獣人世界大戦②~アウト・オブ・プレイス
●場違いな兵器
|巍巍《ぎぎ》たる山嶺が天を衝くアルプス山脈。
ワルシャワ条約機構を目指してゾルダートグラードが侵攻を続ける俗世を尻目に、雄大な光景は俗世から距離を保っている、ように思われた。
だが、よく見るとその光景には綻びが見えるはずだ。
この道は、この鉄道はどこに通じているのだろう?
この廃墟は何のために作られたのだろう?
昨日まで行軍していた兵士たちは、どこに消えたのだろう?
その答えは遥か地下深く、多くの者が想像すらしない場所にある。
それはあまりに巨大な地下空間。
巨大すぎて全貌は誰にも掴めぬ、無数の鋼鉄の兵士たちによって守護される地下城塞。
その名を、アルプス国家要塞と言った。
「獣人世界大戦のことはもう知ってるわね?
今回は、そのさなかの『アルプス国家要塞』に行ってもらいたいの」
クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)はホログラム映像で、獣人戦線の地図とアルプス国家要塞の模式図を展開する。
その予想領域は異常なほど巨大だ。
「ここはゾルダートグラードの何らかの『巨大戦力』のために存在していると思われるわ。
けど、現状でそれ以外のことは一切不明。
ただ、ここにクロムキャバリア産キャバリアが多数配備されていることが判明したわ」
その名は『グレイル』。
大量生産を前提に部品点数を削減することで、低コスト化と整備性の向上を果たした機体である。
武装はパイルバンカーを搭載したシールドと、グレネードランチャー付きのライフル。
また、戦術面では集団での一斉掃射や制圧戦などと得意としている。
有り体に言えば量産機だが、それはクロムキャバリアでの話。
技術レベルが劣る獣人戦線では、まさに|場違いな遺物《out-of-place artifacts》、オーパーツであると言える。
技術のみならず、運用ノウハウなども大きな影響を与えうる代物だ。
「勿論、純粋な戦力と見ても無視はできないわ。そこで、みんなには要塞に乗り込んで、ゾルダートグラード軍の編成したキャバリア部隊を撃破した上で、迅速に撤退してほしいの」
幸い、国家要塞の構造物は広大無比であるため、戦術的な制約は特にない。
大空洞部で機動戦や空中戦を行ってもよいし、逆に末端の迷宮に敵をおびき寄せることもできるだろう。
ただし、敵も集団戦闘を用いてくるため、その対処は重要だ。
「撤退までが依頼だから、よろしくね。というわけで、頑張ってきてちょうだい」
そう言って、クリスティーヌはグリモアを展開するのだった。
西野都
こんにちは、西野都です。
今回は獣人戦線で、クロムキャバリア産キャバリアとの戦闘をお送りします。
以下は本シナリオの注意点となります。
まず、戦争シナリオのため1章完結となります。
また、同様の理由で最低限の採用数でシナリオを回す予定です。
このため、プレイングをお返しする可能性があることをご容赦ください。
次にプレイングボーナスです。
本シナリオでは「キャバリアを用いた集団戦闘に対処する」ことで有利になります。
一方で、本文通り戦術的な制約は設けませんので、それ以外は自由にして頂いて大丈夫です。
それでは、楽しいプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『HL-T11ヘヴィタイフーンMk11』
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POW : RS180mmロケットランチャー
【180mmロケット弾】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : RS76.2mmオートキャノン
【貫通力が高い76.2mm速射砲弾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : EP-Sショルダーシールド&EP複合装甲
装備の【シールドと追加装甲による機体重量超過】ペナルティを無視できる。また、[シールドと追加装甲による機体重量超過]の合計に比例して、全装備の威力と防御力が強化される。
イラスト:ゴミー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【断章という名のお詫び】
今回、オープニング執筆時にブラウザバックした影響か、オープニング記述と実際のエネミーが異なっております。
(オープニング画像も同様です)
本編においては、エネミーは『HL-T11ヘヴィタイフーンMk11』となります。
これは西野の不手際によるものとなります。
申し訳ありませんでした。
神酒坂・恭二郎
嫌なもんだね
技術レベル差で押し込もうって戦術は
刀を一本だらりと下げて、敵機達に立ち塞がる
初手の一斉射撃に対し、当たる砲弾に対し風桜子を纏った刀を突き出して受け止め【見切り、ジャストガード、オーラ防御】。そして脱力でいなす【優しさ、受け流し】
初手後に、即風桜子の【残像】を引いて肉薄し乱戦に持ち込んでやろう
この辺りは銀河大戦でのデカブツ相手で慣れたもんだ
攻撃は敵機に張り付き、HEAT弾の要領で『石動」【鎧無視攻撃、衝撃波】で制御系か動力系をぶち抜きにいく
サイズ差を活かした立ち回りで、ここの戦力を削っていきたい
「伊達でスペース剣豪を名乗っちゃいないのさね」
「伝令! 無数の敵性存在が国家要塞内に現れました! 奴らは散開して我ら部隊を攻撃しつつあり!」
「猟兵か! 『新型』キャバリアを出せ! 戦力と被害を惜しむな!」
ゾルダートグラード軍の指揮官の命令一下、格納庫から無数のキャバリアが現れた。
赤いモノアイが不吉に光り、立て膝立ちの状態から次々と立ち上がったゾルダートグラード軍言うところの新型キャバリア『HL-T11ヘヴィタイフーンMk11』は、整備兵たちに見送られて戦場、すなわち要塞内部へと進撃していく。
「すげえ……。この出力、パンツァーキャバリアとは比べ物にならねえ」
ひとりのパイロットが、搭乗するヘヴィタイフーンに感嘆のため息を付く。
彼はつい先日まで重パンツァーキャバリア大隊に所属していたエリートであった。秘密施設付きとは言え、前線からは遠い場所に異動となったことに憤懣もあったが、それはこの機体を動かしたことで氷解していた。
彼は整備兵ほどの専門知識を持たなかったが、それでもこの機体が既存のパンツァーキャバリアと隔絶した技術の産物であることは理解できる。
ほぼ完全な人型、コンパクトでありながら重装甲機体にも匹敵する装甲、手持ち武器の高い火力。
おまけに直感的に機体を操れるインターフェイスと来れば、魅了されるのも無理はない。
「ですが、この機体ならほぼ無敵でしょうに。一体何と戦うって言うんです指揮官殿?」
機体に魅入られたエリートは、高揚する気持ちのまま指揮官へと問いかけた。
その言葉の端々には、無敵の機体に乗っているという侮りが見え隠れしている。
「それは……」
指揮官が言いかけた、その時であった。
「嫌なもんだね。技術レベル差で押し込もうって戦術は」
キャバリアの前方。アルプス国家要塞の巨大構造体、通称大空洞の片隅に立っていた神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は、キャバリア部隊の進軍を見ながら、そうひとりごちた。
恭二郎は、スペースシップワールド出身のスペース剣豪である。
刀一振りを携えて宇宙船を、そして異世界を渡り歩いてきた彼にとって、渡世とは脅威との相克と言える。
それは時に銀河帝国の軍勢だったり、たちの悪いゴロツキだったり、あるいは宇宙その他の環境そのものであったりもしたが、不思議とそれらは真剣勝負という枠に入っていた。
それは生存を賭けた衝突であり、上も下もない対決だったからだ。
だが、あのキャバリアの運用思想には違うものを感じる。それは、クロムキャバリア世界の技術力によって敵手を踏み潰そうという「上と下」を作る考え方。
言わば圧倒的な暴力による蹂躙。それを恭二郎は潔しとしなかったのだ。
「奴が敵性存在、猟兵だ! 見てくれに騙されるな、撃て撃て撃て!」
ゾルダートグラード軍指揮官の号令一下、麾下のヘヴィタイフーンが一斉にロケットランチャーを構え、180mmロケット弾を一斉に放った。
多数の機体により、要塞の損壊も構わずに放たれたロケット弾は、不可避の弾幕となって恭二郎に殺到する。
猟兵と言えど、彼が纏うのはネビュラ着流しのみ。
当たれば、いや当たらなくとも爆風で恭二郎は粉々に吹き飛ぶ。
そう思われたのだが。
その時、裂帛の気合とともに、彼のだらりと下げた刀が光の、いや|風桜子《フォース》の爆発を放った。
それを纏った刀を、砲弾へと向けて神速を持って突き出す。
恭二郎の肉体は風桜子の奔流に包まれ、それに触れようとしたロケット弾は目的を果たすことなく次々と爆発四散。
それでも掻い潜ってきた数発は、力を抜いて受け流す。
爆発の花が周囲を彩るが、それだけだった。
ネビュラ着流しをはためかせる恭二郎は無傷。無傷である。
一連の光景を目の当たりにした指揮官は血の気の引く音を確かに聞いた。
これを幼女総統ギガンティックには報告できぬ。すれば自分の首が飛ぶ。
ならば何が何でもやるしかない……!
「弾幕を絶やすな! こんな手品は長くは続かん!」
一瞬呆然としかけたキャバリア部隊が再びロケット弾を射出する。
「果たしてそうかな」
恭二郎はコンクリートの床を力いっぱい踏み込むと、キャバリアの軍勢へと駆け出した。
その身が風桜子によって残像を形作り、敵の狙いを撹乱する。
「この辺りは銀河大戦でのデカブツ相手で慣れたもんだ」
気づけば、一機のヘヴィタイフーンの目前まで迫っていた。
装甲の隙間に手を入れ、彼は愛刀である『銀河一文字』を風桜子を螺旋状に纏わせる。
そして、全身のバネをもって、その一刀を敵へと突き入れる!
「神酒坂風桜子一刀流陰太刀……石動……ってなもんかね」
恭二郎の膂力と風桜子によって発生した超高圧は、|HEAT《成形炸薬》弾と同様の現象を発生させた。
すなわち装甲の液状化と超高速噴流化である。
動力系に超高速で吹き出した装甲の成れの果てを受けたキャバリアは、動力を喪失し擱座。
そして完全に倒れてしまう寸前に機体から離れた恭二郎は、敵の目の届きにくい足元を疾駆し、次の目標へと向かうのであった。
ややあって。
「伊達でスペース剣豪を名乗っちゃいないのさね」
全滅したキャバリア部隊を背に向け、恭二郎はアルプス国家要塞から歩き去った。
大成功
🔵🔵🔵
カグヤ・アルトニウス
○こっちはSSW製です
構造物を見て良くもまあこんなモノを作った物かと…感心してもいられないですが、頑張って制圧しましょうか
(乗機)
ホワイト・レクイエム
(行動)
ここは…情報と火力ですね
まずは、UCを起動してソードオブビクトリーの内5基のビットモードと両手のソードモード(空中戦+双剣使い)を駆使して障害を排除しつつ構造物の天井のフレーム内に移動
そこから見下ろす様にGOKUによる電子戦(ハッキング+ジャミング)でセンサー類をダウンさせて一時的に無力化
止めはトゥインクル・スターのゲートから炸裂型エネルギー砲(一斉射撃+制圧射撃)の援護下の超小型光子ミサイル(誘導弾+範囲攻撃)で蹴散らしていきます
「良くもまあこんなモノを作った物かと……」
カグヤ・アルトニウス(とある辺境の|私掠宇宙海賊《プライベーティア》・f04065)は、自身を取り囲むコンクリートの構造物……アルプス国家要塞に目をやってため息を付いた。
アルプス山脈の地底深くに存在する、猟兵でもその全貌を把握しきれない巨大地底要塞。
獣人戦線の技術レベルを考えれば、その建造は困難を極めたはずだ。
たとえオブリビオンの力を鑑みても、それはまさしく偉業であろうと思う。
惜しいのは、この要塞がオブリビオンの悪事に利用されているという、その一点であった。
と、そこでカグヤは我に返る。
「……感心してもいられないですが、頑張って制圧しましょうか」
彼は、要塞建造物に向けていた視線を、道の奥へと向ける。
無数の足音を立てながら、赤いモノアイの不吉な輝きたちが迫りつつあった。
「猟兵のキャバリアだ! 行け行け行け行け!」
「我らの機体も最新式だ! 負ける道理はないぞ!」
ゾルダートグラード軍に配備された、クロムキャバリア製キャバリア『HL-T11ヘヴィタイフーンMk11』たちが、カグヤと愛機ホワイト・レクイエムに向けて76.2mm速射砲弾の飽和射撃を開始した。
機体への慣れがまだ不十分なのか、命中弾こそないが、たちまち周囲をコンクリートの破片と火花の花園へと変えてしまう。
だが、カグヤは慌てることなくコクピットから戦況を見据える。
その裏では、戦場の無数のファクターが代入されており……。
「多次元確率変動演算完了……現実反映開始。次元を超えたインチキここに罷り通ります」
計算完了。
カグヤのユーベルコード【ダイダロス・ウルトラマニューバー】がここに発動した。
その効果は……すぐに分かることとなる。
戦塵を突っ切って、3機のヘヴィタイフーンが突撃してきたのである。
ライフルを槍のように構えるキャバリアたちに対し、カグヤはホワイト・レクイエムに係留される念動兵装ソードオブビクトリー計7振りの固定を解除。うち2振りを両手に取る。
残りの5振りは、ビットモードで背後に浮かび上がったと思うと、空を切って先頭の1機に襲いかかった。
「な、なんだこれっ……うわぁぁぁぁっ!」
右足。左腕。右腕、左足。
飛びかかったソードオブビクトリーは、まるで紙のようにキャバリアの装甲を寸断。
その両手両足を切り落として戦闘不能状態に陥れた。
ソードオブビクトリー単体の切れ味ではこうは行かない。【ダイダロス・ウルトラマニューバー】の演算によって導き出された結果を現実に反映することで、事実上装甲強度を無視する斬撃を放つことができたのだ。
残された胴体が床面に落ちるよりも早く、ホワイト・レクイエムは爆発的な推力をもって残った2機へと急接近。双剣としたソードオブビクトリーを振りかぶる。
横振り2撃、次に縦振り2撃。
後続の2機は、立て続けに先行機の後を追うこととなった。
ガシャンと音を立てて機体が崩れ落ちるのを見届けることなく。
「ここは……情報と火力ですね」
カグヤは国家要塞の大空洞へと愛機を跳躍させる。その視線が向くのは空洞の天井。
国家要塞のこの区域の天井には、縦横に金属製のフレームが走っている。その強度はキャバリアが乗れる程度にはあり、カグヤはその上へとホワイト・レクイエムを降り立たせた。
敵はまだカグヤが頭上へ移動したことに気づいていない。
それを見届けると、コクピット内で彼の横をふよふよと浮遊している猿のぬいぐるみ……否、猿型汎用電脳ユニット『GOKU』に命じた。
「電子戦、頼みますよ」
その言葉と同時に、眼下のキャバリアたちのコクピット内で計器類が沈黙した。
「何だ!? 前も計器も何も見えない!」
GOKUによる電子戦によって、ディスプレイ表示がすべて消失したのである。
アナログ計器だらけのパンツァーキャバリアであればこうは行かなかっただろう。
言わば『新型』の落とし穴を突いた格好である。
そして。
「次は、火力です」
カグヤは機動兵装システム『トゥインクル・スター』から超空間ゲートを展開させた。
そのゲートの向こうから現れたのは……何門もの炸裂型エネルギー砲の砲身。
その全てが一斉にエネルギーを吐き出した。
この時、一部のパイロットがハッチを開けて目視で機体を動かしつつあった。
だが、それによる反撃の試みはこの一斉砲撃によって制止を余儀なくされたのである。
それは僅かな間であったが、カグヤにはそれで十分だった。
「とどめです。超小型光子ミサイル、発射」
超空間ゲートから、今度は無数のミサイルが発射された。
動きを止めていたキャバリアたちに回避する術はなく。
「幼女総統ギガンティック万歳っ……!」
ミサイルの雨を浴びせられたキャバリア部隊は、こうして全滅したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼静
成る程…強襲作戦か
アレの性能が本来の世界とどれ程違うのかは気になるが
骨董品という訳ではなさそうだ
まあ、量産機は嫌いではない(専用機は浪漫だが)
地下に長居は無用だが…借りてる量産品の剣も限界が近い
何か代わりの武器の補充が出来ればいいんだが…
▼動
ニルヴァーナを使い機動力を活かした攻撃を。
攪乱しつつ敵の同士討ちを狙えるよう空中戦と地上戦を織り交ぜ
早業で切断攻撃をしながら高速移動を行う
他の猟兵や戦況を冷静に分析し折を見てUCで敵の掃討を図る
長物を装備した敵や倉庫があれば武器を投げ捨て強奪を繰り返す
ふむ…銃火器が主か
欲を言えば刀剣が欲しい所だが、こんなものでも無いよりマシか…?
アレンジ可
長物は自由に
「成る程……強襲作戦か」
アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は、作戦を振り返りながらひとりごちた。
今回の戦いの難点は、アルプス国家要塞の奥に何が控えているか分からないことである。
想定されている巨大戦力は勿論のこと、予備兵力が大量に配備されているかもしれない。
そういったものとの遭遇を避け、効率的に敵戦力を削るための強襲作戦なのだ。
「アレの性能が本来の世界とどれ程違うのかは気になるが、骨董品という訳ではなさそうだ」
想定される敵はクロムキャバリア製の『ヘヴィタイフーン』と呼ばれる量産機。
クロムキャバリアの戦場に登場してからそれなりの年数が経過した機種だが、総合性能や整備性に関しては、ゾルダートグラード軍に広く配備されているパンツァーキャバリアに比しても高い部類に属する。
この機種が選ばれたのは、獣人戦線の整備兵たちにも扱いやすいと考えられてのことなのかもしれない。
専用機の浪漫を感じつつ、量産機も決して嫌っていないアネットは、そのチョイスを少しだけ好ましく思った。
暫しの後、アルプス国家要塞にアネットと乗機『剣の騎神【ニルヴァーナ】』の姿があった。
「地下に長居は無用だが……借りてる量産品の剣も限界が近い。
何か代わりの武器の補充が出来ればいいんだが……」
アネットの搭乗する機体、ニルヴァーナの装備は白兵武器のみである。
だが現在装備している剣は幾度の戦闘を経て劣化していた。
これからの戦いには心もとない。
彼がこの戦いに臨む理由の一つは、予備武器を調達するという意味合いもあった。
そう思いながら、彼は隣接区画への隔壁を開く。
ここまでの区画は国家要塞全体から見ると浅いせいか、敵どころか補給物資の類も一切見当たらなかったが……。
「どうやら当たりのようだが……既に気づかれているようだな」
その区画には、ゾルダートグラード軍のエンブレムを付けたキャバリアが陣形を整え、何機も展開していた。
どうやら待ち構えていたようだ。
アネットは敵の構成を確認する。
機体構成は事前情報通りのヘヴィタイフーン。
手に手にミサイルランチャーやオートキャノンを握り、こちらに向けて構えている。
「ふむ……銃火器が主か。欲を言えば刀剣が欲しい所だが……」
アネットがそう呟きながら周囲を確認したところ、1機のキャバリアが目に入った。
そのキャバリアが手にしているのは、巨大な騎兵用サーベルであった。
拵えは、それを手にする機体に比すると妙に儀礼的かつ装飾的であり、恐らく機体本来のオプションではなく、獣人戦線の技術をもって鍛造されたものであろうと思われた。
よく見れば、頭部に|鉄兜《フリッツヘルム》状の追加装甲が施されている。
高級指揮官用に誂えられた機体なのだろう。
「こんなものでも無いよりマシか……?」
アネットはニルヴァーナを駆けさせた。
一歩脚部を踏み出す度に速度が増し、三歩踏み出す頃にはもはや縮地。
相対する敵キャバリアは反対の手に構えたロケットランチャーを発射するが、その蜘蛛の糸を思わせる軌跡をアネットは巧みに掻い潜る。
その速度はまさに雷光。
一瞬の後、黒い機体は敵の眼前へと迫っていた。そして、銀光一閃。
敵パイロットがあっと思う暇もなく、そのキャバリアが手にしていたサーベルは宙に舞っていた。床のコンクリートに突き刺さろうとする寸前、弓手で柄を正確に掴み、その勢いのままサーベルを振り下ろす。
落下の運動エネルギーを乗せた一撃は容易く機体を鎧う複合装甲を切り裂き、銀光が消えるとともに、片腕を失った機体はどうと倒れ伏した。
一瞬のことに凍りついていた敵軍であったが、その音で我に返ったようだ。
アネットの駆るニルヴァーナに向けて銃撃及び砲撃を開始する。
だが、銃弾砲弾が放たれたその瞬間、ニルヴァーナの機影は跳躍し、敵軍機体の頭上にあった。
既に限界に達していた剣を先頭の機体に放る。
剣は狙い過たずその機体の頭部に突き刺さり、串刺しになったまま崩折れた。また一機同僚を失ったキャバリア部隊はそれでも士気を崩壊させることはなく、必死で銃口で機影を追おうとしていた。
しかし、既に着地していたニルヴァーナはサーベルを利き手に持ち替えており。
「練度は悪くないが……それでも遅い。【弐式・流水戟】」
名の通り、流水を思わせる高速かつ流れるような剣戟の一撃。
敵軍は次なるマズルフラッシュを煌めかせることなく、全て倒れ伏すのだった。
一息つき、アネットは新たな得物であるサーベルの刀身をかざし、目をやる。
それなりの酷使をしたはずだが、刀身は歪んでも毀たれてもいなかった。
どうやら獣人戦線の冶金技術の粋を集めた一振りらしい。
アネットは僅かに笑みを浮かべた。
「ふむ、思ったよりは悪くない。暫く使わせてもらうとするか」
サーベルが基地の照明を反射してきらり、と光った。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※愛機搭乗
噂のヘヴィタイフーン上位機種ってコレか
確かに量産機としては上等だと思うよ?
Pzキャバリアより技術的に数段精緻だしね
でもパイロットの腕は『彼』に到底及ばない
※『百合の花散らす狂風を断て』2章を想起
装甲性能で何処まで凌げるかな?
オペ151番【ドレッド・シフト】開始
【Q・レーン/アダマンタイト】の大出力で電脳魔術展開っ
天井に設定した仮の軌道から
誘導能力付の光弾が毎秒151発降り注ぎ
着弾した敵機を1m程ゴソッと抉り取る
151秒の驟雨で集団戦に対応さ♪
【カイルス】が示す座標へ《瞬間思考力》で誘導
敵機の手足を削って戦闘能力を徹底的に潰すよ
逃れても【ユーディット】で足止めして次でドボン♪
その日、アルプス国家要塞浅層023エリアは震撼した。
胃の腑を震わす轟音と振動とともに突如天井が崩落したのである。
猟兵を迎撃すべく配備されていたキャバリア部隊は、ある意味当然のことながら一瞬狼狽した。
しかし、瞬時に立ち直り、部隊の被害を収めるべく後退したのは称えられるべきことであろう。
だが、それ故に落下物については対応が遅れた。
巨大な何かが空の見える崩落部位から、キャバリアの退避した地点へと落ちたのである。
もうもうと舞い上がる粉塵の中、キャバリア部隊は敵の動きを見逃すまいと目を凝らす。
そのサイズは、キャバリア大……いや、微かにジェネレーターの唸りのようなものが聞こえてくる。
これは……キャバリアそのものだ!
「噂のヘヴィタイフーン上位機種ってコレか」
落下したキャバリア、『ナインス・ライン』に搭乗したリーゼロッテ・ローデンヴァルト(|KKS《かわいくかしこくセクシーなリリー先生》・f30386)は、自らを取り囲むキャバリアの機種を見通してそう言った。
HL-T11 ヘヴィタイフーンMk11。
テンペスト社が生産する「ヘヴィタイフーン」シリーズの最新機種である。
他機種に比べると機動性は低いが、度重なるアップデートにより生存性と高火力を両立することに成功しており、また機器的な信頼性も高い。
「確かに量産機としては上等だと思うよ?
パンツァーキャバリアより技術的に数段精緻だしね」
だが、圧倒的多数のヘヴィタイフーンに囲まれている形のリーゼロッテは肩を竦める。
同時に、恐れるに足らずと言わんばかりに、口元ににんまりと笑みを浮かべた。
「でもパイロットの腕は『彼』に到底及ばない」
リーゼロッテの脳裏に、戦友とも言えるあるパイロットの顔が浮かぶ。
彼は相対しているヘヴィタイフーンMk11、その1世代前であるMkXの乗り手だが、リーゼロッテにとっては新型を駆るゾルダートグラードの兵士たちよりも『彼』と相対する方が余程恐ろしい、そう思わせるほどの相手である。
(これから切る手も、『彼』ならばきっと対応してくるだろうね)
リーゼロッテには確信があった。逆に言えば、そうでないならば使えるものだ。
機体に搭載された模造宝珠『クイーンズ・レーン』と、サブジェネレータ『アダマンタイト』が唸りを上げ、リーゼロッテの行う戦術のための電力を紡ぎ出す。
「電脳魔術展開、オペ151番【ドレッド・シフト】開始」
機体のストレージの大部分が、電脳魔術のために占有された。
「クイーンズ・レーン、プロテクト解除。コード[DS]を励起」
リーゼロッテは|コマンド《詠唱》を出力。
それとともに、彼女の用意された『本命』は展開されていく。
一撃必殺、いや一撃必滅は間違いないところだ。
だが、その自信とは裏腹に、リーゼロッテは機体をバックジャンプさせた。
敵軍には、粉塵の中の機影がふっと消えたように見えただろう。
「消えた……いや逃げたな! 追え!」
即座にリーゼロッテ機が逃げたことを看破した指揮官が檄を発した。
ほぼ同時に部隊の全機が追跡態勢に入り、キャバリアが殺到する。
鈍足の機体ではあるが、指揮官の決断と兵士の命令受諾の早さから驚くほどその初動は早かった。
先頭の機体はナインス・ラインの装甲に手が届きそうなぐらいだ。
しかし、その動きは『事象推論型トゥルース・サイト『カイルス』』によって予知されていた。
リーゼロッテの突然の遁走とも取れる動きも、その演算結果に基づくものだ。
無論、『本命』を用意するための演算もそのまま続いていた。
《サテライト・ディスラプター、仮想構築》
機体の合成音声が、その演算も終わったことを告げる。
自らに殺到する敵、そして『本命』の攻撃範囲が重なると同時に、リーゼロッテはにやりと笑みを浮かべた。
「んじゃイクよ、精々ビビりな♪」
その声と同時に、殺到していたキャバリア部隊の先頭機体の腕が、消えた。
たちまちバランスを崩して機体は転倒。それに一瞬遅れて、残った腕部と脚部にどこからか現れた光弾が殺到し、その機体はコクピットのみの鉄屑と化した。
「何だ!? 何が起こった!」
「隊長! 空です、空から光の弾が!」
刹那、リーゼロッテが穴を開けた国家要塞の天井から、無数の光弾が降り注ぐ。
敵砲撃の射線上にいることを直感した敵部隊は即座に後退を決断したが、光弾は物理的にはあり得ざる、射線という概念を無視した歪んだ軌道を描き、後退する敵機へと襲いかかる。
ある機体は運動エネルギーを保ったまま両手両足が消滅し、胴体が壁面まで転がっていった。
またある機体は光弾を撃墜しようとし、得物ごと腕が消し飛んだ。
遮蔽を取った機体に至っては、遮蔽を回避した光弾に後ろから撃ち抜かれた。
この阿鼻叫喚の光景を作り出したのが、ユーベルコード【ドレッド・シフト】である。
軌道上に光弾を放つ巨砲を仮想的に構築し、命中した敵を消滅させるものだが、実は今回はその砲も仮想的に天井に構築していた。
つまり、リーゼロッテ機が天井をぶち抜いたのはユーベルコードの発動には関係ないのだが、敵の正常な判断力を奪い、選択肢を狭めるための演出として、あえて彼女はこれを強行した。
そして、それは図に当たり、リーゼロッテの偽りの逃走に皆が乗る結果となったのだ。
「やれやれ、『ユーディット』も抜かせてもらえないなんてね」
不発に終わったキャバリア用重力砲を手持ち無沙汰にして、リーゼロッテはため息をついた。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
オーパーツにはオーパーツを、数には数を。ってなわけで空亡を機動。
|『夜行さん』《幽霊キャバリア》一機につき百体の|ドローンスウォーム兵器『百鬼夜行』《AI操作の無人キャバリア》の軍勢で強襲するわ。
しかも、これらには|自動修復魔術《回復力、継戦能力》と|高速化魔術《高速詠唱早業先制攻撃》に|防御魔術《鉄壁結界術》を施してあるわ。
では、蹂躙せよ。
で、頃合いを見て全機|自爆《爆破、爆撃》させた後に空亡で戦線を離脱して撤退よ。パイロットが幽霊だからこそできる荒業よね。
「獣人戦線にクロムキャバリア製キャバリア、それは確かにオーパーツね」
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は、無邪気な――彼女を知る者は絶対に首を縦に振ることはないだろうが――声を発した。
それはともかく、確かにクロムキャバリアで作られたキャバリアは、この獣人戦線にとってはオーパーツであろう。
使用技術、運用思想、全てが獣人戦線にとって未知かつ高レベルなもの。
真っ当に解析が進めば、軍用のみならず民間にも絶大な影響を及ぼしうる代物だ。
そして、そうでなくても運用法と兵站が整えば、戦場の趨勢を左右しうるだろう。
最大限控えめに言ってもバランスブレイカー、そうしたものがこの国家要塞に集っている。
だが、相対する者もオーパーツを用いるならば、どうだろう。
それは、どちらがより理不尽かを競う戦いになるのではないだろうか……。
「そう、オーパーツにはオーパーツを」
同時刻。アルプス国家要塞に駐屯するキャバリア部隊に、出動の命令が下っていた。
「外部への出撃だと? 下手な行動はこちらの秘匿を破ることになるぞ」
指揮官は電話の受話器を持ちながら、通話相手をドスの利いた声で牽制する。
これまで、アルプス国家要塞は猟兵の未来予知にすら引っかかっていなかった。
その一因が徹底した情報の秘匿であり、駐屯するキャバリアの用途のひとつが、そうした秘匿状態を破ろうとする敵軍の密やかな殲滅にあった。
無論、それは仕損じれば秘匿を破ることにも繋がるため、指揮官はそれに極めて慎重であった。
「構わん。猟兵が攻めてきたのは秘匿が破れたということだ。ならば我々にはより弾力的な判断が求められる。
そうではないかね?」
電話の向こうの高級指揮官は、もはや秘匿には構っていられないという態度であった。
秘匿という枷が外れれば、より積極的な軍事力行使もできる。
そして猟兵をそのテストケースの標的にせよ、と言外に告げているのだ。
暫し考え込み、指揮官はそれを受諾することにした。受話器を置く。
「我が麾下に告げる! 第13出撃口より全機をもって出撃、接近する猟兵戦力を撃破せよ!」
その命令を受け、アルプス山中に設けられた出撃口、その内部に備えられた火薬式カタパルトから、次々とキャバリアが射出された。その背には滑空用の簡易的なフライトユニットが設けられ、長距離の移動を可能としている。
そうして出撃したクロムキャバリア製キャバリア、その総数、実に1個中隊、13機。
「メテオール12からメテオール1へ。敵戦力確認! ……これは!?」
「どうした、報告を続けろメテオール11!」
「は、はい! 敵戦力は……空中都市です!」
「そう、これがわたしの【空亡】。まさにオーパーツね」
飛来しつつあるゾルダートグラード軍のキャバリアに視線を向けて、天空決戦都市『空亡』の|艦橋《アイランド》の上に腰掛けながら、アリスは言った。
ユーベルコードの名称でもある『空亡』は、アリスが操る空中都市であり、宇宙空母である。
その威容は、百戦錬磨のゾルダートグラード軍すら二の足を踏ませるものであるが。
空母と言うからには、当然艦載機も存在している。
「そして、数には数を。百鬼夜行の銘が伊達ではないことを示しなさい」
アリスの命とともに、艦体に装備されたカタパルトから、次々と艦載機たる『夜行さん』が射出される。
その正体は、幽霊の駆るキャバリアだ。
幽霊であるが故に、物理的な手段ではパイロットの無力化はできないし、止まらない。
更に、彼らは『百鬼夜行』と呼ばれるAI制御の無人キャバリアの親機でもあった。
その制御可能数、夜行さん1機あたり実に100機。
夜行さんの配備数が750機を超えることから、百鬼夜行の総数、実に75000機超。
相手をするのが馬鹿馬鹿しくなるほどの戦力差であった。
その戦力を擁するアリスは、無慈悲に告げた。
「では、蹂躙せよ」
物言わぬ百鬼夜行の進軍が始まった。
「な、なんだこいつら!」
「総員発砲開始! 火力を集中して第1陣を無力化する!」
絶望的な戦力差に対し、ゾルダートグラード軍の対応は真摯であった。
その戦術は、一言で言えば撤退戦。
まず、持てる火力を集中して敵の第一陣を退けた後で、各機でフライトユニットを破棄。
地上に降下し、遮蔽物を駆使しながら要塞への撤退を図るというものである。
教科書にも戦訓にも叶う指揮だろう……通常ならば。
だが、あまりに相手が悪すぎた。
「命中! 撃墜……してない!? 嘘だろ、さっき吹っ飛ばした腕が生えやがった!」
「くそっ、攻撃が当たらん! ロッテで追い込んでも回避する!」
「敵、防壁を展開! ロケットランチャーを全弾受けきって無傷!」
夜行さん及び百鬼夜行には、アリスの手で自動修復魔術、高速化魔術、防御魔術がかけられていた。
こうして現出するのが先程の通信の阿鼻叫喚である。
当たらない、当たっても防がれるか再生されるのだ。敵手にとってはまさに悪夢である。
そして。
「それじゃ全機自爆。ばぁん」
戦線に浸透した夜行さん及び百鬼夜行が、一斉に爆発四散した。
「こ、こんな巫山戯たっ……!」
最後の通信は、驚愕と絶望に満ちたものであった。
何せ、自分たちを蹂躙していた軍勢の実態が爆弾だったのだから、そうもなるだろう。
かくして、界渡りのキャバリアたちは空の藻屑と化したのである。
「うーん、理不尽。パイロットが幽霊だからこそできる荒業よね」
『空亡』を後退させながら、一番の理不尽であるアリスはくすくすと笑うのだった。
大成功
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