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獣人世界大戦④〜猟兵コレクション戦争編

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #クロックワーク・ヴィクトリア #狂気艦隊

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「みんな、猟兵コレクションお疲れ様!」

 元気のいいユメカ・ドリーミィの声がグリモアベースに浮かぶ無数のシャボン玉の奥から響く。
「ちなみにこれは戦争シナリオよ! みんなも知ってる通り、獣人戦線で戦争が始まったの。今回は、複数の戦線を限られた日数の中で突破していかなきゃいけないとか、まあ色々あるけど……ぶっちゃけ、出てきた敵を片っ端から叩いていけばいいだけよ! いつも通りね!」
 うむ、実に分かりやすい。
 それはそれとして、と、ユメカはふわりとシャボン玉を漂わせた。

「今回あたしが予知したのは、クロックワーク・ヴィクトリアの狂気艦隊の動向なの。この艦隊がサンクトペテルブルクに攻め入ろうとしているようね。皆にはそれを阻止してほしいわ。艦隊の中の一隻に忍び込んで、機関室を狙って破壊工作を仕掛けるといいと思うの。ただし、恐ろしい罠が仕掛けられているわ。それは!」

 と、ユメカは柳眉をひそめ、細い指を一本立てて深刻な表情を浮かべ、注意を促した。

「パーティーよ!」

 ……なんて?

「パーティーよ! 敵船内には『蒸気人形』たちが優雅で上品なパーティを繰り広げているんですって。みんなはこのお上品なパーティーの中を怪しまれずに突破してもらわないといけないってわけ。礼儀作法とかマナーとかに気を付けなければいけないわ。……いけないのですわ。お気を付けあそばせですわ。……みたいな」

 なんか一気にシナリオのトンチキ度が増した気がするが気にしないでいただきたいのですわ。

「そして……何より服装も大事よね。パーティーに似合うきれいな服装をしていかないと。猟兵の持つ違和感阻害能力も、一般人よりは効果が薄いでしょうし……ということで!」

 じゃかじゃん! とユメカは大きく頷いた。

「冒頭にも言ったけど、そこでついこの間あったばかりの『猟兵コレクション』の出番よ! みんな、ここで新しい服を作ったばかりの人も多いと思うの。せっかくだから、これを堂々と着て見せびらかしにいきましょう! 今回は作らなかった、って人でも、もちろんそれ以外の自慢の服を着ていけばいいしね。自分たちが気合入れて作った服を着て敵を見惚れさせて任務遂行するって、面白いじゃない?」

 ということで今回の任務は潜入破壊工作となる。敵のお上品パーティーに紛れ込む必要があるために、言動は常にお上品に礼儀正しく振舞うよう、気を付けていただきたい。
 また、猟兵コレクションその他で作った自慢の服装があればそれを着用し、自慢のアピールポイントを延々と演説してもよい。敵はその素晴らしい服装に気を取られて猟兵だとは見破れないことだろう。

「じゃあみんな、頑張ってね! ちなみにあたしは背後に今年の猟兵コレクションの新作は作ってもらえなかったけど! 皆は頑張ってね! あたしは新作なかったけど!」

 ……アッハイ。来年は作ってあげるから。


天樹
 こんにちは、天樹です。
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。一章で完結し、戦争全体に影響を及ぼします。

 潜入シナリオとなります。雰囲気は多分、と言うか絶対コミカル寄りになるでしょうからお気軽にどうぞ。
 言動をお上品に、お嬢様風や紳士風のふるまいをしながらパーティーの中を華麗に突破していくことがプレイングボーナスとなります。
 また、猟兵コレクションなどで作った自慢のファッションがある方は、せっかくですからそのアピールを熱心に早口で文字数いっぱいに行ってくれても構いません。蒸気人形たちはその素晴らしいファッションの虜となり、怪しまれなくなるでしょう。

 なお、今回の戦争は「戦線」の特別ルールがあり、早期のシナリオ完了が求められるため、執筆もそれに応じ、普段よりは文章短めあるいは人数少なめになる可能性があります。ご了承くださいませ。
 では皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『紳士淑女の作法』

POW   :    気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。

SPD   :    細かいミスをさりげなくごまかす。

WIZ   :    一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。

イラスト:fossil

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘルガ・リープフラウ
※アドリブ、連携歓迎

豪奢で優雅なお茶会……戦場であることを忘れてしまいそう
だからこそ聖者の名に恥じぬよう、所作は丁寧に、一分の隙もなく
丁寧な「おもてなし」には、レディとして礼儀正しく振舞いましょう

普段の白いドレスでも良いのでしょうけれど、せっかくですからウェディングドレス(今年の猟コレ)を着ていきましょう
神の前で、最愛の人との永遠の愛を誓い、絆を結ぶ……
ただ美しく着飾るだけでなく特別な「神聖さ」をも纏う
それが婚礼衣装というものですの

素敵なお茶会の余興に「微笑みの歌」を披露いたしましょう
焦る必要などありません
わたくしの歌声に聴き惚れた「この船」も、きっと良きようになさってくださいますわ



「確かに豪奢で優雅なお茶会ですこと……戦場であることを忘れてしまいそうですわ」

 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は感嘆の面持ちで周囲を見回した。
 そこに展開されていたのは紛れもなく華麗にして典雅なる盛況な宴。
 高尚な音曲の調べを背景に、宝石のごとく着飾った淑女たちと威厳ある紳士たちが穏やかに談笑しつつ、香り立つ茶菓を優雅に楽しむ。
 まさにそれは選ばれし者たちの集う高貴なる茶会だった。たとえ集う者たちが蒸気仕掛けの人形であったとしても。
 だが、そんな場であっても、いやそんな場であるからこそ、ヘルガの挙措は彼女の洗練された気高さを正しく表してやまぬ。

「聖者の名に恥じぬよう、所作は丁寧に、一分の隙もなく。丁寧な「おもてなし」には、レディとして礼儀正しく振舞いましょう」

 おお見よ、凛として艶やかに、春風のごとく爽やかに、今ヘルガはドレスの裾を靡かせて、堂々とパーティ会場に歩み入った!
 一瞬呆気にとられた蒸気人形たちだが、即座にその視線はヘルガに釘付けとなる!
 なにしろ!

「……ウェディングドレス?」
「ウェディングドレス……確かに素晴らしい御仕立で目を見張りますが……ウェディングドレス?」

 ざわざわ。
 ざわざわざわ。
 なごやかだったお茶会の空気が妙にザワる。
 そう、ヘルガが身に纏ってきたのは純白のウェディングドレス! 彼女の運命の愛と深き真摯なる想いが形になったかのような、流麗にして鮮やかなる逸品であったのだ!
 だが同時に、お茶会にウェディングドレスとは、多少ちょこっとだけ微妙になんとなく合わないかもしれない! そう感じた蒸気人魚の一体が、恐る恐るヘルガに向かい口を開く。

「えー、失礼ながらマドモアゼル、いえ、マダムとお呼びすべきでしょうか、その御いでたちは一体……」
「そう! よくぞお尋ねくださいました! お聞きになりたいのですね、このウェディングドレスのことを!」
「えっ?」
「神の前で、最愛の人との永遠にして永久不変不朽の愛を誓い、かけがえのない絆を結ぶ……! そう、ただ美しく着飾るだけでなく特別な「神聖さ」をも纏う。それが婚礼衣装というものですの。すなわちこれがそのウェディングドレスの真髄ですわ!」

 ……なんかヘルガのスイッチが入った。

「アッハイ。……いえそうではなくてですね、マダム……」
「さあよくご覧くださいませ、まずはわが髪を彩る蒼い薔薇は『奇跡』をその花言葉とします。そう、運命を乗り越え結ばれる気高い奇跡を表しているのですわ。同時に、この神に宿るミスミソウの青色との調和も考えられた、実に深淵にして美しいデザインではありませんか。そして次に!」
「いやそのお待ちくださいマダム!? マダーム!? 落ち着いてー!?」
「腕を大きく露出することで女性としてのしなやかでたおやかな魅力を存分に表現しつつ、しかもシースルー素材を使うことで適度なセクシーさを抑えるこの上品な心遣いはどうでしょう。さらにですね!」
「誰か受け付け代わってくれー!?」

 なんかもう止まらないんですがどうしましょう。
 そりゃまあ確かにヘルガのドレスは見事な仕立てであり、語り始めたら延々ととめどなく立て板に激流となるのも当然至極ではあるのだが。

「ふんわりと広がったスカートのラインと飾られた花々の意匠は可憐さを、そして流れるような裾は大人びた上品さを重ね備えており……」
「くっ、なんかこのままでは色々な意味でマズい気がする! 諸君、失礼ながらこのマダムを止めるのだ!」
「あらあら、焦る必要などございませんわ。では素敵なお茶会の余興に「微笑みの歌」を披露いたしましょう……『la la……麗かな陽だまりのように、揺蕩う水のように、穏やかに包み込む愛おしい時間♪ 共に歌いましょう。出会えたこの幸せを……♪』」
「なんか歌い出したー!?」

 そう、彼女のUCは、美しき歌に聞き惚れたあらゆるものに友好反応をもたらすのだ。
 たとえそれが──蒸気人形と言う無機物であろうとも例外ではない!

「ふにゃ~……マダム、機関室へ向かわれたいのですね~?」
「ではご案内いたしますよ~」
「ふふ、ありがとうございますわ」

 すっかり友好的になった蒸気人形たちはまんまとヘルガを機関室へと案内していくではないか。これこそ、ウェディングドレスで登場することで意表を突きその隙に歌を奏でることで蒸気人形たちを支配するという、ヘルガの素晴らしい作戦であり……。

「もっとドレスについて語り合いたかったのですが、まだ少し物足りませんね。ですが、まあ今は任務を優先いたしましょう」
 ……えーと、作戦だったんだよね?

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルミネラ・ジェムジェム
ご、ごごっ、ごきげんようですわ~……。
ぼく、じゃないわたくし、普段着部門ゆめギャル担当のルミネラともうしますですわ~。
ゆめかわは人類の辿り着いた魂の正装なのでギャルセーフですのですわ~。

……む、むりだようこれぇ! お人形さん超こっち見てるし!
ぼくみたいなコミュ障にプレゼンもパーティもできっこないんだ……。
このまま囲んでヴィクトリアンたこ殴りにされて死ぬんだ!
せめて激かわアイコンフレームの鎧で身を守らないと……。

ってあれ? グーパンされない……?
もしかしてこの子たち、ぼくのかわいさが分かるの?
このかわいさ以外の全てを削ぎ落とした鋭利なゆめギャルのよさが!
あ、ありがとう。機関室壊して帰るね……。



「ご、ごごっ、ごきげんようですわ~……」

 もう一言目から明らかにふしんじんぶつ感マシマシの上ずった声を上げたのはルミネラ・ジェムジェム(身体はガチャで出来ている・f41085)。
 っていうか、まず挨拶をするときには相手の目を見るんですよ。駄目だよ床見てちゃ。
「そそそそんな! 相手の目を見るなんてそんな高難易度のクエストをいきなりやらせようだなんて人の心がないのかな地の文さんは!? レベル1のひのきのぼうでいきなり本ボスどころか裏ボスまで倒してこいみたいなもんだよ!?」
 ……えっそんなに?
 だがたとえ苦しくても辛くてもシナリオに参加した以上は任務を遂行してもらうのである。

「おに。あくま。……うう、仕方ない……ええと、ぼく、……じゃないわたくし、普段着部門ゆめギャル担当のルミネラともうしますですわ~。ゆめかわは人類の辿り着いた魂の正装なのでギャルセーフですのですわ~」

 どよよ、とお茶会がどよめいた。
 もうさっきまでロイヤルでノーブルでエグゼクティヴな雰囲気漂っていた優雅で華麗なパーティが、呆気に取られて突然の闖入者に眺め入っている。まじまじと。それはもうマジマジと。

「あ……その……ああう…………む、むりだようこれぇ! お人形さん超こっち見てるし!!!!」

 その視線の洪水というか熱帯雨林の視線スコールともいうべき集中には、弱者クリスタリアンたるルミネラが到底耐えきれるものではなかった。ぷちん、と自分の中でかよわきなんかが決壊した音と共に、彼女はうずくまってえづきはじめた。

「うう、結局ぼくみたいなコミュ障にプレゼンもパーティもできっこないんだ……。このまま囲んでヴィクトリアンたこ殴りにされて死ぬんだ! ぽくだってそりゃあね、そりゃあ、この激ヤバ可愛いサイコーテンアゲな服に似合うくらいの自分になれればいいなとか思ったよ! だけどこんな素敵な服も、ぼくなんかに着られたらきっと宝の持ち腐れなんだ……この、ぼくの体色と引き立て合うジャケットのビビッドピンクの鮮やかな色合いとかもさ、素敵だけど、着てるのぼくなんだもん……」

 膝を抱えて体育座りになりながら、ルミネラはえぐえぐと呟き続ける。

「そうなんだよ、せっかくのたくさんのりボンで飾られた華やかな賑やかさは確かにクリスタリアンの透明な地肌と素晴らしい対照性を作り出していると思うんだけどさ、着てるのぼくだし。……それにアシンメトリーの配色のタイツ、これがまたセクシーだよね。リボンや星っていうガーリーな主張を活かしつつ脚のラインの視線をセクシーに誘導するってホント天才じゃないかって思うデザインだよね。着てるのぼくだけど。もうほんとさ、ごめんなさいだよ。こんな素敵なファッションなのにぼくでごめんなさいなんだよ……」

「ブラボー! おお、ブラボー!」
 おお、だがしかしその時!
 会場いっぱいに喝采と拍手が沸き起こったではないか!

「えっ何!?」
「素晴らしいではありませんか、レディ! あなたはその服装の司馬らしさを十分理解し、着こなしている!」
「あれ? グーパンされない……? もしかしてあなたたち、ぼくのかわいさが分かるの? このかわいさ以外の全てを削ぎ落とした鋭利なゆめギャルのよさが!」
「ゆめぎゃる……なる単語の意味は分かりませんが、あなたに最もよく似合っている服装であることは理解できます。そして、その服装が似合うのは、まさにそれを着ているのがあなただからだということも」
「あ、ありがとう……てっきり、こんなお上品なパーティには、こんなファッションは合わないって怒られるのかと」
「とんでもありません。あなたはまさに謙譲の美徳の体現者ではありませんか、上品なことこの上ないですとも」

 謙譲っていうか自己評価が地の底なだけじゃないかなって……。

「地の文うるさい。……えへへ、ありがとう、嬉しいな。じゃあ、このへんで、ここ通らせてもらうね……」
「御機嫌よう、可愛らしいレディ」
「わあ、ありがとう、こんなに褒められるなんて嘘みたいだ……嘘みたい……嘘……嘘……?」

 おお、だがなんとしたことか、一度は輝きに満ちたかと見えたルミネラの瞳を、どんよりと再び闇が覆う!
「そうだ、きっと嘘なんだ。あとで、実はドッキリでした―みたいな展開なんだ。調子に乗った僕をどっかの隠しカメラが撮影していて……騙されないぞ! カメラどこだよ! わかってるんだからね! そこか! そこかー!!!!!」

 いや被害妄想にもほどがあるって! だがドツボに嵌ったルミネラの暴走はもう止まらない!

「こんな世界もう滅んじゃえー!!!!!」

 かくしてルミネラのUCたるキャバリア軍団の全方位攻撃乱射により、戦艦は無事に沈没したのだった。
 ……いいのだろうかそれで。まあ任務達成だからいっか!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
人狼戦線での初依頼…なんで今回のメイン俺なんだ?
こういう場なら蓮の方が慣れてんだろ

んー今回着てきたのケルベロコート
つまりあの世界の軍人さん…将校…
なら纏った雰囲気的にのんびりと優しいより
切れ味キツメで男役もこなす錬が適任…

…一応俺の自認識は女だぞ

分かってますよ。礼儀作法も分かってますよね?
サポートもしますから頑張ってください

…錬が対応してる間にご紹介
今年のはケルベロスコート…鎖じゃらってて恰好いい奴だよ
色は私達のカラーで通常より緑っぽくしてるんだ
それにいつものマフラーで忍者感UP
そして錬の要望で刀を4本さしてみました…
実はこの下はぴっちりスーツだから足はブーツじゃなくてスーツの延長なんだよ…



「……いやなんで今回のメイン俺なんだ? こういう場なら『蓮』の方が慣れてんだろ」

 レン・ランフォード(|近接忍術師《ニンジャフォーサー》・f00762)の中に宿る三人の人格の一人、『錬』が柳眉をしかめ、不可解そうに唇を尖らせた。
 確かに、紳士淑女が集うお上品なパーティと言うのであれば。荒事担当の錬よりも、優しく穏やかな蓮の方が適任そうには思える。
 だが、と、もう一人の人格、『れん』がほんわかと答えた。

『んー、今回着てきたの、ケルベロスコート。つまりあの世界の軍人さん……将校の格好……。なら纏った雰囲気的に、のんびりと優しいより、切れ味キツメで男役もこなす錬が適任……』
 それはそれで理屈としては通っているが、錬はまだ多少納得がいっていない表情を浮かべている。
「あのな、一応俺の自認識は女だぞ」

『そこで『一応』って保険掛けるあたりが可愛いですよね錬は』
『うん。だからこうやって遊ばれる……』

「なんか言ったかお前ら!?」
『いえ何も―』
『べーつーにー。それよりほら、にんむにんむー』
「くっ、あとで絶対問いただすからな……あー、こほん。……紳士淑女の諸君、招かれざる来訪の御無礼をお許し頂ければ幸いに思います。この素晴らしいパーティの末席に加わる栄誉をどうぞ私に与えてはくださらないでしょうか」

『……すげー! 錬すげー!』
『やれって言ってほんとにやりますからね錬は……』
 ビシッと折り目正しく礼節を尽くした錬の姿は、確かにこの上もなく絵画のように決まっている!
 れんの言ったように、ある種の鋭さを備えた錬の所作は、軍服という服装によって想起される規律と威厳を余すところなく表現していると言ってよい。さらにレンの美しい女性としての外見が加わることで、そこには性別を超越した、耽美でどこか妖しささえ湛えた美貌が醸し出されているではないか。

『もうあっちの蒸気人形淑女とか……もう錬見てトロンとした目つき……この女たらし……女殺し……ひゅーひゅー……』
「お前ら、ほんっと後でなあ……! あ、いや、何でもありませんとも、美しいレディ、ははは」
『……「美しいレディ」』
『「うつくしいれでぃ」』
「お前ら―!!! ああいやこちらの話ですともレディ。ああ、この服装ですか? 過分なお褒めにあずかり光栄の極み。これは……これはですね……おい、なんだっけ。俺はよくわかんねえんだよこういうの!」
 焦りつつ内面に呼びかけた錬に、れんが面白そうに答える。

『今年のはケルベロスコート……鎖じゃらってて恰好いい奴だよ』

「そう、ケルベロスコートです。鎖じゃらって……ではなく……じゃら……じゃ……じゅう……銃火器を携行しやすいように機能性を重視しておりまして」
『色は通常より緑っぽくしてるんだ。私たちのカラーだし』
「色は暗緑色を採用しています。私たちの……ではなく……わたし……わし……ワシ……ウォッシャブルといますか、真っ黒なものなどより洗っても色落ちしにくいのは軍服として大事ですからね」
『めっちゃ苦しい……それ……』
「うるせえ! ああいやなんでもありませんとも」
『あとねー、……いつものマフラーで忍者感UP』
「そしてこのマフラーですが忍者感……いえ、じゃかん……若干長めかもしれませんが戦場においてはロープや包帯など様々な用途に使えるものとして便利なのです」
『……いやあうまく乗り切りましたねえ、錬偉い』
『えらいえらい』
「お前らほんっとに覚えとけ……こほん、いえこちらの話です。さて、ではそろそろお暇させていただきましょう。ああご案内には及びません、素晴らしい船内を見物しながらゆるりと帰途につくとしましょう……」

 なんやかんやうまくその場をごまかし、錬は颯爽と身を翻してパーティ会場を後にした。
「冷や汗かいたぜ。だが何とかうまく演じ切ることができたようだな。さすが俺だぜ……」
 得意げに笑みを浮かべながら機関室へと向かった錬であったが、だがしかし。
 忍びの聴覚は数里先に落ちた針の音も聞き逃さぬと言われているのだ。
 必然的に、パーティ会場の会話はまだ彼女の耳に届いてきた……。

「なんてお可愛らしいお客様だったのでしょう」
「まったくですわ。あの凛々しい身のこなし、整った顔立ち、そして」
「ええ、そして!」

「「あの明らかに無理して大人びている背伸びした御様子!! もうほんとキュンとなりますわあ!!」」

『………あー……全部バレてたっぽい?』
『まあ結果オーライなんで……いいんじゃないですか』
「うわああああ! もうなんもかんもぶち壊してやるううううう!!」

 ──錬の悲痛な叫びが機関室の爆発とともに木霊していた……と、後に蓮とれんは語るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドワルダ・ウッドストック
POW アドリブ連携歓迎

猟兵コレクションお疲れ様ですわ。……来年に期待いたしましょう、ユメカさん。
それはそれとして戦争ですわね。
さっそくクロックワーク・ヴィクトリアを叩きのめしに向かいましょう。

イングランドの猟兵として、優雅に上品にパーティをするのは当然のこと!
といっても、今回はわたくしもコレクションに参加していませんので、わたくしは水着ドレスで参りますわ。
クルージングと考えればオシャレで、紳士淑女にも相応しいでしょう。
黒色を基調として薔薇をあしらった傘とか、とても気品があるのですわ。
多少の色気も見蕩れるポイントになるでしょう。

と言う訳で、自信満々に狂気艦隊に潜入して、破壊工作を行いますわ!



「猟兵コレクションは……来年に期待いたしましょう、ユメカさん。今回はわたくしもコレクションに参加していませんし、お気持ちはわかりますわ」
「はううう! わかってもらえますかああ!」

 エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)の優しい声に、ユメカ・ドリーミィはさめざめと感激の涙を流した。そんなユエカをなだめるように、エドワルダはぽんぽんと柔らかく彼女の背を叩く。

「次の楽しみが倍になったと思えばいいのですわ。さて、では私も出撃いたしましょう。もっとも、今申し上げたように、わたくしには今年の猟兵コレクションはないのですが……これで参りましょう!」

 ドヤっと自慢げに『その姿』を披露したエドワルダに、ユメカは一瞬目を白黒させつつも、グリモアを起動させた……。

 輝くオーロラカーテンを潜り抜け、エドワルダはクロックワーク・ヴィクトリアの戦艦の一隻へと侵入する。
 おお、しかし『その姿』は! それこそは!

 ──水着であった!
 
 ナンデ!? パーティに水着で乱入ナンデ!?
 読者諸氏がそう思われても無理はない! しかし、いわば戦艦による侵攻とは一種のクルージングともいえる! いえるのだ! そこは疑問を抱かず受け止めていただきたい!
 なのでクルージングである以上、水着姿もまた立派な礼装と言えるだろう! なんたる一部の隙もない見事な論理武装か!

「フッ、ユメカさんも、この水着に相応しいパーティを行っている戦艦を見つけてくれたそうです。さあ、しかとご覧あそばせ、わたくしのこの水着を!」

 自信満々に一歩を薦めたエドワルダ。
 その場所は確かに、全員が水着を着用し、それが全く不自然ではなく、むしろ和気あいあいと盛り上がっている場所であった。

「ナイスバルクですぞ! キレておりますな!」
「仕上がっております!仕上がっておりますよ!」
「バリバリですな! いい血管浮いておりますぞ!」

 ……ピチピチに漲りむんむんと沸き立つ筋肉の祭典、マッスルオブザマッスル、ボディビル会場と言う名の。

「……なんですのこれー!? 上流社会のパーティではありませんでしたのー!?」

 思わず目を見張るエドワルダに、蒸気人形の一人が上機嫌に声を掛けた。
「おお、新しい参加者の方ですかな? さよう、筋肉とはまさに上流階級の嗜み。古代ギリシアの神像はいずれも逞しい肉体を持っております。それに近づくために体を鍛えて鍛えて鍛えつくすことは、上流階級なればこそ成しうる業ですからな!」

 いや蒸気人形じゃなかったのかよ、とのツッコミがあるかもしれぬ。だが蒸気人形が学習して礼儀と高貴さと上品さを身に付けられるのであれば、同様に鍛えて筋肉を得ることに何の不思議もないではないか!

「そ、そんなものでしょうか……?」
「そうですとも! さあ次はレディ、あなたの番ですぞ!」
「マジですの!?」

 ということでエドワルダはステージへと押し上げられた!
 おお、今こそ彼女の白い肌に映える漆黒の水着が、エドワルダのポージングによって躍動する!
 上品さ、高貴さと、セクシーさを共に兼ね備えた黒い水着は、エドワルダの引き締まった肉体の魅力を余すところなく伝えて惜しまない。
 実際ボディビルダーではないものの、エドワルダは騎士団長として鍛え上げられた俊敏にしてしなやかな戦士としての筋肉を持つ。その筋肉が舞う時、並み居るビルダーたちのマッスルとはまた異なった蠱惑的な空気が会場一帯を魅了していく。その美しい肢体を飾るように踊る水着の紐は、彼女が動くたびに違った表情を見せて華やかさを増していくのだ。
 さらに深い角度で食い込んだ下肢のラインを覆うシースルーのパレオが、気品を保ちつつ女性性をも強調するという鮮やかなデザインを実現しているといえるだろう。
 さらに薔薇をあしらった上品な日傘を肩に差しかける華麗な佇まいは、まさに一幅の絵画のようではないか。

「おお、素晴らしい!」

 会場は一斉に万雷の拍手で埋め尽くされた!!
「マッスルとは少し異なりますが、神に近い理想の肉体を再現すると考えれば、まさにこれもまた一つの理想の姿ですな! レディ、あなたが優勝です!」
「は、はあ……喜んでいいものでしょうか……」
 
 エドワルダは困惑気な表情を浮かべながら優勝トロフィーを授与され、そのまま拍手に送られて会場を後にしたのだった。

「……いえまあ、破壊工作するんですけどね。それはそれとして、褒めてもらえたのは、まあ悪い気分ではありませんでしたわね……」

 機関室に入り込み全武装を振るチャージしつつ、エドワルダはふと思うのだった。

「……騎士団にもボディビルを導入してみましょうかしら?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
参照:https://tw6.jp/gallery/?id=195368

「ふっ、ついに私の新着コーディネートを披露するときが来てしまったようですね!
獣人戦線で戦争になると予想し(すみません嘘です)、軍服ファッションを頼んでおいたのです!
そう、戦争という舞台にふさわしい、周囲にまったく違和感を与えないこの格好!
これならばお上品なパーティーの中でも気づかれないに違いありません!」
『アイ、格好はともかく、口調はそれでいいのですか?』
『礼儀作法とか、大丈夫なの、アイ?』
「ふっ、安心して下さい。そのあたりはオベイロンとパックにサポートしてもらいつつ、マスターに丸投げしますから!
アドリブ大歓迎です!」



「ふっ、こんなこともあろうかt」
『ないです』
『ないわね』

 アイ・リスパー(|電脳の天使《ドジっ娘電脳魔術士》・f07909)の冒頭の一行目は、食い気味にこれを否定する二つの声で瞬殺された。
 アイの相棒たる万能戦車オベイロンのAI合成音声、そして仲間である、意志ある『紋章』パックの声である。

「いや二人とも酷くないですか!? 私のUCには未来演算だってあるんですから、ちゃんと獣人戦線で戦争が起こることを予期して猟兵コレクションに軍服を発注したとしても、別におかしくないじゃないですか!?」
『アイがそんなきちんと未来を予測できるなら、ガチャ天井までツッコんでようやく引いたSSRが次の更新で即産廃になるなどありえないからです』
「いいんですよイラストアドで引いたんですから! っていうかそれは私じゃなく運営が悪くないですか!?」
『あー、まあそれはともかく』

 いつものことながら余計な方向に脱線しかけた会話をパックが無理やり軌道修正する。

『まあ過程はともかく、結果としては猟兵コレクションが役立ちそうね』
 実際、アイの発注した今年分の猟兵コレクションは見事な出来であった。
 それは真珠のように色の白いアイの肌、そして白銀の髪と引き立てあう濃厚な色のミリタリードレス。落ち着いたデザインでありつつミニスカートが女性らしさを醸し出し、全体を貫く金モールのラインが高級感をも漂わせている。
 そして何よりも素晴らしきは、そのボレロの上着であろう。ファッショナブルなアクセントであると同時に、無理なく自然に上半身を覆うことでアイの胸の小ささを感じさせなくしているのだ!

「余計なこと言わないでください地の文!? まあ素晴らしい服なのは事実ですが……」
『とはいえ……ねえ?』
『そうですね、ええ』
「何が言いたいんですか二人とも」
『……服装はともかく、上流階級のパ-ティに潜入するのですよ。立ち居振る舞いなどは大丈夫なのですか?』
「ふっ」

 アイは再びふぁさっと得意げに長い髪をかき上げる。

「大丈夫なわけないでしょう!」

『……もうお約束よねこのパターン』
「いや冗談ですよ。私だって世界中の人々と、常日頃コミュニケーションをとっているのです。ちょっとした挨拶対応くらい、ちょちょいのちょいですよ」

 などと胸を張り(でも小さい)、アイは自信満々にパーティ会場へと潜入したのだった。
 そここそはまさに絢爛豪華にして優雅、華麗にして奥ゆかしい上流貴族の集い! 
 だがアイに臆する様子など全くなし! その朱唇を開き、アイの第一声は!

「あー……部屋立て乙ですよろ」

 瞬時、アイの体に一万ボルトの電撃奔る!
「アバーッ!?」
『何が挨拶が得意ですか……そんなことだろうと思っていましたが、それはネトゲの挨拶ではありませんか』
「い、いつの間に通信機に電撃ツッコミ機能なんて取り入れたんですかオベイロン……だ、だって、世界中どこ行ったってこのノリで通じるんですよ!?」
『ここではNGに決まっています。仕方がありません。私の言うとおりに繰り返してください。──敬愛すべき紳士淑女の皆様方、この華麗にして素晴らしき場の雰囲気に誘われて舞い込みました無作法をどうぞご寛恕願えれば幸甚に存じます』
「ぐう」
『寝るな』

 アイに十万ボルトの電撃奔る!
「グワーッ!? いやそんな長くてわけわかんない文章覚えられるわけないでしょう!? オベイロンは私を何だと思っているんです! 私はアイ・リスパーですよ!!」
『……凄いわねこのド底辺から次元を超えて開き直った前衛芸術的な逆ギレ……』
『しかしこの上もなく説得力があるのが嫌ですね……。そう言われたら『確かに』としか言えませんから……。仕方がありません。パック』
『ええ、わかったわ』
「あれっ二人して何を以心伝心してるんです!?」

 ぽかんとしたアイを置いてきぼりに、オベイロンは滑らかに場の空気にあった口上を伝え、そしてそれを……正確にパックが繰り返しはじめたではないか。おお、これぞまさにチームプレイ! 例えアイがどんなにアイってもアイ以外の仲間がアイってなければ何とかして何とかなるのだ!

「くっ、『アイ』を形容詞にしないでください地の文! しかしまあ、これはこれで私は楽できますね……」
 と、アイは交流をオベイロンとパックに任せ、ごそごそとポケットをまさぐり始めた。

「じゃあその間、私はソシャゲの今日の分のログボとデイリーをこなして……」
『仕事しろ』
 百万ボルトの電撃奔る!!
「グワーッ!!??」

 ……ちなみにその後、黒焦げになったアイの体をパックが無理やり引きずっていき、破壊工作任務はかろうじて達成したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シトー・フニョミョール
なかなか面白そうなことをしてますねぇ、シトーも混ぜろよ。

シトーはいつものメイド服と行きたいところですが、今回は新しく仕立ててもらった桜色のワンピースで出ますぬ。胸元のレースといい破廉恥じゃない程度に露出された石の肌は明色の服とベストマッチ!髪には同色よりやや明るめのピンクなリポンをつけて、シトーのふわふわウェーブに仕立てた髪とコントラストが合うようにしましたぬ。ちなみに腕足はほんのり暗めのワインレッドにすることで単色にしないけど統一感のある仕上がり、まるであなた達蒸気人形のよう――石の身体も捨てがたいですが、ビスクドール状の蒸気人形も捨てがたいですねぇ。猟兵パワーで肉体転移とかできればいいのに



 蒸気人形たちはパニックに陥っていた。
 道中何事もなくこのまま進行することができるはずの作戦であった、ならばこそ蒸気人形たちは優雅に華麗にパーティなどを楽しんでいたのだ。
 だが、なんとしたことか。艦隊内の僚艦が、次々と謎の大爆発を起こしていくではないか! しかし外部からの攻撃は全く見当たらぬ!

「ということは内部からの破壊工作であるか! 諸君、見覚えのない者に注意したまえ! おそらくその者が潜入工作員たる敵に違いない!」
「そうなんぬ! 敵はすぐ隣にいるかもしれないんぬ!」
「うむ、助言ありがたい! ……『ぬ?』」
「ぬ」
「『ぬ』???」
「ぬっぬっぬ」

「「「「「誰であるかお前ー!??」」」」」

 会場を埋め尽くした蒸気人形たちの愕然たる叫びが響く。
 そう、そこにいたものこそは……!

「こんにちは。シトー・フニョミョール(二人で一つ?なクリスタリアンの従者・f04664)です。なかなか面白そうなことをしてますねぇ、シトーも混ぜろよ。シト混ぜ」

「何が面白いのかわからぬし何がシト混ぜなのかもわからぬ!?」
「えー、なんかこう、パーティー的なものでしょ? シトーもね、猟兵コレクションで素敵な服をあつらえたんですよ。どうですかこの見事な出来栄えは」
 ドヤっと胸を張るシトーに、蒸気人形たちは血相を変えて怒鳴りつける。……血ではなく蒸気で動いているのだから、血相ではなく蒸相とか表現するのだろうか。
「いや出来栄えとかいう以前に! おまえは誰なのだ! 見知らぬものが紛れ込んでいるのならそれは敵!」
「おやおやあ? なんですかあなた方は。こんな素敵なパーティーを開催しているくせに、パーティーの何たるかをご存じない様子。シンデレラとか知らないんですか」
「……なんて?」

「顔も知らない相手と知り合い、運命によって結ばれるのがあのお話ですぬ。そう、パーティーとは、知らない相手と知りあって交流を結ぶためのものですぬ。ということは、知らない相手がいても何の不思議もないのです。と言うよりむしろ、知らない相手がいてこそのパーティー! いや、知らない相手がいなければそれはパーティーではないともいえるんですぬ! ゆえに! シトーがここにいても全く問題はないのです!!」

 雑!? 雑な抗弁!?

「……なるほど論理的だ」

 納得しちゃったよ!? いくらネタシナリオと言えどもそれはあまりにも適当な展開!?
 いや、そうではなかった。
 これこそがシトーの使用したユーベルコード……『|マスター譲りのユーベルコード《トンデモナイチカラヲモッタユーベルコード》』の効果に他ならぬ!
 その効力とは、何かほかのUCを適当に選んで自動的に上手く使うというMS全ぶん投げ能力! そこでMSは『|UDC印の治療薬《ヒールゼリー》』を選択したのだ。

「なるほど、このUCは『状態異常を治療する』能力でしたねえ。つまり──『疑心暗鬼という状態異常』を強制的に治療して、何でも信じ込んじゃう状態にしたんですんぬー」

 うんうん、とシトーは納得したように頷く。つか、さっきもう思いっきり「猟兵コレクション」って言っちゃってるにも関わらず正体を怪しまれないとか、かなりチートな効果であるといえよう!
 ちなみにもちろんこれは本シナリオのみの効果であり、他シナリオにおいても同様の使い方ができるかどうかは保証の限りではないのでよろしくお願いいたしたい!

「では美しいレディ、改めてこの出会いに乾杯しようではありませんか。その素晴らしい衣装もよくお似合いです」
「いやあそれほどでもありますぬ。何といっても新しく仕立ててもらったお気になんですよ」

 くすくす、とシトーは微笑みながら、鮮やかに春めく桜色のドレスでくるりと可憐にターンしてみせる。
「この胸元の優雅なレースといい、破廉恥じゃない程度に露出された石の肌は明色の服とベストマッチって感じですよね! 加えて、髪には同色よりやや明るめのピンクなリポンをつけて、シトーのふわふわウェーブに仕立てた髪とコントラストが合うようにしましたぬ」
「……は、はあ」
「あとですね、腕足はほんのり暗めのワインレッドにすることで単色にしないけど統一感のある仕上がりと言うこの絶妙なバランスを見てほしいんですよ。まるであなた達蒸気人形のよう――石の身体も捨てがたいですが、ビスクドール状の蒸気人形も捨てがたいですねぇ。猟兵パワーで肉体転移とかできればいいのに……それからですね……」
「……あれっ、我々は今何を聞かされてるのだろう?」

 延々と続くシトーのファッション談議にさすがに顔が(硬質だけど)引き攣り始める蒸気人形たち。だが! この程度で聴衆が逃げるようなことをシトーが許すわけがあろうか!

「えいっもう一度状態異常強制治療! 『飽きた』という状態異常を回復! さあシトーのワンマンステ-ジはこれからですぬ!! ぬっぬっぬ!!!」

 このUC、割と外道じゃない?
 なお、延々と自慢し続け、蒸気人形全員がグロッキーになったところでシトーが悠々と破壊任務を遂行したのは言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィル・グラマン
●POW【ゲーマーズ】
https://tw6.jp/gallery/?id=179643
ザイーシャと一緒に去年の猟兵コレクションで参加だぜ

何か場違いな衣装だと思うけど、ホントに大丈夫か?
へぇ、なるほどな…てか、俺達出身の国のモンじゃねぇよなコレ
あんま無粋なツッコミすると拗ねちまうだろうし、黙っておいて話を合わせておくか

お、いいぜ
罰ゲームはそうだな…銀誓館学園の近くに喫茶店あるだろ
そこのパフェを奢るってのでどうだ?
まー、勝っても負けても食わされそうだし、ここはそれっぽく負けておいてやるかな

そんな感じにデートが終わったら、仕事に戻るか
『アローライン・スクリーム』でザイーシャが呼んだサメを強化するぜ


ザイーシャ・ヤコヴレフ
●POW【ゲーマーズ】
https://tw6.jp/gallery/?id=179652
去年の猟兵コレクションでウィルと参加するね

あら、ウィル知らないの?
改まった席で着用する礼服のドレスコードに『民族衣装』があるのよ

うふふ、何時もはお人形さんはウィルだけど、今回は私もお人形さんになったみたい♪
そうだわ
ねぇ、ウィル
バレそうになったらお雛様になりきってみない?
じっと我慢して…先に動いた方が負け
何時も下校の途中で寄るゲームセンター前にある喫茶店のパフェね
良いわよ、勝負しましょ

そんな事をして遊んだら、お仕事に取り掛かるね
機関室の中で『シャーク・トルネード』を召喚して、サメさん達にバリバリ破壊して貰うね



 高雅で奥ゆかしい衣擦れの音が静かに広がる。
 典雅で高貴な香りが周囲を秘めやかに染める。
 優雅で風流な音曲が柔らかく風に乗る。

「……いや待て、最後のはおかしくねえか? 俺たち普通にこの服装着てるだけなのに、なんで自動的にBGMまでかかるんだよ」
「あらウィルったら知らないの? これ系の服装をしているときには大体尺八と琴の音がどこからともなく厳かに流れてくるものなのよ。それが世界というものよ」

 ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)の抱いた当然の疑問に、平然とザイーシャ・ヤコヴレフ(|Кролик-убийца《殺人バニーのアリス》・f21663)が唇を開いた。
 そう、ウィルとザイーシャが身に纏う服装こそは──。
 禁裏の深奥に鎮座ましますやんごとなき御方の身に付けるがごとき尊き束帯衣装。
 そしてもう一方は、華麗でありつつも気品高き華やかな色彩を翻す見事な十二単。
 すなわち一対の雛人形を思わせる芸術的な逸品であったのだ。
 さらに衣装の美しさにとどまらず、ウィルの深く澄んだ紫紺の瞳は濃い装束の色と見事に調和し、ザイーシャの煌めく黄金の髪は匂い立つ花のような十二単の艶やかさをさらに引き立てている。
 実に素晴らしい服装であった。……時と場合を別にすれば。

「世界かー! 世界出て来ちゃったかー!」
「何なら自動的にどこかからカコーンっていうアレの音が聞こえてきたっておかしくないくらいのものよ。だって日本文化の粋を極めた正装なのですもの」
「『鹿威し』な。ってか俺もお前も日本人じゃねえけどな!」
「もう、ウィルったら|無粋《ニクラッシニィ》なのね。大和魂とは生まれや育ちではなく|魂《ドゥシャー》に宿るものなのよ」
「早速ロシア語出てんじゃねえか」

 なんやかんや言いつつ、しゃなりしゃなりと二人は会場の中に足を踏み入れた。そここそは、無数の蒸気人形たちがビクトリア~ンなパーティに興じる絢爛にして豪華なる社交場だ。

「しかしこの装束、いくら豪華でも、何か場違いな衣装だと思うけど、ホントに大丈夫か?」
「ふふん、民族衣装は改まった場での正式なドレスコードなのよ」
「うんだから俺もお前も日本人じゃ……もういいや……」

 疲れたように吐息をつくウィルに、手に持つ扇をぱたぱたとはためかせつつ、ザイーシャは可憐な貌をドヤっと輝かせる。

「わかればいいのよ。ましてや、今はこの衣装は歓迎されること間違いなしだわ。そう──大河ドラマ効果でね!」
「見てるかなあ!? こいつら大河ドラマ見てるかなあ!?」
「なんですって、この人形たちは大河ドラマも見ていないの!? やはり西洋人には和の精神はわからないのね。こうなれば物質偏重の歪んだ西洋文化に神秘の和の心を叩きつけてやりましょう! 掛かってきなさい! オリエンタルの力を見せてあげるわ!! ニンジャ! ゼン! カンフー!!」
「わー各方面に喧嘩売るやつー!? そもそもニンポやカンフー使うお雛様がいてたまるか!!」
「今は多様性の時代なのよ。ダイバーシティこそがこの行き詰った世界情勢を打開するための重要な概念であり……」
「多様性は何でも許される便利な呪文じゃねえ! つか無意味に騒ぎ起こすんじゃねえ、今回の任務はあくまでこの場をくぐり抜けて機関室を破壊する事なんだぜ!?」

 ……なんかもうウィルの普段の苦労が伺えて、読者諸氏もあふれる涙を抑えきれないことであろう。MSも同じである。
 とはいえ、ウィルの言葉に、ザイーシャははたと思い出したようにぽむと手を叩く。

「あー、そういえばそうだったわね……潜入任務なら仕方ないわ。それなら……いっそのこと、お人形さんになりきるのはどうかしら? ふふっ、先に動いて敵に気づかれた方が負けよ」
「……また変な遊びをこいつは……」
「じゃあ銀誓館近くの喫茶店のパフェね。負けた方が奢りよ。私クイーンサイズのメガ盛りパフェね、|ご馳走さま《スパスィーヴァ》」
「流れるように勝負始めて流れるように勝ってんじゃねえよ!?」

 ……そりゃまあ、ツッコミの方がどうしても動きが大きくなるのは自然の流れである。
 いい加減にしなさーい! とばかりに軽く裏拳を入れようとしたウィルの動きに束帯がばさりと翻り、周囲の蒸気人形たちの注目を引いてしまったのだ!

「皆様、不審者がいますわよ!?」
「むっ、何者だね君たちは!?」

 口々に呼び合う蒸気人形たちの叫びが会場に何重にも響く! たちまち集まってくる蒸気人形たち。危うしウィルとザイーシャ! このまま凄まじい激戦が始まってしまうのか!

「くっ、ザイーシャ、油断すんなよ!」
「あなたこそ、ウィル!」
 身構える二人に向かい、蒸気人形たちは……おお、なんと!!

「オウ、このファッションは、今年の大河ドラマではありませんか!」
「本当ですわ、これは大河ドラマですわあ!!」
「素晴らしいファンタスティックファッションですわ!!」

 一斉に湧き上がるような拍手と歓声を上げたのだった。

「……見てたんかいこいつら、大河ドラマ……!」
「あら、意外に話が分かるじゃない?」

 トンチキなオチにがっくりと肩を落としたウィルをよそに、蒸気人形たちの集団にアイドルのごとくもてはやされるザイーシャはすっかり上機嫌だ。

「……畜生、ネタシナリオだとわかっていたはずなのに……まあ、これはこれでザイーシャが敵の目を引き付けてくれてることになるか……。ザイーシャ、適当にサメ呼んどいてくれ。あとはやっとくから」
「よろしくねー、ふふっ、この完璧な結果、まさに私の計画通りだわ」
「アッハイ、ソウデスネー」
 頑張れウィル、君の戦いはいろんな意味でこれからも多分ずっと続く! 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
そんな私は今日、船上パーティーに潜入し破壊活動を行います!
超ワルですね!

(猟コレで披露した仕立て屋の恰好で潜入すると即座に呼び止められる)
いらっしゃいませ!
本日はどのような服をお求めでしょうか?
え?なぜ仕立て屋がここにいるのか?

パーティーといえばダンス!
そこで服が破れたら修繕が必要ですよね?
なので私はここにいます!

腕前についてはご安心ください!

でも言葉だけじゃわかりませんよね!

ご覧ください!
雄々しい尻尾がありながらも
お尻が出ることもなく収まっている機能美溢れるジーンズを!
下を向いても下半身が見えないほど大きい胸があっても
おへそが出ることなく収まるカッターシャツを!
ハサミやメジャーがたくさん入れられるポケットのついた無地のエプロンに刺繡された私の幼馴染の悪魔の仕立て屋が経営する店の名前を!

そしてメガネとポニーテールが合わさって
私の視線誘導パワーは1200万パワーです!



「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
「これはこれはご丁寧なご挨拶、いたみいります」
「いえいえ! 健全な魔王は健全な挨拶に宿るのですから!」
「……しかし、当パーティは魔王様をご招待しておりませんゆえ、失礼ながらお引き取りを」
「あれえ!?」

 ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は受付でいきなり断られるという予想外の展開に大きな目を白黒させた。
 これはいけない。ダーティの立てたかんぺきなけいかくでは、会場にこう……なんとかしてまんまと潜り込んで、そのあとはなんやかんやどうにかして上手く破壊活動を行うという、一部の隙もないプランであったというのに。

「すみません今のは間違いです! やり直します! TAKE2! 私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
「……どこも直ってなくないですか?」
「ううっ、だってこれ全部ほんとのことで、一文字も修正のしようがないんですよぉ!」
「……よくわかりませんが、だったらやっぱり入場は禁止です」

 くっ、とダーティは唇を噛む。このままでは任務は失敗だ。どうすればいいのか!
(う、嘘をつくしかないというのでしょうか! 魔王がダメと言うのでしたら……魔王以外の素性を名乗るしか……。魔王という私の最大の目的、人生の指標を、形だけでも一瞬捨ててしまうのはあまりにも苦痛ですが……しかし、身を切る覚悟あってこそ真の魔王たる器が試される時! ここは覚悟を決めましょう!)

「TAKE3!! わ、私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な仕立て屋ダーティとは私のことです!」

「……|死殺陣屋《したてや》?」
「なんですかそのカッコいい変換! 悪魔っぽくてちょっと憧れるじゃないですか! じゃなく仕立て屋さんです。パーティードレスやスーツのちょっとしたほころびや傷など、たちどころに修繕してご覧に入れますよ! ほら、見てくださいこの姿を!」

 ダーティは零れるほどに大きな胸をたゆんと揺らせながら、くるりとその場で回転してみせる。その姿こそは、ダーティが今年の猟兵コレクションであつらえた見事な新作ファッションだ!

「ご覧ください! 雄々しい尻尾がありながらも、お尻が出ることもなく収まっている機能美溢れるこのジーンズを! 下を向いても下半身が見えないほど大きい胸があっても、おへそが出ることなく収まるカッターシャツを! さらに、ハサミやメジャーがたくさん入れられるポケットのついた無地のエプロンに刺繡された私の幼馴染の悪魔の仕立て屋が経営する店の名前を! これぞ私が一流の仕立て屋さんである証ですよ!」
「おお、なるほど……シンプルなデザインでありつつも決して質を落としておらず、むしろ上質な生地をさりげなく使いこなすことにより、高度に洗練された品の良さを感じさせますな!」
「さすがお目が高い! よくおわかりではないですか! そしてそんな機能的かつ活動的なデザインをさらに底上げするこの魅惑的なポニーテールと、溢れる知性と技術力を裏付けするインテリジェンシーな眼鏡ファッションはどうです! まさに一流オブ一流の名に相応しい身だしなみ!」

 あいつこの衣装語る時早口になるの仕方ないよな。なぜならそれは確かにダーティが惚れこんでも無理はない素晴らしさだからだ!
 ああ、だがしかし!

「でもやっぱり入場はお断りします」
「ナンデ―!? あんなに心と心を通じ合ったではありませんか!?」

 受付係の非情なる宣告が凍てつく氷柱のようにダーティを貫く! ダーティの疑念に対し、受付係はおもむろに口を開いた。

「いや、自分で言ってるじゃないですか。『凶悪で極悪で劣悪で最悪』なお方を入れられるわけないでしょう」

 めっちゃ正論だった!! 言われてみればそりゃそうなのである!

「し、しまった!? ちょっと待ってくださいTAKE4お願いします!」
 ダーティの繊細な心は千々に乱れその懊悩は精神を苛む。

(じゃあ『凶悪で極悪で劣悪で最悪』の部分もカットしないといけないのでしょうか!? だってそこ、まさに私の中核じゃないですか!? そこまでカットしてしまったら私のアイデンティティが……!! しかし……しかしすべてを犠牲にしても前に進まなければいけない時が人生にはあるのかもしれません……くうっ!!!)
 ダーティは唇を戦慄かせ、白い額に玉の汗を浮かべ、血の気がなくなるほどにぎゅっと拳を握り締めた。その瞳に強い輝きが悲しみと共に宿る! これぞ悲哀を背負った戦士の深いまなざしだ!

「て、TAKE4……わ、私はァ……ッ! 善良で……温良で……優良で……最良な……仕立て屋さん……です!! うわぁぁぁぁん!!」

 おお、全猟兵が泣いた!(MS調べ)
 ダーティは任務のために自分の大切なものも犠牲にする覚悟と勇気を示したのである! なんという気高く健気な心意気であろうか! まさに真なる王に相応しい器だ!

「あー、そ、そうですか。なんかずいぶん遠回りした気がしますが、まあそういうことならどうぞお入りください……」

 それはそれとしてこれでダーティ通しちゃう受付係もアレじゃないかなって気もするが。
「いや受付入り口でずっとギャン泣きされる妙齢のご婦人とかこちらも困りますので……適当に控え室にでもおいでいただいておこうかなと」
 納得。

 とまあそんな感じで上手く控室に入り込んだダーティはそのまま船内に侵入し、半ばヤケになった八つ当たりパゥワァを縦横に振るって、無事に破壊工作を遂行したのだった。
 結論。女性の涙は強い。

「はっ、つまり今回の私は、いわゆる『女の武器』を上手く使えたということですね……これは紛れもない『ワルい女』ってやつですね!! やっぱり私はワルでした! ヨシ!!」
 
 まあ本人が満足してるようなのでいいのかな……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月07日


挿絵イラスト