということもあるのだろうが、心苦しいところよな」
 絹子は市を回りながらあれこれ顔をのぞかせる。
 そのたびに、人々は隠せに彼女の高貴なオーラにビクっと体を震わせる。
「なんじゃ? なんぞ妾の顔についておるのか?」
「え、あ、いやぁ……」
「こ、コイツ、あんたがあんまりにも別嬪さんなものだから見惚れてるんだよ」
「あ、てめぇ!」
 そんなやり取りがいくつか会ったが、絹子は笑って取り合わなかった。

 それが彼らなりのごまかし方だと気がついているからだ。
 どう見ても絹子は一般人には見えない。
 止事無き高貴なオーラというものがダダ漏れなのだ。
「ふむ、これは趣深いものであるな。これは誰の作であろうか」
 市の片隅で並べられている器を手に取り絹子を目を細める。
 中々に精緻なる作りをしている。
「そ、それは、私が……」
「ほう、窯元を構えておるのか?」
「まだ、修行の身でして……お気に召しましたのなら、どうぞ」
「うむ。気に入ったいくつかもらおうか。代金は」
「め、滅相もございません!!」
 そんなやりとりを絹子は、祭の市のあちこちで行っていく。

 あまりにも気軽。
 あまりにも身軽。
 絹子の止事無きオーラを人々は否応なしに感じ取ってしまうが、その渦中たる絹子はまるで気に留めた様子もなく、あれこれと気さくに人々に話しかけていくのだ。
「あ、あのぅ、どうしてまた、貴方様のような御方が……」
「ん? 何も畏まらずともよいではないか」
「いや、そんなわけには」
 絹子は人々の反応に笑う。
 自分は特に変わりない者。そこらにいるものと変わりないか弱い女だと言わんばかりである。
 だが、人々はそう笑う絹子が、堅くなるなと言ってもできない。
 無理である。
 何か粗相をしてしまうのではないかと戦々恐々たる人々をよそに絹子だけが大いに祭を楽しむように、あちこちに出歩き続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『魂喰の蓮華姫』

POW   :    真なる魂喰の衝動
自身の【魂喰の本質と共に暴食衝動 】を解放し、物質透過能力と3回攻撃を得る。ただし毎秒加速する【他者の魂や生命力への渇望】を満たし続けないと餓死。
SPD   :    |八千矛《ヤチホコ》之舞台
【己の鋭い牙や爪 】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【装束を身に纏い武器を手にした凶戦姫】に変身する。
WIZ   :    |奴延鳥《ぬえ》乃翠爪
かつて喰らった「【雷獣・鵺 】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【伸縮自在の翡翠の鬼爪】を装備する。

イラスト:鳥季

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮条・凪紗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 それは予見されていたことだった。
 予測されていたし、予知されていたこと。
 そう、『妖の裂け目』である。『平安結界』の外が如何なる様相となっているのかなど言うまでもない。
 広がるは滅びの大地。
 向こう側より現れるは妖。
 軍勢と読んで差し支えないほどの大軍であった。
「それ、一気呵成に征くがよい。獲物たる人は全て喰らうがよい。されど、妾の獲物……『雷棲滅鬼悪』には手を出すでないぞ?」
 大軍を率いるは一際強大な妖『魂喰の蓮華姫』であった。
 身に迸るは雷。
 嘗て彼女が食らったという雷獣・鵺の力を発露させるように身を包み込む雷撃が、一気呵成と告げた彼女の言葉を示すように『対妖要塞』たる邸宅へと走るのだ。

「構えよ。雑兵たる妖は我ら坂東武者『世羅腐威無』がなんとしても抑えるのだ。第六の猟兵の方が、かの大妖を打倒するまで持ち堪えよ!」
 男装の麗人『皐月』の言葉に数少なき坂東武者たちが気炎を上げる。
 同時に邸宅たる『対妖要塞』が姿を変えていく。

 社が中心となって神社の神力とも言うべきものが簾の奥へと集約されていく。
 そこには『雷棲滅鬼悪・永流姫』がいた。
「どうか私のことはお気になさらず」
 言葉と共に神力が集約し、簾の奥にて発露する。
 眩い光が走り抜け、その光が収まった時、猟兵達は見ただろう。
 その姿を。
 社がまさしく『変形』するようにして人型へと変わっていく。
 鋼鉄の巨人とも言うべき体高5m……百六十五寸はあろうかという姿へと変貌するのだ。

 鋼鉄の鎧は赤と青の斑。
 そう、『雷棲滅鬼悪・永流姫』が座す『対妖要塞』は防御に特化した機能しか保たぬというのは、このためであった。
 周辺地域を守ろうにも、単騎。
 故に手が回らぬのだ。彼女が妖を滅する血を持つ血統者であるというのならば、山中に座すというのもまた理解できる所であっただろう。
「あの力こそ妾に相応しいのじゃ。妖共よ、忌まわしき『世羅腐威無』共を蹴散らし、必ずや妾の元へと……その前に、妾は腹ごしらえをするとしよう。猟兵、貴様らの血肉を以てな――!」
葦原・夢路
『皐月』様に『永流姫』様。
お会いできて良かった。
お二方からあのようなお言葉を頂けるなんて思ってもいませんでした。
薬を作ってくれた芍薬をうんと褒めて上げなくては。
さて……『魂喰の蓮華姫』ですか。せっかく花の名を授かっているのにあのような不届きな振る舞いをするなんて…灸を据えてやらねばなりませんね。
一直線に向かってきているようですから…少し向かう先を変えて差し上げましょう。
UC『凶方暗剣符』
これなら直ぐには『対妖要塞』は向かえないでしょう。
己が身は【幻影使い】と【絆攻撃】を用いて守ります。わたくしは非力ですが私の花達は優秀なのですよ。あとは勝利を祈るのみです。



 此処に来て良かった、と葦原・夢路(ゆめじにて・f42894)は思った。
 自らの力。
 鏡というものを見た時、自分の力は戦いに向いてはいないと思ったし、それが他の猟兵……一騎当千と呼ばれるつわものたちと比べるとどうしても見劣りするものではないかと思わずにはいられなかったのだ。
 けれど、そんな己の力を『皐月』はひどく感謝していた。
 大げさなくらいに、とさえ思えていた。
 如何にか弱い力に思えても、その誰かの傷を塞ぐことのできる力を己が持ち得たことに心からの感謝を『皐月』はしていた。

 戦いに赴くことは、誰にでもできることではない。
 しかし、戦いに赴く者を癒やすことができるのもまた誰にでもできることではないのだ
 だからこそ、夢路は思う。
「お二方から、あのようなお言葉をいただけるなんて思ってもいませんでした」
「主様の御力でございますよ」
「ええ、侍る我らの力、此度も存分にお使いください」
 花の化神たちの言葉が聞こえる。
 手にするは符。
「ありがとう。『芍薬』、皆、それぞれのおかげです。それ故に、花の名を持つ妖……懲らしめてやらねばなりません」
 夢路が見やるは迫る妖の軍勢。
 その大軍が坂東武者『世羅腐威無』と『対妖要塞』が変じた赤と青の斑模様の鋼鉄の巨人。

「雑兵は此方にお任せを。葦原様は!」
「ええ、お任せください。蓮華の花の名を持ちながら、あのような不届きな振る舞いをする妖に……灸を据えてやらねばなりません」
 煌めく瞳。
 ユーベルコードの輝きを持って夢路は、その美しい髪を揺らし、迫りく雷纏う恐るべき大妖を睨めつける。
「斯様な可憐なる眼差しで妾を睨めつけたところで、可愛らしさしかないものよ。しかし、猟兵。そなたの肉は柔らかく美味そうじゃ。疾く献上せよ!」
 妖『魂喰の蓮華姫』は、その翡翠の爪を掲げる。
 伸縮自在たる恐るべき爪。
 それが夢路の柔肌を、まるで肉を切り分けるかのように迫るのだ。

「望む所。ですが、わたくしを喰らうにはまだ早いですよ」
 彼女の手にした符が翻る。
 凶方暗剣符は、彼女の現在位置から張った符までの直線と同じ方角にしか移動できなくなる。
 夢路にとって、それは時間稼ぎであった。
「……ッ!? 如何なる力かこれは!?」
『魂喰の蓮華姫』のみならず、雑兵の妖たちですら、坂東武者や『対妖要塞』へと向かうことができなくなってしまう。
「……葦原様! その符は!」
「ええ、こうなっては敵の側面をつくは易いものでございましょう! 惹きつけている間に!」
「賢しい真似を!」
 迫るは翡翠の爪。
 だが、その一撃を受け止めるのは花の十二化神たちであった。
 己が主人を護る結界を持って、これを防ぎ切る。
「妾の爪が通らぬだと?」
「わたくしは非力。ですが、わたくしの花達は優秀なのですよ」
 他者を喰らうことしか考えぬ者ではなく、誰かのために力を振るうことができる。
 それこそが己が誇り、侍る花の十二化神たちなのだ。
「此処にて貴方を惹きつけ続ければ、必ずや他の方々が貴方を仕留めるでしょう。なれば、わたくしは」
 祈るのみ。
 己ができることを最善と為すために、夢路は敵軍勢を一手に引き付け、その側面をつく隙を生み出したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●SPD

あの場はああするしか無かったが、それも皐月殿の事を思っての事さ
それにボクが永流姫に熱心だったのは恋い焦がれてではなく、噂でしかない存在を確かめようと"お目通り"する為だったからね
失礼を承知の上だったけど、そこは止事無き御方らをこの身に代えてでも御護り致す平安貴族としての働きで謝意を示そう

大軍を率いし妖の姫よ
このライデンがお相手致す

魂喰の蓮華姫もさることながら、守りのみに特化した対妖要塞を攻め落とさんと津波のように押しかける妖の軍勢もどうにかせねばならない
なら、それを一挙に解決させよう…オン!
あの後ボクは民と触れ合いながらこの地に流れる龍脈を確認しててね?
護りの霊脈を攻撃へと転じさせるよ



「ええい、煩わしい! この妾の道を阻むとは!!」
 猟兵の張った符を焼き滅ぼしながら妖の大軍を率いた大妖『魂喰の蓮華姫』は苛立つように吠えた。
 牙むくように感情をあらわにした姿は恐ろしきものであり、暗雲を立ち込めさせ雷撃纏いながら突き進む。
 目指すは『対妖要塞』が変じた鋼鉄の巨人。
 赤と青の斑色を持つその姿を八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は知っていただろう。
 あの月光降り注ぐ夜に遭遇したのは、かの存在だったのだ。
 そういう意味では、あの月夜にてすでに彼の目的である謎多き『永流姫』へのお目通りは叶っていた、ということでもある。
 だからといって、頼典は己が為すべきことが何一つ変わっていないことを知るだろう。

「失礼を承知の上だが、諸々のことは、この働きで謝意として示そう」
「そうしていただけると助かります。八秦卿。いえ、この場は」
「ええ、陰陽探偵ライデンとして」
 頼典は迫る雑兵の妖を坂東武者『世羅腐威無』たちが討ち滅ぼす最中をひた走る。
 互いに激突する力。
 それは志を同じくする者がいればこそ、その激しさを実感することができる。
「頼みます」
「おまかせを。さあ、大軍率いし妖の姫よ」
 頼典は己が瞳をユーベルコードに輝かせる。

「何奴よ。妾の前に立つとは、不敬千万なるぞ!」
「不敬、畏敬、と騒ぎ立てるのならばこの名を聞くがいい。陰陽探偵ライデン! このライデンがお相手致す!」
「さかしいだけの人間風情が!」
 迫るは鬼気迫る表情の『魂喰の蓮華姫』。彼女の顔はすでに異形のそれであった。
 牙むく姿は獣そのもの。
 鋭き爪は、血潮に濡れんとしている。

 確かにあれを突き立てられては人の生命など儚いものだろう。
 だからこそ、頼典は告げる。
「地の奥に眠りし荒神よ、かしこみかしこみ謹んで、ご助力をお頼み申す……オン!」
 神代の龍脈に触れる。
 この地に過去より生きる者たちの営み、その息吹。
 龍脈とは即ち、大地の生命。
 気、流れる姿はまさしく龍が如く。故に、頼典は九頭竜の首をもたげさせるかのように、そのユーベルコードを操る。
「気脈淀むことなく流るるは、この地に生きる者たちが実直に生きてきた証だ。それを不当に奪おうとする妖の姫よ」
 頼典が掲げた掌が天を示す。
 それは巨大な腕のようであり、掌のようであった。

「その営みを阻むことこそ、大罪と知るがいいさ」
「大罪など! 妾が喰ろうてやる栄誉に比べれば些細なことよ! それを!」
「姫の我儘というのはいつだって可愛らしいものだけれど、それじゃあ、ただの暴食さ。なら、それを諌めるのだってボクの役割ってことさ」
 振るう腕と共に九頭竜の首が、その巨体を以て『魂喰の蓮華姫』へと振り落とされ、大軍ごとこれを踏み潰すのだ。
 そして、その竜の顎より放たれるブレスが『魂喰の蓮華姫』を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

武富・昇永
(変形した社をみて呆然としつつもすぐに気を取り直す)

はははは!なるほど!あれは都では立てぬわな!
あの力、今は守ることしか能がないが
磨けば妖どもに討滅させるのに大きな力になるのは確実!
絶対に守りたいという気持ちも納得できた!

であれば俺は死力を尽くすのみよ!

おい、総大将!腹が減ってたまらん面をしているな!
そんなに食いたければ向かってくるがいい!
しかしタダで食えると思うなよ!
俺は青天井の昇り鯉、武富・昇永!
俺はお前の首が欲しい!
(『欲望解放』して{伏竹弓・勲功必中撃抜弓}に力を注いで大きくすると霊気を矢に変えてチャージしUC【出世道・勲狩り連撃】を発動する)



 見上げた先にあったのは百六十五寸……即ち体高5mの鋼鉄の巨人だった。
 それが如何にしてこの場に現れたのかを武富・昇永(昇鯉・f42970)は見たのだ。
『対妖要塞』。
 それは妖に対抗すべく陰陽師たちによって生み出されたもの。
 昇永は、それを知った時、どうしてそのような力があって民を護るために使わぬのだと憤った。
 だが、それはすでに氷塊した。
 呆然としたのもつかの間、笑いがこみ上げてくる。
「はははは!」
 彼は己が見立てた以上の力を目の当たりにして笑うしかなかった。
「なるほど! あれでは都では立てぬわな! 驚天動地とはこのことだ!」
『対妖要塞』が鋼鉄の巨人へと変ずる。
 他の『対妖要塞』もまた同様とは限らぬであろうが、しかし、あの力を磨くことができれば、妖を討滅せしめるには大きな力へとなることは言うまでもなかった。

「ならば絶対に守りたいという気持ちも納得できた!」
「ご納得いただけましたか?」
 鋼鉄の巨人の中にいるであろう『雷棲滅鬼悪・永流姫』の言葉に昇永は笑う。
 彼女は己の中にある蟠りを理解していたのだ。 
 それを咎めることをしなかったのは、彼の言うところのことも理解できたからだろう。立場が違えば知り得ることも違う。
 その差異による認識を咎めることを彼女はしなかった。
 自分でもそう思ったはずだからだ。
 だからこそ、昇永の瞳がユーベルコードに輝く。

「委細承知。であれば俺は死力を尽くすのみよ!」
 龍脈により出る巨大な九頭竜の一撃を受けながら大妖『魂喰の蓮華姫』が咆哮する。
「この妾を邪魔立てするか! 猟兵! それは妾のものぞ! 貴様らの血肉を喰らい、如何なる力をも我がものとしてくれよう!」
 悍ましきほどの衝動。
 それをもって『魂喰の蓮華姫』は戦場を疾駆する。
 雑兵たる妖たちをかき分けるようにして迫る彼女に昇永は立ちふさがるようにして己が伏竹弓を構える。
「おい、総大将! 腹が減ってたまらん面をしているな!」
「貴様の血肉を寄こせぇぇぇぇッ!!!」
 飢餓衝動と共に疾駆する『魂喰の蓮華姫』は並み居る坂東武者をも打ち倒しながら昇永へと迫る。

「そんなに喰いたければ向かってくるがいい!」
「喰わせろ! その柔き肉を! 滴る血を!!」
「よかろう。しかしタダで食えると思うなよ!」
 ユーベルコードに輝く昇永の瞳が射抜くは、大妖。
「俺は青天井の昇り鯉、武富・昇永! お前が血肉を欲すように、俺はお前の首がほしい!」
 出世のために大妖を討滅せし誉れが必要なのだ。
 故に己が欲望を開放する。
 出世したい。
 誰よりも高みに昇りたい。
 頂きの上から見る景色が如何なるものか知りたい。
 その欲求を開放した一射が『魂喰の蓮華姫』へと放たれ、その形を穿つ。
 守りなど一切関係のない一射。如何なる防護も貫くと言わんばかりの矢であった。だが、底に迫るは『餓狼黒鹿毛』たる早馬を駆る昇永であった。
「なっ……!」
 突進によって『魂喰の蓮華姫』は吹き飛ばされ、大地に叩きつけられる。
 だが、その瞬間を彼は見逃さなかった。

「この妾が押される……!? ありえぬ!!」
「ありえるのさ、これがな! そして、流れるように勲功得る我が妙技! 見るがいい!」
 早馬の鞍を蹴って昇永は『魂喰の蓮華姫』の頭上に迫る。
 上段に振りかぶった太刀は、妖刀。
 妖を斬るために生み出され、彼の出世欲に応えるようにその鋭さを増す妖刀である。
 その一閃が違うことなく『魂喰の蓮華姫』へと振り降ろされ、その斬撃は癒えぬ一閃を持って彼女の体躯へと刻まれるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様(f43270)と参加

何か違和感ある武士団の名前ですが「皐月」様が率いる武士団ならばお任せして良いでしょう。なんか強大そうな名がついていますよね「永流」様。それだけで御身を敵に渡してはなりません。

行きましょう、朔兎様。絶対これ以上進ませては。

私は白虎の進撃を発動!!40体を幻影に、80体を投擲武器に!!あれだけ狙いを散らせれば、私どころか「対妖要塞」にも触れられませんよね!!

【残像】と【幻影使い】でもしもの襲撃にそなえ、朔兎様の援護に【援護射撃】で調律の弓で【矢弾の雨】!!ダメ押しで【式神使い】で金鵄と導きの狛犬を突撃させますよ。

「永流」様は強き方です。私はそれに答えましょう。


源・朔兎
愛しの姫の星羅(f42858)と参加

おお、とても大きい守りの砦だ!!でも攻撃力ないのは防衛特化故の欠点だな。まあ、攻撃は俺たちが担えばいいな!!まかせてくれ、「永流」姫!!貴方がどんな秘密をもっていようと、任務を果たしてみせるぜ!!

おお、大きくなったな!!でもいちいち驚いて怯むような醜態は星羅では晒せない!!【迷彩】【心眼】【残像】【変わり身】使って攻撃回避し、きえたら面倒臭いので【衝撃波】ぶっぱなす!!問答無用で巻き込むだろう?

ここでストップ、だ。疾風の構え発動、3回攻撃受け切ってカウンターし、最後に【限界突破】【怪力】【急所付き】をこめた剣の突きを入れる。

これ以上の妖の侵入は阻止だ!!



 坂東武者『世羅腐威無』――それはこの地域にて隠遁する止事無き身分の方を本来護るための集団であろう。
 しかし、東国征戦のために多くの人材が割かれている。
 ならばこそ手が足りぬ。
「何か違和感ある武士団のお名前ですが」
 神城・星羅(黎明の希望・f42858)は他世界を知るからこそ、その音の響きに違和感を覚えたのかも知れない。
 とは言え、迫る妖の大軍。
 これを捨て置くことはできないが、坂東武者である彼らがいるのならば、己達が為すべきことを為すだけだと切り替えた。
「それにとても大きい守りの砦だ!! あ、いや、どちらかというと巨人というものだろうか!!」
 源・朔兎(既望の彩光・f43270)は駆けつけた星羅の言葉に頷く。
『対妖要塞』が変じた赤と青のまだら模様の鋼鉄の巨人。
 その姿を見上げて朔兎は立派なものだと思った。
 だが、あの巨人に攻撃力はない。防衛に特化している。それもただ一人を護るためだけの力しかない。
「私の身を護るよりも、どうか」
『雷棲滅鬼悪・永流姫』が鋼鉄の巨人から言葉を放つ。

 坂東武者たちは、そう言われても大軍の妖たちを受け持つことで精一杯であろう。
 故に猟兵たちの力が必要不可欠なのだ。
「いいえ、御身を敵に渡すことはなりません。それに……」
「任せてくれ『永流姫』!! 貴方がどんな秘密をもっていようとも、任務を果たしてみせるぜ!!」
「朔兎様もやる気ですから」
 星羅の言葉に朔兎は、はにかむ。
 幼い身なれど頼もしき猟兵の姿に『永流姫』は微笑むような雰囲気を纏う。

「では、よしなに」
「はい、いきましょう、朔兎様。絶対これ以上進ませては」
「猟兵が邪魔立てをするか! ならば、貴様らも妾の腹の足しにしてくれる! 幼い人間の肉は食いでがないが、柔く美味いからのう!」
 大妖『魂喰の蓮華姫』が迫る。
 牙をむき、鋭い爪を持って己が衝動を満たそうとする姿は、まさしく悪鬼羅刹のようであったことだろう。

 恐ろしげな風貌。
 けれど、朔兎も星羅も恐れることはなかった。
「いちいち、驚いて怯むようなんてことは!」
 ない!! と断言して朔兎が戦場を疾駆する。
 確かに敵は恐ろしい。
 妖、オブリビオンというものは大抵の場合、猟兵個人の力を上回るものである。しかし、それでも共に戦う仲間たちがいる。
 何より、己の隣に立つ者がいるのだ。そんな彼女の前で醜態はさらせない。

「いざ、障害を蹴散らす一撃となれ!!」
 星羅の触れた大地が白虎へと変じる。
 大地を揺るがすような咆哮が轟き、白虎の進撃(ビャッコノシンゲキ)が始まる。大地を蹴って走る白虎が『魂喰の蓮華姫』と激突する。
 咆哮の波動が彼女を押し留め、爪と牙とが火花を散らすようにして交錯する。
「煩わしい! その肉をくらわせろ! 妾は腹を空かせておるのじゃ!!」
「ここでストップ、だ」
 朔兎が踏み込む。
 それは神速。
 己が師に教わった技。

 斬撃は神速を受けて『魂喰の蓮華姫』へと叩き込まれる。
 猟兵たちが先んじて叩き込んでいたユーベルコードの傷跡をさらに深くするようにして、疾風の構え(シップウノカマエ)を取った朔兎は立ち止まらなかった。
 止まれば『魂喰の蓮華姫』の爪が迫ると知るからだ。
 振り降ろされた斬撃のような爪を前に、前に踏み込むようにして朔兎はかいくぐる。
 逆手に握り締めた双月の剣が彼女の体躯へと叩き込まれる。
「これ以上の妖の侵入は阻止する!!」
「調子に乗るな! この妾の玉体に傷を付けおって! 許さぬ!」
「いいえ、朔兎様のおっしゃるとおりです。ここで貴方は留め置きます!」
 星羅の操る白虎と放つ矢の雨が『魂喰の蓮華姫』に降り注ぐ。

 その矢を弾くことができても、執拗にとも取れる速度と踏み込みでもって朔兎が剣を振るう。
 反応しようにも神速の斬撃である。
 此方の一撃は受け止められ、カウンターのように斬撃が疾風のように迫るのだ。
「止められるか、この連撃を!」
 朔兎の咆哮と共に嵐のような斬撃と白虎の咆哮が戦場に響き渡るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【菜医愛流帝FC】

『永流姫』の、よしなに、もいただきましたし。
さっそくよしなにしちゃおうかー!

って、あれ『セラフィム』?
よし、そういうことなら、こっちもその感じで行こう。

『希』ちゃん【ネルトリンゲン】で出るよー!
サージェさんとこのシリカさん、それとできれば『永流姫』ともリンクして!

【フレーム・アドバンス】で相手の動きにデバフかけて、
2人をサポートしつつ『蓮華姫』の行動予測データを2人送るよ。

これならセラフィムとサージェさんは、速度で圧倒できるよね。

『希』ちゃんは、板東武者さんのサポートしてあげて。
火器管制渡すから【M.P.M.S】を全展開! 
『妖の裂け目』に向かって全力射撃で、数減らしお願い!


サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
ひゃっはー!
ここからは私たちの時間だ!!
よしなに、されちゃいましたからねー!

と、にゃんと?!
あれはセラフィム!?
『世羅腐威無』に憑依している何かも赤とか青とかだった気がしますが
もしかして力の源は永流姫様なんですかね?

ともあれ理緒さんの作戦に乗りましょう!
かもんっ!『ファントムシリカ』!
ということでシリカさん出番です
いえ、爪ではなく!戦闘の!!

理緒さんの支援を受けて
久しぶりにかっ飛ばしますよー!
アレキサンドライトラックからフローライトダガー召喚!
からの!
「手数こそ正義!参ります!!」
攻撃回数重視の【疾風怒濤】でごーごー!
雑魚を薙ぎ払いつつ
蓮華姫に肉薄したら
一点集中アタックです!



「ひゃっはー! ここからは私達の時間だ!!」
「『永流姫』の、よしなに、も頂きましたし」
「ええ、よしなに、されちゃいましたからねー!」
 高貴な身分の方から賜る、よしなに、はなにか特別なトリップ成分が入っているのだろうか。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は大はしゃぎであった。
 言葉一つで此処までテンションが上がるのは、ちょっと不思議であった。
 だがしかし、他の世界からきたる猟兵である。
 何らかの意味があってのことかもしれないと亜麻色の髪の男装麗人『皐月』は思い直した。なにか問いかけるのは野暮だと思ったのかも知れない。多分、応えを聞いてもわからんと思うが。

「……って、あれ『セラフィム』?」
「にゃんと?!」
『対妖要塞』の社が変形するようにして体高5mの鋼鉄の巨人へと変貌していく。
 そのさまを見やり二人は目を見開く。
 赤と青のまだら模様。
 その威容に彼女たちは見覚えがあったのかもしれない。
「そういえば、坂東武者『世羅腐威無』が憑依させていたのも、赤と青のなにかでしたね? もしかして、力の源は『永流姫』様なんですかね?」
 サージェは首を傾げる。
 それならば大妖『魂喰の蓮華姫』が狙うのも理解できるものであった。

 しかし、その大妖『魂喰の蓮華姫』は猟兵たちの攻勢によって進むことも退くこともできずに戦場に釘付けにされている。
「妾の肉じゃぞ! それを!!」
 傷を受けて血潮流しながらも、その欲求、衝動を抑えることもなく凶戦姫たる力を発露しているのだ。
 鋭き牙と爪。
 まさしく地に飢えた獣そのものだった。
「よし、そういうことなら、こっちもその感じで行こう!『希』ちゃん、『ネルトリンゲン』!」
「ええ、理緒さんの作戦に乗らせて頂きます! とうっ!」
 二人は空に飛ぶミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』へと飛ぶ。
 その威容に坂東武者のみならず、妖たちは目を見開く。

「空を飛ぶ、船だと!?」
「かもんっ!『ファントムシリカ』!」
 淡い紫の機体が『ネルトリンゲン』より飛び立つ。
 無論、それを駆るのはサージェである。
「ということでシリカさん出番です。いえ、爪ではなく! 戦闘の!」
 コクピットでは何やら別の攻防がはじまりそうであったが、今回は割愛させて頂く! 尺がね!
「ばりぃってやられないだけマシかもですが!」
「サージェさん、いくよ!」
 理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
「フレーム・アドバンス!」
 それは画像よりトリミングした敵の動きを止める力である。彼女の電脳魔術により、現実とデータをリンクさせるのだ。
 それによって理緒は『魂喰の蓮華姫』の動きを制限したのだ。

「体が動かぬだと……!?」
「鋼鉄の巨人が、もう一人……! それは」
「『ファントムシリカ』、手数こそ正義! 参ります!!」
 サージェは『ファントムシリカ』と共に戦場に薄紫の残光を刻むようにして疾駆する。
 疾風怒濤(クリティカルアサシン)たる速度。
 サージェのユーベルコードは恐るべき超連続攻撃。
 動きを止められた『魂喰の蓮華姫』にこれを躱すことなどできはしまい。つまり、サージェと『ファントムシリカ』から放たれる斬撃を彼女は一身に受けなければならないのだ。
「ええい、妾を守れ! それがお前たちの役目だろうが!」
 妖たちを壁にしようとしてもサージェには関係がなかった。
「『希』ちゃん、坂東武者の皆さんのサポート! 多目的ミサイルランチャー、ってぇー!!」
『ネルトリンゲン』から放たれるミサイルの爆風が妖の裂け目から次々と現れる妖たちを巻き込んで、そのすさまじい爆発でもって押し返していくのだ。

「ぬぅぅっ!! 小癪なぁ!!!」
「一点集中あたーっく! いえ、そにっくぶろー!!」
 妖の群れを蹴散らしながらサージェは『ファントムシリカ』と共に『魂喰の蓮華姫』へと肉薄する。
 その手にしたフローライトダガーの一閃が振り降ろされ、その身に癒えぬ傷を深く刻み込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

え?ちょ、あの、なんでいきなり|シリアス《こんなこと》になってるんです?

わたし言いましたよね?いま練乳ないんですよ?
『皐月』さん、これだけ豪華にお料理あるんですから練乳ありませんか!?

ステラさんはもう、わたしなんて置いていってシリアスしてますし……。

ま、まぁ『永流』さんと『皐月』さんが揃っている時点で、
他のこと見えてないだろうなー、とは思ってましたが!

……たまにはわたしにも構ってくれてもいいと思いません?

って、え!?
セッションですか! いいんですか! わーいステラさん好きー♪

ならさっそくいっちゃいましょう。
歌に合わせるなら【Canon】ですね!

永遠のリフレインを味わってください!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
なるほど、というか、やはり、というか
永流姫様がセラフィムの乗り手でしたか
|青《善性》と|赤《悪性》の中庸
故に彼女はどちらにもなり得る可能性がある
決して渡す訳にはいきませんね!

ですが、仮にも
乗り手を得たセラフィムが在って
側に皐月様がいらっしゃるなら
私たちは歌のひとつでも添える方が良いでしょう

ルクス様ーシリアスの気配にビビってるルクス様ー
私たちの|セッション《歌と演奏》で蹴散らしますよ
【アウルム・ラエティティア】
妖と平安結界
死と隣り合わせの平和
されど例え銀の五月雨であっても
負けない、生命を讃える歌を
生きる喜びを此処に

ええ、戦いに際しては心に平和を

なお私の鼓膜の犠牲は含まれません(ごふっ



『対妖要塞』が変貌していく。
 鋼鉄の巨人。
 赤と青の斑。
 その姿はまさしく『セラフィム』と呼ぶに相応しい姿であったことだろう。
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はこれまでの経緯を知るからこそ、そう思うのだ。
「なるほど。というか、やはり、というか。『永流姫』様が『セラフィム』の乗り手でしたか」
 彼女は考える。
 いや、考察する、というのが正しいだろう。
 |赤《悪性》と|青《善性》の中庸たる斑が象徴的だった。
 混じることなく。
 けれど、均等に配されているように思えたからだ。乗り手によってそうなるのか、それとも機体そのものに宿るものがそうさせているのか。
 いずれも判明していないが、しかしだからこそステラは思うのだ。
 ここからだ、と。
 どちらも持つということは、どちらに傾くかわからないということだ。
「それを大妖『魂喰の蓮華姫』にわたすわけにはいきませんね!」
「黙れ! それは妾の肉じゃ!!」
 血反吐撒き散らしながら『魂喰の蓮華姫』が咆哮する。
 猟兵たちのユーベルコードを受けてなお、滅びぬのは、大妖であるがゆえでろう。いや、それ以上に血潮を欲するという衝動にまみれているからかもしれない。
 その欲求、衝動を満たすためだけに振る舞う姿はまさしく悪性そのものであったはずだからだ。

 恐ろしいほどの重圧を放っている。
 だが、ステラは臆することなく言い放った。
「ですが、仮にも乗り手を得た『セラフィム』が在って、そばに『皐月』様がいらっしゃるなら、私達は歌の一つでも添えるがよいでしょう」
「ちょ、ちょっと、あの!? なんでいきなり|シリアス《こんなこと》になってるんです?」
 無駄にシリアスなムードになったところに乱入してくるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)。
 まるで書き割りでもぶち破るかのような行いであった。
「わたし言いましたよね? いま練乳ないんですよ?」
 まあ、そりゃそうである。
 だがしかし、事態というものはルクス一人の状況を鑑みてくれるわけではないのもまた当然であろう。どんなシリアスにでもギャグをぶち込む者がいるように、日常ほんわか平穏ストーリーにいきなりシリアス展開をぶち込むサイコパスもいるもんである。
 故に、ルクスがどれだけ練乳がないと叫んでも無駄なのである。
「『皐月』さん、これだけ豪華にお料理があるんですから、練乳ありませんか?!」
「れん、にゅう?」
「牛の乳にお砂糖ぶち込んで濃縮したやつです!!」
「蘇のことでしょうか」
「お砂糖入ってないので、お砂糖いれるやつです!!」
「ルクス様ーシリアスの気配にビビってるルクス様ー練乳は後にしましょう。ほら、『魂喰の蓮華姫』も若干フリーズしていますよー」
 ルクスの叫びにステラは呼びかける。

 もうシリアスは始まっているのである。
 始まったシリアスが終わるためには、シリアスに終わらせなければならに野田。
「なんですか! ステラさんは勝手にシリアスしているし!」
「いえまあ、そうですが」
「『永流姫』さんと『皐月』さんが揃っている時点で、他のこと見えてないだろうなーって思っていましたが!」
 ルクスはぐっすんと鼻をすする。
 別に鼻水たれそうになっていたわけではない。そういう所作である。勇者仕草である。
「……たまにはわたしにも構ってくれてもいいと思いません?」
「それでしたら、私たちの|セッション《歌と演奏》で蹴散らしましょう」
「何をごちゃごちゃと……!」
 その言葉にルクスの瞳が輝く。
「え!? セッションですか! いいんですか!」
「ええ、たんとセッションいたしましょう」
 なんか急に対毒ガス訓練がはじまりそうな勢いであるが、毒ガスはない。

「わーいステラさん好きー♪」
 単純である。
 ころっとルクスはステラの掌の上で転がされるのだ。
「……な、なにを、妾を差し置いてごちゃごちゃと!」
「妖と平安結界。死と隣り合わせの平和。されど、たとえ銀の五月雨であっても負けない、生命を讃える歌を。生きる喜びを此処に」
 ステラはもう構わなかった。
 ユーベルコードの輝き。
 己が響かせるは、歌声。
 そして、背より響き渡るは、ヴァイオリンの旋律。
 Canon(カノン)によって生み出されるは、旋律というより破壊音波魔法であった。

「な、なんじゃこの、頭が割れるような音は……!?」
「私の鼓膜の犠牲は含まれませごふっ」
 ステラは笑む。
 鼓膜がやばいことになっているが、しかし、これで敵を打ち倒せるのならば易いものだと言うように『魂喰の蓮華姫』の恐怖を増幅させるようにして歌声を響かせるのだ。
 そして、勇者は笑む。
 満面の笑みで。
「永遠のリフレインを味わってくださいね――♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
奪うことを是とする妖と聞いていたけれど
『永流姫』だけではなく
あの『対妖要塞』も狙っているのかしら
なんにせよ、阻止しましょう
風車で遊んでいたあの女の子や
平穏に暮らす人々を傷つけさせない為にも

『想いの翅』を発動し
光の翅で飛び回りながら坂東武者を鼓舞して戦うわ
勝利までもう少しよ、がんばりましょう

敵とは距離を取り、弓から破邪を矢を射て攻撃
相手が凶戦姫になってしまった時は結界術で対抗
近寄らせないわ
この世界から退きなさい



 頭が割れるような歌と破壊音波を受けて大妖『魂喰の蓮華姫』は呻く。
 身に刻まれた傷跡は、いずれもが浅からぬものであった。
 このままでは敗北は必至。
 喰らわねばならない。人の肉を。回復に努めなければならない。
 己が身に溢れるような衝動のままに彼女は走ろうとして、しかし、その前に降り立つ者の姿を見上げるしかなかった。
「妾の道を塞ぐなど! 痴れ者が!!」
「勝利までもう少しよ、がんばりましょう」
 だが、その降り立つ者は『魂喰の蓮華姫』ではなく、共に戦う坂東武者『世羅腐威無』へと言葉を紡いだ。

 妖の大軍を食い止める彼らと共に彼女――薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は戦う。
 ユーベルコードの輝きが戦場を照らす。
 それは光の翅。
 見上げるだけでわかる。
 それが生命の息吹を、希望を示すものだと。
 この場においては妖の絶望の光であった。
「あなたが喰らうのは、人の肉。人の生命」
「だったらなんだというのだ! 妾が腹に収まる栄誉ぞ!? それを!」
 静漓は頭を振る。
 わかっていたことだ。どれだけ言葉を紡いでも、交わしても、妖とは相いれぬ。彼女たちは喰らう。
 人を喰らう。

 なんでもない日常を送る幼子の生命をくらわんとしている。
 明日がどんな日になるのかもわからず、けれど、きっと平穏なる日々が続くと信じている幼子たちが犠牲になる。
 いつだってそうだ。
 静漓は思う。
 大妖『魂喰の蓮華姫』が狙うは、『雷棲滅鬼悪・永流姫』だけではなく、『対妖要塞』をもまた彼女が奪わんとするものの一つなのだろう。
 そして、その後にあるのは多くの生命が簒奪される未来でしかない。
 それを彼女は是としない。
「あの風車で遊んでいた子の生命もまた奪うというのなら。平穏に暮らす人々を傷つけさせはしないわ」
 想いの翅(オモイノツバサ)が広がる。
 踏み出す。

 いつだってそうだ。
 一歩を踏み出さなければ、何も始まらない。
「さかしいわ!」
「いいえ、私は思う。この吹く風に思う。明日を生きる人々の心を思う。あなたの爪や牙が、それを奪うというのなら」
「それの何が悪い! 奪い、奪われるのが世の常だ。富める者から奪って何が悪い。生きるためには奪い続けなければ!」
 静漓は光の矢を己が手につがえる。
 生命は、他者の生命を奪うことで生きながらえる。
 わかっていることだ。
 けれど、静漓は思うのだ。奪うだけではないのだと。ただ、奪うことだけしか知らぬ『魂喰の蓮華姫』は、知らないのだ。
 生きるということを。

 罪深き悪性であろうとも、それは知性体には必ず宿るものである。
 しかし、悪性のみではないのだ。
 影のように付き従う善性が存在している。真に邪悪なる生命がないように。
 故に、静漓は思う。
「だから、人は祈るのよ」
 放つ矢が『魂喰の蓮華姫』の右目を射抜く。
「ぎゃっ! あっ、あああっ!!」
「祈りなく、ただ奪うだけの者。この世界から退きなさい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…なるほどねぇ……確かに移動に問題は無いな…手が回らないのもそれはそう…
…魂喰の蓮華姫とやらにこれを渡すのも癪なものだ…骸の海へと還って貰おうか…
…雷獣の魂を纏ったその爪は確かに脅威…だけど自動で反撃する…と言うのは仇になるね…
…【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…周囲に数多の氷の魔剣を展開するよ…
…魔剣を発射して蓮華姫へと攻撃…すると爪が『自動』で反撃してくる…
…判っていれば防ぐのも容易…別の氷の魔剣を盾のように展開して爪を防ぐとしよう…
…そして爪で反撃するのであれば伸ばしている間は防御や回避は手薄となる
…反撃に対して更にカウンターするように氷の魔剣を飛ばしてダメージを蓄積させるとしようか…



『対妖要塞』が鋼鉄の巨人に変貌したのを見上げる。
 赤と青の斑模様の装甲。
 まるでキャバリアめいた体高であるし、同時にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解した。
 あれが猟兵たちに助力を願った理由なのだと。
「……なるほどねぇ……確かに移動には問題ないな……手が回らないのもそれはそう……」
『雷棲滅鬼悪・永流姫』だけならば、逃げおおせることもできるし、護ることもできるだろう。
 だが、迫るは妖の大軍である。
 この地域に生きる人々は妖に対して戦う術を持たない。
 となれば、大軍に人々が襲われ、無辜なる生命が奪われる。

 加えて言うのならば。
「……『魂喰の蓮華姫』とやらに、奪われるのも癪なものだ……」
 メンカルは右目射抜かれた『魂喰の蓮華姫』が悲鳴を上げる声を聞いた。
 だが、同時に膨れ上がっていく力もまた感じたのだ。
 迸るは雷撃。
 身に宿した雷獣の力。『魂喰の蓮華姫』は怒りと血を滲ませながら、その迸る雷と共に戦場を疾駆する。
 恐るべき速度。
 脅威そのものであった。
 だが、メンカルは冷静だった。
 確かに恐るべき力。けれど、敵の動きを見ればわかる。あれは自動的だ。此方の攻撃に反射的に反応してしまう。
 メンカルは、これを如何にかする方策を持ち得る猟兵であったのだ。

「停滞の雫よ、集え、降れ。汝は氷刃、汝は驟雨。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)が宙に浮かぶ。
 迫る『魂喰の蓮華姫』へと放たれる魔剣。
 それを彼女は自動的に弾くようにして爪を振るうのだ。
「は、ハッハハハハ!! 何をするかと思えば、破れかぶれか! 剣の投擲なぞで妾が怯むとでも!?」
「……いいや?」
 メンカルは生み出した魔剣を射出し続ける。
 そのたびに『魂喰の蓮華姫』は己が爪で自動的に魔剣を弾き続けるのだ。
 一見すればメンカルの攻撃はことごとくが防がれているように見えただろう。事実、傷を与えることができていない。

『魂喰の蓮華姫』もまたそう思っていた。
 だが、違う。
 メンカルが狙っていたのは、己が魔剣の特性による凍結である。
 自動的に反撃するということは、即ち。
「……攻撃の取捨選択ができない、ということ。つまり」
「妾の爪が、凍っていくじゃと!?」
 そう、メンカルの放つ魔剣は命中した箇所を凍結させる。
 即ち、『魂喰の蓮華姫』が魔剣を躱す選択をしていたのならば、結果は違っていたのだ。なまじ、自動的であるがゆえに全てを迎撃した結果、彼女の爪は凍結し動きを鈍くさせられていったのだ。

「貴様、これを計算して……!」
「……そりゃあ、いつだって計算するでしょう。お前の敗因は、ただ一つ。そのユーベルコード、その力、奪った力の大きさに慢心して胡座をかいていたからだ」
 力を使いこなすためには、その力を知る必要がある。
 状況を正しく知る必要がある。
 それを怠って、強大な力で押し切ろうとした時点で、己より弱き力を持つ、知恵手繰るものに敗北するのだと告げるようにメンカルは己が魔剣の一射を持って『魂喰の蓮華姫』を貫くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・絹子
ふむ、なるほど。なれば、求められる働きをするとしようかの。
しかして、成長が楽しみよな。
ああ、化身の皆は、妖の軍勢迎撃に向かっておるよ。武者たちへの援軍じゃ。

妾を食うか?食えぬよな?
妾の血肉は、貴殿の力にはならぬ。妾を攻撃しようにも、それすらも危ういよな。
何せ、妖に仇なす血であるからな!
とか言いつつ。妾、UCを使おう。
あとでマユに説教されそうな気はするが、ここはこの手段が一番なのでな。

不敬なのはそちらであるし。永流姫をやるわけにはいかぬでな。



 人の成長は早いものである。
 源・絹子(狂斎女王・f42825)は永き時を生きる者であるがゆえに、歩みが違う。それ故に愛おしいと思う。
 いつだってそうだ。
 短い人生なれど、そこには可能性が満ちている。
 故に楽しみだと彼女は思うのだ。
「なれば、求められる働きをするとしようかの」
 彼女は一歩前に踏み出す。
 迫るは妖の大軍。これは坂東武者『世羅腐威無』たちと己が化身たちが迎撃している。
 坂東武者たちも強者揃いであるが、しかし数の劣勢がある。
 これを覆すのは難儀なることであろう。故に彼女は己が力を持って彼らを助力するのだ。


 とは言え、彼女自身はか弱き身。
 たとえ、猟兵たちに消耗強いられた大妖『魂喰の蓮華姫』とは言え、容易く引き裂かれてしまうだろう。
「妾を食うか?」
「肉を寄こせ!!」
 右目を射抜かれ、身に刀傷を受けた『魂喰の蓮華姫』は凍結した己が体躯を引きちぎるようにして剥がしながら、絹子へと迫る。
 迫る爪。
 ぞろりと生え揃った牙。
 いずれもが獣の様相を示していた。
 喰らう。
 ただひたすらに、その衝動を満たすためだけに絹子へと迫る『魂喰の蓮華姫』。
 彼女の牙が絹子の肌に突き立てるより早く、血の矢が迸る。

「がぁっ!? な、何故、妾の体が射抜かれておる!?」
 それは彼女にとって不意の出来事であったことだろう。
 あまりにも早く、そして予備動作すら見えぬ矢。何が起こったのかさえ、彼女には理解できなかった。
 そして、何よりも。
「あ、熱い……! 撃ち抜かれた身が、どうして斯様にも……まさか、貴様!」
「じゃろうな。なにせ、妾の身に流れるは妖に仇なす血であるからな!」
 絹子が手にしていたのは餓血短刀。
 己が身を傷つけることによって生み出された血濡れの矢は、ただそれだけで妖を滅する鏃へと変貌するのだ。

「あとで説教されそうな手段ではあったが、良く効くじゃろう」
「貴様、貴様貴様ぁ!! 妾の玉体に良くも!!」
「いや何、不敬なのはそちらであるし。それに」
 絹子の切りつけた手首より滴る血が鏃へと変じていく。その瞳にはユーベルコードの輝きがあった。
「『永流姫』をやるわけにはいかぬのでな」
 生み出される鏃が一瞬で『魂喰の蓮華姫』を穿つ。
 その一撃がこれまで紡いできた猟兵たちの攻撃をつなぎ、大妖たる彼女の身を滅するのだ。
 そして、大将たる彼女を失った妖たちは追い立てられるようにして妖の裂け目へと逃げていく。
 追撃をしながら、一匹たりとて逃さぬと坂東武者たちが走り抜けていく横を絹子は息を吐きだして肩を竦める。
 裂け目は自ずと塞がれていくことだろう。
「後は……」
 そう、破られたる結界。
 この裂け目を修繕し、そして強固にするための儀式が必要となる。

 即ち。
「戦勝の宴じゃな――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『楽の音をたしなむ』

POW   :    鼓を打つ

SPD   :    箏を爪弾く

WIZ   :    笛を吹く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 妖の大軍を退けた猟兵達は、息を吐き出す。
『妖の裂け目』は修繕されることになるが、しかし、またいつ裂け目が現れるやもしれぬ。ならばこそ、この綻びをさらに強固なものとしなければならない。
 平安結果に必要なのは、雅にして風流たる行い。
 即ち、宴である。
「此度のこと、真に感謝してもしきれぬ大恩でございます。どうか、戦勝の宴を楽しんでくださいませ。これがまた結界をより強固なものへと為すでしょう……ですが、民たちは良い顔をしないかもしれませんね」
『雷棲滅鬼悪・永流姫』は社に戻った『対妖要塞』、その社の簾の奥でなんとも言い難い表情を浮かべているようにも思えた。
 彼女たちにとっては必要な宴であるが、それに突き合わされる民たちにとっては、やはり迷惑なれど断れぬことであると知るからだ。
 せめて、と彼女が宴に使われる食料や、その他の物を用立てることしかできない。
 これを平民庶民たちに伝えても、理解される所ではなかった。
 結局、連日に渡る宴は、彼らにとって止事無き身分の方の気まぐれにしか映らないのだ。

「よいのです。これで人々の安寧が守られるのならば。私に栄誉も称賛も必要ありません。ですが、共に戦っていただいた皆様には、せめて心ゆくまで楽しんでいただきたいのです」
 どうか、と彼女は簾の奥でそう告げ、猟兵達は再び神社にて執り行われることになった宴を楽しむことで、その心の報いるのだ。
 そして、響く音色はいつの日にか、その意味を人々に理解されるものであったはずだろうから――。
八秦・頼典
●WIZ

今回も一件落着かな
あれほど派手に変形した対妖要塞はおろか激戦の余波が庶民に露見されないのも、永流姫の霊力による強力な平安結界の賜物なのだろうね

宴の前に改めて永流姫に挨拶を申し上げようか
兼ねて程お慕いしておりました永流姫のお手を煩わせること無く、此度の任を無事に完遂できました
この八秦・頼典、一角の平安貴族として陰ながらではありますがお支えしていく所存であります

…ま、堅苦しい作法はここまで
後は自然体にこの宴を楽しもうか
─ひとつの恋はこれで終わった
けれども、ボクは恋多き御方
新たな恋をすぐ見つけるものでもあるのさ

余興ながらではありますが、笛を奏でましょう
願わくは皐月殿が奏でる琵琶の音色と共に



『妖の裂け目』が塞がっていく。
 あれだけ蔓延っていた妖の軍勢も今は見る影もない。
 猟兵たちと坂東武者によって脅威は退けられたのだ。
「今回も一件落着かな」
 八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は戦いの余波を見やる。
 だが、あれだけの激戦であったというのに周囲に戦いの痕はない。
 真に此処で戦いが行われていたのかと疑うほどの光景である。だが、しかし、此処で妖を退けるための戦いがあったことを示すものが一つだけある。
 それは妖を食い止めるために戦った坂東武者たちの傷跡のみ。

「戰場の痕は消せても、兵たちの傷跡までは消せない、か」
 ともあれ、平民庶民たちにとっては、平穏な日々がつつがなく続くのだ。ならば、己達が戦った功績というものは消えようがない。
 これもまた平安結界の成せる技であった。
「さて、宴の前に、と」
 頼典は激戦の疲れも何のそのと言わんばかりの軽い足取りで社の簾の前にて舞い降りるような見事な所作で膝を折る。
 そう、『雷棲滅鬼悪・永流姫』へと此度の挨拶を改めて、と伺ったのだ。
「陰陽探偵ライデン殿」
「は――」
「此度の働き、大変ありがたく。お礼申し上げます」
「いえ、兼ねて程お慕いしておりました『永流姫』のお手を煩わせることなく、此度の任を無事完遂できましたことを此方こそ御礼申し上げます」
「貴方様のお力添えがあればこそ、でございましょう。ご謙遜なさらぬよう」
「いいえ、平安結界の維持、都の平穏を護るためでございますれば。この八秦・頼典、一角の平安貴族として陰ながらではありますが、お支えしていく所存であります」
 あくまで頼典は一介の貴族としての責務を果たしただけに過ぎないのだという。

 端から見れば、謙遜が過ぎると思われるかもしれないだろう。
 だが、頼典はこれまでの堅苦しい空気とは打って変わって笑顔を浮かべる。
「ともあれ、堅苦しい作法はこれまでにて。後は、楽しませて頂きたく」
「ええ、そうして頂けますと」
『永流姫』の言葉に頼典はその場を辞して、宴へと向かう。
 自然体でいいのだ。
 肩が凝るような行儀作法というのは、他者から己を見くびられぬようにするもの。または、己以外の親類縁者、ゆかりのある者が見下げられぬためにするもの。
 それに、と頼典はどこかさっぱりした気持ちだった。

 ――一つの恋はこれで終わったのだ。

 けれど、頼典は恋多き御方と呼ばれる者。
 浮名流せど、しかし、その歩みは風に乗る雲のように。
「新たな恋をすぐに見つけるものでもあるのさ」
「そうですか。これよりは八秦卿として、奏でられるのですね」
 亜麻色の髪の男装麗人『皐月』が頼典へと美しい布に包まれた笛を差し出す。
「心ばかりの、と申し上げます。此度、その助力が一つでも欠ければ危うき戦いでした。これは私からの感謝の品」
 どうか受け取られることを、と『皐月』は漸く柔らかく笑むのだ。
「……では、返礼に笛の音を差し上げると致しましょう。願わくば」
 頼典もまた笑むのだ。
 簡単なことだ。けれど、人の立場というものは容易く手足を雁字搦めにする。
 今だけは、と言うように頼典は笛を奏で、そして願ったように『皐月』の爪弾く琵琶の音色と共に宴を盛り上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葦原・夢路
『平安結界』の事は民達には伝える訳にはいけませんからね…急な宴を不審に思う民もいるでしょう。ですがそんな民達の不安を拭うべくわたくしたちはわたくしたちらしくありましょう。
いつものように花を愛で、歌を詠み。
宴を楽しみましょう。
拙くはありますがわたくしも箏を爪弾きましょう少しでも皆様に楽しんでいただければ良いのですが…



 平安貴族の務め。
 それは妖の脅威から人々を守るためである。
 平安結界を守り、妖を祓う責務がある。
 だがしかし、庶民はそれを知らぬ。知られてはならぬ。
 彼らの平穏を護るために平安貴族は戦うのだ。そこに報酬も栄誉も必要ない。
『雷棲滅鬼悪・永流姫』がそう言ったように、葦原・夢路(ゆめじにて・f42894)もまた同様だった。
「心中お察し致します、『永流姫』」
 夢路は社の簾の奥にて座すであろう止事無き身分の方へと言葉を紡ぐ。

 如何に民のために戦えど、平安結界を護るためには貴族たちはあくまで遊び呆けているように振るわまわなければならない。
 それが如何に呪術的に必要な儀式めいたものであったとしても、だ。
 理解はいらない。
 名誉も必要ない。
 自分たちが求めるのは、この世界の平穏のみ。
 故に伝えることはないのだ。
「葦原様、お心遣いはありがたいことですが、これも我々の責務。貴方様にも窮屈な思いをさせること、どうか許して頂きたく存じます」
 夢路はその言葉に頭を振る。

 身分の違いはあれど、夢路もまた志を同じくする者である。
 民達の不安を煽る必要はない。
 殊更に自分たちの苦境を吐露する必要もない。
「わたくしたちは、わたくしたちらしくありましょう」
「ええ。よしなに」
 簾の奥で微笑む雰囲気が伝わってくる。
 だが、同時に寂しいものであるとも思えただろう。
 だからこそ夢路は白菊を手にして歌を詠む。

「わが背子は物な思ひそ事しあらば火にも水にもわれなけなくに」
 白菊は誰かを勇気づけるために。
 送る歌は、思い悩むあなたに寄り添うもの。
 たとえ、民からの非難の視線が火や水とも言わず襲い来るのだとしても、己が、己たちがいるのだと夢路は伝えるのだ。
 その思いが伝わったのだろう。
 簾の奥から『永流姫』はわずかに顔をのぞかせ、真の笑顔を見せる。

 亜麻色の髪。
 黒い瞳は星映すようにきらめいていた。
 美しい顔立ちで夢路を見つめ、口を開く。
「葦原様、貴女様のお心遣い、痛み入ります。どうか宴を楽しんでいってくださいましね」
 今己にできることはこれだけだと言うように彼女はわずかに簾の奥に消えゆく。
 簾を薄い雲に例えるのならば、それは朧月のような輝きであったことだろう。
 夢路は一礼して、その場を辞し、琴の前に座す。
 爪弾く弦は、この場に集ったものたちの少しの癒やしに成ればよいと思ってのことだった。
 人が誰かを思う時、それが力になるのだと言う。
 けれど、そうした力は暴力の前には無意味だ。いつだって弱々しい力だ。

 言葉だけでも駄目だ。
 力だけでも駄目なのだ。
 ならば、なんとする。そう、人の憂いに寄り添うことだけが優しさと呼べる人の強さだ。故に、夢路は他者を思って爪弾く。
 その音色は、誰かの懊悩を知る術もない人々に誰かを思う尊さを知らしめるように響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

武富・昇永
戦勝の宴というのに張れた気持ちになれぬのはお辛いことと存じます!
というわけで先だってのご挨拶のさい私の無礼なふるまいのお詫びとして
民草たちの不満を少しでも和らげられるよう
彼らに私がとっておきの芸などを披露して楽しませてこようと思います!
よろしければ永流姫さまにも一目ご覧いただきたい!
({転身式神・多忙冠者}を召喚すると式顔の顔に面をかぶせると輪鼓をお互いに回したまま投げ合っては受け取って回し続けたり芸を披露する)
このほかにも二人独楽に二人蹴鞠などもございまして
何も知らなければ二人の人間が
心が通じ合っているかの如く見事な技を披露するので
これは宴も盛り上がること間違いなしでしょう!



 武富・昇永(昇鯉・f42970)は戦いを終え、元の姿へと戻った『対妖要塞』の社の簾の前に身を正して膝をついていた。
 彼は恥じ入る気持ちがあった。
 逸る気持ちのままに、見たままを感じ取って『雷棲滅鬼悪・永流姫』を避けてきた。
 無礼とも言える態度を取ったとさえ彼は思っていたのだ。
「戦勝の宴というのに晴れた気持ちになれぬのは、お辛いことと存じます!」
 彼の真っ直ぐな言葉に簾の奥の『永流姫』は戸惑うようであった。
 深く頭を下げる昇永に彼女は面を上げてほしいと願う。

「先立ってのご挨拶の際、私の無礼なる振る舞いをお詫び申し上げたく!」
「武富卿、面をお上げください。貴方様がそのように思われるのも無理なからことです。民草から見れば、私の成したことは、ただいたずらに彼らを振り回しただけのこと。そう謗られても仕方のないことなのです」
 彼女の言葉が簾の奥から響く。
 そこに真を昇永は感じただろう。本気でそう思っているのだと。
 そして、己が無礼を咎めるつもりもないのだと。
 求めるは猟兵としての一騎当千の力。
 助力を請う者がどうして、と彼女は思っているのだ。

「貴方様は真っ直ぐな御方です。感じたことを感じたままに己が心という器に注ぐことできる御方。人はどうしてか、まっすぐに物事を受け入れられなくなてしまうものです。それは得難き貴方様の資質」
「しかし」
 昇永は納得できないようだった。
 己が無礼を詫びる気持ちは、如何にしてか、とも思っていたのだ。
 ならばこそ、と彼は膝を擦り、簾に寄る。
「どうか、お詫びとして民草たちの不満を少しでも和らげられるよう、彼らに私がとっておきの芸などを疲労して楽しませてこようと思います!」
「そんな、私どもが皆様を楽しませるのならば、いざ知らず……」
「これなるは、私めのけじめというものでございます。よろしければ『永流姫』さまにも一目ご覧頂きたい!」
 昇永はそのまま立ち上がり、場を辞して駆け出す。

「皆のもの、宴も酣であろうが、我が一芸をご覧候へ!」
 そう言って転身式神と共に彼は人々の集まる舞台の上へと飛び出す。
 式神は己とまったく瓜二つ。故に見分けつけるために面をかぶせ、輪鼓を回す。
 独楽の一種。
 輪鼓は糸の上にて回転しては、跳ねて宙を舞う。
 転身式神と息のあった掛け合いでもって回したまま投げ合い、受け止め、さらに投げ返すを繰り返す。
 その姿に人々からは喝采と歓声が上がる。
 見事な芸はまだ終わらない。輪鼓が高く空へと打ち上げられたかと思えば、そのまま手に取った蹴鞠をも加えていくのだ。

「なんという絶技!」
「おいおい、どうなってる。あの二人、まるで独楽が落ちてくるのがわかっているみたいに動いてやがる。あんなに高く打ち上げているっていうのに!」
 人々の絶賛の声が響く渡る。
 他者から見れば、異なる人間が互いに意志が通じ合っているかのように見事に二人芸を成していくのだ。
 宴はさらに盛り上がっていく。
 昇永は、その姿を持って己が為した無礼のけじめとするように額に汗を流しながら芸を披露していく。
 息は荒れ、体温が上昇しているのだろう。
 頬は赤く紅潮している。
 けれど、それでもどこか晴れやかなるものだった。

 なぜなら。
 昇永は舞台より遠くに男装麗人の貴族『皐月』に伴われた少女の姿を見たからだ。
『皐月』と同じ亜麻色の髪と黒い瞳。
 遠目に見ても止事無き身分の方とわかる高貴なオーラ。
 昇永は舞台の上で恭しく一礼してみせ、己が芸を奉じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・朔兎
流石に家族を目の前で失った星羅をこれ以上辛い目に遭わせるわけにはいかないな。

自らの役目を星羅は理解してるけど、まだ8歳で一人だけ生き残って目の前には家族の死体だったらしい。俺は皇族だから直接は見てないしな。

民の怒りを知ってまで楽しむのは本当の親をしらない皇族の俺だけで十分だ。悪いが星羅は先に家族の家に戻ってもらった。

「永流」姫。共にこの宴の席に星羅が同行できなくてすまない。彼女は心から済まなそうだったし、俺は割り切れるが、星羅はもうちょっと情報の整理が必要だし、御身を案じていた。あれだけ無理をしたんだ。宴終わったあと、心安らかに暮らしてほしい。

まあ、龍笛は吹けるので楽の音に併せるな。



 アヤカシエンパイアにおいて平安貴族とは庶民からすれば、遊び呆けている気楽な身分の方という認識しかない。
 だが、それは誤りである。
 平安貴族は、妖を祓う責務を負う。
 生まれながらにして決定つけられたことだ。
 宿命と言っていい。
 そして、庶民たちには、妖の存在を伝えることは許されていない。
 彼らの平穏のために平安結界を維持する。妖を祓う。
 責務なのだ。

 高貴だからそうするのではない。そうすることが、己が高貴たることの証明なのだ。
 だが、源・朔兎(既望の彩光・f43270)は思う。
 このアヤカシエンパイアでは、それが常識なのだろう。
 けれど、民草の冷ややかな視線が共に戦ったものへと向けられることを、お快く思えなかった。仕方のないことだとはわかっている。
 己が案ずる姫君だって、辛い境遇にあったのだ。
 これ以上があっていいわけがない。
 彼女とて、その役目から逃れようとしているわけでもないことも。
「けれど」
 それでも朔兎は思う。

 追わなくていい傷など追わなくていいのだ。
 肉体が傷つかずとも、心が傷つけば、人は立ち直れないくらいの傷を追うのだ。
「故に、『永流姫』様、どうかご容赦頂きたく」
「構いません。もとより、これは皆様方が楽しんで頂くための宴。楽しんで頂けないのであれば、ご無理にとは」
 社の簾の奥で頷く気配があった。
 止事無き身分の方『雷棲滅鬼悪・永流姫』である。
 彼女は、簾の奥で朔兎の言うことに尤もだと頷いたのだ。
 戦ってくれた姫君に直接礼を言えなかったことは、残念なことであるが、事情があるのならばと理解を示していたのだ。

「彼女も心からお詫び申し上げると」
「いいえ。私の方こそ。平安結果を維持するためとは言え、強いるつもりはなかったのです」
「御身を案じていた。それに貴方もあれだけ無理をしたんだ。どうか宴が終わったあと、心安らかに暮らして頂きたいとお祈りするばかりだ」
「それは此方も同じこと。とは言え、貴方様方におかれましては、これからも戦いの日々に邁進なさるのでしょう。武運長久を」
 確かにその通りだと朔兎は思った。
 此度の戦いが終わっても、猟兵としての戦いは続いていく。

 誰かが助けを求め、誰かが傷つける。
 そうした連鎖の中に自分たちもいるのだ。過去がある限り、自分たちの戦いに果てはないのかもしれない。
 何処まで言っても戦いに追いつかれてしまう。
 けれど、と朔兎は思う。
 楽の音が響いている。
 それも乗り越えていけるはずだ、と。
 己の先を征くものたちがいる。その轍は、避け得ぬ戦いへの道筋だろうか?

 戦いが迫る中にあっても、人は幸せを見つけることができるはずだ。
 そうだと思いたい。
 たとえ、己が志半ばにて死せるのだとしても。
「いや! 死んでたまるものか!! 俺は!!」
 共に姫君と添い遂げるのだと朔兎は決意新たにするように龍笛に息を吹き込み、力強く奏でるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

んー……。
民のことを思って、っていうなら、
『宴』でなく『祭り』にしちゃえばいいんじゃないかな!

民に理解を得るなら、偉い人から歩み寄るのがいいと思うよ。
止事無き人に民が何か話しかけるとかできないだろうからね。

だ・か・ら。
『永流姫』も『皐月』さんも一緒に参加しよう!
そしてもちろんナイアルテさんもね!

だいじょうぶ。
止事無き方の護衛は【E.C.O.M.S】でさせてもらうから!

あ、ナイアルテさんはこれ着てね。
(『菜医愛流帝』の長ランとりだし)

さ、サージェさん、今日は本人降臨のスペシャルデイってことで、
FCにアヤカシのみんなを勧誘だよ!

わたしたちの仲良しぶりを見せつけて仲間を増やそうー♪


サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
災いは去り、日常が戻ってきました
けど確かに災いが『見えてない』なら
平安貴族遊んでばっかですよねえ
ノブリス・オブリージュというやつでしょうか?
ですが理緒さんの提案はとても良いと思います

そう、祭り
ある時は感謝を捧げ、ある時は慰労し
そしてある時は本当に祭り上げる!!
そう、我らが菜医愛流帝をここに!!
ちょっと布教用に平安調の絵巻物語とか量産してきました!
ええ、私のユーベルコードなら楽勝ですね!

というところで準備はバッチリ
いざ、本人を召喚!
ナイアルテさんいらっしゃい!

永流姫様も皐月さんも交えて
お祭り騒ぎといきましょう
私と理緒さんの仲良しぶりが
布教にプラスになるなら最高ですねー



 アヤカシエンパイアに生きる平安貴族にとって、ノブレス・オブリージュ――貴族の義務は妖を祓うことである。
 そして、平安結界の維持。
 民衆にこの功績が知られることはない。
 なぜなら、彼らには平穏のままに生きてほしいからだ。
 結界の外の世界がとっくに滅びていると知らぬままでもいい。今日という日を安寧に生きてほしい。ただそれだけを願っている。
 故に『雷棲滅鬼悪・永流姫』は、周辺地域の民衆から急な催事、そして連日の宴に冷ややかな視線を向けられようとも構わないと言った。

 民を護ることに見返りはいらない。
 栄誉もいらない。
 何もいらない。
 ただ、こうして生きていることこそが尊いのだと言う。
「災は去り、日常が戻ってきました。けど、確かに災いが『見えていない』なら平安貴族遊んでばっかですよねえ」
 ノブレス・オブリージュと言っても、ここまで徹底しなければならないのかとサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思う。
 もっと報われてもいいのではないか。
「んー……」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)もまた同意見だったのだろう。
 民のことを思って行動するのが貴族の責務であるというのならば、彼女たちはあまりにも報われなさすぎると思うのも無理なからぬことだった。
「民のためを思って、っていうなら宴じゃなくて祭にしちゃえばいいんじゃないかな!」
「とは言え。この時期です。どうあっても民草の反感は買いましょう」
 男装麗人の平安貴族『皐月』が亜麻色の髪を揺らす。
 確かに理緒たちの言葉は、報われぬものに報われてほしいと願うものであった。
 けれど、それが実現できないことをも示していた。

「民に理解を得るなら、偉い人から歩み寄るのがいいと思うよ」
「それにはまだ早い、ということでございましょう」
「そうなの?」
「はい。性急すぎる人の動きは必ず衝突を生みますから。人は痛がりですが、他者の痛みに鈍感です。だからこそ、私どもは慎重にならざるを得ないのです」
「そういうものかな。話せば簡単なことかもしれないけれど。でも、宴を祭だと思って楽しんでほしいな。今はすぐにできなくっても」
「徐々に少しづつですね。それにお祭りは、感謝を捧げ、慰労し、時には本当に祭り上げるものです!!」
 サージェがくわっ! と瞳を見開く。

 嫌な予感がした。
 背中がゾワゾワした。
 誰のっていうのは、敢えて言うまい。後方で転移を維持しているグリモア猟兵である。
「そう、我らが『菜医愛流帝』をここに!!」
 サージェはかげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)でもって自分が布教用の絵巻物語を量産してきたのだ。
 理緒のE.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)がせわしなく人々の間を駆け抜けて、これを配布していくのだ。
 どこかで悲鳴が聞こえたような気がする。
 なんか何処からともなく現れた理緒がグリモア猟兵に長ランを肩から着せていたする。一体どこからこの長ランを持ち出したというのだろう。
「さ、サージェさん。今日は本人降臨のスペシャルデイってことで、ファンクラブをアヤカシエンパイアのみんなを勧誘だよ!」
 あ、これどうぞ、と理緒はサージェの用意した絵巻物語を『皐月』に手渡す。『永流姫』用もちゃんと重ねて渡しているところが小憎らしいところである。

「お祭りは皆さんで騒いだ方が楽しいですからね!」
 賑やかなる雰囲気は、いつだって陽気を呼び込む。
 陽気はきっと陰気すら引き寄せるだろう。
 天岩戸から太陽神が顔をのぞかせるほどに。
 社の簾の奥から、あまりの賑やかさに『永流姫』らしき亜麻色の髪がちらりと揺れる。
 舞台では他の猟兵が芸を披露している。
『皐月』がそれに気がついて、駆け出していた。

 いつだってそうだ。
 誰かの手が、誰かの一歩を導くこともあるのだ。
 故に、今日という日のきっかけを二人は生み出したのだ。
 星映す黒い瞳が、賑やかなる宴を、祭を見つめていた。きっと今はそれだけで十分。
「さあ、お祭り騒ぎといきましょう! 私達の仲良しっぷりを見れば、推しとの距離感はぐっと近づくはず!」
「うん! 仲間を増やそうー♪」
 どこかで悲鳴が聞こえた気がしたが、まあ、それもなんやかんや、というやつである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、わたしやりました。
わたし|生き残り《そのシリアスをぶち殺し》ましたよ!

そしてここからはノーシリアス!宴のお時間です!
民のみなさまにも音楽でおもてなししちゃいますよ♪

音楽はみんなの心を開いて癒やすんです。
止ん事無き方と民のみなさまが、少しでも仲良くなれるようにがんばりますよ!

ステラさんは……アッハイ。
そうですよね『永流姫』と『皐月』さんがいるんですもんね。
セッションとかしてる場合じゃないですよね。

あ、でも、すでにやべー認定されてますし、
あんまり民のみなさまを怖がらせないようにしてくださいね?

ま、ステラさんが怖がらせても、
わたしがフォローしますからだいじょぶですけどね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
致命傷でした……回復に永流姫様の膝枕とか要ると思うのですがどうでしょうか?
止ん事無き身分で近寄れない?
では皐月様を所望します
いえまぁ、冗談ですが
お二人を見てますと|むかし《はじまりのエイル様》を思い出しまして
物理的に隙のない警備とかしてましたっけ、と思わず
ご無礼いたしました

さてルクス様……が氷河期を生き残った人類みたいな輝きを?!
待って待ってこんな場所で演奏したら皆死んじゃう!!
え?なんでルクス様の方が常識人ムーブなんですか?
誰がやべーメイドですか
どう考えてもルクス様の広域破壊音波の方がヤバいでしょう?!
ああもう!
ライスメキアとは何か聞きたかったのですが
取り急ぎ破滅を止めてきます!



「ステラさん、わたしやりました!」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は得意満面であった。とても、とても、やりとげた顔をしていた。
「わたし|生き残り《そのシリアスをぶち殺し》ましたよ!」
 それはよかった……となるわけないのである。
 そのための犠牲は大きかった。
 ルクスがガクガク揺さぶっているのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
 彼女の鼓膜はもう限界であった。
 ぶち抜かれていないことが不思議なくらいの激戦であったが、ほとんど致命傷であった。致命傷の時点で、まったくもって大丈夫ではないのだが。

「……回復に『永流姫』の膝枕とか要るとか思うのですが、どうでしょうか?」
「|開腹《かいふく》? 何も沙汰はございませんが」
 ステラの言葉に首を傾げているのは男装麗人の平安貴族『皐月』であった。
 その言葉は言葉の響きを書けた言葉遊びですよね? そうですよね? と聞き返したくなるほどの言葉であったが、なんとなくステラは懐かしむ思いであった。
「では『皐月』様の膝を所望します」
「なっ」
「いえまぁ、冗談ですが」
 ステラは、そんなやり取りに懐かしさを覚える。
 あの大空の世界での冒険。であった少年のことを思い出していた。あれから時が過ぎている。思い返してみれば、あの時がもっとも距離の近しい時期であったのだと思うばかりであった。
 隙のない警備こと物理的な距離的な意味でも。
「思わず。ご無礼いたしました」
「いえ……なんとも大変な思いをされておられたのですね」
 幼子にするようにステラの頭をなでて『皐月』は笑む。

 塩対応からのこれである。
「わんもあ!!!!」
「ここからはノーシリアスでお届けしまーす! 民草のみなさまにも音楽でおもてなししちゃいますよ♪」
 わんもあぷりーず! ぷりーず、ナデナデ!!! とステラが荒ぶる暇をルクスは与えてはくれなかった。
 そう、シリアスは終わったのだ。
 殺伐とした時間は過ぎ去り、ここからは勇者のターン。
「音楽はみんなの心を開いて癒やすんです。止事無き御方と皆様が、少しでも仲良くなれるようにがんばりますよ!」
 ルクスはステラにも手伝ってもらおうと思ったが、アッハイ、という顔をしていた。
 お邪魔しては悪いなとも思ったし、セッション溶かしている暇なんてないですよね、とちょっといじけそうになったが、演奏しなければという使命感がルクスを突き動かす。

 とうか、ステラも大概である。
 ルクスのことを破壊兵器か何かかと思っている節があるが、ステラもヤベーメイドとして認知され始めているのだ。
「ハッスルされるのはいいですけど、あんまり民のみなさまを怖がらせないようにしてくださいね?」
 なんか立場が逆転しているのである。
 いや、とステラは思った。
 今から演奏するって言った?
「まって、まって、こんな場所で演奏したらみんな死んじゃいます!! え、というかなんでルクス様のほうが常識人ムーヴなんですか?」
「だって、ステラさんヤベー顔してまいますよ?」
 ハッ! とステラは『皐月』のなでなでにやばい顔をしていた。ちょっと人様に見せてはいけない類の顔をしていたのだ。

 本当は『ライスメキア』とは、とか色々聞きたかったのに、色々ぶっ飛んでしまった。
 実は『皐月』のなでなでは脱法的なあれじゃないのかと思うほどであった。
 何の話?

「ま、やべーステラさんが怖がらせても、わたしがフォローしますから大丈夫ですけどね!」
「だれがヤベーメイドですか! どう考えてもルクス様の広域破壊音波のほうがヤバいでしょう?!」
「そんなことありません! みなさんがちゃんと演奏しているので、ちょっとセッションするだけです。芸をされていらっしゃる方もほら! バックミュージックがあったほうが盛り上がるじゃあないですか!」
「おやめなさい、せっかくの宴が、祭が台無しになるやつでしょう!」
「ふふーん、腰砕けになっているステラさんにわたしを止められますかね!」
 確かに。
 ルクスは笑顔と共に楽器を取り出していた。
 やばい、とステラは渾身の力を込めて立ち上がる。

「取り急ぎ、破滅を止めてきます!!」
 これはおのれにしかできないことだとステラはルクスの破壊音波を止めるべく駆け出す。
 世界の命運はヤベーメイドに託されてしまった――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
(結界に守られた安寧……これもまた『しあわせなゆめ』なのかもしれないわね)
妖の存在は民衆には秘密だったわね
その事で誤解される事や苦労も多いのでしょうけれど
あの甘やかな声はそれを嘆くことはなかった
心が強く、美しい人
もてなしに感謝を

奏でられる音色に耳を傾けながら、そっと社を眺めてみるわ
鋼鉄の巨人に『世羅腐威無』と呼ばれる坂東武者
何かを思わないわけではないけれど
それはそれとして、格好良い造形だったわ
ついついまた見てみたいと思ってしまうわね



 アヤカシエンパイアは妖に敗北した世界である。
 かろうじて『平安結界』があるからこそ、その内側たる世界は今も平穏の中にある。
 それが仮初のものであることを知るのは平安貴族と猟兵たちだけである。
 民草は、真実を知らない。
 知らせていない。
 知らせればどんな混乱が起こるかなど言うまでもないからだ。絶望は人を殺す。故に今はまだ滅びをせき止めることでしか人々を護ることができないのだ。
 たとえ、自分たちが冷ややかな目で見られようとも、それでも誰かを守りたいと願うものがいるのだ。

 それが人の善性を肯定するものであった。
 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思う。結界に守られた安寧もまた、『しあわせなゆめ』なのかもしれないと。
 誰もが夢見ることを許されてはいない。
 現実を知っているからこそ、その尊さを知るように、誰かのためにと今もまだ戦う懸命さこそが、善性の煌きなのだと知る。
「妖の存在は民衆には秘密だったわね」
「はい。その通りでございます。彼らには安寧に生きる資格がございます。我らには、それを守る責務が」
 社の簾の奥で『雷棲滅鬼悪・永流姫』は頷いていた。
「そのことで誤解されることや苦労も多いのでしょうけれど」
「いいえ。これは苦労とは申しません。報われぬことであるとおっしゃられる方もおられるでしょうし、そう思うのもまた至極当然のこと。ですが、私は」
 彼女は言う。
 甘やかな声色。けれど、爽やかな風すら感じさせる声だった。

 達観している、というのならばそうなのかもしれない。
「彼らの平穏無事が得られていることこそ、私にとっての報いなのです」
 嘆くことはない。
 栄誉得られずとも、理解得られずとも。
 それでも己が責務を果たすのだと、『永流姫』は言ったのだ。
「心が強く、美しい人。もてなしに感謝を」
 静漓は頷く。
 彼女が己をそのように規定するのならば、静漓にはもう何も言うことはなかった。
 そのあり方が、その心の在りようが、とても美しく思えたのだ。
 利己ではな他のためにこそ懸命になれる善性の奥に悪性があるのは言うまでもない。けれど、その悪性律する強さを知る。

 舞台では猟兵が芸をし、演奏を続けている。
 どこかでどんちゃん騒ぎが起こっているのも、微笑ましいものであった。
 奏でられる音色に耳を傾ける。
 人の息吹を感じる。生きていることをなんでもないことと思えることこそが、人の世が平穏であることの証明なのだ。
 それを護るのが鋼鉄の巨人に『世羅腐威無』だというのならば、ここはきっと誰が見た夢なのだろうか。
 何かを思わないでもない。
 その名前を彼女は良く知っていたからだ。

 赤と青の斑。
 悪性と善性が内在されど、混ざることのないあり方は、人の心をそのままに示すようであった。
「それはそれとして、かっこよい造形だったわ」
 もう一度見れないものか、と静漓は思う。けれど、もう一度がない方がいいのだろう。
 あれが力を発揮する時は、人々の安寧が崩されようとしている時であろうから。
 ままならないものだと思いながら静漓は社にもたれ、賑やかな宴を見つめる。

 そして、その青い瞳にくるくると回る赤い風車を見つける。
 ああ、と思う。
 何事もなく回る風車。
 風が吹いてる。
 それはきっと平穏な明日を運んでくるのだと彼女は確信するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
撃退完了……また別の奴が出てくるとは思うけどそれはその時だね…妖の裂け目の修繕は(出来るなら)見学させて貰おう…
…民達には宴はお偉いさんの気まぐれと呆れさせておくぐらいで丁度良いんじゃないかな…
…そう言う日常こそがこの結界の維持に繋がるわけだし…
…あとはまあ…美味しいものを食べることが出来る機会は多ければ多いほど良いし…

…さて…宴や食べ物のお礼に芸でも披露するか…折り紙で作った動物たちに【浮かびて消える生命の残滓】を発動…
…生命を与えて笛や太鼓の音に合わせて踊らせるとしよう…



『妖の裂け目』より現れた妖の大軍、そして率いる大妖。
 これを撃破した猟兵達は『雷棲滅鬼悪・永流姫』によって戦勝の宴に参加することを求められていた。
「……妖を撃破しても、また別のやつが出てくる可能性があるから修繕しなければならない、と……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は改めてこの世界がひどく危ういバランスの上に成立しているのだと知る。
 平安結界の外は滅びの大地。
 妖闊歩する滅びしかない世界だ。
 しかし、それを民衆は知らない。知る術を持たない。
 なぜなら、平安貴族たちによって秘匿されているからだ。混乱を避けるためでもあっただろうし、平穏なる日々を護るためでもあった。

「……で、このお祭り騒ぎ?」
 メンカルはすでに神社の舞台にて猟兵たちが音を奏で、芸を披露している光景を見やる。
 民衆は、それを見て大いに喜んでいるようである。
 とは言え、この忙しい時期に祭を行った上に連日の宴である。
 表面上は楽しそうにしていても、明日からまたここ連日のしわ寄せのことを考えているのかも知れない。
 民衆にとっては、これもまた平安貴族の戯れ気まぐれにしか思えないのだろう。

「はい。第六の猟兵の皆様のお陰様で」
「……それにしてもこれでいいの?」
「雅なることも平安結界の維持には必要なことですので」
 男装麗人の平安貴族『皐月』が頷く。
 結界の維持には雅なる行いが必要である。これが平安貴族たちが民衆空見れば、遊び呆けていると思われている要因なのだ。
「……まあ、おえらいさんの気まぐれと呆れさせておくぐらいでちょうど良いんじゃないかな」
 これが平安な明日に繋がる。
 なら、まあ、と思わないでもない。

 如何に妖の脅威があれど民衆には知る由もないことだ。
 生きるための営みは明日も続いていく。
「……さて……それでは私も一つ芸を披露するとしようかな……」
 せっかく美味しいものや、宴を用意してもらった恩もある。
 助けを求めた止事無き身分の方や平安貴族『皐月』は、それを恩だとも思っていないだろう。むしろ、こちらがさらに礼を尽くさねばならぬとさえ考えているはずだ。
 けれど、メンカルは思う。
 これが平安結界の維持に繋がるというのならば、むしろ己がやるべきなのだと。
「造られし者よ、起きよ、目覚めよ。汝は蜻蛉、汝は仮初。魔女が望むは刹那を彩る泡沫の夢」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝き、手にした折り紙で作った動物たちが浮かびて消える生命の残滓(メメント・モリ)のように浮かび上がる。

 それは世にも珍しい紙でできた動物たちの踊りであった。
 他の猟兵たちの奏でる音に合わせて、ひょこひょことことこと舞台の上で踊るのだ。
 芸をしていた猟兵の周りを駆け回る折り紙の動物たちの可愛らしさに人々が歓声を上げる。
「なんと奇妙なことだ。あれは本当に紙なのか?」
「牛や馬のように駆けている。どんな仕掛けなんだ……?」
「……種を明かしては、せっかくの芸も興ざめというものでしょ。こういうのは秘密のままがちょうどいいんだよ……」
 メンカルは、民衆の言葉に答えながら、宴を、祭を盛り上げていく。

 確かに平安結界の中に生きるアヤカシエンパイアの人々の暮らしは、泡沫のようであっただろう。
 営みも滅びに瀕した残滓のようなものであったかもしれない。
 けれど、今日も懸命に生きるものにこそ明日が訪れる。
 そして、それを守らんとする者もいるのだ。
 ならばメンカルは思う。
 きっと明日も人の営みは続いていくだろうと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・絹子
(手首の治療は済ました)
マユに怒られた…。
マユ「当たり前です!!」

が、怒るのはそこまでで止めてくれてな。
マユ「今は他にやることがありますので」
うむ、では宴を楽しむとしよう。

というわけで、転身式神たるマユとのんびり過ごしておる。
怪我に響かぬよう、食を楽しんでおるよ。
よき楽の音も聞こえてくるゆえ、本に楽しいの。
こうして大人数で楽しむ宴も良いことじゃ。不老不死である妾だと、それが難しゅうてな…。
マユ「本当に極稀にやるくらいですからね…」

うむ、なので存分にここで楽しむのじゃ!



 手首に傷はすでに癒えた。
 傷跡も残らないだろう。けれど、源・絹子(狂斎女王・f42825)の転身式神『マユ』の怒りは消えなかった。
 いつだって変わらぬことであった。
 今更道理めいたものを説いても絹子がそれを受け入れるものではないことを転身式神は知っていた。
 しかし、己の胸に湧き上がる怒りというものはどうしうようもないものであった。
 確かに他者への献身は尊ばれるべきものであっただろう。
 褒められた行いであろうし、誰もがそう思うだろう。

「利己的な傷は、そう褒められたものではございません」
「そう怒るでない」
 こうして平安結界を巡る妖との戦いにも勝利できたのだ。
 他に何が得られるだろうか。
 これだけで十分ではないかと絹子は言う。
 けれど、彼女の怒りは収まらない。
「なあ、そこまで怒らんでも……」
「我が主君の身を案じているのです。その主が無謀な行いをすれば怒るのが当然でしょう!!」
 声に怒気が募る。
 それを絹子は手で制する。
 わかっている。理解できることである。けれど、今はやるべきことがある。
「怒るのはそこまでにしてくれぬか」
「……承知しております。今は他に、とおっしゃるのでしょう」
「うむ、皆で宴を楽しむことじゃ」
 絹子が示すは、今も猟兵たちが神社の境内に設けられた舞台の上で芸を披露し、楽の音を響かせている光景だ。

 彼らは平安結界の維持のために宴に興じているのだ。
 そう、平安結界は優雅で風流なる行いによって修繕され、維持される。
 民草にとっては、ただ遊び呆けているようにしか見えなくても、これもまた立派な務めなのだ。
「のんびりしようではないか」
「傷を負われているのです、当然のこと」
「うむ……ほれ、なんぞ美味そうなものがあるよ。よき楽の音も聞こえてくる」
 絹子は転身式神に伴われながら、人々の間をゆく。
 誰もが舞台に目を奪われ、旋律に耳をすまえている。

 緩やかな時間だと思う。
 こうして多くの人々で一つのことを楽しむというのは彼女にとって稀なることであった。
 自分には難しいことだ。
 誰かの代わりに妖の脅威を引き受けることは簡単にできても、誰かの心に残るような何かを為すことができない。
 それ故に寂しさを感じてしまう。
 多くの人の中に在ってこそ孤独を感じるように、絹子は不老不死たる己が身を思う。
 呪うわけではない。
 厭うわけでもない。
 これは自分にしかできないことだ。

 だからこそ、自分は今も生きている。
「それだけで十分よな」
 この宴を楽しむ者たちがいる。それを見やるだけでいい。
 それだけで十分に楽しむことができる。
 興が乗れば、飛び入りしてもいい。
「駄目ですよ」
「ケチンボめ」
 己の考えは取るように理解されているのだろう。怪我が癒えてもまだ動くことは許してもらえないらしい。
 けれど、明日も今日という日と同じように平穏が続くだろう。
 なら、少しばかりの窮屈さなど、在ってないよ言うなものだと絹子は宴の騒々しさにたゆたうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年06月10日


挿絵イラスト