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獣人世界大戦⑭〜血の魔狼を従えし石化妖狐

作者：メリーさんのアモル

●血の魔狼を従えし石化妖狐
「みんな、獣人世界大戦への参加ありがとう」
　そう言って、猟兵に感謝を告げるのはグリモア猟兵の風吹・香織（怠惰な「双胴の悪魔」乗り・f39889）だ。
　知らない人のために、概要を軽くだけまとめておくよ、と香織が概要を話し始める。
「かつて自分達に痛手を与えた『はじまりの猟兵』の拠点を探していた超大国『ワルシャワ条約機構』、その支配者である『始祖人狼』が、遂にその手がかりを掴んだらしい」
　それに呼応し、他の超大国もそれぞれに「始祖人狼の阻止」や「はじまりの猟兵の奪取」を目的として、ワルシャワ条約機構への大規模な軍事侵略を開始している。
「戦争が発生すれば、犠牲となるのは罪もない獣人達だ。そのうえ、超大国のオブリビオン達は「｜世界の滅亡《カタストロフ》」さえも意に介していない。決して、超大国の好きにはさせないためにも、みんなの力を貸しておくれ」
　そう言って、香織は猟兵達を見た。

「今回向かってもらうのはワルシャワ条約機構のバイカル湖だ。ここはワルシャワ条約機構で虐殺されていった獣人達の血液で溢れ返った『鮮血の湖』と化していて、｜五卿六眼《ごきょうろくがん》たる始祖人狼に絶えず力を捧げる儀式魔術場となっている」
　そして、その鮮血から「血液でできた魔狼の群れ」、ブラッド・ハウンドが飛び出し、新たな虐殺をしようとワルシャワ条約機構領内に散ろうとしているようだ。
「ブラッド・ハウンドは素材が素材だから倒してもキリがないけど、湖畔で『魔狼の創造儀式』を行っているオブリビオンを倒せば、全て血液に戻るらしい」
　とはいえそれだけでは、その間に犠牲者が出てしまう恐れもある。
　ブラッド・ハウンドを一匹残らず倒しつつ、儀式を行うオブリビオンを倒すか、あるいは、速攻でオブリビオンを撃破する必要があるだろう。
「まぁ、要は集団敵とボス敵を同時に相手するってだけだ、私らなら慣れたもんだろ？」
　頼んだよ、と香織は話を締め括った。

第1章 ボス戦 『石化妖狐『石九尾』』

POW   :    獣喰いの九尾 【九つの尻尾】に【闇のオーラ】を注ぎ込み変形させる。変形後の［九つの尻尾］による攻撃は、【尻尾へ取り込み石化】の状態異常を追加で与える。 SPD   :    石の狐火 【身体に纏う闇のオーラ】からレベル×1個の【灰色の狐火】を召喚する。［灰色の狐火］に触れた対象は【遅効性の石化】の状態異常を受ける。 WIZ   :    闇のオーラ レベルm半径内に【闇のオーラ】を放出し、味方に治癒を、敵に【石化】の状態異常、全員に興奮作用を与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「なるほどね。残酷な話」
　グリモア猟兵の説明を聞いて、そう言って頷くのは琥珀色の瞳に琥珀色の髪が美しいオラトリオの猟兵、栗花落・澪（泡沫の花・f03165）だ。
「こうなったら速攻ボス狙い、行くしかないね」
　周囲に防御用のオーラを纏ながら、オラトリオの翼で空中に飛び上がる澪。
　空を飛ぶ事で、ブラッド・ハウンドと一定の距離を保ちつつ、体力の無さを補いながら、素早くオブリビオン『石化妖狐『石九尾』』の元まで突っ込む。
　さらに高速で多重詠唱した魔法で、破魔や破邪の力を乗せた氷魔法を広範囲に放ち、道中のブラッド・ハウンドを凍結させていく。
　これは撃破目的ではなく、あくまで『石化妖狐『石九尾』』に迫るための露払いの妨害で、撃破には至らない。
　とはいえ、凍らせて動きを封じているわけだから、ブラッド・ハウンド達がワルシャワ条約機構の各地に向かってその犠牲者を出すことを防ぐ効果は十分にあることだろう。
（どちらにも破魔はそれなりに効くだろうから。最悪敵が僕の射程範囲内に入れば正面まで行けなくてもいい）
　そう考えてはいたものの、澪の作戦は十分に的中しており、真正面から『石化妖狐『石九尾』』に接近出来そうだ。
「現れたな、猟兵め。こうして儀式をしていれば、現れると思っていた」
　接近しつつある澪の姿を認め、『石化妖狐『石九尾』』はユーベルコードを放つ。
　身体に纏う闇のオーラから無数の灰色の狐火を放つ。
　対する澪もそれに対する対策は考えていた。
「全ての者に光あれ」
　発動するユーベルコードは『Fiat lux』。
　全身から魔を浄化する光を放出し、周囲一帯を無差別攻撃するユーベルコードだ。
　ともすれば——ある程度調整可能とはいえ——、味方をも巻き込む危険なユーベルコードではあるが、今周囲にいるのはブラッド・ハウンドと『石化妖狐『石九尾』』のみ。
　故に、むしろ現状においては最も効果的なユーベルコードでさえあった。
「くっ、私の石化する闇のオーラを無効化するというのか……！　小癪な……！」
　『石化妖狐『石九尾』』が口惜しげに呻くが、それで光が弱まるわけではない。
　澪の放つ浄化の光は、『石化妖狐『石九尾』』の反撃を封じ、確実にその身を弱らせて行ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ふむ、つまりは数が多いということか……」
　金色混じりの焦げ茶の羽毛が美しいヒポグリフ『霹靂』にまたがり空を飛びつつ、眼下に群がるブラッド・ハウンドを見下ろしながら、そう呟くのは四人で一人の複合型悪霊、馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）だ。
　今は『侵す者』馬舘・景雅の人格が表に出ている状態のようだ。
　その証にその手に持つのは景雅の得物たる成長する炎を纏う槍、『黒燭炎』である。
　ならば、と、義透は即座にユーベルコードを発動。
（数が多いということは、これの対象も多いのよな）
　四悪霊が封じてきた呪詛が解放され、戦場の敵全員の運気や霊力などが奪われ、不幸を与えていく。
　四悪霊の悪霊としての力、平たくいえば「祟り」である。
　ユーベルコードとしての名は『四悪霊・『解』』。　
　直後、四人の無念が集まった霊障『四天霊障』をわざと暴走させ、魔断属性を持った広範囲の押し潰し現象が生じる。
　——こうすることにより、残らず倒す！
　霊力を奪われ動きが鈍り、幸運にも愛されないブラッド・ハウンドがそれに抗えるはずもない。
　今その場にいるブラッド・ハウンド達は一匹残らず、潰されて行った。
　——そして、本命にはな……。
　義透が『霹靂』を優しく撫でて指示を送ると、『霹靂』は自身の限界に挑戦する激しい空中機動で以て、『石化妖狐『石九尾』』に接近する。
「ほう、次が来たな、猟兵め。今度こそ石化させてくれよう」
　『石化妖狐『石九尾』』は、そう言って闇のオーラを纏いつつ、灰色の狐火を無数に放つ。
「クエ！」
　『霹靂』が元気の良い鳴き声をあげて、力一杯飛ぶ。​​
　無数に、散弾の如く義透と『霹靂』に迫るその灰色の狐火を、空中機動で回避、一気に『石化妖狐『石九尾』』へと肉薄する。
　義透が構えるは景雅の得物、『黒燭炎』。
　炎を放って、闇のオーラを払いつつ、横薙ぎに振るわれたそれは、確実に『石化妖狐『石九尾』』に大きな負傷を与えた。
「くぅ、おのれ、ブラッド・ハウンド、やってしまえ！」
　『石化妖狐『石九尾』』がそう叫ぶと、ブラッド・ハウンドが追加で湧き出し、義透と『霹靂』に迫る。
「そうそう、何故わしだったかというとな」
　それを再び『四天霊障』で押しつぶしつつ、義透は呟く。
「わしもまた、狼であるからよ」
　潰れゆくブラッド・ハウンドを見下ろしながら、そう呟く生前はキマイラ狼獣人であった景雅なのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……ふむ……無限に復活する敵とまともに付き合っても不毛だし……」
　戦場の状況をグリアモア猟兵から聞き、そう呟くのは、ガジェット研究者の一族として名高いプルモーサ家の次女、メンカル・プルモーサ（トリニティ・ウィッチ・f08301）だ。
「……オブリビオンを倒しに行くとしようか……」
　メンカルが選んだのは速攻プラン。
「満ち欠ける光よ、放て、羽ばたけ。汝は月晄、汝は照翼。魔女が望むは闇夜に輝く月灯り」
　戦場に降り立つなり、メンカルは素早くユーベルコードを発動する。
　全身から翼状に形成された高密度の月の魔力が放出される。
　ユーベルコード『｜夜空を別つ月閃の翼《アルテミス・ウイング》』。全能力を倍増しつつ、月の魔力で編まれた光翼で攻撃を行えるようになる強力なユーベルコードだ。
　だが、月が出ていない今、有効時間は152秒、僅か２分強である。
　つまり、これはその時間内に速攻で攻撃を加える、という証でもある。
　『浄化復元術式【ハラエド】』で月翼に浄化の魔力を付与すれば、あとは高速飛翔でオブリビオン『石化妖狐『石九尾』』の元へ一気に向かうだけだ。
「現れましたね、猟兵。もはや私独力で倒せる、などと慢心はしません。やりなさい、ブラッド・ハウンド達」
　『石化妖狐『石九尾』』はそう言って、ブラッド・ハウンドに指揮を飛ばし、ブラッド・ハンドをメンカルに向けてけしかける。
　メンカルは飛びかかってくるブラッド・ハウンドを光翼による斬撃で切り裂いて迎撃しつつ、前へ前へと進む。
「く、やはり獣人を殺すためだけの道具では猟兵の相手になりませんか……」
　そう言いながら、『石化妖狐『石九尾』』は身体に纏う闇のオーラから灰色の狐火を放ち、メンカルに向けて攻撃する。
　だが、メンカルは慌てない、その攻撃は既に先人のディアボロスにより散々暴かれている。
　メンカルはその灰色の狐火を浄化の魔力がこもった光の羽根を放つ射撃攻撃で迎撃しつつ、『石化妖狐『石九尾』』に肉薄する。
　接近すればするほど、灰色の狐火の密度が上がり、光の羽根だけで迎撃するのは難しくなる。
　だが、メンカルは光翼による防御もあった。こちらも浄化の魔力を帯びているので、石化する心配はない。
　最接近したメンカルは濃紺の刀身を持つ術式制御用の長剣『黎明剣【アウローラ】』による渾身の斬撃と光翼による連続斬撃を同時にお見舞いし、そのまま一気に高速飛翔で離脱する。
「待ちなさい！」
　『石化妖狐『石九尾』』が振り返り、攻撃を敢行するが、もはやメンカルはそこにはおらず。
　メンカルは無傷で『石化妖狐『石九尾』』に痛打を与えることに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「合理的な戦術が演算出来たけれど。…この方法はあとで怒られそうね」
　ブラッド・ハウンドの群れとその奥にいる『石化妖狐『石九尾』』をみやりながら、そう呟くのはイクシア・レイブラント（翡翠色の機械天使・f37891）、完全機械型戦闘用レプリカントである。
　一瞬で戦闘において最も合理的な結論を出した彼女だが、その結論について、とても大切な一人と、友達以上恋人未満の関係にある一人の顔が脳裏をよぎる。
「けど、これ以上犠牲者を出すわけにもいかない」
　ならば、やるべきことは一つ。演算した戦術をただ実行するだけだ。
「狙うは速攻。鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する」
　『サイキックスラスター』を稼働させ、一気に駆け出す。
　ブラッド・ハウンドが妨害しようとイクシアに襲いかかるが、所詮猟兵の敵ではない。
　イクシアは『サイキッククリアウィング』で速度を落とさないように姿勢を制御しながら、ブラッド・ハウンドの攻撃を軽くいなし、回避しながら、一気に『石化妖狐『石九尾』』に迫る。
「もうすぐ限界が近いが、だからとて負けるわけにはいかぬ」
　『石化妖狐『石九尾』』は素早く身体に闇のオーラを纏わせ、灰色の狐火を放つ体勢に入る。
　直後、『強行索敵型デコイドローン』が周囲に展開される。それは立体映像を纏うことができる改造型サーチドローン。当然、投影される立体映像はイクシアのものであり、その様子は『石化妖狐『石九尾』』からは。
「分身した！？」
　と、見える。
　さらに『｜ＡＦ《アームドフォート》・エクスターミネイター』が主砲を分離し、それぞれのデコイドローンからレーザーを放つものだから、どれが本物かはまるで見分けがつかない。
「だが、その全てを石化させてしまえばよいだけのこと」
　しかし、『石化妖狐『石九尾』』はそれに対し、その全てを攻撃することを選ぶ。
　当然そうなればイクシアも灰色の狐火を受けることは避けられず、遅効性の石化状態となる。
「ふっ」
　灰色の狐火が効果を発したのを見て、『石化妖狐『石九尾』』がほくそ笑む。これで、勝ったも同然、と。
　だが、遅効性だ。まだ対処の余地がある。
　否、むしろ今の状態こそが、イクシアの狙いだった。
　デコイドローンを巧みに操り、灰色の狐火を一点に集める。
　そして、『サイキックスラスター』を全開にし、イクシアは一気に全ての灰色の狐火を受け止める。
「なんだと！？」
　予想外の行動、まさか自分から石化しにいくとは。
　まとまった灰色の狐火を受けたことで、イクシアは急速に石化が始まる。
「……羽搏け翼。いかなる困難が立ち塞がろうと、私は越えていく」
　そして、本命のユーベルコードが輝く。
　翡翠色に光輝くサイキックエナジーの翼が羽ばたき、全ての状態異常が、反射される。
「な！？　な！？　わ、私の体が！？！！？！？！」
　自身の体が石に変わっていく。思わぬ事態に『石化妖狐『石九尾』』が驚愕する。
　これこそが状態異常や行動制限を反射するユーベルコード『｜不撓不屈の翼《インビシブル・ウィング》』である。
　機械式の｜裁判槌《ガベル》『決戦武装　マレウス・アウレリオス』が振るわれる。
　それは石化した『石化妖狐『石九尾』』の体を粉々に粉砕し、その存在を永遠に消し去ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月11日