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愛鳥とチョコとイタズラと、ハッピーバレンタイン攻防戦!

#ダークセイヴァー #ノベル #猟兵達のバレンタイン2024

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朧・ユェー



ルーシー・ブルーベル




●続々、愛鳥のチョコプールにダイブするのを阻止の令
 毎年、甘やかな気配が次第に濃くなるたびに、わくわくするのだけれど。
「今年もバレンタインがやってくるのね」
 ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はやはり、今年も待ち遠しくなる。
「白パパが楽しみにしてて、って言って下さっていたし。今回はどんなチョコかしら!」
 考えるだけで、ふふーと笑みが零れてしまうくらい楽しみな、甘やかな日――バレンタインが近づいてきて。
 そしてふと思い返すのは、昨年のこと。
「去年は黒パパが用意してくれたのよね」
 ……とても嬉しかったし美味しかったけれど、黒ヒナさんは大変そうだったわ、って。
「ゲームに勝てたのは良かったけれど、黒パパ悔しそうで……」
 そこまで紡げば、ルーシーはハッとして。
 瞳をぱちりと瞬かせ、思うのだった。
 ……あれ? 今年、黒ヒナさんだいじょうぶかしら? って。
 それは、彼女の予感めいたものであったのだけれど。
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)の口から、ちょうど同じ頃、聞こえるのは。
「またあの日、バレンタインデーが近いか」
 言の葉と共に鳴らされる、大きな舌打ち。
 そしてやはり彼――黒い方のユェーが思い出すのも、去年のこと。
「あんな簡単に見つかるとは……」
 ……アイツにイタズラするつもりが失敗した、と。
 それは、去年のバレンタインのこと。
 作った黒雛そっくりのチョコの隣に、ホンモノの黒雛もしれっと並べて――どれがホンモノの黒雛か? なんて。
 そんなイタズラゲームを仕掛けたものの。
「お前がもっと動かないようにしなかったから」
 黒ユェーがジロリと見るのはそう、テーブルの上でご飯をつんつん食べている黒くてまんまるな鳥。
 黒雛が動いてしまったせいでホンモノと気づかれて、折角のイタズラも失敗に終わったのだから。
 そして、そんな視線に気づき、悪寒がしたのか……ピッ!!? と。
 ひと鳴きしつつも、ぷるぷると震える黒雛。
 そんな黒い物体の様子を後目に、黒ユェーは思い返す。
(「本当は白い奴の方が、今年は僕がバレンタインしますからね? と用意をしていたらしいが」)
 でも、去年のことを思い出せば……このままじゃ、俺の腹の虫が治らない、と。
 今年こそは、とキッチンへと足が向いていて。
 イタズラゲームのリベンジで、勝手に今年も自分がチョコを用意……しようかと、思ったのだけれど。
 チョコを溶かしたボールを見つめて、どうするかと悩む黒ユェー。
 だって、去年と同じにしても、また二の舞になってしまう可能性が高いから。
 こんな思考を巡らせる。
「どうやればちびっこが気づかず、黒い物体を齧るか」
 そう呟きを落とせば……ピッ!? ピッ!!? と。
 聞こえた齧るという物騒な言葉に、またぷるぷるとビビって震える黒い物体。
 それから暫し考えた後――ふと彼の顔に宿るのは、悪戯で楽し気な笑み。
 だって、去年よりも格段に気付かれにくいだろう案を思いついたのだから。
 ということで、ユェーはニヤリと笑った後。
 伸ばした手で、震えている黒い物体をむんずと鷲掴みにすれば。
「このままチョコをコーティングすればバレはしないだろう」
 溶かしたてのチョコレートの中に、黒雛をどぼん……!?
 けれど、刹那響くのは。
 ――ピィーーーーーー!!!
 そう助けを呼ぶ、黒雛の決死の鳴き声!
 そしてその声は、まさか今回も……と、やや警戒ぎみだったルーシーの耳にも届いて。
「!?!? あっちの方から黒ヒナさんの叫び声がする!」
 出来る限りの急ぎ足で、声のする方へ!
 助けを求めるその声を頼りに、それゆけと向かいながらも、ルーシーは確信する。
 今年も白パパからのチョコレートを楽しみにしつつ、でも去年の黒パパのゲームの事も確りと憶えていたから。
(「段々チョコの香りもしてきたし、これは間違いないわ」)
 そう、これはきっと……黒ヒナさんのチョコピンチ!!
 黒ヒナさんがチョコレートでコーティングされる前にと、パタパタ駆けて。
 ――ばーーーん!!!
 ドアを開ければ、中を一目見て……うん大体予想がついた! って。
「黒ヒナさん、こっちにいらっしゃい!」
 ピィッ!! とすかさず飛び込んで来た黒ヒナさんをもふっと受け止めて。
 ぎゅぅと抱きしめれば、くるりと方向転換――逃げるが勝ちよ! なんて。
 ルーシーは黒ヒナさんを連れて、再び駆け足で。
 その場から逃げるように離れるのだった。
 そしてユェーは、どうやら黒雛の声を聞いた彼女が気づいたことを察し、勢いよく開いた扉の向こう――自分のする事にびっくりして何やらぷんすかしているルーシーの姿を目にした後。
 同時にぴょんっと黒い物体が飛び出して、ふたりで逃げ出すその様子を眺める。
 けれど懸命に逃げる、ちびっこいのと黒い物体であるものの。
(「……アイツなりに早く走ってるみたいだが」)
 足のリーチがそもそも違うから、あっという間に簡単にユェーは追いついて。
「ふう、ふう。パパから逃げられたかしら? 黒ヒナさん、大丈夫? 未だチョコついてない?」
 本棚の影に隠れていることだって、気配でお見通し。
 難無く発見すれば、後ろから声を投げる。
「おい、それを渡せ」
 そしてそう声をかけられれば――ひぇっ、ピィッ!? と。
「黒パパ! どうして此処が分かったの!?」
 思わず飛び上がっちゃう、ルーシーと黒雛。
 それからルーシーはぷるぷるしている黒雛をぎゅうと抱きしめて、首を横にふるふる。
「だめよ! だって黒ヒナさん、チョコレートにする気でしょう?」
「あ? 少しチョコまみれになるだけだ」
 そう眉間に皺を寄せて見下ろす姿を見れば、ますますもふもふをぎゅぎゅっ。
「熱々のチョコにくべたら黒ヒナさん死んじゃうわ!」
 チョコレートまみれになってしまうことだって可哀そうなのに。
 とろとろに溶けた熱々のチョコレートの中にどぼんと入れられてしまったら、大火傷してしまうかもしれない。
 でもそんな必死の声にも、黒ユェーは首を微か傾けただけで。
「死ぬ? ……まぁそん時は運が悪かっただけさ」
 黒い物体を回収せんとその手を伸ばそうとするも。
「だめったらだーーーーめ!!」
 何やらぷりぷりと怒る小さいのの様子に、小さく息を吐く。
 一度怒り出すと、こうなればしばらくは止まらないし。
(「黒い物体を奪うのは簡単だが……」)
 これまでなら、きっと構わずに、ひょいっと黒雛を奪っていただろうけれど。
 ユェーのその手が伸びなかったのは、思い出したから。
 それは数か月前……一度、お化け屋敷の事で逃げまくられた事を。
 ……だから。
「これ以上黒ヒナさんを連れて行こうとするなら考えが……」
「あーーはいはい。しなきゃいいんだろう」
 チッと舌打ちをしてそう言い残し、去っていくユェー。
 そんな様子に、ルーシーは瞳を瞬かせて。
「あ、あれ? パパ、思ったよりアッサリ戻っていっちゃった」
 黒ヒナさんと顔を見合わせて、チョコまみれにされなかったことに安堵しつつも、こてりと首をふたり傾げる。
 そしてルーシーも、ふとあの時のことを思い出すけれど。
(「もしかして……以前お化け屋敷で誂われて、後で拗ねてお話しなくなったのを思い出した、とか?」)
 でもすぐに……いえ、まさかね、って紡ぎつつも続ける。
「黒パパもパパだもの」
 ――お話したら分かって下さるのよね、なんて。
 黒雛チョコリベンジをしようとした黒パパと繰り広げた攻防戦も、あっさりと終わりを告げた……かと。
 この時は、思っていたルーシーなのけれど。
 でも……まだ娘は知らない。
 黒パパが実は、最後の最後までバレンタインのイタズラを諦めていなかったということを。

●ハッピービッグバレンタインチョコ!?
 そんなひと騒動はあったのだけれど――無事にわくわくと迎えたのは。
 楽しみにしていた、バレンタインデー当日。
「ルーシーちゃん、ごめんなさいね? ちゃんとしたチョコを用意しましたから」
(「今日のパパは白い方ね」)
 そう自分に告げるユェーをルーシーは見上げながらも返す。
「ううん、大丈夫よ。黒パパも分かって下さったもの」
 そんな言葉に、白いユェーは密かに苦笑する。
 先日、黒いアイツがまた変な事をやらかして娘が御立腹したことに。
 だからそのお詫びを彼女にしようと。
「わ。わわ! チョコレートのお菓子がこんなにたくさん」
 さらに色々なチョコやチョコ系のお菓子を用意して。
 瞳をキラキラさせてわくわく喜んでくれているその様子に、金の瞳を柔く細めれば。
「ルーシーもちゃんとご用意したのよ」
 そう渡されたチョコレートに、微笑みが宿る。
「ふふっ、ルーシーちゃんからも? ボンボンショコラですね、ありがとうねぇ」
 美味しく頂きますね、って、ユェーが受け取った――その時だった。
 ルーシーはふと見つけるのだった。
 ボンボンショコラをお渡ししながらも室内の一方に置かれた、何だかとても大きな箱を。
 そして視線をユェーへと戻せば、こてりと首を傾けて。
「パパ、この箱もパパが?」
「おや? 大きな箱?? 僕は用意したつもりは無いのですが」
 ふたり揃って改めて、かなり大きな謎の箱へと目を向けてから。
「そうなの? でもルーシーへって書いてあるし……」
 一先ず開けてみましょう、と。
 そろりとルーシーの手によって開かれれば、中に入っていたのは、なんと……!
 ――ででーーん!
「……わああ……とっても大きなチョコ黒ヒナさん!」
 ルーシーと同じくらいのサイズの、リアル黒雛チョコ!
 自分の数十倍もあるチョコに、黒雛もピィッて思わず鳴いて。
「つぶらな目がルーシーの目線と同じ位。本物を大きくしたようなリアルさ……ま、まさか」
 添えられていたメッセージカードを見れば。
『ホンモノじゃないければ喰うよな? 残すなよ』
 そう記しているのは、見慣れた字。
 そしてようやく気付く――黒ユェーのイタズラはまだ続行していたということを。
 白ユェーはそれを見て、子供ですかと溜息をつきつつも。
「い、一年かけても食べきれるかしら……」
 聞こえた呟きに、食べるのを手伝おうかとも思ったのだけれど。
 まじまじと、リアル黒雛チョコとお見合いしている娘の姿を見て、思い直す。
 だって、きっとルーシーちゃんは言うだろうと――自分で食べる、と。
 そしてやっぱり、思った通りに。
「もちろんちゃんと食べるけども! ほら、パパと黒ヒナさんにはお贈りしたのを食べて頂きたいし」
 ……ルーシーが頑張らないと、よね、って。
 だから、作戦変更。
 早速ユェーがホットミルクを用意したのは、全力で彼女のリアル黒雛チョコ完食をサポートをすると心に決めたから。
 というわけで、ホットミルクを相棒に――まずはひとくち!
 ぱくりと頬張ってホットミルクをいただけば、思わずほわりとルーシーに咲く微笑み。
 食べ切るまで、まだまだ先は長そうだけれど。
 その分いっぱい楽しめるし、黒ヒナさんもチョコまみれにならずにピィッと元気だし。
 何より、とっても嬉しいから。
 白黒パパが自分のためにと用意してくれた、この甘くて美味しくて楽しいひとときが。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年05月20日


挿絵イラスト