獣人世界大戦③~アリクイです。あなたの夫を殺します
●
まだ夜が明けたばかりの薄暗い一本道に、ザクザクと規則正しい軍靴の音が響き渡る。その不気味な足音の正体は、ワルシャワ条約機構領・モスクワへ向かってまっすぐに前進する、獣人兵の一団であった。彼らはドイツを本土とする超大国・ゾルダートグラードが送り込んだ、改造オブリビオン歩兵部隊だ。
「…………」
コーヒー豆のようなつぶらな瞳に、ホースのような長い鼻。そして時折、細くとがった口から細い舌がちろちろと飛び出す。彼らは皆、アリクイの獣人なのである。ふさふさの体毛に覆われ、ずんぐりしたフォルムはどこかある種の愛嬌を醸し出しているが、そこは鍛え抜かれたプロの戦闘員。彼らは上官の命に従い、ワルシャワ条約機構の兵士を躊躇うことなく殺めるであろう。特に、故郷で妻や恋人が帰りを待っているような、幸せ者は……。
「やあ、よく来てくれたね。どうやら獣人戦線の世界が大変なことになっているようだ」
ある日のグリモアベース。集まってきた猟兵を出迎えたガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、手中のグリモアから情報を抽出しつつ、彼らに語りかける。
「ダークセイヴァーの五卿六眼のひとり『始祖人狼』が、獣人戦線へ渡ったことは知っているかな。その始祖人狼が、遂に『はじまりの猟兵』に関する手掛かりを掴んだらしい。そしてそれに呼応して、世界各地のオブリビオン超大国が一斉に動き出したんだ。ユーラシア大陸全土を巻き込んだ、世界大戦の始まりというわけさ」
始祖人狼が治めるワルシャワ条約機構に積極的な攻撃を仕掛けているのが、ドイツを本土とする超大国『ゾルダートグラード』である。ロシア西部の都市モスクワでは、現在双方の軍による激しい攻防が繰り広げられている。
「で、今回君達には、モスクワへ攻め入ろうとするゾルダートグラードの部隊を叩いて貰いたいんだ。敵はアリクイの獣人で構成されている歩兵部隊。モスクワ郊外の道路を東へ向けて前進しているから、上手く敵の背後を突いて奇襲をかけてくれ」
戦場に潜伏して襲撃したり、進行ルートにトラップを設置したり。やり方は皆に任せるよ、とガーネットは締めくくった。
「あ。それから……そのアリクイ獣人には奇妙な特性があるらしい。どうやら結婚していたり恋人がいる、つまり配偶者を持つ者を絶対に殺そうとするんだって。とんだウィドウメーカーだな」
最後にそう付け加えると、ガーネットは猟兵を転移させる準備を始めた。グリモアに導かれ、猟兵たちは戦火が渦巻く獣人の世界へと赴く。
弥句
こんにちは、弥句です。今回もよろしくお願いします。
このシナリオは戦争シナリオで、「集団戦」1章のみの構成となります。
このシナリオの結果が、「獣人世界大戦」の戦況に影響を与えることになります。
また、以下の条件を満たすことで、判定に有利な「プレイングボーナス」を得ることができます。
プレイングボーナス……敵の背後を突いて強襲を仕掛ける。
プレイングはオープニング公開後からすぐに受付開始いたします。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『貴方の配偶者を絶対に殺すアリクイ』
|
POW : 寂しいんです
【疑いの心】を感じると自動発動。それに決着をつけるかレベル分後まで「攻撃力・跳躍力・魅力」のどれかが3倍。
SPD : 一年が過ぎました
レベル×10mまでの【メール型地雷原】を、任意の形状で敷設する。使用者はこれに接近した者の【所持金の量】を感知できる。
WIZ : 決死の爪
【威嚇体制からの爪の一撃】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
まあ、戦場だしな。敵軍であれば既婚者や恋人持ちであっても関係ない。容赦しないのは当然といえば当然だ……
と言ってみたものの、絶対にそういう話じゃないよなコレ
敵軍の予測進行ルートから少し離れた場所に潜伏。うまく奇襲できるように間合いとタイミングを図り
最後尾が通り過ぎた所で、利剣を抜いて背後から斬り掛かっていく
生憎と言うべきか、俺は別に恋人も既婚者もいないが、それはそれとして。奇襲を受ければ当然怒って反撃してくるよな
威嚇してきた奴に対しては澪式・拾の型【征伐】
無造作に接近して斬り伏せる。この状況下でのんびり威嚇をするよりは、とりあえず攻撃を仕掛けた方が幾らかマシな結果になったと思うがね
●
「(あれが獣人兵の部隊か、情報通りアリクイがウヨウヨいるな)」
かつては近隣の町を行き来していたであろうバスが、無残に弾痕を穿たれた状態で打ち捨てられている。そのバスの陰に身を潜め、気配を殺しながら、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は強襲をかける機会を窺っていた。
ざっ、ざっ、ざっ。バスの傍らを、アリクイ獣人の一団が一糸乱れぬ行進で通り過ぎていく。これより彼らはモスクワに侵攻し、ワルシャワ条約機構の兵士らを抹殺するのだ。
「(まあ、戦場だしな。敵軍であれば既婚者や恋人持ちであっても関係ない。容赦しないのは当然といえば当然だ……と言ってみたものの、絶対にそういう話じゃないよなコレ)」
聞くところによると、アリクイ獣人は『配偶者を持つ相手』に対して強い殺意を抱くのだという。どういう基準か定かではないが、強化兵士として改造を施される過程で、殺戮のトリガーとなり得る洗脳を受けたのだろう。
完璧な兵士作りとは、まず殺戮への動機づけを刷り込むところからはじまるのだ。
「(よし。今だ)」
最後尾の集団が通り過ぎるのを見計らって、鏡介は利剣【清祓】の鯉口を切った。バスの陰からゆらりと飛び出すと、訓練された歩法で一気に敵軍へと歩み寄る。
『!』
後方から不意に現れた人影に獣人が気づいたのは、数秒遅れてのことだった。ほんの数秒。だがそれは猟兵にユーベルコードによる先制攻撃を許す、致命的な数秒であった。既に刃は抜かれている。
「――先ずはお前を斬る」
無造作な動きで瞬時に間合いを詰めた鏡介が、一刀を放つ。淡紅色の神秘の光を帯びた刃が、アリクイ獣人の体を深々と切り裂いた。まず一体、ドサリと倒れ伏す。
『わーー』
『てきしゅうです』
妙に間延びした声で、獣人たちが鏡介へ向き直った。アリクイの前足(腕)には、鋭い爪が備わっている。その長く硬い爪で蟻塚を破壊して、中から出てきたアリを長い舌で舐め取り捕食するのだ。
『てきはころします』
『しゃーっ』
長い爪を生やした前足(腕)を広げて、鏡介を威嚇するアリクイたち。だが、そんな威嚇に怯むことなく、鏡介は返す刀で次のアリクイへと一撃を見舞う。これでまた一体。気が付いたときには、アリクイは既に間合いを詰められているのだ。これぞ鏡介のユーベルコード、澪式・拾の型【征伐】の真髄。
「この状況下でのんびり威嚇をするよりは、とりあえず攻撃を仕掛けた方が幾らかマシな結果になったと思うがね」
ボクシングの要領で矢継ぎ早に繰り出される爪攻撃を掻い潜り、鏡介は立て続けに斬撃を浴びせてアリクイ獣人を屠っていく。かくして、鏡介による先制攻撃は首尾よく成功した。アリクイ獣人たちは、モスクワに到着する前の段階で大きな痛手を受けたのである。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
配偶者を積極的に襲うってもしかしてリア充嫌いを拗らせた種族ってこと?
許せないね、不意討ちするのに何の心の痛みも湧いてこないよ!
後ろから失礼するよ、降り注げ反抗の星屑
奇襲は成功、こうなったらこっちのものさ
この星屑には鈍足効果がある、浴びれば浴びる程どんどん足が遅くなって行くのさ
どれだけ威嚇してもボクの元にたどり着くことは出来ないよ
そのまま無数の星屑で跡形もなく骸の海に叩き返してあげる
非リア充だからってリア充に理不尽な攻撃は許さないよ
●
「あれがゾルダートグラードの、アリクイ獣人だね……」
セーラー服を纏った小柄な少女が、遠くからゾルダートグラードの歩兵部隊の様子を窺っていた。貌の左半分を覆う仮面を被った少女の名は、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)。その細い腰に帯びているのは、愛刀として常に持ち歩く『反抗の妖刀』である。
「配偶者を積極的に襲うってもしかしてリア充嫌いを拗らせた種族ってこと? 許せないね、不意討ちするのに何の心の痛みも湧いてこないよ!」
相手は感情を捨て去った、無慈悲な殺戮者。ならばこちらも、情けをかける道理もないというものである。妖刀を鞘から抜き放ち、ニクロムは敵軍への攻撃を開始する。
「後ろから失礼するよ、降り注げ反抗の星屑!」
ニクロムの裂帛の叫びに呼応して、『反抗の妖刀』の力が解き放たれた。煌めく星の輝きを帯びた幾千もの斬撃が、アリクイ獣人へと降り注ぐ! 斬撃の範囲はニクロムを中心とした半径147メートルにも及び、攻撃を受けたアリクイ達はたちどころに屠られていった。
『わーーっ』
『てきしゅう、てきしゅうです』
背後を突かれ、手痛い先制攻撃を受けた敵部隊がようやくニクロムを認識する。前足(腕)の爪を振りかざし、ニクロムを激しく威嚇するアリクイ達。
「非リア充だからってリア充に理不尽な攻撃は許さないよ」
『りあじゅう』
『ききなれないことばですね』
『なにかのあんごうでしょうか』
ニクロムの叩きつけた言葉に少し困惑しながらも、アリクイ獣人達は反撃に乗り出す。巨大なアリ塚を容易く破壊せしめる爪を閃かせ、一斉にニクロムに飛びかかろうとした。だが、
『こ、これは』
『あしがまえにすすみません』
「ハッ。この星屑には鈍足効果がある、浴びれば浴びる程どんどん足が遅くなって行くのさ」
これぞニクロムのユーベルコード【|反抗解放《チタノギンガ》】の特殊効果。降り注ぐ星屑を浴びた者は、ダメージと同時に歩みを鈍らせる状態異常を受けるのだ。
アリクイ達はハエが止まるようなのっそりした歩みでニクロムに歩み寄ろうとするが、ニクロムが当然それを許すはずもなく。
「骸の海に叩き返してあげるよ!」
そして容赦なく繰り出される、斬撃の第二波。さらに歩みを鈍らせた兵士たちは、目の前の少女に反撃を浴びせることもままならず、一人また一人と力尽きていったのである。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
「もぎゅううううううっ!?」
恐ろしい敵なのですー!
お家に|花嫁さん《ゆーいっちゃん》が待ってるカントを殺そうとしてるのです
何としてでも倒すのです!
茂みに潜んで敵を待ち構えるのです
もーきゅ、もきゅーう、抜き足差し足なのです
モーラット専用ミニ戦車を後方に待機させておくのです
アリクイさんが見えたら、もきゅっと顔をのぞかせて胸元の結婚指輪を見せつけるのです!
アリクイさんがカントを攻撃するのは分かってるのです!
「もきゅきゅっぴ! きゅっぴー!」
今なのです! 挟み撃ちなのです!
【UC使用】で防御しつつ、アリクイさんの後ろから【念動力】で戦車を突撃させるのです!
混乱したところで、パチパチ火花で攻撃なのです!
●
道端に生い茂っている、雑草の茂み。その中に、30センチほどの白い毛玉のようなものがひとつ、転がっていた。その毛玉に気づくこともなく、オブリビオンのアリクイ部隊はモスクワへ向けて行進を続けている。
「もぎゅううううううっ!?(恐ろしい敵なのですー!)」
白い毛玉の正体は、モーラットの猟兵高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)であった。カントは茂みの中から、注意深くゾルダートグラードの歩兵部隊を偵察していたのである。
「もきゅ、もきゅ、もきゅー(お家に|花嫁さん《ゆーいっちゃん》が待ってるカントを殺そうとしてるのです」
カントには、人生を添い遂げたい大切なパートナーがいた。そのことを敵に悟られたなら、きっと相手はカントに対し強い殺意を向けることだろう。とても危険な作戦になるのは必至だ。
「もーきゅ、もきゅーう」
カントは抜き足差し足で軍団の跡をつけながら、モーラット専用のミニ戦車をこっそりと配置していく。戦闘の準備は少しずつ、着実に整っていった。
「もきゅ!」
『おや、あれはなんですか』
『しろいけのかたまりですか』
茂みから顔を覗かせたカントが、アリクイを挑発するように跳ねる。その胸元に飾られているのは、人生の伴侶をもつ者の証。結婚指輪であった。
『あれはけっこんゆびわ、きこんしゃのあかし……』
『きこんしゃは、かならずころさねばなりません』
指輪を持つカントを既婚者と判断したアリクイ達は、すぐさま攻撃態勢に移った。シャッ! と勢いよく地面を滑らせるように叩きつけられたのは、メール型の極薄地雷だ。
「もきゅきゅっぴ! きゅっぴー!(今なのです! 挟み撃ちなのです!)」
だが、カントは既に迎撃態勢を整えていた。大きなマントを翻して、表面に帯びた電磁バリアでメール型地雷をガードする。大爆発も物ともせず、カントはすぐに潜伏させていた戦車を念動力で起動させた。そして遠隔操作できる戦車軍団を一斉に突撃させ、狙うはカント本体との挟み撃ちだ。
『まさか、せんしゃをひそませるなんて』
『じらいこうげきもきいてません』
ミニ戦車から、次々と砲撃が撃ち込まれた。そうしてアリクイ達が混乱している隙を突いて、カントは毛に蓄えていた静電気を激しくスパークさせた。
『『あーー……』』
パチパチと弾ける火花に灼かれると、おびき寄せられたアリクイ達は次々とダウンしていった。
ちなみにメール地雷に接触した際、カントは敵に所持金の量を感知されていた。しかしこれはゆーいっちゃんとの生活のために必要な大事なお金であるため、カントはその情報を守る為に必死で攻撃し続けたという。
大成功
🔵🔵🔵
佐藤・和鏡子
斬刑のユーベルコードで敵に見つかりにくい高高度を飛んで敵の後方に移動し、そこから最高速の時速725キロで一気に降下して敵の不意をついて攻撃を仕掛けます。
具体的には斬刑の効果に消防斧の重量(重量攻撃)・機械ゆえのパワー(怪力)を乗せた消防斧で敵めがけて斬りかかります。
囲まれたら消防斧を振り回して薙ぎ払います。(範囲攻撃・吹き飛ばし)
決死の爪は消防斧で防ぎます。(武器受け)
既婚者アピールをすると敵が寄ってくるようなので、リサイクルショップで買ってきた結婚指輪(演技)でさりげない既婚者アピールをします。
あからさまにやると嘘くさくなりますから。
●
朝ぼらけの空に、目にも鮮やかな緋色の花弁がちらちらと舞っている。彼岸花だ。ミレナリィドールの衛生兵である佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)は愛用の消防斧を携えて、眼下の路を往く獣人の軍団を静かに見下ろしていた。
「アリクイ獣人ですか。今、楽にしてあげますね」
古風な白の看護帽に看護婦白衣。普段の和鏡子は、病院や介護施設での応援要員として働く健気な少女である。だが、今の彼女は武器を手にして果敢に敵と戦う、猟兵としての別の側面を見せていた。
時速725kmにも達する猛スピードで、和鏡子は上空から一気に急降下。消防斧を閃かせ、地上のアリクイ獣人へと勢いよく斬りかかった。
「回診の時間ですよ……」
『!』
無防備なアリクイ目掛けて、超高速の先制攻撃が繰り出される。機械人形の膂力と斧の重量、そして飛行スピードが乗せられた一撃を叩きつけられたら、いかに強化兵士といえどひとたまりもない。苦痛を味わう間もなく瞬時に息絶えたのが、せめてもの救いか。
『わーー』
『てきしゅうです』
『そらからおそってくるなんて』
突然の空からの奇襲に、アリクイ獣人は動揺を隠せない様子だ。和鏡子の斧は【|斬刑《エクスキューション》】の効果もあって、いつにも増して切れ味鋭い。低空飛行で死角に回り込んで急所に斧を打ち込み、和鏡子は的確にアリクイを仕留めていく。
『うろたえてはいけません。てきはひとりです』
『とりかこんでしとめましょう』
アリクイ獣人は長く伸びた鋭い爪を閃かせ、威嚇体勢から巧みなマーシャルアーツの動きで反撃を繰り出す。ずんぐりした容姿に似合わず、格闘術の腕前は洗練されているようだ。
「……っ」
真っ赤な消防斧を振るい、和鏡子は矢継ぎ早に繰り出されるツメの攻撃を受け止め、弾いていく。その左手薬指に輝くのは、予めリサイクルショップで調達してきた結婚指輪(という設定の安物指輪)だ。
『はっ。そのゆびわは』
手元で輝く指輪の存在に気付いたアリクイたちが、和鏡子を既婚者とみなしたようだ。なんとしても既婚者を亡き者にするという強い意志の元、アリクイ達の攻撃は激しさを増していく。
『きこんしゃは、かならずまっさつします』
「なぜそこまで既婚者に執着するのかわかりませんが……負けるわけにはいきません」
たとえば、強化兵士を養成する過程の洗脳プログラムの一環として、特定のターゲットに強い殺意を抱くように仕組まれた可能性も考えられる。命令に従い、躊躇うことなく殺戮を実行できるのが、優秀な兵士の条件なのだ。
「……私の前では、誰の命も奪わせません!」
命を護り、救う衛生兵として、殺戮者を看過することは決してできない。喉の奥から声を振り絞り、和鏡子は消防斧を振るって襲いくる敵群を一気に薙ぎ払った。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
何だその特性。それだと、俺様に集まってくるじゃねぇか。
(妻が12人いるドラゴンプロトコル)
ま、それをも利用するか。死んでやる気もねぇし。
布被って、潜伏して待つことにする。
で、過ぎてったら…UC使って攻撃していく。決めた相手はもちろん、そのアリクイ獣人。
ま、俺様を狙うのはわかるけどな、俺様は頑丈だから。地雷原にしようが関係ねぇよ!
ああ、俺様に向かってくるがいいさ。それだけで乱れるし…攻撃範囲に入るんだからな!
本当に、何でこんな特性持ってるんだよ。わけわかんねぇ。
グラース・アムレット
連携アドリブ歓迎
アリクイ獣人
見た目も可愛らしければ、言葉遣いもなんて愛らしい……
いえ動機は可愛くはないのですけども
お話してみたいですけども、彼らも立派な兵士
油断はできませんね!
歩兵部隊とのことなので斥候に気を付けて、彼らの背後をとりにいきます
道路を避けて遮蔽物を利用して近付く――彼我の距離は狙撃が届くくらいで充分かしら
UCで撃って周囲を無重力状態とし、次は弾を換えて的確に獣人を撃破していきます
無重力状態が解除されたらゆきちゃんにも参戦してもらいましょう!
落下した敵に攻撃ですよ
愛する者がいると湧く力は無限大ですものね
そこを折る必要性も分かります
でも……アリクイさんを待つ人もいそうな気がします
●
規則正しく足並みを揃え、ゾルダートグラードのアリクイ獣人部隊が夜明けの路を進軍していく。モスクワへ向かって整然と進んでいくその様子を、道路脇の茂みに潜んで静かに観察している者がいた。
「配偶者を絶対に殺すアリクイ、ねぇ……」
迷彩カラーの布を筋骨隆々の体の上から被り、ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は両膝をついたままの姿勢で小首をかしげる。
「何だその特性。それだと、俺様に集まってくるじゃねぇか」
究極のゲームと称される|GGO《ゴッドゲームオンライン》の世界から実体を得てやって来たヌグエンは、12人もの妻をもつドラゴンプロトコルである。彼がその事実を明かしたとすれば、アリクイ達のヘイトを集めることは必至だ。だが、それで構わないとヌグエンは考えている。
「ま、それをも利用するか。死んでやる気もねぇし」
普段のヌグエンは、初心者クエスト最後の敵『欲望竜』を名乗ってレイドボスを務めている。狙われる立場には慣れているというわけだ。身の丈190センチに達する逞しい巨躯が、ぬっと立ち上がって草むらから姿を現した。
「よう。俺様と遊んでいけよ」
『!』
そう言うなり、両手を敵群へとかざす。直後、ヌグエンの指先から無数の火球が炸裂した。ただの火球ではない。対象を燃やすのではなく、凍らせる厄災の炎である。
『わーー』
『てきしゅう、てきしゅうです』
潜伏していたヌグエンの奇襲を受け、アリクイ獣人たちに緊張が走った。凍てつく炎弾に撃ち抜かれ、アリクイ達がバタバタと倒れていく。
「――サッサとお前らを片付けて、嫁達のところへ帰らねえとなぁ!」
ヌグエンが隠れていたポイントから100メートルほど後方を、装甲ベストを纏った小柄な人影が移動していた。遮蔽物に隠れながらアリクイ獣人の後を追うのは、バスターライフルを携えた女性の猟兵であった。
サバイバルガンナーのグラース・アムレット(ルーイヒ・ファルベ・f30082)である。彼女の傍らには、狛犬型の霊獣『ゆきちゃん』が静かに寄り添っている。
「アリクイ獣人……見た目も可愛らしければ、言葉遣いもなんて愛らしい……いえ動機は可愛くはないのですけども」
グリモア猟兵から提供された情報と、事前の偵察活動で、敵に関する特徴は概ね把握していた。コーヒー豆のようなつぶらな瞳に、ずんぐりした体型は、どこかユーモラスではある。しかし忘れてはならない。彼らはゾルダートグラードによって強化改造された、恐るべき兵士であるということを……。
「お話してみたいですけども、彼らも立派な兵士。油断はできませんね!」
ゆえにグラースもまた、一人の猟兵として敢然と敵を撃つ。慣れた動作でバスターライフルを構えて素早く照準を合わせ、|重力変異弾《ゼログラビトン》を発射する。
シュバッ! たちまち閃光が迸ると、一条の光線が敵群めがけて真っ直ぐに着弾した。
『あーれー』
重力変異弾が炸裂した地点から半径131メートル圏内が、宇宙空間のごとき無重力状態へと変じた。当然、アリクイ獣人は未体験の出来事に対処しきれず、空中をふよふよと漂うばかりだ。
「これは……なるほど、そういうことね」
ライフル銃を構えているグラースを視認して、ヌグエンは即座に状況を理解した。ヌグエンとグラースは目配せを交わして、フワーッと空中を漂うアリクイ獣人へ追撃を加えにかかる。
「ゆきちゃん」
『わふっ!』
グラースが合図を出すと、傍らに控えていた霊獣のゆきちゃんが、蒼炎を帯びて猛然と駆けて行った。ゆきちゃんはぽてっと地面に落下したアリクイを狙い、前脚で鋭い一撃をお見舞いする。
「愛する者がいると湧く力は無限大ですものね。そこを折る必要性も分かります」
勝利を得るため、敵を倒すため、戦争というものは極限まで合理性を突き詰める。軍団という巨大な機構の中に個の人格が組み込まれ、兵士達の感情は削ぎ落されていくのだ。
自分と仲間が生き残るためには、今銃を向け合っている相手が誰かの夫であり、息子であり、兄弟であるという事実からも、目を背けなければならないのだ。
「(でも……アリクイさんを待つ人もいそうな気がします)」
ライフルの銃口を敵に向けながらも、グラースはそんなことを考えていた。
『おくさんがじゅうににんもいるなんて。ゆるせませんね』
『しかしあなたがしねば、じゅうににんのみぼうじんがうまれることになります』
火球を操るヌグエンへ向けて、アリクイ達が何かをシャッと投げつけた。一直線に地面を滑っていくそれは、長方形の封筒の形をした極薄の地雷であった。
「くっ……これは!」
ヌグエンの足元に到達したメール地雷が次々に起爆し、爆炎が彼の体を瞬時に包み込んだ。並の猟兵ならばひとたまりもないだろう。
「……ま、俺様を狙うのはわかるけどな」
『!?』
だが、ヌグエンの頑強さは並大抵のものではなかった。なぜなら彼の本業は、ギルドの|組合員《スタッフ》。GGOにおける重要NPCの証を持つヌグエンは、理不尽なまでに固いのだ。
「ああ、俺様に向かってくるがいいさ。それだけで乱れるし……攻撃範囲に入るんだからな! ったく……本当に、何でこんな特性持ってるんだよ。わけわかんねぇ」
『そ、そんな』
『われわれのこうげきがきかないなんて』
マッチポンプとはいえ、シナリオのボスを担当しているヌグエンである。このような雑兵の攻撃で傷を負うような、ヤワな体ではないのだ。
「ゲームオーバーだ。レベル上げて出直してこい」
機関銃のごとく叩きつけられた炎弾が、最後のアリクイを容赦なく撃ち抜いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵