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獣人世界大戦⑮〜否定の悪魔を討ち祓え

#獣人戦線 #サクラミラージュ #獣人世界大戦 #第二戦線 #幻朧帝国 #黯党首魁『本田・英和』

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「獣人世界大戦への参戦に感謝します。リムは状況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は獣人戦線の世界地図を広げ、現在の状況を語り始めた。
「第一戦線に引き続き、第二戦線での戦闘も順調です。あと数日中には第三戦線……そして『はじまりの場所』の所在も判明するでしょう」
 グリモアの予知さえも遮る結界で隠された『はじまりの場所』。そこに果たして何が待っているのかも気になるところだが、「はじまりの猟兵」を巡るオブリビオンとの争いも激化しており油断はできない。ここで一つでも多くの勝利を重ね、超大国に痛手を与えることが世界の復興に繋がるだろう。

「今回、皆様にお願いしたいのは、幻朧帝国の将校『本田・英和』によって召喚された異世界の|悪魔《ダイモン》『ブエル』の討伐です」
 幻朧帝直属軍令暗殺部隊「|黯《あんぐら》党」の首魁である英和は、サクラミラージュにおける帝都転覆を企み、理不尽な世界を憎む「悲劇なる者」達を煽動して何度も事件を起こしてきた。今回の世界大戦においては不世出の悪魔召喚士としての力を振るい、「はじまりの猟兵」を巡る戦いに介入してきている。
「英和自身はすでに、彼と因縁のある猟兵の手によって討たれました。ですがブエルは彼との生前の契約に則り、彼が率いていた軍と作戦を引き継いだようです」
 召喚者が死んでも契約を重視するのは悪魔らしいが、これは英和に加えてもう一体、幻朧帝国の大きな戦力を削るチャンスとも考えられる。猟兵と幻朧帝国が獣人戦線で交戦するのはこの戦争が初めてであり、戦力の見極めという意味でも戦う価値はあるだろう。

「ブエルは自らの眷属である『ブエル兵』の軍団と共に、ロシア南東部のスタノヴォイ山脈に布陣しています」
 ブエル自身は|超能力《サイキック》によって、あらゆるものを「否定」するユーベルコードを持つ、強大な悪魔だ。一方、ブエル兵の強さはブエル本人には劣るものの、事前に敷き詰められた召喚魔法陣から際限無く湧いてくるうえ、放置すれば猟兵との戦いを通じて「猟兵の知識」を蒐集し、徐々に強化されていく。
「なるべく迅速にブエル兵を始末しつつ、ブエル本人にも対処する必要があります」
 英和に『情報』を対価に力と知恵を与えていたブエルが、この戦争から生還すれば、さらに多くの情報と知識を持ち帰られてしまうだろう。猟兵達が知る悪魔とも異なる雰囲気をもった、この危険な|悪魔《ダイモン》を野放しにはしておけない。

「ここでブエルを撃破し、黯党と本田・英和の計画を阻止しましょう。どうかよろしくお願いします」
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、スタノヴォイ山脈の黯党陣地へと猟兵達を送り出す。
 死せる党首の最期の置き土産とも言える、異世界の悪魔。その恐るべき叡智と否定の力を、果たして越えることはできるのか。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼は黯党首魁『本田・英和』によって召喚された|悪魔《ダイモン》『ブエル』の撃破です。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……湧き出るブエル兵を迅速に倒しつつブエルと戦う。

 この戦闘ではブエル本人に加えて、周囲に敷き詰められた召喚魔法陣から出てくる眷属とも同時に戦う必要があります。
 ブエル兵1体1体の強さは最初のうちは大したことはありませんが、「猟兵の知識」を蒐集して徐々に手強くなっていくので放置すると危険です。もちろんブエル本人も強力な悪魔なので、全力で挑む必要があるでしょう。

 この戦場は【第二戦線】で、完結までの締切が5月20日(月)16時となっています。
 そのため、執筆状況によっては採用できないプレイングが出るかもしれないことを、予めご了承下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『悪魔「ブエル」』

POW   :    存在否定呪文
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【魔力弾】を放つ。発動後は中止不能。
SPD   :    生命否定空間
戦場全体に【生命否定空間】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【戦場全体の敵から奪った生命力】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ   :    損傷否定詠唱
自身が愛する【即時治癒魔法の詠唱】を止まる事なく使役もしくは使用し続けている限り、決して死ぬ事はない。

イラスト:キリタチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フロウヴェル・ゼフィツェン
遠い異世界の悪魔。
母様から聞いたお話の中にいた気がするの。
あの通りだとするなら…何としても、此処で倒さなきゃいけない敵なの。

真祖転生・鉄杭典礼発動。
周りのブエル兵を鉄杭で【串刺し】にして、そのまま地面に縫い留めてやるの。
そうして動きを封じたら、邪魔な敵はジェノサイド・ソーサーで【切断】しつつブエルのもとへ。

敵は治癒術式ですぐ傷を治せるみたい。
なら拷問し放題…と思ったけど、そんな時間は無いの。
だから、手っ取り早い手段で何とかしてみるの。

鉄杭で全身串刺しにして動きを制限。ハーロット・イーターをその顔に叩き込んで、口をズタズタにして物理的に詠唱できない状態にしてやるの。



「遠い異世界の悪魔。母様から聞いたお話の中にいた気がするの」
 黯党首魁『本田・英和』の召喚術によって獣人戦線に降臨した悪魔『ブエル』。それはフロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)にとっては初対面でありながら、前から知っていたような気もする不思議な相手だった。
「あの通りだとするなら……何としても、此処で倒さなきゃいけない敵なの」
「否定しない。私はお前達の味方ではない。この世界に益をもたらす存在ではない」
 フロウヴェルの危惧と警戒を、ブエルも遠回しな否定形によって肯定する。その正体は今だ不明ながら、彼が猟兵と相容れない敵であることは間違いなかった。新たなる知識と情報を求めて、悪魔は眷属らと共に世界大戦を参戦する。

「ほんとうの『夜』を、教えてあげるの」
 まずは魔法陣から湧き出した『ブエル兵』に狙いを定めて、フロウヴェルが発動したのは【真祖転生・鉄杭典礼】。
 足元から飛び出した無数の鉄杭が、異形の怪物どもを串刺しにし、そのまま地面に縫い留める。こいつらは学習力に長け、戦闘中も猟兵の情報を貪欲に吸収するため、野放しにはできない敵だ。
『グオオォォォ……!』
「どいてもらうの」
 闇を纏いし"真なるヴァンパイア"に変身したフロウヴェルは、動きを封じたブエル兵を円盤鋸「ジェノサイド・ソーサー」で切り払いつつブエルのもとへ迫る。目指すは速攻――敵にこちらの情報がバレていないうちに決着をつける。

「お前の力は凡庸ではない。だが私にとっては珍しくもない」
 鉄杭典礼によってブエルもまた傷を負っていたが、彼が詠唱を紡ぐと鉄杭はひとりでに抜け、傷跡も消えてしまう。
 あらゆるものを「否定」するという悪魔の超能力は、自身が受けたダメージすらも否定し、治癒してしまうようだ。
「なら拷問し放題……と思ったけど、そんな時間は無いの。だから、手っ取り早い手段で何とかしてみるの」
 長引けば新たなブエル兵が出てきて、徐々にこちらが不利になる。フロウヴェルはもう一度、今度はブエル本体飲みに狙いを絞って鉄杭を放ち、全身をくまなく串刺しにする。両腕と両足、さらに胴体と頭部まで貫けば、普通の生物なら生きてはいまいが――悪魔の双眸から光は消えていない。

「この攻撃に意味はない。私を殺害することはできな……ガッ?!」
「やらせないの」
 【損傷否定詠唱】を唱え続けることで鉄杭による行動制限を脱しようとするブエル。だが、その前にフロウヴェルは槍型拷問具「ハーロット・イーター」を悪魔の顔面に叩き込んだ。鋸状の刃や逆棘を備えたそれは、殺傷力よりも苦痛を与えるための形状をしていた。
「これで喋れないの」
「ゴッ、オ、グォ……!」
 そんなものをねじ込まれたブエルの口内はズタズタで、物理的に詠唱ができる状態ではない。詠唱さえ止めれば彼も決して不死ではなく、他のオブリビオン同様に傷を負う存在である。敵が体勢を立て直す隙を与えず、フロウヴェルはさらなる鉄杭と拷問具をもって、無慈悲に悪魔を攻め立てた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神酒坂・恭二郎
「速攻だ鮫五郎!」
『スペース絵馬』から口寄せしたスペースシャークの背に乗り、人鮫一体の風桜子を纏う
相手の適性上、防御を犠牲にする迅速さがいる
片手に持った刀に風桜子を纏わせ、【覇気】を籠める事でダイガタナもかくやの巨大な『風桜子刀』を形成する【武器の巨大化】

後は鮫五郎の加速に任せて【切りこみ】。鮫五郎の牙と『風桜子刀』でブエル兵を蹴散らして、ブエル本体を目指す
奴の『生命否定空間』はかなり強力だが、白兵距離で力を発揮するタイプではない
通常以上に受ける空間からのダメージを【オーラ防御、結界術】で軽減し、鮫五郎の加速を乗せた片手一本突きで勝負をかける【覇気、急所突き、鎧無視攻撃】



「速攻だ鮫五郎!」
 鮫印の『スペース絵馬』から口寄せしたスペースシャークの背に乗り、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は戦場を駆ける。人鮫一体の|風桜子《ふぉーす》を纏って【同調加速】した彼らのスピードは宇宙戦闘機にも匹敵するが、それだけ急ぐのには理由がある。
「鮫に乗る剣士。お前の情報は古くはない。観察の価値は皆無ではない」
 悪魔『ブエル』及びその眷属の『ブエル兵』は、情報収集と学習に秀でた悪魔。戦闘を通じて猟兵の知識を学べば、奴らの危険性は際限無く増していくだろう。ましてや情報を持ったまま戦線から逃げられでもしたら、最悪の事態だ。

(相手の適性上、防御を犠牲にする迅速さがいる)
 そう判断した恭二郎は片手に持った愛刀「銀河一文字」に|風桜子《ふぉーす》を纏わせ、覇気を籠める事でダイガタナもかくやという巨大な「風桜子刀」を形成する。学習する暇もないほどの速度と攻撃力で一刀両断。これが現状における最適解だ。
「いくぞ! 斬り捨て御免だ!」
『グ、グオアァァ……ッ!!』
 鮫五郎の加速に任せて敵陣に切り込んだ恭二郎は、立ちはだかるブエル兵を片っ端から蹴散らしていく。巨大風桜子刀の切れ味もさることながら、鮫五郎の牙による連携も侮れず、彼らの駆け抜けた後には真っ二つになった、あるいは噛み千切られた敵の骸が散らばった。

「お前の剣は安全ではない。だが私はお前の生存を認めない」
 相手を容易ならざる敵と認めたブエルはユーベルコードを発動。戦場全体を覆った【生命否定空間】は敵の生命力を奪い取り、ブエル自身とその眷属に還元する。範囲内にいれば回避のしようが無いので、【同調加速】中の恭二郎達にとっては天敵とも言えた。
「っ……なんのこれしき! 止まるな鮫五郎!」
 通常以上に受ける空間からのダメージを、|風桜子《ふぉーす》オーラの結界で少しでも軽減し、歯を食いしばりながら加速し続ける恭二郎。なるほど奴のユーベルコードはかなり強力だが、白兵距離で力を発揮するタイプではない――死中に活を求めんとするならば、立ち止まるわけにはいかないのだ。

「停止しない? 馬鹿な、お前の生命力は無限ではない」
 空間の外に出ようとするのではなく、まっすぐ突っ込んできた剣士と鮫に、ブエルが動揺を見せる。まさか生命力を奪い尽くされる前に自分を倒すつもりなのかと、あまりの大胆不敵さに驚きを隠せないようで――そこに生じた僅かな隙に、恭二郎達は勝負をかけた。
「覚悟!」
「――……ぐあッ!?」
 鮫五郎の加速を乗せた片手一本突き。乾坤一擲の覇気を込めたその一撃は超能力の鎧を穿ち、悪魔の急所を貫いた。
 速攻という初志貫徹のすえに彼が与えたダメージは、奪われた生命力を差し引いても小さいものではなく。不敵な笑みを口元に浮かべて、宇宙の剣豪は刀を天に掲げた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビュラ・ヴェルムリープ
戦場一帯に鳴り響く時空をも支配する聖歌を響かせ、即時治癒魔法の詠唱をかき消していく
更に歌から百以上の『魔女』等の『根源的存在』特攻の爆弾兵器を召喚
その爆弾兵器をブエル兵にぶつけて起爆
爆発音で詠唱を更にかき消し、UCを成立させない

オラクルのエンドブレイカーであるわたくしには分かるわ…貴方が『|生命の根源《サイキックハーツ》』由来の|存在《ダークネス》だって!

だからこそ『|生命の根源《サイキックハーツ》』に関する|存在《ダークネス》由来の|異能《サイキック》使用不可は重い

だけど、このまま爆殺するわ!

スカートを翻し、その中から爆弾を生み出してブエルを爆殺していくーー



「グォ、ォ……お前達の攻撃は意味がない。この戦いに私の敗北はない」
 猟兵達の猛攻により深手を負った悪魔『ブエル』だが、そこからの立て直しは迅速だった。生命否定空間から吸収した生命力をもとに口内を修復し、【損傷否定詠唱】を再開。これまでに受けたダメージを否定して、戦いを振り出しに戻そうとする。
「終焉を破壊せよ、我が星の輪! 生命の産みの親たる存在に由来する力を爆滅する兵装を具現化する聖歌を以て、その終焉に終焉を!」
 その時、戦場一帯に鳴り響いたのは美しき聖歌。シビュラ・ヴェルムリープ(光桜天樹スプリールの聖女・f39562)の発動した【星輪の終焉破壊・根源と生命の母の力は聖歌により】の音色が、即時治癒魔法の詠唱をかき消していく。

「オラクルのエンドブレイカーであるわたくしには分かるわ……貴方が『|生命の根源《サイキックハーツ》』由来の|存在《ダークネス》だって!」
 シビュラにはブエルの正体に関する予想、あるいは確信があるようだが、その言葉の意味を理解できる者はこの場にいなかった。ブエルも彼女の発言には沈黙をもって応じるのみで、解答を示さない。情報を契約の代償とする悪魔は、他者に情報を与えるリスクも熟知しているようだ。
「だからこそ『|生命の根源《サイキックハーツ》』に関する|存在《ダークネス》由来の|異能《サイキック》使用不可は重い」
 分かるのは彼女がブエルの存在を強く警戒していること、ブエルが実際に強大な力を持つ悪魔であるということだ。
 契約者であった『本田・英和』が討たれた今、尚の事これを野放しにはしておけない。あらゆるものを否定する彼の|超能力《サイキック》は、あまりにも危険だ。

「だけど、このまま爆殺するわ!」
 シビュラの聖歌は時空を支配し、彼女が言うところの『根源的存在』特攻の爆弾兵器を召喚する。それらは周囲から湧いてきた『ブエル兵』にぶつかって起爆し、大きな衝撃と爆音を巻き起こす。この喧しさの中では詠唱もかき消されてしまい、【損傷否定詠唱】は成立しないだろう。
「……? ……!」
 ブエルは何か言っているようだが、爆発音のせいでそれも聞こえない。聞こえたところで耳を傾ける余裕はなかっただろう――ブエル兵らがこちらの能力を学習する前に決着をつけなくては、時間経過と共に形勢を逆転されかねない。

「消えなさい!」
「……!!」
 スカートを翻し、その中から爆弾を生み出すシビュラ。間断ない爆撃を浴びたブエルは眷属ともども吹き飛ばされ、浅からぬ損傷を負った。個々人によって性質のまるで異なる猟兵の情報を集めるには、まだ時間が足りぬようだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
悪魔というので、魔法とか呪いとかの力を使うのかと思いましたが…
まさかの|同類《サイキッカー》でしたか。
つまり、敵の力の源はサイキックエナジーであるということ。
私にとっては、ボーナスステージですね。

とりあえず【念動プランダー】発動。
敵の攻撃含めた、戦場のあらゆるサイキックエナジーを奪い尽くしにかかります。
ブエル兵が湧いてくるということは、エナジーの供給源が尽きないということ。
即ち、念動力を制限なしで使い放題ということです。
ということで、周囲の敵に全力の念動力を叩きつけて、絞め曲げ捻り潰します。
っと、詠唱されるとまずいんでしたっけ。
それじゃ、本体は首絞めときますか。
…発声器官あるんですかねコレ?



「悪魔というので、魔法とか呪いとかの力を使うのかと思いましたが……まさかの|同類《サイキッカー》でしたか」
 悪魔の超能力者というのも耳馴染みはないが、それなら好都合ですとエリー・マイヤー(被造物・f29376)は呟く。
 彼女はアポカリプスヘル生まれのサイキッカーであり、超能力のことなら熟知している。世界によって差異はあるが、根本的な原理には共通点も多い。
「つまり、敵の力の源はサイキックエナジーであるということ。私にとっては、ボーナスステージですね」
「私を侮るべきではない。だが異世界の超能力者か、情報源として無益ではない」
 悪魔『ブエル』にとっても異世界の同類と遭遇するのは珍しい体験のようで、どのような超能力を使ってくるか興味を隠しきれない様子。この余裕も【損傷否定詠唱】によって自身のダメージや死すらも「否定」できるからだろう――だが、どの道それもサイキックには違いない。

「とりあえず、いただきますね」
 エリーはおもむろに【念動プランダー】を発動。彼女は思念波を通じて他者にサイキックエナジーを与えたり、逆に奪い取ることができる。全てのサイキッカーの力の源とも言えるこのエナジーの扱いにおいて、彼女は右に出るものはそうそういないと自負していた。
「これは……私のサイキックエナジーが、増えていない?」
『オアオォォォ……?!』
 ブエルだけではない。眷属の『ブエル兵』からの攻撃も含めた、戦場のあらゆるサイキックエナジーがエリーの元に集まっていく。このままエナジーを奪い尽くされれば、戦闘はおろか活動にすら支障が出る。現にそう言っている間にも、ブエル兵が次々に倒れていく。

「ブエル兵が湧いてくるということは、エナジーの供給源が尽きないということ。即ち、念動力を制限なしで使い放題ということです」
 際限無く召喚され敵の知識を学習する、本来なら厄介だったはずのブエル兵は、エリー専用の補給タンクと化した。
 そうして手に入れた膨大なサイキックエナジーを、彼女は余さず攻撃に利用する。今ならシンプルな念動力も、普段の何倍もの出力になる。
「ということで、死んでもらいましょう」
『グオオォォォ?!!』
 周囲の敵に全力の念動力を叩きつけ、締め、曲げ、捻り潰す。見えない巨人が暴れ回っているような猛威が、サイキックエナジー不足の悪魔と眷属を襲う。学習する暇もなかったブエル兵は無惨に引き千切られ、ブエル本体も反撃はおろか防御で精一杯だ。

「っと、詠唱されるとまずいんでしたっけ。それじゃ、本体は首絞めときますか。……発声器官あるんですかねコレ?」
「極めて愉快ではない。こんなものに私が……グゥッ!?」
 首と口らしき部位を押さえつけてみれば、うだうだと煩いブエルの発言が止まった。仮にこれで【損傷否定詠唱】を止められずに負傷を治癒されても、奪われたサイキックエナジーが戻って来るわけではないだろう。拘束を脱せたとて不利な状況は変わらないはずだ。
「まあ、今回は相性が悪かったですね」
 まともに戦えば強敵だろうが、申し訳ないことに負ける気がしない。普段と変わらぬクールな態度で、エリーは念動力の出力を強めた。万力の如き圧に捻られ、締め上げられ、ブエルの身体からミシミシと嫌な音が聞こえてくる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
悪魔『ブエル』……。あの本田の奴が契約するくらいだし、大物なのは違いあるまいが
その割に、これまで全く噂を聞いたことがないんだよな。奴は何者なのやら、だ

どうあれ倒さなければならない相手なのは違いない
神刀の封印を解除。神気によって身体能力を強化して、弐の秘剣【金翼閃】を使用
金色の斬撃波で周辺のブエル兵を纏めて攻撃

ここは敢えて倒し切るよりは部位破壊で行動を抑制するに留める
どれだけ湧いてきても、そして強くなっても、手負いのブエル兵が邪魔になれば此方には近付きづらい筈

そしてブエル相手だ
攻め手を緩めず、そして喉や肺をの辺りを狙って攻撃
一瞬でも詠唱……治癒を止めればそこから突き崩せるだろう



「悪魔『ブエル』……。あの本田の奴が契約するくらいだし、大物なのは違いあるまいが。その割に、これまで全く噂を聞いたことがないんだよな」
 黯党首魁『本田・英和』と契約し、影朧甲冑の開発等にも関与していたとされる悪魔『ブエル』。サクラミラージュにおけるオブリビオンの活動に以前から関与していたようだが、であれば尚の事これまで名を聞かなかったのは何故だろうかと、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は疑問を抱く。
「奴は何者なのやら、だ」
「私はお前達に答えを提供しない。情報の価値は安くない」
 ただの影朧とも異質なものを感じさせる|悪魔《ダイモン》。その正体をブエル自身が語ることはない。情報を代価にする悪魔だけあって、その重要性を理解している。与える情報は最小限にして、「はじまりの猟兵」を含めた獣人世界大戦の情報を持ち帰る。それがあちらにとっての理想だろう。

「どうあれ倒さなければならない相手なのは違いない」
 ここで出し惜しみはすまいと、鏡介は神刀【無仭】の封印を解除。神気によって身体能力を強化し、弐の秘剣【金翼閃】を使用する。抜手も見せぬ早業で鞘から現れた刃は、金色に煌めく超高速の斬撃波を生じさせ、周辺にいた『ブエル兵』をまとめて薙ぎ払った。
『グギャッ?!』『ギエェーーッ!!?』
 召喚されたばかりのブエル兵どもは「猟兵の知識」を得る暇もなく四肢をバラバラに切断され、悲鳴とともに地べたに倒れ込む。西洋のグリモワールに記されるような奇怪な見た目をした怪物だが、人間同様に手足をもいでしまえば満足には動けまい。せいぜい這いずって噛みつく程度だ。

(どれだけ湧いてきても、そして強くなっても、手負いのブエル兵が邪魔になれば此方には近付きづらい筈)
 そこで鏡介は手負いの敵を敢えて倒し切るよりは、部位破壊状態で行動を抑制するに留めた。死者よりも負傷者のほうが戦場では味方の負担になりやすいという、戦争の理を理解している。雑兵共への対処はこれで十分だろうと、彼が次に狙い定めたのはブエル本人だった。
「私の眷属をこうもあっさり無力化するとは、お前は想定より無能ではない」
「褒められている気はしないな」
 否定形ばかりを使う小癪な相手に、まずは一太刀。因果と法則を越え森羅万象の悉くを斬るという神懸かりの刃は、得体の知れぬ悪魔をも切り裂いた。だが、ブエルがなにやら呪文を唱えると、その傷は「最初からなかった」かのように消えてしまう。

「お前の攻撃に意味はない。私には通用しない」
「それがお前のユーベルコードか……だが結論を急ぎ過ぎるなよ」
 実質的な不死を実現する【損傷否定詠唱】を見ても、鏡介は攻め手を緩めず、喉や肺の辺りを狙って攻撃を続ける。
 ブエルも矢継ぎ早に呪文を唱え続けることでダメージを治療するが、熟達した剣豪の技の冴え、疾さ、そして鋭さは敵を上回っていた。
「意味はない、意味はない、意味はな……グッ?!」
 呼吸器や発生期間の損傷がブエルの言葉を詰まらせ、一瞬でも詠唱――治癒が止まれば、鏡介はそこから突き崩しにかかる。金色の斬撃波と神刀の斬撃を織り交ぜた、息もつかせぬような猛ラッシュ。果たして情報の悪魔はこれほどの技巧を見たことがあるだろうか。

「知らない。私はこの剣技を知らない……!」
「そうか。では冥土の土産に覚えていけ」
 選ばれし者の責務を背負い、修練した技は斯様な悪を討つために。研ぎ澄まされた鏡介の秘剣が悪魔を斬り伏せる。
 決して「否定」できぬ傷としてその情報を刻みつけられたブエルは、苦悶の声を上げながらヨロヨロと後退するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
音楽と文化への愛でパワーアップした藍ちゃんくんはまさに蒼き流星のごとし!
悪魔さんにも脅威と映り、否定呪文を撃ってくださるかと!

そういう風にパフォーマンスしたのでっすけどねー!
半径1m以内の全てを消滅させる魔力弾!
これ程ブエル兵を迅速に倒せる手段はないかと!
兵を盾にしつつ、悪魔さん自身に倒してもらいましょう!
こちらの狙いに気付いたとしても中止不能!
明後日に向けようにも兵を射線におびき寄せちゃうのでっす!
所で半径1m以内の“全て”ということは。
ご自身も含まれますよね?
藍ちゃんくんの誘導と幸運の青い鳥の加護で悪魔さんの1m以内の兵に着弾誤射させて消滅に巻き込んじゃうのでっす!



「藍ちゃんくんでっすよー!」
 |悪魔《ダイモン》の眷属どもが布陣するスタノヴォイ山脈に、颯爽と降り立ったのは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。その身は幸運を運ぶ青い鳥の守護に包まれ、音楽と文化への愛によって煌めいている。戦争という陰惨で悲劇的な情景において、その輝きは一層際立って見えた。
「ふむ……お前の振る舞いは虚勢ではない。ならば油断するべきではない」
 まさに蒼き流星の如き彼の姿は、悪魔『ブエル』にも脅威と映ったようだ。仕掛けられる前に攻め手を封じようと、【存在否定呪文】の詠唱を始める。あらゆるものを「否定」するという悪魔の超能力は、翠緑の魔力弾を作り上げた。

(そういう風にパフォーマンスしたのでっすけどねー!)
 敵が狙い通りの行動を取ると、藍はにっこり笑いながら【¡Aquí hay Ai!】で飛び回る。ブエルのユーベルコードは確かに強力だが、強力過ぎて「否定」する対象を選ばない。着弾すれば敵だろうと地形だろうと、そして味方だろうと、半径1m以内の全てを無差別に消滅させてしまうのだ。
(これ程ブエル兵を迅速に倒せる手段はないかと!)
 かくして藍の戦法は、魔法陣から湧いてくる『ブエル兵』を盾にしつつ、ブエル自身にそれを倒してもらう、というものになった。青い鳥の守護により高速飛翔能力を得た彼は、魔力弾が着弾する寸前に着弾点から飛び退き、敵を消滅に巻き込んでいく。

「……私の攻撃を利用するとは、なかなか愚かではない」
 ブエルもすぐに藍の狙いには気付いたが、【存在否定呪文】は一度発動してしまうと中止不能だ。毎秒1発ずつ放たれる魔力弾を彼自身も止められない。出来る事とと言えばせめて、狙いを味方のいない明後日の方向に向けるくらいだが――。
「こっちでっすよー!」
『グルルル……ッ、グオァァァーーッ?!!!』
 藍は自分を囮にして襲ってくるブエル兵を巧みに誘導し、魔力弾の射線におびき寄せる。学習能力はあっても召喚されたばかりの眷属どもには状況判断ができず、手玉に取るのは彼にとって容易いことだ。ついでに地面の魔法陣も巻き込んでしまえば、再召喚の数も減る。

「所で半径1m以内の“全て”ということは。ご自身も含まれますよね?」
「……!!」
 白い歯を見せて藍が笑うと、ブエルも何をするつもりか察しが付いたようで、焦燥を露わにしながら後退する。だが【¡Aquí hay Ai!】のスピードはそれよりも遥かに速く、あっという間に距離を詰めてしまい。幸運を運ぶ青い鳥の加護が、彼のもとに魔力弾を引き寄せる。
「望まれたなら、いつだってすぐ其処に!」
「私は望んでいない。このような結果は認めない……!!」
 命中寸前でひらりと躱された魔力弾は、すぐ傍にいたブエル兵に着弾誤射――その1m以内にいたブエルは、辛くも全身含まれるのは避けたものの、巻き込まれた片腕が削ぎ落とされたように中ほどから消滅する。滑らかに過ぎる断面から吹き出す血は、人間のそれとは違う色をしており。同時に悪魔も血を流し、命を落とす存在である証明だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携歓迎!
敵の動きを止め、味方の行動を支援します。

「本田さんの残したもの…ここで終わりにします!」
イーリスをマイクスタンドで立て、ツウィリングス・モーントを左右に配置。インストルメントを構えて【Heartbreaker】を発動。
「広がる空に、震える大地に!響き渡れ、ハート・ブレイカー!」
インストルメントのギターを演奏しながら、破魔の歌声を乗せて放ちます。

敵が多く、山脈と言う反響物が多いこのステヱジで最高の威力を発揮するこの曲。ブエル本体ごと、周囲のブエル兵をまとめて攻撃します。
あわせて、圧倒的な音の演奏と歌唱によって損傷否定の詠唱を止め、味方の攻撃が通るようにしましょう。



「本田さんの残したもの……ここで終わりにします!」
 亡き召喚主との契約に則り、獣人戦線に居座り続ける異世界の悪魔。彼奴を退去させるべく駆け付けたのはフィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)だ。サウンドソルジャーである彼女は愛用のマイク「イーリス」をマイクスタンドで立て、スピーカードローン「ツウィリングス・モーント」を左右に配置して戦闘態勢を取った。
「私はまだ帰還しない。この世界の情報を集め終えていない」
 対する悪魔『ブエル』は怯まず、不敵とも感じられる淡々とした調子で語る。契約の対価として本田・英和が差し出した「はじまりの猟兵」の情報――彼も超大国のオブリビオンどもと同様、それに興味を抱いているようだ。であれば猟兵として為すべき事は決まっている。

「広がる空に、震える大地に! 響き渡れ、ハート・ブレイカー!」
 ギターとキーボードが一体化したオリジナルデバイス「インストルメント」をかき鳴らし、フィーナは【Heartbreaker】を発動。大音量の演奏に破魔の歌声を乗せて放ち、悪魔どもを攻撃する。幼い頃から天性の才を発揮し、ユーベルコードの域にまで達した彼女の音楽は力強く、そして美しい。
『ウオォォォォ……!!』
 その音楽には悪魔の眷属である『ブエル兵』さえも聞き惚れ、続々と行動不能に陥っていく。敵が多く、山脈という反響物が多いこのステージにおいて、フィーナの魔曲は最高の威力を発揮していた。峻厳なるスタノヴォイの山々に、魔を祓う音色が響き渡る。

「お前の歌は醜くない。だが私にとっては快適ではない」
 不快そうに顔をしかめながら、否定の言葉を何重にも紡ぐブエル。フィーナのユーベルコードは当然この悪魔の元にも届いており、行動の自由を妨げていた。この事態を打開するために彼は【損傷否定詠唱】を唱えようとするが――。
「回復なんてさせません!」
 フィーナが奏でる圧倒的な大音量の演奏と歌唱は、敵のユーベルコードの詠唱すらもかき消してしまう。唱え続ける限りあらゆる損傷と死を「否定」する超能力も、これでは十全に機能を発揮できない。それこそ彼女の第二の狙いだ。

「まったく愉快ではない……!」
 ガスマスクのような仮面に覆われてブエルの表情は窺えないが、おそらくは渋面だろう。詠唱を妨害された彼の身は破魔の歌声に晒され続け、じわじわと力を抜かれていく。これまでの戦闘で負った傷も、まるで治癒する様子はない。
「あなたの好きにはさせません! 本田さんの後を追ってもらいます!」
 フィーナの目的は敵の動きを止め、味方の行動を支援すること。こうして彼女が演奏を続ける限り、ブエルは損傷を否定できない。攻撃が通るようになれば、あとは味方の猟兵が決着を付けてくれるだろう。ともに獣人世界大戦を戦う仲間への信頼をもって、天上の演奏家は己の役割をまっとうするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「黯党に好き勝手はさせないっすよ!…あれ、本田はもう倒されたんす?えっと、召喚悪魔もやっつけるっすよ!」

「否定は相手の知識あってこそ。まず知識を蒐集してる配下を速攻ぶっ飛ばすのが良策っすね!」
試作魔剣『空亡・蒼』を掲げてUC『妖力放出・空亡の波動』で周囲のブエル兵と召喚魔法陣を一掃、破壊しきれなかった魔法陣があればUC『妖怪忍法葉っぱ乱舞』の爆弾で破壊

「生命の否定っすか…なら生命でなければいいんすね!」
【化術】で悪霊に変化しさらにUC『骸合体「ヤマタノオロチ」』でオブリビオン化、【化術】で【おどろかし】隙を作って空亡・蒼で【だまし討ち】

「変幻自在で正体を掴みにくいおいらは相性が悪かったっすね」



「黯党に好き勝手はさせないっすよ! ……あれ、本田はもう倒されたんす?」
 幻朧帝国より「はじまりの猟兵」を求めて黯党の軍勢がロシア南東部まで進出して来ているとの報せを聞き、迎撃に向かった家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。この時すでに首魁である『本田・英和』は戦死しており、スタノヴォイ山脈に布陣する軍団の指揮は悪魔『ブエル』が執っていた。
「えっと、召喚悪魔もやっつけるっすよ!」
「お前達に私は斃せない。私はお前達の勝利を『肯定』しない」
 気を取り直して戦いを挑む衣更着に、ブエルは厳かな態度で告げる。|超能力《サイキック》によってあらゆるものを「否定」する、かの悪魔の実力は極めて高い。この世界大戦にかけて本田が呼び出したのも頷けるというものだ。こいつに「はじまりの猟兵」の情報を持ち帰らせるわけにはいかない。

「否定は相手の知識あってこそ。まず知識を蒐集してる配下を速攻ぶっ飛ばすのが良策っすね!」
 手始めに衣更着が狙ったのは『ブエル兵』。主に情報を伝えるのが役割の眷属達は、この戦いを通じて猟兵の知識を集めようとしている。学習の猶予は与えまいと、彼は試作魔剣『空亡・蒼』を掲げて【妖力放出・空亡の波動】を発動した。
「魔剣の力を借りて、妖力全力放出! っす」
『グオオォアアァーーーッ!!!?』
 この魔剣は彼の悪友が鍛え上げたもの。その刀身に秘められた妖力が増幅して解き放たれ、嵐となって吹き荒れる。
 その力は無差別な破壊を周囲にもたらし、巻き込まれたブエル兵どもと地面に描かれた魔法陣を一掃する。ここでは眷属を呼び出すための準備も整えられていたようだが、だったら陣ごと崩してしまうまでだ。

「ぽん! 狸忍法奥義、どろんはっぱ乱舞っす!」
 妖力の暴風が収まり、それでも破壊しきれなかった魔法陣を見つけると、衣更着は【妖怪忍法葉っぱ乱舞】を発動。
 化術で変形性能が向上した「どろんはっぱ」を爆弾に変えて投げつけ、起爆。ドカンと地面ごと吹っ飛ばせば、今度こそ魔法陣は消えてなくなった。まだ別の場所に戦力や召喚手段が残っていたとしても、かなりの痛手となるはず。
「眷属召喚を止めたところで意味はない。お前の命はここで生き存えない」
 しかしブエルは動揺を見せず、眷属が相手をしている間に【生命否定空間】を展開。その名のとおり生命を「否定」する結界をもって、敵の生命力を奪い取り自陣営の力に還元せんとする。自分の中から灯火が消えていくような、強烈な脱力覚が衣更着を襲った。

「生命の否定っすか……なら生命でなければいいんすね!」
「何をしたところで意味はな……?!」
 嘲弄するブエルの目の前で、衣更着は悪霊に変化し、さらに【骸合体「ヤマタノオロチ」】で一時的なオブリビオン化を果たす。お得意の化術と骸魂との融合という、カクリヨファンタズムの妖怪特有の化かし技。これには悪魔も度肝を抜かれただろう。
「そのような術は私の知識にはない! この情報は既知ではない!」
「そいつは何よりっすね!」
 ブエルが驚いている隙に、衣更着はヤマタノオロチの尻尾で『空亡・蒼』を掴むと、死角から騙し討ちを仕掛ける。
 時空を操り超常を討つ、この魔剣の妖力はまさにこのような相手にふさわしい。不意を突かれた悪魔の背中を、友の刃はばっさりと斬り伏せた。

「変幻自在で正体を掴みにくいおいらは相性が悪かったっすね」
「グッ……確かに相性が良くはない。評価を改めるしかない」
 どろんと煙を上げてまた別の姿に変わる衣更着に、ブエルが憎々しげな視線を送る。正体自体が不確かなものを調査し、真相を暴くのも本来ならこの悪魔の領分だろう。だが、この戦いの最中にそれを成し遂げるのは難しい――戦況が徐々に不利に傾きつつあるのを、彼も認めざるを得なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と

契約者が居ない後も
契約を履行しようとする姿勢は好きだよ
だけどその契約は達成させる訳にはいかない
「悪いが、此処で終わりだよ」

無限に湧き出すのも強化されて行くのも
俺一人だったら対処できないだろう
心強い相棒が居るからこそ戦える
相談せずとも、頷き合って伝わる
「任せとけ」

敵の攻撃は兎に角回避
ギリギリに届かない範囲を見極め
当らない事を重視して立ち回る
「時人も、気をつけろよ!」

【水遁「無尽霧影分身撃」】を使用
分身を全員拡散させてから爆弾へ変化
広範囲を巻き込んで効率よく吹き飛ばす
「こんな技は初めて見ただろう?」

この攻撃を覚えて強化できても
次の一手は防げないだろう
「ぶちかませ、相棒」


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

律儀な悪魔だけどそれが仇になる
「潰して勝利を固めよう」

会話はそれだけ
頷き合うだけ
陸井の準備を見たら俺の方も即決だよ

真っ直ぐ醜悪な否定の悪魔を指し
天より来る百億の光使を詠唱!

これはこいつにとって新しい情報
知らない技
数盛ってるのは事実だけど
一々否定から入るこいつには
逆に理解が遠いだろうから好都合かもだ

此処から着弾までは全力回避
「陸井も避けて!」

陸井が全力で倒し続ける配下の間で
ギリギリ回避で攻撃もすると
俺を狙う悪魔の攻撃でフレンドリーファイアが
慌ててまた乱射してるけど
「俺達には届かないよ!」

さあ時が満ちた…
回避不能の光使の攻撃を喰らえ
不知の技を知った瞬間が終わりの始まりだ



「契約者が居ない後も、契約を履行しようとする姿勢は好きだよ。だけどその契約は達成させる訳にはいかない」
 黯党首魁『本田・英和』の作戦を引き継ぎ、スタノヴォイ山脈に陣を敷き続ける悪魔『ブエル』に、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)はそう語った。本田の背後で黯党に力を貸してきたこの悪魔は、サクラミラージュで起きた事件にも間接的に関わっている。この獣人戦線でも何をしでかす気か分かったものではない。
「律儀な悪魔だけどそれが仇になる」
 あくまで契約を履行するために撤退せず、こうして自分達と対峙している今こそが、悪魔を討つ好機だと葛城・時人(光望護花・f35294)も理解していた。逆にここで逃がしてしまえば、次に遭遇する機会はいつになるか分からないが――その心配も倒してしまえば必要なくなる。

「悪いが、此処で終わりだよ」
「潰して勝利を固めよう」
「いや、私はまだ終わりではない。お前達に勝利は渡さない」
 武器を構える二人の猟兵の言葉を、悪魔ブエルは否定する。その周囲に敷かれた魔法陣より現れるのは、異形の姿をした『ブエル兵』の群れだ。無尽蔵に召喚され、戦闘を通じて猟兵の知識を学習する、時間経過と共に脅威を増していくタイプの眷属だ。
「相棒」
「任せとけ」
 これに対して時人と陸井の会話はそれだけ。相談せずとも、頷き合うだけで互いの意図は伝わる。学生時代から何年も戦い続けてきた仲だ、阿吽の呼吸とはこの事だろう。一人だったら対処できないだろう相手も、心強い相棒が居るからこそ戦える――陸井の準備を見た時点で、時人のほうも役割を即決していた。

「百億の光使となりて来い! ククルカン!」
 醜悪なる否定の悪魔をまっすぐに指差して、時人が詠唱するのは【天より来る百億の光使】。このユーベルコードは対象の指定から発動までに時間差があり、すぐには結果は現れない。だが、それが逆にブエルの警戒心を掻き立てた。
「百億……常識的にはあり得ない。そのような規格外のユーベルコードは情報にない」
 これはブエルにとって新しい情報、知らない技だ。数を盛っているのは事実だが、一々否定から入るこの悪魔には、逆に理解が遠いぶん好都合だったかもしれない。情報を司るが故に未知を未知のままにしておけず、ここで彼は見極めにかからざるを得なかった。

『ウオォォォォ……!!』
 もっともブエル本人が止まってもブエル兵まで動きを止めるとは限らない。百億の光使が降臨するまでの間、時人と陸井は押し寄せる眷属の大軍に全力で対処するしなければならない。作戦を成功させるためにも、ここは兎に角回避あるのみだ。
「陸井も避けて!」
「時人も、気をつけろよ!」
 車輪のように回転しながらの突進や、獅子の頭部による噛みつきを、ギリギリで届かない間合いを見極めて避ける。
 実力では二人のほうが格段に上だ。だが戦いの中でブエル兵は二人の動きを学んだのか、攻撃が正確になっていく。やはり長引けば長引くほど手強い相手だ。

「俺を見つけられるかな」
『ウォ……?!』
 そこで陸井は【水遁「無尽霧影分身撃」】を発動。霧の術式を核とした153体の分身を、全員バラバラに拡散させる。
 突然のことにブエル兵たちが本物の標的を見失った直後、それらは一斉に爆弾へと変化。広範囲を巻き込んだ大爆発を引き起こした。
「こんな技は初めて見ただろう?」
『グオオォォォォーーーッ!!!?』
 これは故郷で学んだ水練忍者の技を、独自に発展させたユーベルコードだ。異世界の悪魔の知識にあるはずがない。
 吹き飛ばされたブエル兵たちの断末魔が、スタノヴォイ山脈に木霊する。これで効率よく敵の数を減らせたはずだ。

「流石……おっと!」
 陸井が全力で眷属を殲滅する傍ら、時人も残存するブエル兵の間でギリギリの回避と反撃を続けていた。そこに飛来したのは翠緑の魔力弾――ブエルの放ったユーベルコードを反射的に躱すと、それは付近にいたブエル兵を跡形もなく消滅させた。
「……どうやら、この攻撃手段は有効ではない。敵の回避能力は低くはない」
「俺達には届かないよ!」
 どうやらブエルも黙って見ているだけではないようだ。着弾点から周囲1mの存在を消滅させる【存在否定呪文】は強力だが、それ故にフレンドリーファイアの危険も秘めている。それを承知のうえか、あるいは焦っているのか、敵は魔力弾を乱射してくるものの、二人にはひとつも当たっていない。

「……そろそろか。俺の攻撃を覚えて強化できても、次の一手は防げないだろう」
 かくして敵の攻勢を凌ぎ続けること2分強。霧の分身を作り続けながら、陸井は「その時」が来るのを待っていた。
 ブエルが危惧し、彼が期待していた相棒のユーベルコード。その降臨の兆しが、天から眩き光となって現れ始める。
「ぶちかませ、相棒」
 その一言とほぼ同時に、出現したのは疑似的に翼人化した白燐蟲の軍団。光を束ねた剣を携え、純白の翼を羽ばたかせたその姿は天使のようでもあり。あまりの眩さに敵は誰一人として目を開けていられず、恐れるように顔を背ける。

「さあ時が満ちた……回避不能の攻撃を喰らえ」
 その光使たちを召喚した時人は、厳かな宣言と共に一斉攻撃を命じる。白燐の翼人が放つ光の魔法と光剣の斬撃は、悪魔の眷属どもを余波だけで消し去りながら、最初に指定された対象――ブエルに降りかかる。これほどに苛烈で美しき光を、果たして彼は見たことがあるだろうか。
「不知の技を知った瞬間が終わりの始まりだ」
「ッ……まだ、終わりではない。だが、この光を私は知らない……!!」
 未知なる秘術の情報を把握するという、ブエルの目的は叶った。だが、その代償に受けたダメージは多大なものだ。
 天よりの白光に灼かれた悪魔の肉体は爛れ、装甲のあちこちが罅割れ、崩れ落ちる。どこまでも悪魔の本分に倣い、その性質ゆえに彼は窮地に追い込まれていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
【ドヴェルグA班】
いつのまにかあたしも、|熟練兵《ベテラン》って言われるようになったか。
まあ、経験が浅い二人を無事に連れて帰るのが目標ね。
そのためにも、自分でも使ってる生命否定空間の影響を軽減する「オーラ防御」「霊的防護」の霊符を二人に渡す。

ころころ走り回ってるわね、ブエル兵。一気に片付ける。
「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「串刺し」で寒氷陣。
地面から氷槍を突き上げブエル兵を一気に討滅する。
悪魔ブエル本人は希雪とゼロに任せるわ。一つぶちのめしてきて。
寒氷陣の氷槍をブエルにも何本か突き刺して援護する。

ブエル兵が湧くたびに、あたしは氷槍で串刺しにし続ける。二人とも進退の状況判断しっかりね!


白霧・希雪
【ドヴェルグA班】

これが、悪魔ですか…

霊符を受け取った後、悪魔ブエルと、続々と召喚されるブエル兵を見つめながら、静かに薙刀を構え翼を開く。
大空へ飛び上がり、ブエル兵は無視してブエル本体へと一直線に進む。

否定の悪魔、でしたっけ。
私には、肯定されるべきものなど何一つ残っていない。
存在も、生命も、私には過ぎたもの。

それでも、仲間を否定するのは、絶対に許さない──!
UC発動

体が痛い。張り裂けそうだ。これは呪いの代償。
血を垂れ流しながら、睨みつけて。

全部…全部、全部全部全部!命も、知恵も、その魂さえも、寄越せ──!!

掌から放たれる呪の奔流は、その直線上の全てを奪う。
その通り道は空気すら消え何も残らない。


ゼロ・ブランク
【ドヴェルグA班】
よーし、初めて船の仲間と共闘するよぉ!
否定の悪魔さんかぁ、船のみんなとの絆は否定させないよっ!

まずは、ブエルのUC対策でゆかりちゃんから霊符をもらうね

わー沢山ブエル兵が湧いてくるねぇ…これはゆかりちゃんにお任せ!
アタシは希雪ちゃんと一緒にブエル本体を狙いにいくよぉ!

UCでスプレー塗料をブエルに狙い撃ち!
(UCの使用イメージは、スプレー塗料が当たった相手を|(0,0,0)《ブラックボックス》が放つ黒い雷で攻撃する感じ)
敵も動き回るだろうから、アタシもスプレー塗れになるね、それによる攻撃力アップも狙うよ
悪魔さん、いっぱいシビれちゃってねぇ♪

──否定よりね、肯定の方が楽しいんだよ♪



「これが、悪魔ですか……」
 異界より召喚された悪魔『ブエル』と、続々と召喚される『ブエル兵』を見つめながら、白霧・希雪(呪いの克服者・f41587)は大薙刀を静かに構え、翼を開く。ここで奴を討伐し、幻朧帝国および黯党の侵攻を完全に阻止するのが、今回の依頼だ。
「よーし、初めて船の仲間と共闘するよぉ!」
 並び立つのはゼロ・ブランク(スリーオーブラック・f42919)。希雪とは同じ「空中工房ドヴェルグ」のメンバーであり、今回は初共闘ということで張り切っている。その表情には不安や恐怖は微塵もなく、活き活きとやる気に満ちた笑顔であった。

「いつのまにかあたしも、|熟練兵《ベテラン》って言われるようになったか」
 そんな二人の様子を少し後ろから見守るのは村崎・ゆかり(“|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》”/黒鴉遣い・f01658)。二人と比べれば猟兵としての活動歴はやや長いようで、強敵との交戦経験も多い。それ故、未知の悪魔との遭遇戦でも落ち着いた素振りを見せている。
「まあ、経験が浅い二人を無事に連れて帰るのが目標ね」
 そのために彼女はあらかじめ自作の霊符を二人に渡していた。ブエルの張った【生命否定空間】の影響を軽減する、護符の一種だ。これを持っていれば少なくとも瞬時に生命力を吸い尽くされるようなことは無いはず。ただ勝つのではなく、一人の犠牲者も出さないためには、これくらいの備えはしておかなければ。

「ふむ……どの猟兵からも既知の力は感じない。お前達の情報は古くはない」
 新たにやって来た三人の猟兵から情報を蒐集すべく、ブエルは眷属をけしかける。学習能力に秀でたブエル兵は彼にとって使い勝手のよい駒だ。一体一体の力は弱いが、戦った相手の知識を蒐集することで、徐々に手強くなっていく。
「わー沢山ブエル兵が湧いてくるねぇ……これはゆかりちゃんにお任せ!」
「ころころ走り回ってるわね、ブエル兵。一気に片付ける」
 それを見たゼロは迷いなく"先輩"に対処を任せるが、これは丸投げではなく役割分担だ。ゆかりも作戦は承知しているようで、霊符のオーラを身に纏いながら前に出る。奴らの特性と悪魔の目的を鑑みれば、ここは速攻こそ最適解だ。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。冷たく凍えし絶望の爪牙よ。地の底より目覚めて、大地を闊歩する傲慢なる衆愚を穿ち貫け。疾!」
 ゆかりが【寒氷陣】の詠唱を紡ぐと、山肌が微かに震え、地面を突き破って無数の氷柱が飛び出してくる。金鰲島十天君が一人、袁天君の絶陣を再現したこの術式は、陣内を氷の槍衾として敵を討つ。逃げられる場などありはしない。
『グギャァァァァァーーーッ!!!?』
 あわれ全身を串刺しにされたブエル兵は、知識を蒐集する間もなく絶命。モズの早贄のように氷に突き刺さった怪物の死骸が、戦場の至る所に林立する。また新たな兵が湧いてきたとしても、この陣内にいれば即座に同じ末路を辿るであろう。

「悪魔ブエル本人は希雪とゼロに任せるわ。一つぶちのめしてきて」
「うん、いくよぉ!」「はい」
 ゆかりが眷属の討滅を済ませると、ゼロは氷槍の合間を縫うようにブエルの元へ駆けていく。そして、それよりも先に希雪は大空へ飛び上がり、兵も地形も無視して本命へと一直線に進んでいた。迫るにつれて二人の五感は、禍々しい|超能力《サイキック》の波動を感じ取る。
「否定の悪魔、でしたっけ。私には、肯定されるべきものなど何一つ残っていない。存在も、生命も、私には過ぎたもの」
 血のように赤い瞳で敵を睨みつけながら、希雪は語る。かつて彼女は「自分に関わった人が死ぬ」呪いをかけられ、あまりにも多くのものを失った。今もなお彼女の心は罪の意識に囚われており、死や存在の否定など恐れはしない――だが、それでも。

「それでも、仲間を否定するのは、絶対に許さない──!」
 希雪という名前を貰い、猟兵として戦う中で得た、かけがえのない存在。それだけは断じて奪わせはしないと叫び、発動するのは【全於与奪】。彼女の体内に残された呪いの力、無害化された致死の呪詛が再び活性化し、暴れ始める。
「ほう……お前の力は安全ではない。私を殺せる可能性はゼロではない。だが、お前自身も例外ではない」
「言われなくても――!」
 体が痛い。張り裂けそうだ。これは呪いの代償。昔に比べれば制御できるようになったとはいえ、肉体にかかる負担と激痛は如何ともしがたい。全身から血を垂れ流しながら、それでも希雪は射殺すような眼光でブエルを睨みつける。

「だが、お前の覚悟は正しくない。発動前に潰してしまえば、何も問題はな……」
「させないよ!」
 攻撃を阻止しようとするブエルの横合いから、「うさぎのスプレー缶」片手にゼロが飛びかかる。彼女が吹き付ける【ブラックアウト・スプレー】は、染めた相手を|(0,0,0)《ブラックボックス》からの雷で追撃するユーベルコードだ。ブエルも直感的に危険を感じ取ったか、咄嗟に身を翻して塗料を躱す。
「ゼロのアートを味わっちゃいなっ?」
「芸術自体に興味はない。だがお前の術理に興味はなくもない」
 まるで遊ぶようにスプレーを吹き付けまくるゼロ。敵も当然動き回るものだから、彼女自身も塗料塗れになる。だがそれで良いのだ――自らの体表をペイントすることで彼女のユーベルコードは威力を増す。これが絵画を楽しむ心を力に変える、ゴッドペインターの能力だ。

「……調子に乗るのは賢明ではない。お前達の全てを、私は肯定しない……!」
 危機感を抱いたブエルは【存在否定呪文】を詠唱。呪いも、塗料も、生命も、全てを「否定」する魔力弾をもって、二人の猟兵を纏めて消し去らんとする。付近に味方がいれば巻き添えにする恐れもあるユーベルコードだが、皮肉にもブエル兵が一掃されている現状が、彼の躊躇を捨てさせた――。
「それは止めさせてもらうわよ」
「ぐッ?!」
 だがそこで、ふいに数本の氷槍がブエルの足元から突き立つ。眷属の相手をしている最中も、ゆかりは後輩達の様子を見守り、いつでも援護を飛ばせるようにしていたのだ。悪魔祓いの役割を奪うつもりはないが、動きを鈍らせたり、氷槍で魔力弾を受け止めることはできる。

「二人とも進退の状況判断しっかりね!」
「助かりました」「ありがとう!」
 ゆかりの声掛けにこくりと頷いて、気を引き締め直す希雪とゼロ。【存在否定呪文】は氷槍を消し去ったのみで此方に被害はなく、さらに悪魔は足を串刺しにされ動きが鈍い。決着をつけるとすれば、これ以上のチャンスはあるまい。
「悪魔さん、いっぱいシビれちゃってねぇ♪」
「ぐぁ……ッ?! これは、まったく快適ではない!」
 シュッとスプレーを吹き付けられたブエルに、黒い小箱から黒い雷が槍のように突き刺さる。所持者本人にも仕組みの分かっていない正真正銘のブラックボックスだが、その威力は侮れず、悪魔もたまらず絶叫するほどの電圧だった。

「──否定よりね、肯定の方が楽しいんだよ♪」
 否定ばかりを口にする悪魔にそう言って笑いかけながら、ゼロはスプレーと小箱をしまって横にすっと飛び退いた。
 それは仲間の射線を塞がない、そして巻き込まれないため。身を引き裂かれるような激痛に耐えて、この時を待っていた希雪のためだ。
「全部……全部、全部全部全部! 命も、知恵も、その魂さえも、寄越せ──!!」
 黒衣の天使の掌から放たれる呪いの奔流は、直線上の全てを奪う。その通り道からは空気すら消え、何も残らない。
 見る者に絶望を叩きつける圧倒的な"死"の気配。悪魔の|超能力《サイキック》をもってしても、これを全否定することはできない。

「ぐ、がアァァァ……ッ! この体験は既知ではない、極めて退屈ではない。だがこの状況は想定していない……!」
 辛くも射線上から逃れることで、ブエルは呪いの奔流に飲み込まれずに済んだ。だが、呑まれかけたその身には深いダメージが刻まれ、塗料と感電の痕も含めて無惨な有り様に。否定しがたい窮地、そして敗北の危機へと、かの悪魔は追い詰められつつあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線

今回は速攻で行く!…ライメイザ!
『はい、ならば私が道を開きます!』
ライメイザがブエル兵達に破壊雷を放ち攻撃するのと同時に凍結攻撃の矢弾の雨を放ち敵を凍らせた後、焼却の斬撃波で敵を攻撃する

覚悟せよ!悪魔ブエル!
『知識を吸収される前に倒す!』
ライメイザが再び破壊雷を放つも回避させる

何てな…!その空間を破壊するのが先じゃ!
妾がUC混沌の闇の波動を打ち込み生命否定空間を素早く破壊する

『厄介だな…本当に貴様は!』
ライメイザが神速移動で破壊雷の射程範囲に入り破壊雷を放ち五感を喪失させる


…やるぞ、ライメイザ!
『はい…レティシア様!』
妾も音響弾を放ち敵を吹き飛ばしてライメイザも斬撃波で追撃したのだった


黎明・天牙
夢幻戦線

さっさと倒そうぜ、こいつ等
クイックドロウの要領で振動の力をブエル兵達に放ちその後周りが爆破する

よっしゃ…新技の爆破する振動の力だ
ブエル兵達に爆破する振動の力を放ちティニ達が敵の元へ行けるようにする

ティニ達には当てさせねえよ…ちゅんちゅ〜ん!
UCを発動して超越次元移動でブエルが魔力弾を放とうとする敵の前の地面を持ち上げて幻想を現実にする力でUC無効属性を地面に付与して消滅させる魔力弾を無効化する


ちゅん!
持ち上げた地面を利用して敵の元へ転がりティニ達の元へ吹き飛ばした



『ふん、所詮は獣人…始まりの猟兵の場所も特定出来ぬか、さあ我が愛馬よ!蘇れ!』
とある場所で邪神は何かを復活させようとしていた



「さっさと倒そうぜ、こいつ等」
 猟兵達の知識を蒐集し、時間経過と共に手強くなる『ブエル兵』。そんな奴らとだらだら戦ってやる理由はないと、黎明・天牙(夢幻戦線のリーダー『パラダイス・ブレイカー』・f40257)は出会い頭にクイックドロウの要領で振動の力を放つ。敵陣の真ん中めがけて飛んでいったそれは、着弾直後に周囲を爆発させた。
「よっしゃ……新技の爆破する振動の力だ」
「ふむ……今の技は見覚えがない。なかなか無関心ではない」
 振動の力は彼が独自に編み出した特殊な技術だ。故にその知識はブエル兵にも、主である悪魔『ブエル』にもない。
 『グオオォォォォッ!!?!』と悲鳴を上げて吹き飛ぶ眷属らをよそに、知識欲の疼いたブエルは猟兵の一挙一動を静かに観察していた。

「今回は速攻で行く! ……ライメイザ!」
『はい、ならば私が道を開きます!』
 ブエル兵相手に時間をかけるのは下策との考えは、天牙と同じチームのレティシア・ハルモニアス(奪われた全てを取り返す為に〜吸血鬼戦線〜・f40255)も同じだった。彼女の【眷属召喚・ライメイザ】によって呼び出された吸血鬼の従者が雷を放ち、ブエル兵どもを破壊する。
「道を開けよ!」
『グギャァ?!』
 レティシア自身も闇刃銃『エレクトニアス・ヴァラージュ』から冷たい銃弾の雨を放ち、敵を凍らせたのちに焼却の斬撃波で焼き払う。その視線の先にいるのは悪魔ブエルだ。奴さえ討ち取ることができれば眷属の召喚も止まるはず。

「行ってきな、ティニ」
「うむ!」
 天牙も引き続きブエル兵に爆破する振動の力を放ち、仲間達がブエルの元に行けるように援護する。敵の陣形に乱れが生じれば、その隙間を縫うようにレティシアとライメイザは戦場を駆け抜け――否定の悪魔を射程圏内に捉えた。
「覚悟せよ! 悪魔ブエル!」
『知識を吸収される前に倒す!』
「そのつもりはない」
 まずはライメイザが再び破壊雷を放つも、これはブエルに回避される。 かの黯党首魁が召喚した大悪魔だけあって、単純なレベルも並ではない。猟兵や獣人戦線、そして「はじまりの猟兵」の情報を蒐集するまで、ここを退くつもりはなさそうだ。

「何てな……! その空間を破壊するのが先じゃ!」
 レティシアはライメイザが敵の相手をしている隙に、ブエルが張った【生命否定空間】に【混沌の闇の波動】を打ち込んだ。あらゆる概念を消滅させる混沌の力は、大悪魔の|超能力《サイキック》さえ破壊し――これまで密かに彼女達から生命力を吸い上げていたフィールドが消える。
「問題はない。これならお前達を倒すのに不足はない」
 これまでに奪った生命力で、ブエルは強化された【存在否定呪文】を唱えんとする。レティシアの放った混沌同様、彼が操る「否定」の力も全てを消し去る。闇であれ雷であれ抵抗は無意味だと、翠緑の魔力弾が二人の吸血鬼を襲う。

「ティニ達には当てさせねえよ……ちゅんちゅ〜ん!」
「……?!」
 そこに次元を超越して飛び込んできたのが、【『楽園』奥義・OVER THE PARADISE】を発動した天牙だ。巨大な白雀の姿に変身した彼が一声鳴くと、突如としてブエルの目の前の地面がせり上がる。レティシア達を狙うはずだった魔力弾は、この土壁に遮られて着弾した。
「……私の『否定』が通じていない。このようなユーベルコードは見たことがない」
 幻想を現実に変える。それが『楽園』奥義を発動した天牙の能力である。ただの土壁程度たやすく消滅させられるはずの【存在否定呪文】は、彼が付与したユーベルコード無効効果によって防がれる。今日何度目かも分からぬ未知が、またもブエルを驚愕させた。

「ちゅん!」
「……ッ!!」
 さらに天牙は持ち上げた地面を利用して、すべり台のように敵の元へ転がり込む。速度と体重の乗った体当たりを、ブエルは動揺から避けられずに吹き飛ばされ――その先には稲妻を纏ったライメイザが、神速移動で回り込んでいた。
『厄介だな……本当に貴様は!』
「……! 何も見えない。何も聞こえない」
 彼女が放った破壊雷は今度こそブエルに命中し、五感を一時的に喪失させる。無音の暗闇に落とし込まれた悪魔は、闇雲に否定の魔力弾を放ち続けるものの、標的が定まらず無駄に地形を破壊するばかり。いかに大悪魔とて、これでは隙だらけだ。

「……やるぞ、ライメイザ!」
『はい……レティシア様!』
 この好機を逃さずレティシアは音響弾を放ち、敵が空中に吹き飛ばされたところをライメイザが斬撃波で追撃する。
 吸血鬼の主従による息のあった連携攻撃。五感喪失により防御態勢も取れないブエルは、無防備にこれを食らった。
「がはッ……この負傷は軽くはない。いかに私とて無事ではない……」
 いよいよブエルも自身の窮地を認めざるを得なくなったようで、傷に手を当てながら思案を巡らせている。撤退か、それとも打開の手段を模索しているのかは知らないが、考えがまとまるのを待ってやる理由もない。夢幻戦線の面々は一丸となって、さらなる追撃を仕掛けた――。


『ふん、所詮は獣人……始まりの猟兵の場所も特定出来ぬか、さあ我が愛馬よ! 蘇れ!』
 彼らが悪魔との戦いを繰り広げるのと同時刻、とある場所では一柱の邪神が暗躍し、何かを蘇らせようとしていた。
 その邪神の名はオーガスト・ベイン。この戦争当初から天牙達の元から離れていたかの者が、果たして何をしようとしているのか、真相が明らかになる時も近いのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンカ・ディアベルスター
大量の敵か…ならば消し去ろう
UCを発動した後、心眼で敵を見てから壊滅の力を纏った矢弾の雨を放ちブエル兵達を消し飛ばす
敵の攻撃は高速詠唱で結界術を発動させて防御する

覚悟してもらおうか!ブエル!
高速詠唱で電撃魔法を放ち攻撃するが回避される

むう、やはり手強いな…ならば消し去る!
敵のUCに対しては結界術を展開した後、『狩猟』の星神 翠嵐を発動して狩猟の力で概念無限消滅撃の矢弾の雨を放ち敵の生命否定空間を消滅させる

昔は魔法は少し苦手だったけど…死宝の邪神のせいとはいえ今は故郷を守る為に戦えるけどね!
再び高速詠唱で焼却の矢弾の雨を放ち敵に攻撃した



「大量の敵か……ならば消し去ろう」
 黯党首魁『本田・英和』に召喚された悪魔『ブエル』とその眷属による軍団を見て、リンカ・ディアベルスター(星神伝説を知る開拓者・f41254)はおもむろに【『壊滅』の星神 ナヌー・ザーク】を発動。現代では知る者も少なくなったいにしえの星神の力を矢弾に纏わせ、攻撃を開始する。
「壊滅の星神はね、全てを壊すんだよ?概念も次元もね……」
『グギャオォォォッ!!!?』
 矢弾の雨に晒された『ブエル兵』は絶叫しながら吹き飛ばされ、あとには死骸すら残らない。散発的な反撃もあるものの、高速詠唱による結界を張ったリンカには届かない。壊滅の星神の力を宿した彼女の左眼は黒く染まり、背中には黒翼が生えていた。

「覚悟してもらおうか! ブエル!」
「そんなものは必要ない」
 世界大戦に乗じて「はじまりの猟兵」の知識を蒐集しようとする悪魔の企み、必ず止めてみせると意気込むリンカ。
 彼女の放った電撃魔法を、ブエルはひらりと躱す。すでに相当のダメージを受けている様子だが、この悪魔の動きが鈍る気配はなかった。
「眷属を倒した程度で、調子に乗るのは賢明ではない」
「むう、やはり手強いな……ならば消し去る!」
 反撃とばかりに【生命否定空間】を発生させてくるブエルに対し、リンカは結界を展開して生命力の奪取を止める。
 さらにナヌー・ザークに加えてもう一柱、【『狩猟』の星神 翠嵐】を発動し、その神力を込めた矢を天に放った。

「狩猟の星神はね、容赦が無い性格なんだよ……敵になればね」
 概念を消滅させる翠嵐の矢は、|超能力《サイキック》で構築された【生命否定空間】さえも消滅させる。獣人戦線を脅かす異界からの敵に対して、この世界の神が容赦しないのは当然だった。神の怒りに触れることがどれほど愚かしく、恐ろしいか、叡智に優れた悪魔なら知っていよう。
「神を名乗る存在はどの世界にも少なくない。だが、これほどの力を持つものは多くはない……」
 ブエルも星神の力に興味を持ったようだが、今さら蒐集の時間は与えない。新しいブエル兵が出てくる前に、瞳を藍に染めたリンカは再び高速で詠唱を紡ぎ、手に持っている「星神の杖」の先端から赤々と燃える炎の矢を生み出した。

「昔は魔法は少し苦手だったけど……死宝の邪神のせいとはいえ今は故郷を守る為に戦えるけどね!」
 運命の悪戯で長い年月を生き、獣人戦線を見守ってきたリンカ。それゆえに世界を守るという意思は誰にも負けず、持てる力と知恵の全てを使って外敵に立ち向かう。彼女の放った焼却の矢は紅蓮の軌跡を描いて、狙い過たず悪魔を射抜いた。
「オォォォ……!!!」
 たちまち炎上したブエルの肉体は、もはや満身創痍と言ってよい有り様であり、配下のブエル兵も片っ端から倒され学習が進んでいない。猟兵優勢の戦況に変わりはなく――決着が迫りつつあることを、悪魔も「否定」することはできないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウォルター・ウェパル
【ドヴェルグ:B班】
グラン様、エルゴ様、ルイーグ様と共に出撃します!
アドリブ歓迎です!

異世界の悪魔『ブエル』!
DKWの悪魔として、負ける訳にはいかない相手ですね!
気合いを入れて参ります!
よろしくお願いします皆様!
ブエル兵の軍を、自分たちのパワーで消し飛ばしましょう!

開幕からガレオンチェンジで飛空駆逐艦形態に変身!
ルイーグ様とエルゴ様をお乗せして敵の攻撃から庇いつつ、衝角刀で体当たりして敵兵を吹き飛ばします!
突撃、吶喊です!

生命否定空間はルイーグ様に任せ、存在否定呪文の魔力弾は、誘導爆弾や魔導砲で弾幕を張って相殺します!
そして、艦載砲からグラン様を射出して超級覇王電影弾を使用してもらう作戦です!


グラン・ボーン
【ドヴェルグ:B班】
悪魔がワラワラとわいてるみたいだな

蹴散らすのは容易いが、蹴散らしながら進むとなると大変だ
ウォルター頼むぜ
船になったウォルターのラムに乗る

コオオオオオッ

呼吸法により全身の気をまわす
チャクラを回すとも言うがその回転を螺旋状に回す
DNAも螺旋状
螺旋に回す気こそが最大の力を発揮する
その螺旋の力を全身に纏う
まるでグランが球体になったように見える
その球体からはグランの顔がのぞいている
ウォルター!!頼むぜ

敵に向かって突き進むウォルター
グランはその回転力で魔力弾をはじいていく
否定に対して、強い覇気で抵抗
最後はエルゴに押し出され、ブエルまで突っ込んでいく
全身アタック!
最後はキメのポーズをとる


エルゴ・ルスツァイア
【ドヴェルグ:B班】
イクスフェルに搭乗
アドリブ歓迎

目標は悪魔ブエル。兵すら知識をフィードバックして強化されるのか
時間は掛けられない。速攻と行こうか!

飛空駆逐艦となったウォルターさんの甲板に脚を固定し、両腕部レールチェーンガンの制圧射撃と右背部マルチランチャーから放つ無数の|中型ロケット弾《曳火砲撃》で、ブエル兵を面制圧。
飛空艦の突撃と共に一気呵成の攻撃で殲滅しよう。
遠距離の敵は任せてくれ。

皆への援護と迎撃は忘れずに。
存在否定呪文の魔力弾は電磁加速弾の雨と|ミサイル《誘導弾》で全力迎撃。

そして艦載砲を加速レールで挟んでおき、射出と同時に電圧をかけ、電磁カタパルトとしてグランさんを更に加速させる。


ルイーグ・ソイル
【ドヴェルグ】
詠唱を上書きする勢いで、力いっぱい腹の底から叫ぶっすよ!
物理的に詠唱を妨害し、何としてもブエルのUC発動を妨げるよう努めますっす!
ユーベルコード人狼咆哮を使用。
【激しい咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
周囲の猟兵の皆さんは注意してほしいっす!
この範囲攻撃なら、多数のブエル兵をある程度はまとめて片付けられるはず…!
その上で、ブエル本体に挑みかかるっす、近接戦闘で打撃がメイン、ある程度は力任せになるっすが、人狼咆哮と併せて押し切っていくっすよ!



「悪魔がワラワラとわいてるみたいだな」
 スタノヴォイ山脈に布陣した悪魔の軍勢を、グラン・ボーン(巨人の巨人拳伝承者・f34134)は剛毅な笑みで睨みつける。元々この軍は黯党首魁にして悪魔召喚士である『本田・英和』が率いていたものだが、彼の戦死後は一柱の大悪魔が指揮を引き継いでいる。
「目標は悪魔ブエル。兵すら知識をフィードバックして強化されるのか」
 不気味な異形の『ブエル兵』の群れと、その中央に座する悪魔『ブエル』を確認し、そう呟いたのはエルゴ・ルスツァイア(|強化継承体《インヘリット・クローン》・f40463)。知識の蒐集を目的とする奴らは、この戦闘を通じて猟兵の戦い方まで学んでいる。もし仕留め損なえば、次に会う時はもっと厄介な敵として出てくるだろう。

「よろしくお願いします皆様! ブエル兵の軍を、自分たちのパワーで消し飛ばしましょう!」
 彼らと共に「空中工房ドヴェルグ」からやって来た猟兵の一人、ウォルター・ウェパル(船の悪魔の飛空駆逐艦・f34061)は意気揚々と叫ぶ。たとえ悪魔の眷属が何匹いようとも、こちらにも頼もしいメンバーが揃っている。力を合わせれば勝てない敵などないと、心から信じ切っていた。
「オレも精一杯努めますっす! よろしくお願いするっす!」
 同じ旅団から来た最後のメンバー、ルイーグ・ソイル(寒がり人狼グールドライバー・f14784)も気合いは十分。
 すでに先行した【ドヴェルグA班】は一定の戦果を挙げており、自分たちB班も遅れを取るわけにはいかない。ここで悪魔の命脈を絶ち、幻朧帝国の侵攻を止めるのだ。

「異世界の悪魔『ブエル』! DKWの悪魔として、負ける訳にはいかない相手ですね! 気合いを入れて参ります!」
 作戦が始まるとウォルターは開幕【ガレオンチェンジ】を発動し、人型から全長23mの飛空駆逐艦形態に変身する。
 彼の正体はデビルキングワールドの船の悪魔、すなわち魔界産まれのガレオノイドだ。 海を奔り、空を翔け、陸を擦る、生きた軍艦である。
「時間は掛けられない。速攻と行こうか!」
「蹴散らすのは容易いが、蹴散らしながら進むとなると大変だ。ウォルター頼むぜ」
「お邪魔するっす!」
 エルゴ、グラン、ルイーグの三名は艦になったウォルターに乗り込む。全員の乗船を確認すると、勇壮なる悪魔駆逐艦はエンジンとスクリューの音を響かせて動き出した。進路は敵陣に向かってまっすぐ、目指すは敵将ブエルの元だ。

「船に変身する人、いや人に変身する船か……このような種族はありふれていない。解明しなければならない」
 ガレオノイドという種族に興味を持ったらしいブエルは、戦力確認のためにブエル兵を差し向けてきた。彼らも悪魔の眷属として一定の実力はあるが、その牙や体当たりはウォルターの装甲板を破れない。軍艦としては小型の駆逐艦とはいえ侮ってもらっては困る。
「突撃、吶喊です!」
『ギャオオォォッ?!』
 ウォルターは船足を緩めず衝角刀『斬貫刃』で体当たりを仕掛け、立ち塞がる敵兵を吹き飛ばしていく。乗船中の仲間を船体でかばいつつ、ブエルを攻撃できる距離まで送り届けるのが彼の仕事だ。異世界の悪魔相手に遅れを取るまいと、燃える闘志をエンジンに焚べて前進する。

「遠距離の敵は任せてくれ」
 衝角突撃の範囲外にいるブエル兵に対処するのはエルゴだ。クロムキャバリア「イクスフェル」に搭乗する彼女は、艦となったウォルターの甲板に脚部を固定し、両腕部にマウントされた40mmレールチェーンガンを斉射。同時に右背部のマルチランチャーから放つ中型ロケット弾の【曳火砲撃】で、敵兵を面制圧する。
『グギャァァァァ!!!?』
「……船だけではなく、あの機体も只者ではない。どうやら様子見の余裕はない……」
 破片と爆圧に塗れて消滅していく眷属どもをよそに、ブエル本人はあくまで冷静。【存在否定呪文】を詠唱して自ら敵艦の迎撃にあたる。いかに頑丈な船体でも、あらゆるものを「否定」する彼の|超能力《サイキック》に耐えられる物質は存在しないだろう。

「コオオオオオッ」
 ウォルターの衝角の上に仁王立ちしていたグランは、敵が詠唱を始めたのに気付くと、呼吸法により全身の気を回し始める。流派によっては「チャクラを回す」とも言うが、彼はその回転を螺旋状にして、全身に気を纏うようにする。
「オブビリオンが相手なら超級覇王翔吼弾を使わざるを得ないな」
 生物のDNAが螺旋状であるように、螺旋に回す気こそが最大の力を発揮する。傍目にはまるでグランが球体になったように見えるだろう。その球体からはグランの顔がのぞいており、視線はまっすぐブエルを見据えている。これぞ必殺の【超級覇王翔吼弾】の構えである。

「ウォルター!! 頼むぜ」
「はい!」
 進路そのまま、仲間を乗せて突き進むウォルター。前方からはブエルの放った翠緑の魔力弾が迫る。それを受けることになるのは、艦首の先端にいるグランだ――彼は螺旋の気の回転力をもって【存在否定呪文】を弾き返す気である。
「フンッ!!」
 全てを消し去らんとする否定の力に、渾身の覇気で抵抗。螺旋の流れに巻き取られるように軌道を変えた魔力弾は、あらぬ方向へと飛んでいき、艦から遠い地面に着弾した。鍛え抜かれた巨人の肉体と達人の業が、悪魔に勝ったのだ。

「馬鹿な、あり得ない」
 流石にこんな方法で自分のユーベルコードを破られるとは思っていなかったか、ブエルは動揺しながら魔力弾を連発する。【存在否定呪文】は単発限りではなく、一度発動すれば毎秒同じ攻撃が可能だ。とはいえ、1秒に1発程度の連射速度であれば――。
「撃ち落とします!」
「迎撃するよ」
 ウォルターの魔導砲『閃光束』や誘導爆弾『飛雷弾』、そしてエルゴの電磁加速弾とミサイルが、魔力弾を空中で相殺する。敵ユーベルコードの効果範囲は着弾点から1m程度なので、こちらから弾を当ててしまえば被害をコントロールできる。歴戦の猟兵を乗せたこの艦が、そう簡単に沈むとは思わぬことだ。

「敵は弱卒ではない。ならば次の手を打たねばならない」
 このままでは敵艦を止められないと察したブエルは、存在否定に次いで【生命否定空間】の詠唱を始めた。ガレオノイドとて生物であるならば、生命力を奪ってしまえば動けなくなるはず。さらに奪った生命力を自軍の強化に利用することで、体制を立て直すつもりだ。
「やらせないっすよ!」
 だが、この時を待っていたかのように艦から飛び出した猟兵がいる。彼――ルイーグはすうっと大きく息を吸うと、力いっぱい腹の底から叫ぶ。普段はゆるっとした風貌と態度の彼が発する、本気の【人狼咆哮】が山々に響き渡った。

「――……!!」
『……!!?!』
 敵はなにやら喚いているようだが聞こえない。ルイーグの激しい咆哮はブエルの詠唱を物理的に上書きし、ユーベルコードの発動を妨げた。さらに音圧は周囲にいたブエル兵をまとめて吹き飛ばし、敵将までの道を強引にこじ開けた。下手をすれば味方も巻き込みかねない無差別攻撃だが、ちゃんと近くに猟兵がいないか確認はしている。
「このまま押し切っていくっすよ!」
「愉快ではない。お前の騒音は好ましくない」
 雑兵を散らし、その上で敵将に挑みかかるルイーグ。打撃メインの近接戦を得意とする彼は、多少力任せではあるが咆哮と合わせてブエルを押し込んでいく。またも目論見を力技で封じられた悪魔は、ひどく不愉快そうな感情を声色に滲ませていた。

「いくぞ!!」
 ルイーグが接近戦でブエルを押さえている内に、グランは回転したままウォルターの艦載砲『大炎界』の中に入る。
 本来は魔界の溶岩を弾にして放つカノン砲だが、今回の砲弾はグランの肉体そのもの。目標のブエルをロックオンすると、さらにエルゴがイクスフェルの電磁加速レールで砲身を挟み込む。
「電圧最大」
「照準よし! 発射!」
 発砲と同時に電圧をかけることで、巨大な電磁カタパルトとなった艦載砲は、凄まじい加速力でグランを射出する。
 仲間の協力を得た時にこそ【超級覇王翔吼弾】は最大の威力を発揮する。期待と信頼を背負って押し出された巨人の戦士は、猛烈な勢いでブエルまで突っ込んでいく――。

「全身アタック!」
「なんだそれは……ッ、ガァぁぁぁっ!!?」
 553cmの巨体が纏う螺旋回転闘気のエネルギー。加えるところに悪魔駆逐艦の主砲及びクロムキャバリアの電磁加速。
 ルイーグがさっと横に飛び退いた直後、その全威力はブエルへと直撃し――山が震えるほどの凄まじい衝撃が、彼を空の彼方まで吹き飛ばした。
「決まったぜ!」
 豪快な笑みを浮かべて、最後にキメのポーズを取るグラン。これほどのダメージと損傷を「否定」する術はなく、敵の肉体はそのままバラバラに砕けて散っていく。同時に山脈に仕掛けられた魔法陣も光を失い、ブエル兵も消滅する。



「本田のみならず私にも勝利するとは、猟兵の力は私の想定に収まらない……この情報を持ち帰れないのは、残念でならない……」
 心から悔しそうな言葉を最期に遺して、悪魔『ブエル』は完全に消え去った。かくしてスタノヴォイ山脈での戦闘は猟兵の勝利に終わり、幻朧帝国の進軍を阻止した彼らの戦いはいよいよ最終局面、第三戦線に向かうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月20日


挿絵イラスト