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獣人世界大戦④〜優雅なる賭け事

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #クロックワーク・ヴィクトリア #狂気艦隊

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●19世紀の娯楽とは
 電気も通信も現代ほど発展していない19世紀当時の人々は、どんな娯楽で余暇を楽しんだのか。
 大道芸人、パノラマ絵画館、動物園に展示館、観劇、読書色々あるけれど。実はギャンブルもその一つ。
「競馬が主流だったらしいけど、実は賭け事、特にカードゲームは紳士のたしなみだったらしいよ?ハマりにハマって大金失くしてさあ大変!なんてこともよくあったんだって」
 なんて黒兎耳が言う。
「なーんでこんな話をするかと言うとね。この大戦に乗じてクロックワークス・ヴィクトリアの【狂気艦隊】が海を渡って、ロシアの首都・サンクトペテルブルクを攻略しようとしているの。みんなにはその【狂気艦隊】の一隻に潜入して、機関室を狙って破壊工作をしてほしいんだ」
 だけどね、と。
「機関室への道中には勿論、お邪魔虫がたぁくさん。ビクスドールのような蒸気人形がひしめいててさ、|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に則った振る舞いをしないと穏便に抜けらんないわけ。で、みんなに潜入して欲しい船のルールが」
 カチューシャのうさみみをみょんみょんと手で揺らすグリモア猟兵。
「【ギャンブルを楽しむこと】って!ね、簡単でしょ?ビクスドールとカードゲームか、あとはコイントスがちょっと流行みたいだから、適当に遊んであげてよ。それで機関室で破壊工作までしっかりよろしくね!館内は豪華なヴィクトリア朝だから、機関室までの道中も見ていて楽しいと思うよ。勿論、隠密行動できる手段があるなら、そっちでも全然OK!」
 そうして黒い兎はわるぅい笑み。
「どちらにしろ、バレたらBAN!お船より先に君たちが故障しちゃうことになる。お人形との賭け事遊びだけど、Betするのは君たちの命か乗員たちの命だよ。ねえ、たまにはスリルを味わってみない?」


なるーん
 おはこんちばんは、なるーんです。
 猟コレ立たせたくてOP書いたのは内緒です。

 このお船のルールは【ギャンブルを楽しむこと】です。
 コイントスまたはカードゲームでお人形と遊びましょう。
 カードゲームはポーカーです。

 ●プレイングボーナス……紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルールに従い、完璧な紳士淑女として振る舞う/迅速に破壊工作を行い、撤退する。

 ギャンブルシーンか破壊工作かどっちかに重きを置いた方がよろしいかと思います!
 採用人数は最低限(4~5名)になる予定。先着順です。
 戦争なのでOP公開後より受付。お返事は3日以内ギリギリになるかと。
 それではよろしくお願いいたします!
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第1章 冒険 『紳士淑女の作法』

POW   :    気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。

SPD   :    細かいミスをさりげなくごまかす。

WIZ   :    一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。

イラスト:fossil

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●華やかなりしヴィクトリア
 UDCアースやシルバーレインの歴史において19世紀とは英国が最も栄えた華やかなる時代だ。偉大なりし女王が統治していたかの時代、英国は世界の工場と称され、圧倒的な工業力と海軍力を誇っていた。
 果たして獣人戦線のクロックワーク・ヴィクトリアがそのような歴史の上に成り立っているかは不明だが、酷似しているのは確かだろう。おまけにそこに加わる蒸気魔法文明とUDCの気配。
 なればこそ、その繁栄は一面において歴史を上回ることも在りえはするか――送り出された猟兵たちの眼前に広がる光景は、混沌なれども絢爛たる様。
 光降り注ぐシャンデリア、磨き抜かれた大理石のフロア、舞踏会場を思わせるほどに広い賭事場。豪華に着飾る人形の紳士淑女たち。歓談のネタは今宵の賭事のことや、それの感想会か。微笑みや話題運び、ティーカップの持ち方まで洗練された身振り手振りは、指先ひとつ、足の運びの一つまでまさに紳士淑女そのもの――ときの英国の上流貴族の集まりとはこのようなものだったのだろうことを容易く想像させるほど。嗚呼、まさに華やかなりしヴィクトリア!
 しかし、そこには確かに異物もあった。蒸気魔法文明の影響か、本物か贋作かは不明だが、煌びやかな壁に飾られた絵画の額は、時折、蒸気を吐き出す無骨な配管。更によく見ればシャンデリアの輝きの影、つまるところ天井にも似たような配管がびっしり伝っていた。
 
 ――つまるところ簡単に言ってしまえば、猟兵たちの前には、スチームパンクとヴィクトリア朝が足し算されている光景が広がっていた。
 ――大丈夫、ちょっとごちゃついてるかもしれないが、双方の相性はいい筈!実際のスチームパンク・ファッションにだってヴィクトリア朝のものもあることだしね!
栗花落・澪
僕男だってわかってもらえるかな…
怪しそうだったらドレスを着て、淑女のフリで潜入します

私、ポーカーならそれなりに得意でしてよ
勝ち負け関係無く、楽しみましょう

上品な微笑で声をかけ
ポーカーを楽しみながらも細かい所作に気を配る
僕自身は男ではあるけど、テーブルマナーや振る舞いはモデルの姉仕込み
淑女になり切るくらいわけないよ

ポーカーは引きの強さも大事だけど、心理戦要素も意外と強い
相手の僅かな仕草や行動から役の程度を想像し
勝負に出るかどうかを判断する
上手く見極めれば小さな役でだって勝てる可能性はある
勿論それでも負ける時は負けるけどね

程よく遊んであげたら適当な言い訳で抜け出し
破壊工作頑張ります

※UCは判定用


アマネセル・エルドラート
「ポーカーね。プレイングカードなら、扱いは慣れてるわよ。」
普段から赤のプレイングカードは持ち歩いている。
カードの扱いなら手慣れた物だ。
とは言え、持ち込みのカードとのすり替えを疑われても良い事はないだろう。

「とりあえず、手持ちのカードは預けておくわ。」
素直に持っている赤のプレイングカードは預ける。後で取り戻せば良い話だ。

「手札は…っと。」
幸運には自信がある。手札は二枚のエース。ポジションは良くないが攻める価値は十分。

「行かせてもらうわ。レイズで。」
直前の3倍のチップを場に出そう。
エースがあと一枚場に出ればほぼ安泰、そうでなくともエースのワンペアは決まっている。
此処は強気に攻めてみよう。


夜刀神・鏡介
こちとらサクラミラージュの一般人
紳士淑女の作法と言われてもな……ま、出来るだけの事をやってみよう
一応紳士服に着替えて……流石に刀は持ち込めないかな。無手で行こう

聞いた所によると「紳士は常に余裕を持って行動するもの」なんて聞いた事もあるし、そのようにしよう。感情を隠したりするのは得意だしな
まずは適当にギャンブルを済ませて、人形達の警戒を解く
船内を露骨に徘徊しては怪しまれるだろうから、さり気なく情報収集
他の乗客ないし乗員から話を聞いて機関室の位置を把握して移動

機関室の適当な機械に向けて、神器化した左腕で一撃叩き込む
警備が出てきたら適当に誤魔化そう。素手でここまでの事をやるとは思うまいよ



●敬意をもって郷に従うのもまた|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》
 そんなちょっと混沌とした賭事場にて、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は情報収集に努めていた。
 破壊工作するにもまず機関室の正確な場所を知らないといけない。通常、上流貴族の賭事は特別な一部屋、少人数で嗜むものだが、これだけ大人数が集まっても尚、狭さを感じさない広い賭事場を設けられる規模の戦艦だと考えると――恐らくとんでもなく大きい。知らねば、絶対に、迷う。間違いない。
 頼みの愛刀を留守にさせた今、納刀している腰のあたりが寂しく落ち着かないが、感情を隠すのは鏡介の得意とするところであった。紳士は常に余裕を持って行動するもの、それもまた|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》。

 さて、情報もタダではない。此処では賭け事が全て。
 鏡介が機関室の場所を聞いた獣人紳士、他数名の猟兵と情報を引き換えにゲームで遊ぶことになった。
 紳士の出した条件は、3ゲームの結果で自分に勝てればOKで勝者は鏡介以外でも構わない、という緩いもの。紳士は戦艦の乗員で、戦争前の息抜きに来たそうだ。楽しく遊ぶのが此処のルールだ、と煙管をふかして笑う。
 親であるビクスドール――|ヒ素グリーン《猛毒の染料》で染めたクラシカルドレスを纏う、巻き毛の少女人形――が簡単なルール説明の後に、参加者に|賭事場専用のコイン《・・・・・・》とカードを配る。
 此処での賭事は専用のコインのみで行われるそうだ。最初はひとり15枚からスタートらしい。
「んで、機関室の場所なんて知ってどうするんだい?」
「勉強のためです。蒸気機関の勉強をしているのですが、こういった戦艦に入れて頂くのは初めてで」
「ああ、なるほど。勉強熱心だねぇ。で、お嬢ちゃんたちは?」
 話しかけられた淑女もとい栗花落・澪(泡沫の花・f03165)――本当は紳士です――は、上品な微笑みを浮かべる。
「私たち、知り合いですのよ。ポーカーならそれなりに得意ですもの、お友達なら協力して差し上げるものではなくて?」
「私も同じく、よ。愛用のカードは預けておいた方がいいかしらね」
 兎耳が愛らしいアマネセル・エルドラート(時計ウサギのアリスナイト・f34731)は愛用のカードを少女人形に渡す。少女人形はおとなしく受け取ると、卓の隅にそれを置いた。
「ご協力ありがとうございマス。ゲームセット後にお持ち帰りくだサイ。さあ、ゲームを始めまショウ」
 少女人形の機械的な一声に、さぁ、Let's Start The Game!

 1ゲームは所謂、チュートリアルのような穏やかさで終了して、さて2ゲーム以降。
 歓談まじりに楽しく遊ぶ中で、獣人紳士の眉が本当に僅かにしかめられたことを、澪は見逃さなかった。
(好機、かな?)
 思えど顔に出さぬが淑女。微笑み絶やさず、ただレイズを宣言する。さらりと出すは手持ちのチップ2/3ほど。これに驚くは少女人形以外の全員だ。
「勝負に出るね、お嬢さん」
「さあ、どうかしら。はったり、かもしれなくてよ?私たちは誰かが勝てばいいんですもの」
「はは、そりゃあ確かに。おじさん一人じゃあ荷が重かったか」
「どうかしら。まだ、諦めるのは早いですわ。ゲームは終わっていませんもの」
「そりゃあそうだな。コールっと」
「そう、じゃあ私も行かせてもらうわ。レイズで」
 獣人紳士が勝負に乗ったところで、アマネセルは賭けにでた。チップは手持ちの全てだ。勿論、全員絶句。
 アマネセルの手番はラストで、親以外は誰もゲームから降りられないタイミングだ。そうして、ぱらり、公開されたアマネセルの手札はエースのツーペア――No,場にエースが出ているのだからエースのスリーカード。
「女性は……時に、ええっと、とても、大胆だな」
 すっかり怒涛の展開にのまれていた鏡介が、消え入るような声で呟いた。

 さて、楽しいゲームをありがとう、と獣人紳士は快く機関室の場所を教えてくれた。
 賭事場よりスチームパンク調がより強くなった狭い廊下のその向こう、重たい鉄の扉を開けた先には熱いくらいの蒸気で蒸した機関室。
 鏡介はいくつかある機械の中からひとつを選別すると、神器化した左腕で容赦ない一撃を叩き込む。
「誰も素手でここまでの事をやるとは思うまいよ」
「あはは、うん、そうだね」
 澪はその思い切りのよさに思わず苦笑い。そうしてアマネセルとともに自分に出来得る限りの破壊工作を仕込んだのだった。ネジの一本、歯車ひとつ、欠けただけでも精密機械には致命的――鏡介のような豪胆さはなくとも、些細なことだって立派な破壊工作だろうから。
「!足音がするわ……!」
 配管のいくつかにヒビを入れていたアマネセルが、いちはやく気付く。
 間もなく鏡介や澪の耳にも、複数の足音が廊下から近付いてくるのがわかった。
 緊張が走る。もし、警備だったら?誤魔化せずにバレてしまったら?

 ――ともかくあとは脱出のみ。Hide and Seek?それともいっそ、Assassinate?
 さあ、どうか、そんな|命を賭けた選択《ギリギリのスリル》すら愉しんで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレーネジール・メーベルナッハ
えっとえっと、ギャンブルして遊んでいけばいーのかなー?
おっけーおっけー楽しく遊ぼうー♪

折角だから去年の猟コレのチャイナバニースタイルでお邪魔しまーす♪
チャイナドレスも正装だしねー。

勝負はカードゲームをやるよー。
でもでもボク、こーゆーのはルールが最低限分かるくらいだし、深く考えずに楽しく遊ぶ感じでやってくよー。
勝っても負けてもお気楽にへらへらふらふら、ちょっとふざけた感じでね。
そーすればUCの効果でそのうち勝てるようになるかなって!

勝ち越してきたら一旦ゲームを降りて、船内観光ついでに破壊工作しに行くよー。
機関部とかにボンベンメッサー投げ込んで、一気にどかーんどかーんってねー♪


エドワルダ・ウッドストック
SPD アドリブ連携歓迎
破壊工作重視

優雅なコレクションですわね。おめでとうございますわ。

さて。指定UCにより稲妻に変じて参ります。
蒸気機関の狂気艦隊であれば、通電する金属配管に困ることはないでしょう。
他の猟兵の方がギャンブルで紳士淑女の作法を振舞っている隙に、お邪魔虫たちと対峙することなく電の状態で隠密潜入を試みますわ。

首尾よく行ったら機関室をぶっ壊して行きますわ。
雷鳴電撃で精密機械も重要部品も、故障させて航行不能にして差し上げましょう。

うまく済ませられたらそのまま通電物質内移動で速やかに撤退いたしましょう。
他の猟兵の方も、無事に離脱できれば良いのですけれど……まあ、きっと大丈夫でしょう。


イチカ・バーチカ
蒸気人形相手にギャンブルが出来ると聞いたけど、どんな具合かしらね。

隠密に向いている訳でもないし、適度に楽しんで通り抜けようかしら。
仕事じゃなければ、勝ち負けは気にしないんだけど……
敵に負けて帰るわけにもいかないしね。
今日は確実に勝ちにいくわ。
完璧な紳士淑女として振る舞え……?
そう見えたら、何だって良いんでしょう?

適当に[盗み・物を隠す]で、使われているカードを袖の中に。
カードを差し替える[死角攻撃]による【イカサマ】、
同時使用の【ミスディレクション】で勝負を有利に持って行くわ。
紳士淑女は、手癖の悪さを悟らせないものでしょう?

疑われない程度の勝ちで切り上げて、破壊工作へ。
あぁ、遊び足りないわ。



●嘘は笑顔の裏に隠して、遊ぶときは楽しみきることもまた|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》
 先発組と入れかわり、次に賭事場へと訪れたのは――
「えっとえっと、ギャンブルして遊んでいけばいーのかなー?おっけーおっけー楽しく遊ぼうー♪」
 セクシーなチャイナ服と愛らしい兎耳が褐色気味の肌によく似合うフレーネジール・メーベルナッハ(俠気の凶奇の嬌喜の狂姫・f33354)――以降、レンちゃん――と。
「そうね、折角だもの、楽しみたいわ。蒸気人形相手にギャンブルが出来ると聞いたけど、どんな具合かしらね」
 その装いはまさに賭事を嗜むに相応しい。華やかなれどダイスの趣向を凝らした髪飾りに遊び心を忘れないイチカ・バーチカ(ノルカソルカ・f40796)。そして――。
(お二人とも頼みましたわ)
 その姿を雷のトナカイへと転じて密かに戦艦内を駆け巡るエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)の三人だ。
 機関室の正確な場所は知らねど、エドワルダが雷の速度で駆け巡るならばすぐに見つけられよう。問題は派手に通電してしまわぬよう気を付けることと、その万が一に備えてレンちゃんとイチカの二人が人形たちの気をどれだけ引き付けられるか、だ。
 事前の作戦会議は既に済んでいる。なので二人は。
「ねえねえ、そこのお人形さんたち!ボクと一緒に遊びましょー♪遊びましょー♪」
「そちらの皆さま方。よろしいかしら?私と一緒に遊んでいただける?」
 手当たり次第に人形たちに声をかけて、とことん遊びつくすことにした。

 さて、まずはレンちゃんの卓。
 レンちゃん、実はルールを最低限しか知らない。現にゲームをしていた最初の頃は、手持ちのチップを使い果たして入退室を繰り返していた――因みにゲームのチップは賭事場専用コインのみを使用。チップは持ち越し不可で、入退室の度にリセットされるよ――。
 まあ、何度負けてもレンちゃんは、えへへ、負けちゃった♪ちょっと待っててねー!なぁんて、へらへらふらふら。ちょろっとふざけたご様子で。けれど不思議なことに。
「あはは、あははは♪楽しいな楽しいね、楽しいよねー♪」
 ゲームを繰り返す毎に、不思議な力が働いてレンちゃんに運が向いていく。否、彼女自身の勝負勘が冴えていく。
 ギリギリの賭けのタイミングも、ハッタリすらも的確に見抜いてレイズ!ビッド!コール!
 強気にチップを吊り上げて、時に手持ちのコインを全て賭けてすら、楽しいねー♪ときゃらきゃら笑う。
「ええと、ストレート・フラッシュ?あはは、また勝ったーまた勝ったー♪」
 レンちゃんの独断場に、次は私が、なんて挑戦者すら出てくる始末。周りの人形たちは釘付けだ。

 対してイチカの卓はというと――。
「ふふ、また私の勝ちね」
 着実に勝ち星を上げ続けていた。ポーカーというゲーム、実は他のギャンブルゲームと異なり|プロ《・・》というものが存在する。日本にもプロ協会、プロ認定試験があるくらいだ。
 イチカのゲームでの立ち振る舞いは、それを思わせる程に洗練されていた。いっそ優雅ですらあって、|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に拘る人形たちも見惚れるほど。
 けれどギャラリーたちは気付かない。
 イチカの立ち振る舞いは当然、勝者の余裕と貴族の養女たる故、当然でこそあるけれど――勝敗の結果は、彼女の|イカサマの実力《・・・・・・・》だ。
 使われているカードをさりげなく袖の中に隠して。その立ち振る舞いすら、人形たちの視線誘導や事実誤認に利用する。イチカ自身は運が決して良い方ではないものの、それならば運以外の実力で勝敗を掴んでしまえばいいだけのこと。
 つまりポーカーはイチカのためのゲームのようなものだった。
 決して勝ちに驕ることなく、そして敗者を蔑むこともなく、ただただ娯楽を嗜むように楽しむイチカの姿に、人形たちはすっかり魅了されて。ゲームを見続けたいが故に、挑戦者が途絶えることはなかった。
(紳士淑女は、手癖の悪さを悟らせないものでしょう?)
 なんて思いすらイチカは淑やかな微笑みに隠す。

 そんな二人のおかげで――エドワルダは無事に、機関室へとたどり着いた。
 先発組に派手にぶちかまされた機関が既に黒煙をあげていて、機関室は蒸気と煙で混沌極まっていた。
 戦艦の蒸気機関、忙しなく駆動し続けるそれらのどれが果たしてメイン機関は詳細には判別できかねるけれども。
 ここまで既に壊れているならば大体の判別で構わないだろう。
 エドワルダは予め決めていた合図を二人に送り、先んじて破壊工作に乗り出す。
「精密機械も重要部品も故障させて、航行不能にして差し上げましょう」
 何も難しいことは何もない。エドワルダは既に雷へと転じた身。ただその身で軽やかに駆け抜けてしまえば、雷鳴雷撃が致命滝な機械たちは勝手に自壊してくれる。
 ばちりばちり、なんていよいよな音を立てる機械たちにトドメを刺したのは――
「お待たせ!お待たせ!」
「ああ、少し遊び足りないわ。けれど、これもお仕事だものね」
 バタバタと駆け付け早々、着弾地点で爆発する危険極まりないボンベンメッサーを派手にぶちかますレンちゃんと、特製のカードで配管のひび割れを致命的にしていくイチカだった。

「さあ、逃げますわよ」
 脱出経路は|雷《エドワルダ》の導きに従って。
 賭事場へ戻る頃には機関室へ続く廊下から派手な爆発音がして。間もなく襲い来るのは舐めあげるように迫る炎と熱、そして視界を塞ぐ黒い煙。混乱する乗組員たちと人形たちの悲鳴。人々と人形たちの騒動が導きの雷からレンとイチカを遠ざける。
 人込みをやっと掻き分けて、賭事場を過ぎる頃にはぐらり、傾き始める船。
 嗚呼、カチリコチリ、迫る|刻限《タイムリミット》は|沈没の時《死の足音》。
 ――さあ、どうか、そんな|命の刻限《ギリギリのスリル》すら嗜むように乗り越えて。

 そうして海を渡る戦艦は、派手にくの字に真っ二つ。水底へと消えた。
 終焉も華々しくあること、それもまた|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》と体現するかのように、沈み逝く人形たちの悲鳴はまるで歓声のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月04日


挿絵イラスト