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獣人世界大戦⑯〜フィーニス・ギガンティック

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #ゾルダートグラード #幼女総統『ギガンティック』

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#幼女総統『ギガンティック』


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「どうして吾輩が――」
 ――何故、何故、何故、何故、何故。
 幾ら唱えても答えはみつからない。
 つまり唱えるだけ無駄なのだ――そう理解っているのに、ウラル山脈の大地を踏みしだきながらギガンティックは走る。
 |やりなおし《エンドテイカー》の力を持つ魔女ゆえの驕りがあったのだろうか。
 それとも、そもそも六番目の猟兵は触れてはならない禁忌であったのだろうか。
「こんなはずではなかった、こんなはずではなかったのだ」
 ――何故、何故、何故、何故、何故。
 見目通りの幼さで、ギガンティックは東へと逃げる。

●|フィーニス・ギガンティック《終焉のギガンティック》
 幼女総統とも呼ばれるギガンティックは、ゾルダートグラードの総統だ。
 同時に未成熟ながらエンドテイカーの魔女でもあった。
 “エンドテイカー”とは、エンドブレイカー世界を知る者なら聞いたことのある響きだろうが、簡単にいうと『やりなおし』の能力を意味する。
 時の流れは不可逆であるもの。だのにエンドテイカーの力を有する者は、時間を巻き戻す。
 己が敗北しそうになれば、敗北のきっかけとなった時点まで時を巻き戻せば良い。
 そうして己にとって不利な|きっかけ《事象》を取り除いてしまえば、常勝であれる。望むように生きるのも簡単だ。世界征服の大望とて、叶えられてしまう。
 斯くてギガンティックは猟兵たちの前に立ち塞がり――そして敗北を喫した。

「エンドテイカーの力が及ぶのが、最大60秒だったのも敗因の一つだとは思う」
 不利を悟ったギガンティックはウラル山脈を越えたシベリア内陸部を目指して逃走を続けている。
 彼女の手勢に「はじまりの猟兵」を狙うだけの余力は既に無い。
 放置したとしても、獣人世界大戦に影響を及ぼすことはないだろう。
 それでも彼女は、エンドテイカーの魔女なのだ。
「今後、60秒を超えて力を発現できるようにならないとも限らない。だからここで確実に討っておくべきだ」
 強く言い切るエルシェ・ノン(青嵐の星霊術士・f38907)の表情は、裏腹に少し苦い。
 生まれ育った世界に縁深い|相手《ギガンティック》だ。対話を試みたい気持ちが無いといえば、嘘になる。
 だが個人の感傷で判断を誤るわけにもいかない。

 ギガンティックの厄介さは、エンドエイカーの力だけではない。
 数百メートルにも及ぶ巨躯もまた十分な脅威だ。
 現にギガンティックは、岳も河川も市街地もお構いなしに、地形という地形を地形を踏み壊しながら進んでいる。
「とにかく逃げることに必死なんだと思うよ」
 春色の眸を翳らせたエルシェは、憐れだね、と小さく呟く。
 しかし憐憫もそこまでだった。
「ギガンティックの巨大な歩幅に対応しつつ、できれば周辺地域の破壊も極力抑えられるよう彼女を|止《・》めて欲しい」
 逃走を優先させるギガンティックが猟兵に対し先制攻撃を行うことはあるまい。さりとて、彼女の足元が危険地帯なのは変わりなく。
 不用意に接近すれば、彼女の歩幅に対応する以前の結末を迎えるのは必定。

「でも、みんななら。幾らでもやりようはあるだろう?」
 終いの終い。
 ようやくいつもの軽妙さを取り戻した男は、いつもの顔で猟兵たちを荒ぶる大地へ送り出す。


七凪臣
 お世話になります、七凪です。
 見逃したい気もしました。が、見逃したくない気持ちが勝ちました。
 ぺんぺん草の一本も残してなるものか、の心意気。

●プレイング受付期間
 受付開始はOP公開と同時。
 受付締切に関してはタグや個別ページでご案内します。

●シナリオ傾向
 作戦メインですが心情も添えて頂けると美味美味です。

●プレイングボーナス
 ギガンティックの歩幅に対処する/周辺地形の破壊を阻止する。

●採用人数
 👑達成最優先。
 採用は最小限の予定でいます。

●同行人数について
 基本、ソロ推奨。

●他
 今回はオーバーロード非推奨。
 『どの技能・UCを使うか』より『こういう事がしたいからこの技能・UCを使う』という方が刺さりやすいです。
 なお対七凪の場合、技能の記載は省略可(行動に適した技能の有無はステシから判断します)。
 文字数・採用スタンス等は個別ページを参照下さい。

 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 ボス戦 『幼女総統「ギガンティック」』

POW   :    幼女キーック!!!!
単純で重い【幼女キック】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    超超巨大ビィーム!!!!
【超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』】から、レベル×5mの直線上に【超超巨大ビーム】を放出する。【魔力】を消費し続ければ、放出を持続可能。
WIZ   :    斯様な結末、吾輩は断じて認めない!!!!
全身に【終焉を巻き戻す「エンドテイカーの魔力」】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【巻き戻されてゆく時間の流れ】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。

イラスト:すずま

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クロウ・デイクロス
相変わらずデカいロリっ子だぜ。向かって来た前と違い、追いつくのは骨だな。

【D】に搭乗して、地上から追いかけよう。キャバリアなら相対的にまだ小回りは効くし、動き回って相手の注意を惹いても、生身じゃないから建物の瓦礫にも対処しやすい筈。

近づいたら…さて、どうしようかね?
前回と同じように、ガキンチョ相手にあんまり惨い事はしたくねぇ。英国の不審者爺さんに待ち伏せされてるってなら尚更だ。
加えて、拳撃も警戒されてるだろうし…となりゃ、やるべき事は一つか。

ゲーハハハァッ、子供のお仕置きって言ったらコレだよなァッ!(ゲス顔)
さぁ、そろそろお家に帰る時間だぜ、お嬢ちゃん!
(UC起動。お尻へ蹴撃を叩き込む)



 |機械仕掛けの神を冠する機体《スーパーロボット》――“Deus Māchinā【D】”に搭乗するメリットは複数ある。
 一つ目は移動速度が増すこと。二つ目は生身であるより衝撃に強くなれること。
「相変わらずデカいロリっ子だぜ」
 飛来してきた破片と言うには大きすぎる巨岩を鋼の腕で弾き、クロウ・デイクロス(悲劇を許せぬデモニスタ・f38933)は少年のように語勢を躍らせる。
 逃げるギガンティックに追いついたのはいい。が、彼女の巨大さはやはり脅威だ。踵が跳ね上げただけの礫でも、肝は冷える。
 しかしその巨大さゆえに、【D】を以てしても“小回りが利く”のはありがたい。
(さあて、どうしようかね)
 越えるべき山の峰ばかりを気にし、随分とおろそかになっているギガンティックの足元で、クロウは右に左にと【D】を繰る。
 一度目の対峙に続き、幼い見目に引き摺られ、惨い仕打ちは気が引けた。今のポジションから軽々に振り仰がないのも、大人として当然の配慮だ。決して、性癖が歪むのをおそれてのことではない。多分。
(このままだと|英国の不審者爺さん《プロフェッサー・モリアーティ》まっしぐらなわけだろ? さすがにそれは、なあ)
 善からぬ絵を想像し、クロウは肩を竦める。その間にも【D】は駆け、跳ね、躱し、進む。
「ここは真っ当な大人の出番ってヤツだろ」
 表情を見ずとも片頬だけが上がっているのが分かる口調で、クロウは呟く。途端、【D】が急制動をかけた。
 ――そう。ここは|大人《・・》の出番。
 そして大人が我が儘と癇癪を併発させた子供にすることといえば――。
「なにも殴ってばかりが能じゃないってな。とっておきの一撃、見せてやらぁッ!」
 魔術式で重力を操作し、クロウは【D】ともども瞬く間に中空へ飛び上がる。そしておもむろに鋼の脚を薙いだ。
「ゲーハハハァッ、子供のお仕置きって言ったらコレだよなァッ!」
 時に女性とも見間違われるクロウの端正な顔立ちが、ゲスに歪む。きっと、軽薄を演じているのだ。本心からの顔ではない。たぶん、たぶん、たぶん、たぶん。
「さぁ、そろそろお家に帰る時間だぜ、お嬢ちゃん!」

 クロウが【D】に搭乗するのには複数の利点がある。
 今回の戦場における三つめは、生身でいるより簡単に高出力を発揮できること。
「吾輩は、吾輩は、吾輩は――」
 |臀部をべしぃっとやられた《お仕置きされた》ギガンティックが涙声になっていたかは定かでないが、とにもかくにも掌でいかなかったのはクロウの良心だと解釈したい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
アドリブ◎

…此処で逃せば理不尽に世界と時間をやり直される可能性があるんだね
悪いが…世界の明日を守る為、逃す訳にはいかない
鎧を『白夜・竜騎士形態』へと変形
私が見えるだろう、魔女よ!
存在を示すように空中戦へ
回避しながら『飛龍槍』の光の弾丸を連射しよう
狙いは足止めと
最低でも市街地から足を逸らさせる事
そして完全に止める為には…!
この地を壊させない
誰も傷つけさせない!
覚悟と共に空中で盾から『閃壁』を展開し【希望の福音】を覆わせ受け止める!
そして閃壁に雷属性を張り巡らせ
一瞬でも麻痺を狙う
隙が生じられたなら
剣に光焔を喚ぶ。青星に負けないくらいもっと大きく強く!
巨大な敵には巨大な剣、だ
此処で終焉りにさせる…!



 清廉な白に輝く鎧の背に翼を得たアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は、空に静かに佇む。
 数百メートル下の地上には、厳冬にも負けぬ森が広がっている。
 そうなるようアレクシスが仕向けた。
 まとわりつく小さき人と、その人が絶え間なく撃ち出す光弾は、ギガンティックとしても煩わしかったのだろう。
 ウラル山脈を越えることを最優先とする彼女は、足を止めての対処ではなく、手っ取り早い回避を択んだ。
 結果、ひとつの市街地がギガンティックの進路を外れたのを、猟兵たちは知っている。
「……此処で逃せば、理不尽に世界と時間をやり直される可能性があるんだね」
 上がった呼吸を整えるよう、アレクシスは呟く。
 空の自由を約束されていようと、直走るギガンティックの周囲は危険が多い。跳ね上げる礫ひとつが、人間にとっては致命傷たりえる凶器。闇雲に振られる両手が生み出す気流も、飛行の妨げだった。
 それら全てをいなし、街の破壊を阻止したのだ。神経はとっくにすり減っている。
 しかしアレクシスにとっての本番はここから。
「悪いが……世界の明日を守る為、逃す訳にはいかない」
 大地を鳴動させて迫るギガンティックを真正面に、アレクシスはつと片手を前へ押し出す。
「この地を壊させない。誰も傷つけさせない」
 開いた掌が、受け止めるプレッシャーにじりじりと痺れる。少しでも気を緩めれば、姿勢制御もままならなくなるだろう。
 それでもアレクシスは僅かも怯まない。
「――蒼天!」
 一声の元、燐光纏う白銀の大盾を礎に光の壁――閃壁を展開する。
「!?」
 突如として眼前に広がったそれに、虚を突かれたギガンティックが驚嘆を発す。が、それでもギガンティックは止まらない。
 強行突破を試みられるのは、質量差が明らかゆえ。事実、閃壁だけなら打ち破れたはずだ。そしてそのことをアレクシスも理解している。
 なれどいついかなる時も、アレクシスはひとりではない。
 チチチ、と。鳥の囀りめく光が、アレクシスの盾を持たぬ方の手で瞬く。
 ただの反射かもしれない。なれどそこで輝く指輪にアレクシスは、片割れ星の|祈りの聲《希望の福音》を聞く。
 ――お前の理想と願いが、現実になるように。
(ああ、現実にしてみせる)
「なっ!?」
 ギガンティックは閃壁の後方に、夜明け色のオーロラにも似た光が広がるのを見た。直後、押し破ろうとした光に打たれて全身を痺れさせる。

 巨大は敵には巨大な剣を。
(大きく、大きく。青星に負けないくらいもっと大きく強く!)
 ただ受け止めるだけなら骨という骨が粉微塵にされたろう突進を、圧倒的防御力と回復力で凌ぎ切ったアレクシスは、騎士剣にまとわせた光焔で巨大な刃を形作る。
「此処で終焉りにさせる……!」
 斯くてアレクシスは、空をも斬り裂く剣をギガンティックへ振り下ろした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルシエラ・アクアリンド
失敗や悩みを超えずの成長は多分難しい
そう思っていても『出来る事なら』と思った事は今迄も沢山ありこの先もあると思う
でもそうして色々悩むのが私だと思うから
厄介かも知れないけどそれで良いとも

必ず、止めなければね

逃走速度の阻害の為
光弾での攻防強化の為魔力で底上げしたUC使用

自身も魔力を纏わせた弓でUC光華の雨を使用し
精神攻撃での行動阻害と光矢の雨での足止め効果を狙い多段攻撃を

足元中心に狙い重心を崩す心持ちで行く
その為、状況を把握する為に頭上に位置取るも状況により回避、移動する

同時に被害を出さない為最低市街地を避ける軌道を進む様に誘導
砂埃の発生や光弾での目くらまし等臨機応変に死角を作りながら的確に行動を



 さしあたっての進路上にあった市街地からは、別の猟兵が遠ざけてくれた。
 その状況を確かめるべく高台に居たルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は、息を切らしてギガンティックの元へと急ぐ。
 空をゆける翼を備えれば、幾らか楽だったろうか。
(あの子だったら、きっとあっという間に飛んだかな)
 万一を考え、|高台での監視《留守番》を任せた仔竜の桃華獣を思い、ルシエラは表情を緩める。
(ないものねだりをしても、意味はないしね)
 失敗や悩みは成長の糧だ。それらなくして成長は難しい。
 とは言え、『出来る事なら』と望むことの多さをルシエラは今まさに実感していた。
 叶わぬ望みに意味はない。でも、これから先も幾度も、『出来る事なら』と望むだろう――望んでしまうだろうと、ルシエラは己が性を自覚する。
 もどかしさに懊悩する日もあるに違いない。厄介だと思う。しかしそれはおそらく、ルシエラだけではなく“人”の性分。
 叶わなさを抱いて、人は足掻く。足掻くことが悩みとなり、失敗を受け入れるのに似た成長をもたらす。
(望まない結果を全部巻き戻していたら、いつまでたっても子供のまま)
 転がり落ちるように走り続けて、肺腑は血を吹き出す寸前。
 けれど、ようやく視界に収めきれなくなった幼い姿に、ルシエラは声をかすれさせながらも笑った。
「思う侭に」
 途端、強力な結界がルシエラを包む。
 対魔力においては比類なき防御力を発揮する結界だが、物理的にルシエラを守るものではない。
(これでいい。これで十分)
 魔力を防ぐ。即ち、ギガンティックの超超巨大ビームによる反撃は、ルシエラにとって無意味なもの。
 ギガンティックの走りによって起きる大地の鳴動には、環境への耐性で凌ぐ。割れた大地が飛び散らせる巨岩には、オーラの護りに賭けた。
 そしてギガンティックの反応を待たず、ルシエラは対魔力結界と共に解き放った四大元素を導とし、二つ目のUCを発動する。
「行動すべきは貴方ではない」
 すっかり使い馴染んだ連撃に、唱えはするりと喉から溢れた。弓取りの構えも、息をするより容易い。無論、弓を媒介に無数の光矢を放つまでの流れにも淀みは皆無。
「っ、いた、いたい、痛いい……っ!」
 狙いは全て足元へ。もうあまり遠くへはゆけないように。そして数多の光矢には、逃げ果せる為の思考力を奪う効果もある。
 ギガンティックの激しい地団太に、さすがに姿勢を崩したルシエラは、このまま大地に飲み込まれては堪らないと、ひとまずの転進をはかり――ふと幼い|総統《魔女》へ言葉を残す。
「あなたもやり直すのではなくて、受け入れていたら、もっと強くなれたかもしれないよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
これ以上、自然を乱されては困ります
故に、此処で終いにしましょう

お嬢さん、鬼事は終いよ
行く手を阻むよう結界を展開
また、地形の変異を防ぐため周囲の大地にも結界を
足元が危険ならば空中戦と参りましょう
その身の大きさ故に威力は高いでしょうが
俊敏さは如何が?
視界を死角を飛び、駆けて
麻痺の呪詛込めた刃で攻撃を

もはや自然災害と同等ね…
敵の攻撃は躱せなければ、受流し被害を最小限に
歩みを進め、地を乱す蹴りを繰り出すその脚
荊で刺し留め、終へと誘いましょう

いくらやり直せども
全てが思うようには進まない
結果が変わらぬことは山のようにある
後悔を糧にしなければ進めぬ事もある、ということなのかしらね

後悔と共に骸の海へ還りなさい



 ギガンティックに生じた違和を見逃さず、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)はすかさず背にトビの翼を広げた。
 飛び立つ間際、慈しむ仕草で大地を撫でる。指先づてに残す温もりは、衝撃から大地を守る結界。
 どれだけ持ち応えてくれるかは分からない。気休め程度にもならない可能性もある。でも出来ることをやらずにおいて、後悔するよりずっとマシだ。
(これ以上、自然を乱されては困ります)
 鳶色の羽で大気を叩けば、千織は見る間に空の住人と化す。黒から真なる金へと移りゆく髪が、地上を惜しむようになびくのも一瞬のこと。
 ギガンティックと視線を合わせる高度を得た千織は、感じた違和の正体を確信する。
 先ほど誰かの光矢がギガンティックの足元を射抜いていた。それに思考力を奪う|呪《シュ》が籠められていたのだ。
(巨大な敵の足を止めるには、精神を攻撃する方が成果は出やすいものね)
 まさにこれから己が仕掛けようとしていた策の行く末を見た心地で、千織の翔ける速さがぐんと増す。
「お嬢さん、鬼事は終いよ」
「まだだ、まだ! まだ吾輩は!!」
 風に掻き消されぬよう、千織が耳元に落とし置いた言葉に、ギガンティックが激しく地団太を踏む。
 戦意を完全に喪失したわけではないらしい。状況を正しく把握すると同時に、空さえ鳴動させるギガンティックの足踏みに、大地がたわみこそすれ割れはしなかったのを、千織は見た。
 施してきた結界の効果であるのは言うまでもない。
 はるか下方の地上から、常緑の木々のさざめきが聞える。それは千織が愛する自然の、理不尽に絶たれることのなかった命を謳歌する声。
(あなた達も必ず守ってみせましょう)
 その巨大さゆえに、ギガンティックは自然災害とほぼ同じ。唯一の違いは、人の手によって止めることが可能ということ。
「うるさい、うるさい! 吾輩の邪魔をするな!」
 右に左に、上に下に。変幻自在な飛翔を続ける千織を踏み潰そうと、ギガンティックが足を振り上げる。しかし速く、小さい千織を、大振りな蹴撃が捉えられようはずもない。
 そして空振りに生じるギガンティックの大きな隙は、千織にとっては絶対の好機。
「内なるものを刺し留めるは柘榴の荊」
 蹴りを誘った低空から、千織は螺旋を描いてギガンティックの脚の際を飛ぶ。
 膚からも知れるギガンティックの幼さに、千織は朝焼け色の眸を刹那、細めた。
 運命とは常に理不尽なもの。
 いくらやり直せども、全てが思うようには進みはしない。
 結果が変わらぬことは山とある。望んだものとは真逆となることさえある。
(後悔を糧にしなければ進めぬこともある――ということなのかしらね)
「汝を縛りて断ち切らん」
 唱えは穏やかに。心は千々に馳せ。
 金の細工が施された黒鞘から抜きし、藍色の装飾が施された黒鉄の刃の切先を、千織はギガンティックの脚へ絡まる荊のように走らせる。
 それは麻痺をもたらす|呪《シュ》でありながら、肉体には一切の傷を与えぬ剣舞。
 侵されるのは、行動や術に不可欠な神経とエネルギー回路のみ。

「やり直せない後悔と共に、骸の海へ還りなさい」
「いや、いや、いやだ――」
 呆然と立ち尽くしながら、ギガンティックは慟哭を吼えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
逃げゆく幼女には憐れを感じる

でもね。貴方はしてはいけない事をした
美しい自然を破壊し、踏み躙るその行為こそ貴方の罪!
自然崇拝の魔女として、赦す訳にはいかないっ

大きな歩幅に対処し、地形破壊を阻止する…動きを止めるしかない、か
とは言え、巨大なブーツも服も防御力高そう
ならば…こちらの位置を特定されないよう少しずつ移動しながら、剥き出しの太ももに植物の槍を突き立て動きを止めるっ!
この辺は針葉樹林も多そうだし、それを活用しちゃいましょう!
ただ連発するとエンドテイカーの魔力で時間を戻されるので、ちくり、ちくりと時間差で攻撃を仕掛け

足に連続で槍を突き立てられれば、動きも止まる
そしたら、急所の目狙いでとどめ刺し



「いや、いや、いやだ――」
 空をつんざく泣き声にキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は小さく眉間を寄せた。
 どれだけ巨大だろうと、頭身のバランスがギガンティックの幼さを物語る。
 逃げ果せようと懸命に走る姿にキアラが憶えたのは、間違いなく憐憫。
(――でも、ね)
「貴方はしてはいけない事をした」
 不可視の荊に絡め取られでもしたように、ギガンティックの歩は止まっていた。
 なれど一度振り返ると、彼女が踏み壊して来た大地が長く続いている。
 倒れた木々は数え切れない。巻き込まれた動物だっているだろう。
「美しい自然を破壊し、踏み躙るその行為こそ貴方の罪!」
 キアラの胸にあった憐れの泪が、怒りの炎へ切り替わる。
 キアラは|ヤドリギ使い《mistletoe・druidas》。母から称号を含めたおおよそを、父から悪戯好きな一面を受け継いだ娘。真の名を、キアラ=サシラ=ドルチェ。
 自然崇拝の魔女であり、守る為なら苛烈な怒りをも身の裡へと宿せる猟兵。
 ゆえに、ギガンティックを赦す訳にはいかないのだ。絶対に。
 好機の到来に、キアラはギガンティックの足元へと一気に走る。
 誰かが動きを止めてくれた。キアラが考えていたことを、先に為してくれた。ならばキアラは仕上げに注力するのみ。
「――あなた達も力を貸して?」
 周囲には、倒されることなく猛威を耐え抜いた針葉樹が茂っていた。大地を施された結界によって守られたのだろう。
 これもまた、|キアラ《ネミの白魔女》にとっては“恵み”のひとつ。
「森のディアナよ、」
 見上げても見晴るかせない巨体を、キアラは振り仰ぐ。
 影に入ると、世界は夜に似た暗がりへと変わる。しかし真の闇ではないからこそ、黒いブーツとズボンの裾の境にある膚が、はっきりと際立つ。
(狙うなら、あそこ)
 ゾルダートグラード総統なだけあって、ギガンティックの装いは守りに長けて見えた。そんな中、数少ない晒された膚は間違いなく狙い目。
「汝が慈悲もて我に想い貫く槍を賜らん――万物よ、自然に還れ!」
 キアラの凛とした声に、一瞬の静寂が訪れる。
 直後、一帯の針葉樹たちの持つ力がキアラの魔力と合わさり、500を遥かに超える槍と化し、空へと翔けた。
「っ、いた、いたっ……痛い痛い痛い!!!」
 ギガンティックにとって|キアラ達の槍《森王の槍》は、きっと縫い針のようなものだ。さりとて刺されれば痛いのは当然。
 踏み出すことを忘れたギガンティックが、たまらずうずくまる。たったそれだけで、キアラは空が落ちて来るようなプレッシャーを受けた。
 だがキアラはこれぽっちも臆さず、針葉樹の槍で畳みかける。
 ギガンティックが忘れているのは、進むことだけではない。反撃をすること――時を巻き戻すこともまた、忘れていた。
「こうなってしまえば、エンドテイカーの魔女もひとたまりもないということでしょうか」
 視野に入ったギガンティックの眉間を、キアラはひたりと見据える。

 眉間が人と同じく急所であるかは定かではなかった。
 けれどそこをギガンティックは、理不尽に踏み躙ってきた緑の矢によって幾回も穿ち、貫かれ――そうしてついには、戒めが解けてなお前へ進めぬ終焉へと至る。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月28日


挿絵イラスト