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獣人世界大戦⑥〜紫煙の支配者

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #F.O.N #スモーキング・ラビット

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●いきなりクライマックス
「皆、既に承知の事と思うが、獣人戦線で戦争が始まった」
 戦時特有の喧騒に包まれたグリモアベースの一角で、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が口を開いた。
「早速なのだが、アメリカを裏から支配する秘密結社『|F.O.N《フィールド・オブ・ナイン》』の首領たる『スモーキング・ラビット』の潜伏場所が……」
 ニコはやや気まずそうな顔をすると、一旦言葉を止めた後、思い切って打ち明けるように告げた。
「視えてしまった。いきなりなのだが、皆には決戦を挑んできて貰いたいのだ」

 超大国のひとつのボスが!? 初手から!? 見つかったの!?
 何処に居たかって、ウクライナ最大の港湾都市オデッサだそうですよ!

 予知を視たニコ自身若干戸惑いを隠せぬまま、ひとつ咳払いをして、話を続ける。
「ただ、見つけたは良いのだが、相手は『勝つ事よりも生き延びる事』を優先する性質をもつようでな。いざとなれば文字通り脱兎の如き逃走も辞さないようだ、まずはそれをどう阻止するかの立ち回りが問われるやも知れない」
 そこで、思い出したようにニコが中空にホロビジョンを展開させ、スモーキング・ラビットと思しきウサギ獣人の姿を映し出した。
 スーツ姿のイケメンウサギだった。一見何の変哲もない紙巻き煙草を吹かしているように見えるが、その煙にこそ注意して欲しいとニコは言う。
「敵の紫煙はその|悉《ことごと》くがユーベルコードだ。効果は様々だが、どれも危険な力を持っている上に、強敵の例に漏れず必ず先制攻撃を仕掛けてくるので、其方への対処も必要になってくる」
 そう、このウサギ獣人、外見などで侮られがちかも知れないが、その気になれば艦隊を素手で殲滅させられる程度には強い。油断は禁物というものだ。

「既に承知の事かも知れないが、スモーキング・ラビットとしては戦争が勃発することはおろか、世界が滅びようとも一向に構わないなどと考えているようでな」
 ニコは、抑揚を敢えて抑えた声音で言った。
「だが、戦争によって真っ先に犠牲になるのは誰だと思う? 其れを考えれば、当然捨て置く訳には行かない」
 集まった猟兵たちを真っ直ぐに見据えて、ニコは虹色の星形のグリモアを浮かべた。
「繰り返しになるが、相手は手強い。其れでも、皆ならば成し遂げてくれると信じている」
 武運を祈る、そう言ってニコは転移を受けてオデッサへと向かう猟兵たちへと一礼した。

「帰還の時刻は問わない――どうか、無事に戻って来てくれ」

 時間に煩い懐中時計のヤドリガミは、珍しく殊勝な言葉で猟兵たちを送り出した。


かやぬま
 ウサちゃん!!!
 誰よりも見た目に騙されているのは私かも知れません、かやぬまです。
 開戦初日ですが、|F.O.N《フィールド・オブ・ナイン》の首領との決戦をお届けします。

●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃に対処する/敵を逃がさないよう立ち回る』
 どちらか片方ではなく、両方を満たしたプレイングを行って下さると、有利になります。
 大変かも知れませんが、是非狙ってみて下さい。

●プレイングの受付について
 断章はありません、オープニングが承認されてシナリオが公開され次第受付を開始します。
 ある程度プレイングを頂戴した段階で受付を終了して、期間内には完結させられるように致します。
 場合によっては全てのプレイングを採用できなかったり、予想以上に早期の〆切となってしまう可能性もございますこと、平にご容赦下さいませ。
 また、お忙しい中恐縮ですが、プレイングを書かれる前にMSページにも一度お目通しをいただけますと幸いです。

 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております! かやぬまも頑張ります!
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第1章 ボス戦 『スモーキング・ラビット』

POW   :    フェイスレス・ラビット
自身が【葉巻を吸っている】間、他者から認識されない。ただし自身の所在を問われたら大声で返事をしなければならない。
SPD   :    アメリカン・ドリーム
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【スモーキング・ラビットの紫煙】に汚染され、レベル分間、理性無き【アメリカン・ドリームの信奉者】と化す。
WIZ   :    スモーキング・ダンディ
体内から常に【紫煙】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【混乱】もしくは【無関心】の感情を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラブリー・ラビットクロー
ねぇ聞こえる?
そのドリームって中々ステキなユメなんな
ならそのユメの先にどんなミライが待ってるの?
あれ
でもそれ
結局オマエしか笑顔になれねーのん

物陰に隠れてそんな事
ついでにラビットブレスで毒ガスまいてどんどん視界を遮っちゃえ
会話は止めない
だってアイツも情報が欲しいから

プレジデントやスーパー戦車がどーなったと思う?猟兵が倒した?
全然違う
セカイの皆でぶっ飛ばしてやったんだ
信じられないの?
実はね
らぶが皆に商品を配ったお陰なの
その秘密を知りたいなら
逃げてる場合じゃないかもなん

偽神兵器の翼を広げて紫煙を蹴散らして今度はらぶのチェーンソーの番
らぶの商品はヒトのユメ!オマエの無責任なユメなんてぶっ飛ばしてやる!



●ラビット・バトル
 スモーキング・ラビットの視界から身を隠すべく、ラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)は物陰に位置取っていた。
 そんなラブリーの気配を既に察していたのか、スモーキング・ラビットは紙巻き煙草をくゆらせながら、一人朗々とアメリカン・ドリームをぶち上げる。
『アメリカはいいぞ、何せ大多数の民衆どもは何も知らずに平和に暮らしているのだからな』
 ふうう、と吐き出される紫煙が辺り一面に立ち込め、ラブリーの元にまで届きそうになる。今はまだ仕掛ける時ではないと、ウサギの名を持つ猟兵は聞き耳を立て続けた。
『何、ほんの少し犠牲になってもらっているだけだとも。オブリビオン・アーミーあってこそのアメリカの安寧だからな、これこそが超国家の理想の繁栄の形であろうよ』
 帽子とガスマスクの間から覗くラブリーの赤い瞳が、ほんの少しだけ細められた。

「ねぇ、聞こえる?」
『やはり隠れていたか、よく声を発する気になったな』
「そのドリームって、中々ステキなユメなんな」
『そうだろうとも、他の超大国のような無粋は働かんさ』

 まるで自分だけは他の輩とは違うとでも言いたげな口ぶりに、ラブリーはむしろ純粋な興味を抱いて、こう尋ねた。
「なら、そのユメの先にどんなミライが待ってるの?」
 ラブリーの声の方を敢えて向かずに、スモーキング・ラビットは紫煙を吐きながら返す。
『当然、|F.O.N《フィールド・オブ・ナイン》がアメリカ大陸のみならず世界の全てを支配する未来だとも!』
 高らかに宣言された言葉に、ラブリーの瞳が軽く開かれる。その手には火炎放射器「ラビットブレス」が構えられ、密やかに毒ガスの散布が始められていた。
「あれ、でもそれ」
『……』
 己の紫煙を押しのけんばかりに広がっていく毒ガスに視界を遮られながらも、スモーキング・ラビットは微動だにしない。いや――|できないのだ《・・・・・・》。

「結局、オマエしか笑顔になれねーのん」

 鋭い指摘の言葉と共に、毒ガスが完全にウサギ獣人の退路を断った。
 それを甘んじて受け入れたのは、ひとえにラブリーの巧みな話術にあった。
 ――【|しょーにんの心得その3《セットアップネゴシエーション》】、このユーベルコードもまた効果を発揮して、毒ガスが散布されたことを察した時点で逃亡を図るべきだったスモーキング・ラビットから、論理的な判断力を奪っていたのだ。
『例えそうだとして、それに何か問題でも』
「プレジデントやスーパー戦車がどーなったと思う?」
『……!』
 ラブリーが放った言葉に、ウサギ獣人が食い付いた。相手も情報が欲しいのだ。
「猟兵が倒した? 全然違う。|セカイの皆で《・・・・・・》ぶっ飛ばしてやったんだ」
『世迷い言を』
「信じられないの?」
 ゆらりと、ラブリーが物陰からその姿を露わにする。紫煙と毒ガスがせめぎ合う中、ウサギの娘とウサギ獣人が対峙した。
「実はね、らぶが皆に|商品《・・》を配ったお陰なの」
 険しい顔を向けるスモーキング・ラビットを挑発するように、ラブリーは言葉を紡ぐ。

「その秘密が知りたいなら、逃げてる場合じゃないかもなん」
『……ハ、面白い……!』

 煙草を咥え、両手を自由にして臨戦態勢に入ったスモーキング・ラビットの紫煙を、ゆったりとしたパーカーの繊維と融合して広がった三対六翼の偽神兵器【ホワイトバード】がその羽ばたきで蹴散らしていく。
『娘、商品とか言ったな。武器商人の類か?』
 今度は、言葉ではなくすっごい唸りを上げるチェーンソーをぶつける番だ!
「らぶの『商品』は『ヒトのユメ』! オマエの無責任なユメなんて――」

 ぎゅるるるるん♥!!!

「ぶっ飛ばしてやる!!!」
『ぐ……ッ!?』

 ヒトのユメを乗せたラビットファングアンドハッピーチェーンソーエッジ、つよい。
 素手で艦隊を壊滅させると言われたスモーキング・ラビットが咄嗟に交差させてガードしたその両腕を、深く傷付けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
ウサギ……
(※以前のもふもふ逢魔が辻のうさちゃんを思い出し中)
でも今回のウサギはあんまりもふもふしてなさそうですね……
なんかダンディですし、フィールド・オブ・ナインですし――後半関係無い?

アメリカン・ドリームねぇ……
私には縁遠い言葉です、日陰者なので
まぁ、ガスマスクをしていても煙は貫通はするでしょうから
霊障で周囲の紫煙を一気に吹き飛ばして対処
そしてUC発動、奴の居場所を強制的に炙り出す
さて、奴が恐怖を感じるものとは何なのでしょうね?
粘着したものに気をとられている内に、
呪瘡包帯で一気に捕縛し逃走阻止

ウサギって美味しいらしいですね
包帯から伝わせた炎(属性攻撃)でこんがり焼いてあげましょうか



●うさぎおいしかのやま
「ウサギ……」
 そうとだけ呟いたスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の脳裏をよぎるのは、かつて異世界で絶対に和んではいけないとされた依頼で出会ったウサギたちの姿。
 あの時のウサギたちは皆ことごとくもふもふで、愛らしくて、とても和むなという方が難しい程の存在だったはず。
 けれど今眼前に立つウサギときたらどうだろう。スリーピースのスーツをぴちっと着込んで、紙巻き煙草をふかし、毛並みももふもふというよりはすべすべと言った方がぴったり来る気がする。
 片耳に入った切れ込みや鋭い目つきはまさにダンディと呼ぶべき姿であり、これぞフィールド・オブ・ナインというべき風格を醸し出しているスモーキング・ラビット。
(「んん? あんまりもふもふしてないこととフィールド・オブ・ナインであることはあまり関係無い……?」)
 スキアファールがそんなことを考えながら首を捻っていると、スモーキング・ラビットが痺れを切らしたかのように紫煙をふうっと吐き出しながら、こう切り出した。
『随分と景気の悪い顔をしているが、敵を前にして考え事とは余裕だな』
 そして、眉間に寄った皺をほんの少しだけ緩めたウサギ獣人が吐いた紫煙は、驚くべき規模で膨れ上がっていき、あっという間にスキアファールを包もうと迫る。
『そんな顔をしていては、等しく与えられた成功の機会もその手を逃れていくぞ』

 ――アメリカン・ドリーム。どんな荒唐無稽で不遜な夢でも、勤勉と努力次第で勝ち取ることが出来るとされる、アメリカにおける成功の概念の一つ。
 その夢の体現の裏で犠牲になる者たちもまた存在するが、秘密結社の首領たるスモーキング・ラビットにとっては、意に介するものではないのだろう。

「アメリカン・ドリームねぇ……」
 喉を大事にすべく持ち歩いているガスマスクを手早く着用しつつ、スキアファールは眼前のウサギ獣人を見据えた。
「私には縁遠い言葉です、日陰者なので」
 折角用意したガスマスクさえ貫通してきそうな勢いで、紫煙はいよいよスキアファールを覆い尽くす――かに見えた。
 ぶわっ、と。|シャドウピヰプル《影人間》によってスキアファールの周囲に群がった紫煙があっという間に吹き散らされ、熱狂の幻想を追い払う。
「出てきなさいな」
『ウサギの穴に入る覚悟があるなら、貴様から来る事だ』
「……いいでしょう、あなたに影は似合わない」
 売り言葉に買い言葉とばかりに、スキアファールが発動させた超常の名は【|Phobia《コンパルション》】。紫煙の向こう側に姿を消したスモーキング・ラビットを、言葉通りアメリカの闇から引きずり出さんばかりに、風をごうごうと巻き起こす!
(『拙いな、俺の紫煙さえも吹き散らそうとするとは、流石は猟兵というべきか』)
 このウサギ獣人、自分から挑発しておいてこれである。大丈夫?
 ぶっちゃけあんまり大丈夫じゃない状況に置かれつつあるスモーキング・ラビットは、何とか紫煙の勢いを維持して隠密状態の解除から逃れていた。
 だが、それが逆にいけなかった。
 いっそ、表舞台に堂々と出て行けば良かったと後悔する時が、すぐそこに迫っていた。

 アメリカを裏で牛耳る|F.O.N《フィールド・オブ・ナイン》、その首領。自分の存在を嗅ぎつけた唯一の存在は三流タブロイド誌の編集長だが、その主張は陰謀論だの妄言だととまるで相手にされる様子がないため、捨て置いても構わない。
 そう、思っていた。

「儂は、儂だけは決して諦めんからな!」
『……?』
 幻聴かと思った。長い耳をそばだててみれば、今度こそはっきりと聞こえた。
「儂は必ず、この|事実《・・》を世間に認めさせてみせる!」
『……ハ』
 他愛もない存在だと思っていたはずが、密やかに、猟兵たちと手を組んで、秘密結社F.O.Nの正体を世間に認めさせようとしつつあるということに、気付いてしまった。

 恐ろしいことだ、そう思ってしまった。
 気配を感じて振り返れば、首回りがもこもこした、葉巻を咥えたウサギ獣人の姿が――。

「|それ《・・》が、あなたが恐怖を感じる者ですか」
『!』
 スモーキング・ラビットが気付いた時には、既にその腕にはスキアファールの黒い包帯がきつく巻き付いてがっちりと捕縛を完了していた。
「ウサギって、美味しいらしいですね」
『貴様……ッ!』
 スキアファールが念じれば、包帯を伝って炎が燃え上がり、ウサギ獣人の腕を燃やす!
『こんな……所で……ッ!』
 炎が全身に回る直前、鋭い前歯で呪瘡包帯を噛み切ったスモーキング・ラビットは、恥も外聞もなく腕を地面に擦りつけて必死に炎を消そうとした。
「おや残念、全身ぐるぐる巻きにしておくべきでしたね」
 もふもふでもなければ可愛げもないなら躊躇する要素もない。
 スキアファールは、心底残念そうにそう言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御鏡・幸四郎

力ある者が夢も富も掴むことが出来る。
私の腕なら菓子作りで世界を制することも難しくはないと言うことですね。
素晴らしい。

紫煙に冒されながら必死で理性を繋ぎ止める。
世界を制したとして、私は一体何を得るのか。

私が欲しいものは富でも権力でもない。
私が菓子を作るのは、食べた人を笑顔にするため。
姉の笑顔が見たくて菓子作りを始めた幼い日から、
それはずうっと変わらない。

理性を隠しながら手早く菓子とカップを並べてお茶会を。
「貴方にも是非味わっていただきたい。世界を制する私の菓子を」
UC発動。とっておきの茶葉の香気がウサギを捉えて離さないでしょう。
椅子を引いてウサギを座らせ、お茶と菓子、そして銃弾をふるまいます。



●世界を制して何とする
 御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は、今まさにスモーキング・ラビットが吐いた紫煙に包まれながら、必死に抵抗を試みていた。
(「力ある者が夢も富も掴むことが出来る」)
 気力に満ちあふれる感覚と共に、押し寄せるのはアメリカン・ドリームへの憧憬。
(「私の腕なら、菓子作りで世界を制することも難しくはないと言うことですね」)
 幸四郎の瞳から徐々に光が消えていこうとしている。これは良くない。

「――素晴らしい」
 そう、呟いた。
『そうだろうとも、貴様にさえもアメリカは門戸を開く! 歓迎するぞ!』
 己の紫煙が効果を発揮していると見たスモーキング・ラビットは、紙巻き煙草を手にしたまま上機嫌で両手を広げる。

(「世界を制したとして、私は一体、何を得るのか」)
 紫煙に冒されながらも、抗うことは決して止めない。幸四郎は、理性を繋ぎ止めるべく必死に思考を続けた。
「私が欲しいものは……」
『富か? 権力か?』
「いえ、そのどちらでもありません」
 ウサギ獣人の声に、絞り出すように返す幸四郎。
「私が菓子を作るのは、食べた人を笑顔にするため」
 脳裏をよぎるのは、幼いあの日、姉の笑顔が見たくて菓子作りを始めた時のこと。誰に何を言われようとも、幸四郎の根源は、決して揺らぐことはない!
『青臭いことを言うものだ、その果てに手にするのは、結局富と名声だというのに』
 幸四郎の大切な記憶を踏みにじるように、スモーキング・ラビットが言い捨てる。こうなったら、この憎らしいウサギ獣人に分からせてやるより他にない。
『菓子職人か、ふむ……資金稼ぎには丁度良い人材かも知れないな』
 とうとう勝手なことを言い出したスモーキング・ラビットに、一見同調するかのように、幸四郎は手早く菓子とカップを並べて、何とお茶会の準備を始めたではないか。

「貴方にも是非味わっていただきたい、世界を制する私の菓子を」

 ――【|お茶会招待状《レッツ・ティータイム》】!
 この時期とっておきのセイロン茶葉を詰めた缶を開けると、爽やかな香りがふわりと辺りを包み込む。ユーベルコードの力であっという間に沸いたお湯で一度温めたカップに、すっきり飲みやすい上質な香気を漂わせる紅茶が淹れられると、否が応でもスモーキング・ラビットの鼻腔にまでその香気は届く。それこそが、幸四郎の狙いであった。
『な、何だ……身体が勝手に……!?』
 お茶会と言えば、洒落たテーブルと椅子のセット。ふらふらと吸い寄せられるようにやって来るスモーキング・ラビットを誘導するように幸四郎が椅子を引けば、すとんと腰を落とす。絵面だけ見れば結構可愛い。
『面白い……世界を制すると大言壮語するその自信、俺自ら味わってやろう!』
 今のスモーキング・ラビットは、幸四郎が用意するお茶とお菓子を楽しみたいという衝動で胸がいっぱい。とても逃走するだなんて考えは微塵も浮かばなかった。
「ふふ、存分に堪能していって下さいね」
 幸四郎は、ごくごく自然に紅茶と菓子を供しながら、笑顔でそう言った。

『こ、これは……!』

 紙巻き煙草を一旦携帯灰皿に押し付け、紅茶を一口含んだスモーキング・ラビットは、驚愕の声を上げた。煙草の吸いすぎで味覚が狂っているのではと懸念されたが、良いものは良いということがきちんと伝わったようだ。
 菓子にも手を出してみる。甘すぎず程よくしっとりしており、紅茶とのペアリングも完璧。これは確かに、食べた者を笑顔にする菓子という言葉に偽りはない。
 もはやお茶会の虜となったスモーキング・ラビットは、あっという間に紅茶と菓子を平らげてしまった。
『はは、ははは……! 随分な自信だとは思っていたが、実際大したもの――』

 ――ぱぁん!

 だまし討ちという訳ではないけれど、これも戦の一環。
 スモーキング・ラビットが幸四郎のユーベルコードですっかり油断したところを、リボルバー式ガンナイフから放った銃弾でその上半身に六発分の銃弾を叩き込む!
『が……ッ』
「お口直しも必要かと思いまして、如何でしたか?」
 硝煙をフッと吹きながら、幸四郎は不敵に笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット
だんでぃウサちゃん!可愛いけど獣人ワールドを滅ぼすのはダメです!

姿が見えません!どこですかラビット様!
きょろきょろ探しながら、聞き耳と嗅覚で声と葉巻の匂いを感知します
方向さえわかってれば後はタイミングです。兎ケモに興奮してる好きだらけな高貴兎騎士を偽って攻撃を誘います
最強高難易度ボスなら絶対ここで来る!ってタイミングに合わせて大剣でパリィカウンター
信じてましたよラビット様
攻撃を貰った勢いをそのままぐるっとのせて大剣でラビット様を空にかちあげ
ジャンプで追いかけて双剣で追撃
空中なら煙もないし逃げることもできないはずです!
体力も手足も削って、大剣で首狩りでとどめです。ごめんなさい…っ。


禹・黄風

煙…あの物質主義の頂点のような国を支配する存在が形のないものを武器とするとは皮肉なのでしょうか。
私が纏うのは紫炎のオーラ、微妙に共通している気はしますがそれはそれとして強者である事は間違いなく。
全力で挑ませて頂きましょう。

先に葉巻を吸われて隠れられるのは厄介ですが…ここは存在を感じずとも大声で、
「スモーキング・ラビット、汝は何処に在りしや?」
問いかけへの答えの音の振動の方角から大まかな位置を推測し三節棍を瞬時に伸ばし真上に薙ぎ払う。
見えずとも瞬時に伸びる三節棍の連撃で葉巻を吸う事を妨害する事はできる筈。
姿を現したら更に追撃し向こうの移動、撤退を妨害して他の方の攻撃がやり易いようにしましょう。



●たいがー・あんど・ばにー
 単騎でも絶大な強さを誇り、絶対的な先制攻撃を見せつけたにも関わらず、それを上回る猟兵たちの猛攻により、徐々にだが傷を深めていくスモーキング・ラビット。
 眉間に寄った皺を深め、ウサギ獣人は忌々しげに紫煙を吐いた。
『流石は猟兵、と言うべきか……状況に対応する能力には正直、脱帽するしかない』
 立ち込める紫煙の向こうに、二つの新たな猟兵の影を認めながら。

「煙……」
 一人はトラの武人たる禹・黄風(武の頂を・f40009)。
「あの物質主義の頂点のような国を支配する存在が形のないものを武器とするとは、皮肉なのでしょうか」
 自らは表舞台には立たず、残酷な手法で密かにオブリビオン軍団を編成し、他の超大国を攻撃する。その有り様を体現したかのようなつかみ所のない攻撃手段は、黄風が言うように皮肉めいているようだった。
「私が纏うのは紫炎のオーラ、微妙に共通している気はしますが、それはそれとして強敵である事は間違いなく」
 そう言いながら、黄風は油断なく三節棍を構える。
 そこへ、凜々しい声が響き渡った。
「だんでぃウサちゃん! 可愛いけど獣人ワールドを滅ぼすのはダメです!」
 声の主はもう一人の猟兵、ルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)だった。
 元いた世界でケモになりきるために努力を惜しまず、遂に誰がどこからどう見ても立派な兎ケモノとして認識されるに至った、立派なゲームプレイヤーである。
 そんなルナからしてみれば、この獣人戦線という世界は、まさに存在自体が桃源郷。そう簡単に『滅んでも一向に構わんッ』などと言われても困っちゃうのだ。
 黄風もまさかルナに実は中の人がいるだなんて夢にも思わず、双剣使いのウサギ獣人とは頼もしいな、などと思いながら、スモーキング・ラビットに向けて身構えた。
「――全力で、挑ませて頂きましょう」

(『まともに相手をしては面倒だ、此処は姿を隠して相手の手の内を確認してから……』)
 そう考えたスモーキング・ラビットは、紙巻き煙草をくゆらせて、他者から認識されない状態を作り上げた。自分の姿を何とかして見出そうとあの手この手を尽くさせて、その隙に強烈な一撃を叩き込んでやれば良い。
 そう、思っていた。

「スモーキング・ラビット、汝は何処に在りしや?」
「姿が見えません! どこですかラビット様!」
(『嘘だろ!?』)

 クソデカ大声で、自分の居場所を直球で問われてしまったのだ。
 スモーキング・ラビットのこのユーベルコードには「自身の所在を問われたら大声で返事をしなければならない」という制約がついているものだから、逃れようがない。
『こ……此処だ! 此処に居るぞ!!』
 不幸中の幸いだったのは、返事さえすれば良いのであって、具体的な場所までは言わなくても良いということであろうか。スモーキング・ラビットは半ばヤケクソ気味に大声で返事をした。
(『声だけでは、居場所の特定は難しかろう。精々紫煙の中を彷徨うがいいさ』)
 ふうう、と。紫煙をさらに吐き出しながら、スモーキング・ラビットは身を潜める。
 そんな中、黄風とルナはスモーキング・ラビットの返事ひとつから、様々な推測を立て始めていた。
 黄風は問いかけへの答えの「音」の振動を逃さず感知していた。その方角から大まかな位置を推測し、そちらへ向けて三節棍を瞬時に伸ばす!
 それとほぼ同時に、ルナも聞き耳を立てつつ強化された嗅覚を合わせて、発せられた声と紙巻き煙草の匂いを鋭く感知していた。
(「方向さえわかってれば、後はタイミングです」)
 それは――黄風が作ってくれる! 伸ばされた三節棍は真上に薙ぎ払われ、ユーベルコード【|紫嵐《ズーラン》】による紫炎の闘気を帯びた黄風が振るう三節棍は、そのまま連撃を放ち、スモーキング・ラビットの喫煙行為を妨害してみせたのだ。
『く……ッ!?』
 闇雲に放たれた一撃か? それにしては狙いが的確すぎる! スモーキング・ラビットは若干の焦りを覚えつつあった。
 立ち込めていた紫煙が若干薄れつつある中で、スモーキング・ラビットの脳裏には逃走の二文字がよぎる。だが、少しでも動けばまたあの三節棍がいつ飛んで来てもおかしくない状況であることも容易に想像ができた。
(『ならば、隙のある方を狙うか――!?』)
 スモーキング・ラビットが見据えたのは、大剣を手にしながら辺りをきょろきょろと見回しているルナだった。

「ラビット様! 兎ケモノの理想型とも言わんばかりのそのお姿! 最っ高に素敵です!」

 ルナとしては、ナチュラルボーン兎ケモを目の当たりにして心の底から興奮する、隙だらけな高貴なる姫騎士を偽っているつもりだった。後半ちょっと怪しいけれどそれはそれ。
(『こいつだ、この露出狂めいたウサギを瞬殺して離脱する!』)
 狙いを定めたウサギ獣人は、恐るべき素早さで紫煙から突如姿を現すようにして、ルナの死角から一気に襲いかかった。
「――最強高難易度ボスなら、絶対ここで|来る《・・》んですよね!」
『!?』
 スモーキング・ラビットと、ルナの視線がぶつかった。
 次の瞬間、スモーキング・ラビットの拳の一撃を大剣で受け流したルナが叫ぶ。
「信じてましたよ、ラビット様!」
『チッ、先程から訳の分からない事を……ッ!』
「援護します!」
 遂にその姿を見せたスモーキング・ラビットに対し、三節棍の追撃で移動や撤退を妨害する黄風。そこへ、攻撃を貰った勢いをそのままぐるっと大剣に乗せて、ルナがスモーキング・ラビットを空へとかち上げる!
『がッ……』
「とうっ!」
 大剣を双剣に素早く持ち替えると同時に、ルナがスモーキング・ラビットの後を追うように大きく跳躍する。
(「空中なら煙もないし、黄風様のおかげで逃げることもできないはずです!」)

 ――【|JD>DDDD>SD《ジャンプコウゲキレンゾクコウゲキブキスキル》】、発動の時である!
 今こそ見せつけろ、廃プレイで磨き上げた大剣と双剣を駆使した連続コンボを!

 尋常ならざる腕前の双剣を駆使するルナの連撃に、なす術もなくその身を斬られていくスモーキング・ラビット。立派な仕立てのスーツがボロボロになっていくではないか。
『か、はッ』
 双剣による連撃が存分に叩き込まれた後、スモーキング・ラビットは力無く地面へと落下していく。それをまたしてもルナが追い、大剣に持ち替えを行うと、いよいよ大将首を狙いに行く……!
「ごめんなさい……っ」
『――ハ』

 叩き込んだコンボの分だけ火力が上昇した溜め斬りの一撃は、間違いなくスモーキング・ラビットの首を一撃のもとに刎ねるはずだった。
 だが、スモーキング・ラビットは|笑った《・・・》。首を刎ねられたはずなのに、何故声が発せられる?
「……ラビット様……」
 ほんの僅か、一瞬の隙を突いて、スモーキング・ラビットはその身をよじったのだ。
 首が飛ぶ代わりに、左腕がまるまる斬り落とされていた。
『やるじゃあ、ないか』
 スモーキング・ラビットは、ぼたぼたと血を流しながら、それでも残った右手で煙草を取り出すと、口に咥えて器用に火をつけた。
『死ぬかと思ったぞ、いや……この傷では俺もそう長くはないやも知れんな』
 ふうう、と。吐き出された紫煙の中に、ウサギ獣人は再びその姿を隠した。
 だが、本人が言うように、この戦いの決着も近いのだろう。
「ラビット様……どうせならその首、この手で狩りたかったです……」
「残念ではあったが、見事な腕前でした。私もまだまだ精進しなければいけませんね」
 ルナと黄風は、全力を出し切った。
 後は、後続の猟兵たちに託すばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と

相棒の言う通り確かに多い
こういう見た目は俺達の油断を狙ってるのかもな
「あぁ、こっちも気を使わないで済む」

「合わせるぞ、相棒」
敵の先制攻撃には回避で対応するけど
悪いが逃がすつもりはない
逃走を阻むように立ち回りは相棒と挟撃
攻撃自体を回避してダメージを回避すれば
「強制治癒も無意味だろ」

動きは確かに素早いようだが
相棒の一撃の範囲からは逃げられない
「ぶっ放せ、時人」

どれだけの速さだろうと
見失うような力を使おうと
吹き飛んだ見晴らしのいい場と
ククルカン達が教えてくれる
「あぁ、任せろ」
【退魔術「闇穿」】を使用
兎の死角へ転移して、四撃を放つ
「悪いな。ボーパルバニーは俺の方だったな」


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

こういう敵多いよね
可愛いけど最悪に悪辣なヤツ
「この世界初めての敵が激悪で良かった」
だって加減なんか要らないから

「じゃ往こうか相棒」

構える前に攻撃が飛んで来る
強制治癒か
「悪いけどブッ壊れたトコなんて無いよ!」
無論全力で空中機動なども駆使して躱す

此処からは此方のターンだよ
UC白燐大拡散砲詠唱

結局いつも唱えてしまう『消えて無くなれ!』だけど
今回は消し飛ばすのが目的じゃない

俺や陸井が見失っても俺の|白燐蟲《ククルカン》は
見逃さない!
白の乱舞が纏いつき絡みつき…ほら、そこに兎が丸見えだ!
「陸井っ!」

こういう時の陸井は絶対に外さない
俺が当てられても死ぬ一撃が兎の首を刈るだろう!



●ウサギ狩り
 傷だらけになり、左腕を失ってなお、スモーキング・ラビットの眼光は鋭かった。
『まだだ』
 器用に紙巻き煙草を吸って、紫煙を吐き出す。
『俺はまだ此処に立っている、ならばまだ終わりではない』
 紫煙はまるで意思を持っているかのように、スモーキング・ラビットの周りを包む。
 そうして――二人の猟兵たちの前に立ちはだかったのだ。

「こういう敵多いよね、可愛いけど最悪に悪辣なヤツ」
 葛城・時人(光望護花・f35294)が今まで戦ってきたゴーストやオブリビオンたちのことを思い出しながらそう言えば、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は深く頷いた。
「時人の言う通り、確かに多い」
 長きにわたり共に戦ってきた『相棒』が言うのだから、なおのこと間違いない。
「こういう見た目は、俺達の油断を狙ってるのかもな」
 無論、そう易々とその手には乗らないけれど。
(「随分と負傷しているが、それでも放つ殺気は本物だ」)
 陸井も時人も、どんなに見た目が愛らしかろうが、満身創痍だろうが、その目つきが鋭いうちは、決して油断ならない相手だと理解していた。

「この世界、初めての敵が激悪で良かった」
「あぁ、こっちも気を遣わないで済む」

 ――だって、加減なんか要らないから。

 隻腕となったことで、むしろ煙による攻撃に集中できるようになったか、スモーキング・ラビットが吐き出す紫煙は信じられない勢いで広がり、あっという間に陸井と時人に迫る。予知により「先制攻撃は避けられない」ということを理解していた二人は、短く言葉を交わすと同時に地を蹴った。
「じゃ、行こうか相棒」
「合わせるぞ、相棒」
 煙は無尽蔵に広がり、まるで手の平のような形を取り、二手に別れた陸井と時人を追うが、二人はそれぞれ鍛え上げられた肉体を駆使し、巧みな空中機動でそれから逃れる。
「悪いけど、ブッ壊れたトコなんて無いよ!」
「強制治癒も無意味だろ」
 そう、攻撃自体を回避してダメージそのものを受けなければ、アメリカの熱狂に囚われることもない。むしろ、治癒が必要なのはスモーキング・ラビット自身なのではないかと思ってしまうほどである。
『チッ……』
 信頼すべき武器である紫煙が思うように効果を発揮しないことに思わず舌打ちしたスモーキング・ラビットは、一歩だけ後ずさる。
「悪いが、逃がすつもりはない」
 紫煙から逃れているように見えて、見事な挟撃の立ち位置を奪う、阿吽の呼吸。
 気付けば、ウサギ獣人の前には時人が、背後には陸井が立ちふさがっていた。

「ぶっ放せ、時人」

 陸井が信じた『相棒』の一撃――【|白燐大拡散砲《ビャクリンダイカクサンホウ》】は、港湾都市一帯をも包み込まんばかりの規模で、白燐蟲の大群を発生させる!
「此処からは、此方のターンだよ」
『ハ、調子に乗るな!』
 猟兵たちを追うことを諦めた紫煙は、一気にスモーキング・ラビットの周りに集まって、その姿をおぼろげに隠そうとする。
(「結局いつも唱えてしまう『消えて無くなれ!』だけど」)
 まさに超常と呼ぶべき大技を繰り出しながら、時人は思う。
(「今回は、消し飛ばすのが目的じゃない」)
 ふうう、と。スモーキング・ラビットが紫煙をさらに濃くさせて自らの姿を隠そうとも、時人はもちろん、陸井も動じることは決してなかった。
(「動きは確かに素早いようだが、相棒の一撃の範囲からは逃げられない」)
 時人や陸井の視界からは、確かにスモーキング・ラビット本人の姿はかき消えた。
 だが、放たれた|白燐蟲《ククルカン》だけは、どんなに濃い紫煙の中であろうと、どれだけの速さでその中を疾駆しようと、決して見逃さないし――逃さない!

 白の乱舞が纏いつき、立ち込める紫煙を吹き散らす。
 灰色の小柄なウサギ獣人の姿を、紫煙の中から引きずり出す。
 ――ほら、そこに兎が丸見えだ!

「陸井っ!」
「ああ、任せろ」

 いよいよ身の危険を悟ったスモーキング・ラビットが、踵を返して離脱しようとする。
 だが、どんな生き物にも『死角』は必ず生じる。そこをこそ、陸井は見逃さなかった。
(「こういう時の陸井は絶対に外さない、俺が当てられても死ぬ一撃が――」)
 時人の全幅の信頼を背に、陸井の黒耀の瞳が、鋭い眼光を宿す。
 死角から瞬時に間合いへと踏み込んだ勢いもそのままに、相棒の祈りと誓いを宿した黒鋼のガンナイフがスモーキング・ラビットに迫るが、獲物がそれを認識することはない。
 深い、深い闇が――【|退魔術「闇穿」《タイマジュツ・ヤミウガチ》】が発動する!
『がッ……!』
 一撃。仕立ての良いスーツに包まれた背中を、深々と刺し貫く。
 二撃。何が起きたか理解できずにいるままのウサギ獣人の足の腱を切る。
 三撃。忌々しい紫煙を生み出していた紙巻き煙草を持った右腕を斬り落とす。

(「――兎の首を刈るだろう!」)

「悪いな、|ボーパルバニーは俺の方だったな《・・・・・・・・・・・・・・・》」
『畜生、めが……ッ』

 四撃。その全てが命中する時――敵対者は絶命する。
 躊躇なく振るわれたガンナイフが、無辜の獣人たちを護るべく、邪悪なるウサギ獣人の首を刎ね飛ばした。

「……これで、本当に終わりなんだろうか」
「分からない、影武者という可能性もあるからな」
 首と胴が泣き別れた状態で、そのままぐずぐずと崩れていくスモーキング・ラビットだったものを見ながら、時人と陸井が言葉を交わす。
 たった今、二人がとどめを刺したスモーキング・ラビットが|本物《・・》だったかどうかまでは確かめる術はないが、少なくとも当面の脅威は取り払えたことだろう。

 今回与えられた役目は果たされた。
 猟兵たちを求める戦場は、まだまだ多い。
 今はただひたすらに――駆けろ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月09日


挿絵イラスト