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小学生さいきと秘密基地

#カクリヨファンタズム #【Q】 #戦後 #碎輝 #秘密基地

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#カクリヨファンタズム
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#【Q】
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#碎輝
#秘密基地


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「みんな〜! 秘密基地作ろうぜ!」
 ――木もれ日がふりそそぐ森の中、ひときわ大きな木の下で。妖怪親分のうちのひとり、竜神親分の「さいき」……今は、りょうへいに倒されたから、小学生くらいのすがたになっていますが……が、そうみんなに呼びかけました。その呼びかけに、妖怪の子どもたちは、
「わ~! たのしそう!!」
 と目をかがやかせて、わらわらと集まってきます。
「おれ、力持ちだから材料集めてくる!」
 鬼の子がグッと力こぶを作り、
「じゃあ、ぼく設計図かく!」
 化けタヌキの子どもが手をあげ、
「ねー、せっかく大きな木があるんだから、ツリーハウスにしようよ!」
「いいね! ブランコも垂らしちゃお!」
「はしごもかけて!」
 と、みんなでワイワイアイデアを出し合いながら、楽しい秘密基地作りは進んでいきます。やがて、みんなが集めてきた材料とアイデアと知恵で、すてきなツリーハウスの秘密基地ができました。
「わ~! すごーい!」
 みんなで手をたたいてよろこび、
「完成祝いのパーティしようよ!」
「じゃあカンパイのジュース持ってくる!」
 などと言い合っていた、その時です。
「おやおやあ、困りますねえ、ここは我々が目をつけていた場所なのに」
「そうねえ、こんな粗末な小屋は壊して、この子達には実験体になってもらいましょうか?」
 突然、おいらんと呼ばれる女性の着物を着た、男の人と女の人が合体したすがたの、悪い大人の妖怪がやってきました。その恐ろしいすがたに、みんながふるえあがる中、竜神親分が勇かんに飛び出します。
「みんなで作った秘密基地をこわそうだなんて、許せないぜ! おれが『成長』してぶっ飛ばしてやる!」
 そう言ったさいきの体は、バリバリと光る電流に包まれて――。

「はいアウト」
 グリモアベースで、自作絵本(絵は同僚のグリモア猟兵に描いてもらったらしい)の読み聞かせをしていた雨月・雨莉(は何もしない・f03581)がパタリと読んでいた絵本を閉じた。突然始まった絵本の朗読に、呆気にとられながらも一応聞いていた猟兵達も、その音で我にかえる。
「えーっと……つまり?」
 おずおずと訊く猟兵に、雨莉は自作絵本を片手に腕を組んで答える。
「まあ平たく言うと、例によって小学生形態になった碎輝をオブリビオンから守るやつですね」
 竜神親分「碎輝」は、猟兵達の手によって定期的に倒され、「小学生形態」になることで、無限の成長能力を停滞させている。だが、その隙を狙って、オブリビオンが襲ってくる事件が度々起こるようになったのだ。この度の事件も、同様のケースだという。
「尤も、今回は殊更に碎輝を狙ったというよりは……小学生形態になった碎輝が妖怪の子供達と一緒に秘密基地を作って遊んでいたところ、その秘密基地を壊そうとやってきたオブリビオンに襲われるって感じですね」
 それで冒頭の自作絵本の朗読かあ、と猟兵達も得心がいく。あれは彼女が予知で見た光景を絵本にしたのだろう。わざわざ絵本仕立てにする意味ある? とは思うけど。
「せっかく作った秘密基地が壊されるのも、碎輝や一緒に遊んでた妖怪の子供達が実験体にされるのも避けたいっすけど……もっと問題なのは、立ち向かうために碎輝が強く成長しちゃうことなんすよね」
 雨莉が頬に指当て言う。それが彼女が絵本を閉じた時に言っていた、「はいアウト」の意味か。せっかく倒して小学生形態にして、無限の成長能力を停滞させているというのに、ここでまた強く成長されてしまったら意味がない。
「なんで、皆さんには、『ここは俺にまかせて先にいけ』とか『ここは俺に譲ってくれないか?』みたいな、ヒーロー大好き小学生が燃えるシチュエーションで出番を譲ってもらって、代わりにオブリビオンと戦って欲しいんす」
 雨莉の言葉に、猟兵達は分かったと頷く。この流れも、同様の事件では既にお馴染みだ。
「今から向かえば、碎輝と妖怪の子供達が秘密基地を作ろうとしてるとこで合流できるので。上手いこと言って、秘密基地作りに交ぜてもらってください」
 まあ、難しく考えなくとも、「猟兵だ」といえば喜んで秘密基地作りの仲間に加えてくれるだろう。妖怪達にとって、猟兵はカクリヨを救ってくれた英雄だ。断る理由もない。
「近くには、UDCアースから忘れ去られた物品がよく流れ着いてくるスポットがあるんで。そこからなら、秘密基地の材料も集めやすそうですね」
 もちろん、自分で材料を持ち込んでも構わない。色んなアイデアで、楽しい秘密基地を作ろう!
「で、秘密基地が完成したあたりで、オブリビオン……『夫婦研究員妖怪・花魁』が襲いかかってくるんで。返り討ちにしてください」
 『夫婦研究員妖怪・花魁』は、夫婦の研究員のオブリビオンで、日々実験とその検体を求めているらしい。元々、実験場所に相応しい、人目につかない場所ということで今回碎輝達が秘密基地を作ろうとしている森に目をつけていたのだとか。だからって子供達の夢を壊すのは許されないだろう。まして実験体にするなんて言語道断だ。必ず倒してくださいね、と念押しして、それにしても、と雨莉はふっと昔を懐かしむような目になった。
「秘密基地って、子供の頃憧れましたよね~。俺も、一緒に秘密基地作って遊ぶような友達はいなかったっすけど……児童文学とか読んで憧れて、押し入れとかを秘密基地に見立てて遊んでは何度親に怒られたか……って、俺の思い出話はどうでもいいんすけど」
 咳払いして、雨莉はしゃんと猟兵達に向き直る。わざわざ絵本とか作ってたのも、あるいは児童文学を読んで秘密基地を夢見た、あの頃の思い出に影響されたからなのかもしれない。
「せっかくなんで、この機会に夢を形にしてきたらいいんじゃないすか? もしオブリビオンから守り切れたら、今後も秘密基地として遊べるかもですしね」
 そう言って、彼女は猟兵達を送り出した。


ライ麦
 ライ麦です。碎輝が登場してもう3年になるんですって奥さん。やだ怖……(時の流れの早さが)。
 というわけで碎輝登場3周年記念のシナリオです。

 以下簡単なまとめです。

●第1章
 木漏れ日が降り注ぐ、自然豊かな森の中にある一際大きな木の下で、小学生形態の碎輝と、他数人の妖怪の子供達と一緒に秘密基地を作って遊びます。予知が狂うといけないので、事前に避難させるとかはできません。
 猟兵だと言えば、喜んで秘密基地作りの仲間に加えてくれます。
 近くにUDCアースから忘れ去られた物品がよく流れ着いてくるスポットがあるので、廃材でもなんでも、秘密基地作りの材料はそこから持ってくれば大丈夫です。よほど奇抜な材料でもない限り、だいたいのものはあるものとします。もちろん、可能であるならば自分で材料持ち込んでも大丈夫です。
 なお、第1章のみ、希望があればOP冒頭のような絵本風リプレイにします。プレイングにその旨お書きください。

●第2章
 『夫婦研究員妖怪・花魁』と戦います。碎輝はすぐに成長してやっつけようとするので、なんか上手いこと言って出番譲ってもらって戦ってください。
 碎輝及び妖怪の子供達、そして第1章で作った秘密基地を守りながら戦うとプレイングボーナスがつきます。
 そして、最後まで秘密基地を守りきれた場合、ライ麦のカクリヨファンタズムのシナリオ、ノベルでのみ、今後も使うことができるようになります。

 以上です。
 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております!
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第1章 日常 『秘密基地を作ろう』

POW   :    秘密基地の材料を集めてくる

SPD   :    秘密基地を組み立てる

WIZ   :    秘密基地の設計図を考える

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

唯嗣・たから
OK、たから把握した。お姉ちゃん、まっかせて。
たから、秘密基地、好き。
押し入れ秘密基地ごっこも、お泊りしてる旅館で、してるよ!

碎輝お兄ーちゃーん!久しぶり、たから、来たよ!
秘密基地、たからも一緒に作りたい。いーい?
お兄ちゃんと、たから、お友達。まず断られること、ない、よね?
ツリーハウス…にするなら…窓に虫よけ、ほしくない…?
じゃーん、蚊帳!拾ってきた!
これなら、薄いし、窓に貼っても、風景、悪くならないよ。
お昼寝も、安心して、できると思う。どー?
あとは、なんかいっぱい物が、流れてくるところに、ちょっとくらいは、あるんじゃないかなぁ…変わった材料。
あ、屋根に看板とか、格好いいの、つける?


西恩寺・久恩
無意識にUC発動

こんにちは、私も仲間に入れてください
『私達も手伝いたいです!』『カモ!』
秘密基地作りに参加します
フラウディとカモカモも手伝ってくれます

では何か取って来ますね…
UDCアースから物品が流れ着くという場所を教えて貰ったので走って行きます

ここですか…色々ありますね、おや?
漁っていると何かを見つけた

沢山の竹とんぼですか…
父様(西恩寺宏伸)が作ってくれた竹とんぼを思い出し皆にあげようと集めた

皆さん持って来ましたよ
『よいしょっと!』『カモ〜!』
テントや傘など屋根に使えそうな物を持ってきてフラウディやカモカモも材料を持ってきている

父様が筋トレを勧めてくれたお陰で今も皆の力になっています
と呟いた



「OK、たから把握した。お姉ちゃん、まっかせて」
 唯嗣・たから(忌来迎・f35900)はクロネコワンピースの袖を捲り、グッと力こぶを作るような仕草をする。彼女自身、お泊りしている旅館で押し入れ秘密基地ごっこするくらい秘密基地が好き。グリモア猟兵の昔話にも共感するところがある。まして、過去の事件で友人になれた竜神親分と一緒に秘密基地作りで遊べるとなれば。転送されたたからは、いそいそと森の中のいっとう大きな木に向かって走り出した。果たして、そこには赤い風呂敷をマントみたいにくくりつけて、ワイワイと数人の妖怪の子供達と一緒に廃材を運んでいる、小学生形態の碎輝の姿がある。
「碎輝お兄ーちゃーん! 久しぶり、たから、来たよ!」
 片手を挙げて駆け寄りながら挨拶するたからに、マント代わりの風呂敷で汗を拭いつつ、碎輝はパァッと顔を綻ばせる。
「たから! 久しぶりだな、また会えてうれしいぜ!」
「うん、たからも嬉しい。だから、秘密基地、たからも一緒に作りたい。いーい?」
「ああ、もちろん!」
 大きく頷く碎輝に、わらわらと他の妖怪の子供達も寄ってくる。
「おやぶーん、この子は〜?」
 世界の加護とか関係なく、骨とか見慣れてる妖怪の子供がスケルトンであるたからを訝しむことはない。だが、見慣れぬ骸骨に首を傾げる子供達に、たからは自分と碎輝を交互に指差して言う。
「お兄ちゃんと、たから、お友達」
「ああ、友達だ!」
 碎輝も胸を張る。二人にはかつて、「お友達が欲しい」という彼女の夢に碎輝が応える形で友人になった経緯がある。碎輝が小さくなったらまた遊ぶ、そういう約束をしていたのだが、ちゃんとした形でそれが叶えられるのは初めてかもしれない。碎輝の方も、何か込み上げてくる想いがありそうで。どこかはにかんだような笑顔でたからを見た。
「へー、親分と友達なんてすごーい!」
 素直に受け入れた子供達がきゃっきゃしているところに、
「こんにちは、私も仲間に入れてください」
 と、しずしず西恩寺・久恩(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)もやってくる。無意識のうちにユーベルコード、|超越者の肉体《フォフォノカラダ》を発動している彼女は、どう見てもただ者ではないオーラを発していた。
「おやぶ~ん、この人もお友達~?」
 クイクイと碎輝の袖を引っ張って問う座敷童の子に、碎輝はいや、と首を捻る。
「たしか初対面だよな、お前も猟兵か?」
「ええ、私は久恩……フォフォって呼んでください」
 礼をする久恩の後ろから、
『私達も手伝いたいです!』『カモ!』
 無邪気に饅頭の形をした少女式神フラウディと饅頭の形をした鴨式神も顔を出す。その愛らしい姿に、子供達も歓声を上げた。
「わぁっ、かわいいー!」
「お姉さんもりょうへいさんなんだ、すごいねー!」
「猟兵さんに手伝ってもらえたら百人力だよー!」
 賑やかに久恩と式神を囲む妖怪の子供達に、どうやら受け入れてもらえたようだと久恩はホッとする。
「では何か取って来ますね……」
 軽く頭を下げて言う彼女に、
「あ、ならいい場所があるよー! ついてきて! たからちゃんも!」
 座敷童の子が元気よく手を挙げる。こっちこっち、と跳ねるように駆ける子供達の後についていくと、森の中の一角に、木材やらタイヤやら古びた冷蔵庫やら、かご、椅子といった日用品、果ては廃車まで、ありとあらゆる物品が積み重なった山がある。まるで不法投棄の現場みたいだ。しかしこれらは誰かが不法に棄てていったモノではない。あくまでUDCアースから流れ着いた、忘れ去られた品々。人から見ればガラクタみたいなものでも、妖怪の子供達にとっては宝の山だ。特にこうした、秘密基地作りの現場ともなれば。
「これ使えそう〜!」
「これも良くない?」
 などと、色々手に取ってはわいわいきゃっきゃしている子供達の傍らでかがみ、
「ここですか……色々ありますね、おや?」
 色々と漁っていた久恩は、ふとあるモノを見つけて手を止めた。拾い上げたそれは、昔懐かしい竹とんぼ。じっと眺めている彼女の脳裏に浮かぶのは、赤ん坊の時に自身を拾ってくれ、育ててくれた義父の姿。父様と慕う彼が作ってくれた竹とんぼのことを思い出し、懐かしい気持ちが溢れ出す。見れば、ひとつだけでなく沢山ある。皆にも楽しい思い出をお裾分けしたくて、久恩はいそいそと沢山の竹とんぼを抱え込んだ。
 一方のたからは、大量の物が積み重なった小山を見上げてむむむと腕を組んだ。冷蔵庫まであるし、うっかり分け入って崩れてくると、骨の身では少々危険そうだ。ならば。
『小さいクロお願い』
 たからは幾体もの小さな黒猫ぬいぐるみ、「クロ」を召喚し、
「何か、秘密基地に使えそうなもの……探して、きて」
 とお願いする。頷いた小さなクロ達はわちゃわちゃと小山に登り出し、やがて、あるものを数体でえっほえっほと持ち出してきた。
「これは……うん、良さそう!」
 クロ達が持ってきたものを見、助言ももらったたからは大きく頷いて大事に抱える。あらかた材料集めが終わったところで、一同は再び大きな木の下に戻ってきた。
「皆さん持って来ましたよ」
『よいしょっと!』『カモ〜!』
 そう言ってどさっと持ってきた材料を地に置く久恩、フラウディ、カモカモに、木の上で釘を叩いていた碎輝は目を丸くした。屋根に使えそうなテントや傘などはまだ分かるとして、久恩が女性が持ち運ぶには重そうなデカい板まで軽々背中にくくりつけて持ってきていたからだ。
「屋根に使えそうなやつありがとな! でもその板、重くねーか?」
 ぴょんと木から飛び降り、手伝うか? と心配そうに駆け寄ってくる碎輝に、
「これぐらい平気です」
 久恩は持ってきた板を一人で背から下ろし、木に立てかける。華奢な少女の見た目からは想像がつかないパワーに、子供達も感服した。
「お姉ちゃん、力持ちなんだね~!」
「おかげで秘密基地作りもはかどりそうだよ~!」
 口々に称賛し、礼を言う子供達に、どうやら役に立てたようだと久恩は安堵する。
(「父様が筋トレを勧めてくれたお陰で、今も皆の力になっています」)
 そう呟いた後、そうだと彼女はごそごそ持ってきた竹とんぼを広げた。
「これ、よかったら皆さんで遊んでください」
 すっと手渡された竹とんぼに、子供達は目を輝かせる。
「竹とんぼだ!」
「秘密基地ができたら、飛ばし合いっこして遊ぼーよ!」
「どこまで飛ぶかきょーそーね!」
「あ、いっそ屋根に刺すとかどーお?」
 などと盛り上がっている子供達を、久恩は微笑ましい気持ちで見守った……屋根に刺すのは、なかなか前衛的だなと思うけれど。彼女はツリーハウスの屋根に大量の竹とんぼが刺さっている光景を想像した。それはそれで、唯一無二の秘密基地になりそうだが。その話を聞いていたたからが手を挙げる。
「あ、屋根に看板とか、格好いいの、つける? なんかいっぱい物が、流れてくるところに、ちょっとくらいは、あるんじゃないかなぁ……変わった材料。竹とんぼ以外にも」
「看板かあ、それもいーね!」
「看板つけるなら、わたし絵描くー!」
 たからの発言でわくわくの計画が広がっていく中、
「そういえば、たからはさっき何持ってきたんだ?」
 碎輝が彼女に尋ねた。たからはよくぞ聞いてくれました、と胸を張って、持ってきたものを広げる。
「じゃーん、蚊帳! 拾ってきた! ツリーハウスにするなら、窓に虫よけ、ほしくない? これなら、薄いし、窓に貼っても、風景、悪くならないよ」
 骸骨である彼女が蚊に刺されることはない。しかし、彼女の生前の記憶が物語っている。「お昼寝中に、蚊に刺されるとつらい」と。だから。
「お昼寝も、安心して、できると思う。どー?」
 広げた蚊帳の後ろで小首を傾げるたからに、碎輝は感じ入ったように大きく首を縦に振った。
「虫よけのことまで考えてなかったぜ……! さすがだ! 採用!」
 グッと親指を立てる碎輝に、たからはよかったと口元を緩ませる。猟兵達の力で、秘密基地作りは順調に進みそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェリチェ・リーリエ
よしここに嫉妬旅団カクリヨ支部を作ろう(作るなそんなもん)

そう言えば昔、前の嫉妬総帥が団員に内緒で(外見だけは)それなりに立派な掘っ建て小屋…もとい『風雲嫉妬城』作ってたべなー。最終的におらがパンプキンボムで壊したけども!

てなわけでシン・風雲嫉妬城作るべ!城作りたいやつ集まれー!完成したあかつきには家来にしてしんぜよう←

前の風雲嫉妬城は4階建てだったから5階建てだべな、侵入者避けの罠も欲しいし…と夢だけは大きく、落書きのような適当な設計図だけ描いてあとはノリと勢いでGO!
農夫は日曜大工もできるだ!と廃材拾ってきてひたすら釘を打ったりシャチホコ的ないらん飾りをつけてみたり。
…これ完成するんかな?



「よしここに嫉妬旅団カクリヨ支部を作ろう」
 大きな木の下で、フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)は腕を組んだ。勝手に作るんじゃない。というツッコミはともかく。彼女の脳裏に浮かぶのは、エンドブレイカー時代にかつての嫉妬総帥が団員に内緒で作っていた、『風雲嫉妬城』のこと。4階建ての、外見だけはそれなりに立派な……掘っ建て小屋だった。まあ、なんやかんやあった挙げ句、最終的にはフェリチェがパンプキンボムでぶっ壊したのだが。あん時はスッキリしたなあ……と腕組みしたままうんうんと感慨深く頷いていたフェリチェは、よし! と拳を天高く突き上げた。
「てなわけでシン・風雲嫉妬城作るべ! 城作りたいやつ集まれー! 完成したあかつきには家来にしてしんぜよう!」
 彼女の呼びかけに、「お城!?」「お城作るの!?」「まぜてまぜてー!」と、数人の妖怪の子供達……多くは男子が目を輝かせて走ってきた。やはり城は浪漫。一国一城の主とか、男の夢だしな。完成したらしたで、城主になるのはフェリチェだが。まあ、家来は家来で楽しそうだし。と、いうわけで。
「前の風雲嫉妬城は4階建てだったから、5階建てだべな」
 集まった子供達を前に、今ツリーハウス作ってる大きな木の横に空いたスペースと、未だ真っ白な図面を交互に見ながら、フェリチェは鉛筆片手にざくざく設計図を描いていく。5階建てだと、さすがに木の上には建てられないし。
「侵入者避けの罠も欲しいし……どうせならシャチホコ的な飾りも欲しいべな」
 夢だけはデカく。んー、と時々鉛筆で頬を突っついたりしながら、欲望の赴くままにいろいろと付け足されていく設計図を、子供達はワクワクの瞳で覗き込む。
「侵入者用の罠かー! あっ、上から石落とすのとかどう!?」
「なら僕が石落とすよ!」
「矢を放つのもいいね!」
「お堀も作ったら?」
「あ、あそこに金ぴかの像が流れ着いてたから使えるんじゃない?」
 などと、横からワイワイ言ってくる子供達の話に、なるほどなるほどと頷きながら、
「こんな感じだべか?」
 と適当に描き足していったりして。そして完成した、「ぼくがかんがえたさいきょうのおしろ」みたいな、子供の落書きみたいな設計図を手に、
「よーし皆のもの、行くべー!」
「おー!」
 フェリチェはウキウキと子供達を引き連れ、教えてもらったUDCアースからの忘れ去られた品物が流れ着く小山に行き、力自慢の鬼の子や河童の子に手伝ってもらいながら廃材や、どこかの学校の校長を象ったらしい金ぴかの像等、色々拾ってきて。
「農夫は日曜大工もできるだ!」
 ふん! と気合十分、腕まくりしてトンテンカン、ひたすら釘を打っていく。子供達も楽しそうに手伝ってくれた……が。
「……これ完成するんかな?」
 夢中でしばらく作業した後、フェリチェはふと我にかえって額の汗を拭いながらシン・風雲嫉妬城(予定)を見た。夢と憧れだけが詰まった城は、まだ一階部分すら完成していなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィル・グラマン
●SPD

すっげー!如何にもな秘密基地じゃん!
どうせだったら、もっとスゲぇ秘密基地にしようぜ
なんたって…おっと、いけね
危うく予知の内容を漏らすところだったぜ
それらしい事で誤魔化して、オレ達の|秘密基地《アジト》に近寄る奴らを追い払う罠をじゃんじゃん作っていこーぜ

んー、そこらへんの枝とか蔦とか使っても何か物足りねぇんだとなぁ
『サイバー・インストレーション』でサンドボックスゲームっぽいブロック状の資材を出したら、積み上げたり組み合わせたり埋めたりしてみっか
これに引っかかったら別の罠が次々に発動する感じにして…っと
にひひ、楽しみだぜ♪

そういやさ、団名って決めてんの?
無かったら皆で話し合って決めようぜ!



「すっげー! 如何にもな秘密基地じゃん!」
 手ひさしして着々と出来上がりつつあるツリーハウスを見上げ、ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は目を輝かせた。木の上に作られた小屋には、屋根代わりのテントや傘が被せられ、強い希望があったのか、一部に竹とんぼが突き刺さっている。必要に応じてテントや傘を畳めば、木漏れ日降り注ぐ開放的な小屋になるだろう。窓には薄くて目立たないが、蚊帳も張られ、虫よけと眺望を両立している。ツリーハウスに登るためのはしごも完備、今は屋根に付けるための看板を作っている最中のようだ。これだけでも秘密基地としては充分だが。ウィルは看板に釘を打っている碎輝に近づいて囁く。
「どうせだったら、もっとスゲぇ秘密基地にしようぜ。なんたって……おっと、いけね」
 危うく予知の内容を漏らしそうになり、ウィルは口を覆った。碎輝は怪訝そうな顔をして振り向く。
「なんたって……なんだって?」
「ほら、あっちで侵入者撃退用の罠作ってるだろ? ああいうの欲しくね?」
 都合よく、隣で掘っ立て小屋を作っているグループが、一生懸命周囲に堀を掘っている。それを指差して誤魔化すと、碎輝の目に煌めきが宿った。
「侵入者用の罠か〜! そういうのカッコいいよな!」
「ああ、オレ達の|秘密基地《アジト》に近寄る奴らを追い払う罠をじゃんじゃん作っていこーぜ」
 上手く誤魔化せたことにホッとしつつ、親指を立てるウィルに、碎輝もワクワクの瞳で頷いた。
 とはいえ。
「んー、そこらへんの枝とか蔦とか使っても何か物足りねぇんだとなぁ」
 拾った小枝や蔦を手に、ウィルは口を尖らせる。小枝をツリーハウスに登るためのはしごの前にバラ撒いて、踏めば音が鳴るようにしてみたり、蔦をはしごに絡ませてみたり、蔦で網を作ってみたり。色々やってはみたが、なんだか物足りない。碎輝もう〜んと、難しい顔をして腕を組んでいる。
「だよなあ、どうせならもっとこう、派手なやつ欲しいよなあ」
「派手なやつか……にひひ。そんなら、これっきゃねぇか!」
 ニヤリと笑ったウィルが指を鳴らすと、上からサンドボックスゲームっぽいブロック状の資材が降ってくる。おおっと、と飛び退いた碎輝が目を見張った。
「すげー! 本格的じゃん!」
「だろ? これとこれを組み合わせて……」
 ウィルは碎輝や、他の妖怪の子供達と協力して、大きな木の前にブロック状の資材を組み合わせ、積み上げていく。例えばこれで下の方のブロックが崩れたりしたら、連鎖的に崩れて下敷きになるように。あるいは、下にブロックを埋めて、踏んだら落とし穴が発動するように。
「これに引っかかったら別の罠が次々に発動する感じにして……っと」
 その大人顔負けの頭脳で、ウィルは楽しげに演算しながら仕掛けを施していく。一度落とし穴スイッチを踏めば、落ちた先にあるスイッチも作動して積み上げたブロックが崩れ、さらに崩れたブロックが別の罠の発動を促し……というように。複雑な罠を仕掛け終わったウィルは、
「にひひ、楽しみだぜ♪」
 とほくそ笑み、ふと碎輝と妖怪の子供達の方に振り向いた。
「そういやさ、団名って決めてんの?」
 いや、と碎輝が首を振る。
「そういや、看板になんて書こうか? って悩んでたんだよなあ」
 考えるように目線を上にやる彼に、
「じゃあ皆で話し合って決めようぜ! それで団名をでっかく看板に書けばいいじゃん!」
 ウィルは弾む声で提案する。秘密基地に集う者達には、それに相応しい名前が欲しいもの。その名前を考えるのも胸が弾む。どんな名前がいいか。碎輝とその仲間達は、車座になってああでもないこうでもないと言い合いつつ、和気あいあいと自分達を示す名を考えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『夫婦研究員妖怪・花魁』

POW   :    ネバネバ検体捕獲
【フラスコに入った粘性の液体】が命中した対象を爆破し、更に互いを【ネバネバした鎖】で繋ぐ。
SPD   :    私たち夫婦は研究者
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【守護骸骨】が出現してそれを180秒封じる。
WIZ   :    過去に学ぶ
【研究ノートに書かれた】【他オブリビオンの失敗例】【を読み込む事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。

イラスト:麻風

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はモイ・トリーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「よし! これでどうだ!」
 碎輝がツリーハウス正面の屋根部分に、でっかく「さいき団」と書かれた看板を打ち付け、やりきった顔でトンカチ片手に額を拭う。あれから皆であれこれ団名を考えたのだが、幼い妖怪の子もいることだし、分かりやすい方がいいんじゃないか? という話になり、結局シンプルイズベストでこうなった。ついに完成した秘密基地の姿に、一同おお〜っ! とどよめき、誰からともなく拍手が沸き起こる、その時だった。
「おやおやあ、困りますねえ、ここは我々が目をつけていた場所なのに」
「そうねえ、こんな粗末な小屋は壊して、この子達には実験体になってもらいましょうか?」
 突如、背後から重なった男の声と女の声が響く。振り向けば、果たして。予知で聞いた通りの姿の妖怪……オブリビオンがそこに立っていた。花魁の着物の上に白衣を羽織ったそれは、頭部だけが男女に分かれた双頭で。よく見れば度重なる実験の果ての末路なのか。皮膚は溶けて体のあちこちから白い骨がのぞいている。様々な姿の妖怪を見慣れているはずの子供達すら、ひっと喉の奥から声を漏らしてしまうほどの異様な風貌。
「お、おやぶん……この人も、お友達……?」
 碎輝がマント代わりに付けている赤い風呂敷を引き、指差しておそるおそる尋ねる座敷童の子に、碎輝はいや、と件の妖怪……『夫婦研究員妖怪・花魁』を睨め付け、守るように前に進み出る。
「こいつはさすがに友達じゃねぇ……どこの誰だか知らないが、俺達の秘密基地を壊そうってんなら容赦しねぇぞ!」
 啖呵を切った碎輝の体が、バリバリと光る電流を帯びたところで猟兵達はそっと彼の肩に手を置いた。やる気は買うが、それ以上いけない。ここから先は猟兵の仕事だ。夫婦研究員の方に視線を移し、猟兵達は口を開いた。

※マスターより
 二章ボス戦、『夫婦研究員妖怪・花魁』との戦いです。
 このままだと立ち向かうために碎輝が強く成長してしまうので、なんか上手いこと言って出番を譲ってもらって戦ってください。
 マスコメにもありますように、碎輝及び妖怪の子供達、そして第1章で作った秘密基地を守りながら戦うとプレイングボーナスがつきます。
 第2章からの参加も歓迎いたします。

 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております!
西恩寺・久恩
第六感と瞬間思考力と気配感知を常に使用する

指定UCも無意識に使用する


碎輝さんはとっても強いです。私は敵を相手するので子供達を守って頂けませんか?
と碎輝さんを説得してから敵と戦闘態勢をとる

よっと…秘密基地はフラウディとカモカモに任せましょう
敵のUCは心眼で見て推力移動で回避するか

『させません、フラウディ・スパーク!』『カモ〜!』
フラウディとカモカモは爆発に巻き込まれない距離で光線を放ち液体を消し飛ばしておきます(結界術で爆風を防ぐ)

とりあえず黙りなさい
何か五月蠅い敵を怪力で殴り飛ばしてから飛び蹴りをくり出した


元の世界では出来なかった秘密基地…守って見せますよ!
と敵を睨みつけた


唯嗣・たから
Σ!碎輝お兄ちゃん、すとーっぷ!
ここで秘密基地の、出番。他の子たち連れて、基地に避難、して。
怖い人退治は、たからに、任せて。
この子たちも、たからより、
よく知っているお兄ちゃんが、傍に居る方が、きっと安心できる。
たからが、強いの、お兄ちゃんが一番、知ってる。でしょ?
は…もし不安、なら。たからのこと、基地から応援、してくれたら嬉しいな。

って言って、お兄ちゃんに避難を促す、ね。
たからのUC、間違って触ったら、大変だし…腐る…。
ネバネバ、したいなら…とーってもネバネバに、してあげる。
いけーたからの、怨霊の腕!腐らせて、ネバネバだー!



 今にも飛び出していきそうな碎輝に、唯嗣・たから(忌来迎・f35900)は口の周りを両手でメガホンのように囲み、後ろから声を掛けた。
「碎輝お兄ちゃん、すとーっぷ!」
「……うおっと!」
 勢いあまってつんのめり、前に倒れそうになる彼の両肩をグッと掴み、西恩寺・久恩(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)は彼と目線を合わせるようにしゃがみこむ。
「碎輝さんはとっても強いです。私達は敵を相手するので、子供達を守って頂けませんか?」
 強い。自尊心をくすぐる一言に、碎輝の瞳の奥から輝きが湧き上がる。たからも完成したばかりの秘密基地を指差し、説得した。
「ここで秘密基地の、出番。他の子たち連れて、基地に避難、して。怖い人退治は、たからたちに、任せて」
 妖怪の子達も、知り合ったばかりの自分達より、よく知っている親分が傍に居る方が、きっと安心できる。そう言葉を紡ぎ、たからは骨の拳をぎゅっと握って胸に当てた。
「たからが、強いの、お兄ちゃんが一番、知ってる。でしょ? でも……もし不安、なら。たからのこと、基地から応援、してくれたら嬉しいな」
 サングラス越しに真っ直ぐに見つめる彼女の目線に、碎輝は大きく頷く。
「ああ、任せとけ! よーしみんな、秘密基地の中にひなんするんだ!」
 バッと振り向いた碎輝の号令に、わーっと子供達ははしごを登り、ツリーハウスの中に逃げ込んだ。最後にはしごを登った碎輝は中に入る前にチラっと猟兵達の方を見、「頑張れ」というようにグッと親指を立てている。無事に基地の中への避難が完了したのを見届けたたからはホッと一息ついた。自身のユーベルコード、間違って触ったら大変だから。改めて敵を見据える二人の前で、夫婦研究員の方は薄気味悪い笑みを浮かべたままツリーハウスを見上げている。
「あらあら、中に入られてしまったわねえ」
「新鮮な子供の検体、大量確保のチャンスでしたのに。仕方ない、この方々に検体になっていただきましょうか!」
 夫婦研究員が、手にしたフラスコを大きく横薙ぎに振るい、中に入った粘性の液体をぶっかけてくる。その液体の軌道を、久恩は一瞬のうちの思考と第六感で読み取り、無意識のうちに発動させていた|超越者の肉体《フォフォノカラダ》により得た異次元の速度と身体能力、それに動体視力でもって素早く回避した。しかし、彼女が避けた液体は意外にも遠くまで飛び、秘密基地にかかりそうになる……。
『させません、フラウディ・スパーク!』『カモ〜!』
 その前に躍り出た久恩の式神、フラウディとカモカモが光線を放ち液体を消し飛ばした。秘密基地の方は式神に任せておいてよかった。安堵する久恩の横で、たからの方も、グッと飛んでくる液体と夫婦研究員を睨みつける。
「ネバネバ、したいなら……とーってもネバネバに、してあげる。凌遅実行!」
 瞬間、ずぞぞ、と地面から百を超える不気味な怨霊の腕が這い出してきた。
「いけーたからの、怨霊の腕! 腐らせて、ネバネバだー!」
 骨だけの拳を突き上げる彼女の命に従い、無数の腕がそっと表面を撫でまわすだけで、粘性の液体もたからに届く前に腐り落ち、ただでさえ溶けかけている夫婦研究員の体も、ぐずぐずと腐って粘ついた糸を引く。
「あああっ! まだ実験は終わっていないのに!」
 悲鳴を上げ、纏わりつく腕を手で払いのけようとする女の頭部に、
「この腕は腕で興味深いものですが……やはりこういったものは、まっさらな子供で試さないと!」
 などと喚いている男の頭部。何か五月蠅い敵を、久恩は、
「とりあえず黙りなさい」
 怪力で殴り飛ばし、さらに飛び蹴りをくらわせる。元々が可憐な少女の外見に見合わぬ常人離れした筋肉の持ち主である上に、ユーベルコードの力で強化もされている。研究者風情に到底敵うはずもなく、夫婦研究員はもんどり打って倒れた。倒れた敵を睨みつけ、久恩は言い放つ。
「元の世界では出来なかった秘密基地……守ってみせますよ!」
 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェリチェ・リーリエ
夫婦研究員だぁ!?分かったつまりリア充だべな!
下がってなガキんちょ、あれはおらの獲物だべ!
この風雲嫉妬城を悪の手(リア充)に落とさせはしねえべ!(まだ一階部分すら完成してない)

ネバネバの液体は【武器巨大化】で巨大化した中華鍋を盾代わりにして防御。
おいこら愛用の中華鍋がダメになるとこだったでねーか!だいたい爆破されるべきはリア充の方だべ!
やられたらやり返す、爆破返しだ!
リア充爆破スイッチを連続でポチポチして【爆破】攻撃、さらに生じた爆風と煙に乗じて肉薄。
そんなくっつきやがって暑苦しいべさ!そんなべったりリア充はこうしてくれるわー!
スーパーブレイドホリィで男女を【切断】するように攻撃。



「くっ……私たち夫婦は研究者……こんなところで研究を諦めるわけには……」
 倒れた夫婦研究員が、白衣の袖で鼻血を拭いつつよろよろと立ち上がる。夫婦。その単語を聞き逃すフェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)ではなかった。尤も、その名は事前にグリモア猟兵からも聞いていたが。
「夫婦研究員だぁ!? 分かったつまりリア充だべな!」
 ギリッと歯ぎしりし、いきり立ったフェリチェは、まだ律儀に堀を掘ってくれてる子供達の前に片腕を広げて立つ。
「下がってなガキんちょ、あれはおらの獲物だべ! この風雲嫉妬城を|悪の手《リア充》に落とさせはしねえべ!」
 いうてその風雲嫉妬城、まだ一階部分すら完成していないのだが。彼女の言葉に素直に頷いた子供達は、
「頑張れー! 殿ー!!」
 とすっかりノリノリで口メガホンを作って応援したり拳を振り上げたりしながら、散り散りに散っていく。
「こちらの子供達にも逃げられてしまいましたか。では、もうこの方を検体にするしかありませんね!」
 先ほどの猟兵の攻撃でズレた眼鏡を、クイッとブリッジ部分を押し上げて直し、夫婦研究員はフェリチェに向かってフラスコからネバネバの液体をぶっかけてくる。うおわ汚え、とフェリチェは咄嗟に愛用の中華鍋を巨大化させ、盾代わりに構えて防いだ。ベチャっと中華鍋に付着した液体を、顔をしかめてブンッと勢いよく鍋を振って振り落とした、直後に地面に落ちた液体が爆発する。ビクッと首をすくめて爆風を中華鍋で防ぎつつ、フェリチェは敵を睨みつけた。
「おいこら愛用の中華鍋がダメになるとこだったでねーか! だいたい爆破されるべきはリア充の方だべ!」
 やられたらやり返す、爆破返しだ! とフェリチェはリア充爆破スイッチを連続でポチポチ。押す度にボカン、ボカンとどういう仕掛けか夫婦研究員の周囲で爆発が起きる。まさにリア充爆発だ。その爆風と煙に、夫婦研究員が激しく咳き込んでいる隙に素早く肉薄した彼女の手には、刃の如く硬質化したヒイラギの葉が握られている。
「そんなくっつきやがって暑苦しいべさ! そんなべったりリア充はこうしてくれるわー!」
 くっついているというか、もはや一体化しているのだが。その2人を真っ二つにするように、フェリチェは憎しみを込めて一体化した夫婦の中心部を斬り裂いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水・あめ
よぉ!
親分が基地作ったって聞いてよ――来たんだけどさ。
なんかヤバそうだな!
つか敵、オバケかよ……勘弁してくれよ……。

とはいえ碎輝サン、フルパワーまで時間かかるもんな。
助太刀するぜ!

それじゃ、オバケは帰る時間だぜ?
オレのワザはどれ使っても基地も友達も全部ブっとんじまうから……攻撃には回れねえ。
でも碎輝サンの雷なら……!

UC滅光雨で敵に状態異常「避雷針」を付与、もう雷は外れないぜ。
本当は巨鳥モードで落雷を叩き込みたいけど、辺りも大雨で押し流しちまうから今回はなし!
小威力の小さな放電で碎輝サンを補助だ!

基地と友達はオレがカバーするから、碎輝サンの雷をブチ当ててあんな奴ブっとばしちまえ!いけーーーッ!



「よぉ! 親分が基地作ったって聞いてよ――来たんだけどさ」
 バッサバッサと翼をはためかせやってきた水・あめ(勇者の翼・f42444)は、ツリーハウス近くの枝にとまり、おっかなびっくり樹下にいる敵を眺めた。先ほどのフェリチェの攻撃で中心部を斬り裂かれた夫婦研究員は、それでも体が完全に分かたれることはなく。胸の辺りでくっついたまま、だらりと重力に従って両頭を両側に垂らしている。裂かれた断面から覗く赤い肉と内臓が生々しい。よりいっそう恐ろしい姿と化した夫婦研究員は、しかしその姿を気にする様子もなく。
「検体……検体を……」
「手に入れなければ……」
 などと、ぶつぶつフラスコと研究ノートを手に呟いている。青くなって頭を引っ込めたあめは、窓から真剣な顔をして覗き込んでいる碎輝に囁いた。
「……なんかヤバそうだな! つか敵、オバケかよ……勘弁してくれよ……」
 翼で顔を覆った彼に、
「ああ……なんとかぶっ飛ばしてやりたいとこなんだが」
 碎輝は渋い顔で答える。ぶっ飛ばそうにも、この小学生形態ではままならないというように。顔から翼を離し、あめも頷いた。
「碎輝サン、フルパワーまで時間かかるもんな。助太刀するぜ!」
 そもそも、フルパワーにさせてはいけないのだし。よし! と恐怖を抑え込むように両拳を握りしめたあめは、意を決してなるべく夫婦研究員を直視しないようにしながら、木から飛び降りる。碎輝もその後に続いた。
「それじゃ、オバケは帰る時間だぜ?」
 ビシッと敵を指すあめを、
「帰るものですか……」
「まだ検体も手に入れていないのに……」
 夫婦研究員はぐらりと首を起こし、眼鏡越しに鋭い眼光で睨みつける。しかし、そうは言ってももう後がないのも事実。これ以上負けるわけにはいかない、と夫婦研究員は眼鏡のフレームに手をかけ、真剣な面持ちで手にした研究ノートをめくる。
「ふむふむ……黒マントの怪人は、敵を地下水路に閉じ込めたことで油断してやられたと……」
「それなら、こちらは決して油断せず……防御を固めて……」
 他オブリビオンの失敗例を読み込んだ夫婦研究員は、ハァーッ! と気合を入れ、両腕を体の前でクロスさせて攻撃に備える。
「さあ、かかってきなさい!」
 と。だがあめは見てなかった。直視すんの怖いビジュアルだしな。目を閉じて、嘴あたりに翼を当てながら、ぶつぶつと何事か呟いている。
「オレのワザはどれ使っても基地も友達も全部ブっとんじまうから……攻撃には回れねえ。でも碎輝サンの雷なら……!」
 開眼し、
「喰らえ、オレの雷!」
 小威力の小さな放電を放つ。くらった夫婦研究員はニヤリと笑った。防御力を強化しているおかげで、ちょっとビリっとした程度で済んだと。
「やはり、防御力を高めたのは正解だったようですね。これなら……」
「いや、本命は碎輝サンの雷の方だぜ?」
「何?」
 敵は目を見開く。そして気付いた。頭に避雷針が突き刺さっていることに。
「もう雷は外れないぜ! 基地と友達はオレがカバーするから、碎輝サンの雷をブチ当ててあんな奴ブっとばしちまえ! いけーーーッ!」
「ああ!」
 頷いた碎輝と、あめの放つ放電が合わさり、一本の鋭い稲妻と化して夫婦研究員に襲い掛かる。
「ぐぎゃあああああー!」
 漫画みたいに、骨が見え隠れするほどに感電した敵が悲鳴を上げる。
「やったな!」
 と碎輝とハイタッチしようとしたあめはふと気付いた。なんか彼の背が、先ほどより高くなっていることに。顔つきもなんだか大人びて見える。どうやら敵に雷をくらわせたことで、若干「成長」してしまったらしい。彼に攻撃させるのは、ちょっとまずかったかもしれない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ウィル・グラマン
●SPD

予定通り来やがったな
あー、なんでもねぇよこっちの話
なぁ…皆
丁度良く俺達のアジトをぶっ壊そうとする奴がやってきたからよ、侵入者撃退用の罠を試したくね?
何処に何を仕掛けてるかは俺達の頭の中しかないから、逃げ回ってるふりをして誘い込んでやろうぜ!

仕掛けた罠は、一人で留守番してたらやってきた二人組の泥棒を返り討ちにするホームでアローンな映画さながら
森で集めたドングリを撒いて転ばしたり、子どもの体重では反応しないブロックを踏んだら大人の顔面の高さに調整したバネ仕掛けの板がぶっ叩いたりするぜ、にゃはは!

最後は皆で挑発しながら誘い込んでやって、まんまと落とし穴に落ちたら吊るした丸太がドッスンだぜ!



「予定通り来やがったな」
 子供達と一緒に、密かに秘密基地内に潜んで様子を伺っていたウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)が窓から敵の姿を視認して呟く。
「? 予定通り……?」
 首を傾げる座敷童に、
「あー、なんでもねぇよこっちの話」
 ウィルは手をひらひら振って、子供達に向き直った。
「なぁ……皆。丁度良く俺達のアジトをぶっ壊そうとする奴がやってきたからよ、侵入者撃退用の罠を試したくね? 何処に何を仕掛けてるかは俺達の頭の中しかないから、逃げ回ってるふりをして誘い込んでやろうぜ!」
 侵入者撃退用の罠。その言葉に、子供達の目はたちまち煌めきを帯びる。
「そっか! せっかく設置したんだもんね!」
「試さないともったいないよね!」
「やろやろ!」
 先ほどまでの恐怖も、「設置した罠を試せる」というワクワク感の前に吹き飛び。子供達はウィルの後に続いて、ワーッとツリーハウスから飛び出した。次々にはしごを降りてくる子供達の姿に、目を輝かせたのは夫婦研究員だ。
「新鮮な検体が! 向こうから来てくれるなんて!」
「突入する手間が省けましたよ!」
 度重なる猟兵達の攻撃に、既に満身創痍だが。気にしちゃおれないと、夫婦研究員は嬉々として子供達を追いかけて走り出した――瞬間に、ウィルを筆頭に子供達がばら撒いた、森で集めてきたドングリを踏んでスッ転ぶ。そもそもが花魁の長い着物では転びやすい。くそ、と転んだ拍子にずり剥けた鼻の皮膚を押さえ、逃げる子供達の背を睨みつけた敵は、それでも検体を手に入れるべく再び走り出す。途端に、ビターンとバネ仕掛けの板が顔面をブッ叩いた。仕掛けてあったのは、子供の体重では反応しないブロックだ。見事に引っかかった夫婦研究員は、盛大に鼻血を出しながら後ろに倒れ込む。仕掛けた罠で返り討ちにされる様は、まるでホームでアローンな映画さながらだ。
「やーいやーい引っかかったー」
「ここまでおーいでー」
 あっかんべーしたりこちらに向けた尻を叩いたりしながら囃し立て、挑発するウィルや妖怪の子供達に、起き上がった夫婦研究員は揃ってギリッと歯ぎしりした。
「貴様等……! いい加減に……!」
「もう許さない……! 捕まえた暁には、一番キツい実験に使ってやる……!!」
 怒りも露わに、頭に血が上った状態で猛然と飛び掛かってくる敵は、しかし足元にあるブロックに気付かない。まんまとそれを踏んづけた夫婦研究員の重みで、パカッと|地獄への扉《落とし穴》が開く。
「……えっ?」
 一瞬宙に浮く体にポカンとした後、真っ逆さまに落ちていく夫婦研究員。
「ぎゃぁあああああ!」
「ちょ、ちょっと待ってぇ!」
 叫び声を上げ、必死に伸ばした手は空を掴むばかり。ドスン、と落ちた先で再び、尻がポニュっとなんらかのブロックを踏む嫌な音がした。尻元を確認する時間すら与えず、次々作動する罠が夫婦研究員を襲う。最後には、いつの間にか落とし穴の上部に吊るされていた丸太の糸が切れ、ヒューンと夫婦研究員目がけて落ちてきた。ヒッと怯えて手をかざす彼らの顔が、丸太に潰されて見えなくなる。音もしなくなってしばらくの後、どうなったかとこわごわ、河童や鬼の子等、力自慢の妖怪の子が降りて行って丸太をどけてみれば。穴の底で、目を回した夫婦研究員がノビていた。起き上がる気配もない。ここまでコテンパンにのされれば、もう秘密基地や子供達を狙おうとは思わないだろう。暫しの間を置いて、子供達の間でワッと快哉の声が上がる。自分達の秘密基地を守りきれたと。木漏れ日降り注ぐ秘密のツリーハウスは、これからも此処にあり続けることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年06月23日


挿絵イラスト