獣人世界大戦②〜泳げ!? たい○き君!?!?
●アルプス山脈地下
アルプス山間部の地下深く。
そこには広大な迷宮が広がっていた。
いや、ただの迷宮ではない。
数多くの兵器が配備され、来るもの全てを打ち砕かんと待ち構えている。
まるで要塞のようなその迷宮を漂う影が。
ゆらり、ふわり。
兵器の影に隠れ、「それ」が何かはよく分からない。
しかし、どう見ても「それ」は地を這うのではなく、空中を泳ぐように飛んでいた。
ここはゾルダートグラード軍の要塞のはず、ならば|二足歩行型戦闘車輌《キャバリア》か、と、斥候の獣人は呟く。
とはいえキャバリアなら「二足歩行」のはずである。何故、空を泳いでいる?
ゾルダートグラード軍は空飛ぶキャバリアも開発していたのか? と斥候の獣人は驚愕する。
ゆらり、ふわり、とキャバリアらしきものは空中を泳ぐ。
危険だ、今すぐ逃げろ、と何故か本能が囁く。
敵が未知のキャバリアだからか、それとも何かとてつもなく恐ろしいものがあるのか――。
ぞくり、とした気配を感じ、斥候の獣人は振り返った。
そこに――。
巨大な、「魚」がいた。
それもただの魚ではない。
魚の形をしているが、その身体は小麦粉でできていた。
魚のように泳いでいるが、それは明らかに食料だった。
あれは見たことがある。|糧食《レーション》を加工して作られた、魚の形をしたスイーツ。確か、「たい焼き」と言っただろうか。
まさか、と斥候の獣人は呟く。
その口中に広がる唾液に「食べたい」と思う。
気が付けば、辺りは甘い香りに支配されていた。
斥候の獣人がたい焼きに手を伸ばす。
「やめろ、あれは敵だ」という本能の囁きは、もう聞こえない――。
●グリモアベース
「ってなわけで『獣人戦線』で戦争が始まりました!」
グリモアベースでテンション高く宣言するのはハーゲル・アポステル(バーチャルキャラクターのワールドハッカー・f37296)。相変わらずのハイテンションで、集められた猟兵たちは「こいついつも元気だなァ……」と顔を見合わせた。
「いや、まぁ、『獣人戦線』はいつも戦争真っただ中だけどさ、なんか今回その中でも特に大きな戦争が勃発しちゃったみたいで超大国同士がピリピリしててさ……」
そう言ったハーゲルが手元に浮かび上がらせたホロキーボードを操作すると、猟兵たちの前に一枚のスクリーンが浮かび上がる。
「今回オレが『視た』のはアルプス山脈地下にある迷宮要塞。まぁ、要塞だから多分ゾルダートグラード軍のものだと思う。そこでとんでもないものが出てきたんだよね……」
ハーゲルがキーを叩くと映像が切り替わり、迷宮要塞の一部を映しだす。
おお……? と猟兵たちがどよめく。
そこに映し出されていたのはどう見ても「たい焼き」と呼ばれるものだった。
それも一つではない。幾つものたい焼きが迷宮要塞の空中を泳いでいる。
「いやぁ、いくらゾルダートグラード軍のキャバリア技術力がやばくてもこれはないでしょー……。オレ個人としては『クロムキャバリア』製じゃないかなあ、って思うよ」
だってあそこのキャバリアって割と何でもありじゃん、とハーゲルが続ける。
「今回、みんなにお願いしたいのはこの多分『クロムキャバリア』製のたい焼キャバリアを撃退すること」
なんだよ「たい焼キャバリア」って、と猟兵の誰かがツッコむがハーゲルは気にしない。
「なんかさー、こんな何でもありキャバリアなんてオブリビオンマシン確定でしょー? 絶対放置しておくと大変なことになる……。特に超大国の食糧バランスがめちゃくちゃに」
「そっちかい!」
たまらず、猟兵の誰かが叫ぶ。
まあまあと周りの猟兵が宥めるが、考えることは誰しも同じだった。
――とりあえず、このたい焼キャバリアは何とかした方がいい。
こほん、とハーゲルが咳払いをする。
「とにかく、みんなにはこのたい焼キャバリアを消し炭にしてもらいたい。一応キャバリア扱いだからキャバリア持ってる人だったら少し楽できるかもしれないね」
そう言って、ハーゲルは舞うように指を空中に走らせた。
その軌跡がすっ、と空間を切り裂き、迷宮要塞へのポータルを開く。
「ここから先に進むも進まないもアンタたち次第。だけど、世界をめちゃくちゃにしようとする奴らの手からこの世界を守るために、みんなで頑張ってほしい」
先ほどまではめちゃくちゃなことを言っていたハーゲルだが、その言葉が力を持つ。
応、と猟兵たちは頷いた。
ここからは猟兵の戦い。世界を、あらゆる悪の手から守るための戦い。
ポータルに向かう猟兵たちの背に、ハーゲルが声を掛けた。
「たい焼きってことは……食べたらおいしいのかな……?」
「この期に及んでそれかー!!!!」
ハーゲルの食欲、侮るべからず。
蒼井 刹那
というわけで皆様前回の戦争ぶりです、な蒼井 刹那です。
今回は戦争シナリオ、1章完結なのでお気軽に寄ってらっしゃい見てらっしゃい食べてらっしゃい。
どうやらゾルダートグラード軍のものらしき迷宮要塞ですがそこを飛んでいるのはなんと、たい焼き。しかも量産型キャバリアらしい。
ハーゲル命名「たい焼キャバリア」ですが、こんなものが飛び回っていては戦線の食糧事情が崩壊してしまう!!!!
……のですが、オブリビオンマシンのたい焼きって、食べられるのかな……?
今回のプレイングボーナスは以下のものになります。
「キャバリアを用いた集団戦闘に対処する」
まぁ、相手がたい焼きなので……食べちゃって……いいよね……?
いっぱいいるし、1体くらい、食べても……いいよね……?
それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
第1章 集団戦
『『食量産型』Type-Yacky』
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POW : Health management
全身を【個包装】で覆い、自身の【食の衛生管理のレベル】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : Traditional handmade
【食量産型キャバリア】を操縦中、自身と[食量産型キャバリア]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
WIZ : Over reaction
自身が戦闘不能となる事で、【自身の体の一部を口にした】敵1体に大ダメージを与える。【対象が自身の美味しさ】を語ると更にダメージ増。
イラスト:RAW
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イコル・アダマンティウム
「◎」アドリブ・連携歓迎
「ん、いただきます」
ハーゲル
お土産、〆て……もってくね
愛機、キャバリアで出撃する、よ
【集団戦闘対処:SPD】
戦場を<ダッシュ>と<ジャンプ>で駆け抜け
相手を翻弄する、ね
突撃は<見切って>回避する、よ
後は殴ったり、蹴ったりして壊す
【手づかみ捕食:蹂躙】
[使用UC:EPライフサプライヤー]
キャバリアの手でたい焼きを握りつぶし、
キャバリアの武装能力で炉心にぶち込んでく、よ
「むぅ……
これだと味わえない、けど」
<エネルギー充填>
「燃料切れは、ない」
<継戦能力>
【お土産】
相手はキャバリア
地面に叩きつけて<グラップル>
気絶させて<鎧無視攻撃>
中の人を、取り出せば<叩き割り>
「げっと」
ぐぅ……。
目の前を大量に浮遊するたい焼キャバリアを前に、イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は腹の虫を鳴かせていた。
「……お腹空いた。ご飯食べたい」
そうだろう、目の前を泳ぐのは美味しそうなたい焼き、辺りは生地が焼け、中の粒あんが熱せられた甘い香りが漂っている。
しかし、相手をただのたい焼きと侮ってはいけない。たい焼き、もとい、たい焼キャバリアこと「『食量産型』Type-Yacky」はイコルの存在を認識し、押しつぶさんとばかりに一斉に落下してきた。
「ん、遅い」
イコルが素早く愛機【T.A.:L.ONE】に乗り込み、『食量産型』Type-Yackyの雨をかいくぐる。
『食量産型』Type-Yackyがその機体(?)に搭載された『Traditional handmade』の能力で地形からの激突ダメージを無効化、【T.A.:L.ONE】にもぶつかればあらゆる防護を無視する落下突撃を仕掛けてくる。
だが、【T.A.:L.ONE】の動きは素早く、戦場をダッシュとジャンプを駆使して駆け抜ける。『食量産型』Type-Yackyの突撃すら軽く見切って回避し、『食量産型』Type-Yackyは空中で互いに、そして地面に激突し、翻弄される。
地形からの激突ダメージは無効化できるものの、「あらゆる防護を無視する」『Traditional handmade』の突撃は味方同士にぶつかっても作用し、空中で幾つもの『食量産型』Type-Yackyがぶつかり、その|中身《粒あん》を空中にぶちまけていく。
一見、イコルが駆る【T.A.:L.ONE】に翻弄され、粒あんをぶちまけるしかできないように見える『食量産型』Type-Yackyではあったが、その数にものを言わせた攻撃は【T.A.:L.ONE】に少しずつ迫ってきていた。
「その程度、僕には届かない」
イコルが【T.A.:L.ONE】を操り、その機械の腕を伸ばす。
「貰った」
【T.A.:L.ONE】が自信に迫る『食量産型』Type-Yackyを掴む。
「ん、いただきます」
『食量産型』Type-Yackyが握りつぶされる。
握りつぶしたそれを、【T.A.:L.ONE】に搭載されたEPオーラエンジン内、生命力燃焼機構に押し込む。
『EPライフサプライヤー』、【T.A.:L.ONE】が握りつぶしたものをそのまま自身のエネルギーへと変換する動力機関。
生命力燃焼機構に押し込まれた『食量産型』Type-Yackyが瞬時にエネルギーへと変換され、【T.A.:L.ONE】の出力を高めていく。
「むぅ……。これだと味わえない、けど」
そう、『EPライフサプライヤー』のエネルギー変換は確かに【T.A.:L.ONE】の動力とはなる。なるのだが、イコルの腹の足しには全くならない。
その証拠に、イコルの腹はさっきから鳴りっぱなしであった。
「燃料切れは、ない」
イコルは次の『食量産型』Type-Yackyに鋭く視線を投げ、呟いた。
今は『食量産型』Type-Yackyの対処が先決である。実際に味わうのは戦いが一区切りついてからでいい。
【T.A.:L.ONE】が、次の『食量産型』Type-Yackyにターゲットを定める。
飛び交う『食量産型』Type-Yackyを殴り、蹴り、着実にその数を減らしていく。
「そういえば、ハーゲルにお土産持っていくって、約束したからね」
ある程度数が減ったところで、イコルは動きを変えた。
【T.A.:L.ONE】が新たな|『食量産型』Type-Yacky《ぎせいしゃ》に手を伸ばす。
掴み、地面に叩きつけると『食量産型』Type-Yackyはキャバリアであるはずなのに気絶したかのように地面に伸びる。
そこですかさず操縦者(!?)を摘まみ出せば『食量産型』Type-Yackyの開きが一つ。
「げっと」
表情には出ていなかったが、イコルの声には確かにハーゲルに対する土産ができた、という感情がこもっていた。
「ハーゲル、待ってて」
――その前に、僕も一口。
流石のイコルも空腹には耐えられなかった。
別の『食量産型』Type-Yackyを一体、手際よく捌き、かぶりつく。
「……ん、おいしい」
口の中いっぱいに広がる小麦粉の生地と甘さ控えめ、上質な粒あんのハーモニーにイコルは夢中になって『食量産型』Type-Yackyを頬張っていた。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
たい焼きが食べれると聞いて分身を連れてやってきました!
これからの長い戦争期間、しっかり栄養を補給しないといけませんからね。
そんなわけでたい焼き型オブリビオン討伐です。
我々は全員で151人いますので、一人一個までとしても、全部で151個のたい焼きが食べれる計算になります。実際に食べれるかは知りませんが、退治することには変わり在りません。
数には数で勝負。シャークチェーンソーや聖剣めいどかりばー、あるいは世界樹のバットを持ったかじできないさんズと共に突撃し、以心伝心の【集団戦術】という名の数に物を言わせた【暴力】で、たい焼きたちをフルボッコにしていきましょう。
「たい焼き祭りだ、ひゃっはー!」
「たい焼きが食べれると聞いて!」
『食量産型』Type-Yackyが飛び交い、時にはぶつかり合って|中身《粒あん》をぶちまける戦場に涎を垂らしながら飛び込んできた新たな|猟兵《フードファイター》が一人。
エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は目の前の光景に目を輝かせて興奮していた。
「これからの長い戦争期間、しっかり栄養を補給しないといけませんからね。腹が減っては何とやら、しっかり食べさせていただきます!」
エミリィの両手にナイフとフォークが握られているように見えたのは気のせいだろうか。
もはや食べる気満々のエミリィだが、『食量産型』Type-Yackyはそんな彼女にお構いなく群れを成して突撃してくる。
『Traditional handmade』により、地面に激突してもダメージがないからと降り注ぐ『食量産型』Type-Yackyをエミリィは素早い身のこなしで回避し、自身のUC『増えるメイドの術』で150体の分身を呼び出した。
「たい焼き祭りだ、ひゃっはー!」
エミリィを先頭にして、かじできないさんズが鬨の声を上げる。
目の前には無数の|『食量産型』Type-Yacky《極上スイーツ》が飛び回っているのだ。これから長く厳しい戦いが続くであろうことを考えるとこれはむしろ気合を入れるための儀式である。
エミリィも、かじできないさんズも、手に手に|シャークチェーンソー《ナイフ》や|聖剣めいどかりばー《フォーク》や|世界樹のバット《スプーン》を握り締め、『食量産型』Type-Yackyに突撃する。
「いただきまーす!!!!」
『食量産型』Type-Yackyに飛びつき、がぶり。
口いっぱいに頬張れば、香ばしい小麦の香りと共に少し熱めの粒あんがぷちぷちとした食感と共に極上の甘味を舌に乗せてくる。
甘すぎず、それでいてちゃんと味を主張する粒あんに、エミリィは身を震わせた。
――こんなおいしいたい焼き、食べたことがない。
「もっと、もっと食べさせてください!!!!」
こんなおいしいお仕事、滅多にありませんから、とエミリィは、そして150体のかじできないさんズ達は次の|『食量産型』Type-Yacky《ぎせいしゃ》に飛び掛かっていった。
もはやこれは戦いではない。
151人の餓えたメイドさんによる|集団戦術《大食い大会》である。
数の暴力? いや、違う。
たい焼き食べ放題会場と化した迷宮要塞は151人のメイドさんたちによって蹂躙されていくのであった……。
成功
🔵🔵🔴
バルタン・ノーヴェ
◎
消し炭にするなんてもったない!
ご安心くだサーイ! オブリビオンは、食べ物であります!
万能鍋を抱えてアルプス山脈の地下迷宮に踏み込んだ我輩は、ゾルダートグラードのType-Yackyを美味しく料理するのであります!
敵であろうとキャバリアであろうと、オブリビオンなら飛び切り美味しい食材化しマース!
個包装で覆われて高速飛翔する前に、万能鍋で攻撃しマース!
レッツ、美味しくナーレ!
うーん、香ばしい匂い! 少し味見して……イエス、テイスティ!
これは食糧自給率向上に役立ちマスネー!
さあ、片っ端から食材にして差し上げマスヨ! ヒャッハー!
無事に終わってもし許可されるなら、ハーゲル殿へのお土産に持ち帰りマース
「消し炭にするなんてとんでもない!」
目の前を泳ぐ『食量産型』Type-Yackyを前に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は思わず叫んでいた。
あまりにもおいしそうな焼き色のたい焼キャバリア……もとい『食量産型』Type-Yacky。背びれや尻尾や頭の部分から少しはみ出した生地の部分はカリッとして、それだけで見るものの食欲をそそる。
しかし、侮るなかれ。目の前のたい焼キャバリアは一応はオブリビオンなのである。本来なら食べるなど言語道断のはず……なのだが。
「ご安心くだサーイ! オブリビオンは、食べ物であります!」
そう、「オブビリオンは食べ物」なのである。胃に収めてしまえばそれはもう食べ物なのだ。
万能鍋を手に、バルタンは『食量産型』Type-Yackyに襲い掛かる。
『食量産型』Type-Yackyも食べられてなるものかと『Health management』による食品個装で身を包み、わが身を守ろうとする。
……が、食の衛生管理のレベル? 戦場と化した迷宮要塞でそんなものが維持できると思うのか? 周りは飛び散った粒あんや砕けた生地、餓えたレプリカントやメイドさんたちが群がる食べ放題会場では衛生管理のレベルは爆下がりし、戦闘力の増強や飛翔能力は望めない。
だからこそこの迷宮要塞はスイーツの|パラダイス《お祭り会場》となってしまったのだ。
流石のゾルダートグラード軍もこれは大きな誤算だっただろう。
いや、もしかするとこの『食量産型』Type-Yackyの出現自体がゾルダートグラード軍の想定の範囲を超えていたものなのかもしれない。
バルタンのUC『コック・バルタン』が『食量産型』Type-Yackyに炸裂する。
「レッツ、美味しくナーレ!」
万能鍋が『食量産型』Type-Yackyを捕え、バッター液をたっぷりと絡め、からりと揚げていく。
「うーん、香ばしい匂い!」
『食量産型』Type-Yackyの天ぷらにどこからともなく取り出した生クリームをたっぷり絞り、フルーツと共に皿に盛りつけていく。
その途中での味見は勿論忘れない。
初めて触る(?)食材は味見をしてこそ、最高の味付けでの調理ができる。
「イエス、テイスティ!」
この、たい焼きの天ぷらfeat.フルーツ盛り合わせは抜群の組み合わせだったようだ。
見た目にも華やかで、見たものの食欲をそそるスイーツがどんどん出来上がっていく。
それでもどんどん湧いて出る『食量産型』Type-Yackyにバルタンは笑みを隠せなかった。
「これは食糧自給率向上に役立ちマスネー!」
もはやこれは食糧問題の解決方法なのではないだろうか。
しかも、特にカロリーと糖分が重視される戦場でこのスイーツは救世主となりうる。
空中を泳ぎ回る『食量産型』Type-Yackyを見上げ、バルタンは万能鍋を振りかざした。
「さあ、片っ端から食材にして差し上げマスヨ! ヒャッハー!」
……ちなみに、この「たい焼きの天ぷらfeat.フルーツ盛り合わせ」は後程ハーゲルの元にもちゃんと届けられたらしい。
成功
🔵🔵🔴
ジャン・ジャックロウ
あー…たい焼キャバリア…ねぇ?グリモア猟兵は他の世界産って言ってたが、他の世界の奴は面白い事考えるな。
まあ、何でもいいか。今からぶっ潰すんだからなあッ!
『グラオザーム』に搭乗して戦闘だ。
飛翔するたい焼きを『グラオザームショルダーホーミングレーザーキャノン』で撃ち抜いていくぜ。
敵の攻撃は野生の勘で見切って回避よ。このキャバリアの機動力を舐めるなよッ!
数が多い…面倒だな。纏めて消し飛ばすか。
【オーバードウェポン・ガングニール】接続ッ!迷宮要塞ごと綺麗さっぱり消し飛びなぁッ!
とと、やり過ぎたか?オーバーヒートして動かないキャバリアを放棄してトンズラするぜ。
【アドリブ歓迎】
周りがたい焼キャバリアをいかに美味しく食べるか奮闘している中、冷静にその戦況を眺めているイヌの獣人が一人。
ジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)だ。
「あー……たい焼キャバリア……ねぇ? グリモア猟兵は他の世界産って言ってたが、他の世界の奴は面白い事考えるな」
元から獣人戦線生まれのジャンは「野良犬部隊」で様々な戦場を、そして敵を見てきた。
しかし流石に空飛ぶたい焼きは初めてである。
「まあ、何でもいいか。今からぶっ潰すんだからなあッ!」
が、結局のところ敵であるのなら潰すのが礼儀。
よし、とジャンは以前、退職金がわりに頂戴していたキャバリア「グラオザーム」に乗り込んだ。
起動するグラオザームを敵と認識した『食量産型』Type-Yackyが一斉に降下してくる。
先ほどから散々食べられたことを学習したかのように『Health management』で自身を食品個装し、食の衛生管理のレベルを上げるが、やはり粒あん飛び散る戦場ではそのレベルは上がらない。
そこを「グラオザームショルダーホーミングレーザーキャノン」が容赦なく撃ち抜いていった。
無数のレーザーが『食量産型』Type-Yackyを追尾、次々と撃墜していく。
灼かれた粒あんが香ばしい匂いで辺りを満たしていく。
とはいえ、『食量産型』Type-Yackyの数はとにかく多い。
ホーミングレーザーキャノンの餌食にならなかった『食量産型』Type-Yackyがグラオザームに襲い掛かる。
「遅い!」
ジャンの巧みな操縦がグラオザームを華麗に操り、『食量産型』Type-Yackyの攻撃を次々と回避していく。
イヌの獣人としての野生の勘。いや、それだけではない。使い捨てられるように投入された様々な過酷な戦場を生き抜いた経験が、『食量産型』Type-Yackyの攻撃など児戯のようなものだと囁いてくる。
再び放たれたホーミングレーザーキャノンがさらに『食量産型』Type-Yackyを焦がしていく。
「ヒャハハハッ! たい焼キャバリアがどんどん焦げていくぜ!」
いくらたい焼きでも食べきれないのなら焼き尽くしてしまえばいい。
次々と『食量産型』Type-Yackyを消し炭にしながら、ジャンはとっておきの|ユーベルコード《切り札》を発動させた。
「『|規格外武装・11連広域殲滅誘導弾《オーバードウェポン・ガングニール》』接続ッ! 迷宮要塞ごと綺麗さっぱり消し飛びなぁッ!」
グラオザームに搭載していた大型ミサイルが正式に接続される。
《警告・不明なユニットが接続されました》というアラートがコクピット内のディスプレイに表示されるがそんなことはどうでもいい。
ジャンの指が素早く動き、ターゲットロックオンのコマンドを入力する。
ディスプレイに表示された11のレティクルがそれぞれ敵をロックオンする。
「綺麗さっぱり消し飛びなぁッ!!」
ミサイルリリース。
11発の広域殲滅用追尾式大型ミサイルが『食量産型』Type-Yackyに、そしてついでのようにロックオンされた迷宮要塞の砲台に向かって飛翔する。
大爆発するミサイル、爆炎に巻き込まれて消し炭と化す無数の『食量産型』Type-Yacky。
砲台も爆発し、天井の一部が崩落し始める。
「とと、やりすぎたか?」
流石に|規格外武装・11連広域殲滅誘導弾《オーバードウェポン・ガングニール》はこの地下空間ではオーバーキルだったか? という考えが一瞬過るが、そんなことは自分には関係ない。
敵は吹き飛ばす、それだけだ。
オーバーヒートして動かなくなったグラオザームに「ありがとよ」と一声声をかけ、ジャンは地面に降り立った。
「俺ができることはここまでだ、さっさとトンズラするぜ!」
あっと言う間に姿が見えなくなったジャンの後ろには、無数の消し炭と崩壊を始める迷宮要塞が残されていた……。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
「もももももっ⁉ もっきゅーっ!!」
すごいのです! 大きいたい焼きなのです!
これ食べて良いのです?
わーいなのです! いただきますなのです!
個包装をペリペリして、潜り込んで食べるのです
ぱくっと尻尾の方から齧りついちゃうのです
きゅぴー! おいしいのです!
そのまま頭までむしゃむしゃするのです
たい焼き食べ放題なのですー!
【UC使用】で、食べれば食べるほどカントの食欲は止まらないのです!
Mコロイドとパチパチ静電気の力でマイクロ波を発生させ、たい焼きの水分子を加熱するのです
レンジでチンなのです!
たい焼きは冷めてもおいしいけど、ほかほかだともっとおいしいのです!
きゅぴぴぴぃ! おかわりくださいなのです!
「もももももっ⁉ もっきゅーっ!!」
目の前の|光景《たい焼きパラダイス》に、高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)は目を輝かせた。
迷宮要塞の奥の方では崩落が始まっているようだが、それでもまだ大量の|たい焼キャバリア《『食量産型』Type-Yacky》は空中を泳ぎ、少しでも敵を減らそうと索敵している。
その中の一体が、カントを発見した。
『食量産型』Type-Yackyの粒あんデータリンクが他のたい焼キャバリアにもその情報を伝え、獲物を見つけた『食量産型』Type-Yackyが『Health management』による食品個装で身を守りつつカントに襲い掛かる。
「すごいのです! 大きいたい焼きなのです! これ食べて良いのです?」
しかしながら、カントはそれに慌てる様子はない。
むしろカントの方が|獲物《ごちそう》を目にした子供のようにはしゃいでいる。
「わーいなのです! いただきますなのです!」
カントが迫りくる『食量産型』Type-Yackyに飛びつく。
食品個装は面倒だが何もなしで飛び回っていたたい焼きは先程の11連ミサイルの爆発による粉塵で少々汚れているから個装されている分不純物がない。
ぺりっと個装を剥がし、カントは袋の中に潜り込んだ。
「頭から、尻尾から、どっちから行きます!?」
たい焼きは大きく分けて「頭から派」と「尻尾から派」に二分される。ごく少数、「腹から派」や「背中から派」も存在するが、基本的に頭からは中の粒あんに到達しやすく、尻尾からはこんがり焼けた生地を楽しむことができる。
どちらから食べるか迷ったカントではあるが、どうやら尻尾からかじることに決めたらしい。
ぱくっと、尻尾にかじりつく。
小麦粉の香ばしい香りがカントの口の中いっぱいに広がる。
「もきゅー!!!!」
あまりの美味にカントが感激の声を上げる。
そのまま、夢中で頭まで食べつくしてしまう。
「きゅぴー! おいしいのです!」
しかし、最初の戦闘から既に少し時間が経過しているため、この『食量産型』Type-Yackyは既に冷めかけていた。
たい焼きは冷めてもおいしいが、焼き立てのホカホカの状態はそれだけで脳内の幸福成分が倍増する。
そう思ったカントはたい焼きを温めることにした。
「レンジでチンなのです!」
Mコロイドとパチパチ静電気、この二つを組み合わせることでマイクロ波を発生させる。
発生したマイクロ波は周囲に広がり、範囲内の『食量産型』Type-Yackyの水分子を振動、その摩擦で加熱させる。
電子レンジの要領で、多数の『食量産型』Type-Yackyが焼き立てほやほやの状態へと変化する。
「いっただきまーす!」
次なる|『食量産型』Type-Yacky《おやつ》にカントが飛びついた。
あっと言う間に2匹目を食べつくす。
ほかほかに温められた『食量産型』Type-Yackyはそれはもう極上のスイーツだった。
食べれば食べるほど、カントは元気いっぱいになり、|攻撃力《食欲》が増加していく。
いつの間にかUC『|はらぺこモーラット《オナカスイタノデスー》』が発動していたのだろう、カントは次から次へと『食量産型』Type-Yackyを平らげて行った。
「もっきゅ! きゅぴぴぴぴぴぃ! きゅいきゅい!(じゅるり)」
カントの食欲に、埋め尽くすほど空中を泳いでいた『食量産型』Type-Yackyの姿がまばらになっていく。
「きゅぴぴぴぃ! おかわりくださいなのです!」
他の猟兵たちも負けじと『食量産型』Type-Yackyをそのまま、あるいは思い思いに調理して食べていく。
一部の猟兵はハーゲルにもお土産を、とばかりに鹵獲もしている。
さらにその奥では迷宮要塞がどんどん崩壊していっている。
……やがて、空中を泳ぐたい焼きの姿はなくなっていた。
最後の1体を食べつくし、カントも腹が満たされたのかぽんぽんと自分の腹を撫でて満足そうに呟いた。
「おいしかったのです……。もう食べられないのです……」
ズズン、と音を立て、砲台がもう一つ、崩落した。
その後、ハーゲルの元には大量のたい焼きとたい焼きスイーツが届けられたという。
「え!? こんなに持ってきてくれたの!? やった、いただきまーす!」
嬉しそうにたい焼きにかじりつくハーゲルに、決死の思いで(?)鹵獲してきた猟兵たちは「まぁ、喜んでいるならいいか……」と苦笑した……らしい。
大成功
🔵🔵🔵