獣人世界大戦⑭〜皆既のラメント
「……こういうのはあんまり、気分がよくないね」
四月一日・てまり(地に綻ぶ花兎・f40912)が哀しげに俯いている。瑞々しさを失い、萎れ頭を垂れた薔薇の花のように。
「もう知ってるかも知れないけど、バイカル湖に始祖人狼に力を捧げ続ける儀式魔術場があるよ。……ああいや、バイカル湖そのものがそうなってる、の方が正しいね」
其処は既に血の湖。
生物の身体から、今まさに吹き出したかの如く真っ赤な、鮮血の澱む場所。それが今のバイカル湖だ。
阻むには、壊すしかない。己の脚で踏み入って、踏み荒らして、滅茶苦茶にするより他にないのだ。その身が紅に穢れたとしても。
「えと……殺戮者の紋章って知ってる? って、私も詳しくはないんだけど……ダークセイヴァーで、第五の貴族が邪魔な人達を皆殺しにしちゃえーってことで、配下にくっつけてたのと同じものだね」
ここはダークセイヴァーとも繋がりが深いみたいだから、と続けつつ。
「そんな多数を相手にして殺し切ってしまうような紋章と完全に融合した、紋章殺戮兵っていう強力な改造兵士の集団が、ここを護ってるから。大変だけど、戦って倒しながら、儀式場を壊していく形になるね」
言葉を続けるてまりの表情は、未だ晴れない。
「それで……その。湖の、血溜まりの中から。無念の声が聞こえてくるらしいのね。それは、オブリビオンに『ひと掬いの幸福』を無惨に踏み躙られて死んでいった、獣人達の……地獄の底から響くような……」
彼らにとっては地獄に違いないだろう。
無辜の身でありながら、地獄にも等しい絶望に叩き落された、彼らにとっては。
「聞いてる方が辛くなると思う。耳を塞ぎたくなると思う。逃げ出してしまいたくなると思う。でも、向き合って、応えてあげて。きっと、力になってくれるから」
叫びを、祈りを、嘆きを、怒りを。
血の底から、掬うのだ。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあです。
命は平等にして、不平等。
戦争シナリオのため、今回は1章構成です。
第1章:集団戦『マーナガルム』
死者達の無念の声を聞き届け、真の姿を現して戦うことでプレイングボーナスが得られます。
理不尽に対する怒りが、どうすることも出来ない叫びが、望む望まざるとに拘らず、あなたの心を握り潰しに来るでしょう。
向き合って、受け止めて、掬い上げてください。最後に残った確かな想いが、きっと力になってくれるから。
(その時、あなたは一切の縛りに囚われず、真の姿に変じることが可能となるでしょう)
公開された時点で受付開始です、が。
今回もまた諸事情でかなり書けるタイミングにムラが出そうです(そしてやっぱり不規則)。
その為、採用出来るかどうかは人数とタイミングと内容次第でまちまちになります。ご了承ください。
(〆切までには何とかします。場合によっては逆にサポート多めでお届けする可能性もございます)
今回に関してはオーバーロードでも余り採用率に変化は出ない可能性が高いです。
何故なら〆切が早いから。ぱおん。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『マーナガルム』
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POW : 月を飲み込む
【影】に変身する。隠密力・速度・【殺傷力】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【恐怖】の感情を与える。
SPD : 絶えず追いかける
【体の一部】から【霧】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[霧]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
WIZ : 追い纏わりつく
対象に【とって最も恐ろしいモノ】の幻影を纏わせる。対象を見て【恐怖】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジゼル・サンドル
絶望の叫びというのは本当にこちらの心も抉られるな…
わたしがかつて経験した絶望の日々よりもっと残酷な声ばかりだ。
痛かっただろう、苦しかっただろう、無念だっただろう…
世界はいつだって理不尽で不平等なものだ。
でも、過去に戻って救うことはできなくても存在と想いを知って想いを馳せることはできる。君達の存在も想いも、なかったことにはさせないさ。
銀髪のロングヘアに青いドレス、ガラスの靴を履いた真の姿に。
自分に憎悪の目を向ける義母の幻影は今でも恐ろしく、足が竦んでしまうけれど。
親友がくれたキャンディリングが勇気をくれる。
わたしの心を美しいと言ってくれたあのひとの炎と鎮魂歌で報われなかった魂共々送ってあげよう。
●
血溜まりに足を踏み入れた。
瞬間、ぎろりと月色の眼が一斉にジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)を捉える。
冷たく突き刺さるような眼光――だが、それよりも。
ジゼルの中に、流れ込んでくる、響いてくる、怨嗟が。
今なお生きているかの如く、動作する。
(「絶望の叫びというのは本当にこちらの心も抉られるな……」)
何故。
どうして。
我々が、こんな目に。
慈悲の光もなく。
突き落とされた。
奈落へと。
血の底へ。
(「ああ、なんて、わたしがかつて経験した絶望の日々よりもっと残酷な声ばかりだ」)
想像さえもつかない。
ジゼルの経験した以上の地獄が、きっとそこにはあったのだろうから。
(「痛かっただろう、苦しかっただろう、無念だっただろう……」)
痛感する。
世界はいつだって理不尽で不平等なものだ、と。
誰にも等しく、不平等なのだと。
「でも、」
水を踏む音。
湖を往く音。
近づいてくる。
それでも、声に掻き消された。
「過去に戻って救うことはできなくても、存在と想いを知って想いを馳せることはできる」
人は、忘却によって死ぬ。
いつか、誰かがそう言った。
「君達の存在も想いも、なかったことにはさせないさ」
蘇る。
血に塗れた奈落の底から、這い上がる。
灰被りは鮮血の中から銀の光を纏って立ち上がった。
汚れなき青が風に翻る度、穢れを清め祓うようにして。
紅に沈み、なお透き通った硝子の靴は、脱げることなく奈落の階を降りる。
想いとして生き続ける、彼らの痛みを掬い上げて、解き放つ為に。
その身に幾重にも、視線が突き刺さる。
どろり澱んだ憎悪のそれは、魔狼のものではなく。
憶えのある、我が身を憎み害する継の母の刃。
足が竦む。歩みが止まる。
だが、それも一瞬。
想い出して、と。
誓いは煌めいた。
炎は再燃した。
「往こう、この勇気とともに」
歩き出した。
「そして送ろう、この情念とともに」
燃え上がった。
親友と交わした誓いを、ひとつ撫でて。
あのひとがくれた言葉に、誇りの光を見出して。
鎮魂歌と共に昇る炎は赫々と、世界を染める。
狂わされた心も、安らぎ得られぬ魂も。
この声が紡ぐ歌で。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才 馬舘景雅
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障
真の姿兼生前の姿:紅炎狼(橙色の狼キマイラ)
おうおう、聞こえよる。理不尽に対する、嘆きが。絶望の叫びが。それは当然であろうの。
その声は、『わしら』が背負っていこう。『わしら』はその理不尽を齎した相手を呪う四悪霊なれば!
共に行こう。一時、四天霊障に宿るが良いよ。
此度、代行するはわしであるが。
はは!影になろうが、こちらに恐怖を与えようが関係はない!
わしのUCを付加した、四天霊障での押し潰しよな!広範囲攻撃になるから、集団とて関係はない!
それに…今は、あの死者たちの念も宿っておるからに!
●
(「おうおう、聞こえよる」)
赤を踏んだ、その瞬間から。
|馬県・義透《侵す者》(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の脳を溺れさせようと。
理不尽に対する、嘆きが。絶望の叫びが。
何処へ逝けばよいのかと、まくし立てる。
(「それは当然であろうの」)
気付いた。気付いている。
遥か遠く昔から。
「その声は、『わしら』が背負っていこう」
影が迫る。
恐れ慄けと、新月が嗤う。
なれど、この身は。
「『わしら』はその理不尽を齎した相手を呪う――」
何故。どうして。我々が。
その全てを、認め赦す。
四人で一人。
生前の|戦友《とも》。
「四悪霊なれば!」
橙の毛並みが紅炎の如く燃えた。
狼が咆えた。
「共に行こう。一時、四天霊障に宿るが良いよ」
第三『侵す者』武の天才。
嘗ての名を、馬舘景雅と言った。
一方通行、地獄逝き、血塗れのその道を、砕く。
「此度、代行するはわしであるが――はは!」
炎、呵々と笑う。
眼前の獣は、最早獣ですらなく。
慈悲を喰い破るだけの、物言わぬ影と成り下がった。
ただ何よりも暴力を振るうだけの、有象無象。
誰かはそれを恐れるのかも知れない。
それでも、彼等の中の魂は。
「影になろうが、こちらに恐怖を与えようが関係はない!」
四と、遍く絶望の魂は。
慟哭を掬う四の魂は。
無念を、解放する。
積み上がる。
膨れ上がる。
「我が、火の如く侵略するこの一撃――集団とて関係はない!」
血の湖すら埋め尽くし、蓋をする。
それ程までに、膨大。
「今は、あの死者たちの念も宿っておるからに!」
影は止まらない。
それを理解していたからこそ。
全てを、解き放つ。
雄叫びが上がった。
鮮血を揺るがし。
血飛沫を上げ。
押し潰した。
影が燃えた。
遠吠え。
幾重にも。
合唱の如く。
それを、聞き届けた魂は。
慟哭ではなく、静かに。
涙して、逝った。
在るべき場所へ。
逝くべき場所へ。
それを、侵す者は。
四悪霊――馬県義透は。
炎の中、天を仰いで、送った。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
…何度聞いても胸糞悪い
だからこそふざけた儀式は邪魔してやんよ!
UC発動
死んでる者は戻りやしねぇけど儀式で使われた分…まぁ何かしらのエネルギーなら一瞬だけなら返すか、止めるかすることは可能だろう
彼らは死してなお奪われている!
寄生されている!
搾取されている!
ならば通らぬ通りはねぇ!
「こんな所で燻ってんじゃねぇ!
力なら取り返した!
倒さねばまた奪われるぞ!
我らが怒りを今こそ叩きつける時だ!
苦しみを晴らさず沈んでいいのか?
俺も利用させてもらう
てめぇらも俺を利用してやりてぇ事を今度こそやれ!」
何せ湖一つ分の搾取されたエネルギーだ
怒りも憎しみも吹っ飛ぶ勢いあるんでね?
その隙に真の姿で扇動して共に襲撃
●
踏む。
赤を踏む。
その度に、反響する。
(「……何度聞いても胸糞悪い」)
何故、どうして。
こんな目に遭わなければならなかった?
悲嘆の疑問が響き渡る。
尾守・夜野(自称バブ悪霊な犬神と金蚕蠱モドキ混合物・f05352)の頭にも、等しく、変わりなく。
聞きたくない、こんなもの、一分一秒だって、耐えられない。
そう感じるのが、きっと普通なのだろう。
「だからこそ、」
呪いを纏った。
霧を呪った。
「このふざけた儀式は邪魔してやんよ!」
形なき者、姿なき者、それすらも侵していく。
業火のように蝕んでいく。
(「死んでる者は戻りやしねぇけど」)
彼らは搾取された。
儀式の為の餌にされた。
その嘆きが、恨みが、絶望が。
ここには残っている。
(「一瞬だけなら返すか、止めるかすることは可能だろう」)
だから共に逝こう。
この現世という地獄へ、今一度。
「彼らは死してなお奪われている!」
咆哮。
「寄生されている!」
慟哭。
「搾取されている!」
停滞。
その全て引き揚げていく。
(「ならば通らぬ通りはねぇ!」)
蘇る。
澱み、凝り固まった残留思念が。
まだ、ここに生きている。生き続けている。
「こんな所で燻ってんじゃねぇ!」
一喝。
「力なら取り返した! 倒さねばまた奪われるぞ!」
暴力により消費された。
戻ることはないけれど、それでも。
「我らが怒りを今こそ叩きつける時だ!」
既に、夜野自身が。
渦巻く怨嗟のひとつ。
「苦しみを晴らさず沈んでいいのか?」
その為の力なら、くれてやる。
「俺も利用させてもらう――てめぇらも俺を利用して、やりてぇ事を今度こそやれ!」
手は差し伸べてやる。
だが夜野自ら掴むことはない。
欲するのなら、望むのなら、己の手で掴み取れ。
その憤怒で、その悔恨で、這い上がれ。
「何せ湖一つ分の搾取されたエネルギーだ」
こんなにも。
こんなにも、響く。
慈悲を求め、教官を求め、縋りつく手の多さが物語る。
伸ばされた手を、掴まぬ道理もない筈だ。
「怒りも憎しみも吹っ飛ぶ勢いあるんでね?」
さあ。
共に逝こう。
この奈落で、生き地獄で。
真性解放――そして。
叫喚と、魂と共に。
霧を呑む。
大成功
🔵🔵🔵
アラタマ・ミコト(サポート)
|荒魂鎮神命《あらたましずむるのかみのみこと》助太刀に馳せ参じてございます。
かの軍勢が障害なのでございますね。
では、極楽浄土で身に付けし武芸でお相手いたしましょう。
●
(「げに、地獄草紙もかくやと云う有様」)
横たわる奈落は赤く。
アラタマ・ミコト(極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935)はそっと、目を伏せた。
「此度の戦、始祖人狼なる者らに連なる儀を阻止せんとの御達し」
これが地獄と言うのなら。
これが絶望と言うのなら。
「では、|荒魂鎮神命《あらたましずむるのかみのみこと》――極楽浄土で身に付けし武芸にて、この地に解放を齎しましょう」
踏み込む。
瞬間、慟哭が渦巻いた。
(「いと、いとほし御霊……」)
何故、どうして、と。
止め処なく溢れる疑問を。
供にして、歩を進めた。
「参りましょう」
纏わりつく絶望は、形になる。
影と成り薄れた獣に反して。
「望むままに」
それこそが思いのまま。
憤怒と疑念に塗れた怨念は、ミコトの武器となり。
己の無念を晴らすべく、赴くままに。
影を、噛み、喰らい、千切った。
咀嚼して、呑み込んで。
やがて、黒が消える。
挽歌に似た、慟哭も。
聴こえない。
今はもう。
成功
🔵🔵🔴