サーカスの中でサメが飛ぶ
●噂話
「ねえ、知ってる?サメ映画が好きな人の所に、サーカスのチケットが届くんだって!」
「あーそれ知ってるー!ネットで時々噂になるやつだー!」
繋がらないであろう単語が連結される、おかしな噂。ネット上でまことしやかに語られる都市伝説、いわゆるネットロアの1つ。
サメ映画好きのもとに届くチケット。そのチケットに導かれて黒いサーカス小屋をひとたび覗けば、色とりどりのサメが小屋の中を泳ぎ回っている景色を見るのだという。
尾鰭が長々とついたバージョンだと、勇気を出して中に入ればサーカスの演者の顔が死んだ者の顔だという事に気づいてしまったり、顔面に大量に絵を描く道具が刺さったぬいぐるみが出てくる、といった風にホラー度合いも高まっていく。
最終的に、異常な光景に恐怖した話し手が何かしらのアクションを起こした瞬間、今まで見ていた不思議な空間が消え去っている……というのが、この噂における定番のオチである。
「行ってみたくない?」
「やだよー絶対怖いやつじゃーん」
話の種として消費される都市伝説。
それが本当に存在する怪異であることを知っているのは、ほんの一握りだけであった。
●グリモアベース
「UDCアースにて、非常に慎重なオブリビオンの活動が予知されました。猟兵の皆様方、どうか手を貸してください」
グリモアベースの一画にて、ネオン・エルバイトはそのように話を切り出した。
「今回の余地にかかったオブリビオンは、UDC組織においては“ネットロアUDC”という風に分類されているものです。ネット上の噂として囁かれる、本物の怪異……ですが、ネット上に噂として上がるということはつまり、語り手である人間から逃げ出すほど慎重なんです」
その慎重さゆえに、ネットロアUDCは基本的に対処の優先順位が低い。
しかしグリモア猟兵の予知にかかった以上、今回見つけたネットロアUDCはほおっておけば事件を起こすというのが明確化した状態にある。このまま放置してしまえば、人の命が何個か消え去るだろう。
「予知にかかったUDCは、特定の属性を持つ人々を自身の居る領域に誘い込んで殺害しようとしています。出回っている噂によれば、真っ黒なサーカス小屋がそうらしいのですが……チケットを持っている人以外には認識阻害系の怪奇現象が起きているようなんです。僕も皆さんをサーカス小屋に直接送り届けることができません。現場となる場所がある、山間の町へと皆さんを転送することになります」
直接向かえない以上、猟兵たちの最初の仕事は黒いサーカス小屋を見つけるための探索となる。
そうしてサーカス小屋を見つけた後は、すでに呼び寄せられてしまっている人々を逃がす必要があるだろう……しかし、これらの冒険には注意しなくてはならないことがある。
「先ほども言った通りこのUDCは非常に慎重で、普通の人間相手でも逃げ出すような相手です。猟兵の皆さんが普段どうりにまっすぐに向かっても、戦える身代わりを作って逃げ出してしまうという事まで含めて予知されてしまっています……つまり、皆さんには相手を油断させてほしいのです」
普段の得意から離れた作戦をとったり、敢えて効果の低い行動を狙って行うことで、猟兵といえども狩れるという油断をUDCに植え付ける。
油断を誘いながらも着実に探索を進めることで、このUDCと本当の意味で対峙することができるのだ。
「調査の失敗にまで至ってしまうとそれ以上猟兵が関われなくなってしまうのでバランスが大事になりますが……きっと、皆さんなら事件を未然に防げると信じています。どうか、よろしくお願いします」
碧依
碧依と申します。久々だったりはじめましてだったりするかもしれません、よろしくお願いします。
今回のシナリオはネットロアUDCと呼ばれる存在に関する物です。
今回のシナリオでは、第1章・第2章で12個以上の🔴を獲得する事で油断させない限り、ネットロアUDCに遭遇する事はできません。
このシナリオではそれぞれの冒険で特別に🔴を得られる要素を用意していませんので、ぜひ思い思いの遠回りをしてみてください。
もちろん、これ以上やると失敗しそうだと感じた時は颯爽と活躍する方向に舵を切ってもOKです。
以上です。皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『認識阻害の結界を打破せよ!』
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POW : ひたすら歩き回って探す
SPD : 違和感や不自然な点を見つける
WIZ : 魔術や魔法で隠された真実を暴く
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山間の中規模の町。そこが猟兵たちが降り立つ地である。
基本的には町を縦断する道路と、そこを通過する者達の経済活動で生きる土地。一通りの商業施設があり、この町で生きることを選択する人もいるだろうと感じるような規模感。
地方都市ともっと小さい田舎とを結ぶ中継地点のようなこの町のどこかに、確かにUDCが潜んでいる。
網野・艶之進(サポート)
「正直、戦いたくはないでござるが……」
◆口調
・一人称は拙者、二人称はおぬし、語尾はござる
・古風なサムライ口調
◆性質・特技
・勤勉にして率直、純粋にして直情
・どこでも寝られる
◆行動傾向
・規律と道徳を重んじ、他人を思いやる行動をとります(秩序/善)
・學徒兵として帝都防衛の技術を磨くべく、異世界を渡り武芸修行をしています
・自らの生命力を刃に換えて邪心を斬りおとす|御刀魂《ミトコン》の遣い手で、艶之進としては敵の魂が浄化されることを強く望み、ためらうことなく技を用います
・慈悲深すぎるゆえ、敵を殺めることに葛藤を抱いています……が、「すでに死んでいるもの」や「元より生きていないもの」は容赦なく斬り捨てます
「油断を誘うべきであるとはいえ失敗に至るのは拙い。ならばまずは正道の調査をすべきでござるな」
応援として駆けつけた猟兵、網野・艶之進はそのように今回の方針を立てる。そのために訪れたのはこの町の町役場であった。
必要そうな書類を抱えた人や、時間を潰しに来たらしい老人ら。平穏を過ごす彼らの安寧たる様に一つ頷いてみせた艶之進は、そうした人々に紛れて役所の中へと歩みを進めた。
「思った通り。土地を管理する場所には、その地の情報があるものでござる」
そう言って艶之進が手をのばしたのは、パンフレット類を並べたマガジンラック。
見どころが多いわけではない土地でも、押し出す点はいくつかある。艶之進はそうした一押しの場所を紹介する紙類を一部づつラックから抜き取った。
どうせなら調査もここで済ませようと、貸し出されている会議室の一室を借りた艶之進はパンフレットを机の上に並べていく。
一枚づつ丁寧に置かれたそれらを前に、彼は掌サイズの風水盤を取り出した。気の流れの分析と制御に長ける掌上風水盤にて、ここにある情報が歪んではいないかを視ていこうという算段なのだ。
「ほぼ異常なのは予期していたでござるが、これは……?」
町の中の情報が書かれたものの殆どに情報を正確に受け取らせまいとする引っかかりがある。その中に一つだけ、例外となるものがあった。
「団地の中にある食事処の情報のみ、気の流れが正常……なるほど。建物の密集した場所にはそもそも舞台となる小屋を用意出来ぬが故に、隠蔽も働いていないという理屈でござるか!」
納得した艶之進は後続の猟兵に託すべく、パンフレットと得た情報のメモを携えてグリモアベースへと帰還していった。
成功
🔵🔵🔴
クローネ・マックローネ(サポート)
普段の口調は「クローネちゃん(自分の名前+ちゃん、相手の名前+ちゃん、だね♪、だよ!、だよね★、なのかな?)」
真剣な時は「クローネ(ワタシ、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」
普段の口調の時は頻繁に★や♪を語尾に付けるよ♪
基本は一般人の安全を優先で♪
多少の怪我は厭わず積極的に動くね♪
他の猟兵に迷惑はかけないよ♪
シリアスな場面では状況の解決を優先するよ
コメディ色が強い場合はその場のノリを楽しむ方向で動くね♪
えっち系はばっちこい★状態変化もばっちこい♪
絡みOK、NG無しだよ★
UCは状況に応じてMS様が好きなのを使ってね★
後はMS様におまかせするね♪
よろしくおねがいします★
四条・眠斗(サポート)
ぅゅ……くぅ……あらぁ?
いつの間にか始まってましたかぁ?
さっさと事件を解決しないとぉ、安心してもうひと眠りできませんからねぇ。
ユーベルコードは出し惜しみしても仕方ありませんからぁ、
一気に片づけるつもりでやっちゃいましょう。
こう見えてもぉ、腕には少し自信があるのですよぉ。
それにぃ、様子を見てる間にまた眠くなっちゃっても困っちゃいますしぃ。
荒事じゃなくてぇ、楽しいことならめいっぱい楽しんじゃいましょう。
のんびりできるところとかぁ、動物さんがたくさんいるところなんか素敵ですよねぇ。
でもぉ、身体を動かすのも好きですよぉ。
お互いに納得の上で全力が出せると一番良いですよねぇ。
※アドリブ・絡み歓迎
女性的な豊かな曲線を見せつつすらりとした四肢をもつ黒い女性クローネ・マックローネと、幼さを感じさせるフリルと甘さを和の風合いで纏った白い見た目の四条・眠斗。
反対方向に整った二人の猟兵は、町の入り口であることを示す看板の前で方針を話し合っていた。
「クローネちゃんは、もうちょっと普通に探索してもいいと思うんだ♪町1つ相手だと探す場所まだまだ多いからね★眠斗ちゃんはどうかな?」
「眠斗もそのつもりで、町の外周をぐるっと見て回ろうかなぁと……思っているんですけれど……ちょっと難点があるんですぅ」
「難点?」
「はい~。まず、なぜ思いついたのか説明しますねぇ」
サメ映画好きに届くチケット。その噂を四条が確認した時に、サーカス小屋に出会うまでは“人気のない場所”という描写が殆ど無い事に気づいたのだ。
怖さを演出するのにうってつけの内容が無いという事は、件の黒いサーカス小屋にたどり着くまではある程度人の気配がありそうな場所を通るのだろう。
しかしこの予想に基づいて直接見つけてしまうと逃げられてしまいそうなので、一旦可能性の低そうな町の外周……町を囲む山の中にUDCが隠れている可能性を潰したい。それが彼女の狙いなのだ。
「そっか!確かに居場所の候補を減らす調査はした方がいいよね♪……でも、それのどこに難点があるの?」
「眠斗は、よく眠くなっちゃうんですぅ……山の中を長時間一人で調査しようとして、もしも予想が外れて町の外周にUDCが潜んでたら……眠気でうっかり突っ込むかもしれないと思って」
普段であれば眠気に負けないために一気に物事を済ませる彼女だが、体力に自信があるとはいえUDCの気配を探りながら山中を歩き通すのは眠気の間隔的に少し難しい。
僅かにうつむく四条に向けて、クローネは元気づけるように声を張った。
「それなら!クローネちゃんにそれ手伝わせてよ♪せっかくタイミングも合ったんだし、眠斗ちゃんの考えてるコト一緒にやろっ★」
「良いのですかぁ?」
「いいよー♪クローネちゃんは呪術関係チョットワカルし、すっごく早く動けるユーベルコードもあるんだよ★素早く動きつつ察知するの、クローネちゃん案外向いてるんだ♪あとは……えへへ、クローネちゃんはノープランなのでした!とりあえず足で探そうと思ってたから、眠斗ちゃんの作戦に参加できると助かっちゃうな★」
「ふふっ、そうだったんですねぇ。でしたら、一緒に探しましょ~」
「決まりだね★じゃあ、はい!まずはクローネちゃんが眠斗ちゃんをおんぶするよ★」
そう言ってしゃがみ、背中を示すクローネ。どういうことかと少し考えた四条だったが、すぐに納得してクローネの背に乗った。その手には非常に白く、そして鈍器であろうと誰が見ても納得できる大きな錘が携えられていた。
「クローネちゃんが速度と察知担当という事ならぁ、山中の障害物は眠斗がなんとかします~。それと、もし疲れた時は言ってくださいね~。安らぎの雪だるまさんを呼んで、疲れを癒しますからぁ」
「疲れがそこまでじゃなくても癒しタイムは体験したいかもっ★」
「でしたら、調査が無事に終わっても呼んじゃいましょ~」
「やったね♪それじゃ……ユーベルコードよし!呪術関連への第六感とか情報察知系統よし! 出発ーっ★」
掛け声とともに高速移動術を発動し、クローネは四条とともに一筋の光めいて山中に飛び込んでいった。
調査は何事もなく終わりを迎えた。町の外周部、山中でUDCが見つかることはなく……逆説的に、猟兵たちが目指す場所は町の内側且つ、ある程度の広さを持つ場所だと確定したのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
おー、ちょっとばかし鄙びた感じのいい町じゃないのさ。
こりゃあ仮の生活拠点にしとくのも悪かぁないね。
よし!そうと決まれば早速向かわないとねぇ。
どこって?そりゃ不動産屋さ。
こんくらいの町なら、良さげな空き家もあると見た!
探す物件はそうだねぇ、小さくても庭付きの一軒家かな。
築年数にはあんまり拘らないよ、流石にすきま風が入るのは勘弁だけどさ。
あ、そうそう。なるべくお隣さんとは近すぎない方がいいかな?
多分騒がしくしそうだしねぇ。
でも郊外はダメだわ、役所とかの手続きに行き来するのが面倒になるからさ。
そんな感じで希望を伝えて、何件か内覧に行こうじゃないか。
サーカス探し?まぁついでかな?
「おー、ちょっとばかし鄙びた感じのいい街じゃないのさ」
心臓部であるロードサイト型店舗の立ち並ぶ大きな道路、それを横道へとひとたび曲がれば人々の生活がにわかに匂い立ってくる山間の町。そこに猟兵、数宮・多喜が降り立っていた――仮の生活拠点探しのために!
「よし!早速不動産屋に向かおうじゃないか!」
数宮・多喜にはしっかりとしたビジョンがある。
すなわち、小さくても庭付き一戸建て。お隣さんとはそれなりに距離アリ。後は郊外ではなく、役所などへのアクセスが容易な町中。
そう、数宮の理想の一時の宿と、猟兵の調べたUDCの居場所の条件はかなり一致している!物件を探し歩いていれば、ついでにUDCが見つかるのも時間の問題だろう。というわけで、内覧ツアーという個人の優先こそが今回の彼女の方針となったのだった。
「どうせなら地域密着型の不動産屋が無いか調べてみようかね?地元商売で続いてそうな所なら、良さげな空き家の情報もあると見た!」
軽く通信強化スマートフォンで下調べを行い、地元の物件に強いという評価を見た不動産屋に数宮は颯爽と向かう。だがそこで、数宮は予想を裏切る案内を受けた。
「申し訳ございません。今日中に複数の内覧となると難しいかと……」
「そういや物件って普通は時間かけて探すようなモンだったねぇ――ああそうそう、ちょっと聞きたいんだけどさ?」
普通、物件探しは時間がかかる。内覧の予約をしていないと、管理会社と希望者の予定を適切にすり合わせるのが難しいからだ……が、こういった時に己の行動をねじ込むための術が数宮にはある。
ユーベルコード、罪暴く言の葉。数宮はそれを、相手を言いくるめるために発動する!
「別にすべての物件が内覧不可ってわけじゃないんだろ?あたしの出した希望に沿う所があれば1~2件であっても見ておきたいのさ。なんせ、飛び込みで来るぐらいの思い付きで物件探しに来てるからね?気が変わらないうちにってやつだよ……もちろん、無理は言わないさ。可能なら、だよ」
「もちろん、可能な範囲であればお応えしましょう。我々の望みは、物件を求める人と物件が結ばれる事ですからね」
言葉の外側に、様々な意図を感じさせる視線や話法を用いた言いくるめ方だった。しかし、受けた不動産会社の社員も、数宮の言葉に軽く応じてみせた。そのことに、数宮も社員もわずかに笑みを深める。
どちらからともなく手が差し出され、握手が成された。今日できる範囲のみとはいえ、全力の物件探しがここに約束されたのだ。
「――ま、結局内覧は3件ぐらいしか回れなかったけど」
夕刻。大量の資料とそれに紐づけられた情報が書かれた地図を手に、数宮は住宅地を歩いていた。
中は見れなかったものの気になった物件。その外観を見に来たはずの彼女は、そこで個人ではなく猟兵としての本命に行き当たった。
「こっちで収穫があったね」
異常に気付いたのは今しがた。背中側から聞こえていた数名の若者の声が、ふとした瞬間に消えた。
そこでUDCの存在を思い出した数宮が注意深く来た道を戻れば、認識阻害のせいで見落としていた横道を見つけたのだ。
ぼうぼうと雑草が生い茂る児童公園らしき空間と、不自然なまでに黒いサーカス小屋。
夕日に照らされたそれらが、先ほどまで視界にすら入らなかった道の先にあった。
苦戦
🔵🔴🔴
第2章 冒険
『黒いサーカス』
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POW : 気合いとパワーで助ける
SPD : スピード重視で助ける
WIZ : 賢く効率良く助ける
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「住所的にはこの辺かな?あ、こっちか」
「めっちゃ普通の公園だねー」
仲良しグループの学生達。そのうちの一人の手に渡ってしまった、サーカスへのチケット。
訝しみながらも、本当に不思議な出来事と遭遇できたら万々歳だと、彼らはその誘いに乗ってしまった。
「マジでサーカス小屋あるじゃん……みんな噂は覚えてる?なんかビビっても大声とか出したり攻撃しようとすると消えちゃうらしいから、写真も動画もソっとだよ、ソっと」
つい先ほどまで普通に前を人が歩いていたのもあって、彼らはこの好奇が命にかかわるものだとは露ほども思っていない。
更には今までの噂でたとえ怪異が本物であっても生存方法が確立できていると思い込んでいるから、逃げ出せる気ですらいる……故に彼らは、グリモア猟兵の予知にかかるような“UDCが狩れる確信を持てる獲物”なのだ。
彼らにとって幸いなのは、彼らがサーカス小屋に踏み込んだ直後から猟兵が訪れる事だろう。猟兵たちが失敗してしまわなければ、彼らは助かる。
……反面、UDCが猟兵たちを狩れると思わねば(あと7つ以上の🔴を獲得して油断を誘えなければ)助かるのは彼らだけである。
本当に事件を止める気であるならば、猟兵たちは本来のターゲットを逃がしつつ獲物のふりをしなければならない。
向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
得意なのは近接戦闘とか、【情報収集】も兼ねた見回りとかお話を伺うのも好きですよぉ~。
非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
大丈夫ですよぉ~。手足の二・三本くらいもげてもなんとかなりますのでぇ~。
ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんよぉ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談するのも良いですねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
堅実にきちんと片づけたら、皆で美味しいものでも食べて帰りましょう~。
※アドリブ・連携歓迎
橙色の夕日を受けた黒いサーカス小屋。その長い影が向・存の通ってきた住宅地の横道と重なっている。
影の絨毯をまっすぐに進めば、ひらひらと誘うように揺れる布の隙間から中を伺うことができた。
「おや、これはぁ~……なるほど、魚影ばかりが噂になるはずですねぇ~」
そう呟いた向存は、情報の収集のためにじっと中を見つめる。
特大の異常を無視すれば、目立つのは入口と反対の壁側に寄せて設置された丸い舞台と、その舞台上で延々と玉乗りやお手玉を披露する顔を絵で塗り固めたような道化ぐらいのもの。
この道化よく見れば顔面がかなり細い。生きた人でないことが、一度死んだ事のある向存にはすぐに見て取れた。
「仮面のように厚く塗られているだけで、中身は白骨……普通の人がそれに気づくのは、この光景に慣れてからという事ですねぇ~」
向存の視界に入っている5名の少年少女らは、舞台ではなく壁や天井側に目を向けていた。情報収集を意図していなければ、向存の目にも特大の異常であるそればかりが鮮やかに映っていた事だろう。
寂しい出し物小屋の空間を、縦横無尽に極彩色の平面な鮫が飛んでいた。
弱れば壁や天井に染み入り黒の一部となるそれの出どころははっきりしない。本命たる怪異が隠れながら、この鮫たちを生み出し続けているのだろう。
「情報収集はこの辺にして……中の子達を救う術を敷きましょうかぁ~」
向存は小屋から一歩引き、できるだけサーカス小屋を含む公園の中央へと向かう。
そうして発動したものは、ユーベルコード伝承者。
「昔話を語りましょうかぁ~。どの世界にも、どの国にも似た物語があるもの……これよりこの場は逃竄譚。怪物の巣に潜り込んでしまった者たちが、無事逃げ延びるためのお話ですよぉ~」
日本で言えば三枚のお札や神産み神話の後半。つまりは迷い込んだ者が怪異から逃げきる物語の定型。向存のユーベルコードにより、この空間はその概要に沿うものへと変化していった。
この後の失敗率を下げるためのそれは、あまりに当然のものとして場に敷かれたためか、まだ怪物の逃走を誘発することはない。
「ふぅ……怪物がこのまま中にいることも強化できればよかったのですが、そこまで保証する話にするとご同輩の皆さんの行動を阻害しそうですし、最低限のものですねぇ~」
空間に染み渡る改変を確認し、向存はその場に留まる。
「あとはこれを維持しつつ、中の情報をご同輩にお渡ししていきましょうかぁ~」
次の猟兵に、中の人々を任せるために。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
うーん、参ったねぇ……
どう気取られないように立ち回ったもんか、悩ましいよ。
ここは仕方ない、久々に影の追跡者を呼び出してサーカスの外で待機してもらうかな?
そうすりゃ万が一何があってもある程度は外の様子を把握できるだろうし。
後はある程度アタマ空っぽにしながらサーカスの様子を眺めるかな?
一応それとなく出入り口の方角とか歩きやすい幅の椅子の隙間とか見定めつつ、ステージの演目や周りの装飾を興味深そうに見ておこうか。
もちろん演技だよ、演技。
決してサメの種類がどんな感じなのかとか、着ぐるみに似た種類のサメがいないかとか探してるわけじゃないかんな!!
「うーん、参ったねぇ……」
サーカス小屋の入り口まで来て、数宮・多喜は頭を悩ませる。
UDCからの警戒は緩んでいると言い難い。この状況で気取られないようにしつつ学生らの救助を行う、という相反しそうな要素をどう満たすか?数宮はピンと来なかった。
「ここは仕方ない、あたしも外の警備を……あ、久々に影の追跡者を呼び出そうか?」
思い立ったら即実行とばかりに、数宮はユーベルコードによって影の追跡者を召喚する。彼女と五感を共有するそれを外に待機させることで、外で起きた異常に即座に対応できるようにしたのだ。
「外にも猟兵はいるし、サポートだけが過剰になっちゃう気もするけど……ま、なんかの役には立つだろ!よし、あとは中をぼんやり見させてもらおうかね」
そうして、数宮本人はサーカス小屋の中へと踏み込む。
重い曇天のような息苦しさを感じるサーカス小屋の中だが、その詰まる息を思わず吐かせるほど輝くように鮮やかなサメの絵が鮮烈に飛行する。……が、それは数宮の想定よりももっと暴力的な光景だった。
「もうちょい……こう、泳ぐ、みたいな表現できる感じだと思ってたけど……素早いね」
ゆったりと優雅に泳ぐ感じではない、この絵たちには飛ぶと形容すべき勢いがあった。想定を超える速さで、視界を惑わすような極彩色が残像を伴いながら飛び回る光景に、数宮はなんとなく頭痛が起きたように感じて眉間を揉んだ。
血の匂いを嗅ぎつけて最高速を出しているタイプのサメ達の自己主張を無視し、数宮は敢えて表情の感情表現レベルを落として、ステージやこの小屋の状況そのものに目を向ける。
興味深そうに「へぇ~」などと言いつつ、あまり詰まっていない客席の間を歩く。ただの物見遊山だと思わせるには十分な素振りをしつつ、数宮はただ見たものを見たままに蓄積していった。
厚塗りの絵の具で誤魔化されただけのドクロのピエロ。まばらに置かれた、背もたれの無いベンチ状の客席。サメたちのおかげで存在が薄まっている、天井からぶら下がる朽ちかけた万国旗。側面のペンキが所々はがれた丸い舞台。
(舞台はともかく客席は固定はされてないようだし、邪魔になっても蹴とばしゃいいね……うん?)
顔に出ないようにひっそりと戦う時の事に思考を向けていた数宮だったが、共有している影の追跡者の視界に人影が映ったことでそちらに意識を割く。
どういうわけか隠された横道の存在に気づいてしまった子供が、公園に近づいてきていた。
すぐさま影の追跡者で、子供を通せんぼする。いくら見つかりづらくともすぐ前に来ればなんらかの存在が邪魔している事には気づくのだろう。子供は恐れたように逃げ帰っていった。
(猟兵が集まってきてるのもあって、認識阻害の方が薄れてきたのか?……じゃあ、こっちは放置だねえ)
彼女の肉体のほうの視線の先に、サメのインパクトが薄れて来たのかこの場の気味悪さに気づきだした学生達がいる。青い顔でどうすればいいか考えあぐねている様子だった……そんな彼らに働きかける気を起こさないよう、数宮は己を御す。
外でユーベルコードを発動している上に、横道に入ろうとした猟兵以外の人間を追い払わせている。追加で彼らを逃がす行動をとれば、UDCに逃げる理由を与えてしまう気がしたのだ。
少々の気まずさと共にそらした目線の、その前をヒュンと抜けていったサメは何という種類だったか。
シュモク、ネコ、ホホジロ。ざっくりとしたサメの種類とともに、グリモアベースでうかんでいた景色にチラと映った存在がつけていたサメに似ているのはどれだろうか……などといったことを、意図的に考える。
お前の術中なのだと、まだ姿を見せぬ怪物に伝えるかのような素振り。油断を誘うためのそれを続けながら、数宮は先ほどのような万が一を防ぐために影の追跡者を維持し続けた。
苦戦
🔵🔴🔴
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから10年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!
あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ
商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします
「なんか写真うまくとれてない……私、場所変えるね」
都市伝説に遭遇したという話をするにあたって、鮮明な画像はやはり必要だ。
そんな強迫観念に駆られた獲物が、最初の犠牲に立候補するかのように仲間から離れていく。
(早く、写真を撮ろう。そしたら後はもう、何かをすればここが消えるはず――)
「――お嬢さん。はやく逃げたほうがいいですわ」
「ヒッ」
学生が息を呑んで振り返る。そこにはお化けめいた布をかぶった少女、納花・ピンチンがいた。
「まぁ、そんなに驚くなんて……お嬢さん、今とても怖いんではありませんの?」
「こわ く、ない」
「声が震えてますわ。いったん落ち着きましょう?はい、飴ちゃん」
スッと飴を差し出すピンチン。普段は情報収集に使っているこうした甘味は、相手の気持ちを解すのに役立ってくれるのだ。
学生が戸惑いつつも飴を口にして、甘さに意識が向いた頃合いでピンチンは再び学生に声をかけた。
「今すぐ逃げるべきですわ。心配せずとも、お嬢さんの仲間もアタシのように後から来た人が逃がしてくれます」
ピンチンがそう言って周囲を示して、学生はようやくサーカス小屋に人影が増えていたのに気付いた。
「……それなら、出たい」
「分かりましたわ。さあ、お手を」
布越しに差し出されたピンチンの手に学生の手が重ねられ、足音と気配を消すように出入口に向かう。
しかしあと一歩というところで
ガタンッ
舞台の方で音が鳴った。思わず足を止めた学生の手を、ピンチンは強く引いて急かした。
「見てはいけませんわ」
短く声をかけ、振り返りかけた学生を外へ連れ出す。あっさりとした脱出劇ではあったものの、視界の端に触れた恐怖の後押しのせいか学生の顔は青ざめていた。
「あれって」
「……なんであれ、怖い事はもうおしまい。ですわ」
それを聞いた後、学生は何かに耐えかねたようにしゃがみ込んでしまった。
小さく浅い息をする背中を、ピンチンは落ち着けるようにゆっくりさする。
「もう大丈夫。大丈夫ですわ」
恐怖は、気づいてしまった人から呑み込んでいく。無自覚であろうと気を張っていた時点で、この学生は極彩色に隠された脅威に呑まれる瀬戸際だったのだろう。
(そうなる前に助けることができて、良かったですわ)
小さくなり震える背をさすりながら、ピンチンはホッと安堵の息を吐いた。
成功
🔵🔵🔴
木元・祭莉(サポート)
「なになに? ドコ行こっかー♪」
15歳の人狼少年。
前衛肉弾派で、先頭に立って積極的に行動します。
まだまだ未熟なアホの子です。
いつも深く考えず、場合に応じて反射的に、楽しそうにテンション高く対応します。
どどーん、ばばーん、ひゅいーんなど、擬態語を多用します。
ユーベルコードは、地味な使い方をすることが多いです。
アイテムも地味ですが、時に妙な使い道を閃きます。
テキトーに、ヘンな使い方をしても大丈夫です!
いつも笑顔で、後先考えず。でもちょっとビビリ。
鳥類全般がちょっとコワくて、わんこが大好き。
冒険中は、野性の勘を信じてポジティブに動きます。
罠に嵌まってもニコニコ。怪我をしてもニコニコ。
あとはおまかせ!
下原・知恵(サポート)
「話は聴かせてもらった。つまり……ここは|戦場《ジャングル》だな!」
◆口調
・一人称は俺、二人称はお前
・ハードボイルド調
◆癖・性質
・公正と平等を重んじ、己を厳しく律する理想主義者
・自分の現況を何かにつけてジャングルとこじつけたがる
◆行動傾向
・己を顧みず同志の安全と任務遂行を優先する(秩序/中立)
・UDC由来の人工心臓が巨大ゴリラの変身能力をもたらす
・ジャングルでの戦闘経験から過酷な環境を耐え抜く屈強な精神力と意表を突くゲリラ戦術を体得している
・とりあえず筋力で解決を試みる。力こそパワー
・手軽に効率よく栄養補給できるバナナは下原の必需品
・生真面目がたたり、意図せずとぼけた言動や態度をとることがある
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
普段の口調は「チンピラ(俺、てめぇ、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )」
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
冒険等では割と力業を好みますが、護符衣装を分解して作った護符などを操作したりなどの小技も使えます。戦巫女なので、破魔・浄化系統も得意。
護符を足場にしたり、猫車を使ったり機動力もある
ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。お触りなしのお色気までが許容範囲。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
一人離れた学生が猟兵に説得されていた頃、複数の猟兵たちと共に内部に侵入していた木元・祭莉はある変化に気づいた。
「なんか、入った時と動きが変わってる?」
魚のはずなのに鳥のように空を切るサメの絵の事を、木元は己の勘に従ってなんとなく警戒していた。
その彼の勘の部分が、ちょっとづつ何か変わってきていると告げている。何がどうなっているのかまではわからないが、ビシビシと高まる違和感に木元は自然と戦闘態勢に入っていった。
そんな彼の様子に気づいた猟兵、下原・知恵と陽環・柳火も即座に動けるように己の武器に手をかける。
そのまま一分ほど、猟兵と学生の一人が脱出するのを横目で見守りながら彼らは何が起こってもいいように緊張感を高めていた。そして。
「なんかヤバい事が起きる気がする!」
ガタンッ
異常の気配が一線を越えたと感じた木元が声を上げたのと同時、舞台の上で骸のピエロの首が落ちた。
「ヒッ!」「わっ?!」「な、何?」
唐突に起きた明確な、そして趣の違う異常に学生達の視線と意識が向く。そうして見たものは、薄気味悪さに気づき始めていた彼らの恐怖を呼び起こすのに十分だった。
獲物の香りである恐怖、それに呼応したのか飛び回っていたサメが急旋回し、彼らに向けて動きだした!
「させないぞ!」
先陣を切ったのは木元!すさまじい瞬発力で助走をつけて思い切り跳ね上がり、学生達に最も近づいていた大口開けた極彩色に掴みかかる!
「ばりーーーーんっ!」
そうして背びれのあたりに組み付くと、その異常を容赦なく引きちぎる!色彩の破片となって崩れるサメの絵!
木元の派手な動きと大声に、学生たちも舞台上の恐怖ではなく今起きた出来事に意識を持っていかれる!
「え?ええっ」
「デカい声出したら消えるんじゃなかったか?!」
今まで無害だったものが牙を剥いてきた事、そして噂話との乖離。混乱が増した彼らの死角を狙って第二陣のサメ達が飛来する!
今度は小型のものが数多く飛来してくる中、サメ達の行く手を阻むように何かが投げ込まれる!即座にそれは光の弾をばらまきはじめ、密度の高い弾幕で次々とサメ達の破片を飛散させる!
投げ込まれたものは陽環の武器の一種である爆符『烈火乱れ咲き』。様々な弾幕を織り込み記録したそれの起動を隠れ蓑に、彼女自身も刀を手にして学生たちの前に飛び込んだ!
「ハッキリしねえ変な噂に、こんな段階まで頼ってんじゃねえ!とっとと逃げな!」
荒い口調ながら陽環が学生達に逃げるよう促す間にもサメは飛来!
弾丸めいて近づいてくるソレらを手にもつ刃で切り捨てる陽環と、掴みかかっては粉砕する木元!彼らを支援すべく、下原は少々引いた位置から自動小銃にて近場のサメ達を一掃していく!
ホラーめいた状況からの、いきなりの活劇めいた状態に唖然とする学生。下原も、そんな学生たちに逃げるよう声をかける!
「ボヤっとしてるそこのお前ら、ここは既にサーカスじゃない……命懸けのジャングルだ!今すぐ動かなければ、狩られるぞ!」
それでも腰を抜かしたように座り込んでしまっている彼らを見て、そのような逃げ出せない者達だからこそ今回事件に発展することが予知されているのだという事に下原は思い至る。
故に彼は掃射を続けながら、若き猟兵たちに学生の事を任せることにした。
「祭莉に、柳火だったな?お前らは――」
「わかった!!」
「ぎゃあ!」
「ちょっと何するの?!」
下原がすべてを言い切る前に、木元は両肩に一人づつ、米俵でも担ぐかのように学生を確保!そうしてそのまま、不満の声も意に介さず出入り口に向かってダッシュで駆け出した!
「なるほどな、俺もわかったぜ。 おい、あんな風に運ばれたくなきゃキリキリ動きな!護衛はしてやる!」
「ひぇっ!」
「わ、わかった!わかったから!」
陽環も残る学生二人の首根っこを掴んで離脱を促す。わけがわからないなりに初動を与えられた彼らは、半ば陽環に追い立てられながらも出口に向かって走りだした!
既に脱出した木元たちのかわりにと、飛来するサメ達は陽環の護衛する学生へと向かっていく!
「通り一遍の動きしかできねえなら、俺の敵じゃねえぜ!」
それを、やはり刀の一振りで切り捨てる!間引かれているとはいえ悪意が一か所に集中する中でも戦い慣れしている陽環の息は上がることなく、学生の周囲を跳び回りながらサメを色彩の破片へと変えていく!
「――こっちと戦う気は無いって事か。って事はもう十分ナメられてるだろうからな、打って出るか」
そう呟いた下原は、掃射を続けつつも冷静に周囲を睥睨した。
圧の籠ったその視線に気づいた何者かの存在が小さく跳ねるのを、彼は見逃さない。
「小動物の反応だな」
丁度良く弾切れした自動小銃を手に、下原は筋肉を躍動させる!
(猟兵を舐めたからこそ攻勢に出たと思っていたがまだ逃げる気か。ならここで、怒りをこちらに向けさせる!)
暗いテント内、黒い布の内側。舞台を照らす灯りの外側にいた、ノイズがかったような黒を纏った子供程度の背丈の存在。
下原はそれに向かって距離を詰めつつ、打撃武器としても信頼を置く自動小銃を大きく振りかぶった!
「うおおおおおおお!!!!」
力を籠め、振り下ろす!
その軌道から己を守るためか、この小さな怪異は獲物を追っていたサメをすべて己の盾として招集!薄くて強度のある板を、一度に何枚も割るかのような手ごたえが下原に伝わってくる!
「ぐっ……!せぇい!!」
サメを破砕しながらも途中で止まりかけた手を、己の腕力でもって最後まで振り切る。
自動小銃の軌道は逸らされ、UDCに直接当たる事は無かった……が、そこで本当に、猟兵たちはこの怪異の怒りを買った。
ばちりと、怪異の胸のあたりに赤い光が灯る。
「ナぜ」
反撃を喰らう前にと飛びのいた下原の耳に入ったのは、疑問を示す音。
それが聞こえた瞬間から周囲に、いや、今まで怪異の場だったはずのサーカス小屋に変化が起きはじめた。
「わ!テントが溶けてく!」
木元が溶けたと評するほどに、サーカス小屋を構成する布が急速に劣化し朽ちていく。黒い布から、黒い魚影が散っていく。
そうして今まで寝床にしていた場所を捨てた黒ずんだサメ達は蝋燭の最後の光めいて色とりどりに輝き、夕暮れから夜へと変わりつつある空へ解き放たれた!
「逃げるべき場所はもうちょっと外側だったって事かよ!おい、お前らあと一息走れ!」
猟兵によってサーカス小屋から連れ出された学生達を、陽環が再び急かす!
「“噂”の領域は、サーカス小屋を含むこの公園全部だ!そうだ、そのまま逃げろ!」
「うわー!あの魚たち、まだあの人達狙ってる!」
公園と外をつなぐ横道へ逃げる学生達を追う濁流めいた色の流れ。しかし単調且つわかりやすい軌道のそれらを外にいた猟兵達は次々と打ち壊していく!
「しつっこいな!させねぇぞ!」
「うん、させないよー!」
無我夢中に輝くサメを破砕していくうちに、気付けば猟兵達が対処すべき極彩色はわずかにUDCの周囲を回遊するものばかりとなっていた。
そして当然、その頃には学生達は公園の外でUDC組織の職員により保護されていたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『『カルハリアス』になれなかったもの』
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POW : 何故誰も絵を見てくれないんだ!
攻撃が命中した対象に【鮫の落書き】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【翼を持つ大量の鮫】による追加攻撃を与え続ける。
SPD : 描きたいのに、描けない!
自身からレベルm半径内の無機物を【元の物体の色をした絵の具】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ : こんなもの、鮫ではない!
召喚したレベル×1体の【双頭の鮫】に【ジェットエンジン】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:koharia
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ケルシュ・カルハリアス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
朽ちた布もいつしか、山間を抜ける風に吹き飛ばされていた。
サーカス小屋の痕跡はいつ崩れるともわからない骨組みと、どこの誰だかもわからない白骨が横たわる円状の舞台ぐらいのもの。
噂のメインとなっていたサーカス小屋は、絵画のサメによる侵食を受けつつも、それによって維持されていたのだろう。舞台を囲うように置かれたベンチたちも、朽ちて崩れ落ちている。
「ナぜ 描けナい」
猟兵たちの前に、ゆらゆらとUDCが歩み出る。
知り得ぬいつかの神隠しの犠牲者だった誰かは、骸の海から染み出したことでただただ生前の懊悩を発しながら今を害するモノになっていた。
「なゼ」
問いの答えは何処にもない。今あるものは、過去から今への敵意のみ。
逃げる機を失ったUDCのその敵意は今この時、猟兵たちに向けられていた。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
あの姿は……テレビウム?
何故キマフューじゃなくて、このUDCアースに……
どこでどう迷っちまったんだ?
って問うてもダメだろうね、完全にイカれてやがる。
アンタ自身の為にも……ここはキッチリ仕留めにかかるよ!
ちょっとはサメ映画も見たことがあるんでね、流石に空飛ぶ双頭のサメくらいじゃ動揺なんてするもんかよ。
気合いのままに周囲へマヒ攻撃を兼ねた電撃衝撃波を放って呼ばれたサメどもを吹き飛ばしながら、そのままダッシュで奴さんの本体へ突っ走る。
そうして勢いのままにグラップルで投げ落とし、追撃の踏み付けだ。
そうしている内に周りにゃ【超感覚領域】が完成するだろ、諸々痺れて爆発しちまえ!
「あの姿は……テレビウム?何故こっちの世界に……どこでどう迷っちまったんだ?」
そう呟きながらも、数宮・多喜は小さく地面を蹴り、ライダーブーツを通して体内電流を地面に刻む。
何気ない行動に紛れ込ませるように下準備をしつつも、彼女は自分の呟いた言葉にとっくに答えを出していた。
「って問うてもダメだろうね、完全にイカれてやがる」
どのような流れでこの世界にたどり着いたとしても。かつて別世界に生きていたであろう何者かの尊厳は、この立ち現れる過去を放置する限り毀損され続ける。
存在の主体が過去へと落ちてしまえば、現在にあらわれたものは影に過ぎない。そしてそれはどんなに親しく見えようとも、過去の一部を取り出したに過ぎない上に……とても濁りやすい。
その事を、数宮は良く知っていた。
「ゥ、ヴ……こんナ、モの」
数宮の言葉や動きに反応したのか、UDCの周囲を回遊していたサメ達が溶けて激しい色彩の水たまりとなる。そこから左右一対の頭をもつサメたちが大量に、バシャバシャと水音をたてながら飛び出してきた。
「――コンなもノォ!さメでハッ!なイィ!!」
しかしこの召喚されたもの達を、どうやらUDCはお気に召していないらしい。
明確な形を得たにもかかわらず創造主に否定された化け物どもが、否定の言葉と共に極彩色のジェットエンジンを付与され高速で数宮に襲い掛かってくる!
「そんなもんで怯むアタシじゃないよ!」
サメ映画に対する造詣もある数宮は、襲い来る双頭の飛翔鮫達に臆することなく強く前へと踏み込んでいく!気合で空を割くように前に出ながら、襲い来る鮫達の鼻っ面へと麻痺を誘う電撃衝撃波を叩き込む!
「うおおおおおおお!!!!!」
踏み出す歩幅は素早く大きく、鋭いダッシュとなってUDCの元へと突っ切っていく!無論その間も邪魔になる位置の双頭鮫には攻撃を叩き込み、鮫どもは電撃の余波をその身に残したまま無惨に吹き飛ばされ転がってゆく!
「アンタ自身の為にも……ここはキッチリ仕留めにかかるよ!」
勢いのままに腕を伸ばし、その手でUDCの襟元を掴み引き寄せ、抱え込む!水たまりから魚影へ戻りつつあった絵の具から本体を引きはがし、ダッシュの勢いをつけたまま跳躍!がっちりとUDCを確保したまま、鋭く、高く飛び上がった数宮!その高さから、電撃衝撃波の勢いを借りてUDCを大地にのめり込むほどに深く投げ落とした!
「ギ―z__ァ゛√ ̄ ̄!!!!!」
地面と衝突しただけではない、存在を揺るがす激しい痛みがバチバチと音をたてながらUDCの全身を駆け巡る!
「諸々痺れて爆発しちまえ!」
流れる電流のせいで動けぬUDCの視界に映ったものは、己を目掛けて流星の如く追撃を繰り出す数宮の姿。
逃げ得ぬ攻撃である踏み付けがUDCの存在強度に穴を穿つと同時、UDCの全身に再び激しい電撃が駆け巡る!
UDCを襲った雷撃の正体は、数宮のユーベルコード超感覚領域による自動攻撃!特殊な靴で地面に刻み込んだ体内電流、電撃の属性を持つ衝撃波。それらはこの戦場にユーベルコードの領域を形成し、数宮多喜とその仲間への敵意に向けて自動攻撃を放つ礎だったのだ!
「最初に動いて目立つようにはしたけどね、アタシに目を付けたのがアンタの運の尽きさ」
怒りとも悲鳴ともつかぬノイズが響く中、数宮は反撃を喰らわぬようにUDCの上から飛びのいた。
そのまま距離を取ろうとした数宮に対して、偶然生き延びていた鮫達が反応したが……当然、ユーベルコードの電撃は召喚物たちにも襲い掛かる!
空気を裂く派手な音を立てながら迸るスパークによって召喚されたサメ達が破裂し消える中、数宮は息を整え次の行動を戦場の仲間に託すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー(サポート)
フラスコチャイルドのサイキッカー × 寵姫です。
常に丁寧語で、あまり感情を乗せずに淡々と話します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、目的達成のために全力を尽くします。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
***
ごきげんよう。
戦力が必要と聞いて手伝いに来ました、エリーです。
念動力で、戦いをサポートしますね。
敵の攻撃を妨害したりとか目潰ししたりとか、そういうセコイ工作は任せてください。
攻撃は念動力で締めたり潰したり斬ったり突いたり…
まぁ、敵の物性に合わせてそれっぽくやりましょう。
状況に応じて、適当にこき使ってください。
電流迸る公園内にて、UDCは気づく。
コレは壊れてはいたが、猟兵を見るたびに己を貫く雷撃が何に反応しているかに気づけないほど愚かではなかった。
「――ォ オ゛ぉオッ!!」
打ち倒さねばならぬものを、そうと認識することを封じられている。
その儘ならぬ状況が、かつて何かを目指したのにそうなれなかったモノの心的外傷を刺激した。
「描きタいのニ、描ケなイ!!!」
ノイズ交じりの絶叫と共に僅かに残されていたサーカスの痕跡が溶けおち、同色の絵の具へと変じていきながら渦を描き出す。
あたり一面を巻き込むようなそれは、ただただ己の存在の発露として行使される超常現象。UDC当人は意図していないが先の猟兵が作った状況の隙をつく形で形成された見えている罠。
ムリに突破しようとすればただでは済まないと感じさせるそれに対応すべく、一人の猟兵が静かに進み出た。
「多分、行けると思います」
一歩前へと踏み出したエリー・マイヤーは、その言葉に続けてきわめて自然な動作でユーベルコードを発動する。発動したユーベルコードに起因して、弾幕めいて張り巡らされる絵具の渦の中を一筋の念動波が突っ切った。
「敵自体は最初に見えていた場所から動いていませんね――捉えました」
目の前のUDCの座標を念動波によって確定させたエリーは、ユーベルコードを次の段階に進める!
絵具の渦の先に見えるUDCの座標へと、直接膨大な念動力を送り込んだのだ!座標を起点にした念動力は元々その場にあったものの居場所を奪うように爆ぜ、渦に守られていたUDCを宙へと弾き出した!
「さあ、戦うべき相手はこちらですよ」
上空へと衝撃と共にぶっ飛ばされたUDCにむけて、エリーはあえて手を叩き、声あげた。敵の声を把握してしまったUDCは思わず渦巻いていた絵具をエリーに向かわせようとして――絵具がエリーに襲い掛かる前、地面に衝突すると同時に先の猟兵が仕込んだ自動攻撃の雷撃を再び喰らう事になったのだった。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
オブリビオンは誰かの残渣
骸の海で歪んでしまった誰かの思い
だから言葉をかけても意味は無い
…だけど
無駄だとわかっているのに何故だろう
手を尽くしてあげたくなる
自己満足なのかな
胸鎧と同化、黒の全身鎧の異形に変身
けれどまだ暗夜の剣は抜かず彼(たぶん)に語りかける
「絵を見てほしいの?描いてご覧よ」
変身したのは彼の絵が映えるようにするため
気が済むまで絵を描かせる
俺は芸術に詳しくないけど
たぶん苛立ちながら描く絵じゃ満足できないよ
ただただ無心で描けばもしかしたら満足できるかもしれない
だからひたすら描かせる
俺はタフだからね
立ち続けてみせるよ
彼が落ち着いたら解放・宵を発動
俺のとっておきの一撃を持って骸の海におかえり
最初から見た目としてはボロボロであったUDCは、猟兵の攻撃により傷ついていたが未だ消え去る気配無く、何かを恨むように凝った呪いめいて今にしがみついている。
そんな様子を見ながら、サンディ・ノックスは黒騎士としての姿に変じる。サンディもまた、歴戦の猟兵だ。こうしたものが普通は救えないものだと理解している。
(だけど。無駄だとわかっているのに何故だろう、手を尽くしてあげたくなる。……自己満足なのかな)
電撃の領域から逃れるためか意識が内心へと籠っている様子のUDCは、今もザラザラとノイズがかった音を発している。
「なゼ だレも 絵ヲ見てクれなイんダ……!」
「絵を見てほしいの?なら、ここに描いてご覧よ」
サンディが本来対話すべきでない音に返事をすると、UDCはまるで当然の使命とでもいうかのようにサンディの黒鎧に絵筆を叩きつけるようにしながらサメの絵を描きだした。
それと同時に生まれる大量の翼の生えたサメは、サーカスの中にいたときのように悠々と空を旋回し……そして己を生み出した絵が描かれているサンディへと敵意を向けだした。
「気がすむまで、描けばいいよ」
敢えて己の身を黒いキャンバスとして差し出したサンディは攻撃を返すことなく、ただただ殴りつけるように走らされる絵筆とそれによって生まれるモノたちを見る。
(苛立ちで描くから満たされない、ってこともあるだろう。せめて無心で描けば――)
無心で続けた後にこそ、何か満足する物もあるかもしれない。
サンディの行動は、いつか消えた誰かの心に向けたものだ。過去の誰かの残渣であって、とうに歪んだものだとしても……それで救われる何かがあるなら。自己満足かもしれないと自分で自分を疑いながらも、彼はただ漆黒の鎧の上に極彩色を描く絵筆を受け止め続けた。
当然のように、その代償として状況は次第に悪くなっていく。止まらぬ絵筆によるラクガキめいたもの一つ一つが、それを狙った大量のサメを呼び寄せる。
絵筆がはしるたびに増えていくサメを、他の猟兵や既に設置されていた自動攻撃が叩き落していたが、それでも翼をもつサメがサンディに襲い掛かる回数は次第に増えていく。
「大丈夫。俺はタフだからね、立ち続けてみせるよ」
それでも、彼は言葉通りに痛みに対する耐性で受け流し、立ち続けることで目の前の“誰か”が落ち着くのを待った――そして、それは無意味ではなかった。
サンディの鎧の表層が絵の具で埋め尽くされる頃、UDCの手に握りこまれていた絵筆がぽとりと落ちた。目の前いっぱいにある絵が、景色が、今ようやく見えたかのように“誰か”は凪いだ様子を見せていた。
もう十分だろうと、サンディは黒剣を抜く。
「俺のとっておきの一撃を持って骸の海におかえり」
一歩引いて、完璧な動きで黒剣を突き出す。
攻撃威力を可能な限り高めた黒剣に貫かれた“誰か”の胸部がその一撃によって消し飛び、まだ消えるには至らぬ“怪異”だけが今に取り残され地を転がりながら高音のノイズを発した。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
よかった、想いを抱えていた「誰か」を満たしてあげられたみたいだ
残るは後始末
まだ残る、歪みもあるべき場所に返してあげなきゃね
「誰か」に免じて無駄に苦しめるのは無しだ
体の一部を魔法物質に変換させて飛輪を作りだし
未だこの世界に残る存在を切り刻む
切り刻んで塵ひとつ残さないつもりだよ
「誰か」が描いた絵に導かれたサメによって消耗してるし
まだ攻撃が続いているかもしれないけど慌てない
冷静にサメの軌道を見切り、攻撃を避けながら飛輪を敵にぶつけ続ける
俺は倒れちゃいけない
それはUDCアースの人々のためでもあるし
なによりやっと解放されたであろう「誰か」を真の意味で解放するために
これを片付けなきゃいけないのだから
エリー・マイヤー(サポート)
フラスコチャイルドのサイキッカー × 寵姫です。
常に丁寧語で、あまり感情を乗せずに淡々と話します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、目的達成のために全力を尽くします。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
***
ごきげんよう。
戦力が必要と聞いて手伝いに来ました、エリーです。
念動力で、戦いをサポートしますね。
敵の攻撃を妨害したりとか目潰ししたりとか、そういうセコイ工作は任せてください。
攻撃は念動力で締めたり潰したり斬ったり突いたり…
まぁ、敵の物性に合わせてそれっぽくやりましょう。
状況に応じて、適当にこき使ってください。
響き渡るノイズ音の中、サンディ・ノックスは手に残る感覚から思いを抱えた何者かを満たしたのだと確信する。
それを証明するかのように、先ほどまでのUDCと違い今この場に残るUDCは今への敵意を明確にしていた。
先ほどの一瞬の間はすべてが空で静止していたUDCの生み出したサメが、地に落ちていた絵具が、動き始めた。周囲を溶かした絵具が猟兵を無差別に狙い、翼付きのサメ達がサンディへと襲来する。
大本たるUDCは今を生きるもの達への敵意の代償に、猟兵の構築していた自動攻撃を受けているが……ただ悪意を持ち攻撃する事象と化したそれは、衝撃を受けても途切れず一定のノイズだけを発していた。
残るは後始末のみだ。
変化を受けて大きく動いたのはエリー・マイヤーであった。彼女は突撃するサメを何とか躱そうとしているサンディの背中側に飛び込み、声をかける。
「背後側の攻撃は、私が捌きます」
言うが早いか、エリーはユーベルコードを発動する。
パターン化された念動力が、対象たるサンディの背後に襲い掛かるサメの群れと、その隙間を埋めるように自身とサンディに向けられた絵具を、超高速で空間から削り取る!
「こっち狙いが多いとはいえ、上や左右の攻撃もうっとうしいですね……えい」
強力だが、削り取られていくのはエリーの正面の一定範囲のみ。故に彼女は、より多くの範囲を守るべく併用可能なユーベルコードを追加発動!
少しだけ意識して前面は薄く、後方に厚く、莫大な拒絶のサイキックエナジーを放出!拒絶のサイキックエナジーによる領域が形成される!
これはエリーへの干渉を無効化するユーベルコード。エリーへの干渉となりうる軌道の攻撃は、その中に入ると圧倒的なエネルギー量で消失する。その結果どうなるか?
エリーの後方の人物の視界が、ぐっと大きく拓く事となる。
「助かるよ。俺は、後始末の方をしてくる」
「ええ。アナタにしか当たらない物以外は、任せてください」
頼もしい言葉にサンディは頷きで返して、その視線を怪異へと向ける。
無秩序に周囲の無機物を絵具に変換し、絵筆を猟兵達へと向け続けているそれは、幸いにも周囲の猟兵や猟兵への敵意に反応した自動攻撃によってその場に留められていた。
「素直にかえった“誰か”に免じて無駄に苦しめるのは無しだ」
サンディはその身の一部をユーベルコードにより魔法物質へと変化させて飛輪を作り出し、稀に飛び込んでくる己への軌道しか持たない攻撃を黒剣でいなしながら狙いを定める。
今この場に必要なのは最後の一押し。還すという明確な意思による、全力の攻撃。
(慌てない、倒れちゃいけない。……還った誰かの、真の意味での解放のためにも、あれを片付ける)
己の一部を武器へと変えた彼は、外殻となる黒鎧に支えられながらも標的を見据え、幾つもの傲慢な飛輪を連続で投擲する。
飛輪はサメと絵具の隙間を縫うような軌道で標的に突き刺さり、その魔力でもって命中した存在をスパンと切断する。
「その身体を刻んであげる。塵ひとつ残さずにね」
サンディは己を狙うサメを黒剣で叩き伏せ、絵具を身を捩ってやりすごしながら、飛輪の投擲を行い続ける。手元の飛輪が減るたびに、怪異が切断されていく。
そうして、切り刻まれた怪異の身体はある程度細かくなったところから、耐え切れず骸の海へと還っていく。
残った歪みが細かく還されるごとに、それが主体であるサメや絵具も存在の強度を失っていき、たやすく処理できるようになり――結果、一片すら残さないというサンディの意思は、確かにこの場で遂行された。
耳に静寂が突き刺さる。
怪異としてのUDCが発していたノイズ音が消えた。空飛ぶサメも、もういない。
「終わったようですね。おつかれさまでした」
「そうだね。おつかれ」
猟兵達が互いをねぎらっていると、やがて戦闘の終了を確認したUDC組織の職員が後処理のために公園内に入ってくる。
邪魔しないようにと猟兵達が入れ替わるように各々帰っていく中で、サンディはふと足を止めて振り返った。
宵闇の中に星が瞬いている。
絵具として細かく散らされてしまった無機物の残骸は回収されていく。
心も、怪異も、それらを引き寄せたであろう因縁も。
全てがどこかへ逃げ去る事無く、綺麗に無くなっていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴