星のしずくと雨のかけら
星のしずくが落ちるとき。
雨のかけらは光るでしょう。
●
「こんにちは! あのな、みんなでお星さま探しに行かへん?」
機嫌よく笑って、さくら色の幼い少女――晴日・サクラ(花の音・f43129)はゆるい訛り言葉でそう声をかけた。足元は裸足のままふわふわ浮いていて、そばにはりんごを大事そうに抱えたさくら色の仔竜がいる。
ゴッドゲームオンラインでのお仕事なんやけどな、とサクラは手にしていたファイルからいくつかのデータを呼び出した。
「『雨の星をさがして』ってクエストがあってな。『雨の星』ってレアアイテムを探すクエストなんよ」
ふいと浮かんだデータには、雨のなか青く、あわく光るものが映し出されていた。
サクラが言うには、雨の星はフィールドが雨のときしか降ってこない。形はさまざまで、星型、雫形、花型、ハート型――どんな形が見つかるかも楽しみのひとつだそうだ。
「一番探しやすいんは雨の降っとる夜やね。降ってくる軌跡も見えるから、場所もわかりやすいし……。けど、昼間、雨降っとらんときも探せるんよ。目立たへんからちょっと探しにくいけど、ようよう見たら見つかると思うん」
雨とか夜が苦手やったら、自分のええときに行ってな。
ふわふわと笑っていたサクラは、ふとわかりやすく表情を曇らせた。
「でも、バグプロトコロルが出てしもて……実はこのクエスト、ひとりではできんの。みんな『クラン』って組んだことある? 二人以上で結成するゲーム内チームのことなんやけど、これも同じクランのメンバーでしか参加できんクエストでな」
そのため、参加するには猟兵たちも一時的に『クラン』に所属しなければならない。
クランは二人以上で結成でき、自由に解散できる。猟兵同士で作ってもいいし、プレイヤーたちが既に作っているクランに入ってもいい。ちょうど誰でも入れそうなのは、クセの強い廃プレイヤー二人が作っている『月と星』というクランらしい。
「『月と星』はオネエさんの聖剣士さんと、緑の重戦士のおねえさんがおってやよ。自分らで作るんも簡単やから、みんなチーム名教えといてくれたら、私登録しとくからね」
そういう受付のお仕事しとるから、とさくら色の少女は楽しそうににこにこしている。
バグプロトコロルは、参加しているプレイヤーたちを倒そうとしているようだ。だがもちろん、そんなことをプレイヤーたちが知るわけもない。
「元々高レベル帯向けのクエストやからプレイヤーさんも腕に覚えがある人ばっかりなんやけど、ほんまはそんなに難易度高いもんやなくてな? ……やからたぶん、油断しとってやと思うん」
心配そうにしょんぼりと、サクラは眉を落とした。そんな状態で急にバグプロトコロルに侵されたクエストに放り込まれれば、死亡確率は跳ね上がってしまうだろう。プレイヤーたちはバグプロトコロルに倒されてしまうと、現実社会での人権を奪われてしまう。何気なく遊びに来たつもりでそうなってしまうのは、あまりに理不尽だ。
「やからな、普通のプレイヤーさんたちに気づかれんように倒してしもてほしいんよ。雨の星探すフィールドもバグでダンジョン化しとって、ちょこちょこ即死バグあったりしとるから気をつけてな」
みんなやったら大丈夫やと思う、とサクラは満面の笑みに無条件の信頼を滲ませている。猟兵であれば即死バグ自体は難なく回避できるだろうし、ゲームに慣れたプレイヤーたちも人が既に通った安全な道を選ぶようだ。
そして雨の星を手にすると、ダンジョン化したフィールドを抜けられる。
「その先にバグプロトコルのボスがおるよ。ゴースト・ファランクス……大きいおばけやね。ちょっとかわいい……ええと、と。バグで物理攻撃も属性攻撃も無効にしてまう厄介な子なんやけど、頭についとる火の玉が弱点みたいでな。上手いことそこに『雨の星』を当てられたら無効バグが一定時間解けるんよ。そこを狙って倒してな」
雨の星は、攻撃に使うと小さくなってしまう。二度使えば失われる。けれど一度で決めれば、手元に残すこともできるのだという。
「ちょっともったいないかもしれんけど、ちいさい雨の星もかわええよ。あとの汽車で首飾りとかにも……そう! バグプロトコル倒せたら、帰りは空から汽車が迎えに来てくれるんよ。空の汽車の旅、ゆっくり楽しみながら帰ってな」
クエストが正常なものに戻れば、帰り道は空を駆ける汽車が運んでくれる。切符さえあればどこにいてもやって来て、どこへでも運んでくれる特別な列車。雲を抜け、晴れた空の上を走る汽車からの眺めは時間を問わず絶景だそうだ。
帰りも好きな時間選んでええからね、と言いながら、サクラは猟兵たちに『晴空ライナー』と書かれた切符を渡す。ゲーム内では自動でアイテム化収納されるらしい。
「汽車のなかでは自由に過ごしてくれてええよ。特別コマンドで車内販売の軽食はいつでも買えるから、食べながら景色見たり、お喋りしたり。個室には二段ベッドがあるし、ミニゲームもできて、のんびりもできるん。あとは、列車のなかを見て回るんもええね。雨の星をアクセサリーにできるとこもあるよ。……私も楽しみ!」
そしたらいこか、と案内人が言うと同時に仔竜が抱えていたりんごが輝き出す。サクラが元気に手を振った。
「行ってらっしゃい! 気をつけて!」
柳コータ
お目通しありがとうございます。柳コータと申します。
ゴットゲームオンラインへのご案内です。
●シナリオについて
≫各断章あり/〆切あり。
・一章:『雨の星』を探します。希望の時間帯や天候があれば記載してください。特になければ一番見つかりやすい夜、雨時になります。
≫プレイヤークラン『月と星』に参加する場合はプレイング冒頭に『★』をお願いします。(ソロ参加はこちらに参加している扱いになります)
≫猟兵同士(同行者)でクランを結成する場合はクラン名を合言葉にして【】で括って冒頭に記載してください。
≫見つける雨の星の形は自由です。形の記載がない場合、金平糖みたいな形のものが見つかります。
・二章:バグプロトコル戦です。『雨の星』を上手く使って戦ってください。
・三章:空を駆ける汽車で旅を楽しみながら帰還します。昼に乗れば青空、夜に乗れば星空が楽しめます。希望の時間帯を記載してください。こちらの章のみの参加も歓迎です。
≫三章のみお声掛けがあればサクラが顔を出します。
●シナリオNPC
≫プレイヤークラン『月と星』のプレイヤー。廃人よりの古参プレイヤーです。
【ルーナ】聖剣士の男。オネエ言葉で話すが中身は割とちゃんとただのおっさん。
【ステラ】重戦士の少女。ルーナへの歳の差万年片思いが最近成就した。
※二人ともノリが基本的にコミカルです。話しかけると非常によく喋ります。
※既存シナリオ『月と星のエマージェンシー』に出て来たNPCを流用しています。プレイヤークランのための存在のため、プレイングで言及がないと出て来ません。関与はご自由にどうぞ。
●複数参加について
・通常参加:2名様まで。
・オーバーロード:人数不問。
※2名様まででもオーバーロードを使用していただいて構いません。
●プレイングについて
・複数参加の場合、IDか合言葉をお願いします。
・場合によりまとめて採用することがあります。個別希望の場合は記載してください。
・単発・途中参加も歓迎です。
・書けないものに該当した場合やスケジュール等の都合でお返しする場合があります。
●受付について
MSページ・タグでお知らせいたします。
受付開始前のプレイングは一律お返しします。
プレイングの状況次第でサポート進行予定です。
それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『雨の星をさがして』
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POW : よく歩いて探す
SPD : 高いところから探す
WIZ : 誰かにたずねてみる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●雨の星をさがして
穏やかな雨が降っている。雨の季節がやってきた。
服に肌にふれる雨粒の感触は確かで、放っておけば雫は滴ってもいくけれど、不思議と冷たくはなかった。
ゲームのなかの雨は実際に体を冷やしはしない。雨が好きならそのまま雨のなかを探索するのもいいだろうし、もちろん傘をさすこともできる。
フィールドは、広く小高い丘の上。開けた場所で、ぽつぽつと紫陽花が点在して咲いている。
どうやら紫陽花は、星が落ちる場所のある程度の目印にもなっているようだ。
あちこち探し回るのも、一箇所でのんびり構えて待つのも方法だろう。
即死トラップもあるにはあるが、見るからに禍々しいので、よっぽどよそ見をしていなければ避けられそうだ。
夜ならば、空を見ていれば落ちて来る流星の軌跡が見える。
昼ならば、花を目印にあたりをよく探せば、雨の星は見つかるだろう。
それは手のひらほどの大きさだ。形は金平糖のようだったり、いろんな形をしている。
星が落ちてくる頻度はそう高くはないけれど、のんびりと探してみるのがいいかもしれない。
キトリ・フローエ
★
ルーナ、ステラ、お久しぶりね!
元気そうで良かった
今回も宜しくね!
暗いなら光の精霊に照らして貰って
紫陽花の咲く場所へ向かいましょう
バグにも気をつけるわ
あれから二人は色々あったみたいね?
ルーナは前より格好良くなってる気がするし
ステラは前よりずっと綺麗になったわね
え、顔は同じ?でもそう感じるわ!
幸せそうな二人を見られてとても嬉しい
紫陽花も本物みたいに綺麗ね
雨は冷たくないならそのままで
二人は晴れと雨、どっちが好き?
あたしはどっちも好き…あっ!
見て、流れ星がいっぱい!
あたしには少し大きなお花の星
…持っていけるかしら?
ルーナ、ステラ
困ったことがあったらいつでも呼んでちょうだいね
どこにいたって飛んでいくわ
光を抜けて、静かな雨夜に辿り着く。
降りそそぐ雨の感触はよく知るものと変わらないのに、冷えていく感覚はない。それならこのままで、とキトリ・フローエ(星導・f02354)は雨のなかを小さな体で軽やかに飛んで、
「ルーナ、ステラ、お久しぶりね!」
見覚えのある二人に明るい声をかけた。
振り向いたルーナとステラは、キトリの姿を見つけて嬉しそうに顔を綻ばせた。
「キトリ!」
「キトリさん! わあ、また会えるなんて思ってませんでした!」
ことさら嬉しそうなステラに、キトリも「今回もよろしくね」と笑う。キトリは以前生存率0%のクエストでルーナとステラたちを助けた頼もしい猟兵たちのひとりであり、まんじりともしないステラの片思いの後押しをしてくれたひとりでもある。
「あのときのお礼をちゃんと言いたいなってずっと思ってて……」
「ふふ、気持ちだけで充分よ。でもせっかくまた会えたんだもの。色んなお喋りができれば嬉しいわ」
行きましょう、とキトリは雨夜を照らす光の精霊へ呼びかける。夜に沈んだ景色が、雨さえきらきらとさせながら浮かび上がった。
キトリが精霊と共に先導しながら、さり気なくバグにも気をつけて進んでいく。目印にもなる紫陽花を目指しながら、話が絶えることはない。
あれからあったことを語る二人は、前にも増して楽しげだ。なによりは、
「あれから二人は色々あったみたいね? ルーナは前より格好良くなってる気がするし、ステラは前よりずっと綺麗になったわ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわねキトリったら。そう、アタシの元からいい顔がもっとよく……」
「顔はミリも変わってないですよルーナ。私も前と同じですけど……」
ステラが相変わらずの調子で突っ込み、顔を見合わせる。視線が合って少し照れくさそうに微笑みあう二人は、前よりずっと幸せそうに見えた。
そんな二人が見れたことがとても嬉しくて、キトリも満面の笑みを浮かべる。
「ふふ、でもそう感じるわ!」
「……さすが、隠しごとはできないわねえ。そうなの、押し負けたダメな大人なの」
「はい、無事押し切りました! キトリさんが背を押してくれたおかげですよ」
晴れて恋人です、とステラがルーナの腕を取るのと、キトリと共に舞う光が紫陽花を照らし出したのはちょうど同時だった。
雨の降りしきる暗がりに、紫陽花が浮かび上がっている。キトリが花のそばへ行くと、二人もその紫陽花のそばで足を止めた。
「紫陽花も本物みたいに綺麗ね。雨の粒がきらきらしてる。……二人は晴れと雨、どっちが好き?」
「ええ、すごく綺麗だわ。でも晴れと雨なら……アタシはやっぱり晴れかしら」
「私は雨が好きですよ。キトリさんは?」
「あたしはどっちも好き……あっ!」
返って来た問いにキトリが答えて雨空を仰いだ先に、すっと走った光があった。それがひとつ、ふたつ、ゆっくりとたくさん雨夜を駆けていく。
「見て、二人とも! 流れ星がいっぱい!」
思わず声をあげてしまったけれど、ルーナとステラも感嘆の声を漏らしていた。
「すごい、綺麗……」
「流星群だわ。このクエストでの遭遇率ってめちゃくちゃ低いはずなんだけど……レア中のレアよ!」
「そうなの? ほら、こっちにも降ってくるわ!」
目の前に、流れ星が落ちてくる。それは紫陽花に受け止められるように音もなく、紫陽花のそばに三つ落ちた。淡く青い光の尾を追って、三人はそれぞれの雨の星を見つける。
キトリが見つけたのは、花の形をしたもの。一般的な人の手のひら大の大きさのそれは、キトリには少し大きいものだ。
「……綺麗だけれど、あたしに持っていけるかしら?」
「そういうときこそクランメンバーよ、キトリ」
せっかく同じクランなんだから、と言ってキトリの見つけた雨の星を拾い上げたのはルーナだった。ひょいひょいとなにか操作する仕草を見せると、雨の星がぱっと消える。
「クランで持ち物を共有できるの。キトリとあなたの雨の星を紐づけておいたから、必要なときにいつでも取り出せるわ」
「そんなこともできるのね……、ありがとう!」
キトリが満面の笑みを浮かべると、こちらこそ、とルーナも笑う。そのそばでステラが、私だってしようと思ってたのに、とちょっとばかり拗ねた顔をしていた。けれどもそれもすぐ笑みに変わって、二人は前を向く。
「行きましょう、キトリさん。この先のクエストボスも簡単なはずなので……」
「……そうね」
実際はバグプロトコルと化している。けれど楽しげな二人の笑みを消したくはなくて、代わりにキトリはぱっと笑ってみせた。
「ルーナ、ステラ。困ったことがあったらいつでも呼んでちょうだいね。どこにいたって飛んでいくわ」
大成功
🔵🔵🔵
レルヒェ・アルエット
★
雨夜の星って言葉は
見えないモノの例えらしいけれど
雨のカケラを手に出来るのは
季節らしい探索クエストなのかもね
わたしもクランにお邪魔して
ひと時過ごさせて貰おうかな
見上げる先には
夜空と落ちて来る流星の軌跡
フィールドの紫陽花は
ある程度の目印にもなってるって話だっけ
Lorayも連れてとりあえず
ふらりとあちこち歩いてもみて…
一箇所でのんびり構える方が今回は良さそうかなぁ
紫陽花ひとつの近くで星空を眺めよう
…雨って振り方によって
色んな呼び方もあるみたいで
見つかる雨の星がヒト其々なのも
そんな由来があったりしてねぇ
金平糖に似てるからって
食べちゃダメだよと言い聞かせて
わたしの星はどんな彩してるだろうか
仰いでも見えぬ夜空と地面を、静かな雨がつないでいる。
「雨夜の星、か」
冷たくもない雨に小さな手のひらを差し出してみながら、レルヒェ・アルエット(告天子・f42081)は雨音にとかすように呟いた。『雨夜の星』という言葉は、見えないものの例えらしい。見えないものを探す――それだけならただの徒労かもしれないけれど、このクエストでは雨のカケラを、『雨の星』を手にできる。季節らしいクエストに興味を惹かれて、レルヒェもクラン『月と星』に参加した。
クランのプレイヤーたちも思い思いに雨の星を探すらしい。
「わたしたちも行こうか。おいで」
レルヒェも青翡翠色の小さな竜を連れて、ふらりとフィールドを歩き出す。
見上げた雨夜の空には星空はない。けれどその代わり青く尾を引くほうき星の軌跡が見える。波はあるのかもしれないが、どうやら一度にたくさん落ちてくるわけでもないようだった。
「紫陽花がある程度の目印にもなってるって話だっけ……」
見つけた紫陽花から、また別の紫陽花へ。しばらくあちこち歩いてみるが、すぐに見つかる様子はなかった。小竜がレルヒェの肩に乗る。
「そうだね。今回は一箇所でのんびり構えるほうが良さそうかなぁ」
そう決めて、レルヒェはまた辿り着いた紫陽花のひとつのそばで足を止めると、空を見上げた。
しとしとと雨が降っているなかを、時折、流星が流れ落ちていく。
「……そういえば、雨って降り方によって色んな呼び方もあるんだっけ」
ふと、得た知識のなかの情報を思い出す。時雨、驟雨、慈雨――雨のなか降る星の形がヒトそれぞれなのも、もしかしたらそんな由来があったりするのかもしれない。
そんなことを考えていると、ふと見えた流星の軌跡が、レルヒェのほうへ近づいて、吸い込まれるように、傍らの紫陽花へ落っこちた。
小竜が追いかけるように紫陽花に頭を突っ込む。
「おやつの金平糖に似てるからって食べちゃダメだよ」
言い聞かせるように言って花のそばに顔を近づけたレルヒェの目の前に、『雨の星』はあった。青く淡く光る、大きな金平糖のような形のもの。
「……これがわたしの、」
拾い上げ呟いたところで、レルヒェの肩の上から興味津々に覗き込む小竜の姿がある。
「わたしたちの『雨の星』だね」
大成功
🔵🔵🔵
ノーチェ・ハーベスティア
入れてもらったクランの方にはしっかりご挨拶しないとね。
雨が降ってるエリアって言うのも新鮮だなー。
雨の星…見つけたいな。
でも即死トラップにも気をつけないと…!
そうだ!お手伝い動物のクルミにも探してもらおう♪あの子は素材集めも得意だから。
クルミよろしくね♪
紫陽花の花も綺麗だなぁ。
確かお花が目印だったよね。
と言いつつトコトコ探して…。
夜に静かな雨が降る。
「雨が降ってるエリアっていうのも新鮮だなー」
しとしとと降る雨音と雨のエフェクトに手のひらをかざしてみながら、ノーチェ・ハーベスティア(ものづくり・f41986)は物珍しそうに呟いた。
現実世界の季節とリンクさせているんだろうか。ここでなら、現実では見つからないものも見つかるけれど。たとえば、雨のなか降るという――。
「雨の星……見つけたいな」
ぽたりと滴り落ちる雨雫をそっと握って、ノーチェはよし、と顔を上げた。そうとなれば、入れてもらったプレイヤークラン『月と星』の二人にはしっかりご挨拶をしないと。
丁寧にノーチェが挨拶をすると、二人は気安く笑って歓迎だと言った。好きなように探索してねと言った彼らも、思い思いに探すようだ。
ノーチェも改めてフィールドを見渡し、
「そうだ! ――クルミ、手伝ってくれる?」
そう呼びかけて出てきてくれたのは、お手伝い動物であるリスのクルミだ。いつも色んなことを手伝ってくれるが、素材集めも得意な子である。もちろん、という風にしっぽを揺らして応じてくれたクルミに、ノーチェもつい頬を緩めた。
「じゃあよろしくね、クルミ。たしか目印なのは……あ、あった!」
少し歩いたところに、紫陽花の花が咲いていた。けれど残念なことに、雨夜とあってしっかりとは見えない。ちょっと残念だね、とクルミにも言いながら、ノーチェは目に留まった紫陽花ごとに丁寧に調べていく。もちろん即死トラップにも気をつけて。
しばらくふたりであちらこちらととことこ歩いて探し回る。
すると、ふと夜のなか、綺麗に見える紫陽花があった。ぴょこんとクルミが駆けて行って、追うようにしてノーチェも駆け寄る。
そこには、紫陽花の花を淡く照らすように青く光るものが落ちていた。手のひら大の大きさの金平糖のようなもの。
「これが……雨の星?」
きゅ、とクルミが頷いてくれた。そっか、とノーチェも笑ってクルミを肩に乗せる。
見つけられた宝物を大事に手にして、ノーチェは雨夜のなかを進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵
リュイ・ロティエ
★
(竜神さまとこっそり会話しつつ)
わあ、レアアイテムだって!
冒険者さんってこういうの集めるの好きなんだよね?
ボクもほしいなぁ
あれ、あの二人ってもしかして…
ルーナおにいさん!ステラおねえさん!
えへへ、ボクあれから冒険して強くなったんだよ
ふたりもこのクエストに挑戦するの?
ボクも一緒に行っていい?
ぱらぱらと降る雨粒の感覚
小高い丘から望む景色
流れ落ちる星のひかり
これが『心地好い』って感情なのかな
ボクが見つけて手に取ったのは
緑色の小さな葉っぱのかたち
キラキラしてきれいだね
ふたりはどんなかけらを見つけるんだろう
プレイヤーネームと装備からなんとなく想像出来たり
見つけた雨の星、みんなで見せ合いっコしよう!
――レアアイテム、『雨の星』。
(わあ……! 竜神さま、聞いた? レアアイテムだって!)
その仕事の依頼を耳にして、リュイ・ロティエ(翡翠の守護者・f42367)は真っ先に傍らにいる『竜神さま』へ念話で声を飛ばした。あわく竜の輪郭をかたどる翡翠色の靄が頷くように動いて、欲しいのかと問うてくるのに、リュイは素直に大きく頷く。
(うん! だって、冒険者さんってこういうの集めるの好きなんだよね? ボクもほしいなぁ)
ならばと背を押してくれる優しい声に笑って、リュイは雨降る夜のフィールドへ飛び込んだ。
ぱらぱらと降る雨粒の感覚が、なんだか新鮮だった。
小高い丘から望む広く開けた景色は、よく知っている森のものとも賑やかな街とも違う。静かな雨の夜のなかを、時折星のひかりが流れ落ちていく。胸の奥がすうっと広がって、息がゆっくりできるような。
「……これが『心地好い』って感情なのかな」
きっとそうだ。リュイにとっては。またひとつ新しいことを知れた気持ちで辺りを見渡す。
「あれ?」
その先で見つけた見覚えのある姿に、リュイはもしかして、と呟きながら駆け出していた。小さな体でぱたぱたと駆けながら、いつかの冒険者の出で立ちに装備を変える。
「ルーナおにいさん! ステラおねえさん!」
あの日別れたときと同じくらい大きく手を振って呼び掛けると、二人はきょとんとした様子で振り向き、それから顔を見合わせてあちらからも駆け寄って来てくれた。
「リュイ! 久しぶり!」
「リュイくん!? どうして……あれ、私たちのクランに入ってる……ということは同じクエストです!? えっ、これ結構高レベル帯の……」
「えへへ、ボクあれから冒険して強くなったんだよ」
むん、と得意げに胸を張ると、ステラがリュイの頭上に表示されるステータスをまじまじと見てほんとだ、と驚いた声をあげた。
「にしたってすごいです、この短期間で……」
「アタシたちが育てたんだもの、優秀なのは当り前よ! やれば出来る子だと思ってたのよねェ」
「なんでルーナが得意げなんですか! でも、また会えて嬉しいです、リュイくん!」
心底嬉しそうに笑う二人にリュイも嬉しくなって、ボクも、と満面の笑みを浮かべた。
「ふたりもこのクエストに挑戦するの? ボクも一緒に行っていい?」
「ええ、もちろんよ。それじゃ、さっそく行きましょ」
「『雨の星』見つけましょうね!」
そうして三人で探し始めてしばらくは、遠くに時折落ちていく流星を見上げるばかりだった。
けれど話は尽きることなく、三人で冒険の話を続けながら、雨の星を追いかける。そのうち、雨のなか一際大きく見える星があった。あ、とリュイが空を指差すのと、ルーナとステラがそれぞれ別の方向を見上げるのは同時。三つの雨の星は三人の視線の先に落ちていく。しっかりその場所を目で追ってから、三人は顔を見合わせた。
「……落ちたわね」
「落ちましたね」
「ボクも見たよ! じゃあ……拾って来て、みんなで見せ合いっこしよう!」
リュイの言葉に「そうね!」「そうですね!」と二人がぱっと破顔して頷く。そしてそれぞれ見つけた雨の星のもとへ向かった。
たしかこのへん、とリュイが足を止めて辺りを見渡すと、雨夜のなか、きらきらと光るものがある。それは淡い緑色の光を纏っている。リュイが両手ですくうように拾い上げると、それが葉っぱのかたちをしていることがわかった。緑と葉。リュイとは繋がりが深いもののような気がする。ひょっとしてそのひとに合ったものを見つけられることもあるのだろうか。だとしたら、そのひとだけの宝物だ。
「……キラキラしてて、きれいだね」
リュイの手には少し大きなそれを大事に持ってきびすを返す。視線の先で二人が待っていてくれているのが見えた。
ふたりはどんなかけらを見つけるんだろう。名前や装備からなんとなく想像ができる気がする。当たっていたらなんとなく嬉しいような気がして、リュイは逸る足元で二人に駆け寄った。
「お待たせ!」
――ふたりの雨の星は、金色の三日月と、深い緑の星のかたちをしていたようだ。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
POW
★
初めが肝心ですのでもしかしたら行動は別になるかもしれませんが、「月と星」のお二人にはしっかりとあいさつをします。
お二人ともよろしくお願いしますね。
クラン名はお名前からですか?
こちらには時々一人で伺うだけなのでクラン参加は初めてです。
星が好きなのでぜひ雨の星を見つけたいですね。
気持ちの持ちようなのはわかってますがなんとなく濡れそうな気がして傘をさして、特に綺麗だと思う紫陽花の所で星が落ちてくるのを待ちます。
やはりこの世界はとても不思議です。
ゲームの中というのはわかっていてもこうして感じるものはとてもリアルなんですもの。
きっと望めば雨の中でも夜空を見る事が出来るのかもしれないわ。
なにごとも、はじめが肝心だ。それが人付き合いであればなおのこと、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は挨拶を大事にしている。
フィールドに着くと、藍はまずプレイヤークラン『月と星』の二人を見つけて駆け寄った。
「はじめまして。ルーナさんとステラさん……ですよね。私は夜鳥藍といいます。お二人とも、よろしくお願いしますね」
「はい! よろしくお願いします!」
「ハァイ、よろしくね」
ルーナとステラは気さくに笑って、あなたも好きに探索してね、と言う。予想通り、二人は二人で探索するつもりなようだった。
「こちらには時々ひとりでうかがうだけなので、クラン参加は初めてなんです。クラン名はお名前からですか?」
「はい、安直なんですけどね」
とステラが笑うのに、藍も微笑んで首を振った。
「いいえ、素敵な名前ですよ。星が好きなので、ぜひ雨の星を見つけたいです」
それから藍は二人と別れてフィールドを進んだ。立ち止まったのは、雨の星の目印にもなるという紫陽花のなかでも、特に綺麗だと思った花のそば。雨夜とあって花は少し見難いけれど、綺麗に色づいているのがわかった。
足を止めてから、持って来ていた傘を開く。気の持ちようとはわかっていても、こうして雨の中にいると、濡れそぼってしまいそうな気がするものだ。
「やはりこの世界はとても不思議ですね。……ゲームのなかというのはわかっていても、こうして感じるものはとてもリアルなんですもの」
藍は雨の降りしきる夜空を見上げる。雨音は穏やかで、心地いい。普通ならばこうして見上げていても、夜空は見えないものだけれど。
「きっと望めば、雨のなかでも夜空を見ることができるのかもしれないわ」
そう呟いた藍が見上げた空に、光り落ちて来るものがあった。それは、あっと言う間に近づいて、紫陽花のなかへ吸い込まれるように落ちていく。
そこにあったのは、青く淡く光る手のひら大の大きさの、金平糖のようなもの。
藍が望んで見つけた、雨夜の流星――雨の星だった。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
【ハレルヤ様とゆかいな仲間たちご一考】
このハレルヤを讃えるクラン名を考えてくださるとは!
どういう風の吹き回しですか、リュカさん!
これでいいでしょう、完璧なクラン名です
ただ一つ、無駄に長ぇという欠点を除けば(誤字には気付いていない
ありがたい、夕方がいいです!
リュカさんがこんな徹底的にハレルヤを立ててくださるなんて…!
いやはや実にいい気分です。リュカさん、ついでにお茶
いいですよね、土星のあの輪っか。ハレルヤも装備したいくらいですよ
雨の星の形は様々らしいので、きっと土星型のもあるでしょう
私はちょっと小腹が空いたので、おにぎりみたいな三角形の星とか探してみます
はい、右に三歩…此処で何か起きるんですか?
リュカ・エンキアンサス
【ハレルヤ様とゆかいな仲間たちご一考】
でいいでしょう。二人しかいないけど
…いや別に、思ったことを名前にしただけだよ
(考えるのが面倒だったともいう
……
(あ、これ、いいんだ(そして誤字は欠点じゃないんだ…
お兄さん夜ダメそうだし、夕方とかにしようか
ん?何。お手?するの?
雨の星か……よく考えたら星の形って知らないかも
とりあえず探すか。お兄さんはどんな感じが好き
俺は、土星みたいな輪っかのついてるのがいい…お兄さん、ちょっと右に三歩歩いて
何って、その上に丁度でっかい星が落ちてくるから
夕暮れ時の星ってちょっと風情があっていいじゃない?
折角だから、いろんな形の星がないか探していこうか
銃型とか犬型とかないかなあ
なにか名前を決めろと言われると、途端に面倒になるときがある。
全てがすべてそうというわけではないし、面倒だからそのものごと自体がどうでもいいというわけでもないのだけれど、偶然奇しくもそのときリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)の前に現れた『クラン名を入力してください』は極めて面倒なものであったので、
――〔 ハレルヤ様とゆかいな仲間たちご一考 〕
たぶん三十秒も考えなかった。
「……で、いいでしょう、お兄さん。二人しかいないけど」
あ、字まちがえた。まあいいや。さすがにこんな名前に「完璧です!」みたいなこと言わないでしょ。
そう考えていた時間が、リュカにも十五秒ほどあった。そしてそれは機嫌のよい夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の一声で覆される。
「これでいいでしょう、完璧なクラン名です!」
「……」
言った。そしてこれでいいんだ。
さほど動くことのない淡泊な表情筋の下、リュカはまじまじと晴夜を見る。晴夜は機嫌良さげに尻尾を揺らし耳をぴんと立て、では早速と転送の光に乗り込もうとしている。
「いやはやこのハレルヤを讃えるクラン名を考えてくださるとは、どういう風の吹き回しですか、リュカさん!」
「いや別に、思ったことを名前にしただけだよ」
リュカが隣に追いつく。実際言葉の通りではあるものの、両者の理解に温度差があるような気はしなくもない。讃える。どのへんだろう、「様」あたり?
「そうですかそうですか! ただ一つ欠点があるとすれば……無駄に長ぇという点ですかね」
誤字は欠点じゃないんだ。そうは思うがもはや言うまい。ゲームで参照すれば頭の上に誤字クラン名が元気に現れるわけだけれども、彼のなかで欠点でないならそれでいいんだろう。ちなみに誤字には気づいていない晴夜である。
「……お兄さん夜ダメそうだし、行くの夕方とかにしようか」
「ありがたい、夕方がいいです! リュカさんがこんな徹底的にハレルヤを立ててくださるなんて……!」
感動しきりの様子で、晴夜の表情が輝く。満足げに振れる尻尾にも滲む喜色は犬と同じだ、などとリュカがぼんやり考えながらいるうちに転送が始まる。
「いやはや実にいい気分です。リュカさん、ついでにお茶」
そのあいだも晴夜は流れるようになにか喋っていたけれども上手く聞き取れなかった。ひょいと差し出された片手は先程の思考のせいか、犬の仕草に重なって見えてしまって、首を傾げつつリュカの手のひらで受け止める。
ぽすん。
「ん?」
怪訝そうな声は二つ。
「お手したいんじゃなかったの?」
「『お』までは合ってますが語感以外すべて違いますね」
二人が降り立ったのは、オレンジ色の夕焼け空が美しい雨上がりの丘の上だった。
どうやらこのフィールドでは珍しい晴れ間を引き当てたらしい。足元や点在する紫陽花には水溜りや雨粒が残っている。
「綺麗な空だね。……けど明るいからしっかり見ないとか。『雨の星』っていろんな形があるんだっけ。よく考えたら、星の形って知らないかも。お兄さんはどんな感じのが好き?」
とりあえず探すか、と紫陽花を目印に二人は丘を歩きはじめる。対照的な色彩の二人の髪を靡かせていく雨上がりの風は少し冷たくて、妙にリアルだ。
「五芒星、六芒星、いろいろな形で描かれはしますけど……どんな感じと言われると。……三角形とかですかね」
「三角? なんで」
「いえ、ちょっと小腹が空いたので……」
おにぎりみたいなのとかいいと思いませんかハレルヤは思います。
そんなことを言いながら晴夜は足元を注視して、リュカは空を見上げていた。夜の足音がする夕焼け空には、星が顔を出し始めている。あれもまたすぐ雨に隠れてしまうのだろうか。
「俺は土星みたいな輪っかのついてるのがいい……お兄さん、右に二歩、ううん三歩歩いて」
「はい、右に三歩」
ふとリュカが空を見上げたまま言った言葉に、晴夜もそちらを見るでもなく応じた。
「いいですよね、土星のあの輪っか。ハレルヤも威風堂々装備したいくらいですよ。きっと土星型のもあるでしょう……ところでここでなにか起きるんですか?」
「なにって、その上にちょうどでっかい星が落ちてくるから」
え、と晴夜が見上げるのと、目の前に何かが落ちてくるのは同時だった。咄嗟に差し出した両手のなかに、手のひら大の大きさの、あわく光るものがある。
「これは……まさしくおにぎり!」
「三角形だね。ちなみに俺も見つけた」
ひょいと晴夜の手のひらを覗き込んだリュカの手にも、土星型の雨の星がある。夕焼けの色に透けるその光は、景色に溶けてしまいそうだ。星は夜に見るものだと思っていたところはあるけれど。
「夕暮れ時の星って、ちょっと風情があっていいじゃない? 折角だからいろんな形の星、探していこうか」
「ええ、ますます小腹は減りそうですけど乗りましょう!」
そういえばあとでなにか食べられるみたいに聞きましたしね、と晴夜も賛同して、二人はさらなる雨の星を探しに歩きはじめる。
そのさきで、銃型と犬型の星を見つけ――それもしっかり、アイテムにしまわれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シェキザ・シップスキャット
【ウミホタル】(夜なので声は穏やかめに)
珂奈芽と雨の夜に
雨避けの外套を着てく
星が落ちて海星になんのァ聞いたこたあるが、雨の星ァ色んな形になんだな
しっかしこれがゲームの中ってんだから驚きってもんだ
世界広ぇなァ
こんだけ現実と遜色ねぇなら、精霊だっているかもしれねぇ
いつもなら探し物とくりゃゴースト共に手伝ってもらうんだが、奴ら光ってっかんな
雨の星が見つけやすいよう今回は大人しくしててもらうかね
オレの翅もぼんやり光るから隠せりゃいいんだが、外套で覆っちまったら飛びにくいもんよ
辺りを探してすいすい飛ぶ
珂奈芽、そっち見つけたか?
オレん方はまだだィ
レアだけあって中々……お?
わはは、見ろよこれ
海星みてぇな形!
草守・珂奈芽
【ウミホタル】
夜の雨の中、シェキザくんと探検なのさ
レインコートに折り畳み傘で準備バッチリ!
MMOなんて初めてだけどこんなにリアルじゃ他と比べれないねえ
ほんと、世界って広いのさ
…精霊さんってここにもいるんかな?
光ってたら探しづらいのはなるほどってことで、あたしも精霊さん達や草化媛は喚ばない!
もし額の石に寄ってきた子がいても、静かに、じゃなくて暗めにしてて貰わなきゃ
あたしは目を凝らして地道に探すのさ
いっつも精霊さん頼りだから不便だあね…
でもなんとか雨の星見っけ! あんまかかんなくてよかった
シェキザくんは…よかった、そっちもばっちしだね
でもなにそれ、星は星でも海の星かあ
そんなの思わず笑っちゃうのさ
はじめて訪れるゲームのなかの世界は、現実の世界と隣り合わせのようだった。
雨粒が草守・珂奈芽(意志に映す未来・f24296)の傘の上で弾んで、レインコートの端を遊ぶように滑り落ちていく。静かな雨の降る夜空を見上げて、珂奈芽は好奇心と感心を綯い交ぜにした声をこぼした。
「こんなにリアルじゃ、他と比べられないねえ」
「ああ、これがゲームのなかってんだから驚きってもんだ」
珂奈芽のそばで青白く光る妖精翅を羽ばたかせるのはシェキザ・シップスキャット(セントエルモの灯は踊る・f26310)だ。彼の常によく通る大声も、雨夜の下では静かで穏やかなものとして雨音に混ざる。
「世界広ぇなァ」
「ほんと、世界って広いのさ」
二人はしみじみとよくにた感想を口にすると、顔を見合わせると軽く笑って丘を歩き出した。
「星が落ちて海星になんのァ聞いたこたあるが、雨の星ァ色んな形になんだな」
「そうらしいねえ。空を見てたら落っこちてくる光が見えるって聞いたのさ」
ここに来たのは『雨の星』を見つけるためだ。ふたりのクラン名は『ウミホタル』――海と光、それは互いに近しい存在でもある。雨に手を差し伸べてみながら、ふと珂奈芽が首を傾げた。
「……精霊さんってここにもいるんかな?」
「こんだけ現実と遜色ねぇなら、精霊だっているかもしれねぇな。……そういやこの先のボスはゴーストつってたっけ。いつもなら探し物とくりゃゴースト共に手伝ってもらうんだが、奴ら光ってっかんな」
身近な存在としてシェキザが思い浮かべたゴーストたちは夜にもよく目立つ。けれどその光は、この雨夜の丘ではいささか目立ち過ぎてしまうかもしれなかった。雨の星よりも目立ってしまったら、かえって探しにくくなってしまいかねない。
「今回は大人しくしててもらうかね」
「なるほど……じゃあ、あたしも精霊さんたちや草化媛は喚ばない!」
シェキザの落ち着いた声音に大きく頷いて、珂奈芽も常に力を貸してくれるものたちの手を借りないことにした。普段から精霊を頼りにしているぶん、これだけ広い丘では骨が折れるかもしれないが、見晴らしはいいのだ。よく目を凝らせばきっと見逃さない。
「オレの翅もぼんやり光るから隠せりゃいいんだが、外套で覆っちまったら飛びにくいもんよ」
「大丈夫、二人いるんだし別々のほう探してみよ。光っててくれるから、あたしはシェキザくんのこと見失わないさ!」
「わはは、そンじゃオレが目印な」
かろやかに笑って、シェキザはすいすいと飛んで辺りを探し始め、珂奈芽はじっと目を凝らして探し始める。空に光はたびたび見えるが遠い。
近い所は、と歩き回って、傘とレインコートを打つ雨音が耳に馴染み始めたところで、珂奈芽はふと淡く光る紫陽花を見つけた。花のなかを覗くと、そこには、淡く青く光る金平糖のような形をした雨の星がある。
「見っけ!」
「お、珂奈芽、そっちは見つけたか?」
声に釣られたように、シェキザが珂奈芽のほうへすいと飛んで来る。
「オレのほうはまだだィ。レアだけあってなかなか……お?」
ふと二人の頭上に、一筋の光が走る。あ、とどちらともなく駆け出せば、それは程近い紫陽花のなかに吸い込まれるように落ちていく。それをシェキザが小さな体全身を使って拾い上げた。
「わはは、見ろよこれ。海星みてぇな形!」
「あはは、なにそれ。星は星でも海の星かあ」
満面の笑みで拾い上げられた彼らしい雨の星に、珂奈芽もつい笑ってしまう。
「けどあんまかかんなくてよかったのさ。……それ、シェキザくんにはちょっと大きい?」
「ちっとばかしそうかもな。……お?」
見つけた雨の星には、〔収納しますか?〕というポップアップが表示されている。ためしに押してみると、どうやらクラン『ウミホタル』のアイテムボックスに収納されたようだった。
便利だな、こういうところはゲームだねとまた笑って、二人は雨の夜を抜けていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
青和・イチ
★
時間帯は夜、天候は雨を希望です
雨は大好き、夜も大好き
雨の星…正体は分からないけど、僕たちと随分気が合いそうだよ
それに、名前だけで、素敵なものな気がする
楽しみだね、くろ丸
(足元の相棒犬は黄色のレインコートを着用、
自分は透明の傘を差し、雨の星の降るのを見る気満々)
クランは、ルーナさんと、ステラさんのとこに、お邪魔させて貰おう
以前、一緒に冒険させてもらったんだけど…覚えてるかな
これだけ広くて、空が見えれば…見つけやすいと思うけど
安全そうな場所に寝転んで、のんびり空を眺め
…マズイ、寝そう
ちょっと散歩しよう
なんてのんびり構えながら
…一応仕事?なのに、こんなんでいいのかな
……あ、流れた、気がする
あれかな
雨も夜も大好きなものだ。
好きではない、というひともそれなりにいるのは知ってはいるけれど、少なくとも青和・イチ(藍色夜灯・f05526)とその相棒にとっては、どちらも素敵なものに違いない。
「雨の星、か。……正体はわからないけど、僕たちとずいぶん気が合いそうだよ」
イチが静かな雨の降る夜の丘に降り立つと、黄色のレインコートを着た相棒犬のくろ丸もぶんぶんと尻尾を振っている。はやく行こうとでも言いたげな様子に、イチも笑って透明の傘を広げた。これなら雨でも星が見やすい。
「楽しみだね、くろ丸」
クランは、覚えのある二人組――ルーナとステラのクランに入ることにした。前にも一緒に冒険したことがある二人だ。覚えているだろうかと心配するまでもなく、イチの顔を見て嬉しそうに歓迎してくれた。いろいろな意味での恩人として、ずいぶん感謝されているらしかった。ひとしきり話して、イチとくろ丸は雨の星を探しにのんびりと丘を歩き出す。
「これだけ広くて、空が見えれば……見つけやすいと思うけど」
雨音を聞きながら、空を見上げて歩く。傘はさしてはいるけれど、本当に濡れるような感覚はなかった。それなら、とイチは見つけた紫陽花から少し離れたところに腰を下ろして、寝転んでみる。
「ほんとに冷たくない……」
これはゲームならではだ。くろ丸もイチの肩に顔をくっつけて落ち着いている。
雨粒の感覚が心地いい。空にはさすがに星は見えないけれど、時折光が遠く流れていく。そうしている時間がやけにゆっくりと感じられて、
「……マズイ、寝そう」
さすがに寝てはいけないと、イチはふたたび立ち上がって歩き出した。一応仕事であるはずなのに、こんなふうでいいのだろうか。そうも思うけれど、くろ丸もご機嫌だ。その相棒がひと鳴きする。
ふと視線をやった先、ほど近いところに青く淡い光がふたつ見えた。
「……あ。あれかな」
光を追って、イチとくろ丸は一緒に駆け出す。その先にあったのは、金平糖のような形をしたふたつの雨の星だった。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
【神ノ櫻】
早速向かおうか
私は剣士かな?
聖剣…ではなく禍剣士かもしれない
サヨは魔法使いか
(魔法つかえたのか、サヨ)
いや、なんでもない
雨か…桜散らしの雨にならねばいいが
それは勿論
見つけやすいのは良い事だね
サヨの求める雨の星を確実に手に入れたい
しょんぼり顔をさせたくない故
空を見上げたり紫陽花を辿ったり真剣に探す
無邪気に歩き回るサヨの姿に頬が緩んでしまうが……はっ、サヨ!!
罠が!!咄嗟に手を引く
…目が離せないのはどこの世界でも同じか
え?星が!
軌跡の美しさを楽しむ間もなく必死に捕まえた星は
可愛らしいはぁと型
サヨのは星の桜のようだね
ありがとう、気に入っているんだ
無事に任務達成だ!
笑顔でハイタッチを交わそう
誘名・櫻宵
【神ノ櫻】
雨の星を探しにいくわよー!
因みに私は、魅惑の桜魔法使い
…何か言いたい事が?
私の桜は雨如きには散らされないわ!
カムイが守ってくれるもの
時間帯は夜
雨が降っている頃に挑戦するわ!
幻想的で素敵よね、雨空の贈り物みたい
どんな形が見つかるかしらと見渡して
綺麗な紫陽花の咲く場所もあちこちを見て回るわ
雨の中歩き回るのも童心に帰ったようで楽しいの!
おっ、と
大丈夫よう
バレバレな罠にはかからないから!
あ!カムイ!
星が降ってくるわ!
一目散に駆け寄って
掴まえたのは──綺麗な花のような雨の星
カムイも掴まえた?
禍津神にしてはかぁいらしく
何よりあなたらしい
やったわね!笑ってハイタッチ
星の輝きも、より増した気がするわ
雨は夜を彩るように降っている。
ゲームのなかの雨夜は現実とほど近く、けれど現実よりも冷たくはない。それでも確かに身を濡らしていく感覚と、傍らで花開く薄紅の花弁を見やって、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は僅かに顔を曇らせた。
「雨か……桜散らしの雨にならねばいいが」
「あら、私の桜は雨如きには散らされないわ! カムイが守ってくれるもの。ね?」
カムイのそばで空を見上げる誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は楽しげな笑みに信頼を含ませている。そして、それに応えぬカムイでもない。
「それは勿論」
「じゃあ心配ないじゃない。……幻想的で素敵よね、雨空の贈り物みたい」
ふわりと花が綻ぶように笑って、櫻宵は上機嫌な足取りで雨夜の丘を進み出した。その頭上に表示されているクラン名は『神ノ櫻』。櫻宵とカムイ、ふたりのためのクランだ。ゲームのなかとあって未だ目に馴染まぬ表示は時折散見されるけれど、それもゲームらしい。
「早速向かおうか、サヨ。この世界でだと……私は剣士かな? 聖剣ではなく禍剣士かもしれないが」
「ええ、雨の星を探しにいくわよー! ちなみに私は、魅惑の桜魔法使い」
――魔法つかえたのか、サヨ。
などとは思っても口にしないカムイであるが、
「……なにか言いたいことが?」
ほんの僅かな間も見逃さないのが櫻宵である。さすがは私の巫女。いやなんでもないと言うカムイの言葉も誤魔化しなのもバレてはいるだろうけれど、いまは上機嫌が勝ったらしい。
櫻宵は軽やかな足取りで雨のなかを進んでいく。目印は丘に点在して咲く紫陽花だ。水たまりを跳び越え、わざと踏んでみて――なんでもない雨中の遊びは、まるで童心に返ったように楽しい。
一方で、楽し気に跳ねる雨音と足音を聞きながら、カムイの眼差しは真剣だった。広く空を見上げ、星の軌跡を探しながら紫陽花を辿る。万に一つも雨の星が見つからなくてサヨにしょんぼり顔をさせたくない。いつだってひだまりのなかで咲き綻んでいてほしい。
雨のなかでも楽しそうだけれど。
ふと目をやれば無邪気に歩き回る櫻宵がいる。それに思わずカムイの頬も緩んだ。けれど。
「……はっ、サヨ!!」
くるりと回った櫻宵の背後に禍々しい気配――即死トラップを見つけて、咄嗟にその手を引く。すんでのところで踏み止まったその身を抱き寄せるようにして立たせ直してから、カムイはほっと息をついた。櫻宵はいっそあどけなくきょとんとした顔をしている。
「とと……。ありがとうカムイ、大丈夫よう、バレバレな罠にはかからないから!」
「いまかかりそうに……いや、いいけれど。気をつけるんだよ」
目が離せないのはどこの世界でも同じか、とは口にはせずにカムイが櫻宵から手をはなす。それとほぼ同時に、空を仰いだ櫻宵が弾んだ声をあげた。
「あ! カムイ! 星が降ってくるわ!」
言うや、櫻宵は一目散に駆け出す。いましがたカムイが忠告したばかりの言葉を覚えているのかいないのか、その視線は雨夜を駆ける軌跡を追い続けていた。慌ててカムイも駆け出す。美しく空に残る光の尾を手繰るように手を伸ばす。
ひとつに見えていた軌跡は、次第にふたつに分かたれた。そのひとつずつを追いかけたカムイと櫻宵の手が光に届く。
櫻宵の手にあったのは淡く青く光る、綺麗な桜花のような雨の星。
カムイの手にあったのは、まるく可愛らしいハート型の雨の星。
「カムイ! つかまえた?」
「ああ。サヨも? ……綺麗だな、星の桜のようだね」
「カムイは……ふふ、かぁいらしい、あなたらしい雨の星ね」
「ありがとう、気に入っているんだ」
互いの両手のなかを見せ合って、二人は満面の笑みを浮かべた。雨の星を見つけられたことはもちろん、なによりはお互いの満足げな顔が嬉しくもある。
カムイは笑うまま、片手を掲げた。
「無事に任務達成だ!」
「やったわね!」
雨音に、小気味良いハイタッチの音が響く。
二人の手にある雨の星も、櫻宵が咲かせる花びらも、よりまぶしく咲き輝いたようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ゴースト・ファランクス』
|
POW : スーパー怨恨合体
自身と仲間達の【敵に倒された恨みパワー】が合体する。[敵に倒された恨みパワー]の大きさは合体数×1倍となり、全員の合計レベルに応じた強化を得る。
SPD : ゴーストの極悪戯
【全属性無効のバグの炎】を纏ってレベル×5km/hで跳び回り、触れた物品や対象の装備を破壊、あるいは使用不能にする。
WIZ : ゴースト・リボーン・フル・MAX
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【召喚物も含め全て『ゴーストエネミー』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:RAW
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●雨底の神殿
雨夜の丘のフィールドを抜けると、そこは奇妙な場所だった。
しんと静かな石造りの空間は明るく広く窓もないが、天井を見上げれば明るい水面が見える。
「やだ、ここって雨底の神殿じゃ……」
ぎょっとしたように声を出したのはプレイヤークランのひとりだ。その声に応えるようにそれまで来た道が途絶え、目の前の広間に巨大なボスモンスターが現れる。
――ゴースト・ファランクス。
さまざまなゴーストの集合体。巨大だがまるいフォルムは可愛らしく、頭の上には青い火の玉が檻に護られるようにしてふよふよしている。
ゴーストゆえに物理攻撃は効かず、バグゆえに他の属性攻撃も無効になった厄介な敵。
聞いていた通りのバグプロトコルの出現に、猟兵たちは黙ってクランのプレイヤーたちを下がらせた。万に一つも彼らに被害を出すわけにはいかない。
だが、通常の攻撃はあのバグプロトコルには通用しない。
アイテムボックスにある雨の星が、使いどころだと示すようにその輝きを強くする。
雨の星でゴースト・ファランクスの火の玉を攻撃することができれば、その無効効果を一時的に消すことができるだろう。
一度攻撃すれば、雨の星は半分の大きさになる。もう一度攻撃すれば消えてしまう。
雨の星を惜しまず使うか、大切に残そうとするかは、猟兵たちの戦い方次第だ。
●補足
・一章で決定したクラン名(グループ名)を省略したい場合は冒頭二文字で記載してください。(ソロの方はなにもなしで大丈夫です。)
・基本的にプレイヤークランのNPCは戦闘に関与しません。明確に話し掛ける、一緒に戦闘するプレイングがある場合のみ描写されます。
ノーチェ・ハーベスティア
星の雨。
使うのが勿体無いとかそんなことは言ってられないよね。
入れてもらったクランの人に攻撃がいっちゃったりなんかしたら取り返しのつかない事になっちゃう。
だから躊躇はしないでガッツリ使っちゃいましょう!
弾道計算をしてバッチリ星の雨を火の玉に当てれば無効効果が無くなるはずだから…
UC【電子の弓矢】で撃ち抜きますッ!!
雨底の神殿。それは廃プレイヤーたちのなかでもそれなりに名の通った、高難易度のダンジョンだ。
だからこそ『月と星』のプレイヤーたちは驚いている。なんの準備もなしにバグプロトコルと戦えるとは思えないはずだ。負ければ、彼らは現実を失うのだから。
それはノーチェ・ハーベスティア(ものづくり・f41986)とて同じだ。
違うのは――猟兵として、この展開を知った上で来ていること。
ノーチェはアイテムから『雨の星』を取り出すと、ためらいなく前へ飛び出した。雨の星を電子の矢に接合する。
矢自体の属性攻撃は無効になるかもしれないが、雨の星を当てるだけならできるはずだ。
「使うのがもったいないとか、そんなことは言ってられないよね」
いまノーチェの背にいるクランのプレイヤーたちは、ただ楽しさだけを求めてここに来たはずだ。みんなで楽しめるように、クランも解放して、そこにノーチェも入れてもらった。
もしもバグプロトコルの攻撃がプレイヤーたちに行けば、取り返しのつかないことになってしまう。
「そんなの、させないから!」
強く言い切って、ノーチェはゴースト・ファランクス――その頭にある火の玉に狙いを定める。飛距離、射線、ふわふわとした敵の動き。すべてを一瞬のうちに頭に入れて、放つ。
青い光の尾を引いて、雨の星がゴーストの火の玉に当たった。跳ね返った光が、ノーチェの元へ半分の大きさになって返ってくる。これで、無効効果はなくなったはず。
バチ、と再び構えた電子の矢が電光を纏う。
「――撃ち抜きますッ!!」
放たれた矢は過たずゴーストを撃ち抜き、そのHPゲージを大きく削り減らした。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
少し惜しい気持ちは確かにありますが、宝石も愛でる者がいなければただの石ころ。
白虎さんを召喚し彼女の攻撃の直前に頭部の炎に向けて雨の星を投げつけて無効解除をします。
解除されたところに咆哮での攻撃です。
ゴーストエネミーに変えられた方は対象外です。
敵を倒してしまえば解除されるならむやみに傷つける意味も謂れもありませんもの。
ただ白虎さんの邪魔はさせないように、出来るだけ青月ですが鞘ごと手加減して殴るなどして無力化を狙います。
……たんこぶぐらいは許容範囲でお願いします。
敵を前にして、雨の星が強く光る。
まるで使えと言わんばかりのその光に、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は「そうですね」と応じるように呟いた。
せっかく見つけた雨の星だ。惜しい気持ちは確かにある。けれど、どんなに美しい宝石も愛でる者がいなければただの石ころに過ぎない。
「――虎王招来!」
藍の呼び声に、水色の宝珠を持つ白虎が現れた。藍が強い眼差しを向ける先を、白虎も唸り睨みつける。
「まだですよ、白虎さん」
今にも吠えかかりそうな白虎を宥めながら、藍は雨の星を手に狙い定める。他の猟兵に気を取られているのか、あるいは無効効果で油断しているのか、ゴーストの隙は大きい。その頭部にある火の玉めがけて、藍は雨の星を投げつけた。
青い光が火の玉に当たり、半分の大きさになって藍の元へ返ってくる――それと同時に、
「今です!」
白虎の咆哮が猛々しく響き渡り、ゴーストのHPゲージを削り取った。慌てたようにゴースト・ファランクスはクランに参加していた一般プレイヤーたちをゴーストエネミーとして使おうとするが、それは藍が許さない。鞘ごとの青月で気絶させる。もちろん、むやみに傷つける気はなかった。
「……でも、たんこぶくらいは許容範囲でお願いしますね」
ぷっくり腫れたプレイヤーのおでこに、ごめんなさいと言いながら、藍は白虎と共にバグプロトコルを相手取る。
大成功
🔵🔵🔵
キトリ・フローエ
あれが今回のボス?
可愛い見た目だけれど強そうね…!
でも大丈夫よ、バグプロトコルだって何だって
すぐにやっつけてくるから!
安心させるようにルーナとステラに笑いかけて
ボスの元へ飛んでいくわね
ルーナとステラが標的にされないよう
積極的に近づいてゴーストの意識を引き付けながら
隙を見て雨の星を使うわ
この世界のアイテムの使い方、魔法みたいで不思議ね!
雨の星は残しておきたいから使うのは一度だけ
その代わり全力で攻撃よ!
無効効果が消えたのを確認してから魔力を溜めて高速詠唱
もしも二人が戦うようなら今よ!って声をかけて
タイミングを合わせつつ
破魔と浄化の力を籠めた空色の花嵐で
ゴーストエネミーごと纏めて覆ってしまいましょう
天井に雨の波紋が広がる水面が見えた。
構造としては雨降る丘の下に位置しているのかもしれないが、本来は繋がりはしないダンジョンなのだろうということは、ルーナたちの反応で伺える。これもまたバグのせいだろう。
「まずいわよ、アタシたちこんなダンジョンに来れるような装備じゃない……っていうかなんでゴースト・ファランクスがこんなとこいるのよ!」
「あれが今回のボス? ルーナ、知ってるの?」
可愛い見た目ね、とキトリ・フローエ(星導・f02354)が首を傾げると、ルーナは渋い顔で頷いた。
「ええ、前に手酷くやられたことあるのよ。物理が効かないからとにかく相性悪くって……ってアレ属性無効までついてない!? もしかしてあれもバグプロトコル……」
ぎょっとしたルーナとステラが顔を青くする。以前遭遇したバグプロトコルを思い返したのだろう。ルーナたちプレイヤーにとって、バグプロトコルは天敵と言ってもいい。思わず体を硬くした二人に、キトリは一番小さな体で、一番明るく笑ってみせた。
「大丈夫よ、二人とも。バグプロトコルだってなんだって、すぐにやっつけてくるから!」
前だって大丈夫だったでしょう?
キトリは安心させるようにルーナとステラに笑いかける。曇りのない笑顔に、二人は少し落ち着きを取り戻したようだった。それを確かめてから、キトリはまっすぐボスの元へと飛んでいく。
「こっちよ、大きなゴーストさん!」
ぐんと近寄れば、気の抜けるような顔が目の前にあった。ぽこぽこと耳のようについた小さなゴーストも可愛らしい。けれど、うっかり気を抜いてはいられない。キトリはルーナとステラに敵の注意が向かないよう、飛び回りながら敵の意識を引きつける。
キトリからすれば並外れて大きなゴーストだ。だからこそ、小さなキトリは相手からも追いかけづらい。うごうごとその動きがもたついたところで、キトリはゴーストの頭にある火の玉の真上で『雨の星』を使った。
アイテムボックスから現れた花の形の雨の星は、火の玉に当たると同時に強い光を放ち、その光を小さくしてキトリの元へ返ってくる。小さくなった雨の星は、ちょうどキトリの両手に収まるほど。
「可愛い……ふふ、この世界のアイテムの使い方、魔法みたいで不思議ね!」
再びアイテムボックスに戻ったらしい雨の星に、キトリは思わず微笑んでしまう。まだこの世界には詳しくないけれど、知ってみるのも楽しいのかもしれない。
同時にゴースト・ファランクスの無効バグが解けるのがわかった。明らかにわたわたとした顔になったゴーストも可愛いけれど。
「ベル、全力で攻撃よ!」
魔力を溜めながら、花精霊へと呼びかける。手にした杖の花弁が応じるように煌いた。それに、キトリも詠唱を重ねる。――そこに、キトリの名を呼ぶ声がふたつ重なった。
「キトリ!」
「キトリさん、私たちも!」
ルーナとステラだ。万全の装備でないながらも、二人も共に戦おうとしてくれている。自然と笑んだ口許で、キトリも詠唱を終えると同時に大きく声をあげた。
「今よ!」
ルーナとステラがゴーストへと突っ込む。その二人を守るように、きらめく青と白の花弁がごうと舞い上がった。花びらはゴーストエネミーと化した神殿の障害物さえ包み込み、攻撃を許さない。
ステラの盾が、ルーナの剣が、キトリの花嵐がゴースト・ファランクスへと届く。
三人の攻撃は確かなダメージとなって、ゴーストの膨大なHPゲージを大きく削り取った。
大成功
🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
【晴ご一考】
よし、星の雨を使おう
何気に拘りを持ってても仕方がないので、こういう時は容赦なく使う。
これで攻撃ってことは……弾丸に加工できるかな?
お兄さん、お兄さんのおにぎり貸して
というわけでまずはお兄さんのから消化していく
文句は受け付けるが聞く耳はもたない
おにぎりはすべて頂いた
勿論尽きたら自分のも使うけどね
…
……
まあ一個ぐらいは残しておいてあげなくもない(慈悲
自分のは銃から使っていこうと思う
飛び回ってるゴーストを盾(お兄さん)で防ぎつつ、がっつり攻撃していこう
おにぎりは鮭がいいかなあ…パリパリの海苔だけでも捨てがたいけどね
とか話してたら気になってきた
お兄さん、最後の一個のおにぎり星頂戴
…冗談だよ
夏目・晴夜
【晴ご一考】
この雨の星をどうやってあの火の玉に…
今この瞬間ハレルヤの強肩の才能が開花するのに賭けてブン投げてみましょうか
成る程、リュカさんの射撃で楽々ですね
ではリュカさんの雨の星を…えっ
まあ沢山ありますしね。では、お一つどうぞ
いや全部は、あの、せめて一個だけ
(おにぎり星を一個だけ死守)(犬型の星は全力で隠す)
リュカさんが無効効果を消したのに合わせて『喰う幸福』発動
妖刀による斬撃や、斬撃から放つ呪詛にて敵をズタズタに切り裂いて参ります
容赦無く使いますね、ハレルヤがせっせと集めたおにぎりを
これが昔話ならば天罰が下る展開ですよ
そういや昔話のおにぎりって美味そうですよね…具なしの塩にぎりっぽいですけど
「よし、雨の星を使おう」
「まあそうだろうなと思ってましたけどためらいませんね」
まあそうだろうなと思ってましたけど。
クラン『ハレルヤ様とゆかいな仲間たちご一考』のアイテムボックスで強く光る『雨の星』を一瞥してリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が言い放った一言は、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)には想定の範囲内だった。
「こだわり持ってても仕方ないし、こういうときは容赦なく使わないと」
「躊躇なくではなく容赦なくなあたりがリュカさんですよね。ゲームだと最強回復アイテムを惜しみなく使うタイプ」
「使わない意味がわからない……というわけで、お兄さん。お兄さんのおにぎり貸して」
「えっ」
リュカさんのではなく? という視線がずいと出された手のひらに黙殺される。
「……では、おひとつどうぞ」
まあたくさんありますしね、と晴夜は気を取り直して、差し出されたリュカの手に穏やかそうな三角形の雨の星をひとつ乗せた。晴夜の小腹を思ってか、丘の夕焼けが夜にとけるまで二人でそれなりの数が見つかったし、晴夜も特に惜しむつもりはなかった。自分でもひとつ手に取って、敵と見比べる。問題はこの雨の星をどうやってあの火の玉に当てるかだ。ふむ。
「今この瞬間ハレルヤの強肩の才能が開花するのに賭けてブン投げてみましょうか」
「……ハレルヤ様ご一考しとく?」
「しました。やめときましょう、ハレルヤは察しが良いので!」
「賢明だね。……あ、これやっぱり弾丸に合成できる。それじゃ、はじめよう」
リュカは弾丸に合成した晴夜の|雨の星《おにぎり》を込めた銃口をゴーストへ向けた。引鉄を引く。銃声は続けて二発。青い光が星のように駆けていく。
「あれ、なんだか惜しみなくハレルヤのおにぎりが使い切られた気がするんですが」
「どうやら本当に無効にされるみたいだね。よし、次」
「しかも試し撃ちですか? 本当に容赦なく使いますね、ハレルヤがせっせと集めたおにぎりを! これが昔話ならば天罰が下る展開ですよ、聞いてます?」
うん、とリュカは晴夜の文句に相槌は打つが聞く耳は持たない。次々と消化されていく雨の星を見ながら、晴夜ははっとしてクランの共有アイテムから犬型の雨の星を取り出して自分のアイテムに突っ込んだ。これだけは全力で隠さねばならない。
「飛び回ってる小さいゴーストが邪魔だな……お兄さん防いで。あとおにぎりはすべて頂いた」
「いや行きますけど、あの、せめて一個だけ」
妖刀を抜き放ちながらも、晴夜が最後のひとつになったおにぎり型の雨の星をさっと背に隠す。
「……、……まあ、一個ぐらいは残しておいてあげなくもない」
軽く息をついて、リュカは自分の銃型の雨の星を銃弾に合成する。ここまでの射撃で射線は確保できた。あと一発であの火の玉を撃ち抜けるはずだ。
リュカがゴーストの火の玉を狙って、引鉄を引く。その青い光が過たずゴーストの火の玉を貫き、半分の大きさになってリュカのもとへ返っていく。
代わりのようにハレルヤが前へ飛び出した。瞬く間に緊張が張り詰めた姿が立ち消えるようにして一息に距離が詰まり、明るい場所でよく目立つ暗色の刃が実体と化した敵の巨体を切り裂く。その次の瞬間には銃を構えたリュカに迫った小さなゴーストを斬り払っている。
「そういや昔話のおにぎりって美味しそうですよね……具なしの塩にぎりっぽいですけど」
「おにぎりは鮭がいいかなあ……パリパリの海苔だけでも捨てがたいけどね。とか話してたら気になってきた、お兄さん、最後のおにぎり星ちょうだい」
「もう半分の大きさなんですよ! 一回使いましたね?」
「ばれたか。……冗談だよ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュイ・ロティエ
ルーナおにいさんとステラおねえさんは下がってて
ここはボクたちにまかせて!
せっかく見つけた雨の星
もったいないけれど
ううん、今はそれより二人の安全の方が最優先だね
コレはNPCとしての行動原理なのか
ボク自身にある感情なのか、それはわかんないや
今はとりあえず体の赴くままに行動してみるよ
雨の星を火の玉目掛けて投げる
ボクの小さな体じゃ上手く届かないかもしれない
竜神さまのちからを借りて風に乗せて上手く当ててみよう
雨の星はなくなっちゃうかもしれないけど、それでもいいんだ
戦闘はまだ全然慣れていないけれど
今まで見聞きしてきたデータを元に動いてみるんだよ
杖に植物たちのちからを纏わせ
ゴーストエネミーごと吹き飛ばすよ!
「ルーナおにいさんとステラおねえさんは下がってて」
明るく静かで、どこか神聖な気配のある場所。神殿、と呟かれたルーナの言葉を聞いて、リュイ・ロティエ(翡翠の守護者・f42367)も不思議と納得ができた。
同時にこの場所が本来設定されたダンジョンではないことも把握する。もっと高難易度、少なくともこのクエストに用意されたものではない。
リュイは背に庇ったルーナとステラの装備を一瞥する。ドラゴンプロトコルの権限で見る限り、あのバグプロトコルを相手取れる装備ではない。無理をすれば『死んで』しまう。
――そんなのは、いやだ。
「ここはボクたちにまかせて!」
二人が呼び止める声に一度笑って、リュイは竜神さまと共に前へ駆け出した。強く光って存在を主張する緑の雨の星を手に取る。
せっかく見つけた雨の星。みんなで見せあったのもついさっきだ。もったいない、と思ってしまう。
「……ううん、それより二人の安全のほうが最優先だね」
あの二人に万が一にも死んでほしくない。死なせてはいけない、と思う。それがNPCとしての行動原理なのか、自身にある感情なのかはわからないけれど。
(リュイ)
(うん、わかってる)
頭に響く竜神さまの声に導かれるように顔を上げる。足を動かす。冒険の仕方は教えてもらった。
「今はとりあえず、体の赴くままに行動してみるよ」
気を引くように距離を詰めて、緑の葉の雨の星を、ゴースト・ファランクスの火の玉目掛けて投げつける。けれど大きなゴーストに対して、リュイの体は小さい。
「竜神さま、お願い!」
思った通りの軌道には乗らない緑の光の背を押すように翡翠の風が吹き抜ける。共に駆け抜けた翠緑竜の幻影が背に乗せるようにして、ゴーストの火の玉に雨の星を当ててくれた。一際強く光った雨の星は、半分の大きさになってリュイの元へ戻ってくる。
なくなってもいいと思った。けれど、一度で決めれば、雨の星もなくならない。
「いくよ!」
リュイは無効効果をなくしたゴーストの目前に、杖を構えて立った。植物たちのちからを纏う杖には、緑の魔力が集っている。戦闘はまだ慣れない。けれど今まで見聞きしたデータがたくさんある。それを元になるべく動きを再現して、小さなゴーストエネミーたちの攻撃を躱す。そうしながら、敵の動きを誘導して、一箇所に敵をまとめた。
「いまだ!」
杖に集う植物のちからが膨れ上がり、一気に放たれる。それはまだ瑞々しい翡翠の光と共に、ゴーストたちを吹き飛ばした。
大成功
🔵🔵🔵
青和・イチ
雨底の神殿かぁ…綺麗だし、静かで好きかも
敵も可愛…いや、能力は可愛くなさそうか
雨の星…綺麗だし、大事にしたいけど…
これがきみの役目なら…行っておいで
出来れば一回で済ませたいけど、いざとなれば惜しまないよ
皆の命には代えられない
念動力が使えそうなら、力を纏わせ確実に火の玉へ当てる
無理そうなら…狙い定めて思いきり投げよう
大丈夫、くろ丸とのボール遊びで慣れてる
くろ丸は、星と同時に走って気を引いて
星が当たったら攻撃開始
無効の時間は大事だ、ガンガンいこう
ルーナさん、ステラさん、クランの皆も、いけそうなら攻撃を!
自分もすぐ続き、くろ丸と仲間をカバーしつつ攻撃
バグのゴースト君、僕の炎も、綺麗だから見てくれる?
水面の天井に、雨雫の波紋が音もなく広がる。
外では――この上では、あの冷たくない雨が降っているのだろう。石造りの神殿のなかは、綺麗で静かだ。
「……結構好きかも」
思わずぼんやりしていたくなるような、そんな気配の神殿のなかを見渡した青和・イチ(藍色夜灯・f05526)の目に、ゴースト・ファランクスの姿が留まる。まるまると大きなゴーストは見た目だけなら、
「可愛……いや、能力は可愛くなさそうか」
思い直したイチに頷くように、くろ丸も「わふ」と言って低く唸る。人懐こいくろ丸が強面を最大限押し出しているのを見るに、見た目より厄介な敵なのは間違いなさそうだった。物理も属性攻撃も無効という、バグにしても酷い仕様のボスを前にして、丘で見つけた雨の星が強く光を放っている。
「雨の星……これがきみの役目だって言ってるのかな」
大好きな雨のなかで見つけた、大好きな星。その輝きは相変わらず綺麗で、本当なら大事にとっておきたい。けれどきっと、この星はあのゴーストを目指している。
「わかった。……これがきみの役目なら、行っておいで」
語りかけるようにして、イチは雨の星に念動力を纏わせる。確実にあのゴーストの火の玉へ当てられるように。そしてしっかりと狙いを定めて、雨の星を振り上げた。
大丈夫、くろ丸とのボール遊びでこういうのは慣れてる。
「くろ丸、僕が投げたら一緒に走って気を引いて。……ボールじゃないから、こっちに釣られちゃだめだよ?」
わん、とくろ丸が大きく尻尾を振って応える。戦いの場面だけれどご機嫌に見えるのは、いつものボール遊びと重なっているせいだろう。
「――行って」
雨の星が青い光の尾を引いて、ゴーストめがけて放たれる。同時に駆け出したくろ丸は、ちゃんと雨の星につられずにゴーストの気を引くように走ってくれた。
星が、火の玉に当たる。一際強く光り、その光が半分の大きさになってイチのもとへ返ってきた。それを受け止めて、イチも駆け出す。無効が消えた、攻撃するならいまだ。
駆け出しながら、イチは下がってもらっていたルーナとステラたちを振り向く。
「ルーナさん、ステラさん! いけそうなら攻撃を!」
「わかったわ、イチ!」
「任せてください!」
即座に応じて二人が勢いよくゴーストへ突っ込んでいく。ゲームに慣れているだけあって、こういうときの動きは頼もしい。既視感のある連携を見ながら僅かに笑んで、イチも青い炎を周囲にともした。くろ丸に、ルーナたちに至ろうとする攻撃を全て叩き落とし、残りの炎は全てゴーストへ向ける。
無効がとけたせいか、ゴーストの表情はあきらかにわたわたしていた。表情ばかりは可愛いけれど、手加減なんてするつもりもないイチである。けれど、もの言いだけはやわらかく。
「バグのゴーストくん、僕の炎も綺麗だから見てくれる?」
一斉に叩き込まれた攻撃のあとを押すように、イチの青い炎がゴーストを包み込む。HPゲージが削れるのを見て取りながら、イチは小さくなった雨の星を大切にしまった。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神ノ櫻
綺麗な場所だな…サヨ、気をつけて
こういう所には往々にしてボスがいるものだ
…いや、我が巫女がバグるのは嫌だよ?
虹色に輝きそうで
雨の星を、投げつけるのか……
手のひらの上のハート型を見つめる
サヨと一緒に掴まえたはぁとを、ボスに投げつけるのは…或る意味でラブコールのようで少し躊躇われる
その通りだね、サヨ
思い出は消えない
はぁとを投げつけるに抵抗があるなら逆さまにして桃型ということにすれば良い
私の巫女が望むならば
思うままの幸運を約そう
祝災ノ厄倖
今の私達はとっても運がいいはずだ!
サヨと共に、隙のない2段構えの星の雨投球でいく!
星の雨を消さぬよう一撃で決めよう!
神罰を下すが如く薙ぎ払い切断してみせるさ
誘名・櫻宵
🌸神ノ櫻
いい感じの場所に辿り着いたと思ったら…ボスのお出ましよ!
カムイ、気をつけて!
しかも攻撃が効かない無敵バグ……かぁいい顔してやるじゃないの!
私にもそのバグをかけて欲しいくらいだわ
ふふっ、冗談よう
せっかく捕まえた雨の星を使うのは勿体ないけれど……活かしてこその、レアアイテムよ!
アイテムがなくなっても、一緒につかまえたって想い出は残るもの
もう一度流れ星にしてあげる
カムイ、幸運ドーピングよろしく!
怯むことなく前へ駆け
いってらっしゃい!私の桜ちゃん!!
狙いを定めて、思いっきり雨の星を投げつけるわ!
カムイとの二段攻撃よ
まぁどっちかは当たるてでしょ
無効効果を消せたなら、即座に【絶華】を叩き込むわ!
雨の夜から辿り着いた雨底の神殿は、静けさと明るさに満ちている。
清浄で神聖な気配は、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)にとっては心地好いものだ。機嫌よく唇が弧を描く。
「あら、いい感じの場所ね」
「そうだね、綺麗な場所だな……。けれどサヨ、気をつけて。こういうところには往々にしてボスがいるものだ」
頷きながらも警戒を緩めることなく朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)が注意深く辺りを見渡す。わかってるわよう、と櫻宵も応じてめぐる二対の桜色の瞳が、ずんぐりまんまるな敵を見つけるのは同時だった。――ゴースト・ファランクス。巨大なゴーストの集合体。まださほど見慣れないHPゲージの上には、ずらずらと無効効果が並んでいる。
「ボスのお出ましよ! カムイ、気をつけて!」
「もちろん、サヨには指一本ふれさせない」
「ふふ、知ってるわ。……でもふれられないのはこっちかしら。攻撃が全部効かない無敵バグ……かぁいい顔してやるじゃないの! 私にもそのバグをかけて欲しいくらいだわ」
ゴーストの目前で櫻宵とカムイが刀を抜き放つ。それでもゴーストが意にも介していないのは、無敵効果のせいだろう。とぼけた顔がますますきょとんとしたものに見える。
その代わりのように、カムイの表情は微妙なものになった。
「……いや、我が巫女がバグるのは嫌だよ? 虹色に輝きそうで」
ぴかぴかに輝いて笑いながら、いろいろなものを吹き飛ばして駆け抜ける――なんだかそんな想像が脳裏を過ぎった気がする。我が巫女ならバグでなくてもやれそうだ。
「ふふっ、冗談よう。いま輝いてるのはこの子のほうね」
軽く笑い飛ばした櫻宵が、存在を主張するように光を強くしている桜型の雨の星を手に取った。これをあの巨大なゴーストの頭にある火の玉に当てれば、一定時間無敵バグが失われるとは既に聞いている。
「この雨の星を投げつけるのか……」
カムイも自分の手にあるハート型の雨の星を見つめた。雨の丘で、櫻宵と一緒につかまえたハート。それを投げつけるのは、なんだかボスへのラブコールのような気がしてしまう。考えすぎだろうか。
少しばかり口をつぐんでしまったカムイに、櫻宵が笑った。
「せっかくつかまえた雨の星を使うのは勿体ないけれど……活かしてこその、レアアイテムよ! もしもなくなっても、一緒につかまえたって想い出は残るもの」
櫻宵の指先がカムイの手にあるハート型の雨の星を撫で、自分の雨の星をぐっと片手に収めた。いたずらな笑みで、櫻宵が首を傾げる。
「私たちの手で、もう一度流れ星にしてあげましょ?」
「……その通りだね、サヨ」
くすりと笑って、カムイも顔を上げた。手のハートをくるりと逆さまにして、自分も握り直す。
「思い出は消えない。はぁとを投げつけるのに抵抗があるなら、いまだけこれは桃型ということにしてしまおう」
「名案ね! ――それじゃあカムイ、幸運ドーピングよろしく!」
綻ぶように笑って、櫻宵は怯むことなく前へ駆け出した。大きく振りかぶって、雨の星を思いきり投げつける。
「いってらっしゃい! 私の桜ちゃん!」
弾んだ声が響くと同時に鈴が鳴る。それは幸運を約す朱桜の導き。ふわり、はらりと舞う朱色の花弁が、櫻宵を、カムイを、そしてふたりの雨の星を包み込む。その花弁に乗せるようにして、カムイも雨の星を投げた。隙の無い二段構え投球である。どちらかは当たる――否。
「今の私たちはとっても運がいいはずだ! きっとどちらも当たるよ。だからこそ――この一撃で決めよう!」
「ええ、行くわよカムイ!」
青く光の尾を引くふたつの星が、ゴーストの火の玉に見事命中する。その次の瞬間に、二人の刃が閃いた。空間ごと断ち斬る不可視の剣戟が、神罰の如き一刀が、無防備に実態を晒したゴーストを斬り伏せる。
そしてふたつの青い流星は、それぞれ半分の大きさになって、ふたりの元へ返っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シェキザ・シップスキャット
【ウミホタル】(明るい場所なので快活に)
あいつがここのゴーストかァ!!
オレんとこの野郎共たァ違って随分まんまるいな!!
オレのこの図体じゃ投げたってたかが知れてるが、なにもオレが投げなきゃなんねぇワケじゃねぇんだろ?
喚ぶのは投てきに秀でたゴーストクルー!!
荒海の上、己の技術だけで獲物を狩っていた男だ、クルーじゃこいつ以上に適任はいるめぇよ!!
せっかくの宝を持ち帰らねぇ手はねぇ、投げんのは一度で頼まァな!!
ヒューウ、珂奈芽もいいモン決めんじゃねぇか!!
無敵が消えたんなら、仕事だ野郎ども!!
珂奈芽の作った隙を逃がさず、クルーが操るジャイアントアンカーをぶち当てる
悪戯もここまでだ、喰らわせてやんな!!
草守・珂奈芽
【ウミホタル】
ほほー、ゴーストって言うにはめんこいのさ!
まあやっつけちゃうけどね!(自信満々!)
素早さならあたしだって負けないのさ
今のあたしは竜みたいにだって飛べるからね!
飛ばした鱗で行き先を制限しつつ相手を引きつけるよ
シェキザくんたちから狙いやすい、開けた場所を意識してね
鱗の一部は【盾受け】に使って炎に当たらないようには気をつけるかな!
頭に星が当たったならチャンス!
「さっすがやるじゃんさ! ホンモノはやっぱ違うね!」
隙なんかあげないで水や氷を纏わせた鱗を一斉にぶつけるのさ!
砕けても数を足して押し通して、纏ってる炎を消してみせるよ
丸裸にしたならあとは一撃――任せたかんね!
雨夜を抜けて、明るい場所へ辿りつく。
澄んだ光を浴びて、シェキザ・シップスキャット(セントエルモの灯は踊る・f26310)の翅もなお明るさを増したようだった。ぐんと飛んで、中央に見えた大きなゴーストの姿を捉えるや、一際大きな声が響く。
「あいつがここのゴーストかァ!! オレんとこの野郎共たァ違って、ずいぶんまんまるいな!!」
小さな体から発される快活な声に、驚いたようにゴーストが飛び上がる。その頭上に『表示』されているHPゲージは、大部分が削られていた。既にここに来た猟兵たちの成果だろう。
「ほほー、ゴーストって言うにはめんこいのさ! まあ、やっつけちゃうけどね!」
シェキザの声につられるようにして、草守・珂奈芽(意志に映す未来・f24296)の声も自然と快活さを増し、自信満々に響く。静かな神殿に二人がいるだけで、その場が明るくなったようだった。雨の星も、役目を主張して強く輝く。
「使えってか? オレのこの体じゃ投げたってたかが知れてるが、なにもオレが投げなきゃなんねぇワケじゃねぇんだろ?」
だったら、とシェキザは投擲に秀でたゴーストクルーを喚ぶ。顕れたのは荒波の上、己の技術だけで獲物を狩っていた男。
「クルーじゃこいつ以上に適任はいるめぇよ!! だがせっかくの宝を持ち帰らねぇ手はねぇ、投げんのは一度で頼まァな!」
シェキザの言葉に、ゴーストクルーは頼もしい笑みを唇に乗せる。
その狙いが定められる前に、珂奈芽も前へ飛び出した。額には青い蛍石の角が覗く。精霊の力で輝くそれは珂奈芽の体に力を満たし、竜鱗と翼を身に宿す。
「素早さならあたしだって負けないのさ! 今のあたしは竜みたいにだって飛べるからね!」
翼を大きく動かして一息に距離を詰め、飛ばした鱗でゴーストの注意を引きつける。シェキザたちから狙いやすい開けた場所へ誘導するようにして、鱗がまぶしく飛び交い、珂奈芽へ至ろうとするゴーストの炎を防いだ。
珂奈芽の大きな竜翼と、シェキザの小さな翅が対角線上で輝きあう。二人の距離は遠い。けれど視線は友と確かに合った。
「――いまだよ!」
「ゴーストクルー! いまだ!」
二人の雨の星が、ゴーストの火の玉へと過たず至った。その光は役目を終えると、半分の大きさになって二人の元へ返っていく。――けれど仕上げはここからだ。
「さっすがやるじゃんさ! ホンモノはやっぱ違うね!」
「ヒューウ! 珂奈芽もいいモン決めんじゃねぇか! 無敵が消えたんなら、仕事だ野郎ども!!」
明るい声を交わし合って、二人の狙いは無敵を失ったゴースト・ファランクスの本体へと定まる。大きなその身は狙うに容易い。明らかにゴーストはわたわたした顔をしている。
「めんこいけど、隙なんかあげないのさ!」
珂奈芽が容赦なく水や氷を纏わせた鱗を一斉にぶつける。砕けようが弾かれようが、鱗を惜しむつもりはなかった。ゴーストが纏うその炎を勢いよく消し飛ばす。
「あとは一撃――任せたかんね!」
「ああ!! 悪戯もここまでだ、喰わらせてやんな!!」
無敵も防御も失われたゴーストが大きな隙を晒す。それを逃すことなく、シェキザのゴーストクルーが操るジャイアントアンカーがゴースト・ファランクスへと叩き込まれた。
轟音と共にゴースト・ファランクスが弾け飛ぶ。
バグにより無敵を得ていたゴーストの集合体は無敵を剥がされ、ダメージを累積されそれ以上ひとつに戻ることはできない。
「あたしたちの勝利さ!」
「ああ、やったな!」
珂奈芽とシェキザは互いに宙を駆けて、大きさの違う手を友と打ちあわせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『晴空ライナー』
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POW : 景色を楽しみながら、食事やお喋り。
SPD : 列車のなかを見て回ったり、記念のアイテムを見つけてみる。
WIZ : 個室で眠ったり、ゆっくり過ごす。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●晴空ライナー
バグプロトコルが消えると同時に、猟兵たちはプレイヤーたち共々紫陽花の咲き揃う平原へと飛ばされた。
バグが解消されたのだ。プレイヤークランの者たちはぱっと表情を明るくする。
「そう、本来は紫陽花の平原に出るはずだったのよ、戻れたみたい、よかった……!」
「じゃあ、これが使えるってことですね!」
プレイヤーたちが取り出したのは『晴空ライナー』と書かれた切符のアイテムだ。
手にすると、ぱっとポップアップが表示される――〔 切符を使用しますか? 〕
これにはいを選べば、その場そのときに空から汽車が迎えに来てくれるのだ。ちなみにいまのフィールド時刻は昼だが、コマンドを使えば一瞬で夜にすることもできる。好きな時間に、というのはそういう仕掛けらしい。
「アタシたちはこのまま汽車に乗るけど、星空もおすすめよ。――ありがとう! 偶然でも、助けてくれたってアタシたちは思っておくから!」
プレイヤーたちは満面の笑みで礼を言って、空を駆けて来た汽車に乗り込んでいく。
昼か夜か、朝焼けや夕焼けか。見たい空の表情を選んで汽車に乗れば、空高くでその景色を楽しめるだろう。
乗り込んだ列車には、さまざまな楽しみがある。
ひとつは個室。大きな窓と二段ベッドがついた広めの個室で、部屋でのんびり眠ったり、ゲームなどを楽しんだりできる。大きなベッドなので、ひとつで二人までなら充分眠れるだろう。
ゲームで人気なのはカードゲーム、人生ゲーム、流星の車に乗ってコース走破の速さを競うゲームなどだ。
列車の席からも、景色は堪能できる。車内の特別コマンドでさまざまな軽食が注文できるようになっているから、好きなものを食べたり飲んだりしながら、空の列車旅を楽しめるだろう。
軽食は雨の星にちなんだ青い星をモチーフにしたゼリーやケーキ、色んな時間帯の空を再現した晴空ドリンクが一番人気だ。他に人気があるのはたっぷり大きないちごタルトや、りんごがふんだんに使われたパフェ、桃のスムージー。可愛いスイーツはもちろんだが、唐揚げや幕の内弁当なんかも人気があったりする。きっと探せば好きなものがひとつはあるだろう。お喋りを楽しみながら色んなものを食べてみるのもいい。
そして景色を見ながら列車のなかを巡ってみるのもいい。
最後尾の車両には、『思い出処』がある。――要するに、アイテムを作成できるところだ。
ここでは雨の星を好きなアクセサリーにすることができる。ネックレスやブレスレットは定番、ブローチ、ピアス、指輪などさまざまだ。デザインは希望のものが選べ、大きさも装備者ぴったりになるから問題はない。猟兵たちはこの世界を離れても、それを持っていくことができる。思い出に、お土産に雨の星を連れ出してやるのもいいだろう。
空の列車旅の楽しみ方はひとそれぞれ。
雲を抜けて、汽車は勢いよく空を自由に走り出す。――それぞれが帰るべき場所まで。
●補足
だいたいなんでもできますので自由にしてください! なにがあってもなくても大丈夫です。
大きなことを二つ以上したい場合はオバロがおすすめです。
明確に話しかけるプレイングがあれば、NPCと過ごすこともできます。
ノーチェ・ハーベスティア
紫陽花の平原…!!わー綺麗ー!!!
そしてここでは『晴空ライナー』のチケットが使えるんですね。
〔 切符を使用しますか? 〕
します♪
空飛ぶ列車旅って素敵ですね。
そう言うお話があったようななかったような…。
そういえば星の雨…結局一回分しか使ってないからそれでアイテムが作れるんだ…せっかくだから何か作りたいなぁ。
ペンダント…ブローチ………ブレスレット!!
うんブレスレットにしよう。
手元でキラってしてたら綺麗だもんね♪
「紫陽花の平原……!! わー、綺麗ー!!!」
気持ちのいい青空の下、一面に広がる色とりどりの紫陽花にノーチェ・ハーベスティア(ものづくり・f41986)は思わず笑みほころんで声をあげた。紫陽花たちは雨雫をきらきらと纏って、空を見上げている。
その空から『晴空ライナー』はやってくるらしい。ノーチェは少しわくわくとしながら、切符をアイテムから取り出した。ポップアップが表示される。
――〔 切符を使用しますか? 〕
「します♪」
指先ひとつ。それだけで、空から汽笛が聞こえた。見上げれば、青空を汽車が駆けてくる。
(空飛ぶ列車……そういうお話があったような、なかったような)
いつか読んだ気もするが、詳しくは覚えていなかった。けれど、文字をなぞって思い浮かべた想像が、いまは目の前にある。
「素敵ですね!」
弾む声と満面の笑みで、ノーチェは晴空ライナーに乗り込んだ。
青空を駆けてゆく列車のなかを、ノーチェは見て回ってみることにした。どの車両の窓からも、空の眺めは見事なものだ。ここちよく走っていく勢いについ足元もはしゃいで小走りになりながら、ふと気づくとノーチェは『思い出処』と書かれた車両の前にいた。確かここでは、アイテムを作れると聞いたけれど。
「そういえば、雨の星……一回分しか使ってないから、アイテムが作れるんだ。せっかくだからなにか作りたいなぁ」
ノーチェはもう一度アイテムを確かめて、小さくなった雨の星を手に思い出処へと入る。
そこはよくあるお土産売り場に似ていたけれど、見慣れない大きな炉のようなものがあった。天球儀に似たそれは、大きな円のなかでなにかが光り巡っている。どうやらそこが、アイテムを作成するところらしかった。
雨の星をセットして開いたコマンドには、さまざまなアクセサリーが並んでいる。ううん、と思わず真剣に考え込んでしまった。どれにしてもきっと綺麗で可愛いはずだ。
「ペンダント……ブローチ……、――ブレスレット!!」
迷いに迷って、ノーチェはブレスレットを選択する。デザインはシンプルで綺麗な方向で整えた。
「手元でキラってしたら綺麗だもんね♪」
合成のコマンドを押すや、ほんの一瞬でアクセサリーは完成する。
青く光る金平糖のような雨の星が真ん中に嵌め込まれた、銀色のブレスレット。ノーチェがそれをさっそく手首につけてみると、列車の窓の外から差し込むいつもより近い太陽の光が、雨の星をきらりと輝かせた。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
このぽっぷあっぷうぃんどうというのはなかなか慣れませんね。いきなり目のまえに出るんですもの。
キマイラフューチャーですと規模が大きいですし少し遠めなのも、街中の看板のようなものだと理解は出来るのですが。
ええと切符の利用ですね。晴れ渡る青空を。
一通り列車を眺めながら最後尾へ。そのままでも良いとは思ったけれどアクセサリーに加工しましょう。
加工できる中だとブローチと指輪が持ってないかな?ベビーリングはもう指に通す事は出来ないものだし。
でも指輪は予定が全くないとはいえ、そのできれば結婚相手と交わした物を最初にしたいなとささやかながら夢もありますし……。……ブローチにしましょう。
雨の星なのですからそこから細い鎖をいくつかたらしその先には小さなビーズを。雨の星から雨の雫がこぼれおちるようなデザインに。
最近はブローチを帯止めのように、または逆に帯止めをブローチのように使う事もあるので出番はたくさんありそうです。
――〔 切符を使用しますか? 〕
「わっ……」
アイテムボックスから切符を取り出すや、ぱっと目の前に現れた表示に思わず夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は小さく声をあげてしまった。それを思わず自分で笑う。
「ふふ、このぽっぷあっぷうぃんどうというのはなかなか慣れませんね。いきなり目の前に出るんですもの」
そういうもの、だとはわかっていてもまだゲームのなかの世界であることに馴染み切ってはいなかった。キマイラフィーチャーであれば、街中の看板のようなものだと理解はしているけれども。
「ええと、切符の利用でしたね。……ではこのまま、晴れ渡る青空に」
時間帯を選べるとは聞いたが、いま見上げた先に広がる青空は心地いいものだ。藍は青い空から駆け降りてきた列車に乗り込んだ。
列車のなかはサクラミラージュでもよく見るものだったが、窓は特に大きかった。どの車両からでも景色が楽しめるようになっているらしい。
雲の上を駆けていく列車からは、果てしない青がよく見えた。空にいるのに海にも似たその色を視界に収めながら、藍はのんびりとそれぞれの車両を眺めていくことにする。
そのうちに辿り着いた最後尾の車両には車両番号のところに『思い出処』と表示されていた。
「ここですね、雨の星をアクセサリーにできるのは……」
思い出処に入ると、そこはよく目にするお土産所に似ている。違うのは、真ん中に不思議な天球儀のようなものがあることだ。ふわふわと光が内側に巡るそれで、雨の星をアクセサリーにできるらしい。
「そのままでもいいとは思ったのですけれど、せっかくですから」
今度は少しだけ心構えをしてから雨の星を球儀のなかへ入れると、アイテム作成のポップアップがぱっと表示された。
さまざまなアクセサリーの一覧が表示され、藍はそれを真剣に見ていく。
「加工できるなかだと、ブローチと指輪が持ってないかな? 持ってるベビーリングはもう指に通すことができないし……」
新しいアクセサリーなら、持っていないものがいい。とはいえ、と藍は加工後のサンプルが表示された指輪の画像をじっと見つめた。
(全く予定がないとはいえ、その、できれば結婚相手と交わしたものを最初にしたいなと……ささやかながら夢もありますし)
普段使いのアクセサリーとしてもよく使われる指輪だが、やはり一番に思いつくのは結婚指輪だ。どうしても特別なもの、という印象が強いし、ささやかな夢が叶ういつかもあるかもしれない。
「……ブローチにしましょう」
声に出してそう決めて、藍はブローチを選択した。どうやらデザインも選べるようで、たくさんあるなかで一番目に留まったものを選ぶ。
そうして決定のボタンを押すや、一度球儀が強く光って、ひとつのアイテムが藍の目の前に浮かび上がった。
それは、雨の星を中心に細い鎖をいくつかたらしたもの。先に連なる小さなビーズは雫の形をしていて――まるで雨の星から雨の雫が零れ落ちるようだ。
手にすると、しゃらりと微かな音がする。雨の星は手のなかで誇らしげにも見えた。それに藍も思わず笑み零して、そっと囁く。
「最近はブローチを帯留めのように使うこともあるので、出番はたくさんありそうです。……よろしくお願いしますね」
大成功
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キトリ・フローエ
今回のクエストも大成功ね!
ルーナとステラのデートの邪魔をしては悪いから
また逢いましょうねと約束してお見送り
どの時間帯の空も好きだけれど
お星様がおやすみなさいする頃の
夜明け前の空と一緒に帰ろうかしら
車内と外の景色を楽しみつつまずは思い出処へ
雨の星はイヤリングに
とびきり素敵なのをお願いね!
あとは…
サクラに逢えたらお礼を伝えたいの
ルーナとステラにまた逢えたのも
素敵な想い出が増えたのも
あなたが案内してくれたおかげよ
本当にありがとう!
…それでね、ひとつお願いがあって
この世界のこと、色々教えてほしいの
綺麗な空と景色とご褒美みたいなデザートを傍らに
空の旅を一緒に楽しめたら
今日の想い出がまたひとつ増えたわね!
青い空を、まだゆっくりと汽車が上がっていく。
その窓を開けて手を振る二人を見つけて、キトリ・フローエ(星導・f02354)は小さな体で大きく手を振った。
「ルーナ、ステラ! また逢いましょうね!」
青空に響いたキトリの声に、二人の声が弾んで返る。
「キトリさん、また! ありがとうございました!」
「ありがとうキトリ、またね!」
約束よ、と言う声が汽笛と共に空をぐんと駆け上がっていった。
それを見送ってから、キトリは自分の分の切符をアイテムから取り出して少し考える。空は、どの時間帯の表情も好きだ。けれど帰り道として選べるなら。
「お星さまがおやすみなさいする頃の、夜明け前の空と一緒に帰ろうかしら」
――夜がゆっくり明けていく。
夜空にまぶしく輝いていた星は、夜色と暁のあわいにとけるようにまどろんでいる。
「綺麗ね……。おやすみなさい、お星さま」
空駆ける汽車から眺める星はすぐそばだ。キトリはそっと星たちに囁いて、景色を眺めながら車内を迷わず進んでいく。まずは思い出処へ行くと決めていたのだ。
「……これでアイテムを作る、のかしら?」
思い出処にあったアイテム精製機は、キトリにとっては見慣れないものだった。ひとまず慣れないコマンドに従って、雨の星をどんなアクセサリーにするか決めていく。これも決まっていた。
「とびきり素敵なのをお願いね!」
できあがったのは、キトリにぴったりの大きさの雨の星のイヤリング。揺れる金色の雨雫と共に淡く青く光る小さな花は、見つけたときよりもずっと小さいけれど、輝きは変わらない。またひとつ、思い出が増えた証だ。
「あとは……」
イヤリングを大切にしまってから、キトリはもう一度汽車のなかへふわりと戻って辺りを見渡す。最後尾の思い出処に来るまでに、その姿を見つけてはあった。確かこの辺りに、と二つ車両を戻ったところで、ボックス席にさくら色の少女――サクラを見つける。
「サクラ、ここにいたのね。あのね、お礼を言いに来たの」
「あっ、えっと……キトリさん! クエスト、お疲れ様やね。……お礼?」
機嫌よく空を眺めていたサクラは、声をかけられて嬉しそうに顔を綻ばせ、すぐにきょとんと首を傾げた。キトリはそれに笑ってうなずく。
「そう。ルーナとステラにまた逢えたのも、素敵な想い出が増えたのも、あなたが案内してくれたおかげよ。本当にありがとう!」
ぱっと花咲くように笑うキトリに、サクラはしばらくきょとんとして、それからへにゃりと照れを滲ませて頬を緩めた。
「えへへ、お礼言われると思わんかったから、びっくりしてもた。えと、どういたしましてと……私からもありがとう、なん。それに、おかえりも」
ルーナやステラを助けられたのも、こうして帰り道を楽しめるのもキトリたちのおかげだと、サクラは嬉しそうに笑う。
「私、戦うんはあんまりできんから……。行ってらっしゃいって言って、おかえりって言えるんが――無事に帰ってきてくれるんが、いちばん嬉しい」
ふわふわと満面の笑みを浮かべるサクラに、キトリも微笑むと「それでね」とサクラの向かいの席にふわりと飛んだ。
「サクラにひとつお願いがあって。……よければ、この世界のこと、色々教えてほしいの」
「ゴッドゲームオンラインのこと?」
「そう、まだ慣れていなくて。コマンド……だったかしら。魔法みたいで面白いとは思うのだけど、ときどきまだびっくりしちゃうの。また来るかもしれないし……」
「ええよ!」
表示もまだ見慣れなくて、と首を傾げるキトリに、サクラは浮いている足元をもっと浮かせて満面の笑みで頷いた。うっかり思いきりキトリを覗き込みそうになって、傍らの仔竜が引っ張ってくれる。
「えへへ。私も別の世界から来たから、最初はびっくりして。けど、大好きやから知ってくれたら嬉しいし。あっ、せっかくやからなんか食べる? 簡単に呼び出せるコマンドのモーションがあってな」
「いいわね! 頑張ったあとはご褒美がなくちゃ。えっと、そのモーションって言うのが……」
ゲームのこと、デザートのこと、帰り道にさす澄んだ朝の空の景色のこと。
話は絶えず色々なはしゃぐ声を乗せて、列車は空を駆けていく。
キトリにとっても、サクラにとっても。今日の想い出が、またひとつ増えた。
大成功
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コッペリウス・ソムヌス
【睡】2名
GGO世界に訪れるのは初めてだけど
汽車だったり景色だったりは現実とも
そう変わらなそうにも見えるね
みつきが見たい空の表情はどんなかな、っと
…本当の幸い探す夜汽車の話なら
オレも聞いた事はあるよ
夜空の列車旅ってのも中々だよねぇ
高くから見渡す眺めは大体
良きものだとは思うけど
んー…そうだな氷の城でも行ってみようか
そろそろ暑くもなるみたいだし
席の窓から景色を堪能する他に
食べたり飲んだりも楽しめるのは意外だなぁ
晴空ドリンクは色んな空を再現してるらしいし
連れの蝙蝠であるライラは
今回は苺タルトが気になるみたい?
みつきの林檎パフェも美味しそうだよね
結局は味わったり出来た方が
思い出深いような気はするよねぇ
神白・みつき
【睡】2名
景色もそこに息づく者達も
仮想空間とは思えない緻密さですね
迎えの汽車を前に悩みますが時間帯は夜に設定して
星を見ながらの旅路としましょうか
"本当の幸い"を探す少年の物語を彷彿とさせるでしょう?
本当に幻想的な風景です
こんな形で架空の場所や物語を体験できるのですね
もっと違う風景も存在するそうですが
コッペリウス様は見てみたい場所はありますか?
席について星空を堪能しつつ
せっかくですし私はお茶と甘味をいただきます
共連れの蜥蜴のみたらしも甘味が気になっている様子
ぱふぇに乗っている林檎でしたら食べられるでしょうか
ライラにも一欠片お裾分けです
確かに味も立派な思い出
きっといつか思い返す日が来るのでしょうね
現実と仮想の区別をつけるのは、いま見ているものが夢かどうかを区別するくらいには難しいのかもしれない。
「この世界に訪れるのは初めてだけど……現実とそう変わらなそうにも見えるね」
自身が降り立った景色を見渡して、コッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)はさほど驚きも見せず、声音にだけ僅かな感心を乗せてつぶやいた。
その隣で、神白・みつき(幽寂・f34870)も幾度かまたたきながら景色を見渡す。
「ええ。仮想空間とは思えない緻密さですね」
青い空と雨雫をきらめかせる紫陽花、そしてその場にいるひとびとも、現実と差異を感じない。違うと言えば――空気に雨上がりの匂いがないことくらいだろうか。それもよく思えばといったくらいで、錯覚として覚えてしまいそうなほどでもある。
「さて……この世界にも興味はあるけど、いまはみつきが見たい空の表情が気になるかな」
コッペリウスが悪戯に笑う。その手には『晴空ライナー』の切符があり、みつきの手にもそれがある。いまは見上げた先に青い空があるが、仮想空間ならではで、その時すらも気軽に変えてしまえるらしい。操作ひとつで〔 時間帯を選んでください 〕と現れたポップアップに、みつきはさらにいくつかまたたいて、指先でそっと浮かんだ文字に触れてみる。
「なら……夜に。星を見ながらの旅路としましょうか」
――またたきをもうひとつ。
たったそれだけで、空は夜に塗り替わる。美しく星が輝く夜空から、汽笛が聞こえた。月明りで夜空に浮かび上がる汽車のシルエットは、まるで星空を泳ぐようだ。
「コッペリウスさまはご存知でしょうか。“本当の幸い”を探す少年の物語を、彷彿とさせるでしょう?」
ちらりと笑ったみつきに、降りて来る汽車を見上げていたコッペリウスも唇に弧を描いた。
「……本当の幸いを探す夜汽車の話なら、オレも聞いたことはあるよ。オレたちも探してみる?」
降りて来た列車が、二人の前で扉をひらく。そちらへ一歩踏み出しながら冗談めかして手を差し伸べたコッペリウスに、みつきもくすくすと笑ってその手を取った。
「私たちが少年と言えるかどうか。……コッペリウスさまは通るかもしれません」
「それ、オレがひとりになっちゃわない? せっかくの夜空の列車旅なのにさ」
二人を乗せて、列車は夜空を駆け上がる。ぐんと星に近づき、雲を抜けてさらに上へ。地上が見えなくなると、果てしなく広い星空が大きな窓から見えた。いい眺めだね、とコッペリウスが言ってみつきが頷き、二人はテーブルつきのボックス席につく。
「本当に幻想的な風景です。こんな形で架空の場所や物語を体験できるのですね。……もっと違う風景も存在するそうですが、コッペリウスさまは見てみたい場所はありますか?」
「んー……そうだな。高いところからの眺めはだいたい良いものだけど……これからなら氷の城がいいかな。そろそろ暑くもなるみたいだし」
現実にあるうだるような暑さを思えば、こうして心地いい仮想に浸りたく気持ちもわかるような気がする。軽く頬杖をついて、コッペリウスはテーブルに置かれたメニューに触れた。
途端、軽食のメニューがポップアップする。
「へえ……景色は醍醐味って感じはするけど、食べたり飲んだりも実際に楽しめるのは意外だなぁ。みつきはなにか頼む?」
「そうですね……せっかくですし、私はお茶と甘味をいただきます。林檎ぱふぇの林檎なら、みたらしも食べられるでしょうか」
名前を呼べば、みつきの頭の上で興味津々に画像を覗き込んでいた蜥蜴のみたらしがするするとテーブルに降りて来る。食べる気は満々らしい。
それに笑ったコッペリウスの肩でも、蝙蝠のライラがじっと苺タルトの画像を見つめているものだから、はいはい、とふたりがそれぞれの連れに負けるようにして軽食を選ぶや、すぐにテーブルの上に頼んだものが現れた。
「これは便利だな……。ライラは苺タルトが気になるみたいだけど、晴空ドリンクもいいねぇ。オレはこれにしよ」
コッペリウスはもうひとつ、夜空を再現した晴空ドリンクを頼む。みつきも、見慣れた温かな茶を見つけてそれを頼んだ。既にある林檎パフェには、みたらしが釘付けである。
「みたらし、どうぞ。……ライラにも、一欠片お裾分けです」
みつきが差し出した林檎を、ライラも嬉しそうに頬張った。それを微笑ましくみながら、みつきも林檎がふんだんに使われたパフェを口へ運ぶ。味は、現実にあるものと少しも変わらないようだった。
「おいしい……」
「みつきの林檎パフェも美味しそうだよね。……空も綺麗だし、景色だけでもいいけど。こういうのって、結局は味わったりできたほうが、思い出深いような気はするよねぇ」
コッペリウスはいま見える景色を切り取ったようなグラスを傾けて、ライラと共に苺タルトをつつく。空駆ける列車のなかは、線路特有の揺れはない。時折列車の汽笛が空に響く。
汽笛に耳を澄ませながら、みつきももう一口パフェを口に運んでうなずいた。
「確かに、味も立派な思い出です。記憶は味や香りと強く結ばれているとも言いますし……きっといつか、今日のことも、思い返す日が来るのでしょうね」
夜空を駆ける列車で友人と他愛もなく話しながら、甘味をつついたことも。ほんのちいさな幸いとして、いつか振り返る思い出のなかに重なっていく。
大成功
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夏目・晴夜
【晴ご一考】
広い個室…ならば、すべきは一つ
ゴロゴロしながら色々食べつつ、ゲームして遊びましょう!
これぞ大人の贅沢というやつですよ
その下準備として、まず軽食を頼みます
気になるやつを片っ端から
とりあえず唐揚げと、あとタルトは絶対に頼みたいです
美味いものが一通り揃ったところで
まずはこちら!神ゲーな予感がするレースゲームやりましょう
神ゲーな予感がする謎解きゲームもありますよ
神ゲーな予感がする協力アクションゲームはどうですか
ゲームとは…まともなものなのでは…?
生きてる感じ…?ゲームは生物ではないですよね…
ずっと何言ってるのかわからない…怖…
お、リュカさんのおすすめゲームですか!
こ、これは…タイトルの時点であからさまにクソ!
…リュカさん、休憩しましょう
しましょう、休憩、リュカさん
列車の中を探検しつつ『思い出処』を目指すとしますか
辛うじて残ったおにぎりと、犬型の雨の星
これでどんなアクセサリーを作るか悩ましいですねえ
は?犬?こんなクールでカッコ良すぎる犬がいるとお思いですか
いや、帰ったらハレルヤは寝ます
リュカ・エンキアンサス
【晴ご一考】
確かに…
こんなところで遊ぶなら、遊ぶしかないね
こもる用の備蓄を山ほど貯めて、
あとはゲームをする
俺は一日でも二日でもやっていける
はいはい
食べ物は何でも頼んでね
(ゲームはそれなりに何でも上手にこなせますが、くそゲーマニアです)
お兄さんの好きなゲーム?
ん、まずはいいけど…
…
……お兄さん
なんかこのゲームまともじゃない?
うーん、なんか違う
こう、生きてる感じが足りない
上品すぎる(協力ゲームでお兄さんを裏切りながら
そうだね。これとかこれとかこれにしない?
史上屈指のくそゲーだよ
こういうの好き
高難易度・バグゲー・理不尽・破綻したシナリオ、何でもそろってる
(延々と休憩も取らずにくそゲーにつき合わせる
…
え?まだまだあるけど。お兄さんゲームする覚悟が足りない
…わかった。じゃあ休憩ね
というわけで列車探検に行く
行けばなんにでも顔を突っ込むし首を突っ込む
『思い出処』かぁ
…首輪でいいのでは?なんかこう、犬だし
悪かった。ごめんごめん
俺は文房具っぽいのがいいかなあ…
ところでお兄さん、帰ったらまたゲーム再開しよう
列車は青空を真っ直ぐ駆けていく。
広々とした個室にある窓は、過ぎていく果てしない空を切り続けているようだった。
おお、と歓声をあげてその部屋へ踏み込んだ夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は、はじめの数歩ぶんだけ尻尾を勢いよく振って、その勢いそのままにリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)を振り向いた。
「リュカさん、ここで我々がすべきことはもうおわかりですね。――ええそうですその通り! 広い個室と来たらすべきはひとつ。ゴロゴロしながら色々食べつつ、ゲームして遊びましょう!」
「まだなにも言ってないけど……確かに、こんなところで遊ぶなら、遊ぶしかないね」
目を輝かせて言った晴夜に対してリュカは通常通り冷静だが、その視線は室内の環境の確認から持って来たゲームの確認まで素早い。こんなときのために、積んだゲームは存在するのだ。
そしてこのときばかりは、普段あれこれと言い合うふたりの息がしっかり合っていた。
「ではハレルヤは下準備として、まず軽食を頼みます」
「はいはい、なんでも頼んでね。備蓄さえあれば、俺は一日でも二日でもやっていけるから」
言いながらリュカは持参したゲーム機を設置しておく。ゲームのなかではあるが、これも問題なく接続できそうだった。
「ではとりあえず唐揚げと、あと苺のタルトは絶対に頼みたいです頼みました。あ、これノータイムで食事出てきますね。気になるやつ片っ端からいきますよ。飲み物は各自頼みます? コマンドひとつで超絶便利ですし。この部屋家にほしい」
「同感。飲み物と食べ物はテーブル分けとこ、だいたいこういうの一回はこぼすし」
あるあるですね、と言いながら晴夜は次々軽食を注文して、ひとつのテーブルを埋めてしまう。それをベッドのほうへ引き寄せて、唐揚げをひとつ頬張りながらベッドに落ち着いたところで、リュカから無線コントローラーが放られるのを片手でキャッチした。
「はい、それお兄さんの。食べ物も揃ったみたいだね」
「ありがとうございます! では張り切ってゴロゴロゲームをしていきましょう! まずはこちら! 神ゲーな予感がするレースゲームやりましょう」
いいよ、と楽しげに晴夜がコントローラーで選択したゲームを見ながら、リュカもコントローラー片手にポテトをつまんでベッドに寝転がった。愛すべき自堕落である。
結果として、レースゲームは大いに盛り上がった。ハイライトは互いに競り合った結果同時にコースアウトして、仲良く最下位を争ったところである。
「では次です! 神ゲーな予感がする謎解きゲームもありますよ」
「いいけど……」
次にやった謎解きは、謎解きのはずがそこそこゴリ押しプレイになったのがハイライトだ。特に音を立てずに進めばよかったステージを二人して全速力で駆け抜けてクリアしてしまった辺りはリアルタイムアタックじみていた。
「さあどんどん行きましょう! 神ゲーな予感がする強力アクションゲームはどうですか!」
「お兄さんの好きなゲームならいい、けど……」
さらに次に始まった協力ゲームを進めながら、リュカは次第になんともいえない顔になっていた。確かにどれも良いゲームだ。面白い、と思う。けれど。
「……、……うーん。なんか、違う」
新しい盤面へのロードの途中、辛口の唐揚げをつまみながらリュカが首を傾げた。それに晴夜も首を傾げる。
「なにがです?」
「だってお兄さん、なんかこのゲーム、まともじゃない?」
やや既視感のある間があった。答えを求めて思考が彼方に旅立ちそうになるのを晴夜はどうにか引き止める。
「……、……ゲームとは……まともなものでは……?」
「こう、生きてる感じが足りない」
「生きてる感じ……? ゲームは生物ではないですよね……」
晴夜は周囲にありったけの疑問符を飛ばしながら、協力ゲームを進めていく。なにいってるんだろうこのひと、という顔であるのは間違いない。
一方でリュカは起伏の少ない表情のまま、ゲーム内であっさりと味方であるはずの晴夜を裏切った。アー、と哀れな声で晴夜のキャラクターがリスポーンする。
「やっぱりこう、上品すぎる」
「いや、ずっとなに言ってるのかわからない……怖……あといますごく無駄にハレルヤを裏切りましたね」
「生きてるってそういうことだから……。やるんだったらこれとかこれにしない?」
そう言ってリュカが取り出したのは少し古めかしく感じるソフトたちだった。
「お、リュカさんのおすすめゲームですか! どれどれ……」
晴夜は何本か挙げられたゲームのパッケージを眺めてみる。そのどれもが晴夜は知らないものだったが、ひとつだけわかることがあった。
「こ、これは……タイトルの時点であからさまにクソ!」
やったことがなくともわかる、クソゲーオブザイヤーに輝いていそうなタイトルがそこには並んでいた。そしてリュカは何食わぬ顔で頷いている。
「うん。史上屈指のクソゲーだよ。俺、こういうの好き」
「いやリュカさん普通のゲームでも普通に上手くできるじゃないですか! ゲームにどういう噛み応え期待してるんです?」
「わりといろいろ……難易度バグとか、どう考えても理不尽な設定とか、阿鼻叫喚を呼ぶ破綻したシナリオとか」
「わりと素直に嫌すぎる」
「よし、はじめよう」
ありありと嫌そうな顔をした晴夜をスルーして、リュカはクソゲーを開始させた。そこからの主に晴夜の阿鼻叫喚はゲーム実況もかくやというものである。対してリュカはクソゲーになった途端、瞳を輝かせていた。
悲鳴に次ぐ悲鳴、突っ込みに語彙と声が尽きてきたころ、晴夜の手からコントローラーがころりと転がって、布団にその顔を突っ伏した。大きな狼耳がぺそっとしている。
「……リュカさん、休憩しましょう」
「え? まだまだあるけど。お兄さんゲームする覚悟が足りな、」
「しましょう、休憩。リュカさん」
言葉を遮るように再度言われて、リュカも渋々口を閉じてコントローラーを置いた。
「……わかった。じゃあ休憩ね」
ふたりは一度部屋を出ることにする。見ると、すっかり窓の外は夜空に変わっていた。常になにか食べていたせいで空腹で時間を感じることがなかったらしい。軽く車内案内を見てから、晴夜は後方車両のほうへと歩き出した。
「ひとまず『思い出処』を目指すとしますか。残した『雨の星』でアクセサリーが作れるらしいですよ」
晴夜たちのクランのアイテムボックスには、辛うじて残ったおにぎり型と、大事にとっておいた犬型の、そして銃と土星の形の雨の星がある。
「アクセサリーかぁ。……首輪でいいのでは? なんかこう、犬だし」
「は? 犬? こんなクールでカッコ良すぎる犬がいるとお思いですか」
「悪かった、ごめんごめん」
やや低まった声で晴夜が言い返したのには、リュカも素直に謝った。いくら親しくとも限度というものは存在するものである。
のんびりと列車のなかを探検がてら見て回りながら、ふたりは最後尾をめざしていく。
しかしアクセサリーと言われても、すぐに欲しい装飾が思いつくわけではなかった。
「どんなアクセサリーを作るか、悩ましいですねえ」
「俺は文房具っぽいのがいいかなあ……。ところでお兄さん、部屋に帰ったらまたゲーム再開しよう」
「いや、帰ったらハレルヤは寝ます」
いつも通りの応酬を繰り返しながら『思い出処』に着いたふたりは、晴夜はそれぞれの雨の星をなんにでも付けられそうなネックレスに、リュカは雨の星をモチーフにしたミニチュア文具の根付にしたようだ。
部屋に帰ってから晴夜が果たして眠れたのかは、空のみぞ知る。
大成功
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朱赫七・カムイ
⛩神櫻
此処が紫陽花の平原…見事な場所だ
噫、無事に着いてよかった!
サヨとハイタッチすれば自然達成感も湧いてくる
これが、すてーじくりあ、と言うやつなのだろうか
お楽しみの晴空ライナー
サヨの好きな時間にしよう
選ばれたのは夜
星空をはしる汽車、とはなんともロマンチックだね
心地よさそうだ
個室でゆっくりとも思ったがこの景色を満喫しなければ勿体ない
列車の席で童のように楽しむサヨに心が和む
星空スイーツづくしだね、サヨ
逢魔が時の空色のドリンクを飲み
美味しいパフェに舌鼓
いいよ、サヨのタルトも分けておくれ
二度美味しいのは、嬉しいな
…パンケーキにもひかれたが、たまには気分を変えてみたんだ
思い出処は絶対に行くと決めていたんだ
私達で捕まえて、共に戦った戦友とも言うべき雨の星だ
素敵な装身具に加工してもらおう
私のはぁと型の雨の星は…サヨと同じ、ピアスにするよ
巫女の綺麗な耳を美しいはぁとで彩れたら嬉しいからね
完成したらつけてあげる
サヨから貰った桜のピアス
祈りの光が咲いたようだ
二度と外せない祝いを貰えたな
また私の宝物が増えたよ
誘名・櫻宵
🌸神櫻
紫陽花の平原に到着!頑張ったかいがあったわね、カムイ!無事に着いたと喜びハイタッチ!
そして呼び出すのは、晴空ライナー
勿論、乗るわよね!
選ぶのは夜にしましょう
星空を汽車で飛ぶ、なんて憧れていたのよね
さて、出発ー!
真っ直ぐ向かうのは列車の席
きゃっきゃしながら風景を楽しむわ!
星空を眺めながら、星空のドリンクを飲み、BIGなタルトを食べる…なんて贅沢なのかしら!
カムイのパフェも美味しそうだわ!
少し分けて頂戴な!これで、二度美味しいでしょう?
パンケーキじゃないのが意外だわ
存分に星空を巡る汽車の旅を満喫しお腹を満たしてから思い出処へ!
せっかくの雨の星だもの
桜の形の雨の星は…ピアスにしてもらうわ
ほら、私のかぁいい神様の片耳を彩るピアスに仕立ててもらうわ!
何時いかなる時も、あなたを守る桜であるように、ってね
巫女の祈りを込めてあげる!
これは、私に?
カムイがくれたのは、はぁとの雨の星のピアス
耳にこころのカタチがゆれるようで
耳のそばで嬉しい言葉を囁いてくれるよう
心に虹がかかったようでとっても嬉しいわ!
雨上がりの青空がまぶしく、一面に広がる紫陽花たちが歓迎するように雫をきらめかせている。
静かな神殿から一転、明るく開けた景色に誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)はその表情を咲き綻ばせた。紫陽花の平原――この季節にぴったりのその場所は、バグもなく、綺麗に四葩が咲き誇っている。
「無事に着いたわ……! 頑張ったかいがあったわね、カムイ!」
「噫、無事に着いてよかった!」
櫻宵が満面の笑みで掲げた片手に、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)も嬉しそうに笑ってまた手を打ち合わせた。ハイタッチの音が心地よく響けば、達成感も湧いてくる。
「これが、すてーじくりあ、と言うやつなのだろうか」
「きっとそうね。バグでそういう表示がなくなってたのかしら……一応まだクエスト自体は続いているものね」
だって、と櫻宵はアイテムから『晴空ライナー』の切符を取り出した。このクエスト一番のお楽しみ。
「まだこれに乗っていないもの!」
「ふふ、そうだね。サヨの好きな時間にしよう」
「それじゃあ、夜にしましょう。星空を汽車で飛ぶ、なんて憧れていたのよね」
指先で選ぶコマンドひとつで、空が青空から夜へ一息に染まり替わる。そして――〔 切符を使用しますか? 〕ぱっと目の前に浮かんだポップアップに、
「もちろん、乗るわよね!」
櫻宵は弾んだ声で〔 はい 〕を選んで頷いた。
夜空から駆けてきた汽車は、勢いよく星を辿って駆け上がる。
窓のすぐ外に広がる見事な星空に、まっすぐ列車のボックス席に座った櫻宵は歓声をあげた。
「綺麗な星空ね、カムイ!」
「噫、星空をはしる汽車、とはなんともロマンチックだね」
雲を抜けて、汽車は星空を泳ぐように駆けはじめる。静かにきらめく星空は心地よさそうで、ずっと見ていられるような気もした。個室でゆっくりするのもとは思ったが、この景色を満喫しなければ勿体ないと思い直して、カムイは微笑む。向かい側には、童のように桜色の瞳を輝かせて歓声をあげる櫻宵がいる。
「軽食も頼みましょう。私は星空のドリンクとたっぷり大きないちごのタルト! カムイはどうする?」
「私は晴空ドリンクの、逢魔が時の空色のものと……りんごのパフェにしよう」
目の前に表示された半透明の画面をじっと見てから、カムイは注文を決めてコマンドを押す。途端にボックス席の真ん中に机が現れると同時に、頼んだスイーツたちが並んだ。
「まるで夢のなかの魔法みたいね! 星空を眺めながら、星空のドリンクを飲み、BIGなタルトを食べる……なんて贅沢なのかしら!」
いただきます、とはしゃぎながらも丁寧に手を合わす仕草を挟んでから、櫻宵はドリンクとタルトを一口ずつ口に運ぶ。そのかんばせと桜がふわりと綻んだ。
その様子に、カムイもやわく頬を綻ばせる。大切な巫女が楽しそうにしているのは、見るだけで心が和むようだった。
「美味しいか訊かずともわかるよ。星空スイーツづくしだね、サヨ」
「ふふ、楽しみにしていたのだもの! うんと楽しまなきゃ」
星空を傍らにタルトを頬張りながら満面の笑みを浮かべる櫻宵に、カムイもそれはそうだと笑って、逢魔が時の空の色を映したドリンクを飲み、パフェを食べる。見た目よりも甘やかなドリンクに、爽やかで心地いい食感の林檎がよく合った。
「美味しい……下にいくほどクリームや蜜があって甘いけれど、林檎の爽やかさでいくらでも食べられそうだ」
「美味しそうだわ、少し分けて頂戴な!」
「いいよ、サヨのタルトも分けておくれ」
「もちろんそのつもりよ! これで、二度美味しいでしょう?」
櫻宵がタルトを差し出して、カムイもパフェを差し出す。そうして交換した一口は、どちらにとっても格別だ。互いに顔を緩ませて、おいしい、の声が重なった。
「ふふ、二度美味しいのは嬉しいな」
「そうね。でも、カムイがパンケーキじゃないのが意外だったわ」
「たまには気分を変えてみたんだ。……パンケーキにも惹かれたが」
「かぁいい神様ね、もうひとつ頼んだっていいのよ?」
楽しげに櫻宵が笑うと、またそんな誘惑を、とカムイが拗ねたように眉を下げる。それを甘い逢魔が時のドリンクで戻して、テーブルの上のスイーツはお喋りと共に減っていく。
櫻宵の飲んでいた星空のドリンクが空になって、代わりに窓の外の景色を汲むころには、ふたりのお腹は満ちていた。持ち上げたグラス越しに星空を眺めていた櫻宵は満足げに立ち上がる。
「それじゃあ、次に行きましょうか」
「そうだね。あそこは絶対に行くと決めていたんだ」
カムイも頷いて、迷わず車両の後方へ足を向ける。目指すのは最後尾にある『思い出処』だ。そこでは『雨の星』をアクセサリーにすることができるという。
「私たちでつかまえて、共に戦った戦友とも言うべき雨の星だ。素敵な装身具に加工してもらおう」
「そうね、せっかくの雨の星だもの。なににしようかしら……できあがったら、私のかぁいい神様にあげる」
「いいのかい? 私もサヨにあげようと思っていたんだ」
それじゃあ交換ね、と笑い交わしているあいだに、ふたりは思い出処に辿り着いた。一見よくあるお土産処に似ているが、見慣れない天球儀のようなものがある。窓の外の星空を吸い込んだようなそれに触れると、〔 雨の星をセットしてください 〕というポップアップが出た。どうやらこれでアクセサリーを精製するらしい。
「それじゃあ私から作るわね。……種類は片耳ピアスで、デザインはどれがいいかしら」
櫻宵は目の前に数多並んだデザインサンプルを真剣に見ていく。淡く光るちいさな桜はどんなデザインでも彼の耳元に映えそうだった。選んだのは、耳朶に留めた雨の星よりももっと小さな桜色の花弁が金の鎖でしゃらりと提がったピアス。
「それじゃあ私のはぁと型の雨の星も、サヨと同じ片耳ピアスにするよ」
続いたカムイも少しは慣れた様子でコマンドを選んでいく。櫻宵と同じくデザインのところで悩んで、淡く光るハートに赤い鎖で小さな桜の花が連なるものを選んだ。
「巫女の綺麗な耳を美しいはぁとで彩れたら嬉しいからね。……もうできたのか。サヨ、おいで、つけてあげる」
「いいの? ありがとう!」
カムイが手招くと、櫻宵が嬉しそうにすぐそばに寄る。その白く柔らかな耳朶に、『はぁと』を添わせた。
櫻宵は持っていた手鏡で耳元を確かめる。耳に光るハートと、赤色で繋がったゆれる小さな桜の花。まるで耳元にこころのカタチが揺れて、嬉しい言葉を囁いてくれているようだ。
綺麗ね、と櫻宵は今日一番の笑顔を見せた。
「ありがとうカムイ、心に虹がかかったようでとっても嬉しいわ!」
そして弾む心のまま、櫻宵もカムイの耳元に手を伸ばす。
「それじゃあ私も、巫女の祈りを込めてあげる! ――何時いかなるときも、あなたを守る桜であるように」
祈るように、言祝ぐようにカムイの耳元にも光る桜と花弁が連なるピアスが贈られた。
カムイもそれを確かめて、ふわりと嬉しそうに笑う。
「祈りの光が咲いたようだ。二度と外せない祝いを貰えたな。……また私の宝物が増えたよ」
ふたりの耳元に、新しい宝物が光る。その光を祝うように、窓の外の星々がまたたいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュイ・ロティエ
手元に残った小さな雨の星を大切に仕舞って
あのふたりも無事でよかった!
わぁ~、空駆ける汽車だって!
竜神さまは空を飛んだことある?
ボクはないけど…えっ、あるの!
念話でおはなししつつ、さっそく切符を使って乗り込んでみよう
ボクは青空が見てみたいな~
列車が動き出せば
移りゆく景色を思わず追いかけてしまいそう
ふと窓際の席に座っている子に気付いて声を掛けてみるよ
ええと…サクラちゃん?だよね
キミもこの列車に乗ってたんだ
ご一緒してもいい?って聞いて相席させてもらうよ
一緒に車窓からの景色を眺めつつ
ボクの住んでた森はどの辺りかな~ってつい探してみたり
サクラちゃんも普段はこの世界でお仕事してるのかな?
ボクはダンジョンで呼ばれた時にしか帰らないんだけどね
他愛もないお喋りをしつつ
ふとコマンドの食事メニューが気になって開いてみる
あ、ううん
なにか食べたいってわけじゃないんだ
ボクはまだ『食べる』っていうのをしたことがないからさ
何を最初に食べるかいろいろとリサーチ中なんだよね!
ちなみに、サクラちゃんは好きな食べ物ってあるの?
「わぁ~、空駆ける汽車だって!」
空から駆け下りてきた列車に、リュイ・ロティエ(翡翠の守護者・f42367)はきらきらと目を輝かせた。
うっかり大きなひとりごとになってしまったけれど、周りの人々の歓声で目立つことはなかった。
他の猟兵やプレイヤーたちが楽しそうに列車に乗り込んでいく。そのなかにルーナとステラの姿も見つけて、リュイは大きく手を振った。二人からも満面の笑みで手が振り返される。
(あのふたりも無事でよかった! ね、竜神さま)
(ああ、そうじゃな)
念話に切り替えて話しかけると、朗らかな声が|竜神さま《ウィリディス》からも返った。リュイは二人と見つけた、小さくなった翠葉の雨の星を大切に仕舞う。新しいお守りになってくれそうな、そんな気がした。
(竜神さまは空を飛んだことある? ボクはないけど……)
(あるな)
(えっ、あるの! じゃあボクもいつか飛べるのかなぁ)
そんな話をしていると、目の前の汽車が出発を告げるように汽笛を鳴らした。はたとして、リュイも切符を取り出す。いまは気持ちの良い雨上がりだ。
(行こう、竜神さま! ボクはまだ飛べないけど、きっと綺麗な青空が見れるよ)
長く、高らかに汽笛を鳴らして、汽車が動き出す。はじめゆっくりだったそれも、すぐに風に乗るように軽やかに、青空を駆け昇りはじめた。ぐんぐんと上がり、雲を抜けて――どこまでも広い青空を、汽車は走っていく。
横一列に備え付けられた車両の席で窓を覗いていたリュイは、移りゆく景色に合わせて思わず駆け出してしまいそうだった。それを察したのか、竜神さまが車両を見て回ることを提案してくれたので、リュイは車両のなかを歩き出した。
列車が進むほうへ、窓の外の景色を追いかけていく。広い車両はいろいろな席が設けてあるようで、そこかしこで楽しそうな声がしていたり、静かに景色を楽しんでいる気配があったりする。
いくつかの車両を抜けると、そこははじめに乗り込んだ車両と同じく、横一列に席が備えてあった。そのぶん見渡しやすい車内に人影は少なく、ふとそのなかのひとりに目が留まる。
小さな相棒と一緒になって機嫌よさそうに窓を覗いている少女は、このクエストに案内した猟兵だ。たしか名前は、
「ええと……サクラちゃん? だよね」
リュイが声をかけると、さくら色の少女はきょとんとした顔でリュイを見上げ、それからぱっと満面の笑みを浮かべた。
「えっと……リュイくんや、こんにちは! クエストお疲れさまなんよ」
「うん、ありがとう。キミもこの列車に乗ってたんだ。……ご一緒してもいい?」
問えば、また嬉しそうな笑顔でサクラは頷いた。隣にいた仔竜を膝に乗せて、隣の席をぽすんと示す。
「ええよ、ここから先いろんなフィールド見えるから、楽しいんよ」
「そうなんだ?」
リュイも隣に座りながら、窓から景色を眺めてみる。しばらくそうしていると、ふと汽車の下にあった雲が晴れて、空の下の景色が見えた。さまざまなフィールドを一望できそうなその景色は、冒険者として手に入れた地図そのままの地形をしている。
「わぁ……! すごいね、ボクの住んでた森も見えるかな」
「森?」
「うん、ボクは『翡翠の森』ってダンジョンに住んでたんだ」
「あ、クエスト出したことあるよ。行ったことはないけど……」
そしたらあのへんかな、とサクラが窓を覗いて指差す。その先によくよく目を凝らすと、確かに鮮やかな色の森があるように見えた。こうして見ればずっと遠い。あそこから来たのだと思うと、不思議としみじみとした気持ちにもなる。
「サクラちゃんも普段はこの世界でお仕事してるのかな?」
「うん、ギルドの受付におるよ。私は戦えんけど、いってらっしゃいとおかえり言うんが好きで……リュイくんは?」
「ボクはダンジョンで呼ばれたときにしか帰らないんだ」
「いっぱい行けるとこあるもんねえ」
青空を傍らに、他愛ない話に花が咲く。そのうちにリュイはふと表示されたままだったコマンドの食事メニューが気になって開いてみた。すると思ったよりも多くのメニューが広がって、思わず小さな声が出る。
「おなかすいた?」
「あ、ううん。なにか食べたいってわけじゃないんだ。ボクはまた『食べる』っていうのをしたことがないからさ」
したことがない、と言ったリュイにサクラはまた少し不思議そうに瞬いて、それからすぐにその理由に思い至ったらしい。そうなんや、とゆるく笑う。
「そしたら、はじめて食べるもんに迷うなあ」
「そうなんだ。だからなにを最初に食べるか、いろいろとリサーチ中なんだよね! ……ちなみに、サクラちゃんは好きな食べ物ってあるの?」
「りんご!」
何気なくリュイが問うと、気持ちいいほど即答が満面の笑みで返された。膝の上の仔竜も同意するように鳴いている。
「私は生まれたとこから出てはじめて食べたんがりんごやったんよ。甘くて、しゃくしゃくしてて、大好き! リュイくんも好きな食べもん見つかるとええね」
サクラは無邪気に笑って、そのりんごのパフェも美味しかったん、とメニューを指差す。それにリュイも笑った。
まだ初めて食べるものは決まっていないけれど、きっとはじめて食べたものを好きになれるような気がした。
大成功
🔵🔵🔵
青和・イチ
あ、ここが本来のルートの場所なんだね
紫陽花…空の上から見たら、また違う綺麗さかな(切符を取り出し
普段から、夜の列車には乗ってるから…(※現在、旅団の列車住み)
今日はこのまま、青空の旅にしよう
とりあえず…お腹空いた、何か食べよう
くろ丸も、走り回ったから腹ぺこでしょ
ん、この青い星モチーフのスイーツ(各種)と、晴空ドリンクにしよう
あとりんごのパフェも
くろ丸にも食べられそうな物、あるかな
ルーナさん、ステラさんがいたら話し掛けよう
お疲れ様、今日もありがとう、楽しかったね
二人はいつも頼りになるし、面白…ええと、楽しいから…また遊んで
…で、最近はどう?前よりずっと、仲良くなった?
美味しいおやつのお伴に、色々聞いてみたり
小腹を満たしたら、二人にお礼を言って別れ
…それじゃくろ丸、雨の星をお土産にしにいこうか
くろ丸のは、星を首輪に付けられるように加工して…
僕のは、キーホルダーにして|武器《望遠鏡》に付けたいな
一緒に戦った、大事な仲間だから
これからも一緒
…うん、すごく綺麗
青空と、色とりどりの紫陽花が光っているように見えた。
その眩しさに眼鏡の奥の瞳を僅かに眇めてから、青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は汽車が駆け下りてきたばかりの空を見上げる。
「ここが本来のルートの場所なんだね」
ルーナとステラの歓声を耳に留めて、少し納得した。雨と空に関連したクエストになっているのだろう。目の前の列車はこのあと、空へ駆けていくのだと言う。
「紫陽花……空の上から見たらまた違う綺麗さかな」
アイテムから切符を取り出すと、使用の有無を問うポップアップに頷きながら〔 はい 〕を選ぶ。時間選択のコマンドで指は少し止まったけれど、青空と列車を見比べて、そのまま昼の青空を選んだ。
列車を住処にしている現在、普段から夜の列車には馴染みがある。
行こうか、とくろ丸に声をかけると、わん、と元気な応答が返った。
列車に乗り込んで、イチは近くで開いていたボックス席の窓側に腰を下ろす。隣に座ったくろ丸が、すかさずぽすんと膝に顎を置いて落ち着いた。その頭を片手で撫でながら、もう片方の手で食事メニューのコマンドを開く。
「とりあえず……お腹空いたからなにか食べよう。くろ丸も、走り回ったから腹ぺこでしょ」
「わふ」
「くろ丸にも食べられそうなもの、あるかな。……あ、ペット用メニューある。やったねくろ丸」
「わふ!」
ペット用メニューも、人間用の軽食と見た目は変わらないようになっているらしかった。器はワンプレートのようにはなるが、どれもかわいい。
「じゃあくろ丸も僕と同じ……青い星モチーフのスイーツと、りんごのパフェの代わりにお肉パフェにしようか。あと僕は晴空ドリンクも」
イチは迷わず星モチーフのスイーツ各種とりんごパフェ、星空を模したドリンクを選び、くろ丸のぶんも選んでいく。すぐにテーブル共々現れた注文は、すっかり机上を埋め尽くしていた。お腹が空いているといつもこうしてしまう気がする。だいたい全部食べられるので問題はないのだけれど。
「イチ、あなた意外と大食漢だったりする……?」
呆気に取られたような声がして顔を上げると、偶然通り掛かったらしいルーナとステラが目を丸くしてイチのテーブルの上を見ていた。
いくつか瞬いて二人に視線を返したイチは、口に入れていたゼリーを飲み込んでから軽く会釈する。
「ルーナさん、ステラさん。お疲れ様。今日もありがとう、楽しかったね」
「はい、それはこちらこそ……! ありがとうございました、イチさん」
「僕は難しいことはしてないよ。二人はいつも頼りになるし、面白……ええと、楽しいから。また遊んで」
「ちょっと、いま面白いって言ったわね!? ありがとう褒め言葉よ!」
「変人代表みたいなルーナはちょっと黙っててください巻き込まないでください」
「……一緒に食べてく? いっぱいあるし」
相変わらず騒がしい二人に、空いている向かいの席を示す。ルーナとステラは顔を見合わせて、嬉しそうに頷いた。
青空が窓の外を流れていく。机の上の星空も、他愛ない話をしながらみんなで食べていけばすぐに消えていった。
「……で、最近はどう? 前よりずっと、仲良くなった?」
食べ終わる前にふとイチが訊ねると、ルーナがわかりやすくむせて、ステラが満面の笑みを浮かべた。
「それはもうお陰さまで! ゴリ押しにゴリ押しを重ねてどうにかこうにか! イチさんたちの助けがなかったらこのニブチン絶対気づいていないので……」
「だろうね」
「言いたい放題ねもう!!」
また賑やかにするうちに、すっかりテーブルの上は綺麗になって、イチとくろ丸の小腹も膨れる。しばらくのんびりふたりと空を見てから、イチは席を立ちあがった。
「それじゃあ、僕は思い出処に行ってくる。……ふたりとも、ありがとう」
「あら、アタシたちはさっき行ったのよ。イチも素敵なものができるといいわ。またね!」
笑顔で二人が見送ってくれる。その手には月と星の指輪が見えていた。
くろ丸と腹ごなしがてらゆっくり車内を見て回りながら、イチは最後尾を目指す。
辿り着いた思い出処には、不思議な天球儀のようなものがあった。どうやらそこに雨の星をセットして加工するらしい。
ふたりぶんの雨の星をセットしてから、表示された多岐に渡る種類やデザインを選んでいく。
「くろ丸のは、雨の星を首輪に付けられるようにできるかな。……あ、既存のアイテムに付与する……これかな」
ちょっと貸してね、と言ってイチはくろ丸がいつもつけている首輪も一緒にセットする。すると首輪に雨の星が埋め込めるようだった。せっかくなので小さな星の装飾を追加しておく。
「僕のは……キーホルダーにしようか。そうすれば|武器《望遠鏡》にも付けられるし」
選んだのは、ごくシンプルなキーホルダーのデザインだった。決定のコマンドを押せば光とともに、ふたつのアイテムが出来上がる。真ん中に雨の星が光るくろ丸の首輪と、銀色の鎖の先で淡く青く光る小さな雨の星が揺れるキーホルダー。
「……うん、すごく綺麗」
くろ丸に首輪をつけてやり、キーホルダーを望遠鏡につけると、小さな青い光をともす『雨の星』がとても綺麗に見えた。
「一緒に戦った、大事な仲間だから。……これからも、一緒」
晴空をゆく汽車が空を駆け降りながら、到着を告げて大きく汽笛を鳴らした。
―― 〔 QUEST CLEAR 〕 ――
大成功
🔵🔵🔵