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獣人世界大戦⑭〜屍山血河と成り果て、なお

#獣人戦線 #ダークセイヴァー上層 #獣人世界大戦 #第二戦線 #ワルシャワ条約機構

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 |西比利亜《シベリア》の真珠とも謳われた湖は、鮮血と死に沈んでいた。それはまるで、現在この地を支配する始祖人狼の故郷、|闇深き世界《ダークセイヴァー》を彷彿とさせる。

 無言で哨戒する|人狼《マーナガルム》達の歩む足音。そして、無辜の獣人達の今際の刹那に焼き付いた末期の嘆き。周辺の集落から連れられ贄として捧げられた者達の慟哭が重い空気となって周囲に満ちている。
 それでも、未だ主は満たされぬとばかりに、獣人達がどこからともなく|人狼《マーナガルム》に連れられてくる。幾人かは抗う様子を見せるが、連れられた先の惨状が、その意思を容易くへし折って、気力を削ぐ。

 |人狼《マーナガルム》達は機械的に獣人たちを湖畔へと向かわせ、粛々とこれもまた機械的にその生命を絶っていく。
 無造作に捨て置かれた屍の虚ろな目が、次の贄が供されていくのをただ見つめていた。



「此度の戦争は厄介だな」

 集った猟兵達を前にエルフィア・エルシュタッド(闇月の魔術剣士・f35658)は溜息混じりにそう言った。

「ともかく、今は時間が惜しい。早速説明に入ろう」

 そう言うと、エルフィアは手にした|魔導書《グリモア》の頁を繰る。
 今回の戦場は、ワルシャワ条約機構の領地であるバイカル湖。
 多くの固有種を有した湖は、盟主である始祖人狼の力を強化する為の儀式の場となってしまった。周囲の村落から無辜の獣人達が強引に連れてこられては、その血と生命を贄として捧げられているのだという。

「既に流れた血と生命はもう手の施しようが無い。
 だが、これ以上、彼奴等に力を与える訳にはいかない」

 その為に儀式場を護る|人狼《マーナガルム》達を倒す必要がある。|人狼《マーナガルム》達は皆、始祖人狼により殺戮の紋章を与えられ、それと完全に融合した「紋章殺戮兵」である。紋章の力による異形の装甲を纏った|人狼《マーナガルム》達は強敵と言って過言ではない力を振るう。

「無策で立ち向かえば、此方が負けるだろう。だが――」

 かの湖に、血と鮮血と共に満ちる無辜の人々の御霊が、此方に――猟兵に気が付けば。彼等は猟兵達に力を貸すだろう。
 その為には、彼等の声なき声、その嘆きに耳を心を傾けなければならない。

「ささやかな幸せを踏みにじられた無辜の者達。彼等の想いを背負えるか」

 口にしたそれは、問いかけではなく、その覚悟を問うたもの。

「其の覚悟があるならば、|死者達《彼等》は助力を惜しまないだろう」

 そう言うとエルフィアは魔導書のカタチをしたグリモアに力を込めた。


白神 みや
 初めましてのかたは初めまして。お久しぶりの方はご無沙汰しております。
 そして、そうでない方はお世話になっております。|白神《しらかみ》です。

 ひっそりと今戦争最初のシナリオです。
 シベリアの真珠と謳われた美しい湖を屍山血河と変えた始祖人狼の力を削ぐため、皆様の力をお貸しください。

●プレイングボーナス
 死者達の無念の声を聞き届け、真の姿を現して戦う。
 プレイングボーナスを満たしていれば🔴が無くとも真の姿へと転じる事が可能です。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 今回、プレイング受付開始はOP公開後にタグにてアナウンスをします。アナウンス前のプレイングは申し訳ありませんがお返しする事になります。
 受付締めは18日8時29分です。(完結に満たない場合のみ延長します。)

 第二戦線終結までに完結を目指します。
 そのため、頂いた中で19日24時半ごろまでに完結できそうな分だけ執筆という進行になります。返却の可能性もご留意の上、ご参加ください。
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第1章 集団戦 『マーナガルム』

POW   :    月を飲み込む
【影】に変身する。隠密力・速度・【殺傷力】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【恐怖】の感情を与える。
SPD   :    絶えず追いかける
【体の一部】から【霧】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[霧]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
WIZ   :    追い纏わりつく
対象に【とって最も恐ろしいモノ】の幻影を纏わせる。対象を見て【恐怖】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾守・夜野
分かるなんて軽々しく言えねぇけど
自分に起きた…村ごと儀式に使われた記憶を否応にも刺激してくる
だからこそ止めたいし、これ以上誰かを傷つける力になりたくないって思ってる人もいるだろう
例え記憶や痛みがこの身を焼こうと感情を受け入れる姿勢は崩さずに
「もう一度だけ抗うために
頼む力を貸してくれ…!
俺一人では抑えきれん!
無茶を言ってるのはわかってるっ!
一時的でしかねぇこれがもう一度死ねというに等しいというのも!
それでも手を貸してくれるなら!痛みは全て引き受ける!
だから力を貸してくれ!」
真の姿があれば爪で攻防できるのでラスティ(lost)とか危険物除いて全て貸し出す
漏れ出すエクトプラズムがあれば実体取れるだろ




(くそッ……厭でも思い出しちまう)

 尾守・夜野(自称バブ悪霊な犬神と金蚕蠱モドキ混合物・f05352)は、目の前に広がる凄惨な景色を苦々しく見つめていた。己を今の「尾守・夜野」と成した狂信者の儀式の贄と成った|怪異と狂気織りなす世界《UDCアース》の村の情景を、この景色は否応なく思い出させる。

「――なぁ。
 これ以上誰かを傷つける奴の力になりたくないって思ってる人、いるよな?」

 それは血に沈む力なきひとだった者達への問いかけ。その問いかけに応えるように、夜野の周りの空気が騒めいた。

「もう一度だけ抗うために。頼む、力を貸してくれ……!」

 今此処に群れをなす|人狼《マーナガルム》達に独りで渡り合うのは、事前に聞いていなかったとしても厳しい事は理解できる。

「無茶を言ってるのはわかってるっ!
 一時的でしかねぇこれがもう一度死ねというに等しいというのも!」

 無茶を訴えているのは承知の上だ。だから、自ら対価を差し出す。

「それでも手を貸してくれるなら! 痛みは全て引き受ける!」

 夜野は叫ぶようにそう言いながら、己のユーベルコードを展開する。それは己の戦う手段を戦う力を持たない者に貸し与え、彼等の負うた傷全てを夜野が肩代わりをするもの。
 無造作に打ち捨てられた獣人の身体が緩慢な動きで立ち上がり、動き出す。
 夜野の周囲に漂う|霊物質《エクトプラズム》が揺らぎ蠢いて、装備していた武器に纏わりつく。

「ああ、貸してやるよ。思う存分暴れな!」

 そう言う夜野の腕が獣のそれに変貌していくと共に、少年の姿から青年へと転じる。力なき人々へ己の武器を貸し与えた夜野も、|人狼《マーナガルム》達へとその爪を振り下ろした。
 彼等の肩代わりで負った傷から流れる血と、返り血、そして湖の血で血濡れになりながら、夜野は力を貸し与えた人々を率いるように戦場を駆け抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

印旛院・ラビニア
「悔しかったんだろうね。やり残したこともいっぱいあったんだろうに。僕もわかるよ」
自分も遺伝子番号を焼却されかけた時に、色々な後悔がよぎった。生き延びたのは運が良かっただけかもしれない
「だからさ、みんなの無念は僕が晴らすよ。力を貸して」
真の姿(統制機構での自分の姿)となり、敵に対抗するよ
【地形の利用】で湖の中に身を沈めて霧をやり過ごしながら【聞き耳】を頼りに敵へ近づき、不意を打つようにアサルトライフルでの支援射撃かサーベルでの斬撃を喰らわせるよ。UCの効果で自分の機動力や支援を受けた味方の攻撃力は上がるしね
「あー、あまりこっちは見ないでね顔バレっていい気はしないから」
なんてことを味方に言ったり




「悔しかったんだろうね。やり残したこともいっぱいあったんだろうに」

 印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)は、自身の生命――にも等しい|遺伝子番号《ジーンアカウント》を喪った経験がある。
 引き寄せた縁のお陰で新たな姿と偽造|遺伝子番号《ジーンアカウント》を得て、此処に猟兵として立っているが、たまたま運、あるいは悪運が強かっただけだと思う。それを掴めなれば、未練となっていたかもしれない感情があったことを、様々な後悔をはっきりと覚えている。

「だからさ、みんなの無念は僕が晴らすよ。力を貸して」

 祈るような、寄り添うような言葉と共に、ラビニアの姿が変容していく。金髪のウサギの獣人姿から、赤毛のヒトの女性のもの――|統制世界《コントロール》での現在のラビニアの姿へと。|統制世界《コントロール》であれば非力なこの姿であっても、真の姿として開放している今ならばユーベルコードが扱え、ウサギの獣人のラビニアよりも揮う力は強い。
 所謂「廃ゲーマー」だった頃の知識を活用して組み上げたユーベルコードを展開する。

(ウサギの耳ではないけど、今は同じくらい聞こえるしね)

 そのまま血に染まる湖に身を沈めて気配を殺して、|人狼《マーナガルム》の中でも出来るだけ逸れたものを探る。そうして標的を定めると、時にアサルトライフルで、時にサーベルを用いて的確に仕留めていく。
 その手慣れた動きは、「廃ゲーマー」の面目躍如たる動きであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳥羽・白夜
心底胸糞悪いなこういうの…!
平穏を愛しているからこそ目の前で誰かの平穏が壊されるのは我慢ならない。

死への恐怖、無力感と絶望、何故自分達が…という答えのない問い。聞いてやることしかできねぇけど、救ってやることもできなかったけど、平穏を奪った奴らに代わりに報復するくらいはしてやるよ。

…正直この姿にはなりたくねえけど、そうも言ってらんねーからな。
紅い瞳に蝙蝠の羽を生やした吸血鬼の姿に変じ、紅い刃の大鎌を手に。
そっちも霧使うんだな、ならこっちも霧使わせてもらうぜ!
闇のオーラを纏い【オーラ防御】しつつミストファインダーを展開。ファインダー越しにエネルギー10倍の大鎌の【斬撃波】を放ち敵を纏めて【切断】。




(心底胸糞悪いなこういうの……!)

 鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は目の前の情景と、斃れ伏す獣人達、その惨状に怒りの彩を隠さない。元々|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の能力者であったが、彼自身は平穏と普通をこよなく愛する人間なのだ。だからこそ、無辜の人々の平穏と幸せが壊され、しかも更なる破壊と破滅に利用されるというのは我慢ならない。
 斃れ伏した獣人の身体に手を触れ、白夜は目を閉じる。既に事切れてからかなりの時間が経っているようで、その硬く強張った冷たい感触が、彼等の無念そのもののように感じられる。

(聞いてやることしかできねぇけど)

 何故自分達がこんなところでこんな形で、死なねばならなかったのかという、虚空に散った答えのない問いかけ。

(救ってやることもできなかったけど)

 そして、彼等が味わったであろう、唐突で理不尽な死への恐怖。直面して刻まれた無力感と絶望。

(平穏を奪った奴らに代わりに報復するくらいはしてやるよ)

 それらに寄り添うのだと触れる手から伝える。その想いが受け入れられたのか、白夜の姿が徐々に変容していく。紅い瞳に蝙蝠の羽を生やした貴種|吸血鬼《ヴァンパイア》の姿へと。

「……正直この姿にはなりたくねえけど、そうも言ってらんねーからな」

 能力者であった学生時代であればまだしも、三十路の男性として少々抵抗のある姿だと白夜自身が思う|この姿《真の姿》。しかし、目の前の敵を倒す為には、形振りを気にしてはいけないというのは、能力者時代から嫌というほど思い知っている。
 喧騒に集まって来た|人狼《マーナガルム》達の幾人かが、その身を毛色と同じ色の霧と化して白夜の方へと向かって来る。

「そっちも霧使うんだな、ならこっちも霧使わせてもらうぜ!」

 白夜は|霧使い《ブロッケン》の力で自分と|人狼《マーナガルム》達の間に霧のレンズを設置する。

「――ガッ?!」

 白夜が展開した|霧のレンズ《ミストファインダー》は、通過するものの運動エネルギーを操作するもの。そうして敵の動きを減衰させた敵へと、白夜は大鎌を振るうと。大鎌から放たれた衝撃波は霧となった|人狼《マーナガルム》達を散らす。それだけでなく、|霧のレンズ《ミストファインダー》を通すことで逆に強化された衝撃波で、その向こうの敵をも薙ぎ払うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

此処も酸鼻極まる…
どの岸辺ともたがわず全力で
「征こう」

武器を合わせ相棒と共に前へ

紅水の死者の声は
血の一滴まで使役され瞑りも出来ず
悔しい苦しい終わらせて助けてと
囁いた

間に合わなかった事を詫びて言い切ろう
「俺達で必ず終わらせる」
陸井と頷き合い伝えよう
その最期の願いを護って戦うことを許して欲しいと

咽び泣く紅い思念達は俺達に力を託してくれた…

真の姿を助力で得た上でなお
躊躇わず護の誓いを詠唱するよ

この場凡ての死者の最期の願いと
捨て置けば際限なく砕け散る全ての命を護る為に
更に増した力で全力で戦おう

敵を全て倒し尽くすまで
俺達が此処を立ち去る事はない

最後には旅団からの花を手向けよう


凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と

どの場所でも本当に
無念と悲しみが溢れている
此処も同じだ
「あぁ、征こう」

それ以上の言葉はいらない
武器を合わせて相棒と向かうよ

体を縛り付けるような
苦しく重い思念が溢れている
だけどこの人達は
急に理不尽に命を踏み躙られて
どうすればいいか分からないだけなんだ
「俺達が憎い、ではないんだよ」

俺達は絶対に
この無念を置いていかない
相棒に頷き返して
「あぁ…だから、共に戦ってくれ」
この世界を護る為にと
前に手を差し伸べて

背中を押してくれる力と共に
そして相棒と共に【護の誓い】を
これ以上の命を失わない為に
「俺は、全てを護る」

これ以上好きにはさせない
この場に居る敵を全滅するまで
全力で戦い続ける




「征こう」
「あぁ、征こう」

 武器を合わせ、短く言葉を交わしたのは、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)と葛城・時人(光望護花・f35294)の二人。|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の能力者であった頃から、長く相棒として背を預けあってきた二人だからこその短い会話を交わして、歩を進める。
 歩を進める内に、厭でも凄惨な情景が目に入る。二人は既にバイカル湖で点在して行われている儀式場の幾つかに対処をしていた。それでも、この死と血に染まる光景に心が慣れる事は無く、眉根を寄せた。この戦争が始まる迄、渡る機会が無かった世界。それでも、危機に瀕するのであれば、全力を尽くして護る。その力は確かに自分達にあるのだからと、二人は間断無く戦場に身を投じていた。そんな彼等に縋るように、声無き嘆きの声が微かに聞こえる。
  生命のみならず、その血の一滴迄も贄として無理やり使われた獣人達。その明確な言葉では無くとも届く囁きのような声に、二人は足を止めた。

(間に合わなくて、ごめん――)

 時人は瞑目して詫びる。自分達が間に合わなかった事、彼等を救う事が出来なかった事に。例え彼等を救えていたとしても、それは大局を見据えればほんの僅かかもしれない。しかし、危機に瀕する者を己の全霊で護るのが身上だ。
 それは、時人だけではない。

(この人達は急に理不尽に命を踏み躙られて、どうすればいいか分からないだけなんだ)

 陸井もまた、無念の声を聴きながら想いを巡らせる。纏う羽織、その背に背負った『護』の一字。陸井の身上を、そしてその旅団の銘と団是を端的に示す一文字である。

「俺達で必ず終わらせる」
「あぁ……だから、共に戦ってくれ」

 彼等が生命と共に散らされた細やかで小さな幸せを、その無念を共に戦うと、二人は宣誓する。その言葉を待っていたかのように、風が逆巻いた。それは陸井と時人の宣誓を、彼等が受け入れた証左。逆巻く風が収まると、そこには運命の糸の悪戯から解き放たれた二人が立っていた。

「『この字にかけて!』」
「『団是にかけて!』」

 託してくれた感謝を胸に、二人は即座にユーベルコードを展開する。陸井と時人の身上、そして|陸井の旅団《武道館》の団是を具現するかのようなユーベルコードは、力無き人々の嘆きに寄り添わんとする二人に更なる力を与える。
 十全な力を得た二人は、武器を振るい、|白羽の白燐蟲《ククルカン》を舞わせて|人狼《マーナガルム》達を倒して進み往く。



 儀式場を護っていた|人狼《マーナガルム》達が駆逐され、周囲の静寂に立ち込めていた重く昏い気配が幾分か和らいでくる。

「俺達に力を託してくれて、ありがとう」

 時人が湖畔に花を手向ける。自身が猟兵向けに門戸を開ける旅団では、庭で季節の花々を育てている。そこから選んできた悼むための花が、湖水にさらわれ、流れ沈んでいく。二人の手向けを、此処で散った人々が受け入れ、感謝するかのように。

「これ以上好きにはさせない」
「ああ、護ろう」

 バイカル湖の戦いの決着も近いが、その先には|五卿六眼《ごきょうろくがん》たる『始祖人狼』を始め、超大国の盟主のみならず、その裏で暗躍する者達が待ち受けている筈だ。二人は惨劇を増やしてはならぬという決意を新たに、この場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月19日


挿絵イラスト