獣人世界大戦④〜紅の浜辺を覗く窓
孤独と絶望から人の心を救うものがあるとするならば。
人の心を純粋なもので満たすとするならば。
人に流れる紅き流れを区別なく啜る存在は、それを冠するモノだった。
暗い海上を赤く照らすただ一つの光。
それに照らされて浮かび上がるは戦艦。それも一つや二つではなく──。
クロックワーク・ヴィクトリア軍の誇る「狂気艦隊」が海を征く。
そのものが映し出すのはとある浜辺の光景。
そのものをこの世に呼び出し繋ぎ止めるのはたった一つの概念。
そのものに捧げられるは信者達の死。
そのものが与えるは永遠の救済。
「新たな事件を、予知しました。」
白霧・希雪(呪いの克服者・f41587)は集まった猟兵達の前で話し始める。
戦争が始まってからというもの、彼女の顔が、暗い。
仕事の時はできるだけ感情を露わにせぬようにと心がけてはいるものの、それでも抑えきれない憂いと悲しみがその表情を覆う。
「今回の場所は──海の上。クロックワーク・ヴィクトリア軍の大規模艦隊が、ロシアの首都・サンクトペテルブルクを攻略すべく攻め寄せようとしています。」
海の上。
戦場の優位は準備を重ねた敵側にある。
だが、それでも。
「今回は──海戦を制し、【狂気艦隊】と呼ばれるかの軍の侵攻を阻止してください。」
これがただの一般戦闘員達のみで構成されているなら、簡単だろう。
だが、【狂気艦隊】という言葉に少し引っかかりを覚える。
その言葉は、まるでUDCアースの───。
「今回の敵は、UDCアース世界の邪神による守護を受けていて、これをどうにかしない限り、突破は難しいでしょう。」
UDCアースの、邪神。
人の心を蝕み、食い物にする邪悪な|存在《オブリビオン》。
「邪神は…その姿を見せるだけでこちら側に深刻な狂気を誘発してしまう。これは、私達が倒さねばならない敵です。」
今回の敵は、相当に厄介なものになるらしい。
不利な戦場、心を喰らう敵、そして、状況は連動して変化する──。
「邪神が司るモノは、『苦痛』。信奉者たちを苦痛で支配し、利用し、その血を啜る存在です。しかし、その邪神の守護は甘い毒のようなモノ。信奉者の認識を歪め、苦痛を至上のものと思い込ませているみたいです。」
希雪の表情に翳りが生まれる。見たくないものでも見たのだろうか、少し目を閉じて、振り払うように声量を上げる。
「そんな事は、断じて認めるわけにはいきません。貴方達になら、任せられます。どうか、邪神を──」
もう、迷わない。決意のこもった言葉は、猟兵達にも響く。
希雪は振り返り、その翼と両腕を大きく開く。
立ちこめる白い霧。その奥に薄ら見えるのは、赤。
「|門《ゲート》を開きます。行き先は、獣人戦線」
猟兵達の力強い足音が聞こえる。
大丈夫。今回も、無事にやってくれる。
頼れる仲間がそこにいるのだから───。
「どうか、ご武運を──」
カスミ
獣人戦線での戦争、頑張っていきましょう。
日程に不安がない限り、まだまだ投稿する予定ですのでお楽しみに!
主要敵との戦闘ではないですが──これもまた、猟兵達が倒すべき「敵」。
しっかりと倒し切って、戦争を有利に進めていきましょう!
といったところで、説明に移りますね。
獣人戦線、戦争シナリオとなっております。
なので、一章完結の短いシナリオとなっております。
●第一章:「狂気艦隊」を守護する邪神を討伐せよ!
ロシアの首都サンクトペテルブルクを攻めんとする「狂気艦隊」、それをくい止めるために、狂気艦隊の戦力を大幅に引き上げている原因とも言える邪神を討伐する必要があります。
しかし、邪神も一筋縄ではいかず、そこにいるだけで重大な精神汚染を発生させる厄介な存在。逆にいうと、邪神さえどうにかする事ができたら、あとはロシアの兵達でどうにかする事ができるということでもあります。
ということで、彼らが目的地にたどり着くよりも早く、邪神を討伐してしまいましょう!
プレイングボーナス:邪神の齎す狂気に耐えて戦う。
第1章 ボス戦
『黄昏の救済・飛翔体』
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POW : 曰く、孤独と絶望から救いあげる痛みという共通意識
召喚したレベル×1体の【苦痛を尊ぶ黄昏の教義に命を捧げた殉教者】に【殉教者の骨と肉で造った剣を持たせ、血の翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
SPD : 曰く、心を純粋な苦痛だけで満たす救済の赤い鳥
【苦痛への信奉と希望】を籠めた【飛翔する鳥の輪郭の翼】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【黄昏の教義への忌避感を消し、痛覚と正気】のみを攻撃する。
WIZ : 曰く、人に流れる血の赤を区別なく啜る平等の神
【拡げた翼】から【血生臭く、纏わりつくような生温い風】を放ち、【耐えがたい希死念慮と自傷衝動】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:片川 香恵
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「火奈本・火花」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イコル・アダマンティウム
「苦痛?」
それは、避けちゃだめ
僕は愛機、キャバリアで出撃する、ね
【汚染耐久】
「ん……痛み、だ。」
精神汚染は<闘争心>、
闘志で耐える、よ
「……皆が、傷つく痛み。」
けど闘いは痛いもの
殴られた人も、殴る人も……見る人も
だから
「背負わなきいけない、もの」
【人造神経直結-痛覚抑制解除】
[使用UC:神機一体]
僕の神経と直結してる機体の安全装置を解除する、ね
「タロン……一緒に、行こう。」
装甲から空気すら感じ取って、キャバリアの"痛覚”で正気を呼び起こして
闘う、よ
【格闘戦:暴力】
「飛ぶ、な。」
翼の一撃を見切って
掴んで
引きちぎる
<暴力><見切り><カウンター><グラップル><引き裂き>
「救われる必要は、ない。」
海が、紅い。
情報にあった通り。
あの空に輝く太陽みたいな紅い光が、今回の敵。
イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)はこの紅い海とは対照的な、蒼いキャバリアに乗り出撃する。
確か、敵は「苦痛」を司る邪神という話だった。
「苦痛?」
それは、避けちゃだめ。だって──
紅い光に近づくにつれ、敵の姿が露わになってくる。
想像を絶する規模、とまではいかないもののかなりの大規模艦隊だ。
しかし、そんなことはどうでもいい。
ここら一体を支配するあの光こそ──
「ん……痛み、だ。」
全身を焼かれるような痛み。
攻撃ではない。あれが敵の加護と救済。
でも、イコルはそうは感じない。当然のこと。
「……皆が、傷つく痛み。」
けど戦いは痛いもの。
殴られた人も、殴る人も……見る人も。
形式的なものならともかく、互いが互いの正義のために、もしくは利益、欲望、感情、なんだっていい。
自らの我を通すために他者を無理やり従わせ、時には殺すこともある。それが戦いであり、それが“痛み”だ。
だから
「背負わなきゃいけない、もの。」
自らが感じる痛み。
それはもはや狂気なのかもしれない。
邪神の影響か、痛みに救いが伴われるような感覚。
戦闘には痛みが伴う。
抑圧には痛みが伴う。
崇拝には痛みが伴う。
でも本当は、そうじゃないと知っている。
今は、闘志で耐える、よ。
イコルは迷いなく、一つのレバーを下ろす。
これはイコルの神経と直結している機体の安全装置、その解除レバーだ。
キャバリアが感じる感覚も、自らが感じる感覚も、全て重ね合わせて。
「タロン……一緒に、行こう。」
大きく息を吸い込む。痛みで肺が張り裂けそうだ。
キャバリアを動かす。装甲から空気の流れすら感じ取れる。
全て、痛みへと変化する。
でも、その痛みは、痛覚は、“狂気”じゃない。
自らの信頼する|キャバリア《タロン》の“痛覚“で正気を呼び起こして。
闘う、よ。
戦闘が始まった。
自らの支配下に無い異物を許さないと言わんばかりに、緋色の鳥はその片翼を叩きつけようと。
だが、遅い。
痛みをばら撒く者に、痛みを乗り越えた者が負けるはずがないと、言わんばかりに。
翼の一撃を完全に見切り、スラスターを噴かして回避。
そのままの動きで翼の根本を鷲掴みにする。
“痛み”など
“狂気”など
“救い”など
それは、自分が決めること。お前なんかに──
「救われる必要は、ない。」
バリィ!!!
浜辺を映した紅い羽が舞い散り、海へと落ちてゆく。
ボタボタと赤黒い液体が吹き出し、蒼い機体すら紅く染めてゆく。
引きちぎられた片翼は、すぐに再生されてしまうかもしれない。
それでも、大きなダメージを与えたこと。何より、「痛みに抗う存在がいる」ことを邪神に叩きつけた。
戦場は未だ、幕を開けたばかり。
大成功
🔵🔵🔵
汀・六弦
アドリブ歓迎
外界の事情にはあまり関与しない方針だったのだが。
|邪神《あれら》が被害を齎すのなら、それはUDCエージェントの業務範囲だ。
ピルケースから向精神薬を服用。気休めだが無いよりはいい。
降り立った軍艦の一隻から視線を上げて対象を目測する。
……痛みを以て信仰とするのなら、俺の存在はさながら冒涜か。
周辺の兵隊の制圧は、既に〈水槽〉が済ませている。苦痛が望みなら似合いだろう。
翼を広げ襲い来る邪神にも、ゆるりと手を伸べて〈水槽〉を動かすのみ。
距離を詰めてくれて好都合だ。浜辺を灼き切るほどの激痛が、その輪郭をも捩じ切り砕く。
戦争の火を目にしてすら、俺の心は痛まなかった。成程、救済は程遠いらしい。
紅く燃ゆる海。
実際に燃えているわけではないが、それを支配するものは燃えるような「痛み」。
今や戦場と化したそこを汀・六弦(コードネーム『疑似餌』・f41683)はただ冷静に一瞥する。
「外界の事情にはあまり関与しない方針だったのだが。」
低く響く冷たい声。
あまり感情を読み取ることの出来ない声。
「|邪神《あれら》が被害を齎すのなら、それはUDCエージェントの業務範囲だ。」
ゆるりと手を翳すと、魚群型UDC〈水槽〉が音もなく動き出す。
触れたものに激しい痛みと滅びを与える異常性を持つこのUDCは、今の状況に、そして奴らが苦痛を望むとするなら、お誂え向きだろう。
ピルケースを開き、向精神薬を服用する。
邪神に対抗するには気休めと言わざるを得ないが、無いよりは良い。
スタ、と軍艦に降り立ち視線を上げて対象を目測する。
なるほど、「窓」か。
紅く輝く邪神の姿。それは鳥の形に切り取られた「あちら側の光景」。
邪神が輝いているのではなく、あちら側にある太陽の光が届いている。
そしておそらくそれが──痛みの元凶。
しかし、その痛みが六弦に届くことはない。
……痛みを以て信仰とするのなら、俺の存在はさながら冒涜か。
身も、心さえも、いかなる痛みを感じたことがない。
わざわざ痛みを知りたいとは思わないが、|こんなもの《水槽》を身に宿し、痛みを感じぬ俺は一体なんなのか。
痛みの塊とも言える魚群を操り、痛みを感じぬ存在。
痛みを崇拝する彼らにとって、それは神か、邪神か。
放った〈水槽〉が戻ってきた。周辺の兵隊は制圧できたようだ。
さて。
眼前には、大きく翼を広げる緋色の鳥が、その翼に苦痛を籠めて飛翔する姿。
あれに当たったとして痛みを感じることはないかもしれないが、それでも正気は削れる可能性が高い。
いくら考えたところで、やることは変わらない。
翼を広げ襲い来る邪神にも、ゆるりと手を伸べて〈水槽〉を動かすのみ。
無数の魚が痛みを以て緋色の鳥に喰らいつかんと空を泳ぐ。
避けようとするも、その先にも〈水槽〉。
六弦が操る魚群は、逃亡など赦しはしない。反抗など、以ての外。
気づけば、包囲は完成している。
「距離を詰めてくれて好都合だ。浜辺を灼き切るほどの激痛が、その輪郭をもねじ切り砕く。」
至極冷静な宣告。
世界の偽薬効果に基付き、理論上惑星さえも殺し切るこの〈水槽〉にとって、単なる邪神など処理に困るようなものでもない。
邪神の体にヒビが入り、捩じ切れ、粉々に割れる。
大量の赤黒い液体が溢れ、黒一色のスーツを穢していく。
もちろん、邪神はそれで滅びるような生易しい存在ではないことは知っている。
邪神の体は再生し、元通りの姿を取り戻してゆく。
しかし、その体に尚も刻まれるは、左右に横断する一つのヒビ。
何度再生しようと、決して癒えぬ傷を刻み込む。
「戦争の火を目にしてすら、俺の心は痛まなかった。成程、救済は程遠いらしい。」
静かに響く、六弦の言葉。
その言葉にはほんの僅かな哀しみのみが乗り、深い海の底へと沈む。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
くそっ、ここでも邪神と戦う事になろうとは!
奴の放ってくる風を喰らうのは正直まずい、対策を立てないと…
UCを発動し自身の周囲を光の波動による回復エリアと化す
回復には浄化の力も上乗せして出来る限り敵の呪詛ともいえる攻撃の緩和を狙おう
光の波動の最大射程の所で風をシャットアウト出来れば一番いいんだけど、それを許してくれるような相手じゃないだろうしな
もしこちらのUCの射程内に敵が入ってきた場合は闇の波動を触手の様に伸ばし敵の翼へ絡みつかせる
可能なら、そのまま翼をむしり取り部位破壊狙う
翼を使わせなければ、かなり戦いやすくなるはずだ
接近戦が可能な状況が作れたら浄化を付与した破魔刀で接近戦へ切り替える
紅い光に、一人の男の姿が浮かぶ。
その姿は真剣そのもの。
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は危機感を募らせながら、鳥の姿をした邪神を睨む。
「くそっ、ここでも邪神と戦うことになろうとは!」
今回の「戦争」、敵軍は様々な世界の戦力──例を挙げるとするならば、クロムキャバリア世界のキャバリア、サクラミラージュ世界の|黯《あんぐら》党などの力も借りて、かなり大規模な戦争となっていると聞く。
そしてその“力”はUDCアースの邪神も対象外ではなく、その力を十全に振るうことができる場所が整っている以上、本来よりも更にタチが悪い。
「奴の放ってくる風を喰らうのは正直まずい、対策を立てないと…」
拡げた翼から放たれる「風」への対策。
範囲が広く、影響は深刻で、目に見えない攻撃。
ここにリソースを割かなければ、不利になるどころか勝負が決まりかねない。
なら選ぶべきは──
防御と攻撃を兼ね備えた、全力のユーベルコード。
【|絶対死守の誓い《光と闇の支援》】──
掲げられたひりょの手から溢れ出るは、暖かく柔らかな光の波動。
範囲内の味方全員を治癒し続けるこの波動で、相殺を狙う。
が、まだ足りない。
生き血を啜り、十全な力を振るう邪神に対抗するには回復効果だけでは均衡を保てない。
なら、浄化の力を上乗せして攻撃の緩和を──!
光の波動が、浄化の力も加わり更にその輝きを増す。
これで、ようやく釣り合った。
邪神としての力も、相当に強大なもの。
その鳥の姿を模した「窓枠」の奥に見える太陽が、紅々と輝く。
浄化の護符や魔を退ける結界も張り、万が一にも影響が届かないようにする。
しかしそれでも、この場を支配する邪神の力は及ぶ。
風は届かずとも、狂気は防がれようとも、その思念は、信仰は、狂気は。
ひりょの全身を燃えるような“痛み”が貫く。
くっ、と思わず声が漏れてしまう。
それでも。
今まで受けた痛みに比べれば。
耐え忍んだかつての日々を思い返す。
あの頃は、なすすべもなく受け入れるしかなかった。
けど、今は?
猟兵としての力がある。
力を貸してくれる仲間もいる。
なら、立ち上がれる。その足を力強く前に進めることができる。
緋色の鳥は飛翔し、今やひりょの目の前で「あちら側」の景色を見せつけるようにその翼を大きく広げる。
風は、もう効かない?
若干光が押されている。
でも、近づいてきたのなら──!
ひりょは再び手を翳し、溢れ出るは混沌たる闇の波動。
それは触手のように姿を変え、絡みつき、飲み込み、締め上げる。
ギチギチと、何かが軋むような音。敵は動けずにいるが、その奥に輝く不気味な太陽は尚も光り輝いて、ひりょをさらなる痛みで包み込む。
痛みが。
痛みこそが。
唯一の救済なのだ。
そんな思念が、伝わってくる。
「痛みが、救済だと?」
ひりょの足が、前に進む。
それは決して弱々しいものではなく、その手には神聖に輝く破魔刀が力強く握られている。
「すべての絶望を救うのが、痛みだとでも言うのか?」
燃え上がる痛みすら気にせずに、一直線に走り出す。
どれだけ痛くても、どんな言葉が聞こえても。
ひりょの意思は、変わらない。
跳躍し、破魔刀を大上段から振り下ろす──!!
「そんな訳、ない!!喰らえぇぇぇっ───!!!!」
バキン、と何かが割れるような音。
斬り付けた翼が、粉々になって砕け落ちる音。
斬り分たれた断面からは、血にも似た赤黒い液体が、ボタボタと零れ落ちている。
それでも、緋色の鳥は飛び上がる。
“概念”を象徴するが故に。
“信仰”を餌とするが故に。
その身は崇拝者がいる限り再生され、そして再び“痛み”を撒き散らすのだ。
しかし、溜め込んだその力も、いずれは尽きるもの。
再生したはずの翼には、斬り付けた傷がまだヒビとして残っている。
思わず零れたため息は、海風に吹かれてどこかへと消えた──
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
狂気艦隊って名前は聞いていたけど、あれは操っている人間が皆狂っちまったから、そう呼ばれていたのか。
バックに邪神まで付いてて、一体どういうツテで連れてきたんだよ……
見たら、こっちまでおかしくなるとか困った相手だな。
ならばいっそ、先にこっちがおかしくなってしまえばいいんじゃないか?
黒槍『新月極光』で戦おう。
UC【獣性解放】を発動して、理性なんか飛ばしてしまおう。
相手がこっちを殺しに来ているからには、難しいことは必要ない。
獣の本能だけで戦えるだろう。
獣に神は関係ないしな。
紅に染まる海。邪神の放つ赤い光はすべてを染め上げ、“痛み”で支配する。
戦場は激化し、流れる血によって艦船の床は赤黒く光を吸い込む。
シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)はそんな戦場を眺めながら思案する。
「狂気艦隊って名前は聞いていたけど、あれは操っている人間がみんな狂っちまったから、そう呼ばれていたのか。」
先ほどから感じる、燃えるような痛み。
戦場を飛び回り、猟兵達と戦う──今は空中に鎮座し、戦場を睥睨している邪神の影響だろう。
忌々しげに見上げながら、言葉を漏らす。
「バックに邪神まで付いてて、一体どういうツテで連れてきたんだよ…」
戦闘員はすべて、猟兵たちの手によって制圧済みだ。
しかし、そんな状況も、邪神の行動一つによってひっくり返りかねない不気味さを備えている。
「見たら、こっちがおかしくなるとか困った相手だな。」
緋色の鳥は動かないものの、その身体に映る景色──「あちら側」の景色を見せつけるように、大きく翼を広げて空中に漂っている。
「ならばいっそ、先にこっちがおかしくなってしまえばいいんじゃないか?」
敵は、“苦痛”と“狂気”だ。
苦痛はともかく、狂気には狂気。自ら正気を無くし狂ってしまえば、これ以上狂うことはなくなる。
理性を飛ばせば相手の狂気の影響なんて、受けないしな。
邪神が司る“狂気”とは“痛みへの崇拝”だ。
崇拝は、自らが救われようとする、つまり「理性」に依存した思考であることは言うまでもない。
故に、理性なき獣は崇拝など行わず、その身一つで生き抜くことを選ぶ。
その手に黒槍『新月極光』を握り締め、封印を解く言葉を語る。
「封を解け。我が力を示せ。さすれば我は敵の血肉を捧げよう。」
それは誓いの言葉であり契約だ。
【|獣性解放《リベラシオン・ビースト》】──|人《理性》を捨て、純粋無垢な獣へと堕ちる為の──
相手がこっちを殺しに来ているからには、難しいことなんて必要ない!
シモーヌが変ずるは、人ならざる獣の姿。
全身に白い毛並みが揃い、ふさふさとした長い尻尾がスラリと伸びる。
爪は硬く鋭く伸び、緋色の鳥を睨む瞳孔は大きく開かれる。
邪神が空を舞うなら、地面に引き摺り落とせ!
「ガルルァ!!」
ただ目の前の敵を喰らう。
理性無き獣は、たったそれだけを胸に戦場を駆ける。
獣に神は関係ない、そう言わんばかりに。
地を駆け、空を駆け、目の前の邪神に飛び掛かり。
獰猛な肉食獣の牙で、邪神の翼を食い破り、吼える。
神喰いの獣。世が世ならそう形容されたのかもしれない。
白い毛並みは返り血を浴び赤黒く、それでもその瞳孔だけは何にも染まらぬ水色に光っていた。
大成功
🔵🔵🔵
エドワルダ・ウッドストック
SPD アドリブ連携歓迎
狂気艦隊をサンクトペテルブルクに上陸などさせませんわよ。
現地にいる獣人たちに、精神汚染の魔の手は届かせはしませんわ!
沈みなさい!
ゲートを越え、そこに佇む邪神と相対しましょう。
黄昏の教義? 苦痛への信奉と希望?
なるほど、そういうことならシカの十八番でしてよ!
そちらが傷つけない肉体を、自らの手で切り裂きます。
ナイフで抉った肉を、食べることで! 自己治療しますわ。
これが聖餐儀式! わたくしたちの意地でしてよ!
自傷行為は日常茶飯事、とは言いませんが、忌避するものではありませんの!
トンチキな狂気をもたらす飛翔体など、お呼びではありませんことよ!
聖者の光による攻撃を叩き込みますわ!
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「邪神…。キサマは痛みで人々を操り!
あまつさえ!その亡骸を武器にするというのか!
その在り方!断じて許さん!!
このブレイザインが必ず倒す!!」
深刻な狂気?それがどうした
空桐清導を歪めるには何もかもが不足している
無限の[勇気]が胎動する
爆発する怒りが轟々と燃える
真紅のオーラが世界を覆う
ブレイザインの眼光が激しく輝く
殉教者の攻撃を一切受け付けずに一直線に邪神に飛翔する
果てなく上昇し続ける出力
両腕に宿る光焔が圧倒的な破壊を邪神に齎す
「ココで終わりにしてやる!
超必殺!レイジング・ラース・ブレイカー!!」
光焔と真紅のオーラを右腕に集束
全力のパンチで影も残さず邪神を消滅させる
「狂気艦隊をサンクトペテルブルクに上陸などさせませんわよ。現地にいる獣人たちに、精神汚染の魔の手は届かせはしませんわ!」
「あぁ、俺たちの手で、守りきるぞ!」
二人の猟兵、エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)と空桐・静導(ブレイザイン・f28542)は互いに頷き合い、決意を固める。
|門《ゲート》を越え、目の前に映し出されるのは紅い風景。
空に輝く紅い太陽のような光──あれが、邪神か。
その身はまるで窓、もしくは写真。どこかの風景を鳥の形に切り取ったかのような姿をしている。
その身を透かして見える「あちら側」には、不気味に輝く太陽がこちらを見つめていた。
途端に感じる、痛み。
肉体に異常はなく、ただ燃え上がるような苦痛のみを感じる。
攻撃を受けたわけではない。
この空間全体が邪神の影響範囲内というだけのこと。
緋色の鳥が司るは“苦痛”
黄昏の教義に基づいて、苦痛による救済を振り撒く邪神の姿。
そして、邪神は動き出す。
その両翼を大きく広げ、紅いオーラを解き放つ。
戦場に、異変が起こる。
がたん、どん、ぐしゃり
死んだはずの者が、殺したはずの敵が、起き上がる。
その瞳は虚に紅く、その手には蠢くようなにくにくしい赤と白の剣。その背には悍ましい程に赤黒い、不揃いな翼が生えていた。
そしてそれは意思もなく、感情もなく、ただ操られるままに──その力を振るう。
空を飛び、地を駆け、生者を憎み、苦痛に染める。
そんな紅き軍勢が、生まれたのだ。
緋色の鳥は飛翔する。獲物のところへ。
そしてその大きな翼で二人をまとめて薙ぎ払う──!
ダメージはない。
だが、苦しい。
何かが捩じ切れたかのような痛み。
でも、それだけ。
肉体に異常はない。
精神への影響?
それは、誰に向かって聞いている?
「黄昏の教義? 苦痛への信奉と希望? なるほど、そういうことならシカの十八番でしてよ!」
エドワルダは、傷つかなかった肉体を、自らの手で切り裂く。
だがその表情に狂気はない。
ナイフで抉った肉を、次々に口へと運んでいく。
痛みが和らぎ、薄れていくような感覚。自食による、自己治療。
「これが、聖餐儀式!わたくしたちの意地でしてよ!」
「邪神…。キサマは痛みで人々を操り!あまつさえ!その亡骸を武器にするというのか!」
静導は、食らった痛みを、自分の中で燃え上がる怒りで塗り潰し、力に変え叫ぶ。
「その在り方!断じて許さん!! このブレイザインが必ず倒す!!」
深刻な狂気?それがどうした、と。
空桐静導を歪めるには何もかもが不足している。
この程度、ヒーローを下すことはおろか、一歩退かせることすらできない。
バクン、と静導の中にある無限の勇気が胎動する。
ゴウ、と爆発する怒りが燃え滾る。
紅を塗り潰す真紅のオーラが世界を覆う。
ブレイザインの眼光が激しく輝く!
「ココで終わりにしてやる!」
「トンチキな狂気をもたらす飛翔体など、お呼びではありませんことよ!」
静導は風よりも早く戦場を駆け、一直線に邪神へと飛翔する。
出力は果て無く上昇し、両腕に宿る光焔が振りかぶられる。
エドワルダは両手を掲げ、神聖さすら感じる強い光を溜める。
その瞳は真っ直ぐ邪神に向けられ、一瞬たりとも怯むことはない。
「超必殺!レイジング・ラース・ブレイカー!!!」
「聖者の光で、滅ぼして差し上げましょう──!!!」
真紅の拳と、純白の光。
それらは邪神の身体に叩きつけられ、収束する。
戦場は、その2色に埋め尽くされ、視界は閉ざされる。
2色の極光が収まった時、目に飛び込んできたのは輝かしい青色だった。
戦場を紅く照らす邪神の光は邪神諸共消え去り、平和が訪れたのだ。
邪神が蘇らせた死者も、全員行動を停止しており、生き返ることはないが、じきに元の姿に戻るだろう。
一つの戦場は、今ここで終幕を迎えたのだ。
大成功
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