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獣人世界大戦⑪〜恐怖、野生パンジャンの罠

作者：NS

●ぱんころー（幻聴）
「獣人世界大戦は第二戦線へ突入したわ。現時点で進軍状況は順調のようね。引き続き、頑張っていきましょう」
　アヤカ・ホワイトケープ（ロストイノセント・f00740）が第一戦線を戦い抜いた猟兵達を労いつつ、第二戦線における任務のブリーフィングを始める。
「今回はウラル山脈の山岳地帯に向かってもらうわ。そこには複数の『ワルシャワ条約機構の隠し財宝』が存在している事が予知で明らかになったの」
　ウラル山脈は金や鉄、石炭、宝石などなど多くの鉱物資源の産出地としても知られている事から、ワルシャワ条約機構がこれら資源や財宝を占有しているそうだ。
　山脈を制圧し、これら財宝や鉱脈をワルシャワ条約機構から奪い取る事が出来れば、条約機構軍の財力を大きく削り取れる、と言う訳である。
「ここからが本題よ。予知でワルシャワ条約機構軍の隠し財宝庫の一つの正確な所在を特定出来たわ。わたしがみんなをそこへ送るから、財宝庫に乗り込んでお宝を根こそぎ強奪してきてもらいたいの」
　宝を奪い取ると聞いて少し尻込みしてしまう者もいるかもしれないが、相手は悪しき超大国……強奪に躊躇いや遠慮は一切不要だ。
　ワルシャワ条約機構軍が獣人世界大戦の戦費として、財宝庫に眠る金銀財宝・鉱物を回収しに来る前に奪い取る。
　それが今回の任務だ。

「ただ、向こうもそう易々とお宝を奪わせないと罠を張っているわ。それが……野生のパンジャンドラムよ」
　野生の……なんだって？
　何か今、珍妙な兵器の名前が出たような？
「パンジャンドラム、名前を聞いた事もある人はいるんじゃないかしら？」
　パンジャンドラムとはロケット推進の力で敵陣に突っ込ませて自爆させる、自走式車輪型爆雷の事ではあるが、アレは色々な意味で有名な欠陥兵器と聞いている。
　……それが野生化？
　ちょっと何言ってるか分からないんですが。
　どうやら、ワルシャワ条約機構が数多のパンジャンドラムをなんやかんやあって野生化させ……うん、やっぱり意味が分からない。
「宝物庫への道は、必ず野生化パンジャンドラムのいるエリアを通る事になるから、避ける事は出来ないわ。なんとかして突破するしかないわね」
　しかも当のエリアは『天井の低い広々とした地下の屋内空間』である事から、キャバリアを利用して力任せで前進したり、空を飛んでやり過ごす事も出来ないそうだ。
　これはなかなか面倒な事になりそうな予感である。
「野生化パンジャンドラムのエリアを突っ切れば、財宝庫は間近よ。何とかして宝物庫まで辿り着いて、財宝を奪い取ってきてね。……ああ、そうそう」
　説明を終えたアヤカがゲートを開いた際、思い出したように言葉を付け足す。
「確保した財宝の使い道はみんなの自由だから、そこは好きにするといいわよ」
　えっ、奪った財宝は好きにしていいんです！？
　……よし、早速出撃だ！！

第1章 冒険 『野生のパンジャンドラム！！』

POW   :    火力で破壊する！ SPD   :    速力で突破する！ WIZ   :    ……手懐ける？ 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●戦慄！ウラル山脈山岳地帯に野生のパンジャンドラムを見た！！
　猟兵達はグリモアベースからウラル山脈の山岳地帯へとやってきた。
　一行は巧妙にカモフラージュされた入口を発見すると、早速ワルシャワ条約機構軍の隠し財宝庫へと向かう。
　ここが山岳地帯と言う事もあってか、山の中をくり抜いて作られたと思しき通路をひたすらに進んでいくと、突き当りに鉄の扉が見えてくる。
　慎重に扉を開けて中を確認すると、奥には天井の低い広大な空間が広がっていた。
　そして、その中には無数のパンジャンドラムがまるで自らの意思を持っているかのようにゴロゴロと転がって動き回っているではないか。
　これが話に聞いた野生のパンジャンドラム……いや、なんだこの光景。
　一体ワルシャワ条約機構軍はどうやってこんなトンチキな物を生み出したのだろうか。
　……考えたら頭がおかしくなりそうな気がしますね！

　まあ、それはともかくとして。
　野生のパンジャンドラム……ここからは野良パンジャンと呼ぶ事にするが、奴らはこちらに対して襲い掛かってくる様子は見られないようだ。
　おそらく野良パンジャン部屋に入らない限りは何もしてこないと見ていいだろう。
　しかし財宝庫に向かうためには、この広大な部屋を抜けなければならないのはブリーフィングで聞いた通りだ。
　言うまでもないが、野良パンジャンは自爆した時の威力も相当な物らしく、数も相当に多い事から、爆発に連続して巻き込まれてしまえばタダでは済まないだろう。
　果たして猟兵達はいかにして、この野良パンジャン部屋を突破するのであろうか？

　この先に眠る財宝を手にするためにも、いざ……前進ッ！！


●野生のパンジャン乱獲はワルシャワ条約違反（になりません）
「どうやら、超大国にも相当トンチキな発想をされる方がいる様で」
　ダダっ広い屋内を所狭しと転がり回る野良パンジャンの群れを見て、夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）はぼそりと呟く。
　ホントこんな頭のネジが何本もブッ飛んだ事を考えた奴は誰なんですかね。
「ですが、一斉に自爆でもされてしまうと大変な事になりますねぇ……」
　そう、この空間にいるのは野良パンジャン。
　生きた自走式車輪型爆雷であるため、その爆発力は実際驚異である。
　なんたって一つだけでもヤバいのに、数が多いともなると……そのヤバさは何十倍にもハネ上がってしまうのだ。
「とにかくまずは数と配置を確認しませんと」
　ここは慎重に行くべきだと、るこるは祭器『FLS』から『FPS』『FTS』を召喚。
　まず『FPS』で野良パンジャン達の配置情報をチェックする。
　奴らは自由にあちこち動き回っている事から行動が読みにくく、普通に隙間を縫って進むのは困難なようだ。
「うーん、これは真っ向から行くのは危険ですねぇ。でしたら……」
　正攻法は無理だと判断したるこるは『｜豊乳女神の加護・燦華《チチガミサマノカゴ・キラメキノハナ》』を発動し、自身の骨に刻まれた神印・祭礼の女神紋により祭器ごと全身を光に変換。
　そのまま野良パンジャン部屋へ足を踏み入れる。
　その直後、るこるの侵入に気付いた野良パンジャン達が一斉に反応すると、ロケットを噴射しつつ突進してきたではないか！
　アブナイ！

　……だが、野良パンジャン達の体当たりはるこるの体を虚しくすり抜けた。
　これには一体何事かと、連中は困惑するような動きを見せる。
　傍目にはゴロゴロ転がってるだけにしか見えないけどね！
「それでは、通してもらいますよぉ」
　るこるは全身を光に変換した事で相手から触れられる心配が一切なくなり、隙間を抜けるように光速移動する事で、あっと言う間に野良パンジャン部屋の向こう側にある出口へと辿り着いてしまった。
　うーん、この野良パンジャン殺しよ（殺してないけど）。
「さてさて、財宝庫は……ここがそうでしょうかぁ？」
　そうして難なく野良パンジャン部屋を突破したるこるが財宝庫と書かれた扉を開けると、その中には金銀財宝、鋼鉄の延べ棒らしき物などが大量に転がっていた。
　ここにある物を全て回収・換金すれば、凄まじい金額になるのは間違いあるまい。
「これは凄いですぅ……それでは、徴収の時間と行きましょう」
　財宝の山に思わず目を奪われてしまいそうになりつつ、るこるは祭器『FTS』で財宝を一挙に回収、数分もしない内に財宝庫がもぬけの殻となってしまった。
　これで後は元来た道を帰ればいいだけだが……
「せっかくなので、お土産も持って帰りましょう」
　そう言い、るこるは財宝庫側の扉から野良パンジャン部屋に向けてFTSの回収光線を野良パンジャン達に放つ。
　光線を浴び、そのまま亜空間倉庫へ吸い込まれる野良パンジャンの群れ。
　……え、一体何してんすか？　なんでこいつらも回収を？
「うーん、後日敵方にぶつける……とか？」
　なんちゅう使い方しようとしてるんですかあなたーッ！？

大成功 🔵​🔵​🔵​

●マッシブシャークvsパンジャンドラム
「ああ、野生化したパンジャンドラムですか。最近問題になってるやつですね」
　そもそも問題にすらなってないし、根本的に存在すらしてませんよエミリィ・ジゼル（かじできないさん・f01678）さん！？
　あの野良パンジャンを生み出した……いや、生み出したって言えばいいのかどうかは知らんけど、ともかくアレを作ったのはワルシャワ条約機構軍の仕業であって、この世界に野生化したパンジャンドラムなんてありませんよ！
「外来種によって固有種が追いやられる。ゆゆしき問題と言えるでしょう」
　話がどんどん変な方向に！？
　そもそもエミリィさんはワルシャワ条約機構の財宝を奪いに来たのであって、野良パンジャン問題について語りに来た訳じゃないですよね？
「そんな侵略的外来種にどう立ち向かうべきか。方法はいくつかありますが、外来種には外来種を当てて対処するという手もあります。そう、つまりサメです」
　なんで！　そうなるの！！
　……え、何？　これからサメとパンジャンドラムの異種格闘戦が始まるん？
　近年のサメ映画でも、そんなトンチキでB級めいた内容の物なんて……ないよね？
　単に自分の周りで観測されていないだけで、知らない内にどこかの監督が作った・作ってる可能性もありそうな悪寒がしそうなんですがそれは。

「さて、財宝を手にするためにはあの外来種を何とかしないといけませんね」
　あ、良かった。目的は忘れてなかった！
　でも、さっき言ってた事を実行するとなると……あっ、エミリィが野良パンジャン部屋に足を踏み入れた！
　それに反応して野良パンジャンが一斉に突撃してきてヤバいぞー！（状況説明文）
「パンジャンドラムよりもサメの方が強いことを思い知らせてくれる！　はい、どーん！」
　謎の対抗心を燃やしつつ、エミリィは『｜暴走鮫鱗弾《シャークボム》』を野良パンジャンに向けて発射！
　そのまま放たれたサメと野良パンジャンが……激突！
　BOOOM! BOOOM!! BOOOOM!!!
　派手に鳴り響く爆発音と硝煙！
　これだけ連続して大きな爆発を受けてしまえば、いくらサメとて無残な姿に……
　否、なってない！　体が煤けてるが、割と無事だ！！
「極めて屈強なサメの群れであれば、パンジャンドラムの爆発ごときに屈しはしません。鮫魔術は無敵です」
　すげーな鮫魔術！
　野良パンジャンへ突撃させられるサメ達からすれば、ブラックなんてレベルじゃない酷使っぷりだが、そんな事はどうでもいい。
　飛行する極めて屈強なサメの群れは、尚も突撃してくる野良パンジャンの特攻を受け止める肉の壁となって前進。
　少しずつエミリィの進む道を切り開いていく。
　突撃しても倒れる事なく突き進むサメの群れを前に、野良パンジャンも『一体こいつらはなんなんだ！？』と言った様子で狼狽しているようにも見える（気がする）。
「はい、到着です。サメ……やはりサメは全てを解決する……！」
　……そうしてサメの群れの酷使もあって、野良パンジャンが粗方片付き進軍ルートの安全を確保したエミリィは難なく財宝庫へ到達。
　容赦なくワルシャワ条約機構軍の貯め込んだ財宝を搔き集めて奪い取ると、足早にここから立ち去るのであった。
　なお、これだけ酷使されてもサメの群れはノーギャラである。
　ヤンナルネ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ところでどうやって飼うんですかね？
「あ、あいつがパンジャンドラム！？」
　車輪状の形をした自走型爆雷の姿を目にして、鳳凰院・ひりょ（天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864）の背後で『ズガーン！』とショックのSEが鳴ったような気がしないでもないが、とにかくそんな感じで驚いている。
　まあ、初めて見るサムシングなんだからしょうがないが。
（名前がパンダに似てたから、荒ぶる動物か何かかとも思ってたんだけど……）
　……って、そっち！？
　なんつーか、天然すぎやしないかね君ィ！！
「動物が相手なら、ビーストテイマーの俺の出番かと思ってたんだが……流石に、あれ動物、じゃないよ……な？」
　うん、どう見ても動物じゃあねえわな！
　元々は兵器ですし、ついでに自爆する奴ですし！！
　ホント、ワルシャワ条約機構は何を思ってこんな（略）
「野生らしいけど、ダメもとで手懐けてみるか」
　えっ、ひりょさん？　あなた、いきなり何を？
　聞き間違いでなければ、今確かに『手懐けてみるか』って口にしましたよね？
　視界の先でフリーダムにゴロゴロ転がり回ってるアレを……？
「うーん……見たところ自由に転がっているんだよな。名前がパンダに似てるとは思ったけど、習性も案外似てたりするんだろうか……？」
　ひりょはうんうん唸りつつ、野良パンジャンの群れを真剣な顔で観察している。
　本気か、本気なのか。

「よし、初めて見るタイプだから上手く行くか分からないけど、やってみるか」
　色々考えた末、ひりょは自身に護符を貼り付けると『｜精霊の祝福《セイレイカラノゴホウビ》』をかけ、野良パンジャンの群れを刺激しないよう部屋の前でゴロゴロ転がりまくってみる。
　どうやら野良パンジャンの真似をしようと言う魂胆のようだが……何と言うか、それでいいのだろうか。
「さあ、俺を見ろ。俺の方が凄いんだぞ！」
　などと回転をアピールしつつ、連続でんぐり返しで転がるひりょ。
　一体どんな光景だ。
　……一応フォローすると、彼がこの奇行もとい行動に走っているのには訳があり、精霊の祝福をかけた後『１つの物事（この場合は転がり回る事）に集中する行動の継続時間に比例し、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する』事から『勝負勘が活きれば、パンジャンの好感度がうなぎ上りになるはずだ！』と言う謎理論の下で転がっているそうな。
　いやどんな理論よ！？
「く、目が回りそうになる……けど、パンジャンと仲良くなるためなら！」
　いやいや、さすがにその行動で野良パンジャンを手懐けるのは無理が……
「……お？　パンジャンがこっちに来たぞ」
　え？　マジ？
　まだ野良パンジャン部屋に入ってないのに？
「もしかして入ってもいいのか？　……よし、成功だ！　襲い掛かってこないぞ！！」
　嘘ォーッ！？　ホントに手懐けちまったよこの人！！
　一体どんな原理で仲良くなったんだ……？
「財宝を回収するんだけど、運ぶのを手伝ってくれないか？」
　そう呼びかけると、野良パンジャンはひりょの後を付いていく。
　向こうが襲い掛かってこなければ財宝庫への到達は楽勝だ。
　その後は財宝を確保すると、その一部を野良パンジャンに積み、来た道を戻っていく。
　その最中で隙間から財宝が転がり落ちて慌てる（？）野良パンジャンだったが……
「大丈夫、慌てなくてもいいからな？」
　と、優しくフォローするひりょ。
　……なんなんだこの光景。
　あ、ところでこの財宝はどうするおつもりで？
「復興支援に役立ててもらおう。これだけあればかなり役立ってくれるさ」
　マジメー！

大成功 🔵​🔵​🔵​

●涼鈴ちゃん可愛いって言って（リョウリンチャンカワイイヤッター！）
「パンジャンパンジャンパンジャンパンジャン……バグパイプの音色が聞こえてきそうだ！」
　野良パンジャンの群れを前に、初手からテンションがおかしい事になっている劉・涼鈴（鉄拳公主・f08865）。
　てか、あなたそーゆーキャラじゃなかったですよね！？
　これもパンジャンの魔力にやられてしまったせいのだろうか。知らんけど。
「このイカレっぷり、最高にマーマイトが決まってるぜ！！！」
　イカレっぷりと言うか、このフラグメント考えたのあなたですよね！（メタい）
　ああ、涼鈴の背後にうっすらといいスマイルしたネビルさんの幻が見える……
「よーし、燃えてきた！」
　一体何に！？
　元々パンジャンが危険な兵器であって、それを一人で大勢相手にするとかそんなシチュに一人闘志を燃やしてるアレなんです？（無理矢理ポジティブなイメージに持っていく）
「ふぅぅぅ――！！　いっくぞー！！　ぱんころー」
　劉家拳の構えを取りつつ、『｜劉家神髄・西王母呼吸法《リュウケシンズイ・セイオウボコキュウホウ》』を発動すると涼鈴は野良パンジャン部屋に向けて駆け出した。
　その前に本来の目的を忘れていないか割と不安だ！

「おっ、来た来た！　早いね！」
　野良パンジャン部屋に踏み込んですぐ、涼鈴目掛けて高速型パンジャンドラムが突っ込んでくる。
　高速型は軽量化かつロケットモーターの数を増やす事で、全体的な機動性を向上させたタイプのパンジャンドラム……なんか真面目に設定解説する時点で頭が痛くなってきたぞ。
「見える、私にもパンジャンの動きが見えるよ！」
　西王母呼吸法で涼鈴の野生の勘と心眼が冴え渡り、僅かに体を傾けて高速型の突進を難なく回避。
　次の瞬間に高速型が自爆するも、爆風に乗って加速する。
　例えるならアレだ、ロケランジャンプみたいなノリだ！
「さあ次！　あれは……装甲が付いてて頑丈そうな防御型パンジャンドラム！」
　加速しつつ前進する涼鈴が、視界の先にある次の邪魔者を目にする。
　防御型は彼女が口にしたように、装甲を多めに付ける事で突撃の際に相手側からの迎撃行動を防ぎつつ、ターゲットへ確実な衝突を可能とする事を目的としたタイプである。
　その分、機動力は通常型と比べて落ちてしまうが、自爆時にはフラググレネードのように装甲そのものを周囲に炸裂させる事で、周囲へ二次被害を発生させる事も……って、なんでこんな解説を真面目にやってるんだ？
「あらよっと！　そっちへどうぞ！」
　それはさておき、涼鈴は防御型パンジャンの突撃を功夫の技で受け流して爆発させる事なく方向を変え、攻撃型パンジャンドラムの方へ向かわせて相殺！
　タツジン！！
　そのまま防御型に激突された攻撃型は、車体に積まれた多量の炸薬が誘爆する事で大爆発を起こした。
　やってる事が滅茶苦茶だが、劉家拳の前には野良パンジャンなど子供のおもちゃも同然……なのかもしれない。
「……見えた、財宝庫への扉！　ちぇすとぉー！」
　やがて野良パンジャン部屋の突き当り……財宝庫へ通じる扉が見えてくると、涼鈴はやってきたパンジャンを蹴飛ばして扉にぶつけて破壊。
　勢いのままに中へと入り込む。
「わあ、こんなにいっぱい……よーし、今のうちにお宝をゲットだー！！」
　そして大量のお宝を前に涼鈴は（目的を忘れていなかったか）箱に詰められていた財宝をドル箱めいていくつも積むと、そのまま軽々と持ち上げて奪取し来た道を戻る。
　これでは前が見えないのではと思われる事だろうが、そこは鍛え抜かれた功夫の技で何とかなるらしい。
　なんつーか、便利ね功夫！

大成功 🔵​🔵​🔵​

●猫魔力万能説
「むむむ、とっても危険地帯なのです。でも財宝を手にする為にはこの地帯を突破しないといけないのです」
　視界に写る野良パンジャンの群れを前に、オヴィリア・リンフォース（銀色の魔女猫・f25140）は油断ならぬと言った表情のまま、その場に立ち尽くして様子を見ていた。
　小柄なにゃんこであるオヴィリアがパンジャンの自爆に巻き込まれてしまえば、それこそ無事で済まないのは間違いないだろう。
　例えるなら、全身がアフロめいてもっこもこになったりとか！
　……それはそれで絵的に面白い事になるなぁ。
「いくらなんでも笑えない冗談なのです」
　アッハイ。
　まあ冗談はともかく、ここで考えられるのは自身の小柄さと機動力を生かし、速度による突破を試みる……これが考えうる限り、もっとも有効な手であろう。
　ただ、問題は野良パンジャンの数だ。
　あの中を潜り抜けて進むのは困難と言う他あるまい。
　どうするオヴィリア！？
「手段はあるのです。猫魔力で行くのです」
　そ、そうきたかァーッ……！
　猫魔力を全身に纏い、高速で飛び回って触れた物を破壊或いは使用不能にする『｜銀猫突撃《ブースターキャット》』。
　オヴィリアはそれを必勝の策として、野良パンジャン部屋突破に挑むようだ。
「ワンパターンだけれど、これが一番有効な手段なのです」
　あ、そこはちょっとだけ気にする部分なんですね。

「一気に駆け抜けるのです」
　銀猫突撃を発動したオヴィリアは猫魔力を纏い、野良パンジャン部屋へ突入する。
　……それにしても猫魔力って一体なんなんですかね？
「猫魔力って何なのというツッコミはなしなのです」
　そんなー。
　と、そうこうしている内にも野良パンジャンが侵入者であるオヴィリアに反応。
　群れを成して突撃してくる。
「自爆させられると大変なことになるから自爆装置を停止させるのです」
　オヴィリアは突っ込んできた野良パンジャンを踏み台にするかのように両足で車体に触れて飛び越えると、別の野良パンジャンに着地。
　また飛び越えるなどして、次々と車体に触れて飛び移っていく。
　一方、野良パンジャン達は触れられた瞬間に自爆装置を即起動しようとするが、銀猫突撃により装置は既に停止している事から不発に終わる。
　爆発しない野良パンジャンなど、ただの動く野生化車輪……書いててよく分からない存在だな、これ！
「何とか突破なのです。……財宝庫はここです？」
　そうして野良パンジャンの群れを抜け、目的の場所へやってきたオヴィリアが扉の一つを開けると、そこには金銀財宝の山があった。
　宝物取り放題だよ、やったね！
「財宝は好きにしていいのは魅力的だけど持って帰るのも大変そうだし、宝石とか小さくて貴重そうな物だけ持って帰るです」
　だが体の小ささ故、キャパ的な都合もあって沢山持ち帰れそうにないと割り切ったオヴィリアは、財宝の中でも特に希少価値の高そうな宝石などを発見すると、アニマルアーマーのポケットに無理のない範囲で詰め込んでいく。
「おや、これは缶詰……非常食なのです？　じゅるり……」
　他にも色々探し物をしている中で、缶詰らしき物を見つけたオヴィリアは『栄養補給なのです』と称してその場で平らげてしまい、更には……
「これは……隠し武器庫、なのです？」
　偶然にもワルシャワ条約機構軍が用意したであろう銃火器の数々が、厳重に箱詰めされて置かれていたのを発見する。
　おそらく有事に備えての備蓄なのだろうが、こんな物を見てしまったからにはやる事など一つだ。
「使われない内に破壊しておくのです。ふしゃー！」
　そのまま容赦なく次々と備蓄武器を使用不能に追い込むオヴィリア。
　この惨状を目にしたワルシャワ条約機構軍の慌てふためく顔が目に浮かびそうですね！

大成功 🔵​🔵​🔵​

●フラグは立てるもの
「野良パンジャンドラム……GGOでも流石に見なかったなあ……今後も多分実装されないよね？」
　印旛院・ラビニア（エタらない人（仮）・f42058）は『またとんでもない物を見てしまった』と言いたげな表情で、部屋の中を転がり回る野良パンジャンを眺めていた。
　あんなトンチキな物はGGOにも存在しなかったようだが、あっちは大分何でもアリな世界なのでラビニアさんが知らないところで案外実装されているかもしれませんね？
「さすがにそれはあっちでも見たくはない、かな……」
　それはそう。
　自ら意思を持って高速で追いかけてくる自走式車輪型爆雷なんて、ある意味悪夢だ。
　下手したら夢に出てきそうな？
「確か、見つかったら一斉に突撃してくるって話だったっけ。そうなると……」
　いかにこの野良パンジャン部屋を攻略するか、廃ゲーマーらしくラビニアは考える。
　部屋に侵入した時点で発見されるのは時間の問題。
　ならば、姿を見られさえしなければ？
　……いや、そもそもにして野良パンジャンに目なんてないだろって言われたらそうなんですが。
「うん、この手でやってみよう。万一に備えてコインくんをここに置いてと……」
　野良パンジャン部屋の入口に、ラビニアがコインくんと呼ぶクリーピングコインの一部を隠すように設置すると、壁際に身を擦り付けつつ慎重に、遠回りするように移動を始める。
　本来ならこの時点で見つかってしまうのではないかと思われる事だろうが……

「……おお、バレてない。よしよし、このまま壁沿いに進むとしようかな」
　意外にも野良パンジャンの群れに発見されず、進みこそ遅いが部屋の奥へ向けて少しずつ前進するラビニア。
　忍び足と地形の利用を特訓してきた成果がここで出るとは思わなかっただろう。
「だだっ広い空間だと思ったけど、進んでみると少しは入り組んでるんだね」
　常に周囲の地形を確認しつつ、忍び足で壁から壁へ。
　安全な場所に身を隠し、息を潜め、また進む。
　さながら、今の状況はどこぞの潜入ゲームめいた感じである。
　まあ、隠れるための段ボールとかはさすがにないけど。
「最近潜入の特訓をした成果がここで活かせるとは。このまま進めば余裕かな」
　……ラビニアさん、それフラグでは？
　そのセリフと共に油断したとこへ危険が迫るとか、あるあるですよ？
「おっ？」
　ふと、足元に何かコツンとぶつかった感覚に視線を下に向けると、そこには手乗りサイズの野良パンジャンが。
　野生ってこんなのもいるのか……？
「小さいとは可愛げもあるけど……流石にパンジャンの飼い方はわからないなぁ」
　思わずしゃがんで手乗り野良パンジャンに視線を向けるラビニア。
　その様子はどこかほっこりして……ん？
　……手乗りと視線合わせたって事は、見つかってない？
「あれ？　何か音が近付いて……」
　何か嫌な予感を感じたラビニアが音の方へ振り返ると、野良パンジャンが突っ込んでくる様子が！
　ほらァー、変にフラグ立てるからー！！
「うわあああ！」
　慌ててラビニアが猛ダッシュで野良パンジャン部屋を駆け抜ける！
　カジバチカラ！！　……むしろ最初からこれで良かったのでは？（禁句）
「はぁ、はぁ……し、死ぬかと思ったぁ……」
　そしてどうにかギリギリのところで突破し、財宝庫に辿り着いたラビニアは生きた心地がしなかったとばかりに息を切らす。
　とは言え、ここの財宝を回収すれば後は戻るだけだ。
「……よし、ここにある財宝はこれで全部かな。あとは……」
　一通り財宝を奪取したラビニアは『｜盾の戦乙女・ランドガルダ《ガーディアン・ヴァルキリー・ランドガルダ》』を発動しテレポートする。
　飛んだ先は野良パンジャン部屋の入口、出発前に設置したクリーピングコインのポイント……万一の備えがここで生きた形だ。
「ふぅー、念のためにと置いといて良かったぁ……」
　無事に任務を達成出来たとホッとしつつ、設置したクリーピングコインも回収するとラビニアはこの場を後にするのであった。

　……猟兵達がこの場を立ち去って少しした後、入れ替わりでワルシャワ条約機構軍の回収部隊がやってくるも、連中が目にしたのは派手に荒らされた野良パンジャン部屋と、もぬけの殻になった財宝庫だけであったと言う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月15日