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ラン&ガン

#ゴッドゲームオンライン #ノベル

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ミノア・ラビリンスドラゴン




●ホワイトアウト寸前まで
 雄叫びが上がる。血反吐が舞う。汗が飛び、飛沫が弾け、鉄がぶつかり、拳が肉を抉り、風が切られて熱のこもった音がする。
 くらくらするほどの金儲けの匂いがそこにある。
 眩暈がするほどの名を馳せるチケットがそこにある。
 これは祭りだ。――血の代わりに電気信号を通わせた。
 ここは何者かが作り出した「究極のオンラインゲーム」――ゴッドゲームオンラインの中のとある都市、『ファイアリング・ライン』。
 最前線という意味が付けられた由来は、街の中心にある大型コロッセオにある。
 この町の特徴でもあるそこは、今日も多くのプレイヤーたちが力や技を競い合う、大人気のPVPコンテンツである。
 『ここで活躍すれば、多額の賞金を得て重要NPCや有力な大規模クランから注目される』。賞金以外の真偽のほどは不明だが、果たしてここじゃそいつが売り文句。
 老若男女を問わず、この場所に来るようなヤツはそれを信じてるというワケで、今日も多くのプレイヤーたちがコロッセオにて力や技を競い合っていた。
 文字通り、ホワイトアウト寸前まで。

●ラン&ガン
「それで? 最後のお相手はアンタかい、腕に覚えのありそうなお嬢さん」
「そういうワケですわ! あなたも随分とやりそうな雰囲気でいらっしゃいますわね!」
「お褒め頂いて恐縮だ。それじゃやるかい? お互いここにおしゃべりしに来たわけじゃないだろ」
「ええ、そうですわね! それでは早速――いざ尋常に勝負! 大激戦を制して賞金ゲット! ですわ~!!」
 歓声に包まれ、コロシアムの決勝戦が始まる。
 片や二丁のリボルバー式拳銃を装備したカウボーイ風の|月穹士《アルテミスガンナー》。
 片や高速近接戦闘用のドレスと鎧を身に纏った|聖剣士《グラファイトフェンサー》、ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)。
 二人の戦いは、|月穹士《アルテミスガンナー》の発砲がそのまま試合開始の号砲となって始まった。
 ミノアは自らを穿たんとして放たれた銃弾に対し、構えた二つのツルギを以て挑む。
 獲物の名は、ドラゴンの意匠が施された双剣【双龍剣】。二刀流の|聖剣士《グラファイトフェンサー》モードとして戦う際のミノアの恃みである。
 まずは相手の出方を見るため、銃弾に対して速度を活かして走ることで躱していくミノア。
「そんなの当たりませんわ!」
「だろうな、それじゃこうだ!」
 対する|月穹士《アルテミスガンナー》も初弾を躱されたことは想定の範囲内である様子。
 慣れた手付きで二丁拳銃を操ると、敵はミノアに対して連続射撃を行う。発砲音はひとつ、ふたつ。
 だが、ミノアの並外れた感覚が告げる――恐らく今の発砲はそれだけではない、と。
 ならばとミノアはダッシュを即座に止め、身を捻りつつ空中へ跳躍。|聖剣士《グラファイトフェンサー》に近付く形で空に舞った。
 空に跳んだ彼女が先ほどまでいた場所に、彼女の進路に、銃弾が刺さる。それも複数。敵はファニングショットの使い手だ。
 コロシアムの頑丈な床や壁に派手に穴が開いているところから見ると、いずれも当たればただではすまぬ威力。
 しかし、ミノアは音の反響とコロシアムに開いた穴の数から敵の残り弾数を計算していた。すでに12発を撃ち尽くし、相手のリボルバーは弾切れのはず――。
「威力重視の合体武器ですわね、でも! チャンスですわ~!」
「半分当たりで半分ハズレだな! 威力だけじゃねえぜ、俺の銃は!」
 空中から弾切れを起こしたはずの|月穹士《アルテミスガンナー》に襲い掛かろうとしたミノアだったが、しかして彼女の読みは外れることとなる。
 ここは「究極のオンラインゲーム」――ゴッドゲームオンライン。現実とは異なり、リボルバーが6発だけとは限らない世界なのだ。ここでは見た目よりもデータが雄弁に語る。
「――弾数++のパッシブ持ちなんだよ!」
「――お~ほっほっほ! それは面白いですわね! でも、それだけではっ!!」
 同時である。 
 まるで同時であった――まだまだ残弾に余裕のありそうな相手が、空中のミノアに向かって更なる連射を敢行するのと、ミノアが不敵に笑ったのは。
「目にも止まらぬ神速斬撃! スバッといきますわよー!!」
「なにィ!?」
 |【迅龍閃牙】《クイック・ドラゴンファング》。双龍剣による素早い一撃を放つ、ミノアの|幻想の一《ユーベルコード》。
 スピード系のバフが何十にも重ね掛けされている彼女の振るう剣捌きの前では、敵の乱射など意味を成さない。
 ミノアが空中でひとつ腕を振るえば、その延長にある刃が鉛玉を真っ向から裂いてみせる。複数飛来する銃弾を切り捨て、薙ぎ、斬って落とし、その姿はまさに化境そのもの。
 鉄火と刃とを小気味良いビートで交わらせ、殺気と熱気の激しい掛け合いの中で、ミノアは空から地に降り立つ。|月穹士《アルテミスガンナー》への接近を果たしてみせる――!
「まだだ――!」
「往生際が悪いのはいけませんわねッ!」
 ひとつ瞬きをすれば【双龍剣】が首元に達することを悟りながら、それでも諦めない|月穹士《アルテミスガンナー》は、悪あがきとして腰元から手投げ弾――グレネードのピンを抜いた。
 倒されるならばいっそ諸共、という覚悟で取り出されたのであろう手投げ弾を、ミノアは一瞥。
 敵の腰近くにあるそれは双剣の間合いではない。双剣を振るうにはわずかに高さが足りないとすぐさま判断し、彼女は鋭いステップからの蹴り上げを敢行。
 |月穹士《アルテミスガンナー》の手ごと手投げ弾を蹴り上げてみせたミノアは、そのまま残った軸足で大きく踏み込み、二本の刃で爆発寸前の手投げ弾をみじん切りにして見せた。
 返す刀で敵の首元に刃をぴたりと寄せ、ミノアは笑う。優勝は、彼女の手の中に。
「……降参だ」
「ええ、それがよろしいですわね! 私の優勝ですわ~!」
「……なんで生かした?」
「あら! 将来のお客さんをわざわざPKする理由なんてありませんわ! 迷宮城は皆様方の挑戦をお待ちしておりますわ~!!! もちろん、あなたもですわよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年05月28日


挿絵イラスト