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獣人世界大戦⑩〜幻に霞む春驟雨

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #幻朧帝国

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「今作戦の最終確認を行います。——獣人世界大戦が開戦したのは知ってるよね。という訳で早速キミ達にも出撃して貰う訳だけど急を要する状況だから簡単に説明するよ」

 グリモア猟兵、星凪・ルイナ(空想図書館司書補佐・f40157)は集まった猟兵達の前に簡易な地図を広げると出撃地点を示した地点から敵陣営を示す地点へと真っすぐに線を引いた。戦場となるのは幻朧帝国の租借地となっている中国の遼東半島先端部に存在する「旅順要塞」。幻朧帝国軍の守備するこの要塞を陥落させる事が今作戦の目的だ。

「作戦内容は以上です。——ま、作戦自体は至ってシンプルなんだけど要塞に近寄るには要塞からの激しい砲撃を掻い潜る必要があるから一筋縄にはいかないだろうね。それに要塞を守備する戦闘機隊を排除して制空権を奪取する必要もありそうだね。そこで考えうる最善策は塹壕を掘り進み敵の猛攻を躱しながら敵戦闘機を撃破しつつ要塞へ進軍する事。友軍である獣人部隊と協力しながら塹壕を建設し、砲撃に対処していけば勝機は十分にある筈」

 そう言うとルイナは戦場に関する資料を猟兵達に提示する。進軍ルートは塹壕を考慮しなければ平地。「旅順要塞」はこの平地を見下ろす形で小高い丘の上に立っている。つまり、何も策が無ければ要塞、戦闘機双方にとって恰好の的になってしまうだろう。更に提示されたのは獣人部隊の装備品の一部が写された写真であり、迫撃砲や大砲などが並んでいる。どれも戦闘機や要塞に対しての攻撃に適しているものと思われる。

「状況はまさに地獄の塹壕戦。獣人部隊も準備は万全に整えてはいるけれど――彼らがどうなるか。この物語がどんな結末を迎えるかはキミ達に委ねられている。——どうか、ご武運を」


鏡花
 ゴールデンウィーク?なにそれ美味しいの状態の鏡花です。今回は早速開始された獣人世界大戦シナリオとなります。

 ・1章(集団戦)
 敵戦闘機を排除しつつ塹壕を利用し進軍して旅順要塞へと攻撃を仕掛けてください。当シナリオでは猟兵と共にそれなりに武装を整えた獣人部隊も同行します。彼らとの連携次第で有利にシナリオを進める事も可能になります。

 【塹壕を建設し、要塞に接近する】【敵の絶え間ない砲撃に対処する】これらに基づいた行動にプレイングボーナスが与えられます。
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第1章 集団戦 『制空戦闘機』

POW   :    ワンショット・ワンキル
【機銃弾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    ダイブアンドズーム
敵より【高い高度、または良好な速力を有する】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    編隊空中戦闘
【同じ目的を持つ僚機】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[同じ目的を持つ僚機]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。

イラスト:滄。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天羽々斬・布都乃
「要塞攻略戦……ですか」
『要塞からの砲撃に戦闘機からの銃撃か。厄介じゃな』

式神のいなりの言葉に頷き、獣人部隊の皆さんに声をかけます。

「ここは私が囮になります。
皆さんはその隙に要塞と航空部隊へ攻撃を」

天羽々斬剣と布都御魂剣を構え、未来視を発動。
そのまま要塞に向かって平地を疾走します。

『布都乃よ、これでは狙ってくれと言っておるようなものじゃぞ』
「ええ、私が狙われている間は味方が自由に攻撃できますから」

要塞と上空、両方からの激しい攻撃を未来視によって紙一重で回避していきますが――

「くっ……」

高度と速力で勝る航空機からの射撃を回避しきれず――
そこに要塞からの砲撃が迫ってきます。

「せめて一太刀――!」



 黒煙揺蕩う空が唸っている。響き渡る喧騒が世界大戦が始まった事を鮮明に告げている。中国遼東半島に座する「旅順要塞」。そこからの激しい砲撃を遠く離れた塹壕から天羽々斬・布都乃 (未来視の力を持つ陰陽師・f40613)と獣人部隊は眺めていた。

「要塞攻略戦……ですか」
『要塞からの砲撃に戦闘機からの銃撃か。厄介じゃな』

 式神である狐のいなりの言葉に頷きながら布都乃は忙しなく獣人達が行き交う塹壕内を見渡した。

「進路の確保はどうなってんだ!このままじゃジリ貧だぞ!」
「そんなん分かってるさ!だが塹壕を掘ろうとしても砲撃が激し過ぎて崩れちまうんだよ!」

 爆音と銃声と獣人達の怒鳴り合いの中、布都乃は静かに一つ息を零し。そして獣人達に向かって口を開いた。

「此処は私が囮になります。皆さんはその隙に要塞と航空部隊へ攻撃を」

 布都乃はそう獣人部隊に告げるとその身を翻し、天羽々斬剣と布都御魂剣を引き抜いた。砂塵|烟《けぶ》る戦場に刀身が鈍く星のように煌めいている。

「お、おい!何をしようってんだ!?」
「――よろしくお願いします!」

 困惑する獣人部隊の制止を振り切って布都乃は平地へと飛び出して行く。――|未来見通す金色の瞳《グリモア》が砂塵に塗れた戦場を透き通す。見える未来は鉛の|春驟雨《はるしゅんゆ》と火薬の春雷が大地を砕く光景。それでも布都乃は止まる事無く要塞を目指して疾走する。

『布都乃よ、これでは狙ってくれと言っているようなものじゃぞ』

 布都乃の身を案じるいなりの言葉に、布都乃は確固たる決意を以て返答する。

「ええ、私が狙われている間は味方が自由に攻撃できますから」
『まったく……お主という奴は……ならば気張れよ布都乃!』
「……はい!」

 鼓膜を|劈《つんざ》くようなプロペラ音を響かせ制空戦闘機が編隊を組み布都乃を目掛けて空を翔ける。次の瞬間には火を吐く機銃――その光景を布都乃は既に知っている。浴びせられる弾幕を縫うようにその隙間に体を潜り込ませれば音を裂きながら弾丸が布都乃の肌を掠めるようにすれ違い大地に夥しい穴を穿って行く。そして地面を蹴りつけ前方に飛び込むように身を投げれば直前まで立っていた場所に要塞からの砲撃が直撃し砂を巻き上げながら火柱を空高く伸ばす。

『まだ来るぞ!気を緩めるな!』
「くっ……!」

 それはまるで死の|輪舞曲《ロンド》。決して生きては返さないという殺意を以て繰り出される猛攻を紙一重で避け続けていた布都乃だったが高度から高速射撃を繰り返す戦闘機の猛攻に次第に追い詰められていく。そしてついに無数の弾丸が布都乃の体を掠り肉を抉った。

「ああっ!?――ここで斃れる訳には……せめてこの一太刀を……!」

 鋭い痛みが布都乃の動きを制限する。それでも布都乃は気力を奮い立たせ無理やりにでも体を制御しようとする。そんな布都乃に止めを刺そうと戦闘機の編隊が地を這うように低空飛行を繰り出し正面から迫ろうとしていた。あの銃撃を受ければ今度こそ動けなくなり要塞からの砲撃から逃れる事は叶わないだろう。まさに万事休す――その時だった。

「撃て――ッ!!」

 轟く爆音。瞬間、正面から迫る戦闘機が一機を残し爆発炎上し墜落する。それは布都乃の揺動に乗じて前進した獣人部隊が設営した拠点から放たれた砲撃だった。

「待たせたな嬢ちゃん!おかげで攻撃の手筈は整った!援護する!」
「皆さん……!」
『好機じゃ布都乃!獣人達の期待に応えてやれ!』

 布都乃は痛みを堪え地面を蹴りつけ高く飛翔する。目前には突然の事態に攻撃の機会を失った戦闘機。布都乃が空中で刃を煌めかせればそれは炎を吹き上げ地へと墜ちていく。布都乃の陽動作戦は見事功を成し、友軍の前線を押し上げ敵要塞への攻撃手段を獲得する事に成功した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・月紬
要塞からの砲撃に加えて戦闘機ッスか。
化術で空中戦できなくもないけど、流石に多勢に無勢。
ここは地上部隊の支援に集中するッス!

獣人部隊の兵士から掘り進むべき方向を聞いて掘削開始!【究極塹壕線】!
要塞を狙える位置にトーチカを埋め込んで迫撃砲や大砲を設置。
トーチカを潰しに来る航空機を迎撃できる形で対空火器を設置し、対空陣地を構築する。

さらに、対空火器に『化術』を掛け、弾幕を実際より強力に見えるよう細工する。
対空射撃は当てるだけでなく、厚い弾幕で威圧して攻撃の機会を与えないためのもの!
空からの攻撃を牽制し、砲兵さん達に全力で要塞を攻撃してもらう!
勇敢なパイロットも思わず尻尾を巻くやつを見せてやるッス!



 砲撃のがなり声が轟けば大地が振動する。旅順要塞が見下ろす平地に掘られた塹壕から時折、臥待・月紬 (超級新兵(自称)化け狸・f40122)は顔を覗かせていた。

 (要塞からの砲撃と戦闘機……流石に空中戦を仕掛けるには分が悪いっスね。ここは地上部隊の支援に集中するっス!)

 戦況を分析し月袖は自分が打つべき最善の一手を考える。そんな最中、獣人部隊の兵士達が騒々しく行き交う塹壕の中で地図を広げ数人で取り囲む兵士達を見つけ月袖は声を掛けた。

「どうも……!自分は加勢に来た猟兵っス!」
「猟兵か、地獄へようこそ歓迎するぜ。早速だがコイツを見てくれ。此処から北東にあとちょっと掘り進めれば攻撃に絶好の場所があるんだが敵の攻撃が激し過ぎて手が回らねぇ。頼めるか?」

 月袖は提示された地図に視線を落とし、拠点の設立地点を確認すると大きく頷いた。

「了解したっス!パパッとやっちゃうんで暫しお待ちを!」
「ああ、任せたぜ。何人か人員を付ける。目処が立ったら合図を送ってくれ」

 月袖は数名の兵士達と目標地点へ向かって行動を開始する。目標地点への道は見晴らしの良い平地。敵の攻撃に晒されながら塹壕を掘り進めるなど不可能だ。だが、不可能を可能にする――それを月袖は実現できた。究極塹壕線――工兵として研ぎ澄まされた月袖の御業は通常では考えられない速度で塹壕を掘り進めていく。それも急拵えとは思えない程に支柱もしっかりと組み立てられた代物だ。

「ここまで進めれば十分っスね!本隊に合図を!帝国軍に楔を打ち込む為の拠点を構築するっス!」

 目標地点へ到達すると月袖はすぐさまに拠点の構築に取り掛かる。同行していた兵士達に指示を送ればそれに応えて次々と重火器が運び込まれてくる。

「此処からなら大砲で十分要塞を狙える筈……!次は……」
「本隊から増援が到着だ!」
「――了解!最後の仕上げと行くっスよ!」

 大砲、迫撃砲を設置すれば瞬く間にそれらを守る為にコンクリートの防壁で円形に取り囲みトーチカを構築する。すると、凄まじいプロペラ音がその場に居た全員の鼓膜を激しく打ち鳴らした。

「敵機接近!」
「ハッ!やっぱり来たっスね!まるっとお見通しっスよ!」

 堂々と構築される拠点を敵が見逃してくれる道理など無い。このように敵がこちらの拠点を狙って来る事を月袖は見通していた。月袖は当然その対処を怠る事などありはせず既にトーチカに併設されている対空陣地には空を睨む対空火器が並んでおり獣人部隊の配置も既に完了していた。

「さあさあ!ここを守り切れば自分たちの勝ちは目の前っス!ド派手にやっちゃって欲しいっス!」
「そりゃ勿論だが……これだけで本当に捌けるのか?」
「心配ご無用!自分には秘策があるっス……!」
「……了解だ!信じてるぜ!」

 トーチカに迫り来る制空戦闘機の編隊。それを前にして獣人部隊は月紬の合図を以て一斉掃射を展開する。断続的に響き渡る炎を吐く対空砲の咆哮。だが然し、やはりそれは火力不足と言わざる得ないもの――の筈だった。

 ≪敵陣地に対空砲を確認。任務続行に支障なし。攻撃を続行する……ん?――なんだこれは……?≫
 ≪話が違うぞ!こんなの急ごしらえの陣地からの攻撃じゃない!退避する!≫

 戦闘機を操る敵パイロットの目前に広がるのは視界を覆い尽くさんとするばかりの爆炎――地表から放たれる対空砲の弾幕だ。想像もしていなかった事態に戦闘機の編隊は機体を急上昇させトーチカ上空から離脱する。――それはまやかしだ。月紬の化術が魅せた|春驟雨《はるしゅんう》の幻だ。月紬の術中に嵌った敵機はありもしない虚影に騙され退かされたのだ。

「おいおい……こりゃ一体どうなってんだ?」
「へへ、虚仮威しって奴っス。当てる必要なんて無いっスからね。要は近づけないと思わせればそれでいいんです。そして、化かすのは狸の本分ってね」
「ふっ……なるほどな。――総員、この機を逃すな!全火力を要塞にぶち込んでやれ!」

 敵編隊を退け反撃の狼煙が上がる。砲兵達がトーチカ内を忙しく動き回り、大砲が炎を激しく吹き散らしながら轟音の輪唱を奏でる。兵士達の視線が灰色の空を泳ぎ、遠くに佇む旅順要塞へと向けられる。——着弾。爆炎が巻き起こり要塞の外壁が砂塵を散らしながら崩落する。

「着弾を確認!やったっス!!」

 旅順要塞への攻撃に成功し歓声が上がる。敵の制空戦闘機隊は再びその攻撃を阻もうと迫るが、対空陣地からの放射がそれを許さない。旅順要塞攻略を目指す獣人部隊は臥待・月紬の塹壕突貫作戦により要塞攻略の要となる拠点と継続的な攻撃手段を得る事に成功した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カー・ウォーターメロン
塹壕掘るんだよ!(でっかいカカポの振りをしてしれっと獣人部隊に紛れる)(ぷるぷる、ボクわるいUDCじゃないよ)

対要塞戦だから、敵の砲撃に縦貫されるのが怖いね。
【地形の利用】をしつつ【塹壕掘り】を進めるんだよ。
【集団戦術】を意識して獣人部隊の隊形にも注意を払うけど、
縦射されそうなポイントにはユーベルコードで掩体壕を建設!
塹壕内に着弾しそうな時は掩体壕に退避してもらうんだよー。

制空戦闘機が厄介だから、基本的には【迷彩】で周りのスイカに紛れて【目立たない】ように行動。
見つかったらマシンガンで迎撃!
回避が得意みたいだけど、速射と連射で数射ちゃ当たる戦法なんだよ。
要塞は獣人部隊のみんなの砲撃に任せるね!



 旅順要塞からの激しい攻撃に晒される塹壕内を前進する獣人部隊。そんな彼らの視線はとある人物に向けられていた。

(誰!?)
(誰だよコイツ)
(誰です!?)

 困惑する獣人達の視線の先にいるのは大きなフクロウオウム……所謂カカポと呼ばれる鳥の獣人――だと言い張るシャーマンゴーストであるカー・ウォーターメロン (マンゴーフレイム・f01967)だ。よく見てみれば確かにカカポに見えなくもないカーはシレッと獣人部隊に紛れ込み彼らと共に進んでいた。いつから紛れ込んでいたのかは誰にも分からないが、どことなく悪い者では無さそうな雰囲気を纏うカーに獣人部隊もなし崩し的にカーを受け入れ共に要塞攻略を目指している。

「さぁガンガン塹壕を掘るんだよ!」
「それは構わんが敵の攻撃が厳しくてこれ以上掘り進めるのはキツくないか?」
「ふふふ、そこはボクにお任せだよ!」

 腕をブンブン振って張り切る緑の縞々模様のマンゴー……もといシャーマンゴーストは意気揚々と獣人達の先陣に立ち塹壕の掘削を開始する。地質を上手く利用し手際良く掘り進めて行くその様に周囲の獣人達は感嘆の声を漏らした。

「さぁ、ボクに着いて来て!――そうだ、あんまりギュウギュウ詰めにならないように距離を保ってね!砲撃に狙われたら危ないから」

 カーは要塞からの砲撃を考慮して獣人部隊の隊形を進言する。これが幸いしてか獣人部隊は砲撃に晒されながらも柔軟に退避行動を取り被害無く前進する事が出来た。そして部隊が用いる大砲の射程が旅順要塞を捉える事が可能な目的地直前まで辿り着く。

「あと少しなんだが……ここだと要塞から狙い撃ちにされちまうな。それに戦闘機まで巡廻してやがる。これじゃ近付けないぞ」
「大丈夫!ボクにお任せあれ!」

 要塞への道を阻む難関。それを突破する為にカーは最後の秘策に打って出る。

「此処は今から|スイカの名産地《ボクノジンチ》!どこからでもかかってくるといいんだよ!」

 カーが高らかにそう宣言したかと思うと平地に瞬く間に蔓が伸び、辺り一帯はカーに似た縞々模様のスイカが繁殖する。一見ただのスイカ畑だがそれらで覆い隠すように塹壕や掩体壕が構築されている。獣人部隊はこのスイカ畑を隠れ蓑に更に要塞へと距離を詰めていく。そのカモフラージュは見事なもので特にカーは配色がスイカとほぼ同じな事もあり目を凝らしても気が付くのが難しい程だった。そして要塞の監視の目。対空戦闘機隊の巡廻を掻い潜り更に要塞近くまで距離を詰めた頃、旅順要塞に布陣する幻朧帝国軍は総攻撃に打って出た。弾薬を浪費してでもスイカ畑ごと獣人部隊を叩く目論見だ。

「うわわっ!総攻撃が始まったんだよ!戦闘機はボクに任せて!要塞への攻撃は任せたんだよ!」

 戦場はより一層喧騒に包まれる。砲撃が着弾し塹壕を覆う蔦を吹き飛ばし、機銃の掃射がスイカを打ち砕き赤い果肉を撒き散らす。烈しく大地が激震し獣人部隊が塹壕内で慌ただしく臨戦態勢を取る中、カーは群生するスイカに紛れ空の様子を伺っていた。狙いは戦闘機――プロペラ音が鳴り響く。戦闘機隊を直線上に捉えたその瞬間、カーは塹壕から飛び出し戦闘機隊を迎撃する。スイカ畑より放たれる弾幕。然し、戦闘機の操縦士の腕前もさる事ながら一瞬にて散開し弾幕を回避すると機体を即座に旋回させカーの位置を特定すると瞬く間に距離を詰める――この時を待っていた。

「そう簡単に当たってくれないのは分かってたんだよ!だったら当たるまで撃てばいいだけの話!さぁ、行くんだよ!」

 正面から突入を敢行する戦闘機隊をカーは迎え撃つ。彼が構えるは愛用のタネマシンガン。連射能力と速射能力に優れたそれから放たれる小さな黒い弾丸は戦闘機へ向かって疾走する。戦闘機は機体を傾け回避行動を取るがその物量作戦に次第に追い詰められついに捉えられる。主翼を撃ち抜かれ黒煙を噴き上げながら、戦闘を離脱。或いは、制御を失って地面へ墜落し爆散する。その戦果にカーが喜び飛び跳ねているとまた別の場所からも獣人達の声が上がった。

「旅順要塞への着弾を確認!砲弾を補填しろ!この勢いに乗るぞ!」
「みんなも要塞への攻撃に成功したんだね!よしよし!この調子で頑張るんだよ!」

 カーが敵戦闘機部隊の気を引いている合間に獣人部隊はカーの構築した塹壕、掩体壕を攻撃拠点とし要塞への攻撃に成功していた。この攻撃の成功は要塞への打撃のみならず制空権の奪取にも繋がる大戦果だろう。塹壕を構築し、既に数ヵ所の攻撃拠点の構築に成功した獣人部隊はこの戦場での勝利へと歩みを進めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
共闘、アドリブ歓迎
もう一押しのようね。鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する。
敵よりも良好な高度と速度、であれば十分達成できる。
[推力移動、滑空]による飛翔に加え、[環境適応]で高高度にも対応。
アームドフォートで[砲撃]、エクスターミネイターで、[レーザー射撃、牽制射撃]を行いつつ接近、
航空機群を大型フォースブレイドで[空中戦、武器巨大化、なぎ払い]。
そして、要塞からの砲撃を[瞬間思考力、戦闘演算、空中機動]で回避しながら
【驕れる愚者への神罰】の電脳術式を展開。
ゲートオープン、火力支援開始。
射線上の制空戦闘機群を巻き込み、旅順要塞へ隕石群をぶつける。
これで攪乱は充分ね。さあ、突撃するよ。



 灰色の空に浮かぶイクシア・レイブラント (翡翠色の機械天使・f37891)の緑の双眸が捉えるのはまるでジオラマのような地表。塹壕を駆使し要塞へと攻撃を仕掛ける獣人部隊とそんな彼らに雨のような砲撃を浴びせ掛ける旅順要塞双方の激しい戦闘により戦場には赤黒い爆炎の華が点々と咲いている。戦況は少しづつだが獣人部隊側に傾きつつある。だが以前として帝国軍の兵力が圧倒的である事に変わりはない。この戦いに終止符を打つ――強烈な一撃を要塞へ与える為に鎧装騎兵は空を駆る。

「もう一押しのようね」

 高高度の空ではその言葉は白い靄となって溶けて行く。肌寒い雲靄に於いても不思議と地上の熱気を感じれるような気がした。イクシアの視線の先に聳える旅順要塞。要塞の対空能力を凌ぐ高高度。対空戦闘機を上回る機動力。この条件が揃っている今ならば要塞に直接攻撃を叩き込む事が可能なのは明白だ。イクシアは呼吸を1つ。各部が鮮やかな光を纏わせる。

「――鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する」

 機械仕掛けの少女は空を翔ける。地上の兵士達が空を見上げれば、きっとそれは流星にさえ見えただろう。高高度から旅順要塞を目指して宙を翔け降りる。その視線の先にイクシアは複数の偵察機の姿を捉える。それは遥か上空から地上の獣人部隊の塹壕情報を収集する為に放たれた機体。当然、更にその遥か上空から迫るイクシアに気が付く事は無い。

「敵機を目視。攻撃を仕掛ける」

 イクシアは速度を緩める事無く敵機編隊の真上から携帯型の固定砲台アームドフォートによる砲撃で一機、二機と撃墜する。

 《奇襲――!?こんな上空で一体どこから!?》
 《上だ!総員散開しろ!狙い撃ちにされるぞ!》

 黒煙を吐き出し沈んでいく同胞の機体を後目に偵察機はイクシアの攻撃を避ける為に散開する。その手際の良さはまさに熟練の技だったがそれをも凌ぎイクシアは正確な砲撃で追撃を加える。静寂が破られた空でイクシアは視界の端に奇襲を察知し急行してくる敵機増援の姿を捉える。燃え盛り崩れ落ちていく機体の残骸を避け、更に宙を翔け降りるイクシアは主砲を分離しビット――FA・エクスターミネイターを展開する。接近する戦闘機の銃弾とイクシアの色鮮やかな光線が描く牽制射撃が交差するその境界を駆け抜ければその先に捉えるは旅順要塞とそれを守護する航空部隊――彼らが見たのは1人の少女が空からまるで降臨するかのような信じがたい光景だった。

 《総員退避……!くそ!間に合わん!》
 《おいおい……俺達はいつの間に天使と踊ってたんだ?》
「――それじゃ最後の|舞踏《戦い》に付き合って貰おうかな。――大丈夫、一撃で終わらせる」
 
 刹那、一閃――彼らが最後に見たのは光の剣、大型フォースブレイドを振り払うイクシアの姿だった。空を閃光が染める。誘爆する機体が大空に鮮やかな炎の華を咲かせる。爆炎の花畑を抜ければ旅順要塞は目前だ。イクシアの接近に気が付いた要塞も激しい砲撃を以て迎え撃つが弾道予測でさえいとも簡単に行う彼女の演算能力。圧倒的機動力を前にしてその体を掠める事すら無かった。

 「目標補足、充填開始、10、20、30……照準器調整完了、50、60、70……各部異常なし、90……充填完了、安全装置解除。投射。」

 ――|驕れる愚者への神罰《マス・エクスティンクション》。地上の獣人部隊は空で目まぐるしく繰り広げられていた戦いに視線を奪われていた。そして、イクシアが放ったそれは彼らにとって戦場とは思えない光景にも見えたかもしれない。イクシアが大量のエネルギーを放出し戦場を一際明るく照らしたかと思えばほうき星のような流星が空を翔ける。それは要塞からの砲撃や対空戦闘機すら巻き込んで要塞へと直進していく。獣人部隊の誰かが、綺麗だと声を漏らしたかと思えばその隕石群は要塞へと降り注ぎその圧倒的破壊力を以て要塞の機能を一時的に沈黙させた。

「着弾確認。要塞戦闘機能沈黙――これで攪乱は十分ね。さぁ、突撃するよ。あと一踏ん張りだから頑張ってね」

 イクシアのその言葉に呆然と空を見上げていた獣人部隊は平然を取り戻し、その勢いのままに要塞へと進軍する。航空戦力の大多数を失った帝国軍は制空権を失ったにほぼ等しい状況だろう。イクシアにより要塞の守りをまた1つ陥落させられた帝国軍はまた一歩、獣人部隊に後れを取る事になった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
この状況で塹壕を掘れというのも無茶を言ってくれる
とはいえ無策で飛び出せばどうなるかは火を見るより明らか……か

そうは言っても、掘削作業向けの便利な技など持っていないので、基本に忠実に体力任せで掘り進める事にする
一本道で真っ直ぐ掘り進めば早く要塞に辿り着けるだろうが、とはいえそれは敵も警戒するだろうし攻撃を受ければたちまち危機に陥る

なら、少々作業量が増えても分岐路を作るべきか。尤も、全部の塹壕を要塞まで繫げる必要はない
ここで必要なのは敵の注意を惹きつける事なので、分岐の方は適当な所で切り上げつつ
兵器を幾らか運び込んで、戦闘機や、可能なら要塞に攻撃を加えてから撤退。本命ルートを掘っていこう



 響く銃声。轟く爆音。灰色の空には黒煙が立ち昇り、塹壕には砲弾に吹き飛ばされた土砂が絶え間なく降り注ぐ。相変わらず地獄のような狂乱に包まれる戦場の中で夜刀神・鏡介 (道を探す者・f28122)は塹壕から顔を覗かせ旅順要塞の位置を確認する。

「この状況で塹壕を掘れというのも無茶を言ってくれるな……」

 そう苦笑する鏡介の目の前で地上から物資を搬送しようとしていた獣人部隊の兵士が爆風に吹き飛ばされ荷物ごと塹壕内に転がり落ちて来た。即座に他の兵士が駆けつけ、負傷した兵士を救護陣地へと連れて行く。

「とはいえ、無策に飛び出せばどうなるかは火を見るよりも明らか……か」

 この場に留まっていても進展は無い処か、却って危険を招くと判断した鏡介は兎にも角にも塹壕を掘り進めるべく、獣人部隊の兵士に助力を願い出る。当然、兵士はそれを快諾し、鏡介は獣人部隊の小隊へ編入され共に要塞攻略戦へ挑む事になった。

「さて……ご覧の通り、土を掘るだけの簡単な作業だが何より体力が要る。もしかしたらこの戦いを生き延びても筋肉痛でベッドから起きられない生活になっちまうかもしれんな。覚悟はいいか?」
「ああ……幸いにも体力には自信があるからな。生憎、塹壕を掘る事に関しては素人だから指導の方はよろしく頼む」
「くははっ!そんなん俺らだって力任せに掘るだけさ。さ、期待してるぜ猟兵殿」

 鏡介は喧噪の中、獣人達と塹壕を掘り進めて行く。力任せにスコップを土の壁に突き刺し削り取り、そして蓄積された土砂を交代で頭上から降り注ぐ銃弾の雨を掻い潜りながら塹壕外へと廃棄する。そのサイクルを何度も何度も繰り返せば体力だけでは無い、気力すらも激しく摩耗する事を嫌という程に体に叩き込まれる。土に塗れながら鏡介は自分達を見下ろす旅順要塞に静かに視線を向け、そして呼吸を1つ。|観の型【天眼】《カンノカタ・テンガン》――極限までに研ぎ澄まされた鏡介の『眼』は実際に置かれた戦場の状況を見極め、最善の策を導き出す。それを鏡介は獣人部隊に進言する。

「このまま掘り進めるのもいいが……分岐路を作らないか?」
「分岐路だと?そりゃまたどうしてだ?」

 鏡介は地面に簡易な地図を描いて説明する。まず、一本道であれば敵に警戒されやすく攻撃を受ければ逃げ場も無く、部隊はたちまちに危機に陥る事。分岐路を作ればそのリスクを分散できる上、囮にも利用でき場合によっては攻撃拠点にする事もできるという事。そんな説明を受けた獣人達は感嘆の声を漏らし、大きく頷いた。

「そりゃ名案だな猟兵殿。これなら奴さんらの目を欺けるかもしれんな。ただ、その分労力が増加するのは避けられんが――」
「今更、地獄に労力の1つや2つ増えた所でたいして変わらんさ。それに要は敵の陽動が出来ればそれでいい。分岐の方は適当に切り上げてやればいい」
「ハッ……そりゃそうだ!なら早速おっぱじめるとするか!」

 鏡介の案通りに獣人部隊は複数の塹壕を同時に掘り進めて行く。西側に迂回するルート。東側に迂回するルート。そして要塞を目指す本命の中央ルート。鏡介は分隊と共に東側のルートを掘り進めて行く。こちらは謂わる、囮。陽動の為の道だ。とはいえ、本命の塹壕を掘り進めるのと必要な労力は変わらない。相も変わらず汗水を流して作業を行っていると、突如爆音が響き渡り作成途中の塹壕の土壁が崩落して埋まる。そして激しいプロペラ音と共に飛行機隊が鏡介らのいる塹壕目掛けて宙を翔ける。塹壕に気が付いた旅順要塞側が獣人部隊の進軍を阻止するべく攻撃を仕掛けて来たのだ。

 「――来たな。敵の気を引き付けよう」

 鏡介が合図を送れば、獣人部隊の兵士達は即座に臨戦態勢を取り、後続が運搬してきた機銃を空に向けて構える。

「よっしゃ!暴れてやるぜ!手持ちの弾薬を全部奴らにプレゼントしてやれ!」

 待ってましたと言わんばかりの歓声が上がり、迫り来る戦闘機隊に向かって掃射を開始する。断続的に銃声がけたたましく響き、カラカラと空の薬莢が塹壕内を転がっていく。撃ち抜かれ火を噴く戦闘機――それらが地に墜ち爆発する最中、鏡介は塹壕から飛び出して戦火に煌めく刀身を抜き放つ。塹壕内を狙い、地を掠めるように飛来する戦闘機とすれ違うように一閃。両断された機体が空高く火柱を噴き上げる。

「上々だ。敵の注意は十分に引けただろう。今の間に本命の塹壕を進めよう」
「オッケー此処は俺達に任せておけ。アンタは先に戻って中央ルートから要塞を叩いてくれ。なに、ついでに一発や二発要塞にぶち込んどいてやるぜ」
「――分かった。武運を祈る」
「ああ、アンタもな」

 東側ルートの陽動に成功した鏡介は一足先に本命の中央ルートへと戻る。東側のみならず西側も陽動に成功した事が高じてか鏡介の目論見通りに中央ルートの警戒が疎かになっており、獣人部隊は順調に塹壕を掘り進める事に成功した。既に旅順要塞は目前でありこの塹壕を軸に直接白兵戦を仕掛ける事も可能になるだろう。塹壕から旅順要塞を見上げる鏡介。その瞳には獣人部隊の決死の攻撃で空高く黒煙を立ち昇らせる、外壁の砕けた敵軍の牙城が映っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
【炎心】
よーし、やってやるですよ!
チームででも上手くやれるはずです、ボクだって!
いーですか獣人部隊のやろーども!
てめーらは隊長達に従って穴でも掘ってやがれです!
ボクはもちろん空中戦です、あの骨董品どもの相手ですよ!
上空は一先ずボクにお任せです!
チェェェンジ!ファルコン!
塹壕掘っても上から攻撃されたら困るですからね、こっちに注目してもらうですよ!
多勢に無勢は承知の上です。
まずはスピードと弾幕で引っ掻き回して、動きを邪魔して行くですよ。皆が塹壕掘るのだけは邪魔させねーです!
時間を稼いだら後は片っ端から体当たりしてやるです!
動きを鈍らせたら地上からでも倒しやすいですからね。
要塞は……任せたですよ!


エドワルダ・ウッドストック
【炎心】
アドリブ歓迎

旅順要塞攻略作戦に参加いたしますわ。
ええ、行きましょう、清導、ファルコさん。

目標は敵の制空戦闘機の排除ですわね。
そのためにも、獣人部隊の皆さんと一緒に塹壕の中を進みます。
安心してくださいませ、わたくしたちが付いておりますわ!
砲撃で崩れた道をシャベルで切り拓き、戦闘機にはライフルの狙撃で威嚇して上空のファルコさんを支援しますわ。
砲撃への対処も塹壕の遮蔽をうまく使って切り抜けましょう。

要塞に接近すれば、こちらの反撃ですわね。
ライフルを構えて、清導のUCで増強された獣人部隊にわたくしの警護を頼みますわ。
このUCは、発動前後が無防備になりますので……。
この一撃で、要塞を穿ちますわ!


空桐・清導
【炎心】
アドリブ大歓迎

「一緒に来てくれてありがとうな。エド!ファルコ!
2人がいれば百、いや!万人力だ!!
全力でぶち当たって行こうぜ!」

「この戦争に勝利するためにも旅順要塞は落とさないといけないな!
そのためにも、みんな!力を貸してくれ!」
獣人達に声をかけて士気を高める
そしてUCの力で全員の能力を強化していく

「前に進むためにも塹壕を掘るぞ!
力仕事なら任せてくれ!」
スコップを[気合い]と[根性]でガンガン掘っていく
「ファルコ、気合い入っているな!
オレも負けられないぜ!」

掘り終わってエドが要塞を攻撃しだしたら、
サンライザーで戦闘機と要塞を攻撃!
飛行機には[誘導弾]
要塞には[エネルギー充填]した砲撃だ!



 獣人世界大戦が開戦してから数日――中国遼東半島の旅順要塞を巡る獣人部隊と幻朧帝国軍の応酬は未だ苛烈を極めていた。獣人達が忙しなく行き来する塹壕内では3人の猟兵が獣人部隊に加勢する為に集っている。

「一緒に来てくれてありがとうな。エド!ファルコ!2人がいれば百、いや!万人力だ!!全力でぶち当たって行こうぜ!」

 この争乱の中でも一際目立つ真紅の機械鎧を纏う空桐・清導 (ブレイザイン・f28542)は共にこの大戦への参戦を決意した二人の猟兵にお礼の言葉を述べる。その言葉を受け、シカ系淑女であるエドワルダ・ウッドストック (金雀枝の黒太子・f39970)は淑やかに頷いた。

「ええ、勿論ですわ。この獣人世界大戦こそわたくし達に訪れた反撃の時ですわ。清導、ファルコさん。共に行きましょう」

 そんな二人の傍らでファルコ・アロー (ベィビィバード・f42991)は今か今かと出陣の時を待っていた。

「よーし、やってやるですよ!チームででも上手くやれるはずです、ボクだって!さぁさぁ!いいですか獣人部隊のやろーども!あの要塞はボク達が落としてやるです。てめーらは隊長達に従って穴でも掘ってやがれです!」

 自信満々にそう啖呵を切るファルコに獣人達は一時作業を止め、どこか微笑ましそうに彼女に視線を送る。

「おーおー、随分と威勢の良いチビッ子じゃねーか。穴を掘ってるだけで要塞を落とせるんだったらそりゃ願ってもない話だぜ」

「ははっ!そうだな!この戦争に勝利するためにも旅順要塞は落とさないといけないな!」

 清導の言葉に獣人達は言葉を潜め耳を傾けた。そうせざるを得ない力強さが清導の言葉には――瞳には宿っていた。

「この戦いはきっと厳しいものになるだろう。それでも俺達は大切な人達を守る為に戦わなきゃいけない。――さぁ、|英雄《ヒーロー》になりに行こうぜみんな。力を貸してくれ!」

 人は誰しもが英雄になれる訳では無い。だが然し、決意を以てこの戦場に集い誰かを守る為に立ち向かう者達は確かに誰かにとっての英雄だった。

「英雄か……そりゃ悪くねぇな。カミさんも惚れ直しちまうかもしれんな」
「いっちょ、英雄とやらになってやるか!」

 清導の言葉に獣人部隊の士気は急激に高まっていく。それだけでは無い、その場に居た者達は清導の言葉の力に感化され一様にその能力を強化されていく。

「流石ですわね清導。ええ、わたくし達は立ち止まる訳にはまいりません。さぁ皆さん、共に進みましょう。安心してくださいませ!わたくし達が付いておりますわ!」
「当然なのです!さぁ、空中はボクにお任せです!あの骨董品共の相手をしてやりますよ!」

 それぞれの気合も十分に清導とエドワルダは塹壕を掘り進め旅順要塞を目指す地上ルート。ファルコは帝国軍の対空戦闘機隊が支配する空を抜ける上空ルートに分かれて進軍を開始する。

「さぁ、行くですよ!ウィングアップ!チェェェェンジ!ファルコン!」

 掛け声と共にファルコは全長10mの戦闘機へと変身を遂げる。瞬く間に空を翔け上がる彼女は一切の躊躇なく対空戦闘機の編隊の前へと飛び出して行く。突然出現した識別不能の機体の登場に帝国軍の航空部隊の注意は当然ファルコへと集中する。

「ボクが相手してやるですよ骨董品共!地上には目を配らせてやらねーです!何機でも掛かって来るが良いですよ!」

 ファルコと帝国航空部隊の攻撃はほぼ同時だった。レーザーと銃弾が飛び交う空をファルコは超高速で旋回し、航空部隊を錯乱する。航空部隊もそれに必死に喰らい付くが機動力の面でもファルコが優勢を取る事に成功している。そんな激しい空中戦を地上の清導とエドワルダは見上げていた。

「ファルコ、気合い入ってるな!オレも負けてられないぜ!」
「ええ、ファルコさんが注意を引いてくれている間にわたくし達も進みましょう。要塞攻略の為にはあの戦闘機の排除も必須ですしやる事はまだまだたくさんありますわ。さぁ、皆さん行きましょう!」

「「おおーーっ!!」」

 士気も高らかに獣人部隊は塹壕を掘り進める。清導もエドワルダもシャベルを手に獣人部隊と共に前線を抉じ開け進んでいく。砲撃で塹壕が崩されようと、雨のような砲撃に晒されようとも決して怯む事無く道を切り開いていく。

「砲撃が来ますわ!伏せて下さい!」
「これは随分な歓迎だな……!だが、立ち止まる訳にはいかない!力仕事なら任せてくれ!ガンガン掘ってくぜ!」
「ええ、任せましたわ清導。私は少々、ファルコさんの掩護を行います」

 激しい要塞からの攻撃の合間を見て、エドワルダは塹壕から身を乗り出し空を仰ぐ。その視線の先には敵機と空中格闘戦を繰り広げるファルコの姿。エドワルダはそんな彼女を援護する為にライフル銃を構え、砲撃の爆風にも怯まず正確な狙撃で敵機を牽制していく。その援護射撃を機にファルコは更なる一手に出る。敵機の弾幕を潜り抜け、弾丸が己の機体を掠る金属音を置き去りにその機動力を活かし直接敵機へと機体をぶつける特攻攻撃に更に敵陣営には動揺が広がった。

「さぁ、みんな!こんな所でどうだ!?」
「十分だ!これなら要塞攻撃に移れる!」

 清導がシャベルを大地に突き立てる。土に塗れた|英雄《ヒーロー》が全身全力を掛けて作り上げた塹壕は要塞攻略の起点にするには十分過ぎる程で、獣人部隊もその完成に更に士気を高め反転攻勢へ意欲を向ける。その塹壕内に援護射撃を切り上げライフルを抱えたエドワルドが颯爽と戻って来た。

「正念場ですわね。――ガーター騎士団副団長としてあの要塞を射抜いてみせますわ……必ずや!みなさま、援護をお願い致します!」

 旅順要塞を見据え、塹壕の土壁から愛用のライフル銃を構えるとエドワルダは祈るように瞳を閉じる。
 
「任せたぞエド!さぁ、オレ達も援護に回ろう!みんな行くぞ!」
「おう!敵は近づけさせないぜ!対空砲用意!機銃部隊は前に出ろ!弾幕を貼るぞ!」
「ファルコ!オレも加勢するぞ!」

 要塞への強烈な一撃を与える為に精神を研ぎ澄ませるエドワルダを援護する為に、清導と共に獣人部隊は一斉攻撃に転じる。対空砲が炎を吹き、空に爆炎を咲かせ、機銃からの掃射が戦場を激しく明滅させる。更に清導の纏う真紅の鎧に搭載された砲撃用超兵器サンライザーが太陽の如き炎で敵航空部隊を穿っていく。

「辿り着きやがったですね!ボクの活躍はまだまだこれからですよ!目にものを見るがいいです!空はボクのものだ!」

 空を翔けまわり、次々と敵機を地に堕としていけばそんなファルコに迫る他の敵機を地上から放たれた太陽の炎が捉え撃ち落とす。猟兵、獣人部隊の連合軍が守る塹壕にもはや帝国軍が為す術はなく、既に制空権もファルコが掌握していると言っても過言では無い。そんな最中、ついにエドワルドの準備が整った。

「――皆さん、お待たせ致しました。いざ、かの要塞を撃ち抜いてみせましょう!」

 呼吸1つ。琥珀の瞳に映るは帝国の牙城。彼女を阻害するものは既に無し。心臓の鼓動だけがただ一刻と時を刻む。――そして引き金が引かれる。
 
  ――|不退転の一射《ストライク・デスペラード》。戦場の騒音を蹴散らすように銃声が響き渡り、全てを賭した覚悟の一撃は彼女らの目の前に立ち塞がる旅順要塞を撃ち穿つ。その強烈な一撃は要塞の防壁を打ち崩し、要塞内の帝国兵力を薙ぎ払う。それは謂わば、獣人部隊の勝利を告げる鐘の音に等しかった。

「――命中!今こそ好機ですわ!」
「流石エドだな!みんな!要塞に攻め込むぞ!オレに続いてくれ!」

 湧き上がる獣人部隊。攻撃の成功を告げるエドワルダの声を合図に獣人部隊は清導を先陣に塹壕から飛び出して旅順要塞へと攻め込んでいく。要塞へと浴びせ掛けられる獣人部隊陣地からの放射に清導のサンライザーの砲撃により空高く上がる火柱。次々と攻撃機能を沈黙させられていく旅順要塞はその攻撃により甚大な打撃を受ける事になる。活気に獣人部隊が湧く中、大空より制空権をほぼ掌握したファルコも変身を解き帰還し、3人は再び合流を果たす。

「よし……!みんなよくやってくれた!作戦成功だ!」
「これは大きな一歩となりますわね……!」
「まーこれぐらいボク達によって朝飯前って奴ですよ。――ちょっとばかりヒヤヒヤしましたけどね」

 戦力の大多数を喪失した帝国軍。旅順要塞陥落も既に時間の問題ではあるだろう。それでもまだ第一戦線での激しい攻防戦は続いている。猟兵と獣人部隊の連合軍は闘争の先にある輝かしい未来を目指して戦場を駆け続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月06日


挿絵イラスト