【閑話休題】勇者の軌跡を追え【ロイさんの忘れ形見】
沈もうとする真っ赤な大きい太陽を真っ二つに割る火柱が立った。
鮮血のように赤い炎は、火の根っこのところが濁った黒いよどみを持っている。
それは精神を暗闇にけがされたようなよどみ。
この火柱の主である、炎の精霊が宿す、心のよどみであった。
強い精霊力を持つフェアリーランド。
時空が歪んでいながらも、その大火によってライ麦畑が燃やされていた。
少年の日を思わせる黄金の穂先が、じりじりと黒く焼け焦げて消えゆく青春の匂いを発する。
いままさに、少年の思い出の日の風景がオブリビオンによって燃やされようとしていた。
炎の渦の中から、竜の肢体を持つ炎の精霊が現れる。
ロイが、炎の精霊の背の方から彼に叫び訴えかけた。
「炎の精霊よ! 彼は敵じゃない! 敵じゃないんだ――!」
苦しむ竜の咆哮、炎の大きさが激化し、主人であるロイの言葉を遮って炎の精霊は吠える。
「コノモノハ、ワレワレヲ、ウラギッタ!」
「聞いてくれ、炎の精霊! 僕はそれを知りに来た!」
ライは燃えるライ麦畑の熱さの中、炎が目に入らないように腕で遮りながら訴えかける。
「シラナイコトコソ、ツミ! リュウト カ シ、クルシンダオモイヲ、ミ ニシルガイイ!」
正気を狂気に変え、炎の力が増幅する。
「ロイ! ロイ、こっちへ!!」
ライが燃えるライ麦の炎の中、ロイの方へ駆け寄ろうと走る。
「アアア! シュジンニ、チカヨルナァーー!!」
猟兵達はそれぞれの武器を構え、炎の中を走った。
このままでは、二人の友情が炎によって焼けつくされ、焦土となって消えてしまう――!
そんな危機感を胸に抱いたであろう君たちは、二人の少年をオブリビオンから助けるべく飛び込んだのである。
はるかず
●はじめに
このシナリオは【閑話休題】勇者の軌跡を追え【ライさんの思い出】の続きです。
1回で終わらせるつもりが、続いてしまいました。今回の閑話休題は今回で終わります。
長くなってすみません。そして、続きを長く待たせたことにお詫び申し上げます。
●炎の精霊戦
二人の少年が燃えるライ麦畑の中で火の精霊に襲われています。
火の精霊は狂気に侵され、主人の命令無く動いています。説得は無理でしょう。
少年たちを守りながら、倒してください。
●夕日の中の別れ
少年の思い出の日々を守り通したあなたたちに、ロイさんが別れのメッセージを言います。
それに対して、ライさんが言葉を選ぶことが出来ない状態となります。
別れの覚悟が出来ていないライさんの背を押す、別れのセリフを考えていてください。
第1章 ボス戦
『狂える炎の竜化精霊』
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POW : ガガッ……!ギガガガガ……!
自身の【正気】を代償に【自身の精霊力を越えた炎】を創造する。[自身の精霊力を越えた炎]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
SPD : シハイスルハッ!リュウノココロ……ッ!
【炎の竜の牙を生やし】【炎の鱗に纏われ】【尻尾に炎を纏わせ】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : フレサセナイ……ッ!!シュジンノメイ……ッ!
高速で旋回する【忠誠心を現した炎の渦】を召喚する。極めて強大な焼却攻撃だが、常に【主人の魔力】を捧げていないと制御不能に陥る。
イラスト:塚原脱兎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ノラ・ネコカブリ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】
『フェアリーランド』の壺を抱きしめて「炎が狂気が忌気が渦巻いて暴れ回っているよ!ミンナ、ボクも怖いけれどもミンナの力を貸して!☆」と言って各種精霊,聖霊,戦乙女,天使,英霊,死神,月霊を呼んで“七色こんぺおtぷ”を多めに配りながらクッキーやチョコレートも投げちゃいます♪
一緒にグレムリン,ブラウニー,ルーナも呼んで同じく“七色こんぺいとう”とお菓子とオモチャを配って「ミンナを支援しながら一緒に頑張ってね!☆」と「えいえいおぉ~!☆」と檄を飛ばして敵のUCを封印ー弱体化をさせつつ、聖矢とピクシィーズで攻撃を仕掛けながら状況打開に必要なら天罰刺突と月天飛翔で更なる強力な攻撃をしかけます♪
周囲の状況と状態を見ながら必要な回復と治療と状態回復を施します☆
「怖くない!ミンナも居るんだからボクだって頑張れるんだから!♪」
ティティスと伽藍と一緒に頑張って攻略します☆
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】
「炎の竜の精霊…狂気と滅気を孕みながら破壊衝動と撃滅波動を発しようとしているな、危険だ…駆逐し撃滅して討伐しなくては!」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し敵の攻撃をテレポートして空間飛翔して回避しリニアロングボウとレーザービームで攻撃を仕掛けます。
“三女神の加護と粛清を”で敵のUCを封印/弱体化させて透明化し視聴嗅覚を阻害して敵を幻惑させながら更なる攻撃の機会を作りフルバーストやエイピションで苛烈な猛攻を仕掛けて、ファンネルビットでの攻撃を同時並行に使用しながら敵の状態と攻撃手段を判断しながらドローンでの支援やサポートを駆使して乱反射と対応と対策を実行します。
姉と伽藍の支援とサポートにも協力していきます。
御堂・伽藍
【金剛胎蔵】
アドリブ歓迎
そう… なら
我等の手に拠りて、然るべき葬送を
先制UC発動
炎雷水氷風空を攻撃、防御、状態異常力に付与
自らの姿を雷を伴う炎嵐で覆う
残像陽動フェイント忍び足でゆるゆると接敵
射程に入り次第念動怪力雷水氷風空属性衝撃波UC誘導弾
フェイント二回攻撃追撃を併用し範囲ごと薙ぎ払う
サファイア。アクアマリン、ターコイズ、フロスフェリ…
あらん限りのすてぜにを放ち炎に抗う
マヒ捕縛吹き飛ばし結界術
魔力に干渉し行動をじわじわ制限
さあ いくよ
受け止める…これもまたがらんどうの役目なれば!!
リミッター解除
敵の攻撃を落ち着いて見切り
念動怪力炎雷風空属性衝撃波オーラ防御で受け流す
窮地の味方は積極的にかばい援護射撃追撃
止めの後に
優しさ祈り武器改造
小さなルビー(すてぜに)に残った僅かな魔力を封じ込める
その忠義、忘れはせぬ…
かならず とどけるよ
御然らば
御然らば
おやすみなさい…
紬雁・紅葉
【金剛胎蔵】
アドリブ歓迎
嗚呼、これは御鎮め叶わぬ…
なれば、これはお弔い…剣神、御加護を
柏手一つ祓い
羅悦紋を顕わに、やや哀し気な笑み
先制UCを最大範囲にて発動
日月火水木金土計都(空)羅睺(闇)
九属性と強化効果を味方に付与
十握剣を顕現
残像忍び足でゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔九属性衝撃波UC
二回攻撃を併用し回数に任せ範囲ごと薙ぎ払う
敵の攻撃を見切り
残像忍び足等で躱し
破魔九属性衝撃波オーラ防御にてジャストガードし受け流す
カウンター破魔九属性衝撃波UC
敵の攻撃すら「機」とし、更に打ち返して攻撃を重ねる
窮地の味方は積極的にかばい援護射撃
悪因悪果、怨念執念
斬り祓うが"剣神"布津主の御心
その執念、斬り祓い奉る!
御然らば
去り罷りませ…
一礼
炎によって、ライ少年とロイ少年は引き裂かれた。
業火がライ麦畑に転々と転移していく、このままでは何も残さない灰と化してしまうだろう。
ロイ少年は高く聳える炎の竜巻に、大きく声を張り裂けんばかりに叫んだ。
「俺は大丈夫だ! 勇者との戦いを経て、俺たちの物語は終わったんだ!」
「シュジン! アナタハ マダ クルシンデル! ナゲイテル!」
「……それは!」
ロイは自身の手を戻し、震えながら胸においた。
その胸にはまだ傷が赤く疼く気がするようだった。ロイはぎゅっと胸の服を握りしめる。
「モノガタリハ! オワッテイナイ!!」
竜巻がゆらりと蛇のようにうねり、燃える業火の量が増した。
ライ少年に近寄ろうとしていた猟兵三人の一人、ティティス・ティファーナ
(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555が全員に一度静止の命をかけた。
「前方より更なる高熱反応、全員警戒体制へ!」
「ティティ……あれは!」
御堂・伽藍(がらんどう・f33020)が炎の竜巻を指さした。火炎の竜巻の中を竜の影が登り始める。
「ライさん! こっちへ!」
ロイの方へ走り寄って行こうとするライ少年に、伽藍は必死に声をかける。
ライ少年が振り向き、その前を何者かの影が通り過ぎる。
――その時だった。炎が、ライ少年を包み込み、炎の竜の羽がこのライ麦畑を焼いたのは。
一方、地響きが鳴る中、後方で竜王とユウが様子を緊迫した表情で眺めていた。
「……来るぞ。大技が」
竜王の瞳が、うねり大きくなった炎の竜巻を捕らえた。
「知っているのか?! 竜のおじちゃん」
「あれは、ロイ将軍と炎の精霊の大技。ゴッドバード! 相手の軍を焼き払った後、切り開いた道に味方軍を通すための技だ。だが、完全なドラゴン化は魔力を出す主がいないとできないはず……!」
緊迫した口調で竜王が言うと、ユウが希望をもって猟兵達の方を見た。
「じゃあ、大丈夫だ! 姉ちゃんたちなら、潜り抜けてくれる!」
「シールド展開! 全員、私の背後へ!」
ティティスがその場全員に命令を発した。
そこにいた全員が、ティティスの元へと駆け寄り退避の姿勢を取る。
炎の精霊の、叫びが、精神力を振り絞る一撃となって、襲い掛かってくるのが分かる。
『コレガシュジンノキモチ! クルシミ! ナゲキ! クラウガイイーー!!』
天空に渦となって貫き、ドラゴンの姿を現した。 炎を纏うドラゴンが、急降下してライ麦畑が広がる地上を焼き払う。
その後ろを、炎の渦がドラゴンの尾となって追従し、後方に炎の渦が広がっていく。
ティティスの後ろに到着した祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、壺を抱きしめて、目をつぶった。その時、ゴッドバードの火炎が叩きつけられた。
「ミンナ……! 大丈夫だから!」
熱い火炎の中に、シールドで炎を免れた猟兵達がいた。いまにも燃えつくそうとする火の手が、シールドの外を覆っている。
「全員到着しているか?」
冷静だが、鬼気迫るティティスの声が響く。
「ライさんが……!」
真っ赤に燃えるシールドの後ろで、伽藍が炎に飲まれたライ少年への心配の叫びをあげた。
すると根明な声が帰ってくる。
「ここに居るぜ!」
服に焼け焦げた跡をつけながらシャザールが少年ライを抱えて、伽藍に見せた。
ホッとする伽藍に、ライ少年はポケットから、1つの指輪を取り出した。
「伽藍ちゃん、この宝石を使ってくれ。炎の精霊を操る宝石であり、ロイの遺品だ」
「ライさん ずっと持っていたの?」
「こんな日が来るんじゃないかと感じていた……」
悲しそうに俯くライ少年。伽藍は赤いルビーの指輪をライ少年から受け取る。
そして伽藍は前を向く。火炎の熱さがシールド越しにもヒリヒリと伝わってきた。
「まるで 思い出の すべてを 焼き尽くす……そんな熱さ」
伽藍は炎の精霊の思いを、業火から感じ取っていた。
「まさか! 完全に主人の過去を模倣したとでもいうのか……!」
「そんな!? 完全な竜になっちまったのか!? 猟兵の姉ちゃんたちは……! 助けに行かなきゃ」
「まて。歴史を語る者は、弱き者であっても生き残らなければならない。その歴史を後に語るために」
飛び出そうとするユウ君の肩を取り、竜王が制止をかける。
「くそ! 見ていることしか、できねぇのか……!」
まだユウくんの小さな手の中に、作られたばかりの勇士の剣が握られている。
「嗚呼、これは御鎮め叶わぬ…」
静かな。水に波紋が広がっていくような、そんな声が竜王とユウ君の後ろからした。
二人が驚いて後ろを見た。
「あ、あなたは……!?」
ゴッドバードが過ぎ去った後、シールドの周り以外は全てのライ麦が焼け死んでいた。
灰となり、薙ぎ払われたライ麦畑に、黒い道が通っている。
守られたのは、ティティスがシールドを張った、猟兵達の場所だけであった。
「高熱反応が弱体、全員今のうちに作戦行動を」
「わかったぜ! ライさんは俺が後方に連れていく。任せたぜ、猟兵さん達!」
シャザールがライ少年を抱きかかえると、立ち上がった。
ライ少年は、伽藍を一度見ると、頷く。
頷き返す伽藍。三人は信頼し合った視線を重ねた。
「ティティ、先生、いこう」
「了解した、伽藍。姉、3秒後に第二波を予知した。二時の方向に敵の熱波あり。すぐさま全員、作戦行動を!」
「分かったよ♪ ティティス☆ 炎の狂気が、忌気渦巻いて暴れ回っているよ! ミンナ、ボクも怖いけれども力を貸して!☆」」
短い返しで、全員が意思を統一した。
祝聖嬢が《フェアリーランド》で妖精を呼び出し、ティティスが《アストラル・エレメント・トランスフォーメーション》でファンネルビットを展開、伽藍は《トリニティ・エンハンス十二刻》で自らの姿を雷を伴う炎嵐で覆った。
炎の精霊は怒り狂い、火炎をまた纏い始めた。
「アアアアアッ!!――」
「炎の竜の精霊……狂気と滅気を孕んでいる」
「そう… なら。我等の手に拠りて、然るべき葬送を」
「えいえいおぉ~!☆」
伽藍が熱風が吹く、炎の精霊の方向へ走って接近する。
ティティスはシールドビットを伽藍の援護につけさせた。
祝聖嬢がこんぺいとうをばらまき、更にクッキーやチョコレートを追加して妖精たちを励ます。
3人がUCを使った瞬間、ティティスが示した2時の方向から、火炎弾が飛んできた。
まず、接近戦に慣れた伽藍は1秒目ですてぜにを放った。サファイア、アクアマリン、ターコイズによって、すてぜにが火炎弾を打ち消した。
援護するシールドビッドがすてぜにがうち漏らした炎を受けた。
そのまま、あらん限りのすてぜにを放ち、火炎弾を打ち払いながら先制攻撃を仕掛ける。
「「「エレメンタルピクシーズ!」」」
2秒目、祝聖嬢と妖精達が、火炎弾の先にいる炎の精霊へ向かって魔法を放った。
魔法が炎の精霊にヒットし、竜の衣を剥がす。
「ガガガガ! シュジン! シュジン! トモニイル! チカッタ!!」
正気を失った精霊が、火炎の渦の中にまた籠った。
「破壊衝動と撃滅波動を確認! 危険だ……!」
3秒目にティティスが、先ほどのゴッドバードと同じ挙動を見せたことにいち早く気付いた。
シールドビット、リフレクタービット、ファンネルビッドがそれぞれ攻撃を仕掛ける。
「第二派がくる。早く、駆逐し撃滅して討伐しなくては!」
ティティスのひっ迫した声に、祝聖嬢が新しく壺の中から妖精を呼んだ。
「グレムリン、ルーナ、ブラウニー! ミンナを支援しながら一緒に頑張ってね!☆」
グレムリン、ルーナ、ブラウニー達は祝聖嬢から、オモチャとお菓子を受け取って、瞬時にエレメンタルピクシーズに加勢する。
接敵した伽藍は自身の炎嵐で敵の炎を抑え、一瞬で炎の中に籠った精霊を、炎ごと薙ぎ払い何度も攻撃をあてる。しかし、ティティスの声を聞いてすぐ構えた。
その伽藍の後ろに、スッと残像を纏い現れた人物がいた。
「伽藍、母が来ましたよ。一緒に、祓いましょう」
羅悦紋を顕わに、やや哀し気な笑みを浮かべた紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)であった。
「お母様……!」伽藍は覚悟を決めた。
「さあ いくよ。受け止める…これもまたがらんどうの役目なれば!!」
伽藍の身体に纏う雷の炎嵐が増した。
「悪因悪果、怨念執念
斬り祓うが"剣神"布津主の御心
その執念、斬り祓い奉る!」
紅葉のUC《九曜陣・八雲》によって、叢雲が象りし九本の剣が現れ、敵の攻撃すら「機」とし、更に十握剣を使い打ち返す。
二人の目の前が真っ赤に染まったかと思うと、一瞬にして火が真っ二つに割れた。
「アア、アア、シュジン、シュジン、ワタシト……イッショ……二……」
伽藍と紅葉、二人の後ろにはバラバラになった炎の精霊が散る姿があった。
ゴッドバードを剣で切り割いたのだ。
「御然らば
去り罷りませ…」
紅葉が一礼し、一言告げた。
チリチリと火の粉が、灰と化した元ライ麦畑に降りそそぐ。
「炎の精霊のエネルギーが消滅。戦闘に勝利した。姉、伽藍。戦闘終了だ」
淡々としたティティスの報告が入った。
「おわった、んだね♪」
守られたライ麦の周りで妖精達がホッとするのが伝わってくる。
「やったー?」「よかった、よかった」「かったー♪」
妖精たちが手を取り、無事だったことを喜び合った。
伽藍は頭上から降ってくる火の粉を、そっと祈りをこめて一掴みする。
そのまま火の粉を遺品のルビーの指輪に封印した。
「その忠義、忘れはせぬ…… かならず とどけるよ」
そっと優しくルビーを撫でたのだった。
御然らば
御然らば
おやすみなさい…
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『もう帰る時間だ』
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POW : さようなら。と別れを告げる。
SPD : また会える?と聞いてみる。
WIZ : またね!と言って帰る。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夕焼けが熱い。
だんだんと、反対方向が暗くなっていくのが分かる。夕日が沈んで行っているのだ。
守られ遺されたライ麦畑に、ロイ少年とライ少年が向き合って立っていた。
「ありがとう。火の精霊の気持ちを汲んでくれて。あの子の事はずっと気にしていた」
ロイ少年が、皆に礼を言った。
猟兵の一人が、ライ少年にルビーの指輪を手渡す。
「そうだ!」ライ少年は礼を猟兵に言って「ロイ、これを……」と、ロイ少年に手渡した。
スッとロイ少年の手を通り抜け、ライ麦畑の上にルビーの指輪が落ちそうになった。
瞬時に、水の精霊が出てきてルビーの指輪を拾い支えた。
ロイ少年の手先が透けていた。ロイ少年が言う。
「もう、時間みたいだ」
夕日が沈んでいく、そして暗くなっていく。
ロイ少年の身体が透けて、薄くなっていく。
猟兵に守られたライ麦が、そよそよと揺れていた。
ライ少年は、感極まって別れ言えずにいる。このままでは、別れの一言も言えないだろう。
なにか、一押ししてあげなければ……そう、猟兵達は思ったのだ。
ロイ少年は何も言えないでいるライ少年を抱きしめた。
ライ少年の首元に腕がかかる。
ふわり――と、ライ少年の金の髪が揺れた。
「ライ、ずっと言いたかったことがある」
抱きしめられたライ少年は消えていくロイ少年を離さないように、抱きしめ返した。ロイ少年は囁いた。
「俺が、裏切った理由だ」
夕日が落ちていく。
昏い、昏い、黄昏時が過ぎ去っていく。
「俺は竜化の病に侵され、魂までも弱っていた」
赤いルビーの指輪が、水の精霊の手の上で昏い中、燃えるように光っている。
「同じく、さっきの炎の精霊も一緒に竜化で狂っていっていた」
淡々としたロイ少年の言葉。
竜化のエネルギー体となり、霊とでもいえる存在。
「だから、精霊を連れて一緒に逃げたんだ。ある科学者の帝国側からの勧誘を受けて」
「――!」
ライ少年が震える。目を大きくして涙を流す
「つらい、現実から逃げたんだ……」
「そう、だったのか……」
「ライ、また会える。だから、絶望しないでくれ」
すべての夕日が落ち、真っ暗になった。
鮮やかな油絵のような風景は消え、静かな夜になったフェアリーランドがそこにあった。先ほどの時空が歪んだ空間は、消え去っていた。
後ろでライさんの魔法店の窓が明かりを仄かに放っている。
いつの間にか、ライさんは元の大人の姿に戻っていた。
落ちた夕陽を見て、ライさんはつぶやく
「ずっと、後悔していた。我が王が宇宙竜を召喚した時、宇宙竜は竜化エネルギーの波動を放った」
遠くに行った友人の心を探る、つぶらな瞳だった。
「ロイは一番前で盾になってくれた。その後からだった、ロイが竜化の症状で悩まされたのは」
目を閉じて、水の精霊からルビーの指輪を受け取り、ライさんは握りしめた。
「私はそれが気がかりで、いつも負い目のように思い、彼の分まで騎士として働いた」
肩を落とし、辛い胸の呼吸を整えてライさんは言う。
「彼は兄貴分を果たしてくれた。だから、これまで言えなかったんだろう……」
そして、猟兵達の方へ振り向き、ライさんのつぶらな瞳が見えた。
「私は、彼に”また会おう”と言われた。私は、何も返せなかった……」
さらさらとライさんの金の髪が靡いた。
「……もし、君たちだったら、どうしただろうか?」
答えを求めて、猟兵達に問うてきたのだった。
ティティス・ティファーナ
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】
「私は『幽魔月精』、悠久の刻を流れ“召喚者”に従う事が役割だ」
2人をゆっくりと見て「刻の終焉は生命と有限時間存在の特権だだが、後悔と悔恨を残すのも“人間”の礒だ。」目をつむり両手を広げてファンネルビットを創造して展開し、姉と同調して過去の総ての出来事の印象に残る強いものを映像と音声で再現してみせて「私のデータに記録し記憶した、喜怒哀楽と談笑の混じる良い“記憶”だ。私は“召喚獣『幽魔月精』”決して変わらず(刻の終わりが私の終焉)存在している【過去】であろうと憶えている限り色褪せぬ友情が続くのだ」と祈る様な仕草で囁きます。
「また会える?は生命有限の呟き、過去も未来も私も変わらずに存在し続ける…供に会い、会う為の助力はさせて頂く」
「忘れるな友情を、忘れるな今を!、私を通して【過去】には逢えるが【過去】である事は忘れるな」
ちょっと寂しそうな顔をしながら「未来永劫とは刻にはとても残酷なものなのだな…“時”の価値を知った」と呟き姉に抱きしめられるのに素直に甘える。
祝聖嬢・ティファーナ
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】
『フェアリーランド』の壺の中から各種精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神を呼んで“七色こんぺいとう”を多めに配ってルーナを呼んで「ロイ少年とライ少年に渡してくれる?☆」と紙コップと妖精ジュースを汲んだのを渡して「お別れは、寂しいけれども死後の笑顔を見る気蟹なんだから大切にね♪」と言います☆
難しいお話しをティティスがしてくれているのは素直にじっと待って周りのミンナには掌の“七色こんぺいとう”をあげて邪魔をさせません♪
月霊がオズオズと小さなたんぽぽを2輪以って近付いて「元気…だして…ください…」とまた祝聖嬢の後ろに隠れます☆
呪いも未来も変えられない、のなら笑顔で精一杯頑張って明るく楽しくミンナで盛大に盛り上げて「ミンナもティティスも伽藍もロイ少年とライ少年に“はなまる満面笑顔”で明るく元気よく「元気でね☆」「さようなら♪」「またね☆」を言ってあげようね!☆」と言います♪
最後に消える直前に手で音頭をとりつつ「せ~の!☆」と。
御堂・伽藍
【金剛胎蔵】
アドリブ歓迎
…
がらんどうから一つ、宝石を取り出す
念動力優しさ祈り武器改造武器に魔法を纏うUC
火水地雷光闇 そして空属性を付与
白い小さい石を、ぎゅっとライさんに握らせる
これ フェアリークォーツ
ようせいがのこした いたずらのあと
下から真っ直ぐ見上げ、問う
ライさん おぼえてる?
『属性の妖精よ!
火よ!水よ!地よ!雷よ!光よ!闇よ!
――そして、竜よ!
今、七色の光ありて、騎士が討つ!』
わたし ライさんに たすけてもらった
そのとき がらくたはおもったよ?
『このひとを たすけたい』
『このひとの ちからになりたい』
そのとき がらんどうは おもったよ?
ライさん 教えて?
ロイさんは、貴方に何を託したの?
物は、人から人へ心を伝える器。我楽多である我々は、それを何よりも知る、
物語は剣より語られ石に継がれる
今なら語れる筈だ,妖精の剣よ
炎の剣は、何を託した?
さあ あなたのこえで おしえて?
さあ このいしに きざむよ?
(『欠けた魂』露出)
ルビーの指輪が渡せず落ちたのを見て、猟兵達も唖然としてた。
ただ一人、祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は気をしっかり持って、元気を分けに二人の前に羽ばたいて出てきた。
悲しむ少年二人の顔を見ると、祝聖嬢は壺を取り出して、ぱっと明るくなる笑顔でUCを発動した。
UC《フェアリーランド》によってルーナが飛び出してくる。
「ロイ少年とライ少年に渡してくれる?☆」
ルーナにジュースを注いだ紙コップを渡す。
「うん♪ いいよ~!」
呆気に取られているライ少年に、ジュースが渡された。
「あ、ありがとう……」
「俺にも? すまないな」
ロイ少年も紙コップを受け取って、ルーナに礼を言った。
月霊がおずおずと小さなたんぽぽを2輪以ってライとロイに近付いて「元気…だして…ください…」と言って差し出した。そして、スッと祝聖嬢の後ろに隠れた。
「お別れは、寂しいけれども死後の笑顔を見る機会なんだから大切にね♪」
その言葉に、ロイもライも頷いた。
「うん…!」
「ああ!」
御堂・伽藍(がらんどう・f33020)が仲良くしているライとロイを見て、時計に問いかけた。
「時計さん あなたは これがみたかったの?」
伽藍の手の中で、時計が跳ねる。
『えぇ! 哀しい男はほっとけないクチなの……二人の大人の別れ際は、悲しい結末だったものね』
がらんどうの中にいた、宇宙竜のオルゴールが時計に問いかけた。
「ホント、お前、何者なんだぜ?★ 宇宙を超越してやがる」
時計はため息をついたかのように言った。
『話すと長いのよね~』
伽藍が目をつぶって時計をしまう。
「聞く 話す でも今は……二人を見送る」
一方、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)がライとロイの前に進み出て、胸に手を当てて言った。
「私は『幽魔月精』、悠久の刻を流れ“召喚者”に従う事が役割だ」
2人をゆっくりと見て「刻の終焉は生命と有限時間存在の特権だだが、後悔と悔恨を残すのも“人間”の礒だ。」
目をつむり、スッと両手を上げる。UC《マルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビット》によってファンネルビッドが創造され起動した。
「姉、同調する」
「うん、ティティス!♪ やろう!☆」
祝聖嬢がこんぺいとうをばらまき、妖精たちに与える。
「また会えるは、生命有限の呟き。過去も未来も私も変わらずに存在し続ける…供に会い、会う為の助力はさせて頂く」
ティティスは『またあえる』願いの二人の輝きの為に、ファンネルビッドで【過去】のよい光景を映し出した。
二人の赤ん坊の泣き声がライ麦畑に響く。そっと、二人の赤子を拾う女性の貴人の姿があった。この勇者の国の王の妃だ。
拾われた赤子はライとロイだった。赤子が少し大きくなった頃、二人はライ麦畑で本当の父親と母親が迎えに来ると思って待っていた。
いつまでもいつまでも、空が赤くなる時まで。
妃様の勇者の歌が聞こえた。そして心配して駆け寄る王の姿があった。
二人は王と手を繋いで、妃様の歌を聴きながら夕日が落ちていくのを見守った。
王は言った
「さぁ、帰ろう?」
王の言葉に、少年は俯いた。
「帰るってどこへ?」
「僕達に帰る場所なんてないよ……拾われ子だもの」
王は自身のあごひげを擦ると、ほんわかとした笑みを見せて二人に言う。
「実は私もこの世界には帰る場所はないんだ」
その言葉に、ロイがびっくりして顔を上げた。
「陛下も? 帰れる場所はないの?」
国王は夕焼けの広がる天を仰いだ。
「帰れるのは魂が昇るときだけ、すべて世界が竜に帰るときだけなんだよ。そういう意味では、私たちは帰る場所を持てない友なのだろう」
うつむいたままのライが、悲しそうに言う。
「僕は世界に帰る場所が欲しかった」
ロイは納得したように、大きな存在を世界に感じているようだった。
「そうか……すべて竜になるのか……」
一人はライ麦畑に隠れた足を見つめ、もう一人は雄大な空を見上げていた。
「いつか、お前だけの。いや? お前たちだけの帰る場所が見つかることだってあるさ」
ライ少年が顔を上げて、国王に問う。
「それってどんな場所?」
続けてロイ少年が目を輝かせて聞いてきた。
「竜になるより凄いのか?」
少し言葉を詰まらせて、王は苦笑いをすると。ダッシュで走り出した。
「それは……大きくなって、お前たちと肩を並べたときに話そう。さあ、妃のところまで競争だ!先に帰ってしまうぞ!」
突然の王の逃亡に、二人はカンカンになって国王を追いかけだす。
「ずるーい。足速い」
「まけないぞおー」
父と子供が母の元へと駆けていく光景がうっすらと消えていく。
「今、二人の【過去】を私のデータに記録し記憶した」
ロイが懐かしさに映像に涙した。
「俺たちが、拾われた時の映像だ……」
ティティスはこぶしを握り締めて言う。
「忘れるな友情を、忘れるな今を!、私を通して【過去】には逢えるが【過去】である事は忘れるな」
ライ少年はティティスに同調して頷いた。
「うん。僕たちはここで出会って、ずっとこの【過去】をわすれてなかった」
「そうだ。だから、このライ麦畑で会えた。ありがとう、猟兵さん。ライ麦畑を守ってくれて」
ロイも頷いて、ライを見た。
二人が仲睦まじそうな顔をして見つめ合うのを見て、ティティスは寂しそうな顔をした。
「未来永劫とは刻にはとても残酷なものなのだな…“時”の価値を知った」
すっと祝聖嬢の胸に、顔をうずめ。別れの悲しみをぐっと胸にしまった。
伽藍が二人の様子を見守っている姿勢から、時計をもって前に出てきた。
「まだ 分かっていないことがある」
神妙そうな顔で伽藍は
「青き騎士ライは赤き騎士を知りたいと言った まだそれを聞いていない。 妖精の剣よ 炎の剣は、何を託した? いまならきっと二人の物語を聞けるはず」
「それは、僕も知りたいんだ。 伽藍ちゃん」
ライ少年は伽藍ちゃんに背を向け、ロイの方を見ると真っすぐ言った。
「ロイ、消え行く前に、教えて欲しい。どうして、裏切ったのか――」
「俺は、世界より、恋人を取った」
「――!」
「誘われたんだ。帝国からの間諜だった医者に。『竜化エネルギーに侵されている精霊を助けたくはないか?』と。だから、俺は国を裏切り、父である国王を殺し、帝国側についた。あとは……お前の知っている通りだ」
ライ少年は、すこし黙った後、猟兵達の方へ振り向いた。
「聞いてほしい。伽藍ちゃん、ティティスさん、そして祝聖嬢ちゃんにも」
そして、ロイの方へ視線を送る。
「沈黙の騎士について……いいな? ロイ」
ロイも視線を合わせ、その赤い目を向けた。
「ああ、俺たち沈黙の騎士は、第一勇者の時代の秘密を握っている」
目には秘密を抱変えた騎士としての、どこか暗い炎が宿っていた。
「この沈黙は、世界を滅ぼす情報を守るための沈黙だ」
ティティスが腕を組んで、疑問を呈する。
「そんなにも、重大な情報なのか?」
「ああ。誰も、誰にも知られてはいけない」
ライ少年に切実そうな顔で伽藍が言った。
「ライさん それは 私たちにも言えない?」
猟兵の方を見ていたライ少年は、少し俯いて頷いた。
「今も、言えない。だって、特に君たちのような妖精や、精霊には漏らしてはいけなかったんだ」
口を開け、驚いた顔で伽藍は言う。
「漏らしてはいけなかった? じゃあ もしかして」
「ああ、沈黙が破られ、精霊に渡ったんだ」
ロイはライ少年の手の中にある指輪を指さした。
「この、そのルビーの中にいる、相棒の炎の精霊に」
慌てた様子で、祝聖嬢が天を仰ぎながら、周り皆を見て言う。
「で、でも! 世界は滅びてないよ♪ ほら、今も天は回ってる☆」
深く頷いて、ロイ少年は目を閉じた。
「結果的に、沈黙は守られた。だが、精霊と俺は――」
しばしの沈黙、そしてロイは顔を上げた。
「なぁ、ティティスさん。お願いできるかい? 俺の――罪を映しても」
「それで、二人の【友情】は保たれるのか?」
ティティスは冷静な声で言ったが、少し心配そうな表情をしていた。
「今の俺達なら、きっと手を繋いでいられる」
「うん、大丈夫。お願い、ティティスさん」
二人の心には、かつての友情の炎が燃えているかのようだった。
たとえ透明になっても、傍を離れない二人にティティスは納得してこう言う。
「分かった。【過去】に接続する」
空に映像がまた浮かび上がる。
場所は勇者の国の王室。白いレンガがまだ焦げ跡を作る前の、奇麗だったころの姿だった。
「これは、炎の精霊に恋し、世界を敵に回した俺の物語――」
王と赤き騎士の二人。玉座の間で王に進言するロイの姿があった。
「ひどいではないですか! 炎の精霊を、俺の相棒を封印するというのは」
勇者の国の王は、口ひげをさすりながら、厳しい表情で告げる。
「ならん。これは、沈黙が破られる危機なのだ。知られたからには、封印は免れん――」
「彼女が居なければ、宇宙竜の召喚時、竜化エネルギーによって、皆滅んでいたのですよ? 陛下も、ライも、そして私も」
マントを床につけ、仰々しく跪きながら、ロイは顔を上げて真っすぐに言い放っていた。
「確かに、彼女の貢献は我々の命を助けてくれた。しかし、精霊の口に戸を立てることは出来ぬ。これは、沈黙を破られる危機なのだ」
「精霊が噂を広めるからと言って、封印だなんて。この20年間使えてきた彼女が可哀そうです!」
「これは沈黙の掟。誰も逆らっては来れなかった」
王が立ち上がり、マントを翻すと
「封印の儀式の命はすぐにでも行う。お前は頭を冷やし、沈黙の掟について考えよ」
「国王、いえ、父上。なにとぞ慈悲を彼女にかけて上げて下さい。父上――!」
王が退出していく背を、立ち上がって静止の声をかける赤い騎士ロイ。その声は室内にむなしく響くのだった。
魔術師達が紫色の部屋で、1つの円を囲んでいた。
封印の魔法陣の中に入れられた赤いルビーの指輪が光り、宝石の中で炎が蠢いていた。
呪文が唱えられ始めた時、唱えていた一人の魔術師が倒れ伏した。
宝石の中から女性の姿となって出てくる。
「ゴシュジンサマ?」
ばたりと倒れた魔術師の後ろに、赤いマントの騎士が立っていた。
燃える炎が涙のように吹き出し、魔法陣の中に満ち溢れた。
「モウ、会えないカト……!」
柄で腹を殴り、一人吹き飛ばした後、魔法陣に駆け寄って赤き裏切りの騎士、ロイは言った。
「迎えに来たぞ、ロマ。もう、後戻りはできない――俺と共に、この国を裏切ってくれ」
「ゴシュジンサマとなら、ドコマデモ!」
二言で精霊がすぐ了承し、運命を一瞬で受け入れた。
「お前が世界の脅威となるのなら、俺もそれについていく。そう決めたのだ!」
炎の精霊を阻む魔法陣を剣で切り割くと、結界が割れて炎が噴き出した。
噴き出した炎を剣に纏い、一人二人と魔術師が倒され、城の白い壁が焼け焦げていく。
室内は火炎に飲み込まれ、映像はそこで途切れた。
「そう、だったのか……」
その映像を見たライ少年は、事実に目を見開いていた。
「これが、俺の裏切った理由だ」
ロイが真剣な眼差しでライ少年を見やった。
ライ少年の震える手に、伽藍が白い小さい石をぎゅっと握らせる。
「これ フェアリークォーツ ようせいがのこした いたずらのあと」
下から真っ直ぐ見上げ、伽藍がライ少年に問う。
「ライさん おぼえてる? わたし たすけてもらったこと。
『属性の妖精よ!
火よ!水よ!地よ!雷よ!光よ!闇よ!
――そして、竜よ!
今、七色の光ありて、騎士が討つ!』
わたし ライさんに たすけてもらった
そのとき がらくたはおもったよ?
『このひとを たすけたい』
『このひとの ちからになりたい』
そのとき がらんどうは おもったよ?
ライさん 教えて? ロイさんのこと、いま本当はどうおもっているの?
物は、人から人へ心を伝える器。我楽多である我々は、それを何よりも知る」
伽藍の身体から”欠けた魂”が露出していた。
「さあ あなたのこえで おしえて? このいしに きざむよ?」
伽藍のUC《トリニティ・エンハンス十二刻》でフェアリークォーツは神秘の輝きを放っていた。
伽藍の言葉を受け、ライ少年は震える唇を一度かみしめたあと、大きく息を吸った。そして、フェアリークォーツを握りしめ。ライはロイに言い放った。
「たとえ裏切ったとしても、過去全てがなくなるわけじゃない! 二人で迎えを待って夕日が沈むまで待った過去だって! 両親のように慕っていた国王と妃様との日々だって……!」
赤く照らされたライ麦畑が黒い影へと変わっていく。
背に夕日を受け、うっすらとほほ笑むロイを映していた。
「僕にとって、兄さんとの大事な日々だった!」
キラキラとフェアリークォーツが光り、ライの心の思い出が刻まれていく。
「すまない。ライ。傷つけてしまって――」
透明な体で、そっとライを抱きしめた。
「俺が悪かった」
そして、一筋の涙をこぼした。
「こんな俺を、死んだ後に弔ってくれて、ありがとう」
「ロイ――ロイ兄さん――! うぁああ……!」
今までの悩みが、堰を切るように涙となってライ少年から流れ落ちた。
「死した後でしか、仲直りできなかったというのか」
ティティスが衝撃を受けながら、胸を手で押さえていった。
「うんうん♪ でも、仲直りできてよかった☆」
ティティスの肩で祝聖嬢が羽を鳴らす。
「ずっと 心残りだったのね」
伽藍がすべてを知った表情で、安堵の笑みを漏らした。
世界が、昏くなっていく。
「時間みたいだ」
ロイ少年が消える時を悟っていった。
祝聖嬢が手を大きく広げて、飛びながら、《フェアリーランド》で壺から出てきた、精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神に呼びかける。更に、伽藍、ティティス、時計、宇宙竜、そしてそっと傍で見守っていた竜王とユウ、シャザールを含めた皆を集める。
「ミンナもティティスも伽藍もロイ少年とライ少年に“はなまる満面笑顔”で明るく元気よく「元気でね☆」「さようなら♪」「またね☆」を言ってあげようね!☆」
ティティスが真っ先に頷いた。
「ああ、姉。分かっている。時は有限 二人の思い出の為に 最高の別れを!」
ユウがぐすっと、鼻先を擦って別れの挨拶をする。
「いい光景が見れたぜ。兄弟っていいもんだな」
竜王が頭を下げて、ロイに言う。
「ロイ、お前とは同じ罪を感じている仲でもある。またこの世界で会おうというのなら、罪と向き合った時に私も手伝おう」
シャザールが、一本隠し持っていたワインを取り出していった。
「もしまた会うなら、いい酒を二人におごってやるぜ」
ライとロイに、時計は大きな声で発した。
『いい男達、今この幸せをかみしめてね……!』
「「「またね!!」」」
ロイは大きく手を振る。伽藍もティティスも妖精たちも、そしてライが。
大きく手を振って、暗闇の中に消え行くロイを見送った。
「うん――!ありがとう! さようなら――そして、今から未来を進む、お前たちに祝福を。 また会おう!」
『ゴシュジンサマ――イカナイデ』
一人、ルビーの指輪の炎の精霊が呟いた。
「ライ、その子の事。よろしく」
「……ぁあ!」
夕焼けが過ぎ去り、沈んだ太陽は戻らない。暗闇の中にたたずむみんなは、いつの間にかフェアリーランドのあのライ麦畑に戻っていた。
後ろでは魔法店の明かりが漏れ出ている。
少年の姿から元の姿に戻った成人のライさんが、膝をついて伽藍ちゃんに手を差し出す。
「伽藍ちゃん、ありがとう。このフェアリークォーツは返しておくよ」
美しい兄弟愛の光を放つ透明な宝石が、伽藍に渡される。
伽藍はライさんの首元に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。
「仲直りさせてくれてありがとう」
ライさんは伽藍の背を撫で、もう片方の手を開いて伽藍にルビーを見せた。ライさんの手に、小さく傷が入ったルビーが見える。
「ロイと別れたショックで、ヒビが入ってしまったみたいだ。皆で、この子を直してあげよう。さあ、魔法店に帰るよ!」
ライさんが伽藍を抱き合げ、びっくりする伽藍に微笑みかけながら、魔法店の方へ歩き出した。
「うん♪僕も手伝うよ! いこう☆ティティス♪」
「ああ、姉。わかった」
ティティスを誘う祝聖嬢に、ティティスも頷き返す。
その後ろを、竜王の背にまたがったユウ君と、ひょうひょうとしんがりを務めて周りを見渡し、着いてくるシャザールの姿があった。
「今夜はもう少し長くなりそうだ」
ライさんは皆が入ったのを確認すると、小さく呟いて魔法店のドアにcloseの札を張って、店を閉めたのであった。
大成功
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