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獣人世界大戦⑲〜吼え猛る血

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #ワルシャワ条約機構 #五卿六眼『始祖人狼』

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「ようやく、というべきか……始祖人狼の尻尾を掴んだわけだ。ここで一気に畳み掛けねえと、今度は他の超大国が余計なことをしでかしそうだな」

 グリモアベースにて、杜・泰然(停滞者・f38325)はやや疲れが見える顔で話を切り出した。如何な猟兵といえどオブリビオンとの連戦は堪える。第三戦線への進軍が可能となった今、早急に方を付ける必要があるだろう。
 |五卿六眼《ごきょうろくがん》の一柱にして、大呪術「|五卿六眼《シャスチグラーザ》」でワルシャワ条約機構を監視・支配していた始祖人狼は、はじまりの猟兵のもとへ至る前に第六の猟兵達を迎え撃つことにしたようだ。猟兵達のやることはシンプルで、始祖人狼のもとへ赴き彼を撃破すること。言葉で表せばたったそれだけだ。

「勿論、簡単なことじゃない。始祖人狼はダークセイヴァーにも蔓延っていた「人狼病」の根源だ。人間や動物に限らず、植物や大気ですらも人狼に変えることができる」

 それは即ち〝全て〟である。目の前にいる人間も、通り掛かった小動物も、佇む木立も、漂う空気ですらも人狼病の感染対象となる。ともすれば、今まで自身が立っていた大地ですらも人狼となって牙を剥くかもしれない。周囲に存在する全てを配下とするその能力も、広大な土地の支配を可能としたひとつの要因なのだろう。

「残念だが、人狼病は外部からの干渉で止められるようなものじゃない。決戦ともなると相手も本気だろうし、自分の身辺を守るに足る兵士レベルの敵はこさえてくるだろう。俺達にできることは、それをどうにか掻い潜って本体である始祖人狼を叩くことだけだ」

 その場にいる誰もがそれを認めざるを得ない。始祖人狼を守るために無尽蔵に湧いてくるであろう人狼騎士。その全てを相手にしていたのでは、この戦争を終わらせることは不可能だ。持ち得る力の全てを注ぎ、始祖人狼を再起不能にする。最優先事項を改めて頭に叩き込んだ猟兵達は覚悟を決め、最後の戦場へ向かうべく転移の準備を始めた。



 唱和:来たか、第六の猟兵よ。
 唱和:今なお|罪深き刃《ユーベルコード》を行使する|嬰児《みどりご》よ。
 唱和:吾が人狼病の果てにて全てを識り、
 唱和:悔いて朽ちよ、愚か者。

 ──赤い月が吼えた。血の枝が空へと伸び、大地と大気が震えた。これより始まるのは、人狼の進軍と蹂躙である。


マシロウ
 閲覧ありがとうございます、マシロウと申します。
 今回は獣人戦線での戦争シナリオをお届けいたします。「始祖人狼の撃破」が今回の目的となります。参加をご検討いただく際、MSページもご一読ください。

●第一章
 「人狼病」の根源である始祖人狼は、動植物はおろか大気や水すらも「人狼化」させる能力を持ちます。戦闘が始まると始祖人狼は背中から「血脈樹」を生やし、戦場に存在する全てを人狼騎士に変容させ猟兵達と対峙します。突然、それも無尽蔵に現れる人狼騎士を退けない限り、始祖人狼に攻撃を届かせることすら叶いません。
 プレイングボーナス……無限に現れる人狼騎士をかわし、始祖人狼を攻撃する/大気や大地などなどの「人狼化」に対処する。

 オープニング公開直後からプレイング受付を開始いたします。また、早期完結を優先するため全てのプレイングの採用はお約束できかねますのでご了承ください。締切はタグやMSページをご確認ください。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『始祖人狼』

POW   :    天蓋鮮血斬
【巨大化した大剣の一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    血脈樹の脈動
戦場内に、見えない【「人狼病」感染】の流れを作り出す。下流にいる者は【凶暴なる衝動】に囚われ、回避率が激減する。
WIZ   :    唱和
【3つの頭部】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【人狼化】の状態異常を与える【人狼化の強制共鳴】を放つ。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

愚か者とはよく言ってくれる
変わらないことこそが、時に俺らの力になることもあるのさ
五卿六眼『始祖人狼』、覚悟しろ!

俺の手札だと、無限に現れる人狼騎士を躱す方が現実的だな
指定UC発動、白い魂の靄を纏い
「ダッシュ、見切り」+UC効果の高速移動で人狼騎士を次々に躱し駆け抜けてやる
回避が間に合わなければ黒剣を振り抜き「衝撃波」で吹き飛ばそう

人狼病感染の流れはあえて避けず、凶暴なる衝動に身を任せながら
黒剣の「2回攻撃、怪力」で始祖人狼を力いっぱい叩き切る!

このUCは、俺が猟兵に覚醒して初めて自発的に使えるようになったUCだ
変わらずずっと使い続け、磨き続けた証、その身で味わえ!!



 空高く伸びる血脈樹を見上げる。どくどくと脈打つそれは|何処《いずこ》からか遠吠えを響かせる。戦場に在る|尽《ことごと》くが鎧を身に纏った人狼へと変容してゆく中、それでも館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)はその場を|退《しりぞ》くことはしなかった。

「愚か者とはよく言ってくれる。変わらないことこそが、時に俺らの力になることもあるのさ」

 故郷に蔓延する病の根源。吼え猛る狼の王。圧倒的な力を持つ敵が相手であろうと、敬輔は黒剣を振るい続ける。変われないのではなく、変わらないことを選んだ者達こそが、今ここに立っているのだ。

「五卿六眼『始祖人狼』、覚悟しろ!」

 まるで壁のように群がる人狼騎士。その向こう側に立つ始祖人狼だけを見据え、敬輔は地を蹴った。黒剣が一瞬、脈動する。それを境に発生した白い靄は、まるで敬輔を守るかのようにその身を包んだ。一歩また一歩と踏み込む度に、その速度が増してゆく。
 人狼騎士達は号令すら不要とでも言わんばかりに敬輔へ向けて進軍を始める。先陣を切って向かって来た個体はその手に握られた大振りの剣を横薙ぎに振るうが、敬輔の目からすれば遅い斬撃だ。全ての人狼騎士を相手にするのは現実的ではない。見切った動きは極限まで上昇した速度で以て回避し、足場にしていた地面が人狼化するのであれば跳躍で離脱する。無用な戦闘には時間も体力も割かないことにした。今回の標的はあくまでも始祖人狼、ただひとりなのだから。

 唱和:愚かなり、第六の猟兵。
 唱和:戦場において一人突出するとは。
 唱和:吾が人狼病の及ぶ範囲を
 唱和:識らぬ貴様等ではないだろう。

 低く唸るような、地を這うような声が届く。人狼騎士の群れを風のように駆け抜けた敬輔の前に立ちはだかる始祖人狼の背からは、赤々とした血脈樹が伸びている。それを中心に空気がざわめき、敬輔の肌を鎧越しにざらりと撫でていった。

(来たか、人狼病……!)

 自覚と共に奇妙な衝動が湧き上がる。自分の中にこれほどの獣性が眠っていたのかと疑いたくなるほどに凶暴な衝動。視界に入る全てを破壊したくなるようなそれは、敬輔にとって害であると同時に益ともなる。

「ああ、知っているさ。箍が外れた方が、躊躇いなくやれるってこともな!!」

 人狼病感染のリスクと引き換えに手に入れた力は敬輔の膂力を更に強化する。湧き上がる凶暴な欲も、敵を前にしている今ならば活力剤にしかならない。敬輔は黒剣の柄を握り締め、その刃を始祖人狼へ向けて振り抜く。

「変わらずずっと使い続け、磨き続けた証、その身で味わえ!!」

 速度と力、出し得る全てを乗せた二度の斬撃が始祖人狼の体に届くと、その一点を中心に激しい衝撃波が噴き出す。これで仕留めたとは思えない。けれど、始祖人狼の大きな体が僅かに傾いだのを見て、確かに届いたのだと確信する。
 このユーベルコードは敬輔が猟兵に覚醒して、初めて己の意志で行使できるようになったもの。例えそれが彼らにとって罪深き刃なのだとしても、この力で救えてきたものも確かに存在した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サーシャ・エーレンベルク
あらゆるものを人狼化……周辺に存在するモノ全てが敵というわけね。
あなたの言い分はもう結構。
あなた達のせいでどれだけこの世界の獣人たちが苦しんでいるのか。
その行動や目的に相当の理由があれど、それが今まで消え失せた命への免罪符にはならないのよ!

【白冰冬帝】を発動、冰の女王の真の姿へと変身するわ。
あらゆるモノが、全て鎧を纏った人狼騎士へと変質する……けれど、その一番の弱点は、そういったモノが意志と身体を持ってしまうということよ。
凍結の嵐で、次々と現れる人狼騎士を物言わぬ氷像に変えましょう。
氷嵐に紛れて潜伏し、それでも私を見たものは絶望に苛まれ、動きが鈍る。

凍てつき、冰れ。
竜騎兵サーベルで叩き斬る!



 病の根源である始祖人狼が眼前に立つ。それは即ち、目に映るもの全てが敵であるということ。サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)はその事実だけを淡々と受け入れる。いくつもの戦場を渡り歩いた身として、孤立無援などよくある話だった。

 唱和:第六の猟兵よ、罪深き刃の担い手よ。
 唱和:吾々を再び絶望の海へ落とす者よ。
 唱和:その行いが正しいものであると、
 唱和:|何故《なにゆえ》驕ることができるのか。

「あなたの言い分はもう結構」

 戦場中に響き渡る始祖人狼の声を、サーシャは凛然たる声で制止する。|竜騎兵サーベル《ヴァイス・シュヴェルト》を鞘より抜き、白い刃の切先を始祖人狼へと向けた。

「あなた達のせいで、どれだけこの世界の獣人たちが苦しんでいるのか。その行動や目的に相当の理由があれど、それが今まで消え失せた命への免罪符にはならないのよ!」

 サーシャが見てきた限りでも、この戦いによって命を落とした獣人達の数はとても数えきれるものではない。その怒りは、その嘆きは、今なお生きるサーシャが背負っている。小さな幸福を享受することさえ許されなかった彼らの無念を晴らすのは、いつだって〝生きている者〟だ。突如、サーシャの周囲で吹雪が舞う。命あるもの全てを凍らせるような、冷たい風だった。
 始祖人狼が吼えると、それに合わせて周囲の木々や岩、降り積もる雪でさえも鎧を纏う人狼騎士へと変容する。彼らは|剣《つるぎ》を手に立ち上がると、サーシャの方へ駆け出してきた。
 冷たい嵐の中心でサーシャはいつの間にか白い衣で身を包み、火器を従えそこに立っている。進軍してくる人狼騎士達を一瞥すると、サーベルを横一閃に振り抜いた。同時に響くは、まるで硝子が砕けるような透き通った音。その音が途切れる頃、今まさにサーシャを屠らんと向かって来ていた人狼騎士達は一人残らず物言わぬ氷像と化していた。大柄な人狼騎士達の氷像が並ぶ様は、まるで樹氷が森を成したようだった。
 サーシャは氷像と氷像の隙間に生まれた道を進む。新たに生まれた人狼騎士は進軍の妨げとなる氷像を砕きながらサーシャの姿を探すが、それこそ雪と氷に覆われたこの戦場においてサーシャを見つけ出すことは困難を極めた。ひと際大きな氷像を挟んだ向こう側、一瞬だけサーシャと視線を合わせた者もいたが、その背を追うよりも前にまるで降伏するかのように膝をついてしまった。
 月色の瞳は、全てを凍て空の下へ|誘《いざな》い、葬る。

「凍てつき、冰れ」

 氷結嵐の冷気を纏ったサーベルを振り抜く。極限まで気配を殺していたサーシャは何者にも気付かれることなく、その刃が届く範囲に始祖人狼を捕捉していた。始祖人狼とて黙って斬られるだけではない。サーシャを両断しようと、只の人間であればおよそ不可能な速度で手にした大剣を振り下ろす。だが、それでもサーシャの方が速い。直前まで彼女の接近に気付けなかったのが敗因だと言えるだろう。
 始祖人狼の体から鮮血が噴き上げ、そしてそれすらも凍り付く。黒い眼窩に浮かぶ赤い月が、憎々しげに冰の女王を見下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
アドリブOK
絡みNG

人狼の狂気に何度も侵された
何度も身近な人を傷付けた
迫り来る死に怯えた
だけど、ぼくは今、人との絆をたくさん持って、明日を見据えて立ってる

自分の周囲を結界で覆って防御しながらゆっくり進むよ
死の循環、接続
同時にUC発動、右目が闇色に染まって右頬に紋様が浮かび上がる

周囲の万物の刻を急速に早送りして風化させる波動を結界から放つよ
ぼくがこの場にいるだけで、周囲は無生物に至るまで終わりの刻に向かって風化していく
それはあなたも例外じゃないはず

病が共鳴して暴れだそうと、ぼくはずっと抗ってきた
忌むべき力も、狂気も、飲込んで進んでみせる

一際大きな波動で始祖人狼の「生命」を死に向かわせるの



 望もうと望まざろうと、人狼病は常にロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)の傍らに在るものだった。狂気に自我を侵され、自分が自分でなくなってゆくような恐怖。寄り添ってくれていた人を傷つけた時の罪悪感。そして、徐々に己の命をも食い潰してゆく病の気配に気付いた時の絶望。常に人狼病の影に怯え続ける人生だと言っても過言ではなかった。
 それでもロランはまだ生きて、そしてこの戦場に立っている。己を蝕む病の根源を前にして、一人の猟兵として立っている。決して自暴自棄などではなく、これまで出会った人々に恥じない〝明日〟を見つめ続けるために。

「あなたが人狼病を戦場いっぱいに広めたとしても、絶対に耐えてみせるの」

 始祖人狼の背から伸びた血脈樹からは、これまで嫌というほど味わってきた狂気の波が寄せてくる。それでも、ロランは躊躇うことなく歩みを進めた。身を包む結界を張ることで、多少は人狼化の影響が和らいだ気がした。

「──死の循環、接続」

 始祖人狼の姿を視界に捉えたまま短く唱える。同時に、ロランの右目は月の無い夜の色に染まった。じわり、と右目に沿うように頬を覆った紋様は毒々しいまでに赤い。奇しくもそれは、始祖人狼の瞳と同じ色をしていた。
 歩みを進めるロランの周囲の空気が急速に動き出す。取り囲もうと群がった人狼騎士達は次々と膝をつき、揃って地に倒れ伏した。誰もが瞼を下ろす間も無く絶命し、そしてその体を風化させてゆく。誕生から死、更にその先へ至るまでの循環。その時間の流れを急速に押し進めるロランの力は、抗って防げるものでは到底なかった。人狼騎士のみならず周囲に佇む木々ですら枯れ果て、そして砂のようになって消え失せてゆく。

「生きている限り……ううん、例え無生物だったとしても、ぼくがここにいる限り終わりの刻に向かって風化していく。それはあなたも例外じゃないはず」

 人狼化という〝命〟を与えてしまったばっかりに、この場に在る|尽《ことごと》くが死に絶える。ロランの力を目の当たりにした始祖人狼は、彼の歩みを止めようと轟音のような遠吠えを上げた。響く声に乗ってぶつけられる人狼病の狂気はロランの自我を刈り取ろうと容赦なく襲い掛かるが、ロランは歯を食いしばってそれに耐えた。

(ぼくはずっとこれに抗ってきた。忌むべき力も、狂気も、飲み込んで進んでみせる……!!)

 そのために、自分はここに来たのだ。そんな意志を表明するように、ロランは結界へ意識を向けて強く力を注ぐ。一際強く早い〝死〟を波動という形で始祖人狼へ解き放つ。相手がどれだけ多くの命を使っていても、どれだけ長い時間をかけて力を蓄えていても、必ずここで『始祖人狼』というひとつの命を終わらせる。
 ロランの波動に圧されそうになった始祖人狼がたたらを踏み、三つ首で同時に唸る。その唸り声にはどこか、息切れのような不規則なリズムが聞き取れた。確実に弱っている。

「必ず終わりにするの。ぼくは、もう未来に向けて歩きだしてるから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
強化属性全力魔法で身体能力とスピードを限界突破させ背中の翼で空中戦。
人狼騎士が飛べるならともかく、そうでなければ地上の人狼騎士が届かない高度を空中機動を活かして止まらず飛行し続け、大気の人狼騎士化と飛び道具だけ警戒していればいいのです。
現れた人狼騎士は基本無視して回避を優先。回避が難しいものは高速詠唱の魔法でなぎ払います。

ダークセイヴァーでもこちらでも、お前達はどこまでも……

ユーベルコードの射程範囲はこちらが上。同じ戦場であれば敵の大剣の射程に入らずに攻撃が可能です。
第六感や心眼、気配感知で敵の行動を見切り、浄化属性の全力魔法アトミックエナジーで始祖人狼の3つの頭と心臓を同時に爆破しましょう。



 戦場に人狼達の唸りが|木霊《こだま》する。地上を埋め尽くさんばかりの勢いで増え続ける人狼騎士を視界の端に捉えつつ、七那原・望(比翼の果実・f04836)はその翼で寒空を飛翔した。全ての人狼騎士を相手にするのは現実的ではない。魔法による強化は望の能力を跳ね上げ、容易に捉えるのも難しいような移動速度を出すことを可能にした。
 殆どの人狼騎士が近接戦にのみ対応しているのもあって、望は始祖人狼までの最短ルートを弾丸の如く飛ぶ。時折、軌道上の空気から発生した人狼騎士による奇襲は受けるものの、先んじて詠唱を始めていた魔法で全てを撃ち落とした。
 それでも、次から次へと人狼騎士は湧いてくる。まるで、すぐに補充できる消耗品だとでもいうように。例え相手が理性無き敵という立場だとしても、人狼病によって〝命〟を与えられたと言っても過言ではないというのに。

「ダークセイヴァーでもこちらでも、お前達はどこまでも……」

 人狼騎士の波の先、望を待ち構えている始祖人狼との対峙。まだ望との距離がある段階で始祖人狼はその手に携えた大剣を振り上げると、大地を揺るがすような咆哮を上げる。大きい一撃が来る。それを予想した望は、相手の攻撃の射程範囲に入る前に詠唱を開始した。
 始祖人狼の大剣が振り下ろされる。嵐のような衝撃が周囲一帯の全てを薙ぎ払う。敵味方も問わないその一撃は、始祖人狼を守っていた人狼騎士達ですら灰塵に帰す。始祖人狼としてはそんなことは大した問題ではないのだろう。例え塵となろうと、再び人狼病を以て新たな命を吹き込めば良いのだから。
 攻撃の範囲外にいたこともあり、望は直撃を免れていた。同時に詠唱を終えると薄曇りだった空に一条の光が差し、始祖人狼の姿を照らす。

「どんな大義名分を掲げようと、お前達は命を食い物にするケダモノです。わたし達が、そんなものを放っておくわけがないでしょう」

 言い分などはもう聞かない。望が手を振り上げるのと同時に天から差す光が強くなり、始祖人狼の体を白く灼いた。光の中で起こる二つの爆発。始祖人狼の三つ首と心臓の座標を狙ったそれが直撃したことを確認する。
 爆発によって発生した土煙は、始祖人狼の巨体を覆う。死んでいる気配は無いことから、未だそこに立っていることは予想できた。土煙が晴れて現れたのは、多くの血を流しながらも戦場に立ち続ける人狼の王の姿だ。|五卿六眼《ごきょうろくがん》たる存在が一撃で倒れるだなんて望も考えてはいない。だが、長期戦になろうと必ず仕留める。ダークセイヴァーから続く因縁を思えば、その覚悟ができているのはあちらではなく猟兵だ。
 何度もでも、何度もでも浄化の炎に巻いてやろう。次の攻撃へ移るべく、望は再び詠唱を口遊んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仰木・弥鶴
「罪深き刃、ね。もしもこの力が悪なのだとしたら俺にとってこれほど興味を惹かれる話はないよ」

今回の戦いは時間との勝負
人狼化の状態異常を与える強制共鳴の範囲拡大に呑まれる前に
始祖人狼へ攻撃を届かせたい

戦場に満ちる大気すらも人狼化するなら
あらゆる全方面死角なく攻撃命中できるピンマイクを使用
戦場内に出現する人狼騎士を音声攻撃にて
現れる端から贄の紋印を刻み付け
ユーべルコードでの追加攻撃を与え続ける

攻撃は白燐蟲に任せて俺は守りに徹する
ディバインデバイスの機械羽で人狼騎士の攻撃を受け流すように防御する間も音声攻撃は途切れさせない

「人生、一度くらいは悔いてみたいものだけどね。賢く朽ちるくらいなら愚か者で結構」



 周囲に存在する全てから人狼騎士が発生する様子は、ゾンビパンデミックも裸足で逃げ出す光景だ。仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)はそんな戦場にありながらも、体に余計な力は入れず眼鏡の奥でこの戦況を見極めていた。
 猟兵達の猛攻により、始祖人狼は既に満身創痍だ。追い詰められている分、何をしでかすか分からない、とも言える。

 唱和:おのれ、第六の猟兵よ。
 唱和:忌まわしい力に堕ちた者よ。
 唱和:罪深き刃を納める心算が無いのなら、
 唱和:此処で等しく灰と成れ。

「罪深き刃、ね。もしもこの力が悪なのだとしたら俺にとってこれほど興味を惹かれる話はないよ」

 そもそも善悪の基準など曖昧なものだ。始祖人狼にとって猟兵は悪であり、力無き獣人達にとって始祖人狼は悪である。見る者と角度によって善にも悪にも成り得ると考えれば、このテーマについての議論は不毛だとも言えた。
 弥鶴はワイヤレスピンマイクを起動すると、すぐさま全方位への音声攻撃を開始する。目には見えない、けれども確かにそこに存在する〝音〟による攻撃は衝撃波のように広がり人狼騎士達の足を止めた。音は大気を震わせ続け、空気中から新たな人狼騎士が発生することも防いでいる。

「さて、時間との勝負だ」

 音に乗せた攻撃が避けられる者などそうそういない。見えない波をその身に受けた人狼騎士達は、残らず贄の紋印を体に刻まれる。刻印が浮かぶや否や解き放たれる白燐蟲は、自らの餌と定められた獣に次々と喰らいついた。
 中には白燐蟲に肉を抉られながらも、弥鶴へ向けて|剣《つるぎ》を振り下ろす者もいた。だが、弥鶴を守るように常に展開する機械羽がそれをいなし、弾かれることで生じた隙を狙って音声攻撃で追い討ちをかける。如何に数による猛攻を仕掛けようと、死角の無い音を相手に立ち回れる者はこの場にはいなかった。
 始祖人狼の遠吠えが響く。その声に乗って撒き散らされるこの悍ましい気配こそが、知性ある生物を狂気へ引きずり込む病だ。多少の耐性があるとはいえ、弥鶴自身もあまり長居をすべきではないだろうと察する。
 人狼騎士の波を薙ぎ倒したことで始祖人狼との距離は容易に詰められる。新たな人狼騎士が生まれるよりも先に一定の範囲へ接近し、弥鶴は再度、全方位へ向けて最大出力の音声攻撃を展開した。始祖人狼の耳が、体がそれを認識した瞬間に例外なく贄の刻印が浮かぶ。既に追い詰められていた始祖人狼も、白燐蟲に捕食される痛みに咆哮を上げた。首のひとつが、腕が、脚が、|腸《はらわた》が食われる。邪悪な儀式などを用いて蓄えていた力も、今ここで喰い尽くされようとしていた。

「人生、一度くらいは悔いてみたいものだけどね。賢く朽ちるくらいなら愚か者で結構」

 悔いる機会があったとしたら、それはもう遠い過去の日のことだろう。その時代がとっくに過ぎ去った今、弥鶴が悔いる日はきっと来ない。
 白燐蟲に最後の合図を送る。始祖人狼という命の中核を白燐蟲が噛み砕いた瞬間、あれほど空へ伸びていた血脈樹は枯れ果て、戦場一帯を埋め尽くしていた病の気配はあっけなく失せてしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月23日


挿絵イラスト