獣人世界大戦⑨〜浦潮ノ黯
●ワルシャワ条約機構、ウラジオストク
影朧甲冑の|潜望鏡《ペリスコープ》越しに兵士は外を覗く。
除雪され、コンクリートとアスファルトが敷き詰められた港に軍艦が着岸し、黒き動力甲冑が下ろされる。
――『黯瞞瑜』
偉大なる本田・英和殿が発明し量産に至った甲冑は炉に放り込まれし|悪魔《ダイモン》の熱によって寒さを感じない。
手足は痺れなく、震えることも無く、戦の空気に酔う事もない。
ただ、粛々と『仕事』成し遂げれば良い。
そう考えれば、今の自分の任務は難しくとも困難とは言えない。
守り切ればいい、後は上が成し遂げる。
それまでの部品であればいいのだ、この甲冑を動かす歯車として。
「さあ、戦争をしようじゃないか」
誰かが言った。
その通りだと思い、兵士は操縦桿を前に倒した。
●グリモアベース
「仕事をしましょう」
グリモア猟兵、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)は港のマップを広げて視線を上げた。
「今回の戦場はウラジオストク、彼ら――|黯《あんぐら》党は浦潮斯徳と呼んでいるが、ここの軍港区画の奪取が目的だ。敵は影朧甲冑、量産型アングラマンユ。そして中に居るのも百戦錬磨の兵士な上、戦いへの戸惑いや迷いを持たない」
グリモア猟兵は少しだけ思考したのち。
「簡単に言うと、俺達並みに戦い慣れていてユーベルコードが使えます」
言葉を整理しなおした。
「勿論、俺も皆さんもまともにやり合って勝てるでしょうが、ここはちょっと知恵を使いましょう」
影郎は一枚の設計図を取り出した。
「量産型アングラマンユは悪魔を燃料にして、その力を発揮しています」
設計図に赤丸されたのはおそらくは動力部。
「この|悪魔《ダイモン》の力を弱めていけば、効率良く戦えると思います――方法? そこは皆さんのご自由に」
笑みを浮かべた後、グリモア猟兵は風車を投げる。
開かれた道は冬の寒さを残した潮風。
「では、皆さん行ってらっしゃいませ。ご無事を祈っておりますよ」
潮風に混ざった重油の匂いが戦いの予感を醸し出していた。
みなさわ
極東のヨーロッパと呼ばれし港は今、甲冑達に支配されていた。
お世話になっております、みなさわです。
今回はウラジオストクでの量産型アングラマンユとの攻防戦を。
●敵
『量産型アングラマンユ』
過去のシナリオではボスを務めた敵が今回の相手です。
勿論強さは変わらず、そして中に居るのは戦いを潜り抜けた、戸惑いも迷いも持たない党員たる兵士達。
強敵ではありますが、勝てない相手ではありません。
●戦場
ウラジオストク軍港区画となります。
民間人の被害は少ないでしょうが、カジュアルに戦術爆撃や核兵器とかで片付けようとするとユーベルコードで撃墜したり、爆弾キャッチからの投擲とかすると思います。
●プレイングボーナス
何らかの手段でアングラマンユの燃料となっている|悪魔《ダイモン》の力を弱める。
以前のアングラマンユのシナリオでは乗り手への説得が図れましたが、今回は難しいため悪魔側へのアプローチとなります。
よろしくお願いします。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
それでは最初の戦い、よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『量産型アングラマンユ』
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POW : 憤怒兜割
単純で重い【上段から】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 赫魔召喚
【籠められた影朧の憤怒】から、【獄炎】の術を操る悪魔「【アスモデウス】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
WIZ : 不浄剣
自身と装備を【憎悪の瘴気】で覆い、攻撃・防御をX倍、命中・回避・移動をX分の1にする。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雨飾・樒
悪魔を燃料にして動く、影朧甲冑
そういう兵器もあるんだね
"眠り薬の魔弾"を撃ち込めば悪魔の力を弱められるかも
動力部の位置は教えて貰った、後は命中させれば良い
戦闘開始時は通常弾で射撃、こっちに甲冑を貫通する力がないと油断を誘ってみる
敵が一気に近付いてきたり、火力重視の大振りな攻撃を仕掛けてきたら好機
懐に飛び込んで動力部を魔弾で狙う、嫌な瘴気を纏ってるみたいだけど我慢
呪術対策の何かが施されてるかもしれないから、撃てるだけ撃ち込む
少しでも効果が出て悪魔の力が弱まれば、中の兵士にも魔弾が効き易くなるはず
隙を逃さず魔弾を撃ち込んで、畳み掛ける
バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎
オーケー、ソルジャー!
アングラマンユが相手とあらば、不足はありマセーン!
ワタシたちの戦争を始めマショー!
ファルシオンを手に、白兵戦で挑みマース!
重厚な体躯から繰り出される兜割を受け流し、滑走靴の空中機動で懐に滑り込んで、ご指摘を受けた動力部を一刀両断するであります!
正面突破になりマスガ、剣戟を交えて勝負と参りマショー!
……冷静に、冷徹に、冷酷に、カタログスペックに準じた性能を発揮する。
なるほど。見事な兵器であり兵士であります。
我輩の存在と酷似した設計思想でありますな。
差異は、感情が無いことを表に出していること……。
ならば。我輩は楽し気な感情を露わに見せて、対処するのであります。
●戦争の始まり
戦いを最初に彩ったのは兵士であった。
「オーケー、ソルジャー!」
楽しそうに笑みを浮かべるのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。
だが戦狂いでも血に酔っているわけでもない。
「アングラマンユが相手とあらば、不足はありマセーン!」
全長約五|米《メートル》の動力甲冑に対してファルシオンを振るうバルタンに対しアングラマンユは盾で受け流し、其のまま質量をぶつけんと距離を詰める。
ローファーを模した滑走靴が推力を発揮するのはほぼ同時であった。
影朧甲冑を飛び越えて背後に着地するのはサイボーグが一人。
「ワタシたちの戦争を始めマショー!」
バルタンの声に振り向かんとしたアングラマンユ。
その装甲に響くのは金属音。
「悪魔を燃料にして動く、影朧甲冑」
拳銃片手に立つのは黒きネズミの傭兵。
「そういう兵器もあるんだね」
雨飾・樒(Dormouse・f41764)であった。
「…………」
二人の兵士に対し、アングラマンユは武器を振るう。
淡々と仕事をこなすかのように。
盾で銃弾を弾き、こちらも火砲にて対処。
接近する相手には刃を振るい、距離を保つ。
影朧甲冑と言えど、動力甲冑の一つ。
硬い装甲やユーベルコヲドは有るものの、同様のユーベルコヲド使いが複数名肉迫されると厄介ではある。
柔らかい「もの」を叩きのめし、小回りの利かない戦車の頭を殴りつけるには向いているが、「硬い」ものや「強い」ものに対しては不得手な面もある。
故に黯党首魁たる本田・英和は「燃料」に着目し、アングラマンユを作り出した。
そして乗り手はそれを充分に乗りこなす兵士。
必勝は確実。
けれど笑って剣を振るうバルタン・ノーヴェがその一手を踏ませようとはさせない。
(……冷静に、冷徹に、冷酷に、カタログスペックに準じた性能を発揮する)
「なるほど。見事な兵器であり兵士であります」
それは明らかな賞賛と――評価。
自らと似た設計思想であることを推定しバルタンの思考が回転する。
影朧甲冑の乗り手はここで気づくべきだった。
サイボーグたる女の口調が変っていたことを。
そこに立つのは歴戦の兵士であり、生まれた時から武器を握っていた女であり。
偽装に偽装を重ねた熟練兵であったことに。
「イマデース!」
バルタンの叫びに呼応して、樒はその肩を蹴ってアングラマンユの懐に飛び込んだ。
「――っ!?」
アングラマンユの操縦者は突然の動きに口元から何かを漏らし、スイッチを指で弾く。
ユーベルコヲド始動、瘴気発生、憎め、邪魔する子ネズミを!
――不浄剣
自身と装備を瘴気で覆う事で破壊力と防御力を増す。
だが、引き換えも大きい。
けれど飛び込んでくる相手なら充分だと影朧甲冑が剣を振るう直前、撃ち込まれる銃弾、弾かれる金属音、そして……浸透していくペールブルー。
|眠り薬の魔弾《ヒプノティク》
樒の魔弾が物質を透過し、アングラマンユの燃料たる悪魔の力を弱める。
瘴気が霧散し、わずかに影朧甲冑が揺らいだ。
「少しでも効果が出て悪魔の力が弱まれば」
ネズミの傭兵が再び拳銃を構える中、走るバルタン。
「中の兵士にも魔弾が効き易くなるはず」
更に叩き込まれる弾丸が乗り手の動きを遅くさせ、そこへ――一撃が動力部を薙いだ。
|剣刃一閃《ファルシオン!》
一刀両断された影朧甲冑は黒い煙をたなびかせ、戦線を離脱した。
アングラマンユにはそれしか残されてはいなかったのだから……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
荒谷・つかさ
悪魔の力を弱める、ねぇ……
まあ、難しく考えることは無いか。
いつも通り、私にできる事を粛々とこなすだけよ。
【鉄塊拳】発動しつつ突撃
敵の攻撃を真っ向から「怪力」込の拳で受け止めつつ、返す拳で教わった動力部を殴りつける
或いは先制や回避が出来たなら、両の拳で連打を叩き込む
動力部に悪魔が居るんなら、そこを殴り壊してやれば弱体化するわよね
(いつも通りの脳筋回答)
壊れなくても衝撃で酔ったりしないかしら(
敵の攻撃も「上段から」と限定されてる以上、見切って拳を合わせてやるのも容易いわ
弱体成功したら、あとは普通にスクラップにしてやるだけね
さて、この粗大ゴミは何処に棄てて来ようかしら?
毒島・雅樂
懐かシいさねェ…大暴れシてた時を思い出す風の匂いだゼ。
此度はチト昔を思い出シながら、浮世の戯れとイこうかい。ドーモ、凡骨。通りすがりの竜神サマだぜィ。
悪魔を焼べる動力炉を使ってるってことは、排熱等々を掌る部分がありソうさな。つまり、妾が言いたいのは…何処ぞに隙間があるだろうってことサね。そう、煙が多少でも入り込めるなァ。
ってコトで、UCは紫龍ノ嘆息。悪魔が息をシているかは知らねェが…異物が己の周囲を取り巻いてたら、何も効果が無くとも多少は動揺サせられるだろうゼ。勿論、隙間がありゃ操縦席も同ジく、な。
さて、細工は流々。後は仕上げをご覧じなァ。
ナに、妾が甲冑くらい斬れねェワケがない、ってヤツさナ。
●まるで息をするかのように
損傷しつつ軍港区画を移動する量産型アンリマンユ。
そこへ襲い掛かるのは鬼の拳。
「悪魔の力を弱める、ねぇ……」
荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)が拳を叩き込む。
「まあ、難しく考えることは無いか」
一撃を受け、たたらを踏んだ影朧甲冑に更に一撃を打つ!
「いつも通り、私にできる事を粛々とこなすだけよ」
そうはさせんとアンリマンユが憤怒の兜割を叩き込めば、それを拳で迎え撃ち武器を横へと弾けば、更に一撃。
互いの衝撃で足元が崩壊したせいか、最後の鬼の拳は影朧甲冑の盾でいなされた。
|鉄塊拳《アイアン・ナックル》
ただ徹底的に拳で殴り、拳で受け、拳で返す、拳の錬磨が産み出す業。
そこにつかさの人外のフィジカルと怪力を使いこなす技術が重なれば、戦いの衝撃で地面が崩壊しなければ、ここで終わっていただろう。
「やるわね……」
塩水がにじみ出るコンクリートの上に立ち羅刹が笑う。
盾の使い方から伝わる高い操縦技量。
叩き込んだ拳の一撃も致命打にならず、動力部分に当たらなかったのもそのせいだろう。
その様子を毒島・雅樂(屠龍・f28113)はコンテナの上から懐かしそうに眺め、煙管を咥えた。
「懐かシいさねェ……大暴れシてた時を思い出す風の匂いだゼ」
このまま高みの見物も粋とは思いつつも、それは少々好みに欠ける。
故に雅樂は砕けたコンクリートの大地に降り、煙を吐いた。
「ヨウ」
「あら、助太刀?」
竜神の挨拶に羅刹が問いかける。
「そンなとこさネ」
「じゃあ、お願いするわ」
つかさの言葉に雅樂は目を開き、口笛を吹いた。
人によって認識に差異はあるが脳筋とはただ腕力で解決する思考ではない。
自分が有利になる要素があり、自分の力が存分に解決できる方法があれば躊躇いなくそれを選び、行動する思考である。
ただ大抵のことは大体腕力で解決するので、そういう面を見ることは少ないだけである。
嘗ての邪神との戦いに於いては武闘派で鳴らした雅樂にもそういう面はある。
今は謎を解き、智を喰らう方に興味が行ってしまったがためになりを潜めているがつかさの考えていることは充分に分かる。
「此度はチト昔を思い出シながら、浮世の戯れとイこうかい」
煙管片手に竜神が歩く。
「ドーモ、凡骨。通りすがりの竜神サマだぜィ」
毒島・雅樂の名乗りに対して、影朧甲冑の乗り手はトグルスイッチを親指で弾くことで応えた。
赫魔召喚
獄炎の術を操る悪魔「アスモデウス」が武器より顕現し、周辺を地獄の炎を炙っていく。
交渉など要らない。
それほどまでに操縦者と悪魔の力関係とアングラマンユの強さは差があるのだから。
けれど幽世の竜神には相性が悪い。
煙管を咥え、紫煙をたなびかせれば煙は龍となって炎と悪魔を喰らうのだから。
煙がアスモデウスから呼吸を奪い、獄炎から酸素を奪う。
息を吸わねば人間の体温が上がらないように獄炎すら紫煙の中では燃え続けることは難しい、そして紫煙龍は排熱管を辿って動力炉の悪魔すら喰らう。
悪魔自体が呼吸するかどうかは関係なかった。
この状況でダメージを永続的に与えていき、視界を奪う事が重要なのだから。
紫煙が晴れれば、獄炎の悪魔の姿はない。故に名は――
|紫龍ノ嘆息《ソシテダレモイナクナッタ》
「さて、細工は流々。後は仕上げをご覧じなァ」
雅樂が長脇差を抜き駆けるとつかさがそれに続く。
斬撃一閃!
「ナに、妾が甲冑くらい斬れねェワケがない、ってヤツさナ」
動力部の装甲が切り裂かれたところに羅刹が拳を握った。
「さて、この粗大ゴミは何処に棄てて来ようかしら?」
――ゴッ!
鈍い音が一回響き……アングラマンユが空を舞った。
「……」
「……」
つかさと雅樂が互いを見つめ、次に影朧甲冑のいた場所を指差し、そして空を指す。
「ヤリすぎたかナァ」
頭を掻きつつ呟く竜神。
「大丈夫じゃない?」
空を見て竜神は言葉を続けた。
「これで壊れれば、そこまで。もしまだ生き残ってるなら……」
「美味しいところは譲るのがわたし達の役目ってことよ」
つかさの笑みに雅樂もつられて笑ってしまった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
神酒坂・恭二郎
さて、まともにやり合えば相当に厄介な相手だね
だが、迷いの無さが命取りだ
愛刀を肩に担いで飄々と前に出て対峙する
引かば押し、押さば引くでのらりくらりと相手の勢いを【受け流し】つつ、相手を【竜脈使い】で定めた所定のポイントまで誘導したい
この相手に対しては見た目ほど楽な凌ぎじゃないが、涼しい顔をするのが男の見栄だ
「ここだね。力を削がせてもらうよ」
ポイントに入った所で、風桜子を籠めた刀を地面に突き立て【破魔、結界術】を展開したい
後は、動きの鈍った相手の上段の構えに【覚悟】で踏み込み、零距離からの刺突の隠し玉での一撃を狙おう
「悪いが。こっからぶちぬくぜ」
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎SPD
【機関】
量産型とは言え、ベースは一緒。
ダイモンが燃料なんだろう?着火のしやすさ、着火のしにくさの値、内燃機関のハイカラさはどんなものかな、お爺さん?
【改変】
ぼくのユーベルコヲドで、ダイモンの燃料としての性質を改変。
ダイモンが燃焼機関に適さない場合、どうなるかはわかる通り。
きこやんの結界術で防ぎつつ、駆動系(鎧無視、部位破壊)の破壊、動きが鈍った所へトドメの貫通攻撃を伴った音響弾で内部からの破壊を試みるよ。
さてと、悪いけど、みんな前座だよ。
悪いお爺さんを懲らしめる為のね。
手の内は出来るだけ知っておきたいし、『今の|先覚者《ハイカラ》としての力』をみておきたいからね。
●終わりはハイカラに
瘴気に包まれた影朧甲冑が二度、三度、バウンドして区画の路面を傷つける。
「ほら、予想通り」
「お前さんの勘も中々だな」
手近なブロックに腰かけていた国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女ハイカラさん・f23254)の言葉に神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は只感嘆するばかり。
「勘じゃないけどね」
否定しつつ二丁の軽機関銃を持ち鈴鹿が立ち上がった。
「それはそれで、やはり流石と言った所だね」
暗に計算していた事を伝えられ、恭二郎は銀河一文字を抜く。
目の前の女性は何かを知っているだろうが、それを聞くほど野暮ではない。
スペース剣豪たる神酒坂・恭二郎が今為すべきことは国栖ヶ谷・鈴鹿のやることを手伝う事なのだから。
「量産型とは言え、ベースは一緒」
パーラーメイドとして見せる笑みは消え、紫の瞳が見つめるのは祖父の作品。
「|悪魔《ダイモン》が燃料なんだろう?」
|父の残したもの《ハイカラ》が機構を把握し問いかける。
「着火のしやすさ、着火のしにくさの値、内燃機関のハイカラさはどんなものかな、お爺さん?」
直後、アングラマンユの砲から放たれたアスモデウスが炎を放ち、戦場は獄炎の檻へと変わっていく。
「赫魔召喚――でも、光るものはないね」
母が残した|きこやん《守護稲荷貴狐天皇》の結界に守られつつ鈴鹿は影朧甲冑を正確に評価した。
量産型としては正しいが欠けるものが多い。少なくとも好みではない。
だからナアサテイヤの弾丸を炸裂弾とすることで若きハイカラは答えとした。
獄炎の熱で銃弾の炸薬が爆発する。
その衝撃が炎を吹き飛ばすわずかな隙に恭二郎が飛び込んだ。
振り下ろされる刃を涼しい顔で受け流し、流水が如き歩みで剣豪は刃を打ち込む。
銀河の大業物とは言え、長き大正が作りし兵器を寸断するには業が要る。
だが充分なのだ。
アングラマンユの腕を掻い潜り、甲冑を叩き、盾をいなし、勢いに合わせて蹴りを撃つ。
顔色一つ変えず、鈴鹿に向かって片目を閉じる余裕すらあった。
そうでなくてはスペース剣豪なんてやってられない。
勿論、若きハイカラの娘とて、それくらいは分かる。
伊達に恋だってしていない。
だから合わせるのだ。
伊達男の見栄と技に自分の知識と御業を。
「ここだね」
影朧甲冑とすれ違いアングラマンユの背後に立つのは恭二郎。
「力を削がせてもらうよ」
大地に銀河一文字を突き立てれば破魔の結界がアスモデウスの炎を遮った。
――今だ。
鈴鹿の身が光を帯び、後光が世界を変えていく。
世界と言う名の一つのモノ、その魂に触れることで――世界を変える。
|厭穢欣浄パラダヰムシフト《プレヰング・ヱデン》
触れて変えたものは|悪魔《ダイモン》の燃料としての性質。
「ガソリンではタァビンは回せない、蒸気ではヱンジンは動かせない。ダイモンが燃焼機関に適さない場合、どうなるかはわかる通り」
文字通り、燃焼そのものを封じられた影朧甲冑は緩慢な動きで武器を振り上げる。
せめて憤怒の一撃でも、と振るうのが目的か?
それとも龍脈のポイントを兜割りが如く破壊することで全員を巻き込むのが目的か?
どちらにしても――。
「さてと、悪いけど、みんな前座だよ」
時すでに遅し。
「悪いお爺さんを懲らしめる為のね」
迷い無き鈴鹿の放った機関銃弾が駆動系を撃ち抜き、続けざまに恭二郎が覚悟を持って踏み込む。
「手の内は出来るだけ知っておきたいし、『今の|先覚者《ハイカラ》としての力』をみておきたいからね」
|先覚者《ハイカラ》の娘が告げて撃つのは貫通音響弾。
その弾丸を押し込む様に恭二郎の切っ先が触れる。
「悪いが。こっからぶちぬくぜ」
全身のバネと螺旋状に練り上げた風桜子が弾丸を加速させ、発生した力場が音響弾の反響を収束、振幅させていく。
|石動《イスルギ》!!
スペース剣豪の刃がアングラマンユに届くと同時に黒き悪魔の甲冑は灰のようになって霧散した。
「……」
「……」
恭二郎と鈴鹿が互いを見て、そして歩き、すれちがう。
言葉は要らない。
戦争はまだ続き、二人の戦いも続くのだから。
浦潮斯徳にまだ積もっている雪はハイカラさんのように太陽を受け、輝いていた……。
大成功
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