それもまたアナグラの流儀かな
鳶沢・ギンコ
・ノベルのリクエストをお願いします
【内容】
区切・終(飢餓文学・f42796)に掏摸を仕掛けたギンコが逆に捕まり、
「第弐帝都対策部」に奉公させられる様になった出会いのシーン
【シチュエーション】
地上からの列車が到着する駅前の雑踏
【流れ】
1,浮浪児仲間にそそのかされて腕試しに掏摸を仕掛ける
「へへっ、トリ公なんざ怖かねぇよ。おいらがあの真っ白な腕章を盗ってきてやるぜ!」
2、UC【巾着切】を使用して区切に逆に気づかれる
「チクショウ、放せよ!おいらが何したってんだ!」
3,腕章の認識阻害を突破してUCを使用した素質を見込まれ、
以降は無理やり気味に協力させられることに
「ウチもヤキが回ったもんやなー、でもまあ金払いは良いし
この仕事もそうそう捨てたもんでじゃないんかもな」
【その他、お願い】
スラムの浮浪児がフクロウと関わりを持つようになった始まりのお話ってイメージです
また世界観やキャラ、用語等の設定のズレがあったらご自由に修正してください
アレンジ等も大歓迎です、よろしくお願いします。
「最近よくトリ公が出入りするようになったってな」
「ウロ組合が幅ァ効かせてるんだろ? まぁアイツら、邪魔なのは確かだもんな」
――アナグラ内、浮浪児達の集まり。『上』で焼け出された子供もいれば、元よりここで天涯孤独の身である子供もいる。この前オレ、ウロ組合に蹴られたもん、と腕にできている痣を見せてくる少年の肋は浮き出ていて細く、ここに居る者の体型は皆似たりよったりだ。地上も、地下も、戦争の焼け跡は著しく、それは土地だけではなく、人々の心に傷を深く刻みつけている。それでも子供はたくましいもので、このような場でにししと笑って会話を織りなすのだ。
「でもトリ公がズカズカするのも腹立つねェ」
「ここァぼくらの場所だ。ケーサツ様なんか、今更頼れるもんかい」
そんなくすぶった想いを抱える中で、一人がふと何かひどい悪巧みでも浮かんだかのように、笑顔を浮かべた。
「なぁ、トリ公にイッパイ食わせてやろうぜ」
「へぇ? 何するんだ?」
「それはな……」
●
「カーッ、トリ公にスリたァ随分やな」
だが良い考えだ、アナグラの流儀をトリ公に教え込むのも悪くない。そんな企みに乗った鳶沢・ギンコ(アナグラネズミ・f43549)はニカニカと笑いながら、上機嫌に地下の街を歩く。
――まずはトリ公探しからだ。真っ白な腕章が特徴で、それをパクってやるのが魂胆だ。予算がないのか、はたまたこちらが預かり知らない崇高な目的でもあるのか、ともあれ、目立つのはいいことだ。その腕章がガキにパクられて、トリ公の面目は丸つぶれ! いいじゃないか、絶対に面白い。
「ん」
広場のベンチの中、本を手に、目を閉じている男がいる。その右腕には白い腕章があった。
――いた!
寝ている相手だったらこれ以上楽なこたァねぇ、ヘヘッ悪いなトリ公、シマツショだかなんだか書くんだろうが、こっちとしては知らないからな! 周辺に人はいくらかいる、逆に好都合、撒くことは簡単そうだ。そうして鳶沢は、おのれの使う『異能』を以てして、相手の腕章を奪い取ろうと『手』を伸ばすと――。
「情念の獣」
ぽつりと目を閉ざしたままの男がぼやき、は、鳶沢が気づくと、眼の前には狼のような形をした真っ黒な獣が立ちふさがっていた。それは低く唸り声を上げて、明確に鳶沢を威嚇している。
「――ひ」
こいつ、ウロ使いだったのか!? 聞いてねぇぞ!?
駆け出した鳶沢に、至極面倒そうに男は手をかざし、一言、『影の追跡者』と言うと、腕章の方を見た。
「だからこれ、目立つって言ったのに……」
●
「……はぁ、ッは……」
あの獣から逃げてきて、トンネルのひとつへ。
「ウロ使いなんて聞いてへん……」
「残念、ウロ使いではない」
「ぎゃぁ!?」
入ってきた方向を塞ぐようにして男が立っている、呆れたような目線が鳶沢を見ていた。次いでに、獣が飛び出してきて鳶沢の服の襟元を噛むようにして捕まえる。
「チクショウ、放せよ! おいらが何したってんだ!」
「何したって、スリしようとしただろうが」
白い腕章を指し示す男は、どこまでも呆れ返っている様子だ。
「アナグラの浮浪児。まぁ目立つ悪事は日頃しないが、最近対策部が幅を効かせているから、気に食わなくて一杯食わせようとしたところ、といったところだろうか」
「……お、おうおう! それが悪いかよ! ケーサツ様があんなところでグースカ寝てたからよ!」
「寝ていない、小休止だ。だいいち何も盗まれていないし」
ああいえばこういう男であるようで、鳶沢は歯ぎしりする。
「それはさておき。さっき、お前を追いかけた時、こいつが出ても周りが驚かなかったろう? これは、ウロじゃないんだ」
「お、おう……そういえば……」
「この腕章は、この獣のような『不思議な力』を普通なように見せるか、気の所為にさせる効力があるものだ。……対策部は、『異能』と呼べるものを持った者が多い。この腕章の効力を突き抜けて見える、ということは、お前も『持っている』はずだ」
コツ、と、男は歩み寄る。威圧感はあるものの、ウロ組合が発するものとは違った、なんだか威厳のようなものがあるように感じた。
「――お前だって、ウロ組合は目の上のコブのはずだ。どうにかしたいのならば、協力してほしい。無論報酬は弾む」
男――区切・終(飢餓文学・f42796)はそう言うと、鳶沢に目線を合わせて、頭を下げた。
●
「はぁーあ、ウチもヤキが回ったもんやなー……。でもまあ、金払いは良いし、この仕事もそうそう捨てたもんじゃないんかもな」
「いいのか?これで」
「ん。ウロ組合がウチらまでいじめるのは本当やろ? だとしたら、使えるものビシバシ使わんと。ウチは賢いからな、トリ公を内側からコキ使うんや」
「……ならせいぜい利用してくれ」
――不敵に笑うは鳶沢・ギンコ。アナグラネズミが一人、転んではただでは起きぬ。それもまたアナグラの流儀かな。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴