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獣人世界大戦⑪〜猟兵、洞窟探検家になる!

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第二戦線 #ワルシャワ条約機構

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「もきゅ! もきゅぴぴぴ、もきゅー!」
 グリモアベースに、元気なモーラットの声が響く。
 高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)は、集まってくれた猟兵達を歓迎するようにぴょんぴょん跳ねると、モラリンガルのスイッチを入れた。
「第一戦線、お疲れ様なのです。第二戦線も始まって大変だけど、がんばるのです!」
 モラリンガルから人間語に翻訳された音声が流れる。猟兵は全ての世界で言葉が通じるので別にモーラット語でも不便はないのだが、その辺は気分の問題らしい。
 
「さっそくなのですが、皆さんにお願いがあるのです」
 そう言うと、カントは大きな紙を出してくるくると広げていく。
 広げた紙を覗き込むと、それは広大なロシアを南北に横切る山岳地帯の地図だった。
 モーラットの細長い手がぴっと地図の一点を示す。
「カントは見ちゃったのです。ここにワルシャワ条約機構のお宝が隠してあるのです!」
 カントが予知したのは、ウラル山脈にある大きめの洞窟の1つ。どうやら現在はこの辺りの鉱山で採れた貴金属や宝石を保管する財宝庫として使われているらしい。
「これをカント達で貰っちゃえば、敵にダメージを与えて戦況を有利にするだけじゃなくて、獣人さん達の戦後復興にも役に立つはずなのです!」
 一石二鳥の作戦なのですと、カントは満足そうにもっきゅっきゅと笑う。
 
「……でも、簡単にはいかないのです」
 
 隠し財宝庫にはワルシャワ条約機構の恐るべき罠が待ち構えているという。
 何でもそこは空間を歪め、遠近感を狂わせる魔法の罠が仕掛けてあるそうだ。
  
 自分の身長より低く見えるのに、数十メートルもある奈落へ繋がる段差。
 完全に下りるまで待たなければ地面に叩きつけられるリフト。
 うねりを上げて侵入者を押しつぶそうとしてくる隆起する土砂の罠。
 ダッシュで坂を下りたら勢いが付きすぎて止まらなくなって叩きつけられる壁。
 更に地下から熱々の間欠泉が吹き出てきたりと、それはそれは恐ろしい罠なのだ。
  
 そしてそこに追い打ちを掛けるように巨大コウモリが毒のフンを落としたり、生気を吸い取ろうとするゴーストも襲いかかってきたりするのだから大変だ。
  
 アマチュアであれば即死間違いない罠の数々だが、UCを使いこなす猟兵達はプロの洞窟探検家なのだ。きっとこの罠を乗り越えてくれるに違いないとカントは信じている。
「とっても大変な場所なのですが、皆さんなら絶対に大丈夫なのです! 洞窟探検、よろしくお願いするのです!」
 カントがもきゅっと一声鳴くとグリモアが起動する。
 その光が猟兵達を包み、彼ら彼女らを即死罠だらけの財宝の洞窟へと送り出すのだった。


本緒登里
●ご挨拶
 シナリオをご覧いただきありがとうございます。
 新人MSの初シナリオですが、精一杯書かせて頂きます。
 どうぞよろしくお願いします。

●シナリオ
 こちらは1章構成の戦争シナリオになります。
 OP公開直後よりプレイングを募集いたします。
 プレイングをいただければ、順次リプレイをお返しする予定です。
 完結優先のため、プレイングに問題がなくてもお返しする可能性があります。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームにはプレイングボーナスがあります。
 
 プレイングボーナス……財宝庫の仕掛けを突破し、敵より先にお宝を回収する。

 罠をどう避けるか、あるいはどう耐えるかでボーナスが入ります。
 このほかにも面白そうな提案であればボーナスが入ります。
 
 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『戦線拠点構築』

POW   :    腕力や体力を活かして働く

SPD   :    手先の器用さを活かして働く

WIZ   :    知識や知恵を活かして働く

イラスト:仁吉

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栗花落・澪
確かに、厄介な罠かもね
とりあえず落下系とか滑る系とか…まぁ足元系の罠は、僕なら浮遊しとけばなんとかなりそうだけど

念のため自身をオーラ防御で覆い
更にそのオーラ防御に破魔、破邪の力を纏わせておくことで心霊対策
音楽で鍛えた聞き耳で間欠泉の吹き出す場所やタイミングを見極める

後は、間欠泉の心配が無い時にUC彩音を発動
歌唱する事で反響により地形把握をする目的もあるけど
UC効果で実体化させた多数の文字を、蝙蝠のフンを始めとした物理罠への盾として操る
壊されたら新たに歌詞を紡げば量産できるしね

隠し財宝ってロマンあるよね
お金自体には興味無いけど…冒険物語みたいで
男としてはちょっと気になるかも
警戒は怠らないけどね



 地球上にある最古の山脈の一つであるウラル山脈――。
 主要な鉱山から少し離れたところにある洞窟。
 山肌にひっそりと隠れるように口を開いたそこには、ワルシャワ条約機構の隠し財宝庫があり、その奥には金、銀、プラチナ等の貴金属だけでなく、エメラルドやアレキサンドライトという貴重な宝石類が保管されているという。

「隠し財宝ってロマンあるよね。お金自体には興味無いけど……冒険物語みたいで、男としてはちょっと気になるかも」
 採掘した貴金属を運び込むために作られたのだろう、宝物庫に繋がる縦穴に設置されたエレベーターを使い、琥珀色のロングヘアをなびかせた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が下りていく。
 財宝眠る洞窟探索への期待に瞳を輝かせ、だが|無謀な洞窟探検者《スペランカー》のような油断はない。澪の視線は警戒を怠らず真っ直ぐ目の前の道を見据えている。
 最深部に繋がる横穴の前で止まったエレベーターから、澪が洞窟に降り立つ。
 するとその足元にいきなりボコッと穴が空いた!
 穴の下は洞窟に据え付けられた光の届かぬ暗闇。落ちたら死は免れない!
 だが、澪は焦ることなく足を踏み出す。
 ふわり、ゆらり――。
 地中奥深くだというのに、柔らかな風が吹いた。
 風の魔力を帯び、澪の靴【Venti Ala】から純白の翼が生える。
 たん、たんと軽やかなステップで宙を駆け、澪は次々に空く穴を軽々と飛び越える。
 平衡感覚と距離感を惑わす魔力も、聴覚に優れた澪の前ではさほど意味をなさない。間欠泉が噴き出す予兆である気泡の音を抜群の音感で捉え、吹き上がるタイミングを見極め回避していく。
 その柔肌に水しぶきや泥の一つも付けることなく澪は難なく洞窟を進んでいくが――。
「うーん、どっちに行けばいいのかな?」
 曲がりくねり、枝分かれした分岐の前で首を傾げる澪。天然の迷路のような洞窟は罠がなくても侵入者を阻むのには十分すぎるほどだった。
 澪はすぅと息を吸う。
 世界に溢れる音を、声を、実体ある言葉にして、暗い洞窟に鮮やかな色を持つ澪の歌が響く。
「ん、こっちだね」
 反響する音を頼りに澪は進むが、その歌声は好ましくないものも引き寄せてしまったようだ。
 獲物の気配を感じ取った巨大コウモリ達が、ギィ、ギィと甲高い耳障りな音を立て近づいてくる。澪のように小柄で華奢な獲物など毒のフンをかけてしまえば簡単に狩れるだろう、そうほくそ笑むように巨大コウモリ達は嫌らしく羽ばたく。
「――ギ? グギィー!」
 獲物の真上にたどり着こうという時。突然、コウモリの一体がのけぞり、でたらめに羽をばたつかせだした。天井や壁に身体をぶち当て、仲間のコウモリも巻き込んでフラフラと落ちていく。
 超音波の反響で周囲を認識する巨大コウモリにとって、実体化した音である澪の歌は致命的な効果をもたらしたのだった。
 巨大コウモリを撃退した澪は、花がほころぶような笑顔を浮かべて進む。
 |熟練の探検家《ケイバー》として最深部のお宝を目指して――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロース・ウェスペルティリオ
即死罠……なのかい?
……ふむ、確かに定形生物さんにとっては危ないのかも。
特に人間さんとか、大変そうな罠が多そうなんだねぇ。

洞窟は地面天井壁と跳ね易い地形なので、さくさく……いや、ぽよんぽよんと水まんじゅう形体で進んでいくよー
まぁ、元々シーフなので、鍵開けとか罠の解除は得意なのだけど、
スピード任せに罠を飛び越えたり壊したりで行けそうな所は、時間短縮ということで。
たまにペシャっとなっても、ウチ、液状生命体だし、またもとに戻って進むだけなのです。
一応毒使いでもあるので毒は気になるけど、今回は探索優先。
後で素材採取できるかなぁ?

……ゴースト? いたっけ?
(あって良かった、お守り代わりの「う」印良品)



 申し訳程度に壁に据え付けられたカンテラの仄かな灯りに照らされ、薄暗い洞窟の中を黒々とした球状の物体がぽよんぽよんと軽快に進んでいく。
 洞窟の奥へと進む通路、その岩が少し削れて溝のようにへこんでいた。
 水饅頭のような球状の物体がぬるりと溝に滑り込んだその時、突如として溝が震動しはじめる。隆起した岩肌が迂闊な侵入者を捕らえ、目の粗いヤスリのように哀れな獲物の身体を削り潰さんとした。
 だが、しかし――。
「即死罠……なのかい?」
 球状の物体は、岩に挟まれた瞬間、その形を歪ませた。
 侵入者を削り殺すはずの罠の隙間から、粘性のある液体がにゅるりと染みだし、ぽんと跳ねると壁に跳ね返ってまた球状に戻る。
「……ふむ、確かに定形生物さんにとっては危ないのかも」
 フロース・ウェスペルティリオ(|花蝙蝠《バットフラワー》・f00244)は人型を取っていれば首であろう部分を捻って呟く。
 足を踏み入れたのが獣人や人間であれば致命的な罠だろうが、液状生命体であるブラックタールから見れば何の問題も感じられなかった。
 この宝物庫に罠を仕掛けたワルシャワ条約機構の者達も、まさか不定形の生物が侵入するなどとは思わなかったのだろう。いくら距離感を惑わし罠に掛けようが、肝心の殺傷部分がフロースに傷一つ付けられなかったのだ。
 シーフであるフロースには罠解除などお手の物のはずだが、役に立たない罠をイチイチ解除する手間を掛ける必要などないだろう。
「じゃあ、時間短縮しちゃおうかねぇ」
 フロースがそう言うと、水饅頭型だった身体がぐいっと伸びる。
 その先端が通路の曲がり角まで一直線に伸びる。岩壁に張り付いたかと思うと、そこを支点として残りの部分が縮む。それを繰り返してフロースはどんどん進む。
 獲物を見つけた巨大コウモリが必死で羽ばたき追いすがろうとするが、百数メートルの距離を文字通り飛んで一気に距離を稼ぐフロースに追いつけるはずもない。
 毒は気になるけど、回収はお宝を見つけた後でもできるだろう。
 そう考えながら、ぐんぐんスピードを上げていく。
 侵入者を押しつぶそうとするリフトに挟み込まれて潰れても、その勢いすら利用し伸縮自在な身体を跳ねさせて進むフロースを止められるものはどこにもいない。
 天井を、床を、壁を縦横無尽に跳ね飛び、さあお宝の場所はすぐそこだ!
 意気揚々と目的地を目指していたフロースだが、ふと動きが止まる。
 そういえば――。
「……ゴースト? いたっけ?」
 グリモア猟兵がゴーストがどうとかそんなことを言っていたような気がする。
 だが、ここに至るまでゴーストらしきものに襲われるどころか、姿さえ見なかったのだ。
「誰か別の猟兵さんが倒しちゃったのかねぇ」
 そう思いを巡らすフロースの懐で、お守り代わりの【「う」印良品】がキラリと護りの力を放っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィトレル・ラムビー
よし、せっかくだ
熟練の技というやつを見せてやろう
私も罠の扱いには慣れている。仕掛ける側の発想には精通しているつもりだ
視界の狭い曲がり角、わかりやすい凹凸を迂回した先、意識の死角を狙うならその辺りが定石か?
狙い頃の場所を見越して、罠を仕掛けた痕跡を見切ってやる
ふん、仕掛けたやつはまだ青いな
慎重を期せばこの程度、狩人の私には通用しない

……

面倒くさくなってきたな……広いじゃないかこの洞窟……

飽きたらユーベルコードを併用してずんずん進むぞ
大体こういうのは風の気配を感じればわかるものだ
それに、身体の頑丈さには自信があるからな。多少罠にやられても……気にしな……ええい今更後に退けるか
あとは意地で突っ切るぞ



 毛皮と布でできたウサギを模した頭飾りを揺らし、部族の証たる文様と房飾りをつけたケープを翻し、ヴィトレル・ラムビー(斧の狩猟者・f38902)は威風堂々と洞窟に足を踏み入れる。
 一見するだけでは、|無謀な洞窟探検家《スペランカー》がただ闇雲に歩いているだけだと思うかもしれない。だが、長年の経験に裏打ちされた僅かな異常も見逃さぬ熟練の技は、それが洞窟であっても有効に働く。
 何の変哲もない岩の通路に見えるあの曲がり角。距離感を狂わせる魔法が掛けられた空間ではわかりにくいが、視界の狭いその先にあるのは地の底まで続く落とし穴だ。
 ここまでははビギナーであっても気付けるかもしれない。
 更にその先――。
 罠を仕掛ける者として、ヴィトレルは相手の心理を読む。
 落とし穴に気付いた者は、当然それを回避するために飛び越えるか迂回しようとするだろう。
 自分が罠を仕掛ける側ならどうするか。
(意識の死角を狙うならその辺りが定石か?)
 フンと鼻を鳴らして向けた視線のその先。そこには不自然なほど凹凸の少ない、いかにも歩きやすそうな岩の床があった。それを罠の痕跡と見切ったヴィトレルが小石を放り投げてやると、床がバックリと二つに割れ、小石を挟み込んで押しつぶした。
「ふん、仕掛けたやつはまだ青いな」
 この程度の罠では、自分の故郷ならウサギ一匹すら捕まえられないだろう。
 慎重を期せばこの程度、狩人の私には通用しない。
 悠々と罠を避けたヴィトレルは更に奥へと慎重に進む。
 ヴィトレルの卓越した技術を持ってすれば罠など取るに足らない。
 そのはずだったのだが――。
「面倒くさくなってきたな……広いじゃないかこの洞窟……」
 そう。この洞窟は構造自体が侵入者を阻む天然の罠なのだ。枝分かれしては再び繋がる通路が左手法で抜けようとした者を堂々巡りさせ、間欠泉や隆起する岩々は分かれ道に置かれた目印を吹き飛ばしてしまう。更にその至るところに罠や敵が待ち構えるという、完全無欠な|地下迷宮《ダンジョン》である。
 罠の回避自体はたやすいのだが、こうも通路が続くと飽きてくる。
「罠ごとき、風の気配を感じればわかるものだ!」
 鼻を効かせてずんずんと大股で進み始めるヴィトレル。
 致命的な罠に嵌まることはないし、身体の頑丈さには自信がある。
 たかが岩っころやコウモリごとき、歴戦の狩猟者の証たる鍛え上げられた肉体の前ではどうということもない!
 多少罠にやられても……気にしな……。
 そう強がろうとしたヴィトレルの頭に、天井から落ちてきた石ころがコツンと直撃した!
「ええい今更後に引けるか!」
 ヴィトレルはそう吠えると、石ころを蹴飛ばし、意地と根性と野生の勘で洞窟を駆け抜けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オヴィリア・リンフォース
アドリブ、連携歓迎

お宝を目指して突き進むのです。
戦っているご主人様もきっと喜ぶのです。
罠も一杯だけれど頑張るのです。
沢山のモーラット達も呼んで手伝ってもらうのです。
バチバチと電撃を放出してもらって
罠の破壊や発見してもらうのです。
探検といったらヘルメットの装着も忘れてはいけないのです。
慎重に洞窟を進むのです。
むむ、モーラット達の様子がおかしいから
罠に引っかかったかと思ったら、
いつものモラ詰まりを起こしただけなのです。
無事に財宝庫に辿り着けても油断はしないのです。
お宝自体に罠が仕掛けられているかもしれないのです。
つんつんしてから問題なさそうなら回収するのです。
貴重な非常食もないか探すのです。



「もきゅ!」「きゅぴぴぴっ!」「きゅいぴぴきゅ!」「きゅっぴー!」
 可愛らしい鳴き声が色の岩壁に反響してもきゅもきゅ響く。
 暗闇にも負けない驚きの白さのもふもふ――モーラット達が、ぴょんぴょこぴょんぴょんと跳ね飛んで行く。
 もふもふモーラットのすぐ後ろには、銀色の猫耳と猫尻尾をぴこぴこさせる少女が一人。ロシアでは珍しい猫の獣人……ではなく、彼女も立派な猟兵の一人。オヴィリア・リンフォース(銀色の魔女猫・f25140)、その人だ。
「お宝を目指して突き進むのです」
 オヴィリアが高らかに宣言すると、彼女が呼び出したモーラット達も小さなおててをふりふり、「きゅぴー!」と勇ましく応える。
 オヴィリアはピッカピカのお宝を手に入れてご主人様に喜んでもらうため。
 モーラット達はご褒美のお菓子を食べるため。
 オヴィリア隊長率いる探検隊は、罠満載の暗闇の中を張り切って進む!
「もっきゅ!」
 先頭を進む案外勇敢なモーラットが立ち止まる。後に続くモーラット達も順に動きを止め、止まりきれなかった最後尾のモーラットが前のもふもふにぶつかり、もふっと押しくら饅頭になった。
 天井の岩が今にも崩れそうにぐらついている。このまま進めば崩落した岩で大怪我をしてしまうだろう。
「ヘルメット装着です!」
 オヴィリアの言葉に、モーラット達は一斉にヘルメットを取り出して「もきゅ」と装着する。もちろんオヴィリア自身も猫耳付きヘルメットを忘れず装着だ。
 みんなで「ヘルメット、ヨシ!」と安全確認すると、オヴィリアのかけ声でモーラット達が毛を震わせてパチパチ静電気を放つ。
 パチパチ、ピシピシ――バリーン!
 岩の隙間に入り込んだ水分をモーラットのパチパチ静電気で温め水蒸気に変える。内部から圧力を加えられた岩が小さな欠片となって崩れ落ちる。オヴィリア達にその欠片のいくつかが飛んできたが、ヘルメットがあるので安心安全だ!
 落石の罠を無事に回避し、慎重に進んでいくオヴィリア探検隊。
 だが、順調に進むと思っていた先、彼女らに恐るべき試練が待ち構えていたのだ!
「ぴぴぴぴぃ! もぎゅ、もきゅうううううっ!」
 モーラット隊員の様子がおかしい!
 まさか洞窟の罠にかかってしまったのですか!?
 オヴィリアが助けようと向かったそこには――。
 モーラット数匹が並んで入るか入れないかというサイズのとても魅力的な横穴。それに次々に潜り込んでいつものモラ詰まりを起こした隊員達のお尻があった!
「何やってるのですかー?」
 これはモーラットだからしょうがないね。可愛いからヨシ!
 モーラット達を「うんとこしょ、どっこいしょ」とカブを抜く要領で引っ張り出すと、財宝庫に隠されている伝説の非常食【もらちゅーるボルシチ味(タマネギ抜き)】を目指して、オヴィリア探検隊はまた探索を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

なるほどー。では、私の分野ですねー。行ってきますー。
UCは使ってますが、念の為に空中浮遊しましてー。さらに、仙術ジャミングして、少しでも遠近感取り戻しましょうかね。

ですが…まあ、食らう時は食らいますよねー。
しかして、それらは『攻撃』と認識できますからねー。UC効果で『再構築して無傷』で帰ってきますよー。
そうして、速やかに回収しましょう。敵に渡してやる義理なぞないですし。復興資金はいくらでもあっていいですからねー。



 罠が満載の難攻不落の|地下迷宮《ダンジョン》。
 ランタンのか細い光の揺らめきに浮かび上がる岩の道は、遠近感を狂わす魔法の罠で守られ、何人たりとも財宝庫にたどり着くことを許さない。
 ……そのはずだった。
「なるほどー。では、私の分野ですねー」
 地下迷宮に似つかわしくない、のほほんとした男の声が洞窟の壁に反響する。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)を構成する四人の複合型悪霊の第一、『疾き者』外邨・義紘の声。
 「行ってきますー」と彼らを構成する者達に声を残すと、ふわり、ふわりと軽やかに、まるで散歩にでも来たかのようにゆったりと『疾き者』は洞窟を進む。浮遊して空中を進んでいるということもあるが、その物音一つ立てず進む様は、彼が忍であることの片鱗を窺わせていた。
「さて、術には術ということでー」
 『疾き者』の仙術が洞窟内に掛けられた魔法に干渉する。逆位相となる気をぶつけ、魔法の力を無効化していく。全てとはいかないが、『疾き者』の通り道の範囲の魔法はあらかたその力を失い、罠の数々が白日の下にさらけ出される。
 マントルまで続くかと思われる地獄の口も、見えてしまえばどういうこともない。地面の裂け目を軽々超えて、『疾き者』は進んでいく。
 およそ中程まで来たかという頃合い。辺りの空気の温度がヒュウと冷たく変わる。
 洞窟内に漂う悪意をおぼろげな輪郭に変えて実体化したゴースト達が、いつの間にか『疾き者』の周りに集まってきていたのだ。
 『疾き者』はゴーストなどいないかのように、悠々と足を進める。
 その様子に、ゴースト達はほくそ笑む。
 これまでの相手は破魔の力に守られていた。
 だがこの目の前にいる者からは、破魔の力は微塵も感じられない。
 おお、我らに全く気付いていない、油断しきっているではないか。
 うぉおおぅ、おおぉ……。
 ゴースト達は、怨嗟の声を上げると『疾き者』に飛びかかる。
 生気を吸いつくさんと伸ばされた悍ましい腕が『疾き者』の身体に触れたその時――。
 触れられた部分が崩れ、空を思わせるような澄んだ風になっていく。
 風は再び集まり、『疾き者』の身体を元通りに再構築していく。
 「因果は巡りて回る。どこまでも」
 風に乗り、『疾き者』の声が響く。
 その瞬間――。
 断末魔の叫びを上げてゴースト達の輪郭が崩壊していく。
 『疾き者』の身体に伸ばした腕が、『疾き者』を捉えた顔が、『疾き者』を食らい満たそうとした腹が、次々に風に浸食され崩れていく。
 それは四悪霊の、悪霊としての力。
 一度悪霊に敵として認識されてしまえば、その咎は倍増した呪詛で返される。
 人を呪わば穴二つ。触らぬ神に祟り無し。
 低級なゴースト風情が、四悪霊の呪詛を振りほどけるはずもない。
 ゴーストなどいなかったかのように、『疾き者』はまた悠然と歩き始める。
 
 財宝庫を守る罠や敵はもう全て存在しない。
 後は速やかに金銀財宝を回収し、あるべき場所へ運ぶだけ。
 きっとそれらは、戦火に晒された獣人達の明日がより良きものとなるように使われることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月11日


挿絵イラスト