獣人世界大戦④〜邪神の揺り籠
――だいじょうぶ、安心して。
ごーるでんういーくはまだまだつづくよ。
戦争とか仕事とか勉強とか、そういうのは一旦忘れて。
とりあえずぐっすりと、眠っておいたらいいんじゃないかな?
●睡魔の領域
ロシアの首都、サンクトペテルブルクを攻略するべく沖合お進む、クロックワーク・ヴィクトリアの新生「狂気艦隊」。迫り来るこれらを迎撃してほしいと、グリモア猟兵である高峰・勇人(再発性頭痛・f37719)は、一行にそう伝える。
普通ならば大規模な艦隊戦になるのだろうが、相手が相手だけに一筋縄ではいかない、というのが彼の話だ。
「新生「狂気艦隊」の船は強力な「UDCアースの邪神」の守護を受けている。通常の艦船ではとても太刀打ちできないだろう」
これを沈めるためには、まず艦隊に加護を与える邪神を探し出し、討伐する必要がある。
「そこで、お前達に向かってもらう艦隊を守護しているのは……どうやら怠惰を司るタイプの邪神のようだな」
守護された艦船を『視認する』、『レーダーで捉える』などすると、邪神のもたらす狂気がその者に伝播し、ものすごい眠気とサボりたい欲求に襲われるのだ。聞いた限りではどこか平和な能力にも思えるが、敵を目の前にした状況で眠ってしまえば、致命的な結果に繋がるのは目に見えている。
「邪神はこの艦隊のどこかの船に居る。周辺の艦隊を庇護下に置いている以上、邪神自体も外部から目視できる場所に居るだろう。邪神のもたらす狂気に耐えながら、これを探し出し、撃破してほしい」
狂気艦隊はこれまで通り「蒸気仕掛けの洋館がそのまま海上を進んでいるような、不気味な容貌」をしている。これの『甲板』というのも妙な話だが、とにかくそれに当たる場所を捜索することになるだろう。
「邪神さえ倒してしまえば、あとは後続の獣人達の艦隊に任せることができる――まあ逆に言うと、俺達が失敗すれば後続がそのツケを払うことになるわけだ。眠っていられないよな?」
からかうでもなく平坦な調子でそう続けて、勇人はグリモアを駆使し、現地への扉を開いた。
つじ
連休が終わるとか嘘ですよね?
こちらは一章構成の戦争シナリオになっております。第一戦線の締め切りまでの完結を目指しますので、よろしくお願いいたします。
●狂気艦隊
基本的にはオープニングの通りですが、そこかしこにふわふわの布団や暖かい寝袋、ハンモックなどが備えられています。がんばって耐えながら、目的の船を探し出して邪神を討伐してください。
各戦艦には蒸気人形達が配備されています。外部の敵への対策は邪神が担っているため、船の内部に攻め込むようなことをしない限り、彼等が出張ってくることはありません。
●プレイングボーナス
邪神のもたらす狂気に耐えて戦う。
今回の場合は五月病の超強化版みたいなものすごい眠気と、サボりたくなる欲求です。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしています。
第1章 ボス戦
『睡魔』
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POW : 貴方も段々眠くなる
【なんだか眠くなる波動 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 羊が一匹、羊が二匹
【極僅かでも、興味】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【レベル×10の匹数の、モフモフの羊達】から、高命中力の【強い眠気を催す波動】を飛ばす。
WIZ : あと5分
予め【起きるまでの時間を申告し起床を引き延ばす】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紫・藍
あやー。
これはなんといいまっすかー。
ある意味最凶っといいますか、時期補正も相まってかなりぶっ刺さる猟兵さんもいらっしゃるかと!
等と考えてる時点で藍ちゃんくんも興味持っちゃってますからねー!
羊さん達がぽこじゃかやってきてるのでっすが!
眠気波動をそのまま藍ちゃんくんの藍ドル魂とファンサービスで反射しちゃうのでっす!
道中もそうやって眠気を振り払ってきたのでっす!
自分の能力は効かない方とかもいらっしゃいますが、人一倍快眠しそうでっすしねー!
というか、怠惰の邪神さんがGW中に艦隊に加護を与えるというお仕事してるのはいかがなものかと。
サボっちゃって良いのではー?
子守唄も歌いますのでお休みなのでっすよー!
リダン・ムグルエギ
スヤァ
って寝落ち配信になっちゃう!
GOATiaの動画配信、邪神様を探せ、始まるわよー!
見つけた人に春の新作パジャマをプレゼント!
人って「遊ぶため」なら案外眠くなりにくいのよね
敵船を撮影し視聴者の皆様も含めた人海戦術&
自分は(アイテムの)エナドリがぶ飲み&裁縫用の針を痛いツボに添えて探すわ
発見後は邪神相手にレッツ宣伝タイム
「邪神様におススメなのがこちらのパジャマ!
眠っている時もフローラルな香りで幸せな気分に浸れます!
こちらの船でさぁ、マストバイ!
邪神様を他猟兵の射線が通る位置まで誘い出したり
なんと今なら…!等の声で動きを止め妨害を図るわ
ウチの世界
年中GWみたいなモノだから…微妙に響かないのよね
●ごーるでんういーく延長戦
「GOATiaの動画配信、邪神様を探せ、始まるわよー!」
ということで、また世界を股に掛けた動画配信がスタートする。リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が映し出したのは、サンクトペテルブルク沖を進む洋館の群れ、もとい狂気艦隊である。それらに対して加護を与えている邪神の居場所を、人海戦術で探し出そうという魂胆だ。
「見つけた人には、春の新作パジャマをプレゼント!」
人は遊ぶためならある程度の眠気は忘れられるもの、リダンは手元のエナジードリンクをがぶ呑みしつつカメラを回す。
しかしながら、配信の視聴者数の割にコメントの流れが遅い。動画越しとはいえ艦隊を視認したことで、邪神の影響を受けたのか、コメント欄には「もう寝ます」という報告や、「ASMRより効く」みたいな感想が散見された。
「あやー、一部ぶっ刺さってる方も居られますねー」
時期補正としてもこの邪神の呪いは利く。配信の様子を見た紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)のそんな言葉に、リダンは首を横に振って応じた。
「でもまあ、ウチの世界は年中GWみたいなモノだから……」
これでもきっとマシな方だ。まだ『健在』の視聴者と共に、クッションやお布団が多数並んだ船の様子を眺める。
「まー、こんなこと考えてる時点で藍ちゃんくん達も興味持っちゃってますからねー!」
「え?」
そこで、地響きならぬ揺れが、二人の乗った船を襲う。ぐらぐらと大きく船を傾かせたそれは、大量の蹄の音だった。
「こう、邪神さんの呼んだ羊さん達がぽこじゃかやってきてるのでっすが!」
「ああッ、ヒツジの数を数える配信になっちゃう!?」
現れた大量のヒツジ達は、モフモフの毛でこちらを取り囲みながら、謎の波動で眠気を引き出してくる。リダンは手のツボを裁縫用の針でつついて耐える。寝落ち配信だけは避ける構えだ。
そして一方の藍は、眠気に襲われたところをユーベルコードで迎え撃った。
「ファンサービスが! したくなってきたのでっす!!」
ヒツジの皆様集まってくれてありがとう、という感じで始まったライブが、眠気波動を弾き、跳ね返していく。
藍の子守歌で逆に倒れていくヒツジ達。そんな様子を撮影しつつ、リダンは周囲を順にカメラで探る。ヒツジの群ればかりが映っているようにも見えるが――しかしこの羊召喚で攻撃してきたと言うことは、邪神本人も近くに居るのでは?
眠い目をこすりながら周囲を見回すが、ヒツジの群れが邪魔で確証は得られない。
だが探し出すのが難しいのならば、自分から出てきてもらえば良いだろう。そう判断し、彼女は用意した特製のパジャマを見せつけるようにして掲げた。
「はい、邪神様におススメなのがこちらのパジャマ! 眠っている時もフローラルな香りで幸せな気分に浸れます!」
こちらの船でさぁ、マストバイ!
やたらとベッドやハンモックを並べている艦船の様子からして、邪神も良い寝具には食いつくはず。
「なんと今ならこちらのナイトキャップもおまけしちゃうわ!」
あとアイマスクなんかもどうかしら。通販番組のノリで並べられるそれらは、きっと相手の心を打って――。
『でもそれだとさあ、寝ちゃわない?』
あっホントに出てきた。群れ成すヒツジの一匹に乗っかっていた邪神が、のんびりとした調子で問いかける。
ここからどうしようかしら、と眠い頭を何とか回そうとするリダンに先んじて、藍がそこで前へと出た。
「というか、怠惰の邪神さんがGW中にお仕事してるのはいかがなものかと」
『そうかなあ』
「そうそう、もう寝ちゃいましょうよ」
「サボっちゃって良いのではー?」
藍の言葉にリダンも調子を合わせると、怠惰の邪神はぼんやりとした表情のまま頷いた。リダンの用意した寝間着をいそいそと着込んで、寝支度に入る。
『それじゃ、おやすみぃ』
これだと邪神を倒せてないような気がするが、戦闘不能という意味では合っているか。邪神がそうそう起きないレベルのガチ寝に入ったため、この辺りの艦隊の加護は、目的通り失われたという。
「お休みなのでっすよー!」
「睡眠導入系で宣伝してたら、もっと伸びたかしらね……」
藍の子守唄が流れる中、リダンは珍しく静かなコメント欄を眺めて、そう呟いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
うっ、おふとん、ふわふわ、もふもふ…ヴッ(誘惑が
とりあえず自力だけでどこまで抗えるか不安だし
艦船の視認がトリガーなら…
目瞑ったまま出ておいで、分身達
指定UC発動
分身達には聞き耳で僕の発する音を辿る形でついてきてもらい
どうしてもの時は僕だけを見て
万一僕が狂気に負けそうになったら思いっきりしばいてもらいます
いやあの、気絶はしない程度にお願いね…?
あとは念のためオーラ防御を纏いつつ空中戦
邪神から漏れているであろう魔力も探りつつ
空から各船の甲板?を捜索
邪神を発見したら
可愛い子攻撃するの可哀想だけど
そろそろお目覚めの時間だよ!
分身達の魔力も集めつつ高速詠唱で水魔法攻撃
頭、ちょっとは冷えた?
●おはよう
目的の敵艦隊に舞い降りると、遠目からでは予測も付かない光景に出くわすことになる。栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が目の当たりにしたのは、やたらと寝具やクッションに拘った、昼寝のためだけに用意されたような空間だった。
「うっ、おふとん、ふわふわ、もふもふ……ヴッ」
邪神の加護も相まって、襲い来る眠気の誘惑に澪が呻く。このままでは危ない、というわけで。
「目を瞑ったまま出ておいで、分身達」
ユーベルコードによって召喚されたのは、自らの姿を模した小型の分身達だ。わざわざ目を瞑らせているのは、目視によって邪神の齎す狂気に影響されないため。実際言う事を聞きそびれた何人かの分身が、そうそうに昼寝を始めている。
「僕が狂気に負けそうになったら、思いっきり起こしてね」
目を開けられなくても、分身達は聞き耳で何とかしてくれるだろう。
実際うとうとし始めた澪の気配を察して、分身達は「わーい」と無邪気に突っ込んできてくれた。
「いやあの、気絶しちゃったら意味ないから控えめにお願いね……?」
頼もしいことだが体当たりが割と痛い。というか眼を瞑ったまま突っ込んでくるから当たり所も怖いし。
そう言い聞かせながら空へと舞い上がり、澪は邪神から漏れているであろう魔力の痕跡も探りつつ、各船を見回っていく。
時折「起きてー」と突っ込んでくる分身をいなし、時に助けられながら、澪はついにそのハンモックに辿り着いた。
「ね、寝てる……」
『あと5分……5分したら起きるから……』
発見した邪神は、やはりというべきか完全に寝こけていた。全く起きる気のなさそうなことを言っているが、その間にも澪を襲う眠気はぐんぐん強くなってきている。
元々放っておける相手ではないが、眠る事で強化されるというのなら、なおさら叩き起こしてやるべきだろう。
「可愛い子攻撃するの可哀想だけど――」
分身達と協力し、彼等のもたらす魔力も乗せて、魔法で水を作り出す。
眠りに抗うのなら、効くのはやはり冷たい水だろう。もちろん、澪の生み出した奔流は、『顔を洗う』程度では済まないが。
「さあ、そろそろお目覚めの時間だよ!」
『ワーッ!?』
「頭、ちょっとは冷えた?」
抗う事を許さぬ濁流。心地良い寝床から押し流される形で、邪神が海へと落ちて行った。
大成功
🔵🔵🔵
シデル・ユーイング
何と恐ろしい敵ですか
眠気サボリ欲など365日常に発生しておりますとも
ですがその分日々抗い続けているのです
故にこんな誘惑など…くっ
あのハンモックで寝つつビール缶を開けられたら、どんなに…!
危ない危ない
一日のサボリで失う信頼は大きい
まして今回なれば信頼どころでは済みませんからね
次に来る連休のことを考えながら耐え甲板を探索します
これだけ安眠グッズがあるのですから
邪神自身も昼寝に良さそうな場所にいるのでは
日当たりの良い所、風通りの良い所など
発見したなら『貫徹』
「あと5分」で5分後に起きれた試しなどないのですよ
帰ったら慰労の缶ビールですね
…ふ、仕事があるからこそ
あの一杯は美味いのですよね
●次の祝日は二ヶ月後だってさ
艦隊を成す船は、その一つ一つが西洋建築の城か屋敷のような外観をしている。それが群れとなって海を渡る様は、その光景自体が狂気じみていた。
だが、それを護る邪神の力もまた強力なもの、敵対者には圧倒的な眠気、そしてサボりたいという欲求が齎されるのだ。
「何と恐ろしい敵でしょうか……」
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・f40878)にとってもその感覚は脅威……というか身に覚えがありすぎた。
平日、いや何なら休日にさえも感じるそれの恐ろしさはよくわかっている。だがそれはつまり、これまでずっと抗い続けてきたということでもある。
「ならば、こんな誘惑など――!」
くっ。最初の一歩、潮風にのんびりと揺れるハンモックを発見して、心が折れかける。横にビール缶が置かれていたら危なかったかもしれない。
邪神の齎す狂気に苛まれながらも、シデルは理性でそれに抗い続けた。
そう、サボることの甘美さはわかっているが、同時に一日の無断欠勤で失う信頼の大きさを思えばこそ。ましてや今回のような依頼でそれをやっては、信頼どころでは済まないかもしれないのだから。
「……こういう時は、次に来る連休のことを考えましょう」
恐らくは夏頃になるだろうか、休暇に思いを巡らせることで眠気から目を逸らして、船の中でも昼寝に向いた場所を探す。
これだけ安眠グッズがある以上、邪神もそれを使っているのでは、という推理からの行動だったが。
『うーん……もう食べられないよ』
ほどよい日当たりと風通しのそこで、邪神は気持ちよさそうに眠っていた。
『あと5分……』
よだれを垂らして寝言を吐く敵に対して、シデルはこめかみを押さえながら歩み寄る。
「――わかっていますよ、それで5分後に起きれた試しなどないのです」
時間経過に応じてどんどん戦闘力、というか齎す眠気が強化されているような気がするが、逆に言えばこの邪神はもう起きるつもりがないということでもある。ただ、今は襲い来る眠気に集中して――。
活路を開いたのは、仕事終わりのビールだった。
「仕事があるからこそ、あの一杯は美味いのですよね」
ふ、と笑って、シデルは引き抜いたボールペンを凶器代わりに、眠る邪神へと叩き込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
また欠伸
眠いのかい?サヨ
これも邪神の齎す狂気故か…
邪神の加護…畏れ入る
……。
もしかして邪神に屈するのかい?
その意気だ
昼寝は帰ってからたっぷりしよう
共にね
だから今は耐えるんだ
ホムラは既に寝ているし私も眠いが
面倒臭いなどと思ってはいけない
これも試練と気合いをいれて邪神を捜索する
私がうとうとしていたら平手打ちしてくれて構わないからね
面倒…面倒ではないが一つ一つ見よう
動いていれば眠気も減るよ
様子を見ているなら前方を見渡せる後方か…
見つけたならば即座に駆け神罰と呪詛と共に放つ、春暁ノ朱華!
羊を数えてはならない
兎に角
斬り払い危機を脱し
怠けは働いてこそ甘美なものとなる
仕事は然り成そう
…起きてるよ、サヨ
誘名・櫻宵
🌸神櫻
ふぁあ……なんだか眠くなってきたわね…
邪神の?そうかしら…昨夜夜更かししちゃったせいかも
ほら、最近ずっと季節の催しに備えてチョコ作ってたから
そのせい
偶にはゆっくりのんびり…む!邪神に屈するわけじゃないわ
邪神退治してから休息よ
…ホムラ…羨ましい
目星はついてる?
一つ一つって面倒ね…
司令塔になってる艦とか安全そうな所とかやたら眠くなる所とかにも居そうね
…何でそんなに私に平手打ちされたがるのよ
あの艦、怪しいわ
生命喰らう神罰と共に重ねる喰華
誘き出し斬り裂いて
美しい桜と咲かせて散らす
眠いけど邪神に屈するのは腹が立つから!
その意地で動く
春眠暁を覚えずっていうけれど
其れは今じゃないの
カムイ、起きてる?
●春の眠り
「ふぁあ……なんだか眠くなってきたわね……」
「サヨ、また欠伸かい?」
敵陣を前にして緊張感の無い誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)の様子に、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)が問う。しかしながらそれも仕方のないことだろう、攻め寄せる狂気艦隊、そこには特殊な護りが施されているのだから。
「これも邪神の齎す狂気故か……」
とても一括りにはできないものの、『神』として思うところがあるのか――敵ながら畏れ入る、と呟くカムイの表情に、櫻宵は「うーん」と首を傾げて見せた。
「……昨夜夜更かししちゃったせいかも。ほら、最近ずっと季節の催しに備えてチョコ作ってたから」
それはそれでどうなんだろう、という気はするが……今はちょっと、頭がぼんやりしてきているので。
「偶にはゆっくりのんびり……」
「もしかして邪神に屈するのかい?」
「……そういうわけじゃないわ」
さっさと邪神を退治して、それから休息しようと意気込む櫻宵の様子に、カムイは満足気に頷く。昼寝は帰ってからたっぷりしよう、それなら共に眠ることもできる、と応じて、改めて敵陣へと向き直った。
「だから今は耐えるんだ。……まあホムラは既に寝ているし、私も眠いが」
「ホムラ……」
羨ましい。焔色の小鳥が早々に、それも気持ちよさそうに寝入っているのが気を散らしてくるが、とにかく。
「目星はついてる?」
「今のところはまだ……一つ一つ確認していこう」
「一つ一つって面倒ね……」
艦隊の物量を思えば、先行きが思いやられる方法だ。しかしそれが一番確実というのもまた事実、櫻宵の声に、首を横に振ってカムイが諭す。
「面倒臭いなどと思ってはいけない。動いていれば眠気も減るよ」
そう、敵の思惑通りになってはまずい。これも試練と、気合を入れて挑まなくては。
「私がうとうとしていたら平手打ちしてくれて構わないからね」
「……何でそんなに私に平手打ちされたがるのよ」
どうやらカムイの方にも、邪神の影響は出ているらしい。とにかく、手当たり次第ながらも方針を立てて、眠気覚ましも兼ねてそれらを話合いながら、二人は敵船を調べていく。
「様子を見ているなら、前方を見渡せる後方か……」
「司令塔になってる艦とか、安全そうな所とか?」
艦隊を加護するというくらいなのだから、やはりそういった場所が定石だろう。しかしながら、と眠い目を擦りながら櫻宵は周りを見回す。
洋館じみた形をした船、ただでさえ変わった形のこれに、毛布やらクッションやらの寝具が加わり、この艦隊はかなり異様な外見に仕上がっている。こんなものを率いている者が、そこまで真面目に、勤勉に働いているものだろうか。
「あとは……そうね、眠るのに良さそうな場所とか?」
「……」
返事がない。曰く言い難い表情を浮かべたカムイの視線を追うと、そこには先程調べたのと同じ洋館型の船がある。だがその上の方、風通しの良さそうな中庭のベランダに、天幕が張られていた。
「……あの艦、怪しいわ」
何しろ昼寝に丁度良さそう。そんな予測を裏付けるように、邪神によるものだろう、ユーベルコードが発動した。
二人の抱いた興味の感情に応じて、ヒツジの大群が召喚される。
「何匹居るのかしら」
「サヨ、数えてはいけない」
こちらを取り囲もうと動くヒツジの群れをカムイの刃が斬り払う。開けた道を二人で駆け、続く一太刀は赫の一閃。神罰と呪詛を纏ったそれは、邪神が盾としたヒツジ達、そして彼の寝床を両断した。
『もう、さわがしいなあ』
邪神の欠伸がやたらとのんびりした調子に聞こえる。生き残りのヒツジ達からも謎の波動が発され、対抗する呪いとして二人に多大な眠気を齎した。
一瞬意識が飛びそうになるが――邪神に屈するのは業腹だと、その意志で以て櫻宵は思考を保つ。
ねむってしまえばいいのに。そんな邪神の声を跳ね除けて。
「怠けは働いてこそ甘美なものとなる」
先導するカムイの背を追い、彼の放つ力に重ねる。
「仕事は然り成そう」
「春眠暁を覚えずっていうけれど、其れは今じゃないの」
蠱惑の龍眼が、瞼に遮られることなく敵を捉え、縛る。斬撃が二つ、戦場に似合わぬ美しい桜が咲いて、潮風に散っていった。
「カムイ、起きてる?」
「……起きてるよ、サヨ」
波間に消える花弁を見送って、二人は互いを確認する。
これが寝落ちて見た夢でなければ、無事目的は達したはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵