獣人世界大戦⑲〜病は遍く冒し殺戮する
●人狼病の根源
獣人戦線、ワルシャワ条約機構。
冥府の番犬として例えられそうな三首の人狼が暗き森の中に存在していた。
本来はこの獣人戦線の住人ではない、ダークセイヴァーの住人。ライトブリンガーによりこの地を統べる為に派遣されたかの存在は『始祖人狼』という。
三つの頭は全く同じように同じ言葉を発する。
唱和:故に吾々は排除する。
唱和:はじまりの猟兵を。それを求むる者共を。
唱和:疾く蔓延れ、吾が『人狼病』。
唱和:
五卿六眼照らす大地のあらゆるものを、吾が走狗と化してくれよう。
その唱和通りに始祖人狼はすべてを人狼へと変える。
たとえ猟兵であろうと、恐ろしき人狼病には苦痛に耐えるしかないのだ。
「こいつが……こいつが儂等の怨敵か!」
普段は老成し落ち着いた印象の老狼の猟師、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)はグリモアベースにて得た予知に酷く憤っていた。
泥濘のような憎悪、永い時で煮詰めたようなその感情をどうにか抑え込み、集まった猟兵たちを前に、彼が見た予知の説明を開始する。
「獣人世界大戦も第三戦線へと突入し、第二戦線に続き超大国の首魁が姿を見せておる。その中で今回駆じ……撃破して貰いたい存在がいる。その名は始祖人狼、ダークセイヴァーの
五卿六眼の一柱であり、ワルシャワ条約機構の大地を
五卿六眼で監視・支配しておる張本人じゃ」
かの存在はその名の通り人狼の祖、つまり人狼病の根源なのだとローは語る。
「その人狼病をこの始祖人狼は猟兵との戦いで使ってくる。病とは名ばかりで動植物どころか大気や水までも人狼化させる能力で、猟兵にすら平等に侵食し、生命を削られるような激しい苦痛と抗い難い凶暴化の発作を齎してくる。その上で始祖人狼は攻撃してくるのだから極めて厄介極まりない」
だが猟兵の場合、人狼病は無秩序に全身から狼の頭部を生やした真の姿へと変身させるのだとローは説明する。
「この状態だと猟兵は莫大な攻撃力を得るが、引き換えに苦痛と発作は耐え難い強烈なものとなる。その状態で攻撃できるのは恐らく一回きり、それ以上は心身が保たぬじゃろう。苦痛と狂気に耐えながら戦うか、変身して最大最強の一撃を始祖人狼に叩き込み離脱するか……いずれにせよ短期決戦になると儂は予想しておる。攻撃方法は三つ、巨大化した大剣の一撃での高威力無差別攻撃、戦場内に見えない『人狼病』感染の流れを作り出しその下流の者を凶暴なる衝動に捕らえて回避率が激減させる力、そして3つの頭部から詠唱時間に応じた範囲の人狼化の強制共鳴を放つ力、この三つとなる。厄介極まりないが、皆なら何とかできると信じておる」
ローが得た予知はそこまでだと説明を終え、転送の準備を開始する。
「猟兵の中にも人狼はいるが、大なり小なり人狼病に苦しめられたものも多いじゃろう。この始祖人狼を討ったとしても何も変わらぬかもしれぬし何か変わるかもしれぬ。……いずれにせよこの
五卿六眼を撃破できねば第二次獣人世界大戦が招かれてしまうから、それは避けねばならぬ。どうか、頼んだぞ」
そう老狼は話を締め括り、左手の鈴を鳴らす。
響く鈴の音と共に猟兵たちの視界は揺らぎ、やがて景色が安定した時には、
五卿六眼のいる忌まわしき人狼病の蔓延る暗き森へと転移していた。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
なんとデタラメな感染力。
このシナリオは獣人戦線のワルシャワ条約機構で『
五卿六眼『始祖人狼』』と戦うシナリオとなります。
ダークセイヴァーの真なる支配者の一柱にして全ての人狼の祖、つまり『人狼病』の根源であり動植物どころか大気や水まで『人狼化』させる能力を持つ始祖人狼は、猟兵も平等に侵食し、激しい苦痛と抗い難い凶暴化の発作を齎すようですが、同時に猟兵を『全身から無秩序に『狼の頭』が生えた真の姿』へと変身させ、莫大な攻撃力をも与えてくれるようですが、長時間この苦痛に在っては心身が保たないようです。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス:苦痛と狂気に耐えて戦う/「狼頭にまみれた真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
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それでは、ご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『始祖人狼』
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POW : 天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ : 唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…人狼の方は、思うところがあるだろうな
ダークセイヴァーに蔓延る人狼病の根源が、今目の前にいるんだから…
…まあ、五卿六眼『ライトブリンガー』の【Q】で送られたからここにいるんだろうけど
人狼病に抵抗するが、全身が引き裂かれそうに痛い
なのに、凶暴になる自分が抑えられない
…なら、あえて凶暴さを受け入れてやろうじゃないか
真の姿解放
全身狼頭に塗れていても、意識も視界も真っ赤に染まっていたら気にならない
血脈樹の脈動でさらに加速する凶暴なる衝動を敢えて受け入れ
ただ目の前の始祖人狼への憎悪と己が狂気に突き動かされるまま突進し
「2回攻撃、怪力」+指定UCの18連撃で一気に切り刻んでやる
サーシャ・エーレンベルク
始祖人狼……あなたが、この世界に闘争をもたらした者の一人ね。
……私たちを排除する理由、それなりのものがあるようだけど、あなた達が成してきた殺戮と蹂躙への免罪符にはならないのよ!
この苦痛、そして頭の中を駆け巡るような狂乱……確かに、長時間の戦闘は厳しそうね。
――けれど、私たち獣人が経験してきた苦悩と絶望に比べれば生ぬるいッ!
真の姿へ変身、ユーベルコードを発動し、刹那の内に始祖人狼に斬り込みましょう。
そこに躊躇いはない。大剣、爪牙、いくらでも反撃しなさい!
その攻撃、行動さえも強化された動体視力と反射神経で掻い潜って、この竜騎兵サーベルを叩き込む!
●病すら超越する強き意志
禍々しき血管樹の森へと転移した猟兵達に、三つの狼面をもち背に血管樹を生やした奇怪な始祖人狼は静かに対峙していた。
(「……人狼の方は、思うところがあるだろうな」)
黒剣を構える館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)はダークセイヴァー出身、これまでの人生で人狼に出会った事は当然ある。
あの故郷世界に蔓延る人狼病、その根源が今目の前にいて手の届く状況であるならば、苦しめられてきた人狼が平静でいられなくても不思議には感じない。
五卿六眼『ライトブリンガー』の【Q】『ワルシャワ条約機構に『始祖人狼』を派遣』により渡ってきたと思われるかの始祖人狼からは、他のダークセイヴァーの真の支配者達と同等以上の威圧感が感じられる。
そして、
「始祖人狼……あなたが、この世界に闘争をもたらした者の一人ね」
白きオオカミであるサーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は竜騎兵サーベル『ヴァイス・シュヴェルト』を構え眼前の異形の人狼を見据える。
彼女はダークセイヴァーの憎しみでなく、この獣人戦線に生きる者としての怒りを胸に抱いていた。
「……私たちを排除する理由、それなりのものがあるようだけど、あなた達が成してきた殺戮と蹂躙への免罪符にはならないのよ!」
この世界に戦禍を齎した忌まわしき人狼、それを滅ぼす為に彼女は刃を振るう。
『唱和:吾々はお前達を排除しよう』
始祖人狼がシンプルに告げると戦場に人狼病がまき散らされる。同時に発生した人狼病感染の不可視の流れ、人狼病は二人を容易く呑み込み、苦痛と凶暴化の衝動を呼び起こす。
身体を引き裂かれるような苦痛、そして視界が真っ赤に染まるような頭の中を駆け巡る狂乱の感情、
(「確かに、長時間の戦闘は厳しそうね」)
発狂しそうな苦痛と感情の嵐の中、サーシャの理性は冷静にそう予測していた。
その苦痛は敬輔にも当然襲い掛かっている。全身が引き裂かれそうな苦痛、正気を維持するように抗うけれども凶暴になっていく自分が抑えられない。
(「……なら、あえて凶暴さを受け入れてやろうじゃないか」)
抗い長く戦うよりも、ほんの一瞬に全てをかける。その意志は二人で一致していた。
「――けれど、私たち獣人が経験してきた苦悩と絶望に比べれば生ぬるいッ!」
己を奮い立たせるようにサーシャが叫べば、ダイヤモンドダストのように煌めく白銀の結晶が彼女の周囲に出現――真の姿を解放したサーシャの体から無秩序に狼の頭部が生え咆哮する。
そして敬輔も黒き鎧を全身に纏った真の姿を解放する。全身の板金の継ぎ目から無理やり顔を出そうとする無秩序な狼頭すらも、真っ赤になった意識と視界では気にならない。
「本番はここからよ!」
激痛と沸き起こる凶暴性は一層悪化しているが、サーシャは躊躇わずにユーベルコード【月よ、月よ!】を起動して、月の魔力を纏いて全力疾走を開始する。
秒速4キロ、相対する始祖人狼との距離もあり交錯はほんの一瞬、それでも即座に対応し大剣を構え振るってくるのは
五卿六眼の練度故か。
人狼病感染の上流は感染源であるこの始祖人狼、つまり流れにある限り凶暴なる衝動から逃れる事は叶わず、猟兵達の回避率は激減してしまう上に今の疾走するサーシャは速度と火力の代償に受けるダメージが跳ね上がってしまっている。
まともに受ければ致命傷は免れないだろう。だが、サーシャの動きに躊躇いはない。大剣だろうと爪牙だろうといくらでもやってくるがいいと敵の動きを注視する。
月の魔力により超強化された動体視力と反射神経、白狼の金の瞳は鋭く振るわれた始祖人狼の大剣の軌跡を見切り躱す事に成功した。
携えた標としての名を持つサーベルを最短の距離で人狼の胴を斬り裂き鮮血を溢れ出させれば、そこに敬輔が右の青瞳を輝かせ遅れて突進してきた。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて……貴様を斬り刻む!!」
ユーベルコード【憎悪と闘争のダンス・マカブル】を起動した彼の刃は味方を斬る刃に非ず、敵を傷つけ己をも傷つけてしまう憎悪の刃。
オオカミに続き狼頭に塗れた黒騎士の黒剣が超高速で切り刻む。加速する凶暴なる衝動を力に変えるかのように、狂気の如き始祖人狼への憎悪に突き動かされるままに振るう。
爪や牙を突き立てられ鎧が砕かれようと黒騎士の刃は止まらない。鎧と頑強な肉体を斬り裂く怪力による斬撃は十八連、全てをまともに受けた始祖人狼の巨体が揺らいだ。
だが、止むことのない苦痛と際限なく膨れ上がる凶暴性により二人の意識も既に限界に近づいていた。
始祖人狼はふらつきこそすれどまだ倒れる事はなさそうだ。鮮やかな初撃を叩き込んだ二人は続く戦いを後続の猟兵に託し、始祖人狼から離れ林立する血管樹の向こうへと離脱したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
七那原・望
五卿六眼。お前もあの下衆共の一味ですか。ダークセイヴァーだけでなくこの世界にまで……!
第六感、心眼、気配感知で敵の行動を見切りつつ強化属性の全力魔法で自身の身体能力とスピードを限界突破。
激痛への耐性はあるので短時間なら戦闘能力に支障はないと思いますけど、狂気への耐性には乏しいのできっと長くは耐えられない。とにかく短期決戦を。
敵のユーベルコードが発動する前に、最悪発動されたら範囲が最小の内に範囲に入らないように気をつけ、最速で素早く接近し、変身と共にフィーネで早業のセカイへの報復を。
おまえがくるしめたぶんトおなジダけクルシミナガラシネ!
これで限界。私達が私達でなくなる前に撤退を。
●理不尽な支配者に応報を
二人の猟兵が最速で切り込みダメージを刻み込んだのに続き、オラトリオの少女、七那原・望(比翼の果実・f04836)が仕掛けていく。
「五卿六眼。お前もあの下衆共の一味ですか。ダークセイヴァーだけでなくこの世界にまで……!」
故郷であるダークセイヴァー、その真の支配者であり人々に長らく筆舌に尽くし難い苦痛を強いてきた存在の一人に対し、普段からは想像もできない怒りを見せる望。
『唱和:目的を達する為に排除を』
しかしその怒りは始祖人狼はまるで構うことはない。憎悪や怒りなどこの人狼病の元凶にとっては些事に過ぎないとでもいうのだろうか。
まだ離れた位置の望に対し大剣を薙ぎ払い斬撃波を放つ始祖人狼、望はそれを全身の感覚で軌道を見切りつつ、ありったけの強化の魔法による限界以上の機動でそれを回避する。
既に彼女の体には苦痛が、そして精神には凶暴性が噴火する火山の溶岩のように湧き出してきている。激痛はまだいい、耐性があるから支障はない。
しかし凶暴性ーー狂気にはきっと耐えられないだろう。短時間で攻撃を叩き込む、それが今回の望の戦法。
その時三つの禍々しき狼の頭部が大きく息を吸った。それに続く音の響きは周囲にあっという間に広がり、人狼化の速度を加速させ、苦痛と凶暴性を一層掻き立ててくる恐ろしい音。
それが発動する前に仕掛ける、発動する前に被弾覚悟で一気に始祖人狼へと飛び込み距離を詰めた望は真の姿を曝け出した。
無数の黄金のリンゴを浮かべ純白の細い大鎌『罪華・フィーネ』を手にした金の瞳の天使ーーそれに加え無秩序に狼の頭部をあちこちに生やした異形となっているが、それを気にする余裕も時間もない。
ただ最速、最短でユーベルコード【セカイへの報復】を起動して光の斬撃を頑強な始祖人狼の体に叩き込む。紅きアネモネ咲き誇る大鎌の一閃を受けた始祖人狼の動きは体感時間の極端な引き伸ばしにより鈍り、そして予め早業で仕掛けた疑似世界がそれを合図に神罰の雷を降らせた。
「これがお前の造りあげた世界の在り方。お前というセカイの支配域。今度はお前を甚振る残酷なせかい。まだ嗤える物なら、嗤ってみなさい!」
これまで始祖人狼が多くの人達に強いてきた理不尽を自分自身で体感させる疑似世界の力、更に苦しめた数だけ降り注ぐ神罰の雷に、さしもの始祖人狼も毛並みや肉を焦がされながら苦悶の声を漏らす。
「おまえがくるしめたぶんトおなジダけクルシミナガラシネ!」
因果応報の極致、これまで他者に振る舞ってきた理不尽な苦しみ全てに断罪されるという望の力はこの戦場特有の強化もあって凄まじい威力を断罪されるべき存在に叩き込んだ。
しかし、始祖人狼はまだ倒れない。全身を雷に灼かれながらなお高く吠えて人狼化の強制共鳴を行おうとしていた。
ーーここが潮時。
(「これで限界。私達が私達でなくなる前に」)
撤退を、即座に判断を下した望は全力の強化魔法での身体能力で一気に離脱、始祖人狼の咆哮が影響する範囲から間一髪逃れ、撤退することに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ノキ・エスプレッソ
この戦争で…いろんなことがあった…
本田が放つ影朧の声を聞いて…はじまりの猟兵とともに、闇の真の姿を見た…
だから、もう止まらないよ! どんな苦痛や狂気がこようとも!!
バイクを走らせ、その大剣を跳躍でかわす…
! バイクからあふれた塗料がボクの体に…
わぁ…!
色とりどりの電流をまとい、髪は虹色へ。
手足からあふれるのは骸の海…だけど空気に触れて色鮮やかに輝いている!
これがボクの…真の姿!
狼頭の毛並みの色も、悪くない!
大剣の刃の上に着地し、さらにバイクを走らせUC発動、狼頭に変異した右手に
赤色の骸の海を纏わせる!
それをバイクのスピードに乗せ、その頭に叩き込む!!
ああ、やっぱり…素敵な色だよ!!
●人狼の色彩と機械の色彩
最後の審判のような応報の落雷の嵐が止んで、オラトリオの少女が離脱するタイミングで鮮やかな色彩のバイクを走らせ始祖人狼へと突進するレプリカントが一人。
(「この戦争で……いろんなことがあった……」)
彼女、ノキ・エスプレッソ(色を求めて走るレプリカント・f41050)はこの一月の獣人世界大戦で多くの戦いを経てこの場にやってきていた。
黯党の首魁が放つ影朧の声を聞き、はじまりの猟兵と共闘して己の闇の真の姿と対峙し、機械化義体と渾沌を操るコンキスタドールとも戦ってきた。
これまで苦難を乗り越えてきた。ならば、
「だから、もう止まらないよ! どんな苦痛や狂気がこようとも!!」
恐ろしき始祖人狼が巨大化させた大剣を振るい周囲を無差別に攻撃する。喰らえば死すらも見えるだろう一撃をノキは巧みにバイクを操り跳躍して回避する。
その時バイクから溢れ出した塗料が彼女の白コート、そして全身へとかかりノキは一瞬驚いてしまう。
が、
「わぁ……!」
次に発したのは驚愕ではなく感嘆の声。機械的な彼女のボディの表面に色とりどりの電流が弾け、白髪は虹色へと変化していく。
全身に生える狼頭達はこの場限りのちょっとばかり余計だけれども色も悪くはなく、そして手足から溢れ出す骸の海は空気に触れて色鮮やかに輝きまるで塗料のようでーー戦いを潜り抜けてきた彼女の真の姿。
苦痛と凶暴性が一層強く湧き上がってくるが、ノキのバイク操縦に淀みはなく、マフラーより塗料を噴射した反動で始祖人狼が振り切った大剣へとタイヤを着地させ、大剣の腹を足場に一気に加速。
「魂を持たないボクの感情は、色で紡がれる」
ユーベルコード【感情のRGB】を起動して狼頭へと変異した右手から熱意を込めた赤く輝く骸の海を溢れさせ纏わせる。
攻撃は一瞬、バイクのスピードに乗せた赤の一撃は高められた攻撃力で始祖人狼の頭の一つを殴り抜いた。
直後、始祖人狼が大剣を振ってバイクを払い落とす。返す刀でノキを斬りつけようとして、その前にレプリカントはアクセル全開で刃の範囲から離脱。
「ああ、やっぱり……素敵な色だよ!!」
人狼病の苦痛と凶暴性がますます増していく中、呟いたノキの声はどこか楽しそうですらあった。
成功
🔵🔵🔴
クドウ・ジャックドウ
「狼頭にまみれた真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
というわけで、今回の真の姿は血と狼頭に塗れた赤毛の二足歩行の人狼です。
技能は[学習力][捨て身の一撃][呪詛]を使います。
先日、バイカル湖畔で恐ろしい術を目にする機会がありまして、血液でできた魔狼が赤く染まった湖から溢れ出すというものなのですが、今回はそいつを真似します。
防具と武器をダメにしつつ敵の広範囲に渡る無差別攻撃を死なない程度に耐え抜いた後、全身からの出血に【雨術】の水、呪いを混ぜ、血液の魔狼を生み出して反撃します。
この争いの犠牲となった獣人、数多の世界の人狼病患者の苦しみ、その報いを始祖人狼に受けさせたい所存です。
御命頂戴。
●血の魔狼は恨みを晴らす
大剣を振るう始祖人狼に、血と狼頭に塗れた赤毛の人狼が襲いかかる。
真の姿を曝け出したクドウ・ジャックドウ(元暗殺者・f25776)の全身には始祖人狼の力の影響で全身に狼頭を生やしている。先に切り込んだバイクのレプリカントとの応酬を見て記憶した始祖人狼の太刀筋を参考に、巨大化した刃を躱すクドウの頭に過るのは先日の鮮血のバイカル湖畔での恐ろしい術だった。
血液で出来た魔狼が真っ赤に染まった鮮血の湖から無尽蔵に溢れ出し、周囲へと散らばり殺戮をもたらそうとするというその術は、この始祖人狼に力を供給するための儀式でもあったという。
ならば意趣返し。無差別の強烈な大剣の一撃を躱し損ねクロークやガントレットが破れ一部が砕かれ出血しながらも、彼はどうにか致命傷を回避して攻撃の為の術を紡ぐ下準備を行っていた。
刃が止まる、攻撃の間隙に仕掛けるべきタイミングを見出したクドウはユーベルコード【雨術】を起動。
「雨よ」
呼びかけと同時、赤毛の人狼は強化されてその体が水塊に包みこまれた。
負傷からにじみ出る血、そして呪いが水塊に混ぜ込まれて水の色が赤く染まっていく。
それはまるであの鮮血の湖の如き色、そしてその術式を一部再現したクドウの術式により水塊より赤き血液の魔狼が生み出され、始祖人狼に飛びかかっていく。
ーーこの世界で長く続く争いの犠牲となった獣人、そして数多の世界の人狼病の患者の苦しみ。先のオラトリオの応報のユーベルコードで痛烈なダメージを受けているがそれではまだ足らぬ。
恨みを晴らすかのように襲いかかり、巨大剣に砕かれながらも牙を突き立てていく鮮血の魔狼、それらに混じり赤き水纏う人狼が襲いかかり静かなる刃を突き立てる。
「御命頂戴」
始祖人狼の胴体にねじり込まれた刃の痛みは、相応のものであったのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
アドリブ○
連携×
人狼病の元、とんでもない感染力…、抑えても浸食が免れないなら…っ!
UC発動、魔術陣の首輪と魔術回路の鎖で縛り上げて無理矢理狂気に抵抗しつつ、人狼として最大の力を発揮できる状態になるの
それでも共鳴がいくつも頭を作り出して狂気に包んできて…、封神武侠界の桃の精さんが、桃の香りで思い出させてくれるの
仲間を、家族を、大事な人たちを
ぼくは人狼、それは受け入れた
それに、孤独は克服した
絆と思い出が、ぼくの力だから
増えた頭で一斉の遠吠え
満月の魔力を吸い、月光を集めて、魔槍へと練り上げる人狼魔術を唱和
この力も、ぼく自身だから
受け止めてみて
これがぼくの、響月の狼槍!
月光の魔槍を放って離脱なの
●月の輝きは狂気のみに非ず
赤き魔狼と人狼達が始祖人狼に応報を叩き込んだタイミングで、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)という少年は人狼病に抗っていた。
(「とんでもない感染力……抑えても浸食が免れないなら……っ!」)
人狼病の元凶である始祖人狼、人狼病を発症してからの人生の方が発症前の期間よりも長いロランは、この五卿六眼の一人が振りまく病の感染力の強さを強く感じ取っていた。
抵抗し続けるのは困難、故に彼の取った選択は超短期決戦。
「夜の灯りを、呼びし遠吠え、大いなる円の下、静寂を尊ぶ」
ユーベルコード【静寂を慈しむ音狼の加護】を起動するための詠唱を行えば、ロランの姿は紫の耳と尻尾を生やした人型から狼の姿へと変わっていく。
手を地に付けて、細い体に狼の毛並みが生え揃い、そして満月のオーラ纏う異形のハイイロオオカミの姿がそこにあった。
全身から無秩序に生えた狼の頭部には魔術陣の首輪、更に魔術回路の鎖が速やかに巻き付き全身を縛り上げて、
破壊衝動に抗い人狼としての最大の力を発揮できるようにしたロランの状態は実に薄氷の上のバランスで成立している。
縛り付けた狼の頭が唸り吠えて始祖人狼の遠吠えに共鳴して狂気と苦痛を悪化させれば、ロランの精神は狂気の闇へと堕ちてーーその前に、ふわりとサシェから桃の香が漂いロランの鼻腔をくすぐる。
封神武侠界の桃の精より授けられた花びらの浄化と癒しの気と桃の香りがロランに思い出させる。仲間、家族、大事な人たち。
(「ぼくは人狼」)
それは受け入れた。それに加えて孤独は克服した。
何故なら絆と思い出が彼の力、けしてこの荒れ狂うような狂気は彼の力の源泉ではない。
「ほぉぉぉぉぉぉぉぉ…………ん」
始祖人狼の強制共鳴に合わせるように、けれど決して屈しないという強い決意の遠吠えがロランの狼の口と、体から無秩序に生えた頭から一斉に森に響く。
遠吠えの唱和は触媒、ロランが人狼魔術を行使するために空に輝く満月の輝魔力を吸い上げ輝きを魔槍へと練り上げて、穂先が始祖人狼へと向いて。
「この力も、ぼく自身だから、受け止めてみて」
月光の魔槍が放たれる。満月の光を固めたような色彩の一撃は防ごうとした始祖人狼の爪牙を砕き、っ血管のマントと厚い鎧を貫いて始祖人狼の急所を撃ち抜いた。
「これがぼくの、響月の狼槍!」
吐血する始祖人狼、ロランの方もこれ以上の戦闘継続は不可能ではあるが十分な一撃を叩き込むことが出来た。
それを見届けハイイロオオカミは血管樹の森林へと急ぎ飛び込み人狼病蔓延る戦場から離脱したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブ・連携歓迎
UC:移動力5倍、射程半分
「キツいが、こんくらいじゃオレは止まらない!」
苦痛と狂気を[気合い]と[根性]でねじ伏せる
体中から狼頭が生えてくるが、
清導の内から出てきた故か意思を持って目を向ける
「…試してみるか!いくぜ!超越ッ!変身ッ!!」
ブレイザインが光輝いて狼頭を取り込んでいく
光の中から現われたのは狼を模したブレイザイン
「ブレイザイン!フェンリルモード!!」
一気に始祖人狼へと駆け出す
狼頭が生える度に戦闘力が天井知らずに、爆発する如く跳ね上がる
大剣を一撃で粉砕し、[限界突破]した光焔を拳に宿す
「超必殺!ソールフェンリルブレイク!!」
巨大な爪や牙の生えた両手の連撃で仕留める
●人狼の祖に終焉在れ
疾風の如く飛び込んだ二人の猟兵に切り刻まれ、応報の雷に焼かれた始祖人狼。
抵抗に振るった巨大剣も塗料を噴出しながら疾走する鮮やかな色彩のバイクに躱され、巨大剣の腹を道筋にカウンターの赤き一撃を叩き込まれれば、赤く染まった巨大な水塊を纏い赤き魔狼を創り出しながら襲い掛かってきた赤毛の人狼に鋭い一撃をねじ込まれ、そこに重ねてハイイロオオカミの放った月光の魔槍に貫かれ既に倒れていてもおかしくないダメージを負った始祖人狼。
だがかの人狼の祖は倒れることなく三つの頭部で周囲を警戒していた。
ここまでに攻撃を叩き込んだ猟兵達は全員最大の一撃を叩き込む為に真の姿を晒し攻撃力を限界まで高めていた。その代償として増幅された苦痛と凶暴性に自己を保つために離脱している。
最後の一撃を決めるべく真紅の機械鎧を纏う空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は戦場へとやってきた。
到着と同時に襲い掛かる始祖人狼の撒き散らす人狼病の苦痛、狂気――それらは戦士の足を止めるに十分な程に強烈。
だが、
「キツいが、こんくらいじゃオレは止まらない!」
苦難や狂気をねじ伏せる程の気合と根性、それは超熱血ヒーローたる彼の本領だ。
既に全身から狼頭を生やした清導は真っ向から人狼病を撒き散らす人狼の祖を見据え、彼に生えた狼頭達も意思を有しているかのように三頭の人狼へと金の瞳を向けていた。
「……試してみるか! いくぜ! 超越ッ! 変身ッ!!」
判断即実行。ユーベルコード【超越変身!】を起動する為の言葉を合図に、ブレイザインの真紅の装甲が光り輝けば清導の身体に生えた狼頭達を装甲に取り込みながら形を変えていく。
眩しき光に咄嗟に手を翳した始祖人狼は、やがて光が収まるにつれて清導の想いと勇気に反応したこの場限りの特殊形態へと変化した彼らの姿を左の瞳で認識した。
「ブレイザイン! フェンリルモード!!」
それは新たに創造された、ブレイザインの狼を模した特殊形態。射程を代償に移動力を跳ね上げた接近戦特化の姿だ。
真紅の狼装甲を纏った清導が始祖人狼に向けて一気に駆け出す。圧倒的な移動速度で迫りくる彼を迎撃せんと始祖人狼の大剣が巨大化、圧倒的な破壊力と速度の一撃が振るわれる。
それに対し清導は真っ向から光焔宿せし拳を叩きつける。
一瞬の停止、その次の瞬間巨大化した大剣は砕け破片が盛大に弾け飛び、始祖人狼の狼の左目が驚愕に見開かれる。
彼の真紅の装甲の内側からはまた新たな狼頭が生え続け人狼病の苦痛と狂気を増大させているが、それに比例するように彼の力は天井知らずに跳ねあがっているのだ。
文字通りの爆発的な増幅――最大最強の一撃をぶち込むその瞬間の為にフェンリルモードのボルテージは極限に高まって、
「超必殺! ソールフェンリルブレイク!!」
勢いを一切減じぬまま超高速で飛び込んだ清導の巨大な爪や牙が所狭しと生やされた両手が連続で人狼の鎧に突き刺さり、刻まれたダメージで破損した部位から引き裂く。
連撃は止まらない。鎧の内側の頑丈な獣毛と肉を引き裂き砕き、光焔の一撃を胸部の中心に叩き込んだ。
始祖人狼の三つの口から光焔が噴出、その巨体は仰向けにどうと倒れ再び立ち上がる事はない。
周囲に撒き散らされていた人狼病の気配が薄れ、清導を苛んでいた苦痛も狂気も何もなかったかのように消失していく。
始祖人狼にまた一つ勝利した猟兵達は、第三戦線に決着がつくまでの残り僅かな時間を惜しむかのようにすぐその戦場を後にして、次なる戦場へと向かっていくのだった。
大成功
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