コンタクト・コーデ
●ホウレンソウ
この場合、食物のことではない。
ホウ、報告。
レン、連絡。
ソウ、相談。
これらを合わせてホウレンソウ。
いわゆるビジネスマナー的なあれであるが、それは家族間においても適応されるものである。
人はコミュニケーションによって社会を作り上げる動物である。
ゴッドゲームオンライン上のノンプレイヤーキャラクターの間においても同様のコミュニティが築き上げられているというのはある種必然であっただろう。
故にヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)の妻たちは彼がいない間もノンプレイヤーキャラクターとしての業務をこなしながら、その連絡を受けた時、衝撃が走った。
『デスペラティオ・ヴァニタス取り戻すの、案外早いかもしれねえ』
そのメッセージは他ならぬヌグエンからのものであった。
騒然とする妻たち。
「なんで!?」
「この間無理しない的なこと言ってなかった!?」
「そんなすぐ来ることある!?」
「どんな状況なの、あっちは!?」
妻たちはあまりのことに一瞬絶句したが、すぐさま口々に声を上げる。
確かに彼は他世界の戦争……『獣人世界大戦』へと参加している。オブリビオンの一大攻勢であるから、当然危機に陥ることもあるだろう。
「それにしても早くない?!」
「敵って、そこまでなの!?」
混乱する妻たちは良くない想像に頭が回る。
だが、これは連絡である。
報告はあっては一大事であるから、まあいいだろう。報告がないっていうことはまだ、ということでもある。
「相談がないのよねぇ」
「この文面だと、もう決定事項じゃない。やらないっていう選択肢はないのかしら」
心配がにじみ出る。
言葉の端々からそれはもう。
なぜなら彼女たちには心配事がある。
仮に『デスペラティオ・ヴァニタス』を取り戻したあと、再び『ヌグエン』として元に戻る保証なんて何処にもない。
彼は大丈夫だと言うかもしれない。
俺様を誰だと思ってる、位は言いそうである。
「うわ、言いそう」
本当にそうである。
「でも、彼の意志に任せるしかないのよね」
自分たちができることは多くはない。けれど、それでもこの心配する心は否定されたくない。
確かに自分たちはノンプレイヤーキャラクターだ。
多くのことが制限されている。
それでも彼のことを思うことは止められない。
どんな状況でも、どんな姿でも。
やはりヌグエンはヌグエンなのだと彼女たちは思うのだ――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴