春日和、背中押されて、急かされて
●春の粧
猟兵コレクション、というものがある。
いくつかの部門に分かれて、猟兵たちの装いを新たにするイベントである。
それはお披露目服であったり、仕事着であったり、または普段着であったり。多種多様な猟兵がいる中であれば、それは一層華やぐものであったことだろう。
とは言え、普段着は常日頃から着慣れたもの。
猟兵は戦いに赴くものであるが、しかし、普段の生活を忘れては本末転倒というものである。
なにせ、世界を護るということは日常をこそ尊ぶものであったからだ。
「ぷきゅ~」
ごきげんな声が聞こえて、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は優しげに微笑む。
内在する4つの魂を柱として束ねた存在である彼らは、その表出する魂によって気質を還る。
此度、春風そよぐ道を往くのは『疾き者』である。
伴するのは『陰海月』である。いや、伴されている、というのが正しいのかも知れない。
ぷかぷか浮かぶ『陰海月』はごきげんそのもので、桜が舞い散る中を浮かんでいるし、共に歩く『霹靂』も楽しそうである。
「ぷきゅ~」
「クエッ」
早く~というような鳴き声に『疾き者』は一層笑みを深くする。
彼らが楽しそうにしているのを見るのが楽しいのだ。
そして何よりごきげんなのが、今回の装いを仕立てるにあたって、最も喜ばしかったこと……即ち、羽織を止める装身具の一部にクラゲの根付が使われていることである。
歩く度に揺れる姿は『陰海月』にもにていて、一層頬がほころぶ。
そう、『疾き者』たちはクラゲに関する品々を集めに集めている。
もはや趣味と言っても良い。
今回の装身具だってそうだ。これに合わせるための着物を選んでいたりしたら、いつの間にか会計が終わっていた。
恐るべきことである。
アパレル店員がやり手だったのかと思ったが、なんのことはない、己たちがそうした品々に目がなかった、と言うだけの話だ。
「ぷきゅ!」
「クエクエッ!!」
『陰海月』と『霹靂』が大騒ぎである。
ゆっくり歩いていたからか、飛んできて背中をぐいぐい押すのだ。
「これは困った……ふふ」
だが、ごきげんなのは彼らだけではない。
『疾き者』だって同じなのだ。
彼らと共に出かける春の日和。
風が心地よく、歩む速度は遅けれど、しかして穏やかな日々を感じさせてくれる。
戦いに疲れた、とは言わない。
けれど、こんな日のために戦っているのだと実感できるのであった――。
成功
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