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八雲立つ

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源・朔兎




●はじまり
 迷いはない。
 あるのは力である。この力を如何にして操るのか。
 それが問題であった。
 持て余してはならない。力は持て余せば、必ず他者を徒に傷つける刃となり得るからであろう。
 そう伝える者がいる。
 受け止めた言葉は、心の奥へと染み込んでいくようだった。

 初心、というのならば源・朔兎(既望の彩光・f43270)は思い出す。
 何のために生きようとしたのか。
 人はそれを愛と呼ぶのだろう。
 己が体躯は死なぬものである。故に生きる運命を選んだことをこそ誇らねばならない。
「それが初心であるのならば、君の心の核にあるものはなんだ」
 問いかける言葉に即座に声を発することができなかった。
 いつだって即断即決に即応できるのが己であった。
 けれど、今はためらいがある。
 本当に己にそんなものがあるのかという問いかけだけが心に反響しているようだった。

「多くを考えられることは長所でもあるが、短所でもある。難しく考えることができることは思考を複雑化できるということだ。けれど、その思考は君を雁字搦めにするだろう」
 だが、と伝える言葉の主は己が手を示す。
「君の両手は多くのことに手を伸ばすことができる。それを忘れてはならないよ」
「だが、俺はこの手を何処に伸ばせばいいのかわからない」
 息を吐き出す気配があった。
 顔を上げると指先が天を示していた。
「空を見れば雲が流れていゆく。幾重にも重なる雲。そこにある、ということを知っても、次の瞬間には不定形に変わっていく。そういうものだ」
 青空は夕暮れに染まるだろう。夕暮れは夜の帳を下ろすだろう。夜の帳を上げれば、朝焼けが訪れるだろう。
 晴れ渡るばかりではない。
 曇る空もあれば、雨に泣く空もあるだろう。雷鳴轟き、息吹聞こえる空もあるだろう。

 変わらないものなどない。
 けれど、変わりようのないものだってあるのだ。
 自分の望み。
 それは。

「『もろともに』」
 恋を知って、例え「死がふたりを分かつまで」の僅かな時しか|一緒に《もろともに》いれないのだとしても。
 それでも彼女と己を繋ぐ【運命の糸】は途切れない――。

――――――――――
ユーベルコード名:『もろともに』
元ユーベルコード「死がふたりを分かつまで」(シルバーレイン)
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【運命の糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
WIZ No.459
――――――――――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年05月02日


挿絵イラスト