獣人世界大戦⑫〜いずれ魔女へと至る者
「くらえ、幼女キーック!!!!」
どかーん。放たれた雑な前蹴りが山岳を破壊し、平らに変えた。
ウラル山脈を文字通り蹴散らす、体高数百メートルを誇る彼女こそがゾルダートグラードの総統、『ギガンティック』その人である。
「さあ|機械兵士《ゾルダート》の諸君、我輩に続け!」
ワルシャワも人民租界も、他の超大国共も、吾輩が単騎で蹴散らしてくれるわ。そう豪語する彼女こそが、ゾルダートグラードの誇る『最大戦力』なのかもしれない。
悠々と進む巨体の歩み、それを阻むべく現れた敵へと向けて、彼女は一見シンプルな――その実技術の粋を凝らして作成された超超巨大砲を構えた。
「来たな愚かな抵抗勢力ども! 吹き飛べ! 超超巨大ビィーム!!!!」
ばかでかい以外は地味なライフルに見えたその銃口から、魔力の奔流が迸る。
超絶巨大、反動なし、連発可能、反則じみた巨大兵器が、猟兵達に襲い掛かる――!
●ようじょ大戦争
「どうだ、悪夢みたいな光景だろう」
楽し気に口の端を吊り上げながら、ヴィトレル・ラムビー(斧の狩猟者・f38902)は戦場を示す。
ある程度予想のついていた者も居ただろう、超大国「ゾルダートグラード」を支配する総統ギガンティックは、名前の通りの超巨大幼女だった。
「本当ならばこの上に専用の|甲冑《メイガス》まであるらしいな。その対策までしなくて済むのは素直にありがたい話だ」
溜息交じりにそう口にするが、厄介な相手であることに変わりはない。ウラル山脈を砂山程度の感覚で掻き分けてくる身体能力はそのまま脅威ではあるし、さらにはその体躯に見合う超超巨大砲、『|シュリヒトゲヴェーア《地味なライフル》』で武装している。
本来ならばかなりの反動を強いるであろう兵器だが、ギガンティックはそれを自在に、反動なしかつ普通に連射してくるという。
「この絶え間ない砲撃を掻い潜って、奴の足元に飛び込み、そこから攻撃を叩き込む必要があるだろう。まあ、無茶苦茶にしんどい話だが、お前達ならできるよな?」
具体策を言ってこないあたり軽く途方に暮れているような気配はあるが、グリモア猟兵の目に諦めはない。無理難題も巨大な敵も、猟兵達はいくらでも乗り越えてきているのだから。
何にせよ放っておけば、彼女はウラル山脈を踏破して、ロシア深部の「はじまりの猟兵」を奪取してしまうだろう。今後のことを考えれば、ここで行く手を阻むしかない。
「ちなみに――こいつは未熟ながら『エンドテイカー』能力を持っている。都合の悪い終焉を巻き戻し、自分だけやり直せるという、アレだ」
エンドブレイカーのひとりとしては苦々しい顔にならざるを得ないのだが……この能力を有する者を倒し切るのは極めて困難である。この戦場においても、彼女を完全に倒すことは出来ず、最終的に撤退させられれば御の字、といったところだろう。
「それでも一発ぶん殴って、痛い目を見せてやる必要はある、と私は思う」
まあそれでどう転ぶかはわからんが、手を貸してくれ。そう協力を求めて、ヴィトレルは一同を戦場へと誘った。
つじ
そうか、魔女にも幼い頃があるんだなあ、と遠い目になってしまいました。
厄介な相手ですが、がんばっていきましょう!
●幼女総統ギガンティック
体高数百メートルの幼女です。このシナリオでは倒し切れず、勝利しても彼女は『一時撤退』してしまいます。
●プレイングボーナス
超超巨大砲の砲撃に対処する。
●そのほか補足
巨大敵ということもあり、アドリブ連携が出やすいシナリオになっています。ご承知おきを。
逆に、一人では対策しきれないけど……という方もプレイングの集まり方次第で連携大成功になることがあります。お気軽にご参加ください。
第1章 ボス戦
『幼女総統「ギガンティック」』
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POW : 幼女キーック!!!!
単純で重い【幼女キック】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 超超巨大ビィーム!!!!
【超超巨大砲『シュリヒトゲヴェーア』】から、レベル×5mの直線上に【超超巨大ビーム】を放出する。【魔力】を消費し続ければ、放出を持続可能。
WIZ : 斯様な結末、吾輩は断じて認めない!!!!
全身に【終焉を巻き戻す「エンドテイカーの魔力」】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【巻き戻されてゆく時間の流れ】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メルキア・セルデモン
幼女総統、だったかしら?どの道少し調子に乗り過ぎよ。
私の使う『体質付与(ゲノミクス)』なら、少しの間だけでも、結構な大きさのある怪獣の姿になる事も可能。ただし原形は留める。
イメージは、巨大な蜘蛛の足とカニのハサミを生やした感じ。それでなら巨大砲の攻撃も受け止められるはず。
最後は、その足やハサミで相手を叩き付ける……って感じで行くわ。
……これはこれで、ちょっとやり過ぎだったかしら?
川村・育代
あなたと同じ幼女のあたしが相手してあげる。
拡大で同じ大きさになって彼女の攻撃に対抗するわ。
その様子だと初めてでしょ?同じ大きさの相手と戦うのは。
具体的な方法だけど、タックルすると見せかけて横っ飛びしてビームを空振りさせてから本番のタックルを叩き込んで接近戦に持ち込むわ。
マウントを取って殴ったり、顔面めがけて魔法少女のステッキからの呪殺弾の直射など、取れる手段はフルに使うわ。
相手と同じ大きさになれるのはきっとあたしぐらいだからそれを生かしての連携や援護は積極的に行う様にするわ。
日輪・黒玉
確かに大きさとは力、巨大な獣はそれだけで強いもの
……ですが、巨大だからといって倒せないわけでも、狩れないわけでもありません
誇り高き人狼の力を黒玉が見せて上げましょう
大きいということはその分動きが見切り易いという弱点もあります
その隙を突いてみせましょう
蹴りに合わせて【ダッシュ】からの【ジャンプ】で足に飛び乗り、駆けあがります
振り落とされないように身を低くして一気に駆けつつ、こちらを叩き落とそうとする攻撃は撹乱するように動き回って回避
そこから一気に加速して顎を狙って跳躍
蹴りを打ち込みます
人体である以上は、弱い部分は変わらないはずです
そこを狙います
●大少女戦争
『さあ|機械兵士《ゾルダート》の諸君、我輩に続け!』
蹴りの一発で聳える山を叩き壊し、幼女総統は進撃を続ける。人智を超えたサイズの足が、砕けた岩と土塊に乗ると、ずしんという重い揺れが周囲に広がる。踏み付けにされたそれらは平らに砕け、地にめり込むようにして見えなくなった。
地平線からただ一人突き出したようなその巨体、大地は彼女の歩みに震え、猟兵達の足元までも揺らしている。
「確かに大きさとは力、巨大な獣はそれだけで強いもの……」
圧倒的な存在感を誇る敵を前に、日輪・黒玉(日輪の子・f03556)が呟く。だが、彼女はそれに怯むことなく、狩猟者の目で敵を睨んだ。
「ですが、巨大だからといって倒せないわけでも、狩れないわけでもありません」
誇り高き人狼として、それを証明してみせよう。そんな黒玉の声に応じて、幼女総統は遥か上の方で首を巡らせた。
『む! なんかその辺で生意気言った奴が居るな!』
雑な認識で取り出されるクソデカライフル、シュリヒトゲヴェーアの銃口が前方を向いて、光を放ち始める。見るからに大雑把な狙いではあるが、サイズに任せたその攻撃範囲は脅威と言うほかない。充填される魔力によるものか、帯電し張り詰める空気、そして次の瞬間、引き金が引かれた。
『吹き飛べ!! 超超巨大ビィーム!!!!』
迸る閃光が一帯を白く染め上げて、ギガンティックは立ちはだかる敵を薙ぎ払う。また平らになった地へと足を――。
「幼女総統、だったかしら? どの道少し調子に乗り過ぎよ」
踏み出そうとしたそこに、現れるのは硬質なハサミとなった巨腕。
『我輩の砲撃を耐えただと……!?』
異形の腕と、蜘蛛のような多脚、『|体質付与《ゲノミクス》』によって巨大な怪獣の姿となったメルキア・セルデモン(2つの存在を掛け合わされた者・f40535)は、うろたえる幼女総統に向かって地を蹴った。
夜の帳のような黒髪が踊る。足先の巨大な爪が大地を抉り、アンカーのように打ち込まれる。連射される|シュリヒトゲヴェーア《地味なライフル》の次撃もまた、硬質な甲殻を備えたハサミで受け止めて、吹き飛ばされることなく持ち堪えた彼女は、振り上げたそれを力ずくで叩きつけた。
『この! 痛いではないか!!』
ぶん回されるハサミを負けじと受け止め、総統が吠える。メルキアの変身は総統にとっても脅威ではあったが、その出力が長持ちするものではないことを、彼女は本能的に察していた。
しかし、地に杭を打ったようなその身体はそう簡単には倒せず、その間にメルキアの伸ばした腕を、足場代わりにして仲間達が駆ける。
「私の速さに付いてこられますか?」
メルキアの身体から敵へと乗り移った黒玉が、攻撃箇所を目指して加速する。しかしながら、体格差を活かそうとする者を捌くのは、幼女総統にとってはお手の物。
『貴様のような手合い、すぐに叩き潰してくれよう!』
「――ふうん、それならこういうのは?」
黒玉に続いて乗り移った川村・育代(模範的児童・f28016)の身体が、条件を満たしたユーベルコードの効果によって『拡大』していく。
『なんと……!』
「これで同じ高さね」
文字通り目線の高さを合わせて、育代が言う。
「その様子だと初めてでしょ? 同じ大きさの相手と戦うのは」
『……ふん! これだけ的がでかければ、外す方が難しいわ!!』
あなたがそれを言うの? そう首を傾げかけた育代に、総統のライフルが向けられる。だがそれが発射される前に、彼女は素早く体勢を低くした。タックル……と見せかけて横っ飛び、釣られた総統の光線が虚空を裂く間に、本命のタックルを仕掛ける。
地を這うようなそれで相手の脚を取ってテイクダウン、組倒されるなど初めてであろう相手にマウントを取った。
「容赦しないからね?」
『ええい、我輩がこの程度で屈すると思うなー!』
どたんばたんと少女同士の殴り合いが始まるが、今回は少々規模が大きい。叩きつけられた背中が岩山を整地し、ばたつかせた足が荒れ野を耕す。近付くだけで吹き飛ばされそうな嵐の中心、敵の身体の上に、黒玉はどうにかしがみついていた。
「何か、予定とは違ってしまいましたが……!」
山のような総統の身体の上を、敵の動きを見切って走る。小型の敵に対して無類の強さを誇るギガンティックならば、黒玉の高速移動にも対応してきただろうが、今は幸い『巨大な敵』の相手で手一杯だ。巻き添えで潰されないようにだけ気を付け、さらなる加速を遂げた黒玉は、ようやくマウントを脱したらしい敵の肩から、思い切り跳躍した。
『ふははは! 今度は我輩の番――』
「人体である以上は、弱い部分は変わらないはず……!」
蹴撃一閃、黒玉狼の一撃が総統の顎を見事に撃ち抜いた。
脳を揺さぶられ、フラついた幼女総統に、サイズを活かしたメルキアと育代の重い打撃が決まり、その巨体を再度地へと叩きつけた。
『おのれ!! 斯様な結末認めんぞ!!!』
「……これはこれで、ちょっとやり過ぎだったかしら?」
泣き言じみた声が響く。猟兵達に痛い目を見せられた彼女は、エンドテイカーの力を解放した。
大成功
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エルシェ・ノン
こんなトコで『エンドテイカー』って耳にするとは思ってなかったよ
相変わらず厄介な力だなあ
でも、だからこそ、じっとしてらんないんだけどさ
星霊ノソリン召喚
時速500kmオーバーで戦場を突っ走る
ギガンティックもライフルも大きいから挙措を観察しやすいのが助かる
ビームが飛ぶのは直線上なら、射線を見切って躱す
覚悟の人馬一体ド直球だ
泥臭い意地と根性で足元に辿り着けたら、ギガンティックが砲撃を放つ時に重心を置いてる足か、蹴りの軸にする足の側に地面に地属性の魔法を叩き込む
出来れば隆起させたい、割るでもいい
巨体ゆえ些細なバランス崩れも大きく影響するだろ
そこに生じた隙が仲間の助けになればいい
いや、そうあってくれと祈る
ヴァンダ・エイプリル
やっぱり国のトップって|大物《ビッグ》なんだね!
冗談ぐらいは言ってみるけど、ヤバさはひしひし感じてる
UC発動
バカスカ撃ってる間に隠れて接近!
その音と光がヴァンちゃんの隠れ蓑になる!
味方がいるならその人に相手を任せて、足元にドッキリを仕掛けるよ!
準備が完了したら隠れるのをやめて
大声で呼びかける
へいへいギガンさん!敵はここにもいるんだけど!
その地味なライフル頼りじゃヴァンちゃんは倒せませんよ?
キックを誘発して地面を蹴らせたらドッキリ発動!
めちゃくちゃでかい落とし穴!
いやー掘った甲斐があった…ほぼ魔法の力だけど
これなら攻撃し放題だね!
昔話で読まなかった?
巨人を倒すのはいつもずる賢い小人なんだよ!
●巨人の足元
『続け|機械兵士《ゾルダート》の諸君! 今度こそこの地を打通するのだ!!』
山のような巨体から発される声は、音量も相まってよく響くものだった。鼓膜どころか大地まで震わせる声音は、普通に聞く限りは部下の意気を高揚させる文句である。しかし幼女総統「ギガンティック」の言葉に含まれるそれを、エルシェ・ノン(青嵐の星霊術士・f38907)は敏感に嗅ぎ取った。
「今度こそ、か」
意味するところは明白で、エンドブレイカーとしては結論まですぐに至れるだろう。|やりなおした《エンドテイカーを使った》のだ。
相変わらず厄介な力だ、とエルシェが嘆息する。失敗を、敗北を、都合の悪い結末を否定するその力が、彼の世界に及ぼした影響は計り知れない。
「だからこそ、じっとしてらんないんだけどさ」
あの魔女未満がそうなるかは定かでないが――とにかくこちらに向けて構えられるライフルの銃口から身を躱すべく、エルシェは星霊ノソリンを召喚、駆け出すそれへと飛び乗った。あの巨体とそれに見合ったライフルだ、遠く離れていても敵の動きはよくわかる。銃口から予想される射線、そこから逃れるべく、ノソリンが疾走する。
『喰らえ!! 超超巨大ビィーム!!!!』
次の瞬間、幼女総統の|シュリヒトゲヴェーア《地味なライフル》が火を噴いた。強烈な光が視界を染めて、先程までエルシェのいた場所を、膨大な熱量を誇る魔力の光条が通り過ぎる。人馬一体の構えで駆け抜けたエルシェの後ろで、光線の命中した地面が抉れ、岩と共に巻き上げられて宙を舞い――。
「やっぱり国のトップって|大物《ビッグ》なんだね!」
危ういところで巻き込まれかけたヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)が、破壊規模の大きさに自棄のような笑みを浮かべた。真正面から高速で駆け抜け、敵の狙いを引き付けたエルシェに対し、彼女は魔力を活かして身を隠す構えだ。
油断すると範囲攻撃でまとめて吹っ飛ばされかねないが、狙いの『大作戦』を完遂するまでは、彼女は敵に認識されない。秘かに近づきドッキリの準備をしている間にも、エルシェを狙った光の奔流が戦場の風を灼いていく。
『ええい、ちょこまかと回避行動ばかり……!』
飛び退き、潜り、時に立ち止まり、それらをやり過ごしてはいるものの、飛び散る瓦礫やら土煙やらまでは躱し切れず、エルシェにも疲労と傷が蓄積している。が。
「狙いが分かりやすくて助かるよ」
それを匂わせないように返してみせる。
『生意気な!! 貴様ごとき我輩が本気を出せば一瞬で――』
「わっ、身体の割に器が小さい」
ライフルから近接戦闘に移ろうとした頃合いに、総統の足元で声がする。
『聞こえたぞ! 誰だ我輩の悪口を言っておるのは!!?』
「ここ! ここだよギガンさん!!」
へいへーい、とユーベルコードの効果も相まって名乗りを上げたヴァンダに、ギガンティックの矛先が向いた。
「大丈夫かな? その地味なライフル頼りじゃヴァンちゃんは倒せませんよ?」
『言われずとも、踏み潰してくれる!』
ここで必殺の幼女キック。足元の小さな敵に向けたそれは、自然と踏み付けるような軌道となる。読みやすいそれならば、ぎりぎりで躱せる――。
そしてギガンティックの踏み込んだそこには、ヴァンダの罠が仕込まれていた。
『おお!?』
蹴り付けられたはずの地面が抜けて、魔法で掘った落とし穴が口を開ける。勢い余った蹴り足が宙を泳いで、ギガンティックは穴の縁でぎりぎりのせめぎ合いを始めた。
転ぶか転ばないか、その瀬戸際で。
「足元、気を付けてね」
エルシェが最後に背を押した。
地属性の魔法が地面を伝い、残った軸足の足元を崩した。ずるっと足を滑らせて、ギガンティックの身体が宙を舞う。
「あっ」
『アァーーーーーッ!!!』
綺麗に空中で引っくり返った彼女は、掘られた窪みに頭から落ちていった。
「昔話で読まなかった? 巨人を倒すのはいつもずる賢い小人なんだよ」
とは言ってみたものの、ここまではさすがに予想していなかった。地響き立ててもがいているそれを見下ろして。
「いやーここまで綺麗に嵌ってくれると、掘った甲斐があったよ」
しみじみと呟いた。
『認めん! 認めんぞ!! 斯様な無様な負け方など!!!!』
エンドテイカーの魔女特有の能力が発動する。やり直しという特権を持つ彼女は、次を試みるだろう。だが、ここで猟兵達の勝利によって刻まれた『敗北』は、彼女の中に消えずに残る。
一時撤退した総統は、その先に何を選ぶのだろうか。
大成功
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