獣人世界大戦④〜おいでませお嬢様
煌びやかな照明が辺りを照らし、品の良い静かな曲が耳朶を擽る。
瀟洒な装飾で彩られた、ヴィクトリア朝の洋館を思わせるその空間には、ビスクドールに似た形の蒸気人形がひしめいていた。
ある人形は曲を奏で、ある人形は料理を運ぶ、その中でも大多数の人形は、ホールを飾るようにダンスを踊っていた。クロックワーク・ヴィクトリア、その狂気艦隊において何度も見られた光景、この場所は、|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に沿って動いている――。
舞踏会の会場に到着した猟兵の元に、シックな装いの紳士を模した蒸気人形が、ダンスホールから降りてくる。恭しく頭を下げて、それはあなたに手を差し出した。
――どうか私と、一曲踊ってくださいませんか、お嬢様?
●ごきげんよう、さようなら
「クロックワーク・ヴィクトリアの新生「狂気艦隊」……諸君等には、手始めこちらを攻略してもらいたい」
そう言って八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が示したのは、サンクトペテルブルク沖を進む船の群れだった。これを迎え撃つとなると、最終的には真正面から海戦を挑むことになるが――それまでに敵の数を減らしておけるなら、それに越したことは無い。
ということで今回の任務はグリモアを用いた敵船への潜入、そして破壊工作である。
船の外郭付近の一室までは転移で行くことが出来るので、そこから敵船の機関室まで進み、破壊する、というのが一連の流れとなるだろう。
「しかしながら、この潜入工作も一筋縄でいかないのだよ」
機関室への道中には、どうしても通らないといけない一室が存在する。そこは「ヴィクトリア朝の洋館」のような巨大な部屋となっており、蒸気人形がひしめいている。敵と判定されず、そこを抜けるには、|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に従い、このダンスパーティを切り抜ける必要があるのだ。
「イギリス式のマナーに則り、完璧な振る舞いを行えば、蒸気人形は諸君等の邪魔をすることはないだろう」
その辺りは以前の狂気艦隊と同様。困難はあれど、攻略することは不可能ではないだろう。
ただ、とそこでくくりがひとつ付け足す。
「諸君に向かってもらう船の蒸気人形達は、判断基準が少し偏っているようでね――『淑女』以外認めてくれないとのことだ」
つまるところ、老若男女体形種族の一切を問わず『お嬢様』しか通してくれない。当然人形に過ぎない彼等は、元々男性であるとか普段そんなことしないとかその手の理屈は一切考慮しないだろう。
「まぁ、諸君等のお嬢様力ならば問題はない、そうだろう?」
それじゃあ、後は任せた。がんばってくれたまえ。そう締めくくって、くくりは傍らへと指を振る。
真っ黒な獣が顎を開くようにして、グリモアが現地へと道を繋いだ。
つじ
あなたのお嬢様力がみたいわ! 実力の程を見せてちょうだい!
ということで戦争です。がんばっていきましょう。
●プレイングボーナス
|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に従い、完璧な紳士淑女として振る舞う/迅速に破壊工作を行い、撤退する。
なお、このシナリオでは何故か淑女以外認められません。
また個々人の『普段の振る舞い』等の言い訳を蒸気人形は一切考慮してくれませんが、私はがんばりを高く評価します。
第1章 冒険
『紳士淑女の作法』
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POW : 気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。
SPD : 細かいミスをさりげなくごまかす。
WIZ : 一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エドワルダ・ウッドストック
SPD アドリブ連携歓迎
シャルウィダンス、と乞われたならば。応じるのが紳士淑女の作法ですわね。
「ええ、喜んで」
殺意や敵意は胸の内に秘めて、蒸気人形とのダンスに興じましょう。
ダンスパーティの振る舞いは、戦場の足さばきに通じるところがあります。
曲のリズム、相手の息遣い、それらに合わせてステップを踏むのは、そう難しいことではありませんわ。
穏やかに微笑み、満喫しているという表情を作って切り抜けましょう。
ダンスが終わっても油断せず、気品ある動きを損なわないように気を引き締めて機関室に向かいますわ。
殺意を発揮するのは、破壊工作が終わってからでも十分でしてよ。
ええ。機関部に鉛玉を撃ち込んで差し上げましたわ!
●
シャルウィダンス、と乞われたならば。応じるのが紳士淑女の作法というもの。
「ええ、喜んで」
柔らかく微笑んで、エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は蒸気人形の差し出す手を取った。ホールに居並ぶ楽師役の人形達が、それに合わせて曲調を変える。狂気艦隊に相応しいワルツの音色に乗せて、彼女もまた足を踏み出した。
ダンスパーティの振る舞いは、戦場の足さばきに通じるもの。間合いを測り、曲のリズム、相手の息遣い、それらに合わせてステップを踏む……長く戦場に身を置き、幾度もの戦闘を経験した彼女にしてみれば、さして難しいことではない。
もっとも、「オブリビオンの蒸気人形が相手であるという一点を除いて」、とそんな注釈は必要になるかもしれないが。
――この手を今すぐ振り解いてやりたい。何なら握り潰して砕いてやってもいい。
そんな敵意も、殺意も、今は胸の裡に秘めて。蒸気人形のリードに逆らわず、しかし引かれるだけにも終わらず、エドワルダは優雅に、そして穏やかな笑みを浮かべて見せた。
やがて音楽が一巡して、ダンスは終わる。恭しく礼をする紳士に、気品ある動きで応じて、エドワルダはダンスホールを後にした。
追ってくる蒸気人形はおらず、道を塞ぐ者も居ない。テストは無事通過できたと言ったところか。
ほどなく彼女は、機関室へと辿り着く。自動で動く仕組みになっているのか、そこにはオブリビオンも蒸気人形の姿もない。
「ええ――」
秘めてきた殺意を解き放つのと同時に、エドワルダは銃を抜いた。
瞬く間に上がる銃声、彼女が「やる」と決めたなら、それはもう終わっている。船の機関部、目の前に晒された敵の弱点に、放たれた殺意は喰らい付き、引き裂いた。
「――鉛玉を撃ち込んで差し上げましたわ!」
踵を返すエドワルダの後ろで、機関部が悲鳴を上げ始める。艦隊を成す船の一つは、しばしの後に機能を失い、沈んでいった。
成功
🔵🔵🔴
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
イブニングドレスもバッチリ着こなすのでっす!
藍ちゃんくん、王子様にしてお姫様でっすのでー!
プリンセス力を応用すればお嬢様力も相当なのでっすよー?
というわけでお淑やかに演技しちゃうのでっす!
差し出された手に喜んでとお返しし、手を重ねるのでっす。
お相手が紳士型であり、お嬢様を求めてるのでっすから、藍ちゃんくんは女性パートでっすよねー。
当然、踊れるのでっすよー?
礼儀作法も完璧でっすの!
藍ドルたるもの一挙一動洗練されてるのでっしてー。
見惚れていただけるかと!
せっかくですので破壊活動もダンスで。
機関室の機械を踊らせて滅茶苦茶にしちゃうのでっす!
これがお嬢様力なのでっすよー!
●
『一曲踊っていただけませんか、お嬢様?」
相手の性別やら事情やらを一切考慮せず、紳士然とした蒸気人形が手を差し出す。|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》に支配されている、そんな狂気艦隊の特性を知っていても、人によっては面食らうであろう申し出だが、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)に関してはその心配は無用だった。
「ええ、喜んで」
なのでっすよー、という口癖を呑み込めば、イブニングドレスを着こなした藍は紛うことなきお嬢様である。
王子様にしてお姫様でもある彼からしてみれば、その一側面を応用してやるだけの話。プリンセスとは要するに、お淑やかでパーフェクトなお嬢様なのだから。
差し出された人形の冷たい手に、その手を重ねて音楽に乗る。相手が紳士型である以上、当然藍は女性側のパートをやることになるのだが、踊り始めたその足取りは、淀みのないものだった。
ダンスに礼儀作法、それから演技、このダンスホールで求められる要素はいずれも藍にとっての得意分野である。何ら問題なく進行する様子に、蒸気人形は用意されている台詞の中から賛辞を選ぶ。
『お上手ですね。お嬢様はダンスに慣れておられるようだ』
「当然、これくらいは完璧でっすの!」
でっすの? 一瞬周囲のビスクドール型が目を光らせるが、藍は気にした様子もなく踊り続ける。藍ドルたる彼の洗練されたダンスはその眼を奪い、彼等を見事に黙らせていった。
音楽の一巡と共に蒸気人形達の拍手が響いて、ダンスホールに並んだビスクドール達が道を開ける。この場を辞して、まっすぐに道を進んでいった先には、目指す場所――この船の機関室の扉があった。
「せっかくですので、皆様ご一緒に!」
先程から引き続き、藍のダンスが機関室に存在する機械達を誘う。
優雅に、そして楽し気なダンスミュージックに合わせて、踊り出す機械が機関室を滅茶苦茶にしていった。
成功
🔵🔵🔴
キアナ・ファム
■POW
これでも、騎士の一族の端くれ
それなりの社交知識は学んではいるが……いけるか?あたい!?
学ぶのは大事だが、どうしても付け焼き刃はバレる
先ずは衣装、だな
衣装は、一番着慣れたこれを用意だ
(ステシのとおり)
[誘惑]を使って何とかアラを隠し、[威圧]も上手く使いつつ正々堂々振る舞おう!
(前にボロを出した[ダンス]も学んでおいてよかったぜ)
「私は、キアナ・ファムです。お見知りおきを」
(と、カーテシー)
時々元の口調を出しそうになるのを、何とか頑張って押さえつつ、
ダンスの誘いも目立ちすぎぬ程度に受け、パーティー会場を切り抜ける
首尾よく抜けられたら【UC】を発動
[重量攻撃、バーサーク]のせで踏み潰します
●
「私は、キアナ・ファムです。お見知りおきを」
紳士役の蒸気人形と対面し、カーテシー。ドレスのフリルが綻ぶ花弁のように広がった。
騎士の一族を出自とするキアナ・ファム(世界を駆ける(自称)妖精騎士・f38897)は、この手のマナーを一通り学んでいる。しかし知識として頭に入っていることと、その身に染み込み使いこなせるかどうかは話が別だ。これに関しては『付け焼き刃』というほかないと、彼女自身が自覚している。
だがそれでも、バレる前にダンスの終わりを迎えることが出来れば――。
(「……いけるか? あたい!?」)
内心を顔に出さないようにしつつ、差し出された紳士人形の手を取る。楽師役のビスクドール達が奏でる曲と、パートナーの足運びに合わせて、キアナもステップを踏み出した。
以前踊ることになった時は妖精の力を借りたけれど、その時の反省を生かして学び直したダンスは、どうやらこの人形達相手にも通用しているようだ。|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》でこちらを見定めようとしている蒸気人形達の視線が、少しばかり緩んだ……と、そんな気がしたところで。
『今宵のダンスは楽しいですね、お嬢様』
「ああ、そうだ――いえ、そうですわね」
紳士人形が問い掛けを始める。どうやら、ダンスの足運びと仕草だけでは通してくれないらしい。
『何か、特にお好きなダンスがありますか?』
そんなこと言われても、パーティーに出入りする機会は多々あったが、自分が踊るようなことはほとんどなかったわけで。
「わ、ワルツですわね。優雅な音楽に心が踊りますわ」
少し考えた後、キアナは目立たぬよう無難な方向に舵を切った。口調を堪えるので少々ぎこちなくなってしまったが、問題となる程でもなかったのか、人形は会話を続ける。
『では、ポルカの次はワルツでも――』
まあ、咎められないのならばそれで十分、キアナが丁寧にそれを辞すると、人形達は身を引いて、彼女のために道を開けた。
ダンスホールから降りて、この部屋の先へ。当初の目的通り、邪魔立てされることなく機関室まで辿り着いたキアナは、羽根模様をあしらったブーツを振り上げる。
『Stomp To My Beat!!』、叩き下ろされた靴底が、機関室の機材をまとめて踏み潰していった。
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
お嬢さま…だと?
出来るか?この、アタシに…!
ええいヤッてやる!
先ずは雰囲気に合うような…ドレス、かな
動きにくい!トリハダ止まんないケド
フリルに対する拒否反応で挫けそうになる心を鼓舞しねじ伏せ
何とか背筋を伸ばして微笑む
…微笑んでるハズ!!
ご、ゴキゲンヨウ
素敵な宴ですコト
招待客然として振舞う
食事を勧められれば応じるよ
確かフォークとナイフは持ち換え不可だったよな
ダンスだって分からないなりに野生の勘を働かせて躍る
良いトコの晩餐会の臨時給仕バイトをやった事があるからね!
でも自分がやるとはね!
程よい所で
ワタクシ、疲れてしまったようです
と断って部屋を通り抜けよう
機関室に入ったら全力で鵲をぶち込む!
疲れた…!
●
「ご、ゴキゲンヨウ、素敵な宴ですコト」
ほほほ、とぎこちない笑みを浮かべて、九之矢・透(赤鼠・f02203)がダンスホールへと進み出た。
普段全く着ないフリルが拒否反応を誘い、帽子の無い頭が落ち着きを失わせる。鳥肌と引き攣る表情を何とか抑えながら、彼女はどうにか背筋を伸ばして。
『踊っていただけませんか、お嬢様?』
「は、ハイ……!」
紳士人形の申し出に応じ、ダンスの相手を務める。
当然この辺りも未経験だが、この手の晩餐会で給仕のバイトをした時の記憶が頼りだ。引っ張り出したそれと、後はその場に順応する野生の勘を駆使し、彼女はこの試練を切り抜けにかかる。
まさかこんな日が来るとは思わなかったが、意外と何とか――しかしそこで、紳士人形が用意された問いを投げた。
『お嬢様、最近はどのようなことにお時間を割かれていますか?』
「へ?」
思わず漏れた言葉を誤魔化すように咳払い、何とか足運びを頑張りながら、視線を彷徨わせる。
え、お嬢様って普段なにしてんの? 考えれば考えるほど宇宙の果てを見るような目になっていくが、頑張ればそこから答えを……いややっぱ無理か? そう諦めかけたところで、ドレスの裾に隠れた彼等が、存在を主張するように身を蠢かせた。
「り、リス、ハム……いや小鳥? 小鳥を愛でてオリマシテヨ?」
愛らしいですわよねオホホ、みたいな取り繕いはどうにか功を奏したようで、多分ギリギリセーフの判定が降りる。ビスクドール達の視線が緩くなったのを確認して、彼女は程良いところでダンスを切り上げた。
「ワタクシ、疲れてしまったようです」
紳士人形にお礼を言って、中座する。定められたルールの上、認められた透を止める者はいないようで。
「ご、ゴメンアソバセ……!」
どこまで彼等の目が届いているのか分からぬゆえ、上品なお嬢様仕草で進んでいくと、目指す部屋が見えてきた。
扉を開けばそれは明らか、この船の機関室だ。愛でている小鳥、ではなく魔法の鳥を呼び出して、機関部に叩き込む。すると悲鳴のような破砕音と共にそれが停止して、『不具合』は船全体へと波及し始めた。
おそらくはこれで、艦隊の一部であるこの船は停止するはず。
「疲れた……」
ようやく任務を果たしたのだと実感して、透は過去一番に盛大な溜息を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵