【SecretTale】ソール消失事件
●呪術と呼ばれたモノ
このエルグランデに存在するモノには、その殆どが『コントラ・ソール』と呼ばれる力を持っている。
人はもちろんのこと、動物も、植物も、鉱石も、無機物とされるものでさえ全て。
それがこの世界の摂理だからと誰も気にすることはなく、日々新たに芽生える力に翻弄されて生きてきた。
ただ1人、コントラ・ソールを持たない彼女――クレーエ・サージュだけは違った。
コントラ・ソールを持たず、ソール物質を宿さず。エルグランデに住まう人間だと言うのに、周りの人々とは違う体質を持っていた。
今となってはそれが彼女の普通になっているが、まだ、彼女を異物として見ている人は少なくはない。
今回は、そんな彼女を起点とした物語。
コントラ・ソールという力の根底を探るための、大切な話。
●新たな街の異常事態
「コントラ・ソールが使えなくなったァ??」
そう声を上げるのは司令官補佐のヴォルフ・エーリッヒ・シュトルツァー。
マリネロの街より北部にある『戦闘専門都市ヴィル・バル』より緊急の要請が入ったそうで、詳細を聞いてみれば戦闘訓練中に突然コントラ・ソールが使用出来なくなる状態に発展したという。
現在もヴィル・バル内ではコントラ・ソールが使用できず、街の外に出ると使用が可能になっていることから内部で何らかの異常が起きていると見て良いそうだ。
しかし司令官システム側からは『異常なし』という判断が出ているとのこと。
ヴィル・バルの担当者であるアードラー・サージュも何が起こっているのかわからない、と声を上げていた。
「うーん……アードラー教授でもわかんねェなら俺らがわかるわけねェよなァ」
「ゼルの前にコントラ・ソールの研究してたもんなぁ、アドって。まあその結果がクレーエ嬢なんだが……」
少々渋そうな表情のエルドレット。
というのも、司令官システムに脳を預けたアードラーは元々はコントラ・ソールの研究を行っていた研究者だった。
しかし彼は力の根源を探るために娘のクレーエを実験体として使い、結果として彼女のコントラ・ソールを削除してしまう異質な実験まで手を伸ばしてしまった。
そのため彼は死刑判決を食らったが、娘を死の淵に追いやっているという自責の念からエルドレットにシステム入りを懇願。丁度そのタイミングで新しく世界に誕生したコントラ・ソールの所持も認められたため、彼は現在も司令官システムの一部として動いている。
『とはいえ、私のあの研究は個人でしか働かない。住人全員のコントラ・ソールを消す、というのは遥かに難しいぞ?』
「おーん、そうかぁ……。ってことは別口から考えたほうがよさそ?」
『そうだな……1つ確かめたいことがある。構わないか?』
「内容次第かな。何するつもりでいる?」
エルドレットの問いかけに対して、数分ほど考え込む様子のアードラー。ヴォルフも彼がどう答えるのか気になってしまって、手が止まってしまう。
それから考えに考えた様子のアードラーは、ただ一言だけエルドレットに答えた。
『クレーエとライアー君の帰省、かな』
アードラー曰く、クレーエをヴィル・バルへ連れていけば何かがわかるかもしれないとのこと。
それなら向かわせない理由がないため、エルドレットは急遽2人のスケジュールを組み直すことに。
●護衛の任務
「と、いうわけで。猟兵さん達にはクレーエ嬢と一緒にヴィル・バルに向かってもらいたくてね」
「なんで俺達まで一緒に」
「あわぁ……」
「ぎぃ……」
ミーティングルームに集められたのは、何も猟兵達だけではない。
ジャック・アルファードとアルム・アルファード。そしてジャックのお供のモルセーゴ。
今回は彼らも同行させて欲しい、とエルドレットは言うのだ。
コントラ・ソールを持たない少女クレーエ・サージュ。
今回司令官システムは彼女を戦闘専門都市ヴィル・バルへ帰省させることを提案し、それを実行に移すことになった。
彼女は現在、その体質ゆえにライアー・シェルシェールという|調査人《エージェント》と共に行動しなければ死に至る。
しかしライアーはある事件を引き起こした重罪人であり、死刑宣告まで受けている人間。それを見張るのがクレーエ……という立ち位置になっているのだが、2人だけで外に出ることを良しとしない者達がいるため見張りを増やさなければならなかった。
「アドが2人をヴィル・バルに連れていけば、原因がわかるかもってことで。見張りを多くする必要があるんだ」
「なるほど。じゃあ、私達も調査頑張らないとですね。えいえいおー」
「いやーな予感しかしねぇ……」
「ぎぎぃ……」
アルムが張り切る中、ジャックとモルセーゴは何やら嫌な予感を感じ取っている様子。
しかし協力体制にある以上、それを拒否することは許されないのが彼らなのだ。
戦闘専門都市ヴィル・バルにて起きた、謎のコントラ・ソール消失事件。
その真相を探るのが、今回の物語。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第九章。
ついに物語は第二部へと突入いたしました。
よろしければこのシナリオからの参戦もお待ちしております。
シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/
今回は『戦闘専門都市ヴィル・バル』にて起きた、コントラ・ソール消失事件について調べるシナリオになります。
ヴィル・バルはその名の通り、戦闘関係に特化した都市となっています。
街の至るところで訓練所があったり、闘技場があったり、|調査人《エージェント》訓練校もあります。
基本的にコントラ・ソールで戦うが主流な街なので、使えない現在は大混乱状態に陥っています。
前章までのシナリオ中に見つかったアイテム、情報は全て使用可能となっています。
その他、リプレイ毎に見つかった情報はそのまま使用可能です。
猟兵同行NPCは『アルム・アルファード』『ライアー・シェルシェール』『クレーエ・サージュ』。
ジャックとモルセーゴは断章記載されますが、ヴィル・バル内では行動不能となります。
街から少し距離を取った場所でならジャックは会話が可能です。
今回はまず断章にて起こったやり取りをご確認の上、どんな情報を探るかをプレイングにて記載ください。
情報の整合性が取れればリプレイにてお返しします。
なお今回、調べ方によってはコントラ・ソールという力の成り立ちなどが判明する可能性があります。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Mission-09
シナリオのクリア条件
ヴィル・バル内の異常調査
異常調査 フラグメント内容
POW:街の人に聞き込みをしてみる
SPD:迅速に街の中を走り、異常となる原因を探る
WIZ:これまで集めた情報をもとに原因を考える
****
●
ヴィル・バル前にて、ライアーとクレーエと合流したジャックとアルム。
軽く自己紹介を済ませ、ヴィル・バルの内部に入ろうとしたのだが……。
「へっぶしゅっ!!」
「ぎゃふしゅっ!!」
さっきから、ジャックとモルセーゴのくしゃみが止まらない。
花粉症か何かか? とライアー達は考えるのだが、ジャックはこの現象にひとつ心当たりがあった。
ジャックの世界では闇の種族と呼ばれる魔物にだけ効く花の存在。花粉だけでも闇の種族には多大な効果があり、闇の種族であるモルセーゴはもちろんのこと、ジャックはある事情からこの花で地獄を見るのだ。
「こ、ここ、あの花のある場所、ゲート繋がって、っくしゅん!!」
「花ぁ? そんなもん、このカタブツ都市にはねぇぞ?」
「ちが、ゲート! 俺のせか、繋がっ、へっくしゅん!!」
「えっ、ゲートがあるんですか?!」
くしゃみの止まらないジャックの言葉を理解したクレーエはすぐに辺りを見渡す。
ジャックの世界との繋がりを得たゲートから、ジャックとモルセーゴを苦しめる花の花粉が飛んできているのだと。
しかし街の中はコントラ・ソールの消失による混乱が大きく、ゲートの存在がわかるような状態ではない。
ジャックの言う花も目視では確認できず、このままでは除去も出来ないため一旦彼らには街の外で待ってもらうこととなった。
「となると、俺、クレーエ、そしてアルムで調査か」
「みたいですねぇ……。確か、お父さんから入ってた連絡は……」
「クレーエが反応するかどうかと、《|蒐集者《コレクター》》の状態調査だったな」
もう一度今回の任務を確認したライアーは手元の電子機器でいくつかの情報を受け取っておく。
自分の父エスクロからはコントラ・ソール《|蒐集者《コレクター》》で集められるコントラ・ソールの動きについての詳細を。
クレーエの父アードラーからはソール物質の性質、およびその性質を利用するタイプのコントラ・ソールの一覧を。
他、猟兵達が集めた情報も参考程度に彼らに渡されており、確認も可能となるようだ。
「んじゃ、まあ。久しぶりに実家帰る感じで歩くかね」
「戦闘専門、でしたっけ? なんかわくわくしますね~」
「……記憶喪失なんだよな、アルムって。もしかしたらなんか思い出せるかもな」
「だといいんですけど……」
そうして彼らは戦闘専門都市ヴィル・バルにて起こっているコントラ・ソール消失事件を探ることになった。
……が、猟兵達が来ないと入れないように調整されていたのは、ここだけの秘密である。
響納・リズ
くしゃみが酷い所……そこが元凶な気がします。
近所に住む方にくしゃみが酷い方に「生まれ~」を使って癒しを与えつつ、くしゃみが酷い場所を聞き出しましょう。
そこにクレーエ様を連れて行けば、何か分かるのでしょうか。
ただ……これだけではなさそうなので、いつも以上に警戒はしておきますね。場合によっては、攻撃UCも使う心持で向かいますわ。
ただ……今回来たのは、フェルゼン様のことも気になって。
出会えないのは分かっていますけど、調査を続ければ、またお会いすることができると思うのです。何を話せるかわからないですが、それでも、私は慕っていることを、心配していることを伝えたい。
これは私の我儘……でしょうか。
●Case.1 リンクシステム
「へっくしょんっ!!」
「ぷぎゃしゅっ!!」
戦闘専門都市『ヴィル・バル』の入口にて、ある花に悩まされるジャックとモルセーゴ。
駆けつけた響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)はその様子にユーベルコード『生まれながらの光』を使い、彼らの症状を和らげる。
と言っても彼らの症状は花粉が存在し続ける限り出てしまう。そのため一時的な処置にしかならないが、一時的にジャックとモルセーゴもヴィル・バル内の調査が可能となった。
「まだちょっと鼻が痛いけど……」
「ぎぃ……」
「もしまた苦しくなったらおっしゃってくださいね。何度も使えますので」
「ん……頼んだ」
ずび、と鼻をすすりつつ、ライアー達に合流したジャックとリズ。酷い様相なのでジャックにはマスクを付けてもらう形を、モルセーゴは身体を小さくしてもらうことで調整し、ライアー達と共にヴィル・バルの中を歩いてみることに。
「……ああ、ダメだ。俺のコントラ・ソールも動かなくなった」
ライアーが右手を握ったり開いたりを繰り返し、眉を顰める。どうやら彼自身もヴィル・バルに立ち入った時点でコントラ・ソールを使えなくなったようだ。
その原因は『ソール物質の消失』か『コントラ・ソールの封印』のどちらかだろう、とライアーは考える。その証拠にクレーエが冷や汗を少し浮かべており、立っているのが少々つらいといった様子が伺えた。
「クレーエ様、大丈夫ですか?」
「は、はい……ただ、リンクシステムがちょっと誤作動起こしてるみたいで……」
「リンクシステム、とは?」
「あ……そっか、そのお話はまだしてませんでしたね」
そういえば、と思い出した様子のクレーエ。一旦近くの休憩所のベンチに座って、己の身の上話を始めた。
クレーエは父アードラーの研究によってコントラ・ソールを失っており、ソール物質を作ることが出来ない身体になっている。またその体質故にライアーからソール物質を移動させ、擬似的にコントラ・ソールを持つ状態を作る『リンクシステム』を組んでいることを軽く情報共有。
「確か……その物質がなくなると、この世界の空気には耐えられないのでしたね」
ふと、リズが思い出すのはリベリオン・エネミーに指定されたフェルゼン・ガグ・ヴェレットの状態。
彼は定期的な健康診断でソール物質の減少が見受けられており、今の状態が続いてしまえば彼の身体もかなり危険な状態となっている。
リズはそのことがどうしても頭から離れなくて、彼に会えないかと今回ヴィル・バルへの出向を決意していた。
「フェルゼン先生が……?」
「ご存知なのですか?」
「は、はい。あたしのこのリンクシステムの調整をしてくれたのも、フェルゼン先生なんです」
クレーエはそっとアメジストのペンダントに触れて、フェルゼンが自分の担当医だったことを思い出す。
まだリンクシステムを構築して2年ほどだが、フェルゼンには率先してリンクシステムの研究医をしてもらっていたのだそうだ。その時にソール物質に関しての研究も行っていたとのこと。
「だから、その。今回の件は……フェルゼン先生が関わってる可能性もあるかもしれなくって」
「物質の研究をされていたのなら、確かにありえますね。……でも、いるとしたらどちらに……」
リズはまだこの街に来たばかりで詳しくないため、ライアーとクレーエに助言をと思っていたのだが……2人よりも前にモルセーゴがぎぃぎぃと鳴き、リズの袖を口で引っ張って羽ばたいていた。
ジャックが翻訳してみると『向こうから変な感じがする』とのこと。相変わらずくしゃみの止まらない様子のモルセーゴだが、変な感じでやだやだと駄々をこねていた。
「では、そちらにクレーエ様を連れて行けば何かわかるかもしれませんね?」
「かもな。行ってみよう」
リズに促されるまま、ジャックはモルセーゴの言う方向へと向かう。
ライアー曰く、その方向は闘技場が存在しているとのことで、闘技場内への入場許可も取れないかどうかを司令官システム側に問うてくれた。
●Case.2 原因箇所
闘技場近くへとやってきたリズ達。ライアーとクレーエが辺りをキョロキョロと見渡す中で、アルムとジャックははっきりと『ここだ』と目をつけた。
というのもジャックとモルセーゴのくしゃみがリズによって治療されたはずなのに、再びぶり返してしまっている。更に彼らの肌がじわじわと赤くなり、軽いやけどを負ったような状態になったことから、現場は闘技場内であることがはっきりと断定された。
「だから、すまん。俺とモルセーゴはマジでこれ以上は無理だ……」
「ぎぎぃ……」
その場で足を止めてしまったジャック。しかし彼らがいてくれたおかげでゲートの場所をほぼ断定したようなものなので、それ以上の無理をさせないよう彼らには安全のためヴィル・バルの外へと出てもらう。
ジャック曰く、闘技場の中にはジャックとアルムの世界と繋がったゲートがあり、そこから|呪いの花《カースリリー》と呼ばれる花の花粉が飛んできているとのこと。
「……っ……」
その話を聞いて、少しだけ頭を痛そうに抑えたアルム。彼女は記憶を失っているため、今の話を聞いたところで何かを知っているわけではない。
だがアルム自身、記憶に何か引っかかりを覚えたようで眉をぎゅっと顰めたままの表情となっていた。
「アルム様?」
リズはその様子を見て彼女にもユーベルコードを使おうと思っていたが、それは痛みや負傷からくるものではなかったため、大丈夫とアルムは答えて闘技場の中へ入る提案をしてくれた。
闘技場に全ての答えがあるような気がする。そう言って、アルムはライアーに入場許可を取ってもらった。
闘技場の中に入れば、受付や待機所等に人はいない。本来ならば訓練施設として使われるはずの闘技場のため、誰もいない、という状況はあまりにもおかしい。
リズは手にルナティック・クリスタを握りしめ、いつでも敵対勢力との戦いに応じることが出来るように準備を整え、アルムを守るようにライアーとクレーエと共に前へ進む。
すり鉢状のカタチをした闘技場。その中央は風が大きく吹いており、砂埃を巻き上げて視界をひどく荒らしていく。
だがリズはその砂埃の先に人を見た。そしてその姿が、探している相手だということもちゃんと気づいて、その名を呼びかけた。
「――フェルゼン様!」
名を呼ばれた男――フェルゼン・ガグ・ヴェレットはゆっくりとリズ達へと振り向く。
ひどく憔悴しきった顔。その表情を見るだけでも様々な事柄に手を出しており、今もなお何かを行っている最中なのだということがわかる。
だが彼はそれを隠すように歪に笑みを浮かべて、リズに濁りきった三色の瞳を見せつける。今も敵であるという証拠、対立の証だと言葉を告げることなく示すように。
けれどリズはその視線に答えることはない。逆に彼を慕っており、その身体を心配し続けているということをはっきりと彼に伝えた。
「……それは、」
その言葉に対応しようと、フェルゼンが一歩前へ出た。その足でリズの前へ向かおうと、その言葉に偽りはないかと問いただすために。
けれど二歩目を踏み出したその時、フェルゼンの身体が崩れ落ちて膝をつく。まるで糸の切れた人形のように、がくりと力を失った形になって。
「フェルゼン様!!」
「フェルゼン先生!!」
そんな彼のもとにリズとクレーエが同時に駆けつけ、ライアーとアルムがゆっくりと駆けつける。膝をついたフェルゼンに手を添え、彼の身体を楽な体勢にしようとしたところで……クレーエがあることに気づく。
「……アルムさん、今……何かしました?」
「えっ」
クレーエが視線を向けたのは、なんとアルム。クレーエ曰く『アルムとフェルゼンが距離を縮めた』ことでフェルゼンになんらかの影響が及び、彼が膝をついてしまう状態になったという。
何故それがクレーエだけに判別がついたのかとリズが問いかけると、アルムからコントラ・ソールとは違う何かの力がフェルゼンに流れているというのだ。
「と、ともかく。フェルゼン様の今の症状を治療してみます」
「お願いします!」
リズは倒れたフェルゼンに向けて再びユーベルコード『生まれながらの光』を使い、治療を施す。彼は怪我をしているわけでもないが、何かしらの症状に苛まれているのならそれを治療したいという心が光を強くしていく。
「……リズ殿……!」
リズから与えられる光はフェルゼンにとっての命綱だったのか。
ゆっくりと開かれる彼の目は先ほどとは違う、正気を保った目の色をしている。
すぐさま彼はリズの手を掴み、時間がない、と一言添えた状態で一言だけ告げた。
「――私の中の|模倣者《ミメーシス》に惑わされるな……!!」
その言葉を告げた後、彼の姿は消えてしまう。
まるで、誰かが彼の邪魔をするかのように。
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・ジャックとモルセーゴは『治療系ユーベルコードがあれば』一時的に滞在出来るようです。
→ただし闘技場に近づくことは何があっても難しいようです。
・クレーエはリンクシステムと呼ばれる機能を使っているようです。
→ライアーとクレーエはこのリンクシステムで繋がっています。
→この機能は『ソール物質の移動』『コントラ・ソールの疑似所持』を担っているとのこと。
・ジャックの故郷に存在する花の名前は|呪いの花《カースリリー》と呼ぶようです。
→この花粉はシナリオ:investigationに出たものと同一のものと確定しました。
・闘技場が一番花粉量が多くなっているようです。
・フェルゼンの姿が確認されました。
→彼はアルムと距離を縮めると何かしらに影響が出るようです。
→なおその際、彼は『正気に戻る』様子。
***************************************
大成功
🔵🔵🔵
唯嗣・たから
小さいクロ、フェルゼンさんを、探して。
具合悪いクレーエさんたち、あまり連れ歩くこと、したくない。
…たから、治すの、得意じゃないし。
花粉症、辛いって、知ってる。たからは、花粉症、ならないけど、その時期のひとたち、大変そうなの、見てるから。
闘技場に、なんか、ありそうだけど…フェルゼンさんが、何か、知ってそうだし、アルムさんと一緒に、街、探索!
見つけたら…ふふふふふ…この羽ペンでくすぐって、色々、教えてもらうんだから!(エーミールさんの実績で悪いことを覚えた)
ワープされたら、ダメだから、ワープされる前に、おっきいクロでのしかかって、お覚悟!
たから、また、フェルゼンさんとも、遊ぶんだから!
●Case.3 つかまえた!
「小さいクロ、フェルゼンさんを、探して!」
ユーベルコード『エージェントごっこ』を使い、戦闘力のない小さなからくり人形のクロを141体、ヴィル・バルに解き放った唯嗣・たから(忌来迎・f35900)。
その目的は今、この現場にいると思われるフェルゼン・ガグ・ヴェレットの捜索。および、彼からの事情聴取を行うこと。姿を消してしまって何処へ消えてしまったのかわからないが、少なくとも、ヴィル・バル内にはまだいるだろうと考えての捜索隊放出だった。
またクレーエの体調面を考慮して、今回たからはアルムと2人きりでヴィル・バル内の捜索を行うことになった。リンクシステムの不具合なのかどうかもはっきりとさせたいということもあって、ライアーもクレーエに付きっきりになり、ジャックはそもそもくしゃみが止まらないので外での待機。
「だから、フェルゼンさんを探すの、いっぱい、がんばる!」
「えいえいおー!」
こうして始まる、フェルゼン追い込み漁。果たしてその成果はどうなるか……。
「と言っても……私とたからさんだけだと、この街よくわからないですね……」
「あう……」
戦闘専門都市『ヴィル・バル』は以前訪れた街・学業専門都市『ヴィル・アルミュール』に似たドーム状の建物であり、内部はほとんど似通っている。
違うことと言えば、ヴィル・アルミュールは学生寮や学校が多く立ち並ぶ都市だったが、ヴィル・バルは戦いを主とするためか武器屋や鍛冶場が多く、所々に修練場や稽古場が並んでいる。
事前に情報を教えてくれたライアー曰く『この都市は華やかさなんて何処にもない』。故に場合によっては街の人から戦いを挑まれたりするし、女性子供でも戦いを主に生きているそうだ。
「そんな街、だけど、力、使えないと……」
「戦いどころじゃないですよねえ……」
辺りを見渡してみれば、コントラ・ソールが使えずに慌てふためく街の人々。未だに原因究明に至っておらず、誰もが使える人間はいないかと探し回っている。
たからもアルムも、コントラ・ソールという力の使い方についてはまだわかっていない。エルドレットから聞いた限りではソール物質なるものを練って使う、という漠然な使い方しか教わっていないのだ。
そんな中、たからの放ったクロが2人に近づき、探し人――フェルゼンを見つけたと知らせに来てくれた。
今はこそこそ隠れているだけらしく、向こうの方だよ! と指し示してくれたので、たからはあるものを両手に携えて一気に走っていった。
しばらく走ればある武器屋の裏手、曲がりくねった細道を走っていった先の井戸がある小さな広場にたどり着く。
どうやら彼は一息ついている様子で、井戸の縁にもたれかかって座って休んでいる。急に動き回った影響もあるのだろう、呼吸が荒い。
だが、しかし! そんな彼の状況など、たからとアルムには関係ない! 羽ペン二刀流を携えたたからは一目散にフェルゼンへと近づき、アルムもまたフェルゼンを捕らえるべく全速力で走るのだ!
「フェルゼンさん、いたーー!」
「見つけましたーー!」
「ちょっ、なんだその羽ペンは!?」
「くすぐりアイテム、です!」
「なんで!!??」
何か嫌な気配を感じているのか、それともその羽ペンでやられる未来を想像してしまったのか。どちらにせよ逃げなければと立ち上がるフェルゼンだが、その足取りは重くて鈍い。
彼の身体を押さえつけるためにまずアルムが突進を繰り出し、再び瞬間移動を使われてしまわないようにとたからがクロを使ってフェルゼンにのしかかる。
アルムとフェルゼンの距離が縮まったことで彼の瞳――右目の重瞳が真っ黒に染まったが、それに気づくよりも前にフェルゼンの靴が脱がされ、たからの羽ペン二刀流がフェルゼンの足裏を襲う。
「ちょっ、やめ、あっはははははっ!! やめっ、ひゃめろぉ!」
「色々、教えてもらうまで、やめない!」
「やっ、あはっ、教える、教えるからぁ! やめ、ひゃははは!」
過去、エーミールをくすぐったら情報を貰えたことに味をしめたようで、たからはフェルゼンにもくすぐりの刑を与える。
アルムもアルムで彼の脇腹をくすぐったりして体力減少を促し、暫くの間彼の笑い声を堪能していた。
●Case.4 彼の目的
「……で、この服は一張羅なのだけれど、キミ達はどうしてくれるのかな?」
「「ごめんなさい」」
くすぐりの刑が終わった頃にはフェルゼンは上着を脱いで井戸水で洗濯し、たからとアルムはその場に正座していた。
井戸の傍で倒れて、ぐちゃぐちゃにもみ尽くされた上着。水分が混ざっている土がべっとりと染み付いてしまったため、脱いで汚れを落とすしかなかった。
洗濯用洗剤でしっかりと土汚れを落とし、洗剤が残らないようにしっかりとすすいで水を絞りきってからから《|創造主《クリエイター》》で作った物干し竿に吊るして乾かすフェルゼン。
彼は大きなため息をついた後、2人に視線を向けてから頭をかいて、あることを呟く。
「……まあ、肉体の主導権を取り戻せたから良しとするか」
「にくたいの?」
「しゅどうけん?」
――肉体の主導権。その言葉を聞いても、たからもアルムもぱっと想像が出来なかったため、首を傾げてしまう。
そんな2人になんだかホッとしたのか、フェルゼンはアルムと距離を離さないように、《|創造主《クリエイター》》で椅子を作り出して情報を手渡す。
率直に言えば、フェルゼン・ガグ・ヴェレットは今や|侵略者《インベーダー》に身体を奪われている。
その|侵略者《インベーダー》の名はミメーシス。模倣者と呼ばれており、このエルグランデより遥か彼方の空からやってきたという。
現状、ミメーシスの目的は不明。その構成体に関しての情報もなく、ただ意識を奪われ『フェルゼン・ガグ・ヴェレット』に成り代わっている状態である、という情報しか今のところは彼にはない。
「……あれ? でも、なんで今は、フェルゼンさん?」
たからは気づく。ミメーシスという宇宙人に身体を乗っ取られているなら、じゃあなんでアルムが近づいただけでフェルゼンが意識を取り戻したのだろうか、と。
それに関してフェルゼンは何度か考えるのだが、それよりも前にアルムが言葉を発した。彼女の失われた記憶の中にあるかもしれないと。
「私、前にもこんなふうに人を戻したような、そんな気がして」
「……ああ、なるほど。だからキミが来たのか」
1人、何かを納得した様子のフェルゼン。アイツめ、と軽く笑うと、アルムとたからの頭を優しく撫でた。
フェルゼン曰く、どうにかしてフェルゼンの症状を知ったベルトアがアルムをエルグランデに送り込んでいた。それはぶっちゃけると賭けに近いものだったようで、ベルトアがその賭けに成功したから今があるようだ。
ベルトアは箱庭世界の管理者。アルムという住人に多少手を加えて、力の付与を行えば他者の精神状態を分離させることも出来るわけで。
「だが……流石にずっとというわけにもいかなさそうだな」
少しずつ消えていくフェルゼンの身体。アルムの力を乗り越えたミメーシスが再び身体の主導権を奪おうとしているようだ。
乾いた上着を羽織った彼は、再び会えるとき――フェルゼン・ガグ・ヴェレットとして会えるその時を待つよ、と声を掛ける。
「たから、また、フェルゼンさんとも、いっぱい遊ぶ! だから、絶対、また会おうね!」
「――……」
たからのその言葉に、彼は何か反応を示そうとした。言葉を返そうとして息を吸ったが……言葉を発する前に、姿を消してしまう。
――それ以上は|模倣者《ミメーシス》の領域なのだと、誰かが告げるように。
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・フェルゼンの状態が判明しました。
→|侵略者《インベーダー》・ミメーシスという、模倣に特化した侵略者が彼の身体内部にいるようです。
→なおこのミメーシスはアルムと接触することで一時的に気絶する様子。
→NPC設定にも記載がされます。
・アルムは『精神状態分離』を無意識に行える様子。
→この力はフェルゼンにしか現シナリオでは効果がありません。
→なおベルトアが勝手につけたそうです。
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大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
フェルゼンさんの状況は判明したとして。
まだ街でコントラ・ソールが消えた謎が解けたわけではありません。
違法な実験をしてもこの世界の人間からコントラ・ソールを削除するのは簡単ではない様子。
ならば、街の中にコントラ・ソールを封印するコントラ・ソールを使う者がいるのでしょうか。
一部の強力なオブリビオンには似た力を使うものもいましたから、この世界にもいるかも、ですね。
そういえば以前、世界にも意思があるということを聞いたような。
その人の気まぐれですかね?
一番怪しいのはやはり闘技場です。
闘技場の中をスマートグラスで精査して、痕跡なりを調査してみます。
気まぐれでもちゃんと意思はしてほしいものですね。
●Case.5 封印術式
「フェルゼンさんの状況は判明したとして。……まだ街でコントラ・ソールが消えた謎が解けたわけではありません」
「た、確かに」
戦闘専門都市ヴィル・バルに到着した黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は|調査人《エージェント》ライアー・シェルシェールとクレーエ・サージュと合流すると、これまでの情報をもらって考える。
クレーエの父アードラーが行った研究を持ってしても、1人の人間からコントラ・ソールを消し去るのがやっとのこと。今回のヴィル・バルのように街の人々全員のコントラ・ソールを消すというのは難しい……とアードラー本人も証言しているほどなので、摩那はそのカラクリを『消す』ではなく『封印する』が正しいのではないかと考えた。
「封印する……?」
「出すことを封じる、あるいはソール物質でしたっけ。それを使えないようにする等ですね」
「あー……可能性はあるな。リンクシステムが誤作動で済んでるから、多分出すことを封じてる方だと思う」
「そういえば。お話は聞いてます」
ライアーとクレーエに施された術式『リンクシステム』はソール物質を作り出せないクレーエに対し、ライアーが作ったソール物質を流し込むもの。
もし、ソール物質そのものが封じ込まれたのならリンクシステムどころかクレーエの命が危ういことになるわけだが、今回の状況では彼女はシステムが不具合を起こしている程度なので、ソール物質への関与はないと否定できる。
「……それなら、誰が封印したんでしょうね?」
クレーエがポツリと呟く。
街全体を封印するほどの力、それを持つ者と言えば思い浮かぶのは司令官システムぐらいしかライアーとクレーエは思い浮かばない。
司令官システムは街の機構をも操る力を持ち、場合によっては凶悪犯を捕まえるために一時的にコントラ・ソールを封じる措置が取られる場合もあると2人は話してくれた。
しかし摩那は違う。司令官システムとはまた別に、意思を持つものが存在していることを彼女は知っている。
「……そういえば、世界は意思を持っている、なんて話があったような」
思い起こされるのはアビスリンク家にあった赤い本。誰にも開くことが出来なかった本であり、唯一異世界から来たアルムが開くことが出来た『世界の意思を伝える本』。
もし、世界に意思があるとすれば、今回の件も世界そのものが街全体を停止させるために動き出したのだと考えることが出来る。
「その世界の意思とやらと会話できねぇかな……」
「闘技場、でしたっけ。あそこが一番怪しいと思ってて」
「そういえば砂埃ひどかったし、ジャックさんも近づけないって言ってました」
「砂埃……」
ふと、摩那は考える。ジャックと共にマリネロの街を行動したあの時、自分が見つけた花粉はスマートグラス『ガリレオ』を使って確認できる程度の量だけが残されていた。
今回ジャックが闘技場に近づけないのは花粉が影響していると言うが、もし闘技場の砂埃によって花粉が隠
されている、あるいは砂埃が花粉そのものだとしたら?
「……そこも調べてみる価値はあるかもしれませんね」
そう言って摩那はライアーとクレーエに闘技場の場所を聞き出し、現場へと向かう。
彼らに被害が行かないようにするため、一旦二手に分かれる形で摩那は1人で闘技場へと向かった。
●Case.6 世界の意思
闘技場。
元々は訓練用、あるいは賭け事のために使われている場所であり、現在人の姿は無い。
代わりにすり鉢状に広がる観客席と闘技場は砂埃によって覆われており、ほとんど何も見えない状態となっていた。
「さて……。今は私しかいませんから、もし声をかけたいなら声をかけてくださいね」
摩那は誰もいないはずの闘技場に向けて――世界の意思に向けて声を掛ける。
これまではライアーやクレーエ、アルムやジャックといった付添人がいたためその言葉を聞くには赤い本を通じるぐらいしかなかったため、本当に世界に意思が存在するとしたら声を聞くチャンスにもなる。
スマートグラス『ガリレオ』を通し、闘技場の内部を確認した摩那。吹き荒れる風の中、飛び交う砂を良く観察してデータを採取すると……驚くべきことに、砂だと思っていたそれはまた違うモノだった。
一部は砂が混じっているものの、大半はジャックとモルセーゴを痛めつける|呪いの花《カースリリー》の花粉。砂のように見えるのは玉となっていた花粉がそれぞれぶつかり、砂のように細かくなって飛び散った結果。
そうして導き出される答えは……。
「……じゃあこの場所って、今まさにゲートと繋がっている状態では?」
砂埃と判断されるほどの花粉量が飛んでいる。それはつまり、今もなお何処からか花から花粉が飛んできているという状態で、じゃあその花は何処にあるのかと言われたらゲートの先。
摩那は素早くゲートの場所を特定させると、ゲートの作成者情報を確認する。前回はエルドレットとなっていたが、今回は――。
「――アードラー・サージュ?」
司令官システムの機構に入った研究者であり、クレーエの父アードラー。その名前が闘技場に出来たゲートの作成者となっていた。
だがそれは仮初のものの可能性が高い、と摩那は判断をつけた。何故なら彼女はゲート作成者情報が改竄されることを知っているし、なんなら自分が見つけたゲートの情報が切り替わった話も聞いた。
「だったら、誰が……」
ゲートの作成ができて、なおかつ改竄まで出来る人物に当たりをつけようとした摩那。
しかし思考を切り替えた瞬間、スマートグラス『ガリレオ』に文字が映し出されていった。
■Connection...OK
■Sharing...OK
「えっ、何」
唐突に見えた文字の羅列。何者かが接続してこようとしている様子が伺える。
いくつかの許可項目を全てクリアしてきた『それ』は、しばらく文字列の入力が続いて、数分止まる。
敵性勢力からのハッキングか? と身構えたが、最後に表示された文字列がそれを否定した。
■はじめまして 猟兵
■ようやく繋がったよ
「……本当に話しかけてきた……」
声をかけたら声をかけていい、とは言ったものの、まさかスマートグラスを通じて会話をしてくるとは思わなかった摩那。
……だが良く考えれば、司令官システムも以前グラスを通じて話しかけてきたのだから、世界の意思が話しかけてくるのもあり得るのか、と妙に納得した。
摩那は世界の意思に向けて、いくつか質問をした。
今回の事件――ヴィル・バル内のコントラ・ソールを封じたかどうか、封じていないなら誰がやったか知っているか等。
それに対して世界の意思は『封じていない』と答えた後、再び長めの文章を送ってくれた。
■模倣者に魅入られし傲慢の者
■世界の敵 フェルゼン・ガグ・ヴェレット
■彼はこの身体に傷をつけ 彼らが『ソール物質』と呼ぶ我が血を流す
■彼らが作った世界に筒を添え 傷を閉じないように固定して
■血を 箱庭の世界へ 流し込んだ
■皆 気づいていないが
■我が血は 皆の身体のみならず
■世界の空気も 我が血に満たされる
「……とんでもない話では?!」
あまりにも世界の意思が硬派な語り口なため要約すると、以下のようになる。
エルグランデには人々の身体に流れるソール物質だけではなく、空気中にもソール物質が含まれている。
人々がコントラ・ソールを使用しても血中のソール物質が元に戻るのは食事による補給も大きいところだが、何と言っても即座に空気中のソール物質が人体に流れるためであり、空気中のソール物質が枯渇しない限りは人々はいつまでもコントラ・ソールを打つことができる。
今回闘技場に空いたゲートはソール物質を別の世界へと流し込んでおり、その影響で町の人々のソール物質が供給されていないことが原因。
枯渇するまでは一応使えるが、ソール物質の供給ができないと判断した肉体の防衛反応がコントラ・ソールの使用を封じているようだ。
特にヴィル・バルは戦闘に特化した都市。コントラ・ソールの使用率はどの街よりも高いため、より自己防衛が高いとのこと。
そして、ライアーが使用できないのは『クレーエにソール物質を流している』ため。
彼らの場合は自己防衛の管轄外でもあるリンクシステムが働いており、流れは一定のままで供給ができないことから脳が『ソール物質は減ってるし供給ができないから使用停止』を命じているようだ。
リンクシステムの誤作動もそれに同じ。空気中からのソール物質の提供がなくなっていることから、一部動作が不安定になっているようだ。
「ということは、今回の事件は自己防衛が働いた結果。……ゲートを封じる手段が必要、ということかな」
ある程度調査事項をまとめた摩那。
視線の先にはまだまだ花粉が舞っており、ゲートが消えていない証明を見せていた……。
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・闘技場内にゲートが存在することが判明しました。
→作成者は『アードラー・サージュ』ですが、フェルゼンによる偽造と判明しています。
→花粉はこのゲートの先から来ているようです。
・世界の意思から話が聞けました。
→コントラ・ソールの使用方法についてもっと詳しく判明しました。
→現在のヴィル・バル空気中にはソール物質がありません。
・コントラ・ソールが使用できないのは『自己防衛によるもの』と判明しました。
→空気中のソール物質が元に戻るまでは使用制限がかかります。
→ソール物質は食事でも補給できますが、即座に回復、というまではいかないようです。
→またライアーとクレーエのリンクシステムも元に戻るまでは不調気味のままです。
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大成功
🔵🔵🔵
秋月・那原
【尚原】
フェルゼンの方は…これ以上はアルムの手を借りてもどうしようもなさそうだな
まあいい。次に出会ったら問答無用で殴って銃弾叩き込んで行動不能にしてからセクレト機関に引き渡してやろう
一人で抱え込んで、ワープして逃げてばかりじゃ、なにも解決しないぞっと♪
俺らはソール消失事件そのものを追った方がいいかね…
まずは闘技場の中を捜査かな?
尚人少年は多芸だな〜
おにーさん、荒事しか出来んから羨ましいわ
唯一《索敵》技能だけはあるから、それで闘技場のなにかが分からねーかなー?
ちな少年が器用貧乏なら、俺は脳筋だな!
ふっふっふ!
俺が不死のコントラソールを手に入れる前にソール消失とか許さん!
ぷりーず!ぎぶみー不死!
日野・尚人
【尚原】
お?珍しくあんまり茶化さないな?
流石に秋月も空気を読ん・・・って、ジャックとモルセーゴは大丈夫かよ?
しかしコントラ・ソール消失事件の調査ねぇ。
現場に来てみれば以前報告されてた例の花粉が蔓延中だし。
・
・
・
1つ試してみるか。
UCで|ダチ《大空を覆うもの》を呼んで大気を支配、花粉を遮断するぜ。
これで花粉症は改善するはず。
あ、ライアーはコントラ・ソールを使えるようになってたりしないか?
フェルゼンの健康診断結果も含め、この花粉がソール物質消失の要因・・・は安直過ぎ?
んー?ここでミメーシスが何をしてたのかUC≪過ぎ去りし時の中に≫で確認しとくかな?
ん?何だよ秋月?俺はただの器用貧乏ってやつだって?
バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎
インベーダー・ミメーシス。
フェルゼン殿やエーミール殿が世界の敵となっているのはそれのせいなのでありますか……?
うーむ……。知力を用いるのは難しいでありマスナ!
なので思索は他の人に任せて、ワタシはジャック殿とモルセーゴの治療に参りマショー!
レッツ、バルタン・クッキング!
花粉症もとい呪いの花のくしゃみに効く、とろみたっぷり温かオニオンスープを提供しマース!
付け合わせのエビチリや鴨肉の鴨肉のソテーもどうぞデース!
状態異常・負傷・呪詛を治療するので、一時的に行動可能になるはずデース!
あとは、ジャック殿の指示に従って行動しマスカナ!
戦闘員を兼任しつつ、必要に応じて追加の料理を供しマース!
●Case.7 ごはーん
「フェルゼンの方は……これ以上はアルムの手を借りてもどうしようもなさそうだな」
「お? 珍しくあんまり茶化さないな?」
ヴィル・バルの入口にて合流した秋月・那原(Big Cannon Freak・f30132)と日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)。ライアーとクレーエ、そしてアルムとジャックの話を聞いてこれまでの状況を理解する。
……と言っても現時点ではゲートを閉じる方法が確立されていない。ライアーから司令官システムに向けてゲートの情報が送られているが、対応に時間が掛かるとのこと。
「っていうか……ジャックとモルセーゴは大丈夫かよ??」
「お"気"に"な"さ"ら"ず"……」
「ぴぎぃ……」
ずびずびと鼻を鳴らし、街の人からもらったティッシュ数箱を空にするほどくしゃみを連発しているジャックとモルセーゴ。そのうち箱丸ごとなくなりそうになったので、また貰いにいかないとなぁ、と考えていた。
しかしその考えは唐突にやってきた声によってかき消されていく。
「HAHAHA! ではその症状、ワタシが治してみせまショーウ!!」
「誰ッ!?」
「とうっ!!」
ヴィル・バルの玄関口から飛び降りてきたのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。セクレト機関側の話を聞きつけてやってきた彼女は、まず最初に行うのは『ジャックの治癒』だと判断したようだ。
「出来るのか?」
「もちろん! ――バルタン・クッキングの始まり始まり~!」
ユーベルコード『バルタン・クッキング』を用いて10秒で154種の料理を作り出したバルタン。その食事全てにジャックとモルセーゴのくしゃみを止める効能と、一時的に花粉から身を守る呪詛を与えて彼らの身を守る。なおモルセーゴは食べづらそうにしていたが、アルムが切り分けたりしてあげたのでなんとか食べることが出来た。
腹ごなしも兼ねた食事を7人と1匹で食べ終わり、ある程度の情報交換を済ませた後。那原がやはり闘技場に何かあるに違いない、と目をつけた。
「だって、怪しいんだろ? なんか変なのが話しかけたって聞いたし」
「そうですねぇ……。フェルゼン先生も何処に行っちゃったかわかんなくなりましたし」
「ふーむ。となると、ワタシはジャック殿と共に別行動したほうが良さそうな気も」
「ああ、じゃあ俺と秋月が闘技場向かって、バルタンには街の中探ってもらったほうが良さそう?」
尚人曰く、闘技場が怪しいと決定づけられたとはいえ、街の中の様子はあまり見ていない。そこで闘技場には近づけないジャックとアルムがバルタンと共に街の中を探り、闘技場内はライアーとクレーエと共に那原と尚人で探ってみてはどうだろう、と提案を上げた。
もちろん、バルタンは了承。ジャックもアルムも、そしてモルセーゴもやる気のようで、ご飯を食べ終えたモルセーゴはジャックの指示に従い、空を飛んで街を見下ろすように見張ってくれるようだ。
「それでは、何かあればモルセーゴ殿を通じて連絡を!」
「だな。行くぞ、秋月」
「おう! ぜってーに不死のコントラ・ソールを手に入れるまで追い詰めてやるからなぁ!」
「まーだ言ってる!!」
そう言って那原はさっさと闘技場へ走り、ツッコミを入れながら尚人もそれを追いかける。
何がなんだか? と首を傾げたバルタンはジャックと共に街の中へと入り、情報収集を開始する。
●Case.8 ゲートの謎
「と、来たのはいいんだけど何もわからねぇ」
「だと思った!」
闘技場は現在、変わらず砂埃――もとい異世界の花の花粉が飛び交っている。
その花粉を運ぶためのゲートが何処にあるかを調査するのが今回の目的だが、辺りを見渡しても怪しい現場は特にない。
「そういや、ライアーはコントラ・ソール使えるようになってるのか?」
「んー……ちょっと待ってな……」
尚人に促され、コントラ・ソールの調子を確認してみるライアー。封印状態はあまり変わっていないが、多少手持ちのコントラ・ソールを使用するぐらいには復活はしているようだ。
そのためライアーは周辺でコントラ・ソールの使用痕跡がないかを調査する。元々彼は《|蒐集者《コレクター》》が現場で使用されていないかを調べるために派遣されたため、闘技場内で使用痕跡を探ってくれた。
「じゃあついでに、過去にミメーシスが何かやったかを確認してみようか」
尚人はユーベルコード『|過ぎ去りし時の中に《イン・プラエテリトールム・テンプス》』を使い、過去24時間に存在した映像を作り、それでミメーシスの動きを確認することに。
――わずかに、映像に乱れがある。
ミメーシスによる妨害が行われているが、それを食い止めようとフェルゼンが過去を確立させているために過去の映像が乱れているようだ。
フェルゼンはゲートを開く前から、喘息のような症状を見せている。どうやら彼は喘息症状を抑えきれないままに外に出ているようで、時折言葉の節々に痰が絡む様子が見えた。
映像の中ではフェルゼンとミメーシスの声が聞こえている。どちらも声色はフェルゼンのもののため、最初に見たときにはどちらがどちらか判別がつかなかったが……やがて決定的な言葉が出て、2つの声に明確な差をつけた。
『【同位体】が作り出したこれを、|私《オレ》が使っても構わんだろう?』
「どういう意味だ……ゲートは|先生とナターシャ殿しか《・・・・・・・・・・・》作れないはずだ!」
ゲートを作り出した存在を告げたミメーシス。彼は存在の名を【同位体】――すなわちミメーシスの存在がまだいることを示唆する。
やがてフェルゼンの身体は闘技場の一画へと近づくと、手を伸ばし、黒い穴を作り出して……そこから溢れる花びらと花粉を前に、ミメーシスが嗤った。
『ああ、これで。母はこの場所を知れる――』
最後の一言、ミメーシスの言葉が聞こえると同時に映像はノイズを迸らせて途絶える。
その映像を見た那原も尚人も、言葉を失っている。さらに言えばライアーとクレーエもそれ以上の言葉が出てくることはなく、数分の沈黙を破ったのは……那原だった。
「これってよ。つまり、どういうこった?」
見えた映像が真実だというのは、那原にもよくわかる。尚人のこの過去を見る映像は以前にも使用され、それによってある犯人を示したのだから。
「まず第一に。以前子供を攫ったのがフェルゼン……いや、ミメーシスか? っていうのがわかったな」
「え、なんで?」
「今のフェルゼン、咳をしてただろう? で、犯人は喘息持ちの可能性が高いって」
「そういや……えっ、じゃあなんで子供達を集めて、更にこんなところにまで来てるんだ?」
「……これ、俺の憶測なんだけどさ……」
尚人は考える。これまでの情報が今ここに集約されているのなら、きっと、答えはここにあるのだと。
まず、尚人が引っかかったのは最後の一言『母はこの場所を知れる』というミメーシスの言葉。まるでミメーシスの母たる存在を呼び寄せるため、何かを目印にするような物言いをしていた。
「これってさ、ソール物質を目印にして呼んでいるって考えたらどう?」
尚人曰く、子供達を攫ったのは『器』としての役割であり複数人攫ったのは『器が多数必要だった』から。2人で攫われていたのはおそらく、ライアーとクレーエのリンクシステムに目をつけたからじゃないか、と。
「フェルゼンが研究してたんだよな? 2人の持ってるやつ」
「はい。フェルゼン先生が中心になってました」
「そういや俺とクレーエに《|蒐集者《コレクター》》付けたほうがいいって進言したのもあの人だったな……」
思い返せば、とライアーが口にするのはリンクシステムの構築が行われた時。
フェルゼンはクレーエがソール物質を留めるためには常時ソール物質を収集する必要があるが、彼女にその力がないためライアーのコントラ・ソール《|蒐集者《コレクター》》を移植したほうがいいと進言した。
しかしクレーエはそもそもコントラ・ソールが定着できない身体だったため、その案は失敗。以後はライアーが《|蒐集者《コレクター》》で多めに集めたソール物質をクレーエに流す、と言う形を取っている。
「じゃあ、そこで疑問が上がるんだけど……そもそもその物質って、許容量とかあるのか?」
次に上がった尚人の疑問は『ソール物質の許容量』。ライアーがクレーエの分を賄っているのなら、その最大許容量はどうなるのか? という疑問が上がった。
その疑問に対しての答えは……ライアー曰く『上がる』。それも1+1=2という増え方ではなく、1+1=10という大きさになるように。
「ってことは、子供達が2人ずつ攫われたのってその許容量を増やすためだったってことか? 少年」
「そういうことだ。……で、さっきの『母』がソール物質を目印にするとして、だ」
「……まさか、この街で集めたソール物質を攫った子供達に流すってことか?」
「っと、秋月もだいぶわかってきた感じか??」
なんとなく。と那原も返し、ライアーとクレーエもようやく理解が及んだようだ。
|侵略者《インベーダー》・ミメーシス。
その目的はこの世界、あるいはジャック達の世界のどちらかに『母』たる存在を呼ぶことだと。
「まずいな。この情報、一旦バルタンに流しておこう」
「モルセーゴちゃん、でしたっけ。あの子に紙渡してきますね!」
「頼んだ!」
クレーエは急ぎ、手に入れた情報をまとめて1枚のルーズリーフにびっちりと書き散らし、それを上空羽ばたくモルセーゴに手渡す。
大事なものだから、絶対に渡してね。その一言をきちんと添えた上で、モルセーゴを見送った。
●Case.9 世界の敵 ナターシャ・アイゼンローゼ
一方、ヴィル・バルの街の中で情報収集を行っていたバルタンは尚人と那原からのメッセージを受け取っていた。
色々な情報が舞い込む中、なでて、とモルセーゴが頭を差し出してきたので、バルタンはゆるゆると撫でてあげた。
「ふーむむ……。|侵略者《インベーダー》・ミメーシス……」
「俺よくわからんのだけど、とりあえず照会してもらったらなんかわかるんかね?」
「デスカネー? ひとまず、エルドレット殿にご連絡を……」
連絡を入れようと虚空に声をかけたバルタン。しかしその直前でアルムが何かからバルタンとジャックをかばうように飛びかかり、通信を中断させる。
「あいたた……」
何があったのかとバルタンが顔を上げれば――空も、人も、空気も、全ての時が止まっているのが見えた。現在動けているのはジャック、アルム、バルタンの3人だけ。
そして元来、この場所にはいないはずの人物の姿までそこに存在している。――司令官システムに存在する世界の敵、ナターシャ・アイゼンローゼという男の姿が。
なお、ナターシャの姿を知る者はここにはいない。ジャックもアルムももちろん知らないし、バルタンも文字での会話しかしたことがないため首を傾げていた。
「……誰だ?」
「誰デショウ?」
「誰……?」
「あ、俺ナターシャ。ちょっと事情があって、お前さん達だけにアクセス出来るようにセッティングしたんだ」
「何か御用デショウカ……??」
思わずバルタンがそっと先程作った料理を差し出しながら、ナターシャをおもてなしする様子を見せた。その様子に思わずナターシャは笑ってしまったが、笑ってる場合じゃねえ、と堪えて続きを話し始めた。
「先に言っておくぜ。ミメーシスはフェルゼンと俺と、もう1人いる」
唐突に突きつけられた大きな真実。
ナターシャ曰く、フェルゼンが本当にミメーシスに身体を奪われているかどうか、彼の精神が残っているかどうかの判断がつくまでは明かさないようにするつもりだったが、もらった情報からフェルゼンとミメーシスは共存しながらの分離が起こっていると判断。己がミメーシス体であることを明かすことにしたそうだ。
しかし、ナターシャがミメーシス体という情報は司令官システムさえも知らない情報。故にナターシャは猟兵達とジャックとアルムだけに流すことにしたようだ。
時を止めたのはかなりの強硬策だったが、それでも、エルドレットやスヴェン達に知られないように猟兵達に情報を渡すにはこうするしかなかった、と彼は言う。
「しかし、その情報を我々がもらったとして……何か益になりマス?」
「なるぜ。――お前さん達が『母』を認知しやすくなるからな」
ミメーシスの『母』たる存在は、【同位体】を多く知る者が多ければ多いほど認知しやすくなり、侵略を防ぐことが出来る。
ただし逆に言えば多数に認知されればされる分、『母』たる存在がナターシャやフェルゼンをより操りやすくなってしまう。そのため、最小限の人数にナターシャがミメーシス体の1つであることを伝えたかったようだ。
「まあ、エルにバレたらめちゃくちゃ怒られそうな気もするんだけどね」
「ああー。そこらの打ち合わせはしておくほうが良いと思いマスヨ?」
「うーん、性質上難しいなー!」
これでもかなりの綱渡りをしていると告げるナターシャ。既にほとんどの猟兵達に情報が行き渡ったため、その分、『母』たる存在も感づいているかもしれないと。
「――けど、得体の知れない奴に世界は渡したくない。だから俺は、最善を選んだんだ」
そう言ってナターシャはもう一つ、猟兵達に向けて情報を渡す。
ミメーシスと言う存在。それが、どのような者で、どんな性質をもっているのか。
闘技場のゲートの閉じ方。どうやれば閉じる事ができるか、何処にゲートが存在しているのか。
それらが語られた後、時は再び動き出す。
まるで、ナターシャとのやり取りはなかったかのように……。
●Case.10 閉じられるゲート
「尚人殿! 那原殿!」
闘技場へと駆けつけたバルタン。丁度その時には、那原がゲートの縁をがんがんと踏んでいて、早く消えろ! と声を上げていた。
「あっ、バルタン! どうだった?」
「かなーり重要な情報が手に入りマシタ! ゲートの閉じ方も、ちょっと色々あって判明シマシテ!」
「おー! じゃあ早速やろうぜ! コントラ・ソールがなくなるのは嫌だからな!!」
意気揚々とバルタンからゲートの閉じる方法を聞き出す那原。その根底には『不老不死の力がほしい』という私利私欲があり、この世界に来たのもそれが理由。
故に、コントラ・ソールがなくなる原因を閉じたあと、またセクレト機関に出向いて何度でも頼むつもりだ! と笑った那原。渡せない事情は聞いているのだが、どうしても、どうしても欲しい。
「まあ、こういう奴だからさ。仕方ない」
「少年。俺はな、夢を大きく追いかけたいんだよ!」
「うーむ。確かに夢は大きいほうがいい……」
「だろう!?」
妙に納得した様子のバルタンに対して食い気味に迫る那原。やめとけって! と抑え込む尚人だが、その暴走は止まる様子はない。
――故に彼らは気づかない。赤い衣装の誰かが花粉の流れに乗じてエルグランデへやってきたことを。
「ん……?」
今、何かいた? と首を傾げたバルタン。
しかしゲートを閉じる作業を止めるわけにもいかないため、那原と尚人と共に作業を続けて、後で探しに行こうと考えるバルタン。
後回しにした結果?
……さて、どうなったのかは……後ほど。
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・|侵略者《インベーダー》・ミメーシスの性質が判明しました。
→現在はフェルゼン、ナターシャ、もう1人のミメーシス体がいるようです。
→ただしナターシャは『司令官システムに知られていない状態』です。
→『母』なる存在がある様子。現在は『母』なる存在については不明です。
→ミメーシスは『母』なる存在を呼び寄せようとしている様子?
→『母』なる存在は多数に知られれば知られるほど、猟兵達が認知しやすくなります。
・子供達の誘拐事件のおおよそが判明しました。
→|フェルゼン《ミメーシス》が子供達を誘拐していました。
→子供達にリンクシステムを施してソール物質の許容量を大きく増やし、それを目印としてミメーシスの『母』なる存在を呼び寄せようとしていたようです。
・ナターシャは『世界を守るために敵になった』(要約)。
→ミメーシスの存在を知って、1人で対策を練り続けていたところに猟兵が来てくれたのでホッとしている様子。
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『ソール消失事件』 complete!
Next Stage →
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●Case.EX 騎士、推参。
「くぁ……」
ヴィル・バルの外にて大きくあくびをするジャック。
このあとは諜報部隊オルドヌングに引き継ぎ、撤収することを告げられたため、オルドヌングのメンバーを待っていた。
それにしたって中に入れないのはツラい。アルムも一緒にいてくれるが、暇で仕方がなかった。
「あ、ジャックさん。あの赤い服の人がそうじゃないですか?」
アルムが指を差した方へと視線を向けると、やってきたのはカスパル・シュライエン。更にゲートの先がレティシエルの世界だからとレティシエル・ベル・ウォールも強制的に連れてこられ、アレンハインツ・ニア・ウォールが司令官システム側から補佐として付き添っているようだ。
彼らはこのあと、ゲートが閉じられたことを確認した後に住民達の調査、加えて|侵略者《インベーダー》・ミメーシスの痕跡を辿って次の対策を練るという。
「言うてまあ、レイ兄貴とアレンがなんとかするんやろけどなあ」
「僕かぁ」
『僕もかー』
生き別れになってたとは思えないほどの息ぴったりに声を上げたレティシエルとアレンハインツ。それを小さく笑ったアルムはぼうっとカスパルの顔を見て、首を傾げていた。
さっきから、カスパルの姿を見ては首を傾げてを繰り返すアルム。それはまるで、彼女の記憶が戻りそうで、戻らなさそうな。そんな雰囲気だった。
「うぅん、俺もアレンもどうしようもあらへんからなぁ……」
『せやねぇ。レイ兄貴はなんかわかる?』
「僕はそこまで詳しくないんですー」
ぶーぶーと文句垂れる様子のレティシエル。ゲートを通ったことによる衝撃か、それとも別の要因かはわからないが、アルムの記憶に関して僕が知っていることなんてあるはずないだろうと。
そんな彼に対して、1つ声が聞こえた。それはここにいる誰のものでもなく、レティシエルの後ろから聞こえるもので……。
「ほう。ならこの始末はどう付けてくれるつもりだ? レティシエル」
「そりゃもちろんしばらく遊び…………えっ?」
「こ、この声は……」
声が聞こえると同時、レティシエルがそっと両手を上げて降参のポーズを決める。背後にいる誰かが彼に対する怒りを見せているようで、レティシエルは振り向けずにそのまま両手を上げたまま地面に正座する。
彼が座ったことでお目見えした姿は赤紫色の鮮やかな髪色の、瞳の赤い男性。鋭い目はレティシエルに対して向けられており、また色々な怒りをレティシエルにぶつけていた。
その後、文句を色々と言った男性はアルムの姿を見つけると、彼女の前に立って……膝をつく。
そして彼はこう、アルムに向けて言い放ったのだ。
「騎士ベルディ・エル・ウォールただいま推参いたしました」と。
突然のことに驚いた様子のアルムと、混乱する様子のジャック。
ジャック曰く、ベルディは向こうの世界におけるアルムの側近騎士であり、ジャックの師匠筋であり……。
「……|コイツ《レティシエル》の息子」
「『え』」
カスパルとアレンハインツの言葉が同時に重なった。
レティシエルの息子ということは、彼はカスパルとアレンハインツの甥っ子ということにもなるのだから……。
***************************************
・側近騎士「ベルディ」がやってきました。
→レティシエルの息子であり、カスパル&アレンハインツの甥っ子にあたるようです……。
***************************************
大成功
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