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獣人世界大戦⑩〜塹壕に迫るゾウの群れ

作者：メリーさんのアモル

●虐殺迷路の中枢にて
「みんな、獣人世界大戦への参加ありがとう」
　そう言って、猟兵に感謝を告げるのはグリモア猟兵の風吹・香織（怠惰な「双胴の悪魔」乗り・f39889）だ。
　知らない人のために、概要を軽くだけまとめておくよ、と香織が概要を話し始める。
「かつて自分達に痛手を与えた『はじまりの猟兵』の拠点を探していた超大国『ワルシャワ条約機構』、その支配者である『始祖人狼』が、遂にその手がかりを掴んだらしい」
　それに呼応し、他の超大国もそれぞれに「始祖人狼の阻止」や「はじまりの猟兵の奪取」を目的として、ワルシャワ条約機構への大規模な軍事侵略を開始している。
「戦争が発生すれば、犠牲となるのは罪もない獣人達だ。そのうえ、超大国のオブリビオン達は「｜世界の滅亡《カタストロフ》」さえも意に介していない。決して、超大国の好きにはさせないためにも、みんなの力を貸しておくれ」
　そう言って、香織は猟兵達を見た。

「今回みんなに向かってもらうのは遼東半島先端部に存在する『旅順要塞』だよ。ここは幻朧帝国の租借地となっている。戦争以前には戦ったことのない勢力ってことになるね、注意していこう」
　香織は日本列島出身ではあるが、旅人であるため今の幻朧帝国の現状については詳しくないらしい。
「大事なのは『旅順要塞』だ。ここは堅牢な要塞でね。夥しい数の砲撃が常に飛び交っている。近づくには塹壕を掘り進めながら接近する必要があるだろうね」
　あるいは砲撃をものともしないなんらかの手段、例えばユーベルコードなどでゴリ押すか、だ。
「で、相手はそのゴリ押す方らしい」
　敵は『ゾウの重装傭兵団』。その重装甲を活かして、砲撃の支援を受けながら塹壕に向けて突入してくるらしい。
「過酷な戦いになると思うが、頑張っておくれ」
　そう言って、香織は猟兵達を送り出すのだった。

第1章 集団戦 『ゾウの重装傭兵団』

POW   :    拠点殲滅用兵装装着 自身と装備を【増加装甲および追加砲撃ユニット】で覆い、攻撃・防御をX倍、命中・回避・移動をX分の1にする。 SPD   :    突撃号令 【仲間への合図の鳴き声】によって【荒ぶる闘争本能】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。 WIZ   :    焼夷弾投擲 【火炎と爆風をばらまく特製の超重炸裂焼夷弾】を手または足で射出する。任意の箇所でレベル×1個に分裂でき、そこからレベルm半径内に降り注ぐ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「沢山の砲弾を逆に利用させてもらうよ、反抗の加護あり」
　そう言って塹壕を飛び出し、砲撃飛び交う危険地帯に飛び込むのはある日反抗の竜チタノに選ばれて反抗者になった猟兵の少女、ニクロム・チタノ（反抗者・f32208）だ。
「さあ反抗せよ」
　即座に発動するはユーベルコード『｜反抗地帯《チタノエリア》』。
　周囲の戦車やら戦闘機の残骸といった無機物がチタノの元に集まり、蒼焔の盾と重力槍へと変換されていく。
　周囲の無機物。そう言った。
　言うまでもないが、大砲の砲弾も無機物だ。
　故に。
　降り注ぐ無数の砲弾は全てチタノの蒼焔の盾と重力槍へと変換されていく。
「砲撃が通じてないぞ！」
「なら焼夷弾ならどうだ！」
　『ゾウの重装傭兵団』達が一斉にその重砲を構え、彼らが使うために特製された超重炸裂焼夷弾を発射する。
　だが、悲しいかな、それもまた無機物。やはりそれらも蒼焔の盾と重力槍へと変換されていくのであった。
「砲弾も焼夷弾も蒼焔の盾には通用しないよ」
　降り注ぐ無数の砲弾と焼夷弾を受け止めながら、チタノは堂々と宣言する。
「お前達が攻撃を止めない限り材料の無機物は無限に生まれる、つまりボクも無限の加護を授かるってわけさ」
「畜生！　理屈は分からんが、無尽蔵に防げるわけじゃないはずだ！　撃って撃って撃ちまくれ！」
　悲しいかな、『ゾウの重装傭兵団』には撃つ以外の対処法など持っていなかった。故に、彼らはただ通用しない攻撃をし続けるしかなかったのだ。
「今度はこっちの番だね」
　そう言うと、チタノの前方に展開されていた蒼焔の盾の配置が変化し、盾の隙間から重力槍が覗く。
「みんなはボクが護るから安心して塹壕を建設してね」
　チタノは優しく、背後で塹壕を掘る獣人達にそう言って声をかけて。
「因果応報、お前達の攻撃を重力槍に変えてお前に返してあげる」
　一斉に重力槍が放たれる。
　それは確実に塹壕へと迫る『ゾウの重装傭兵団』を貫通していき、その戦闘能力を完全に奪っていく。
「反抗開始だ、どうかこの圧政の世界に反抗の竜チタノの加護と導きを」
　もはや砲撃と近づいてくる『ゾウの重装傭兵団』に怯えながら塹壕を掘る時間は終わった。
　ここから先はチタノが塹壕を掘る作業を守りつつ、『ゾウの重装傭兵団』を撃退していく。
　だが、戦いはまだ、始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……なるほど……これだけの砲撃が飛び交っているとまともに近づくのはなかなか大変だね……」
　絶え間ない砲撃を前に、そう呟くのはガジェット研究者の一族として名高いプルモーサ家の次女、メンカル・プルモーサ（トリニティ・ウィッチ・f08301）だ。
「……塹壕……と言わずにトンネル作って接近した方が楽かなこれは……」
　幸い、砲撃と敵の接近は一時的に先の猟兵が留めてくれている。
　その間にメンカルが塹壕、否、トンネルを掘り進めることは可能だろう。
「数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
　発動するユーベルコードは『｜我が手に傅く万物の理《マテリアル・コントロール》』。
　メンカルの周囲に周囲一帯の無機物のリストのホロウィンドウのようなものが出現する。
　そのホロウィンドウに指を添えて操作すると、地面の座標が操作され、獣人達が掘り進めていた塹壕の続きがトンネルとなって出現し始める。
「す、すごい」
　思わず、塹壕を掘り進めていた獣人が叫ぶ。
　自分達が必死で少しずつ進めていた塹壕。それが砲撃対策により安全なトンネルが一瞬で出来たのだから、驚くのは自然なことだろう。
「さらに崩落しないようにトンネルの硬度も上げてついでに迷路化もしておこう……」
　そう言いながら、メンカルはトンネルを構成する無機物の硬度を上昇させつつ、ただ一直線のトンネルではなく、迷路を作り始める。
　ただのトンネルでは息が詰まってしまうため、空気穴を開ける。
　ついでにそのタイミングで、そこから情報収集・ハッキング用の自作精霊AI『自己判断型伝令術式【ヤタ】』を放ち、要塞の方向を再確認していく。
　地下におり、迷宮化したトンネルの中は方向を見失いやすい。定期的に要塞の方向を確認するのは大事なことだった。
　あとは隠し通路や落とし穴も作成し、接近する『ゾウの重装傭兵団』が内部に侵入してきた場合にも備える。
「場所が場所だけにまともに相手はしたくないからね……追いつかれる前に要塞内部に侵入してしまいたいね」
　閉所で重装甲の敵を相手するのは骨が折れる。今はまだ先の猟兵が押し留めてくれているはずだが、それにも限界があるかもしれない。
　メンカルは急いで、トンネルを掘り進めていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「うーん…ちまちま塹壕を掘るか、力技でいくか」
　作戦を聞き、呟くのは気ままに自由に生きるスペースノイドのメカニック、月夜・玲（頂の探究者・f01605）だ。
「塹壕掘りも、経験としては悪くない気もするけど……」
　塹壕は着実に延伸されており、それに加わるのも決して悪い選択肢ではない。
　だが。
「いや、やっぱり……力技だな！」
「穴掘るのは得意じゃ無いからなぁ……正面突破と行きますか！」
　その言葉に、何処かの世界で生まれ出でた死神の末子、ルァハイム・ラアル（殯の末子・f34505）が同意する。
「ヨシ！　敵も力技で来るならこっちも力技！　そうすれば、お互いイーブンの戦いだ！」
　その言葉に自分の判断にさらに自信を得た玲は、自身の得物『《RE》Incarnation』と『Blue Bird』を抜刀、その勢いのままに塹壕を飛び出し、ユーベルコードを発動する。
「雷龍融合……転身、プラズマドラグーン！」
　稲妻の龍と融合した姿へと変化し、飛来する無数の砲撃を素通りしつつ、雷鳴電撃を二本の剣に纏わせ、『ゾウの重装傭兵団』に一気に距離を詰める。
　ユーベルコード『｜Ex.Code《エクストラコード》｜:《・》｜A.《アヴァタール》｜P.《プラズマ》｜D《ドラグーン》』だ。
「これを」
「ありがとうございます、猟兵さん」
　一方、ルァハイムは神気を巡らせることで実体を与えた影『闇影』で作った盾を塹壕内の獣人に渡し、流れ弾へ備えさせる。
　そして、玲に続いて塹壕を飛び出し、ユーベルコードを発動する。
「この身は暗晦　この身は夜陰　総てを融かし均すもの」
　肉体の全てがあらゆるものを呑み込む不定形の闇へと変異していく。
　玲が素通りさせた無数の砲撃をルァハイムは全て飲み込み、範囲を拡大させていく。
　ユーベルコード『｜暁呑む夜《キ・クル》』だ。
　そうして、ルァハイムがその範囲を拡大している間に、玲は『ゾウの重装傭兵団』に雷鳴電撃を纏った剣で斬撃波を放って牽制しつつ肉薄。直接的な斬撃によって、『ゾウの重装傭兵団』の数を減らしていく。
「PAWOOOOOOOON！！」
　『ゾウの重装傭兵団』は突撃号令と呼ばれる合図の鳴き声を放ち、荒ぶる闘争本能を発生させ、味方の負傷を回復しながら再行動を試みるが。
「何回でも回復するなら、何度だって痺れさせてあげよう。こっちが粘り勝って厄介な旅順要塞は攻略させて貰うよ」
　玲の攻撃は止まらない。
「くそ、追加装備を展開しろ、それで応戦する！！」
　ならば、と『ゾウの重装傭兵団』は、増加装甲および追加砲撃ユニットを展開、今度は玲の攻撃を防御しつつ攻撃する姿勢に入る。
　その追加装備は所詮物理砲撃なので玲へ負傷を与えるには至らないが、逆に玲の側も硬い装甲に手を焼くようになる。
　だが、その追加装備による移動力の低下はあまりに致命的な自体を引き起こす。
　そう、『ゾウの重装傭兵団』の足元に黒い闇が忍び寄ってきたのだ。
　それは全てを飲み込む不定形の闇、即ち、姿を変じたルァハイムその人である。
「な、なんだこれは！？」
「の、飲み込まれる！？」
　慌てて、『ゾウの重装傭兵団』は黒い闇から逃れようと試みるが、移動力が低下した彼らにはそれは望めそうにない。
「あらゆるものを呑み込む闇だかんね、重装甲も何も関係ないよ？」
　緩いにいちゃんのような口調で軽く告げるルァハイム。それは実質彼らオブリビオンへの死刑宣告でもあった。
　今ここに、旅順要塞へ進む塹壕堀りを止めようとするオブリビオン達はひとまず殲滅されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月06日