兆しは門の前にて、と。
武富・昇永
下記の内容でノベルの作成をお願いします!
武富が従五位下を賜る前の話
猟兵としての力を鍛え上げることに夢中になっていたところに
平安結界を維持するためには優雅に過ごすことが必要と知り
優雅な暮らし方を全く想像できなくて困った武富は
家人や交流のある貴族などに尋ねまくり、その結果
美しい景色を見たり和歌を詠んで風流を愛でることで優雅さが身についていくと教わったので
早速実践してみたが
どれもこれも退屈で心に全く響かず困り果てたところに
とある貴族の屋敷に招かれ
激しい滝を昇る鯉の掛け軸を見せてくれた瞬間に心を奪われ
この図こそ自分の人生そのものだ!
と感動していたら
自分の背後に掛け軸と同じ
鯉の滝登りの紋章(グリード・サイン)が浮かび上がり
この鯉のように激しく求めることこそが自分にとっての優雅な暮らしである!
と確信した武富は
鯉の掛け軸を手にとって意気揚々と自分の屋敷へと帰っていった
(掛け軸の代金は後日支払った)
●昇ること
力を鍛えることは喜びに満ちている。
昨日できなかったことが、今日できるようになれば、心が弾むようであった。
一足飛びではないが、一つ一つ階段を上がっていくような喜びがあることを武富・昇永(回遊魚・f42970)は日々の中で感じていた。
この力は世界に選ばれたことを示す。
世界の悲鳴に応え、世界を救う。
それが猟兵というものだ。
「しかし、それだけでは駄目なのだ」
そう、此処はアヤカシエンパイア。
平安結界に守られた滅びと隔絶されし世界。
全ては、平安結界によって守られている。
道行く人々も、何気ない日常の起こりも。夜、床につき明日が来ることも。
全て、だ。
故に平安貴族は平安結界を維持する為に邁進せねばならない。
しかして、その方法というものが昇永にはピンと来なかった。
「優雅な暮らし、とは?」
「簡単なことである。美しき景色を見て、心のままに歌を詠み上げること。そして、道端に咲く花の一つ一つを愛でればよいのだ」
己が尋ねた事に対して、至極当然のように平安貴族の一人は応えた。
あんまりにも当然のように応えるものだがら、昇永は面食らってしまった。
「今はわからずとも、そのうちわかるようになる」
「……」
なんと言っていいかわからず難しい顔をしていると、その貴族は屋敷に招いてくれた。
悩める若人に道を示すのもまた貴族の務めであるとかなんとか。それもわからない。
「俺にはどれもピンとこない。どうしたって、その優雅というものがわからない。端的に言えば」
「退屈か」
「ああ、うん、いえ……そう、です」
なるほど、と昇永の言葉に貴族は頷く。
気を悪くした様子はない。
此方をまだ子どもと見ているのだろう。
若輩者、とすら見られていないことに憤る気持ちもあったが、しかし、次に見せられた掛け軸に彼は胸が一度に跳ね上がったような気分であった。
「これは」
激しい滝を登る鯉。
それはいっぺんに己の心を掴むものであった。
この図こそが己の人生であると理解した。
登って、昇って、上って。
そうすることでしか己を証明できないのだと。故に、己の背後に力の印たる掛け軸と同じ紋章が浮かび上がる。
それこそが己の心が底より求めるもの。
これこそが己が優雅。
「これが、俺の……!」
貴族は頷く。
「龍成るかはわからずとも、門にはたどり着いた模様」
その言葉はもう届いていない。
心が駆け上がれと叫んでいた――。
成功
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