3

獣人世界大戦②〜危険なハニー・トラップ

作者：椿油

●アルプス国家要塞
　スイスを中心とするアルプス山間部の地下に、異常なほど巨大な「迷宮要塞」が存在することが予知された。恐らくゾルダートグラード軍の何らかの「巨大戦力」の為に存在すると思われるが、詳細は不明である。しかも中身は罠だらけで、異常なほどに広大な機械迷宮となっている。「侵入者を必ず危険な罠の中へ誘導して殺す」設計として作られたようだが――。

『グルァァァ!!　暇だ暇だァァァァ!!!　誰か蜂蜜持って来い!!　｜罠じゃない《・・・・・》やつ!!』
　駐留している将、ベアゾルダートが飢えていた。罠じゃないとはどういう事か、それはこの駐留場所に至るまでの道を見れば明らかであった。

　なんと、蜂蜜・蜂蜜・蜂蜜の壁も床も飛び出す棘もきりもみ回転してくる棍棒も、回転扉でさえも蜂蜜ベッタリである！　しかも触れれば手が溶ける酸性の蜂蜜か、もしくは底なしで永遠に沈んでいく底なし蜂蜜のどちらかなのである。なお、沈んでいった先は不明だ。その先で溶けてしまっているのかもしれない。

『あーこれだよこれ!!』
　そんな中、普通の蜂蜜を食べているベアゾルダートであった。

●グリモアベース
「皆様、獣人戦線で戦争が始まりました」
　グリモア猟兵のスリー・サクセス（猟兵サポート型AIプログラム・f34842）がバーチャルビジョンに蜂蜜トラップを映し出す。
「恐らく片方の蜂蜜は、硫酸の蜂蜜と思われます。飛行や浮遊などをして対処する事をお勧めしますが、道中では棘や棍棒なども飛び出してきますので、それに触れても溶けますのでご注意下さい。底なし壁や底なし回転扉という箇所もありますが……原理は不明です。ぶつからない方が良いかもしれませんね。それを越えたら、駐留中の将ベアゾルダートとの対決です。頑張って下さいませ」

　そう言ってグリモアでの転移を開始する、サクセスであった。

第1章 ボス戦 『ベアゾルダート』

POW   :    ベアゾルダートキャノン 自身の【肩の砲台】から極大威力の【ベアゾルダートキャノン】を放つ。使用後は【虚脱】状態となり、一定時間行動できない。 SPD   :    獣性解放モード 【獣の本能】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    ゾルダートガトリング 【両腕】を向けた対象に、【前腕装着型機関砲とフィンガーミサイル】でダメージを与える。命中率が高い。 イラスト：はるまき 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「罠のある迷路？　硫酸の蜂蜜？　ふっ、そんなの、全部避けて、飛んでいっちゃえば関係ないでしょ。いくよ、｜P-38 ライトニング《相棒》」
　戦闘機【P-38 ライトニング】に乗り込み、UC《双胴の悪魔》を発動して発進する香織。
「最高速度でぶっちぎるよ」

　その操縦テクニックできりもみ回転してくる棍棒や棘も華麗に避けていく。
「ま、そもそもぶつからないけどね。こういうの、UDCアースのフライトゲームで見たよ。トンネルミッションって言うんだろ？　私と相棒にかかれば、現実でも容易に可能だってこと見せてあげるよ」
　幾度も続く曲がり角を素早くカーブしていき、香織は最短でベアゾルダートの居る所へと辿り着いた。

『なっ、あの蜂蜜をどうやって――飛んだのかっ!!』
　視界に捉えたベアゾルダートへと、機関砲・機関銃・ロケットランチャー・爆弾を一斉に発射していく香織。

『ぐおぉぉぉぉっ!!』
　ベアゾルダートの超高速連続攻撃も、高速で通り抜ける事によって回避し、背面から再び一斉に攻撃を放っていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……いや、匂いでわかるのでは？」
　夜野は一瞬訝しんだ。
「と思ったが……蜂蜜の香りが強すぎてわからんな」
　そう、どこもかしこも蜂蜜だらけなのである。

　UC《還元式混沌創造》を発動し、硫酸耐性のあるキメラを呼び出してボート代わりにし、硫酸の蜂蜜床を越えていく夜野。槍や棘や棍棒が刺さろうと、乗っている夜野が無事ならば下で泳いでいる死体のキメラは関係ないのだ。

「次は底なしゾーンか」
　最初の死体1体にサヨナラを告げて、次の死体のキメラに乗っていく。これを繰り返す夜野。一体何体の死体が底へと沈んだのだろうか。

『な、お前は飛行機に乗ってないのにどうやって！』
　ベアゾルダートが飛行機に蹂躙された後に来た夜野を見て驚く。まあ一応乗り物には乗っていたのだが。
「ったく、ようやくかよ。最後の晩餐はそれでいいな？」
『あがぁぁぁっ!!』

　理性を捨てたベアゾルダートを前に、更に肉盾の死体達を召喚する夜野。死体の影からマスケット銃【Nagel】からダムダム弾を発射していく。腐臭と蜂蜜の匂いと死体の肉片と、現場は混沌に包まれた。
『ぐるうぅぅぅ!!』
　ダムダム弾を浴びたベアゾルダートは、傷口を摩ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「まぁ、蜂蜜!?」
　ナターリヤは喜んでいた。
「私とミーシャの大好物で、最近手に入らなくて困っていましたの。最近はお菓子作りの材料にも使っていますから、多くあっても困りません……と思ったのですが、迷宮にありますのは硫酸の蜂蜜なのですね」
　一喜一憂するナターリヤ。

「ですが！　この迷宮要塞の奥にちゃんとした蜂蜜があるのでしたら、もう行くしかありません！」
　そう、ベアゾルダートが抱えている蜂蜜である。

　UC《冬将軍の襲来》を発動し、戦場全体を猛烈な吹雪と凍てつく寒さに覆う。いくら硫酸とは言え、凍結はするし罠も止まった。これで後は上を余裕を持って通るだけである。

「さぁ、溜め込んだ蜂蜜を残らず頂戴に来ました……って、あらまあ」
　蜂蜜が入った壺を持ったままベアゾルダートも凍っていた。『ちゃんとした蜂蜜』もカチコチである。

「ですが、それはそれでこれはこれ。お覚悟！」
　クマサイズの武器を放ち、氷にヒビを入れるようにダメージを与えていくナターリヤ。凍った蜂蜜もこの後ちゃんと頂くのだろうか、壺にはなるべくダメージは与えていないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「なるほど。触れると溶ける蜂蜜と底なしの蜂蜜ですか。歩いていくのは得策ではありませんね。飛びましょう」

　エミリィはUC《轢き殺すサメイドの術》を発動し、サメが竜巻を纏いその上に乗っかって進んでいく。罠も全て粉砕していった。むしろ、通路も粉砕出来る勢いである。

『クマーー!?　つ、通路を粉砕しやがった!?』
　そして実際にエミリィはやって見せた。そして、一瞬にしてベアゾルダートを轢いた。

　早すぎるのでもう一度スーパースローで再生しよう。だがスーパースローでも捉えられない速度。この時のエミリィは最高時速15000km――約マッハ12の速度は東京大阪間を2分弱で走破する(エミリィ談)。ベアゾルダートがお前が壊したのかと言う前に、あっという間に粉砕されたのである。

「サメで轢けばだいたいの敵は死にます。覚えておいてください」

　と、今日のエミリィ豆知識を第四の壁に向かって話しかけながら、要塞をマッハ12――いやそんなに出していないかもしれないが、後にするエミリィとサメ竜巻であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月02日