獣人世界大戦⑳〜崩壊猟兵協奏曲
――闇は、壊れた姿で歌い続ける。
――少女は、壊れたその身で銃を構える。
――猟兵は、壊れた己を見てもなお立ち向かう。
これは、その身が壊れど歌う猟兵たちの協奏曲。
●獣人前線~はじまりの地にて~
雪の舞うシベリアの深き森に、ざく、ざくと音が聞こえてくる。
結界の解かれたはじまりの地。その地へ足を踏み入れたのは……六番目の猟兵たちだった。
真実を聞くためなのか、それとも他の超大国の手に渡るのを阻止するためなのか。
思いは違えど、彼らははじまりの猟兵と出会うために、自らの意思でここまでやって来たのだ。
「……六番目の猟兵!!」
どこからか聞こえた声に、彼らは足を止める。
「待っていました。ずっと、待っていました!」
その声は、どこか純粋さを感じる少女の声。だが彼らの目の前に現われたのは……溢れ出した闇。そこから出てきたのは、ヤギの骨を思わせる面を被った少女の姿……をした、オブリビオンだった。
「そう、わたしこそが『はじまりの猟兵』。世界はわたし達を罪深き者と呼びますが、それでも、わたしに後悔はありません。皆さんだって、その気持ちは同じ筈です」
自らの醜い姿を自嘲しながら、彼女は六番目の猟兵たちに語り始める。その話を聞きながら、彼らはこの後に起きる予知の内容を思い出した。
●時は遡り~グリモアスペース~
「……すでに故人である彼女は、今や|世界の敵《オブリビオン》と化しています」
グリモアスペースの中で予知の内容を説明するノキ・エスプレッソ(色を求めて走るレプリカント・f41050)は、無表情の顔のままため息をついた。
はじまりの猟兵には自我は残っているものの、世界の敵として嘘情報を語ってしまう可能性がある。故に彼女は六番目の猟兵に勝負を挑み、自身を叩きのめして欲しいと頼むのだ。
「オブリビオンである彼女は、1度や2度倒したとしても復活してしまうでしょう。ですが……復活できなくなるほど叩きのめされれば、消滅するその末期だけオブリビオンの呪縛から解かれます。真実を聞くチャンスはそこだけでしょう」
要するに、いつも通りとにかくオブリビオンを倒し続ければいいのだ。実際に彼らの中には彼女との交戦経験がある者もいるかもしれない。
だがノキは、再びため息をついた。はじまりの猟兵に興味を持ち行動してきた彼女ではあったが、決してオブリビオンになっていたことに失望したわけではない。
「ですが……」
そのため息の原因である予知の続きを、ノキは覚悟を決めた上で彼らに突きつけた。
「戦う相手は、はじまりの猟兵ではありません。みなさん自身です」
●そして現在に至る~獣人前線・はじまりの地~
「えっ!!?」
はじまりの猟兵が出てきた闇が、続けて何かを吐き出した。
「あ……わわ……!!?」
想定外の自体に、振り向いた彼女は後ずさりをしてしまう。この現象は、彼女の意思とは無関係なのだ。
現われたのは……六番目の猟兵と似た姿をした怪物。
彼らの「真の姿」をさらに歪めたような、禍々しい姿。
自身と似た姿をしたその怪物と対峙して、彼らはもう一度ノキの言葉を思い出した。
『怪物に打ち勝つ方法……ひとつは、その姿を受け止めること』
相手は元となった猟兵のユーベルコードや技能を使う強敵。闇の真の姿とでも言うべきその姿を、頭の中で文章として表現できるように認める。そうすることで相手が取る戦法を予測し、対処できるようになるのだ。
『そしてもうひとつは……はじまりの猟兵の助けを借りることです』
怪物と対峙する六番目の猟兵の前で、はじまりの猟兵もまた怪物に銃口を向けた。
「私も戦います! あの闇は私のエネルギー源……打ち倒すことができれば、私も消えることができるのですから!」
その面から覗くエメラルドグリーンの眼差しには、六番目の猟兵たちや守り抜いてきたこの世界に危害を加えようとする、自分の闇で生み出された怪物を打ち倒そうとする強い思いが秘められていた。
「言っておきますが、わたしは最も古き者……正直言って、弱いですよ!」
……ふと誰かが「えっ?」とはじまりの猟兵を見たかもしれないし、誰も気にしなかったのかも知れない。
それはともかく、この協力を断る理由はなかった。たしかに最新の能力や戦術を修得した六番目の猟兵たちと比べ、戦闘力は劣るかも知れない。だが六番目の猟兵たちよりも多く積んできた猟兵としての経験と知識……そこから取れる手段を全てを使い尽くす「戦場の戦い方」で戦う彼女は、猟兵の足手まといには決してならないだろう。彼女の戦法に合わせたり、足りない戦闘力をこちらのユーベルコードなどで補ってやれば勝機が見えてくるはずだ。
『その怪物が、たとえどんなに醜い姿であっても……ボクは見届けます。その姿を認め、打ち破ってください。|彼女《はじまりの猟兵》とともに……!』
「いきましょう! |第六猟兵《みなさん》ッ!!」
はじまりの猟兵の言葉とともに、最初の怪物が前へ躍り出た!
オロボ
こんにちは、オロボです!
今回の舞台はシベリアの奥地の深き森、はじまりの地。
オブリビオンと化したはじまりの猟兵が、意図せず生み出した怪物……即ち、みなさんの『闇の真の姿』との対決です!
闇は、はじまりの猟兵のエネルギー源でもあります。全滅させると彼女は消滅し、このはじまりの地の戦力を減らすことができます。戦争終了までに戦力を0にすることで、『二番目から五番目の猟兵について』の情報を得られるでしょう。
今回のシナリオでは以下の行動でプレイングボーナスが付与されます。
●自身の「闇の真の姿」を描写し、それに打ち勝つ。
その怪物は、あなたの真の姿をさらに歪めた姿をしています。その見た目についてプレイング内で文字として描写するとプレイングボーナスが与えられます!
闇の真の姿に対する描写がない場合、見た目はぼかしつつもプレイングは採用されますが、こちらのプレイングボーナスは得られません。
特にプレイング内での指定がない場合、その猟兵の公開されているユーベルコードを拝見し、対応する能力値からこちらが決めさせていただきます。相手にはこのユーベルコードを使って欲しい! というのがありましたら描写お願いします!
もし真の姿が描かれたイラストをお持ちであれば、参考資料として用意してもらえると助かります。
(イラストがなかったとしてもプレイングボーナスが減ったりなくなったりすることはないのでご安心を!)
●「はじまりの猟兵」と共闘する。
今回はボス敵オブリビオンとして『はじまりの猟兵』の詳細が下に出てきますが、彼女は共闘相手で実際に戦うのは闇から生まれた怪物です。お間違えのないよう気をつけてください!
最初期の猟兵である『はじまりの猟兵』はみなさん六番目の猟兵と比べて、戦闘力は大きく劣ります。ですが彼女は昔から猟兵として戦ってきた知識と経験に加え、自身の修得したユーベルコードと技能を組み合わせ、己に取れる手段全てを使い尽くす『戦場の戦い方』を持っています。
彼女の『戦場の戦い方』に合わせて連携を取る、足りない戦闘力を自身のユーベルコードなどで底上げしてあげる、相手の攻撃に対して経験から生み出されたアドバイスを求めるなど……彼女と共闘できればプレイングボーナスです!
なお、はじまりの猟兵が持つ技能は、戦闘に関するものを一通り高レベルで習得済です。
それでは、崩壊猟兵協奏曲……開幕です!
第1章 ボス戦
『はじまりの猟兵』
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POW : ストライク・イェーガー
レベルm半径内の対象全員を、装備した【ライフル】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD : プログラムド・ジェノサイド
【予め脳にプログラムしていた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : キューソネコカミ
【ライフル】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビスマス・テルマール
はじまりの猟兵、こう言う形で相対するとは思いませんでしたが、援護は有り難く、宜しくお願いしますね
●Pow
あの敵は……ビスマス結晶と宇宙服が組合わさった様な、アレがわたしの闇の真の姿っ!?
奇しくもわたしが忌み嫌う、なめろうを捨てた後の未来の……あの闇が形を変えてまた来るのなら(アポカリプス・ランページ⑮〜NO FEAR 参照)
始まりの猟兵と『団体行動&集団行動』連携し援護受けつつ『早業』UC発動
真の姿になり攻撃力重視で【ミンククジラのなめろうビーム斬馬刀】生成『第六感』で『見切り&残像』回避
『怪力&属性攻撃(重力)』込め相手の動きを制限し『鎧無視攻撃&2回攻撃&斬撃波』お見舞いです
※アドリブ歓迎
(あの敵は……ビスマス結晶と宇宙服が組合わさった様な、アレがわたしの闇の真の姿っ!?)
こちらへ向かってくる、ビスマス結晶で出来た宇宙服姿の怪物。自身の闇の真の姿を見たビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は驚きつつも、過去に出会ったもうひとりの自分を思い出す。
アポカリプスヘルで彼女が出会ったのは、目に見えない悪意という彼女の恐れから生まれた、なめろうを捨てた後の未来の自分……目の前にいる怪物は、ビスマス結晶で出来ている点を除けばよく似ていた。
(奇しくもわたしが忌み嫌う、なめろうを捨てた後の未来の……あの闇が形を変えてまた来るのなら)
あの時とは違い、ビスマスはその姿を見ても立ちすくむことはなかった。
かつて自身を救ってくれたなめろうを信じ続ける自分。それを受け入れてくれた人を思い出し、その恐怖に打ち勝った彼女の信念は、たとえ真の姿に似せた形であろうともう砕けない。
「はじまりの猟兵、こう言う形で相対するとは思いませんでしたが、援護は有り難く、宜しくお願いしますね」
「は、はい!! よろしくお願いします!」
挨拶を終えたビスマスは、はじまりの猟兵の射線に入らないように回り込みながら前へと出る。
続いてはじまりの猟兵はライフルを怪物に向け、ユーベルコード『ストライク・イェーガー』を発動。射程距離内全員をライフルで狙撃し続けるその効果により、銃弾を浴びせていく。
だが、最初の1発は怪物を警戒させ1度後退させたものの、2発目以降は怪物に見切られた。
怪物はユーベルコード『ブラックセイバー』で両腕を刃物に変え、旧式の弾丸を容易く切断。以降は止まることなくこちらへと近づいてくる……!
十分だ。
最初の1発でひるませた時間は、ビスマスの早業とも呼べる変身速度にとって十分だった。
「True Form Drago Knight Lord Bismuth!」
鎧装の機械音を鳴らし、自らも真の姿へと姿を変えたビスマス。
ミンククジラのなめろうビームで出来た斬馬刀を手にしているその姿は、闇の真の姿である怪物と対象的な、なめろうと自身を受け入れてくれた人を信じ続ける、本当の自分自身。彼女のユーベルコード『|蒼鉛結晶の竜騎士皇《ドラゴナイトロード・ビスマス》』が、戦闘開始したばかりであるのにも関わらず真の姿への変身を可能とした。
狙いを変えて刃を振り下ろした怪物に対して、持ち前の第六感で見切り、残像を残すほどの速さでかわす。その隙にはじまりの猟兵の弾丸が怪物の足に命中! さらにビスマスは蹴りによる追撃をかける!
怪力とともに重力属性が込められたその蹴りは、想定以上の力を送り込めた。
攻撃をモロに食らった怪物の体は、強力な重力によって地面へと押さえ込まれる!
その衝撃は雪を巻き上げ、クレーターを作り出した!!
「す……すごい……! さすが六番目の猟兵……!」
自分の時よりも、はるかに強くなった|彼ら《六番目の猟兵たち》。
その姿を見てため息をつくはじまりの猟兵を尻目にビスマスは飛び上がり、なめろうビーム斬馬刀の衝撃波を2回……加えてもう1回放つ!!
鎧をも無視するその斬撃を喰らった怪物……なめろうを捨てた闇の真の姿は、雪とともに結晶の欠片となって空を舞った。
大成功
🔵🔵🔵
ムゲン・ワールド
【敵の姿】
本来の年齢で仮面を被っており、闇のオーラで姿を隠しながら戦う。
悪夢クラスターでこちらを分断しながら、仕込み杖で攻撃してくる。
「はじめまして、はじまりの猟兵さん。お美しい方だ。仮面をつけてる同士でもありますね。私はムゲン。消えるまでの短い間ですが、よろしくお願い致します」
戦闘は指定UCを使って背中に乗るように導きます。
はじまりの猟兵を背中に乗せ、口説きながら悪夢クラスターをその移動速度と跳躍で回避しつつ、距離遠めを維持して、はじまりの猟兵のUCを頼りに攻撃してもらいつつ、こちらも悪夢爆弾と詠唱アサルトライフルで攻撃します。
可愛いお嬢さんを背中に乗せられるなんて今日は良い日だ!
「ッ!!」
ビスマスが自身の闇を打ち勝つ姿を見届けていたはじまりの猟兵だったが、突如現われた黒色の弾を膝に受けてしまう。
「……眠……く……」
その弾は傷をつけることはないが、代わりに触れた者を眠気に包む。そんな弾がはじまりの地一辺に放たれ、近くにいた六番目の猟兵たちもそれぞれ分断され離れていく。
「あっ……」
重たいまぶたを閉じまいとして孤立してしまった彼女に闇のオーラを纏いながら近づくのは、仮面をつけた暗殺者。20代後半と思われるその手に握られた仕込み杖の刃を光らせていた。
「ひゃっ!?」
その刃ははじまりの猟兵に当たることなく、虚空を突く。横から現われた人影が彼女を抱えてかわしたのだ。
「はじめまして、はじまりの猟兵さん」
暗殺者と同じ姿をしたムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は、救い出した彼女の手を取り語りかける。その手は暗殺者よりも若く、学生のようだ。
「お美しい方だ。仮面をつけてる同士でもありますね。ここで出会ったのも……」
「!! 来ます!!」
そのまま口説きに入るムゲンだったが、暗殺者が再び黒色の弾を出現させているのを見てはじまりの猟兵は遮る。すぐにムゲンはユーベルコードを発動させた。
「私はムゲン。消えるまでの短い間ですが、よろしくお願い致します。さあ、こちらへ!」
「はい!」
ユーベルコード『ナイトメアビースト・ユニゾン』で白馬型の来訪者種族「ナイトメア」と融合、ケンタウロス型になったその背中へはじまりの猟兵を乗せ、ムゲンは駆け出した!
その後ろを暗殺者……ムゲンの闇の真の姿をした怪物はユーベルコード『|悪夢《アクム》クラスター』で出現させた黒い弾を拡散させ、追跡を始めた。
次々と飛んでくる弾を華麗なステップで、時には跳躍してかわしながら距離を取るムゲン。その背中ではじまりの猟兵はライフルを構え発砲するものの、揺れる馬上では狙いが定まらない。
「その構え……とても可憐だ。願うのならば、他の戦場でもその姿を見たかった……」
「は、はあ……」
前を見ずこちらに見とれているムゲンに対して、唖然とした様子のはじまりの猟兵。だがすぐにムゲンは詠唱型アサルトライフルを取り出し、トリガーを引く。
闇のオーラで姿を消そうとした怪物が、アサルトライフルの弾幕に体勢を崩す。続けてムゲンは悪夢爆弾を放ち、怪物を後退させた。
「……ッ! いけるッ!!」
その瞬間、はじまりの猟兵は全ての神経をトリガーにかける指へ集中させた。
揺れる馬上に加え、怪物との距離はライフルの適性距離よりも離れている。チャンスとは思えない状況。だが……彼女のユーベルコードの特性を理解しているムゲンはその距離の維持に務める。
猫に追い詰められたネズミのごとき集中力。
そこから放たれた弾丸は、怪物の腕に命中させ……怪物は面の下で目を見開いた!
あえて不利な状況に追い込み、即死率を上げた彼女のユーベルコード『キューソネコカミ』は、怪物の息の根を止めたのだ。
「可愛いお嬢さんを背中に乗せられるなんて今日は良い日だ!」
上機嫌なムゲンに対して、はじまりの猟兵は意味がよくわからないように首を傾げたが、本人が楽しそうならそれでいいかと納得した。
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
「自分を倒せ」と言っていた相手と共闘する事になるとは思っていなかったが
それが必要になるような緊急事態、って事か
・闇の真の姿:ヒトの形をした刀。武器として刀を持っているが、それとは関係なく、全身どこに触れても切断する
俺は利剣を抜いて、真の姿を抑えにいく
あの闇が俺から生まれたものであれば、基本的な攻撃手段は刀による斬撃と斬撃波
遠距離への攻撃もできるとはいえ、一度距離を詰めてしまえばそう脅威にはならない
触れるだけで切れる身体は厄介だが、剣術は自分とほぼ同一なので、防御に専念すればどうにか防げる
「はじまりの猟兵」はライフルが主武装のようだし、遠距離からの射撃で崩してもらった所で一撃を叩き込む
ムゲンの闇の真の姿である怪物が放った悪夢クラスターの弾幕。それから逃れた他の六番目の猟兵たちは、それぞれ自分の闇の真の姿である怪物と対峙していた。
「『自分を倒せ』と言っていた相手と共闘する事になるとは思っていなかったが、それが必要になるような緊急事態、って事か」
そのひとり……|夜刀神《やとがみ》・|鏡介《きょうすけ》(道を探す者・f28122)は、後ろからはじまりの猟兵が走ってくる気配を感じながらも振り返ることなく呟く。
この事態を引き起こした罪悪感からの焦りだろうか。ムゲンとの共闘を終えたはじまりの猟兵は、怪物と対峙する鏡介の姿を見てひとりで駆けつけた。
「すみません……! 私が未熟なせいで……!!」
「気にするな。それよりも……」
お辞儀をして謝罪する彼女に対して、フォロー体質の鏡介はなだめつつも目の前にいる相手へ注意を促した。
その先にいるのは、鏡介によく似た人影。その体は刃で出来ており、風に吹かれた雪でさえもその髪を通過した瞬間、ふたつに分かれて落ちていく。まさに……人の形をした刀、であった。
「あの闇が俺から生まれたものであれば、基本的な攻撃手段は刀による斬撃と斬撃波……」
自身の闇の真の姿をした怪物から目をそらさないまま、鏡介は『清祓』と呼ばれる利剣を抜く。
「遠距離への攻撃もできるとはいえ、一度距離を詰めてしまえばそう脅威にはならない……俺が抑えるから遠距離から崩せ!」
「ッ! わかりました!」
はじまりの猟兵へ指示をすると、鏡介は清祓を構えたまま地を蹴り距離を詰める。それに対して怪物は鞘に込められた封印を解き、鞘を引き抜くッ!!
範囲内の指定した相手すべてを攻撃するユーベルコード『|漆《シチ》の|秘剣《ヒケン》【|蒼鷹閃《ソウヨウセン》】』。そこから放たれる斬撃波を、はじまりの猟兵は横に転がり回避し、鏡介は清祓ではじき怪物の懐に潜り込み……清祓で怪物の持つ刀をはじき飛ばした!
それでも怪物は刃で出来た体を動かす。手刀、回し蹴り……人型の刀であるその体で淀みなく斬撃を繰り出していく。
だがその体術は剣術の体捌きを応用したもの。防御に専念することで自分と同じ剣術を受け止めていく……!!
そこへ放たれた、はじまりの猟兵の弾丸は……手刀の峰に命中! さらにユーベルコード『ストライク・イェーガー』によって次々と弾丸を放ち、怪物の体勢を崩す!!
「跳ねて、重ねて堕とす――」
それを見逃すことなく、鏡介は姿勢を低くして構えを取り……!!
「――|壱《イチ》の|型《カタ》【|飛燕《ヒエン》:|重《カサネ》】」
下段からの切り上げ、そして返す刀で切り落とす。
その清祓を鞘に収めるとともに、人の形をした刀が折れ、その欠片は雪の上に落ちていった。
「お……おみごとです……!!」
華麗なる剣術に、はじまりの猟兵は思わず拍手喝采を送る。そしてすぐに、別の六番目の猟兵を援護しに走り始めた。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
【真の姿】
真の姿全身ベースに二対の黒翼に赤と黒の目
赤薔薇の足枷に幼い容姿
真の姿自体澪は見覚えが無く、無意識に恐怖する対象
(忘れた記憶を真の姿が知っているため認識したくない)
UC:永刻華牢
【プレ】
覚えの無い姿
なのに心が騒めくのはなんでだろう
でも、本物じゃないなら
僕が使う技なら属性はある程度絞れる
オーラ防御で身を守りつつ浄化と祝福発動
鳥の形をした破魔の炎で放たれた花弁や蔦を燃やしつつ
闇であれば破魔は効く筈だから追い込みたい
僕は対銃器はオーラで身を守るか逃げ続けるしか出来ないし
そのオーラもいつかは壊れるもの
だから六番目の猟兵さんにも集中攻撃をお願いして
防御が崩れたところでUCの合わせ技を叩き込みたい
(覚えの無い姿……なのに、心が騒めくのはなんでだろう)
雪の上に置かれた天竺葵の檻を前に、|栗花落《つゆり》・|澪《れい》(泡沫の花・f03165)は動揺して立ち尽くしていた。
その天竺葵の中にいるのは……自分と同じ顔をした、二対の黒翼を生やした赤と黒の目の幼いオラトリオ。赤薔薇の足枷に繋ぎ止められてもなお小さく微笑んでいる。
それは、その身に秘める真の姿が持つ奴隷時代の記憶を元にした、澪の闇の真の姿。だが、元の真の姿すら認識を拒む澪は、無意識から恐怖という感情を這い上がらせるだけだった。
「お待たせしました……ッ!!」
その横からやって来たはじまりの猟兵だったが、目の前のそれ……澪の闇の真の姿をした怪物に、目を奪われてしまう。
直後、怪物は檻の中から蔦と花弁を放つ。天竺葵の檻に囚われる代償を払い放つユーベルコード『永刻華牢』。放たれたその花弁は甘い香りで誘惑し、蔦て対象を捕縛するのだ。
(!! ……でも、本物じゃないなら)
はじまりの猟兵の言葉通りなら、相手はあくまで真の姿を歪めた姿をした偽物と捉えることができる。
覚悟を決めた澪は、はじまりの猟兵の前に立ちオーラで蔦と花弁を防いだ。
「鳥たちよ、どうかボクたちを導いてあげて」
その言葉とともに、あらゆる種の鳥が澪の手から放たれる。彼のユーベルコード『|浄化と祝福《ピュリフィカシオン・エト・ベネディクション》』で現われたその鳥たちの正体は飛翔する破魔の炎。その炎は蔦と花弁を燃やすだけでなく、込められた破魔の力が怪物をむしばみ、うめき声を上げさせる!
「僕は対銃器はオーラで身を守るか逃げ続けるしか出来ないし、そのオーラもいつかは壊れるもの……だからはじまりの猟兵さん、頼んでもいいかな?」
「……ええ、もちろんです!」
オーラを貼る澪の後ろから、はじまりの猟兵は怪物に狙いを済ませ銃撃を加えていく。古くから猟兵として戦ってきた彼女は、苦しむ相手であろうとそれが世界の障害であれば躊躇なく引き金を引くことができたのだ。
澪の言葉通り、度重なる銃撃によって怪物を包むのオーラにヒビが入り、ついに粉々に砕け散った。
その瞬間、蔦に燃え移っていた炎が檻まで伸びて、怪物を包み込んだ!!
炎を放った澪ですら想像しなかった事態だが、檻の中は苦しみながらも暴れることはせず、ユーベルコードの代償によってその場から動くことができない状況の中、ただその場で座り込むだけだった。
自由になることすら、諦め手放してしまった怪物。ならばせめて、この手で解放してあげよう。
はじまりの猟兵は同情の気持ちを込め、澪は内に秘めた真の姿の意思に無意識ながらも従い、互いに構えを取る。
ライフルが放つ弾丸と、澪の手から飛び出した炎の鳥。
彼らは共に空をかけ、怪物を打ち抜く。
怪物は塵になりながらも解放され、炎とともに空高く舞い上がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡介、澪たち六番目の猟兵と共に怪物たちを打ち払っていたはじまりの猟兵。
「……ッ!!」
だがその怪物は、はじまりの猟兵のエネルギー源である闇から生まれたもの。それらが消滅する影響が現われ始め、彼女はその場でうずくまってしまった。
「……これで……これでいいのです……それよりも……!」
今は……六番目の猟兵たちの戦いを、見てみたい。
自分が消滅した後、代わりにこの世界を守ってくれる六番目の猟兵たち。彼らは自分の時代よりもはるかに強く、それ以上に想像のつかない戦い方を見せてくれる。
もっと、見てみたい。
終曲を迎え骸の海へと帰るまで、目に焼き付けて起きたい。
その胸に寂しさや後悔はなく、むしろ残りの時間に見られる光景への期待で満ちあふれていく。
はじまりの猟兵は立ち上がり、次の六番目の猟兵の元へ駆け出して行った。
エミリィ・ジゼル
闇「我々は闇かじできないさんズ。闇パワー的なものでこの世のシリアスを消し去ることを目論む集団である」
闇かじできないさんズめ…なんて邪悪な計画を企てているんだ
このままでは既に瀕死のシリアスが完全に死んでしまう
そうなる前に、なんとかして防ぎましょう!
はじまりの猟兵ことはじまりちゃんと共闘
相手は多勢ですので我々もパワーアップが必要です
UCにてはじまりちゃんにサメぐるみを布教
サメぐるみパワーを得たはじまりちゃんに、早業クイックドロウで瞬間装填してもらいながら対象全員を攻撃できるストライク・イェーガーで闇かじできないさんズを一掃してもらいます
頑張れ、はじまりちゃん!
あ、そのサメぐるみは差し上げますね
「こ、この数は!?」
その闇から生まれた怪物は今までとは違い、複数人で行動していた。
メイド姿の怪物たちを前に、思わず足を止めるはじまりの猟兵。
「我々は闇かじできないさんズ……闇パワー的なものでこの世のシリアスを消し去ることを目論む集団である」
「……し、しりあす?」
怪物たちが呟く言葉に首を傾げていると、|側《・》|に《・》|い《・》|た《・》エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)が決意を込めて握り拳を作った。
「闇かじできないさんズめ……なんて邪悪な計画を企てているんだ」
「ひゃあああ!!?」
いつの間にか側にいたエミリィの声に、はじまりの猟兵は獣耳の毛を逆立てる。本人が神出鬼没である上に脈略もなく分身やサメ召喚を行う時点で『シリアス』という概念は死んでいる気もするが、少なくともエミリィはやる気のようだ。
「このままでは既に瀕死のシリアスが完全に死んでしまう……そうなる前に、なんとかして防ぎましょう!」
「よ、よくわからないですけど……その通りです!」
エミリィの呼びかけに、はじまりの猟兵は戸惑いながらもうなずく。その直後、エミリィの闇の真の姿……闇かじできないさんズが一斉に武器を持ち出し、襲いかかってくる!!
チェンソー! エクスカリバール! どさくさに紛れて爆弾設置!
ユーベルコード『増える!囲む!ボコる!|DX《デラックス》かじできないさんズ』によってそれぞれの武器で攻撃してくる闇かじできないさんズ。それを2人は次々とかわし、時々爆弾設置をはじまりの猟兵が射撃で妨害していく。
囲まれながらも互いに背中合わせになる2人。エミリィはいつもより真剣な表情ではじまりの猟兵に語りかける。
「相手は多勢ですので我々もパワーアップが必要です」
「そのパワーアップとは……!?」
はじまりの猟兵からの期待を背に、エミリィは何かを取り出した……!
それは、『サメぐるみ』ッ!!
「ナンデッ!!?」
思わずツッコミを入れたはじまりの猟兵だったが、エミリィは真顔で語りはじめた。
サメぐるみの愛らしさ、サメぐるみの勇ましさ、サメぐるみの素晴らしさ、サメぐるみを信じる心……!
「……もふもふ、かわいい」
演説を聴いてすっかりサメぐるみの虜になってしまったはじまりの猟兵は、自らサメぐるみを纏うことを受け入れた。
エミリィのユーベルコード『サメぐるみを布教するメイドの術』によってサメぐるみを着たはじまりの猟兵は……六番目の猟兵たちに匹敵しうる力を手に入れた!
「頑張れ、はじまりちゃん!」
「……参りますッ!!」
一斉に群がってきた闇かじできないさんズを跳躍でかわし、空中で早業とも呼べる装填を行う。
複数の敵が一箇所に集まっているこの状況こそ、ユーベルコード『ストライク・イェーガー』の独壇場。はじまりの猟兵はサメぐるみの力を借りつつ、手にしたライフルで弾丸の雨を降らした……!!
「「「「ぐえー」」」」
蜂の巣となった闇かじできないさんズを背に着地するはじまりの猟兵に対して、エミリィは拍手でたたえる。
「あ、そのサメぐるみは差し上げますね」
「本当ですか!? わぁい。もふもふ」
サメぐるみの中にいる感覚を味わい、すっかりご満悦のはじまりの猟兵であった。
成功
🔵🔵🔴
小烏・安芸
やれやれ、また面倒なんが出てきたな。うちの模倣……いや、変に歪めたせいで呪いが酷くなっとるな。呪詛が具現化した烏の羽根、溢れてあちこち身体を破っとるやん。
しっかし……正直言って弱い、か。それを認めつつアレに立ち向かえるんは大したもんや。ウチでもドン引きやであんなん。
せやけど……だからこそ、その意思に「私」も真銘と命を賭けて応えよう!
私の器物、小烏丸をはじまりの猟兵に預ける。アレが歪んだ私の写し身だというのなら呪詛を主体にした戦法を取ってくるはず。
刃としては頼りないが元々は厄災断ちの御守り刀、呪いには滅法強いから役には立つだろう。壊すなよ?
オブリビオンに自分の器物を預けるなんてのは博打も良いところだが、遣い手がいてこそ真価を発揮するのが私なのでな。ましてや相手が御守り刀を必要とするか弱い存在ならなおさらだ。
咎刻の顎とガントレット型に変形させたラスティ・ピースで相手の攻撃を捌きつつ呪詛耐性と破魔を生かして抑え込む。
動きさえ封じればはじまりの猟兵はその隙を見逃すまい。トドメは任せた!
「やれやれ、また面倒なんが出てきたな」
咎刻の顎と呼ばれる鉈を構え、|小烏《こがらす》・|安芸《あき》(迷子の迷子のくろいとり・f03050)はこちらに向かってくる怪物を見てため息をついた。
その怪物の姿は短刀を構える人型の安芸。だが安芸の真の姿を歪めた結果持っている呪いが強まり、呪詛が具現化して生まれた烏の羽根がその体を覆っていたのだ。
その向こう側からはじまりの猟兵が走ってきて、ライフルによる不意打ち狙撃を試みる。瞬時に反応して横へ回避した怪物を目で追いつつ、向こう側に安芸がいることも認知しているのか声をかけてきた。
「すみません、お待たせしました!」
直後、接近してきた怪物の一太刀を紙一重でかわす。格好は滑稽ながらも、エミリィから譲り受けたサメぐるみを身に纏っていることで純粋な技量勝負でも遅れを取らないようになっていた。
だが……六番目の猟兵のユーベルコードは、その技量をもひっくり返す能力を持っている。
「ッ!!」
はじまりの猟兵、そして安芸の周りに現われた、100を超える数の短刀。ユーベルコード『錬成カミヤドリ』で現われたその複製に、怪物は自らの呪詛で追尾能力を乗せる!
次々と襲いかかる刃に、はじまりの猟兵は避けることで手一杯。それでも逃げ出すことなく、逆転の方法を廻らせていた。
「しっかし……正直言って弱い、か」
一方、咎刻の顎を振るい複製の刃をはじき落としていた安芸は、はじまりの猟兵が言っていた言葉を思い出す。
――言っておきますが、わたしは最も古き者……正直言って、弱いですよ!
「それを認めつつアレに立ち向かえるんは大したもんや。ウチでもドン引きやであんなん」
せやけど……と、その頬角を上げる。
持ち主を不幸にする曰く付きの品である短刀『小烏丸』。そのヤドリガミである安芸は人付き合いが苦手で警戒心も強い。だが彼女が猟兵として戦う選択を選んだ理由は……誰かに必要とされたいという本質からであった。
取り出したのは……彼女の核となる、小烏丸。
「だからこそ、その意思に『私』も真銘と命を賭けて応えよう!」
周囲の刃を咎刻の顎で打ち落とし、小烏丸をはじまりの猟兵の元へと投げる!!
「わッ!?」
はじまりの猟兵は慌ててそれを受け取ると、素早く鞘を引き抜き襲い来る複製の刃へ向けて振り払う! 瞬間、複製の刃に一筋の線が走り、折れて柄とともに雪の上へと落ちた。
「す……すごい切れ味……!!」
「刃としては頼りないが元々は厄災断ちの御守り刀、呪いには滅法強いから役には立つだろう」
側に駆け寄る安芸の口調からは、明るく振る舞うためにあえて使っていた似非関西弁が抜けていた。まるでその必要がないほど、気持ちを許しているかのように。
「……壊すなよ?」
「……!!!」
最後の言葉で獣耳の毛を逆立てるはじまりの猟兵だったが、怪物がその手を上へと上げ始めたのを見て小烏丸を構える。
「くるぞ!」
「ッ!」
怪物が再び複製の刃を飛ばしてきたのと同時に、走り出す2人。
「銘を奉じ、刃を委ね、災を断つ――」
安芸は所持していたラスティ・ピースと呼ばれるスクラップをガントレットの形に変形させ装着、そのガントレットと咎刻の顎を振るい複製の刃を破壊、道を切り開いていく!
「これが『私』の、本当の使い方だ!」
そして怪物の目の前でその両腕を掴み、後ろへ回り拘束する形で押さえ込む! 怪物はその身から呪詛を送り込もうとするものの、それは安芸に届くことはない。
安芸のユーベルコード『|真銘解放・厄災断ち《マコトノメイハワザワイヲタツタメニ》』。自身の器物を他者の手に委ねていることによって真価を発揮するそれによっで大きく強化された破魔の力と呪詛耐性が、怪物の呪詛を拒んでいるからだ!
「トドメは任せた!」
「はいッ!」
走ってきたはじまりの猟兵がユーベルコード『プログラムド・ジェノサイド』を発動し、予め脳にプログラムしていた連続攻撃を再生する。小烏丸による斬撃に足技を使った体術を混ぜ、閃光とも例えるべき超高速連続攻撃を与えていく……!
回避されても中止が出来ないという弱点を持つそのユーベルコードだが、安芸が抑えているおかげで心配する必要は皆無だ。
怪物の手から、小烏丸に似た短刀が細切れになって落ちていく。
それとともに羽を散らして、安芸の闇の真の姿をした怪物も消滅した。
「これって、あなたの核となるものですよね? どうして私に……オブリビオンなんかに?」
小烏丸を鞘に納めて安芸に返しながら、はじまりの猟兵はたずねる。
「たしかに、オブリビオンに自分の器物を預けるなんてのは博打も良いところだが、遣い手がいてこそ真価を発揮するのが私なのでな。ましてや相手が御守り刀を必要とするか弱い存在ならなおさらだ」
「なるほど……やはり六番目の猟兵は強いのですね。私とは違って」
自身の弱さを自嘲しているような言葉だが、安芸が失望することはなかった。
弱さを認めていてもなお、守り抜こうとする意思の強さ。そして六番目の猟兵として自分を頼ってくれることこそが安芸にとって大きな助けになることを理解して戦ってくれた、はじまりの猟兵。
自分の目に狂いはなかったことに満足しつつ、安芸は小烏丸を受け取った。
成功
🔵🔵🔴
剣未・エト
●敵
漆黒に染まり仮面をつけて、左手に星の無い宇宙の空間そのもののような剣を持つ
●行動
「初めまして先輩。僕は剣未エト、ゴーストだ。そしてあれは…左手の広大兵器によって抗体ゴーストとなった僕」
彼女には簡単に説明を、僕たちの世界では生命は異物で、排除するためにゴーストが存在した。今は人魔共存を掲げ共に在る道を模索し、遂には生命のように親から生まれる僕らのような存在もいる
それでも、ゴーストの本質が|異物《生命》を根絶せんとする|抗体《安定ボディ》ではあるんだろう
「けれど、僕は受け入れない。助けてくれた人のように牙無き者を守る剣とならんと欲する。貴方が獣人の|m'aider《助けを求める声》を聞いて現れたように」
一緒に戦ってください、とUC発動。彼女にはPのUCを要請。ダメージを受けて解除させられても僕の歌で回復し再行動できます
僕も詠唱銀を剣に変えて、接近して切り結びながら彼女の的に成りやすい位置に誘導します
「その|抗体《本能》すら、いつか守るための牙にしてみせる。だから今は、眠れ!」
安芸と別れた後も、他の猟兵の援護に走るはじまりの猟兵。その内心では、この戦いの決着まで近いことを実感していた。
彼女のエネルギー源である闇の数が少なくなり、少しでも気を緩めると立てなくなりそうな体力。それでも奮い立たせて、目の前に現われた最後の1体の前にたどり着く。
左手に星明かりのない宇宙のような黒い剣を持つのは、漆黒に染まった仮面の騎士。あの怪物を倒せば、戦いは終わる。はじまりの猟兵はライフルを構えた。
「これでさい……ッ!?」
だがその瞬間、辺りの景色は一変する。はじまりの森にいたはずの彼女は、地下水路の中に立っていた。戸惑うはじまりの猟兵を見て、怪物は背を向け曲がり角へと姿を消す。
怪物が発動したユーベルコード『|怪人迷宮《ラビラントファントム》』だ。
「! 待ってッ!」
この地下水路は広大で複雑な地下水路。少しでも速度を落としてしまえば怪物を見失ってしまうだろう。すぐさま追跡を開始するはじまりの猟兵だったが、迷い無く突き進む怪物にはなかなか追いつけない。
「……ぁ」
そして、その体もついに限界を迎える。長時間走ったことで体力を使い果たしたはじまりの猟兵は、ライフルを落としてその場にうずくまった。
それを見計らったように怪物は足を止め、振り返ってはじまりの猟兵に近づいてくる。本能のまま、目の前にある生命を断つために。
そんな怪物の前に、剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は立ちふさがった。
同じようにこの怪人迷宮へと巻き込まれた彼女は、走り出したはじまりの猟兵の後ろを追いかけていたのだ!
突然現われたエトに、怪物は警戒して足を止める。
「初めまして先輩。僕は剣未エト、ゴーストだ。そしてあれは……左手の広大兵器によって抗体ゴーストとなった僕」
怪物から目をそらさないまま、エトは手短に説明を始めた。
エトの故郷である世界では生命は異物で、排除するためにゴーストが存在した。今では地縛霊を父に持つ彼女が存在するように人魔共存を掲げ共に在る道を模索しているが、ゴーストの本質が|異物《生命》を根絶せんとする|抗体安定《ボディ》であることには変わりない。目の前の怪物は、その本質に負けたエト自身の姿なのだろうか。
「けれど、僕は受け入れない。助けてくれた人のように牙無き者を守る剣とならんと欲する。貴方が獣人の|m'aider《助けを求める声》を聞いて現れたように」
「……!!」
エトの言葉に、はじまりの猟兵は薄れかけていた意識を取り戻す。異世界から超大国が現われたあの時、聞こえてきた助けを求める声。それをきっかけに、助けを求める獣人のために戦ってきた。その誇りが……そして、それを六番目の猟兵へ繋げるという使命が、彼女を奮い立たせた。
攻撃してこないエトたちの様子を見て、怪物がこちらに向かって走ってくる……!
「一緒に戦ってください」
「……はい!」
はじまりの猟兵が答えた瞬間、エトはその体から鎖を放つ。
怪物の横を通り抜け地面へと突き刺さったその鎖たちは、2人の猟兵と怪物の周辺を囲うひとつの特種結界を作り出す!
「其れは銀の雨降る時代。死と隣り合わせの青春を駆け抜けた勇猛無比なる生命使い達が放つ、無限の輝き、生命の賛歌!」
その口から紡がれるのは、ユーベルコード――|独唱曲《アリア》『|生命賛歌(偽)《セイメイサンカ》』。
模倣された劣化版ではあるが……ゴーストの本質にあらがう意思、そして自身を救ってくれた『金色の剣士』への憧れの思いから生まれる、本物へ迫る効力を乗せて歌う!
鎖を避けた怪物が、ユーベルコードを妨害するために鎖へ剣を振り下ろすが……それを1発の銃弾が、止めた。
先ほどまでうずくまっていたはじまりの猟兵が……立っている! エトの奏でる生命賛歌によって、再行動を行うための力を取り戻したのだ!
「この範囲を対象に、ストライク・イェーガーを!」
「了解です!」
指示に従ってはじまりの猟兵はユーベルコード『ストライク・イェーガー』を発動、空間内にいる怪物へ自動的に照準が重なり、次々と銃弾の雨を浴びせてくる!
それを喰らいながらも接近し剣を振り下ろしてきた怪物に対して、はじまりの猟兵はライフルを構えて防ぐ。装備しているライフルを他の目的に使うと解除される『ストライク・イェーガー』の条件によって本来ならばユーベルコードの効果が切れるはずだが……ライフルは剣を抑えたままひとりでに銃口を向け、発砲する! 空間内に響くエトの生命賛歌が、その条件すら超えて再行動させたのだ!
それに続くようにエトは詠唱銀を剣へと変え接近、怪物に切り込む! 怪物も負けじと剣でそれを受け止める!
星明かりのない宇宙の刀身と澄み渡った空の刀身が、ぶつかり合う剣の音ともに重なり合う。エトは巧みに自身の立ち位置を操作し、怪物が背中を向けるように誘導していき……!
「これで……最後ッ!!」
はじまりの猟兵が放つ銃弾の雨を背中に受けて、怪物が膝をつく!
「その|抗体《本能》すら、いつか守るための牙にしてみせる。だから今は――」
エトはその剣を天高く掲げ……!!
「――眠れ!」
振り下ろされた光が、闇から生まれた最後の怪物を真っ二つに切断した。
怪物が消えたことで周りの下水道も元の雪景色へと戻り、一息つくエト。
だがその向こうに見えた景色に、目を見開いた。
ライフルを落とし座り込んだはじまりの猟兵の姿が、透け始めていたのだった。
「大丈夫ですよ。元々、消えるつもりでしたから」
戦場内に残っている六番目の猟兵たちの前で、はじまりの猟兵は薄れ行く体でサメぐるみのフードを下ろす。
「みなさん、本当にありがとうございました。そして、よくぞ自分の闇に打ち勝ってくれましたね……あ、あわわ! えらそうなこと言ってごめんなさい! 私が未熟なせいでこんなことになったのに……」
締まらない言葉になってしまったが、彼女らしさを感じられるその慌てように、かえって安心してしまいそうだ。
「本当に申し訳ありません……でも……」
1度まぶたを閉じて、この戦場での出来事を思い返す。そして、あっという間だったはずの時間を何年も過ごしてきた後のように、ふふっと笑う。
「みなさんと戦えて……本当に、よかった」
自分を信じるものを信じ続けた、水晶の光。
馬上で揺られながら聞いた、夢心地のように嬉しそうな声。
刃をも打ち砕かんとする意思を込めた、刀の軌跡。
縛られた者を開放するために共に飛ばした、銃弾と炎の鳥。
差し伸べられた手のように暖かい、サメぐるみの温もり。
自分の意思を認めてもらい頼ってくれた、短刀を握る感触。
迷路のように先の見えない中でもなお呼びかけてくれた、その言葉。
まぶたを閉じれば次々と浮かぶほど、骸の海へと沈んでも忘れることのない、この戦い。
はじまりの猟兵として戦ってきた現役のころの記憶にも負けない、大切な思い出を……少女は、忘れない。
空は既に日が落ちていて、だけど、星明かりが猟兵たちを包み込む。
この夜が明ければ……きっと、この獣人世界大戦も終戦を迎えるだろう。
第二次獣人世界大戦は食い止められたのか、逃げるギガンティックを討ち取れたのか、モリアーティと鴻鈞道人の企てを止めることができたのか……そして、少女の口から|彼ら《他の過去の猟兵》のことを聞けるほど戦ってこれたのか。それはこの第三前線が終わるまでわからない。
ただわかることは……大戦で傷ついたこの世界の復興が終わったこと。
そして、この戦いは六番目の猟兵たちの記憶に深く刻まれることだ。
「どんな結果になっても……みなさんならきっと乗り越えられますよ」
光に包まれ、ついにその姿が下から消滅しはじめた少女は、仮面の下で微笑んだ。
「壊れていく私と闇を紡ぐ協奏曲を、共に歌い上げたのですから……!」
その言葉とともに、少女の体は星空へと浮かび上がった。
――さようなら。六番目の猟兵たち。
――私の分まで、この獣人世界を……全ての世界の未来を、守ってください。
――そしてもう一度……ありがとう。
――楽しかったよ。
協奏曲の終曲は、少女のいなくなった森の中を雪が降り注ぐだけの、無音。
それでも……この曲が終わろうとも、また新たな歌が紡がれる。止まることなく降り続ける雪が、それを証明していた。
――闇は、壊れた姿で歌い続けた。
――少女は、壊れたその身で銃を構えた。
――猟兵は、壊れた己を見てもなお、これからも立ち向かっていくであろう。
これは、その身が壊れど歌う猟兵たちの……協奏曲。
成功
🔵🔵🔴