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獣人世界大戦②~四呪迷宮

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #ゾルダートグラード

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●第一戦線
 獣人戦線におけるスイス。
 そのアルプス山間部の地下にて、予知の力によって発見されたのは――。
「異常なほど巨大な『迷宮要塞』なのじゃ!」
 グリモア猟兵のひとり、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は異変を語った。この迷宮おそらくゾルダートグラード軍の何らかの巨大戦力の為に存在すると思われるが詳細は不明だ。エチカは首を傾げながら、其処までは視えなかったと話した。
「アルプス国家の要塞内部は数字を示すことができぬほどに広大な機械迷宮になっておるようじゃ。そのうえ『侵入者を必ず危険な罠の中へ誘導して殺す』設計となっているらしいぞ」
 そして、その罠とは。
 心して聞くといいと口にしたエチカは罠の種類について説明していく。
「迷宮は暗闇に包まれているうえ『幼児化』『鈍足』『混乱』『お腹ぺこぺこ』の四呪をもたらす符が飛んでくるのじゃ。いや、これでも真面目に語っているのじゃよ。本当にその罠が用意されておるのじゃ!」
 誰がどの罠にかかるかは不明だが、いずれかの呪いが降りかかるのは間違いない。
 これらの呪いに対処していき、要塞に駐留しているオブリビオンの将を討ち取るのが今回の任務だ。
「大変じゃと思うがこれも戦争に勝つためじゃ。皆の者、頑張ってくるのじゃぞ!」
 エチカは掌を強く握り締め、応援の言葉を仲間達に送った。

●迷宮内にて
「ふふ……あての呪いにかかれば猟兵とやらもおそるるに足らずですえ」
 魔力による暗闇に包まれた迷宮の中。
 この区域を守護する猫月・ルナは陽気に笑った。自称・悪の女幹部でありながら戦に遊び心を交える元英雄という経歴を持つ者だが、今は彼女もオブリビオンである。
 戦うことが好きであり、符術と格闘の達人でもあるルナは猟兵を待ち構えていた。
 迷宮には四呪の符が張り巡らされており、すべてを回避することは不可能。そして、たとえ罠を潜り抜けてきたとしてもルナ本人が圧倒的な力で猟兵を撃退する予定だ。
「ああ、楽しみやわぁ……♪」
 戦いを待ちわびるルナはくすくすと笑みながら双眸を細め、闇の奥を見つめた。


犬塚ひなこ
 こちらはこちらは『獣人世界大戦』、②アルプス国家要塞のシナリオです。


●👿『遠き日の英雄『猫月・ルナ』』
 一人称は『あて』で陽気な京言葉を使う元英雄。
 愛らしい見た目ですが符術と格闘の達人であり、侮れない相手です。戦いを求める以外にも何か望みがあるようですが……?

●プレイングボーナス
『機械迷宮の危険な罠に対処する』

 迷宮に入ったところからリプレイが始まります。
 内部では符が飛び交っており、皆様には『幼児化』『鈍足』『混乱』『お腹ぺこぺこ』のいずれか(あるいは複数)の呪いがかかります。呪いの罠に対処しつつ奥を目指し、ボスと戦いましょう!
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第1章 ボス戦 『遠き日の英雄『猫月・ルナ』』

POW   :    獣人格闘術『狂火獣撃拳』
【肌に貼り付けた力をセーブするための封印符】を脱ぎ、【超速行動をおこなう四足走行モード】に変身する。武器「【黒炎を纏う鉤爪】か【キュン死の肉球パンチ】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
SPD   :    英雄符術『霊符四呪奏』
【己を守る盾として浮遊する四枚の獣人呪符】から、物質を透過し敵に【幼児化】【鈍足】【混乱】【お腹ぺこぺこ】の状態異常を与える【精密に誘導追撃する四種の魔法光】を放つ。
WIZ   :    幹部の嗜み『いでよマックラーダ!』
無機物に【怪物『マックラーダ』を生み出す暗黒パワー】を憑依させて【四肢と、素体に因む能力を行使する特殊部位】を生やし、生物の様に使役する。大きい無機物ほど使役難易度は上昇する。

イラスト:かすみ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は四王天・燦です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オヴィリア・リンフォース
連携、アドリブ歓迎
敵の撹乱に他の猟兵さん達のサポートメインに行動するのです。

相手は猫のような元英雄さんなのです。
油断は禁物なのです。(尻尾をピンと立てながら)

銀猫突撃で迷宮内の呪いの符を無力化していくのです。
猫の俊敏さを活かして迷宮内のあちこちを飛び回って
他の猟兵さんたちが呪いにかからないようにもするのです。
猫魔力にかかれば呪いでも跳ね除けられる筈なのです。
お腹ぺこぺこになっても携帯している
ジャーキーを食べて我慢するのです。
幼児化されていも子猫になるだけなのです。

ルナの所に辿り着けたら俊敏な動きで撹乱して
格闘術を避け、本領を発揮させないよう戦うのです。

「これが闘争本能なのです?」


ナルニア・ネーネリア
猫は猫なので猫らしく振る舞います。
しかし猫は猫なのでお腹が減ったら…目の前の獲物にくらいつきます。
特にグリムであるネーネリアが飢えた場合、猫でありながらネコ科の大型肉食獣の如く、です。

うにやぁああ(お目目ぎらぁん)

猫は猫なので戦争とか世界情勢とか知りません。
猫はただ猫らしくお散歩していたら迷宮に迷い込んで、なんかお札はられたらお腹空いたので、ご飯を狩って食べようとしているだけです。

尚、猫は猫なので人語で話しません。
猫が猫らしく猫であればあとはお任せです。

猫です。よろしくお願いします。



●猫とネコとねこ
 暗闇に包まれた迷宮。
 機械で構成された領域は何かが軋む音や、風を切るような物音が響いていた。
 符術を得意とするオブリビオンが潜む場所にまず訪れたのは、オヴィリア・リンフォース(銀色の魔女猫・f25140)とナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)たちだ。
 尻尾をピンと立てたオヴィリアは警戒を強めながら、迷宮の奥を見つめる。
「相手は猫のような元英雄さんなのです。油断は禁物なのです」
 闇の最中ではあるが、猫たちはしっかりとあたりが見えていた。まんまるに開いた瞳で見据える奥にはたくさんの符が飛び交っており、更に向こうには敵の気配も感じる。
「いくのです」
「にゃんにゃんにゃあ!」
 オヴィリアの呼び掛けに答えたナルニア・ネーネリアは鳴いて応えた。
 同じ猫として心強いと感じたオヴィリアは全身に猫魔力を纏い、先陣を切るが如く進んでいく。銀猫突撃で狙うのは迷宮内の呪いの符を無力化していくこと。
 完全に封じることは出来ずとも、次に続く仲間が呪いをいくつも受けずに済むようになる。
 そう、これは援護にもなると突撃だ。オヴィリアは猫の俊敏さを活かしていき、あえて迷宮内のあちこちを飛び回っていった。
「他の猟兵さんたちが呪いにかかるのは嫌なのです」
 すべてが無理だとわかっていても、この猫魔力にかかれば呪いでもある程度は跳ね除けられるはず。
 危惧があるとすれば既に受けてしまった、お腹ぺこぺこの呪いなのだが――。
「ジャーキーがおいしいのです」
 量は足りないが食べて我慢するくらいは携帯している。オヴィリアは素早く駆けながら補給を済ませる。
 その後をナルニア・ネーネリアが続いてきた。
 実はナルニアたちにもお腹ぺこぺこの呪いがかけられてしまっているのだが、彼女たちにとっては逆に好都合。なぜなら猫は猫なので、猫らしく振る舞うだけであるからだ。
 つまり、お腹が減ったら――。
「うにやぁああ」
「何やの、猫?」
 そう、目の前の獲物に食らいつくのみ。ネーネリアは迷宮の奥にいる敵を察知し、一気に飛びつく。はっとした猫月・ルナは身構えたが同じネコ科がいることで一瞬の不意を突かれたようだ。
 そのままネーネリアはネコ科の大型肉食獣の如く、ルナに噛みつく。
 獲物を狙う獣の如く、お目々がぎらぁんと輝いていた。痛みを感じたルナは急いで身を翻して体勢を整える。
「あての油断を誘おうったって無理ですえ!」
「にゃぁん?」
 敵意がナルニア・ネーネリアに向けられているが猫たちは動じていなかった。
 どうしてかというと猫は猫だからだ。彼女たちは戦争や世界情勢などお構いなし。いつもの如く猫はただ猫らしく、散歩をしていたら迷宮に入ってしまっただけだ。
 飛んできた符を無理に貼られたことで空腹になり、ご飯を狩って食べようとしている。
 ただそれだけのことだが、猫はときに凶暴だ。狙われたら最後かもしれない。
「にゃんにゃんにゃー」
「やめなさい……! まったく、変に同族だと厄介さもわかるし……困りますわぁ」
 じゃれつくように、それでいて狩り動きで以てルナを翻弄するナルニア・ネーネリア。対するルナは慌てまいとして対抗し、霊符四呪奏を発動させる。
 その瞬間、オヴィリアが飛び出してきた。それは仲間を庇うための行動だ。
「みぃ……」
 思わず子猫のような――もとい、子猫としてか細く可愛らしい声をあげてしまったが問題はない。幼児化の呪いがかかってもオヴィリアの能力は変わらない。ただ見た目が子猫になるだけだ。
「おかえしなのです」
 普段よりも幼い声色で言い返したオヴィリアは、ナルニア・ネーネリアと共に攻勢に入った。俊敏な動きで撹乱を狙い、格闘術を避けながら動く。
 相手の本領を発揮させないよう戦えば、後続の仲間たちが倒す好機を作ってくれるだろう。
「これがとーそーほんのーなのです?」
 幼子らしい発音で、こてりと首を傾げた子猫オヴィリア。
 愛らしい猫たちが織り成す戦いは此処からも巡り、勝利への道を作り出す一手になってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん、いくら幼児化だからって……ヒヨコさんにならなくてもいいと思うのですが。
アヒルさんはガジェットさんなんですから、幼児化してもヒヨコさんにはならないのでは?
ふえ?私はどうして平気なのかですか?
私は美白の魔法を使っているから、符もくっつかないですし、状態異常を与える魔法光もしっかりガードです。
アヒルさんがヒヨコさんのままですと戦えないのでアヒルさんを浄化して元に戻したら、アヒルさんも美白の魔法です。
あのオブリビオンさんは格闘も得意だそうですから、アヒルウィングの羽飛ばしで攻撃です。


紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
絶賛罠を回避しまくってる藍ちゃんくん……あやー!?
なんということでしょう!
符がぺたりなのでっす!
やや?
藍ちゃんくん、何をしてたのでしょうか?
おねえさん、知ってますか?
なんだかお腹ペコペコなのでっす!

あと一歩というとこだったのでっすが!
あまりの罠にハマりっぷりに他2つの呪いもかけたくなること間違いなしなのでっす!
果たして幼児化した藍ちゃんくんは……可愛いでしょうねー!
まあここまで全部演技なのでっすが!
騙し討ちで4つの異常、全部反射なのでっす!
道中の罠を反射してるの気付かれたら流石に手を打たれたでしょうし。
反射できるの気付かせない為も込で避けたり状態異常の演技だったのです!



●呪い返しと魔法と翼
 ピヨピヨ。
 ピピ、ピピヨピヨ。
 闇に包まれた機械迷宮の中。少しばかり不釣り合いな愛らしい鳴き声が聞こえてくる。
「ふええ……」
「ピヨヨ……」
 最初の声はフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)のもの。続けて鳴いたのは彼女の相棒ガジェットのアヒルさんだ。
 ただ現在のアヒルさんは呪いの符を受けてしまった影響で幼児化してしまっている。フリルは一回り以上ちいさくなったガジェットを抱き上げ、もとい掌の上に乗せている状態だ。
「アヒルさん、いくら幼児化だからって……ヒヨコさんにならなくてもいいと思うのですが」
「ピヨピヨ!」
「そもそもアヒルさんはガジェットさんなんですから、幼児化してもヒヨコさんにはならないのでは?」
「ピッピピヨ!」
「ふえぇ……そういうユーベルコードだって……確かにそうでした」
 フリルは疑問を零したが、実際にこうなっているのだから仕方がない。アヒルさん――現在はヒヨコさんはピヨピヨと抗議しながらフリルの手の上で飛び跳ねていた。
「こうみるとアヒルさ……ヒヨコさんが怒っても怖くないです」
「ピヨー!」
「ふえ? 私はどうして平気なのか、ですか?」
 その中でヒヨコさんがフリルの肩に飛び乗り、いつも通りのほっぺたをつつく。小さくても痛いです、と泣きそうになったフリルだったが聞かれたことにはちゃんと答えていく。
「私は美白の魔法を使っているからです。符もくっつかないです……というよりも、くっついてもすぐに状態異常を払えているからですね」
 それに加えて魔法光でもしっかりガードしている状態だ。
「ピヨヨヨ!!」
「そうでした、ヒヨ……アヒルさんにも魔法をかけないといけませんね」
「グワ!」
 はっとしたフリルが魔法を発動した瞬間、ヒヨコさんはアヒルさんに元通り。
「ヒヨコさんのままですと戦えないので、アヒルさんお願いします!」
「グワワー!」
 話しながら迷宮を進んでいるうちに目の前には此度の首魁である猫月・ルナの姿が視えてきていた。
「なんや、漫才聞かされてるんかと思いました」
 肩を竦めたルナは霊符を構え、アヒルさんも臨戦態勢を撮る。あのオブリビオンは格闘も得意だと聞いていた。頑張りいましょう、とフリルが語った刹那。
 敵に向かって勢いよくアヒルウィングが飛ばされていき――戦いの幕が上がった。

 一方、その頃。
「藍ちゃんくんでっすよー! 絶賛罠を回避しまくってる藍ちゃんくん……あやー!?」
 迷宮を進む紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)が叫び声を上げていた。その理由は、それまで華麗に罠を潜り抜けていた藍のもとに大量の符が降り注いだからだ。
 幾つかは先程と同じように回避できたが、最後の一枚が問題だった。
「なんということでしょう! 符が……見事にぺたりなのでっす!」
 気付いた瞬間には時すでに遅し。
 藍の身体は呪いで満たされ、瞬く間に混乱の力が巡った。たとえるならば今の藍は、頭の上にはてなマークがたくさん浮かんでいる状態だ。
「やや?」
 辺りを見渡しても闇が広がるばかり。
 すべてが謎になってしまっている今、藍は首を傾げることしかできない。
「藍ちゃんくん、何をしてたのでしょうか?」
 此処に訪れる前のことまでわからなくなっており、藍は誰かを求めてふらふらと迷宮を彷徨った。そして、やっと辿り着いたのは――。
「おねえさん、知ってますか?」
 藍が問いかけたのは猫月・ルナそのひとだった。くすくすと笑ったルナは藍の様子を楽しげに見遣る。
「ふふ、あらたなお客さんやねぇ。いらっしゃい、ぶぶ漬けでもご馳走しましょか?」
「ぶぶ漬け? なんだかお腹ペコペコなのでっす!」
「あらあら、見事に霊符の呪いにかかってはりますねえ。弱い猟兵なん――」
「なーんて、でっす! あと一歩というとこだったのでっすが!」
「……!?」
 こちらをおそるる足らずと判断したらしいルナだが、藍は得意げな笑みを返した。
 それはたった一瞬のこと。
 おそらくルナは残りの呪いを藍にかけようとしたのだろう。だが、そうなること間違いなしだと読んでいた藍は演技をしていた。詳しくは最初こそ罠にかかったがすぐに解除しており、そのまま演技に入ったというわけだ。道中の罠を反射して解除していることに気付かれた場合、流石に手を打たれただろう。
 それゆえにわざと声に出したり、避けたり、叫んだりしたこともまた此処までの布石だった。!
「残りの呪い……幼児化した藍ちゃんくんはとっても可愛いでしょうねー!」
「くぅ――」
「騙し討ちで四つの異常、全部反射なのでっす! どうでっすか!」
「あての呪いはあて自身には効き辛いですえ……。この……!」
「そうでっすかー! でも、ダメージは入っているなら上々でっす!」
 藍は身構え直し、次の攻防に向けて気合いを入れた。此処からは全力勝負となる。あとは仲間の猟兵と協力していき、ルナを打ち倒すだけだ。
「と、いうことで! いっきますよー!」
「ふええ! アヒルさん、もう一度猛攻撃をお願いします」
「グワワ!」
 藍とフリル、それからアヒルさん。
 視線を交わしあった仲間たちは状態異常をものともせず、果敢に戦い続けていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦


符を罠に使うとは愉快だ
同じ符術士として挑むぜ
|火属性攻撃《狐火》の符術で焼き払い、打ち漏らしは神鳴で斬って捨てる
一枚食らうは厄介な『鈍足』だ

名乗って挨拶
鈍る動きでルナに相対する
女の子に|剣《殺意》を向けるのは憚られるんで納刀…する際のルナの反応に眉を顰めるぜ
抱えているモノがあるなら聞くと情を示すよ
同じ符術士・戦狂いのシンパシーに加え、手を差し伸べるべきと感じる|宿敵の《不思議な》縁を覚えるのさ

剣を抜かせてみろと挑発する
鈍足なのでルナの符術を避けることは諦めた
新たに取り出した符による結界術で防ぐよ
符を出す際にデストラップも取り出し仕込むぜ

(肉弾戦等で)結界を破られるか【真威解放】と罠使いで鋼糸の罠を構築しルナを縛り上げるかの勝負だ
縛れば神鳴突きつけて殺されたようなものだと諭すぜ

封印術でオブリビオンとしての力を根こそぎ符に封じ焼却し、式神使いの法で管理下におく。責任はアタシが負う意思表明だ
再戦は何時でも受けると、顔を近づけ天然誘惑なイケメンオーラで笑うよ

悪党でもねえ美女には生きて欲しいのさ



●英雄は此処に在り
 闇に包まれ、符が飛び交う機械迷宮は昏い。
 まるで其処にいる者の心が作り出しているかのような光景だ、と感じた四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は口端を僅かにあげた。
「符を罠に使うとは愉快だ」
 辺りが暗闇であっても風を切る符の音や近付く呪力の気配で判る。
 燦は此方に向けて迫ってくる符のひとつを躱しながら、此度に倒すべき相手について考えた。
 決意を胸に抱いた燦は並々ならぬ思いを抱いている。己を突き動かす感情が何であるかは未だ突き止めなくていい。今はただ、此の領域にいる相手と会うことからだ。
 更に迫ってきた符を察知した燦は両手を大きく振るった。其処から発動したのは狐火の符術。呪いの符を焼き払ったことで辺りに灯りが灯ったような効果が現れた。
 これは好都合だと感じた燦は更なる狐火を発動させ、行く先を照らしながら呪を打ち払う。
 たとえ打ち漏らしがあったとしても問題はない。飛んできた気配を探り、神鳴で斬って捨てるのみ。
 その動きは見事なものだが、燦が敵に取って厄介な存在だという判断がなされたらしい。
「……集中攻撃か」
 燦が逸早く気がついたように、次の瞬間にはそれまで以上の呪符が飛んできていた。これも最初に此方を潰しておこうという迷宮的な狙いなのだろうが、燦は慌てることなどなかった。
 狐火の符が舞い、神鳴の刃が閃く。
 次々と両断されて焼かれる符。されど足元を狙ってきた符が燦に一瞬だけ触れた。燦は即座に符を切り払ったが、既に呪いはもたらされていた。
(鈍足か……致し方ない、このまま!)
 歩みが遅くなってしまったが、燦は目の前に視線を向ける。
 何故ならば其処には――遠き日の英雄『猫月・ルナ』が立っていたからだ。
「よくここまで辿り着きはりましたねえ」
「お褒めに与り光栄だ」
「あらあら、呪いを受けてるんやろに余裕そうなお顔やねえ」
 相対した二人の視線が重なる。
 真っ直ぐな眼差しを向ける燦に対し、ルナは陽気そうに笑った。これまで他の猟兵たちと交戦して消耗しているルナだが、彼女は未だ余力を残している。その姿に流石だと敬意を示した燦は名乗りをあげた。
「アタシは燦。――四王天・燦」
「えらい礼儀正しい子やこと。あては猫月・ルナ。今は……悪の女幹部いうところでしょか」
「今は?」
 ルナが含みのある言い方をしたことで燦が軽く首を傾げた。だが、ルナは誤魔化すような笑みを向けてきた。
「昔なんてどうでもええことです。貴女様は……ふふ、あてと戦うんに相応しいお人です」
「そうか。アタシも似たような思いを抱いてるぜ」
 昔のことにはそれ以上は言及せず、燦は『戦うこと』について同感だと感じた。そして燦は手にしていた刀を下ろしてみせた。敵とはいえ女の子に|剣《殺意》を向けるのは憚られる。
 それゆえに納刀したのだが、ルナは訝しげな表情を見せた。
「手加減してあてに勝てると思ってはるの?」
「いいや、同じ符術士として挑むぜ」
「……そう。舐められてはるのかと思ったわぁ」
 最初こそ怪訝だったが、同じ符術で対向するためだと語られたことでルナの表情が緩む。その様子に眉を顰めた燦は問いかけてみた。
「何か抱えているモノがあるなら聞くぜ」
「…………」
 情を示した燦に向け、ルナは何とも言えない視線を返す。無言のままだったが燦には何故かわかった。
 符術士であり戦狂いでもある二人。
 そのシンパシーに加え、手を差し伸べるべきと感じる|宿敵の《不思議な》縁を覚えていたからだろう。戦いにおいて何か、過去に納得のいかぬ出来事があったのかもしれない。否、確実に存在したのだろう。
 燦はそれこそがルナの抱えているものだと感じ取った。
 ならば――。
「不遜だと想うならアタシに剣を抜かせてみろ」
「あら、それやったら――」
 挑発する燦に対し、ルナが四枚の獣人呪符を構える。迷宮に張り巡らされている罠よりも更に強力な本物の力だ。いきますえ、と告げたルナは容赦のない呪符を解き放った。
 それに反応した燦は地を蹴り――あげることをやめる。既にかかっている鈍足の呪いがあるゆえに完璧には避けきれないだろう。敢えてルナの符術を避けることは諦めることで次の行動に全力を注ぐことを決めたのだ。
 代わりに燦は新たに取り出した符による結界術を巡らせた。そして、その際にデストラップも取り出して仕込む。
 四呪と鋼糸。
 互いの攻撃が張り巡らされ、符術士同士の戦いは激化する。
「なかなかの動きやねえ、燦」
「お前もだぜ、ルナ」
 互いのなを呼びあった宿敵同士は全力で攻撃を放ちあった。符だけではなくルナは肉弾戦にも移行しており、燦の結界を破らんと迫った。その動きは素早く、他の者には目で追えないほどの攻防が繰り広げられる。
 だが、燦は真威を解放している。
 肉弾戦に持ち込まれても構築された鋼糸の罠がルナを縛り上げようと動いた。ルナは薄く笑み、それでこそだと言うように身を翻す。一進一退、真剣な勝負が其処にあった。
「ようやりますねぇ、でも!」
「こっちだって負けちゃいないからな」
「ふふ、これこそ戦いです」
「楽しそうだな、ルナ!」
「戦いこそあての生きる場所でしたから、ねぇ!」
 呪符が飛び交い、鋼糸が鈍く輝き、拳と蹴りが迫る中で鋭い衝突音が響く。
 鈍足の呪いは燦を蝕んでいたが、それ以上の力で以てルナに対抗できていた。攻防は尚も続き、やがて――。
 ある一瞬、燦の中に記憶が流れ込んできた。

 それは何処か、いつかのルナの記憶。
 それも死の直前ものもだ。
 明らかな非戦闘時、ルナの目の前には兵器の攻撃めいたものが迫ってきていた。
 目を見開くルナ。
 何かを叫ぶように開いた口元。叫びなのか、悲鳴なのか、それとももっと別の言葉であったのか。それはわからないが、ルナの命はそのときに刈り取られた。
 ただ無慈悲に、ただ無意味に。まるで戦いを愛した者を侮辱するように――残酷に。

「……!」
 そんな光景を視たのは瞬きにも満たない時間。
 おそらくルナと燦の間にある|不思議な力《宿縁》が作用したのだろう。なるほどな、と呟いた燦は今のルナが抱いている本当の望みを知った。
 ――誉れある死。
 あのような結末はルナにとって無意味さを感じさせるものだった。それゆえに死を迎えるならば戦いの中で。
「それなら、此処での決着を付けてやる」
「っ!?」
 燦は一瞬の隙を突き、鋼糸を操作した。それによってルナの身体が縛り上げられ、身動きが取れなくなる。
 瞬時に神鳴を抜いた燦は切っ先をルナに突きつけた。
「アタシの勝ちだ。もう殺されたようなものだぜ」
「……勝ち? ある意味ではあての勝ちでもあります」
「どういうことだ」
「ふふ、さっき言うてましたやろ。剣を抜かせてみろ、と」
「――ああ」
 戦いの最中であるというのに二人は静かに笑った。
 されど燦は此の戦いを終わらせるために封印術を行使していく。オブリビオンとしての力を根こそぎ符に封じて焼却し、式神使いの法で管理下におくため。責任は己で負うという意思表明だ。
「再戦は何時でも受けるぜ」
 最早動けぬ状態のルナ顔を近づけた燦は天然の誘惑なイケメンオーラで笑った。消滅しかけているルナは、どうして、と問いかけてくる。すると燦は手を伸ばし、ルナに語りかけた。
「悪党でもねえ美女には生きて欲しいのさ」
「ふ、ふふ……この戦いだけでもう満足やったのに……ずるいお人」
 ルナは微笑み、腕を伸ばし返す。
 此処で一度、『オブリビオンとしての猫月・ルナ』は消えなければならないが――これは別れではない。そして、消えゆくルナは燦に身体を預けた。
「あてに向けてくれた、その気持ち。……応えさせていただきます」
 ――ああ、嬉しい。

 自称・悪の女幹部である彼女は今、此処で散った。
 自身が本当に望んでおり、求めていた最期――誉れ高き死を与えられて。
 
 そしていずれ、新たなるものに生まれ変わる。
 遠き日の英雄としての意志を抱えて。

 それから彼女がどのような道を歩んでいくのか。そのみちゆきは、此処に立っている燦と共に在る。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月04日
宿敵 『遠き日の英雄『猫月・ルナ』』 を撃破!


挿絵イラスト