獣人世界大戦⑲〜病、猛攻に入る
獣人世界大戦は、各地での猟兵たちの活躍により第三戦線へと到達した。しかし、挙がる戦果に反してトレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)の表情は明るいものとは言えなかった。
「人狼病の祖、始祖人狼。人狼の一人としても放っては置けないけど、厄介な相手なのは間違いないだろうね」
敵は|五卿六眼《ごきょうろくがん》の一柱にして、ダークセイヴァーにも蔓延る人狼病、その根源。そのような存在と直接向き合うともなれば、大気や水にすら及ぶという高い感染力にさらされ、凄まじい苦痛を味わうことになることは想像に難くない。それに伴う狂暴化も、無視できないリスクだ。
「だから、俺個人としてはそんなところに皆を送るのは心苦しいんだけど……この症状、利用できるんだ」
あえて人狼病の症状の一つ、狂暴化による力の増幅を受け、始祖人狼へ渾身の一撃を入れ、魂を引き裂くかのような苦痛に完全に飲み込まれる前に離脱する。そうすれば、人狼病による致命的な被害を受ける前に退却することができるだろう。
戦場へ乗り込んだ猟兵は間もなく、真の姿を曝すことになる。その全身から無数の狼の頭が生えるが、それを代償に力を得られるだろう。激しい苦痛に耐えさえすれば、最高威力のユーベルコードを叩きこむ好機が訪れるはずだ。強力な相手であることは間違いないが、猟兵の全力を重ね続ければ勝機はある。
「ただ、無理はしないでほしい。持たないと思ったらすぐに撤退するんだ」
その病が、膏肓に入る前に。
説明の間もためらうように目を伏せるトレイシーは、一つ深呼吸をすると、顔を上げ、決意を固めてまっすぐに猟兵を見る。戦地に赴く猟兵たちは、きっと自分よりずっと固い決意を秘めていると信じて。
「じゃあ、覚悟が決まったら……行こう」
グリモアが輝き、始祖人狼へと至る道が作られる。極限の戦いが始まろうとしていた。
廉内球
猟兵の皆様、こんにちは。廉内球です。今回は獣人戦線の戦争シナリオをお届けします。
シナリオは一章のみで構成されています。人狼病の苦痛に耐えつつ、始祖人狼へフルパワーの一撃を加えて離脱、といった流れになります。
また、以下の内容に沿ったプレイングをお送りいただいた場合、プレイングボーナスが発生します。
●プレイングボーナス
苦痛と狂気に耐えて戦う/「狼頭にまみれた真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『始祖人狼』
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POW : 天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ : 唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロラン・ヒュッテンブレナー
アドリブ○
連携×
共鳴に晒されて狼の姿にみるみる変化して
ぐ、まけ、ないのっ!
UC発動、魔術陣の首輪と魔術回路の鎖で縛り上げて人の心を保とうとする
封神武侠界で桃の精から授けられたサシェの香りがぼくの意識を繋ぎ止めてくれる
頭が増えても、それでもぼくのままで立って抗う
浸食と狂気とは、特に人狼化とは何年も戦い続けて慣れてる
この程度じゃ、止らない
命を削りながら、満月の魔力を練り上げて人狼魔術を紡ぐの
活性化して膨れ上がった力も全て込めて、人狼としてのぼくをぶつけるの
月光を重ねて魔槍を生み出すよ
響月の狼槍
ぼくの全力の人狼魔術で作った槍を解き放つよ
狂気も苦痛も運命も受け入れた、ぼくの全てを込めて始祖人狼を穿つの
唱和:吾が『人狼病』を持つ者よ。
唱和:抗わず、吾が走狗となり果てるがよい。
始祖人狼の遠吠えが、響く。その残響に引きずられるように、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は青い体毛に包まれ、四足歩行の獣――狼の姿へと変わっていく。そして変化を終え、さらに狼の首が一つ、二つと生成されていき、まるで別の生き物に作り替えられていくような痛みがロランを襲った。
(「ぐ、まけ、ないのっ!」)
ともすれば魔術陣の首輪を押しのけてでも暴れようとする首を、首輪の力と魔術回路の鎖で縛り上げ、のたうち回りたくなるほどの痛みに耐えながら、それでも決して倒れずロランは始祖人狼に吼えた。その懐から桃の匂いが上る。浄化と癒しの優しい香りが、ロランの意識を正気の淵に繋ぎとめている。
「こんなの、慣れて、るの……この程度じゃ、ぼくは止まらないの!」
裂帛の気合で人狼病がもたらす狂気を一時的にねじ伏せると、ありったけの力を込めて満月の魔力を練り上げる。侵食も、狂気も、人狼病も、ロランにとっては長年戦い慣れた相手だ。たとえその力が強まろうと、これまでもこれからも、決して屈することはない。
魔術により月光を幾重にも束ね、響月の狼槍を生成するロラン。その瞬間にも荒れ狂う人狼の力は、槍へより強大な魔力を流し込んでいく。
「狂気も苦痛も運命も受け入れて……ぼくの全身全霊で、穿ってみせるの!」
一筋の青い光が、始祖人狼に吸い込まれていく。人狼の悲哀も、苦しみも、全てを受け入れ背負うロランの覚悟を乗せた槍が、始祖人狼に深々と突き刺さった。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎
ぐっ…
これが、この痛みが、人狼病…!!
「激痛耐性、呪詛耐性」があったとしても、全身が蝕まれる!!
痛みで身体が、引き裂かれそうだ…!!
だが、同時に凶暴化の発作を齎したこと
それ自体が貴様の敗因だ
あえてこの発作に身を委ね
凶暴なままに貴様に最大の一撃を叩き込んでやる!!
真の姿を解放すると同時に指定UC発動
どうせ一撃しか与えられないなら、生命力を削った最大の一撃を叩き込んでやる
天蓋鮮血斬の巨大化した大剣の軌道を「視力、見切り」で見極め「ダッシュ」で回避したらそのまま真っ直ぐ駆け抜け
始祖人狼の真正面から衝動の儘に黒剣で「2回攻撃、怪力」の二連撃を叩き込んでやる!!
戦場にたどり着くや否や、人狼病が館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の肉体を侵していく。
(「ぐっ……これが、この痛みが、人狼病……!!」)
故郷に存在するという病。激痛を齎すと聞き対策を講じたものの、体内で荒れ狂う病は狼頭の形を取り、敬輔の肉体を文字通り食い破っているかのように思えた。
だが。敬輔はあえて、抵抗しなかった。真の姿たる黒鉄の鎧姿に変わり、その板金を押しのけて生える狼の首。あらゆるものを破壊しつくしたいという狂気の衝動。それら全て、あるがままに受け入れる。
唱和:吾が『人狼病』への抵抗は無意味。
唱和:ようやく悟ったか、猟兵よ。
「いいや。むしろ、この狂暴化こそが貴様の敗因だ」
始祖人狼の吠えるような声に、敬輔は不敵な笑みを返す。魂すら引き裂かれているような痛みの中、敬輔は家族を想う。憎悪と復讐に身を委ねてきた敬輔の原点だった、暖かい場所を。
(「父さん、母さん、加耶…僕に力を貸してくれ」)
黒剣から現れたのは蒼紅白の三つの魂。それらが敬輔に憑依し、確かに優しい力をもたらした。家族の魂が、この身を、心を、支えてくれる。
(「どうせ一撃しか与えられないなら……!」)
漆黒の旋風が戦場を駆け抜ける。始祖人狼の剣が振り下ろされるが、大ぶりな攻撃を機動力で回避。大地が揺れ土煙が舞う中、黒き騎士の振り上げた剣が、始祖人狼の目に映る。破壊衝動に突き動かされるがまま、ありったけの力で放つ連撃は、始祖人狼を深々と抉った。
成功
🔵🔵🔴
サーシャ・エーレンベルク
あなたにも、何か理由があるのでしょう。
でも、結局は過去の残滓。そこに破滅の意志があるのなら、あなたもまた骸の海に還らなければならないわ。
なにより……この世界を箱庭の如く弄んだあなた達を、赦しておくわけにはいかないのよ!
苦痛と狂気が苛む。頭の中で鳴り響く警鐘のような激痛と狂乱が、私の身体を蝕む……けれど、私たち獣人が受けてきた苦しみに比べれば生ぬるいッ!
冰の女王の真の姿へ変身、ユーベルコードを発動し、刹那の内に始祖人狼に斬り込みましょう。
そこに躊躇いはない。大剣、爪牙、いくらでも反撃しなさい……!
その攻撃、行動さえも強化された動体視力と反射神経で掻い潜って、この竜騎兵サーベルを叩き込む!
戦場へと足を踏み入れたサーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は、途端に割れんばかりに痛み出す頭を押さえながら、努めて冷静に始祖人狼に語りかける。
「あなたにも、何か理由があるのでしょう。でも、結局は過去の残滓。そこに破滅の意志があるのなら、あなたもまた骸の海に還らなければならないわ」
物心ついたときには既に戦場にあった。超大国に抗わねばならなかった。白兵剣戟士としての人生は、白狼の少女の心を凍てつかせるに十分なものだった。その元凶の一人が、目の前にいる。
唱和:はじまりの猟兵、それを求むる者。
唱和:全て排除する。
この世界に生きる獣人など、まるで眼中にないかのように。唱和する始祖人狼から病の奔流が放たれる。サーシャは歯を食いしばり、風に抗って始祖人狼を睨んだ。
「なにより……この世界を箱庭の如く弄んだあなた達を、赦しておくわけにはいかないのよ!」
サーシャの心を折らんばかりに、人狼病が侵食してくる。苦痛と狂気が渦を巻き、狂乱の警鐘が頭蓋を揺らす。
(「……けれど、私たち獣人が受けてきた苦しみに比べれば生ぬるいッ!」)
冰の女王へと変じたサーシャは、白のドレスを翻し、薄氷を散らす。地を走る冷気より速く、サーシャは始祖人狼への懐へと飛び込んだ。溢れる力の源は、病か、ユーベルコードによるものか。あるいは虐げられた恨みも狼としての本能さえ、獲物へと喰らいつく力へと変わる。始祖人狼の刃も爪も、音を置き去りにするサーシャを捉えることなどできはしない。
幾度となく戦勝とともに掲げられた竜騎兵サーベル【ヴァイス・シュヴェルト】が、始祖人狼の鎧を突き破る。今一度、獣人戦線に凱歌を――そんなサーシャの願いを乗せて。
大成功
🔵🔵🔵
サーシャ・エーレンベルク
……あと、もう一息ね。
苦痛と狂気…心の奥底で破滅が囁いてる。
……どれほど痛みと狂乱が襲い掛かろうと、彼を討つまでこの手は緩めない!
ユーベルコード発動。
瞬間思考力で再び接近、
意識を失おうとも、この心が蝕まれようとも……!この氷嵐を纏い、すべてを貫くわ!
大剣さえも、その騎士鎧でさえも、圧倒的な氷嵐を纏って加速した竜騎兵サーベルで打ち崩す!
あなたが還るべき場所へと還りなさい。
たとえ私たちがユーベルコードを成そうとも……あなた達が成した殺戮と絶望を打ち崩すために立ち止まれないのよ!
一度退き、わずかな時間に身を休めたサーシャは、恐るべき精神力で再び戦場へと舞い戻った。常人であれば逃げる間もなく狂気に侵され、猟兵であっても二度三度と足を踏み入れたいとは思わないだろう。それでも彼女を突き動かすのは猟兵としての使命感か、それとも故郷を蹂躙された怒りか。
白銀の女王が再び舞い降りれば、主を迎えるかのように大地に霜が降りた。だがそれすらも人狼へと変化させる暴虐なる病が、再びサーシャを苛んだ。全身を裂くような痛み。頭に響く、破滅を促す狂気の囁き。思わず額を抑える。うずくまろうとする体を、固く閉じたくなる目を、しかしサーシャは強靭な精神力でねじ伏せ、一歩、また一歩と歩み始めた。
唱和:自ら吾が病に近づくか。
唱和:ならば望み通り、走狗となるがよい。
「……ッ!」
一層増す痛み。己ではない何かに変わっていく不快感。生えた狼頭の数はもはや数えるのをやめた。やがて苦痛が、思考が、麻痺してきているのをサーシャは感じた。それでも。
(「意識を失おうとも、この心が蝕まれようとも……!」)
竜騎兵サーベル【ヴァイス・シュヴェルト】が再び氷に包まれる。その威力は暴威と言って過言でないほどに高められ、追い風となってサーシャの歩みを進ませる。
「……あなた達が成した殺戮と絶望を打ち崩すために立ち止まれないのよ!」
銀の嵐が始祖人狼に襲い掛かる。その中心にあって、サーシャは狂気に浮かされたように始祖人狼の鎧を穿たんと攻撃を続ける。
「あなたが還るべき場所へと還りなさい……!」
うわ言のような、うつろな声で。わずかな時間ではあったが、サーシャは決定打を与えるまで攻撃を続け――【ヴァイス・シュヴェルト】はついにその装甲を貫いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵