セクレト機関の廊下。
今後のことについて語りながら司令官室へと戻るヴォルフとエルドレットの2人。
彼らはリベリオン・エネミーへの処遇をどうするか、司令官システムにいるナターシャとスヴェンへはどうするかなどを語っている。
が、その話題は唐突に止められ、2人の足も止まった。
「おっと。ドレット、客みたいだぜ?」
「ん?」
ヴォルフの視線の先にいるのは2匹の猫。黒と茶トラの2匹――ナルニア・ネーネリアのコンビ猫が2人の行く手を塞ぐように寝転がっていた。
猫2匹は猫なので、猟兵のお仕事とか関係ない。ただ、てくてく歩いていたら知らないところに入っただけで、でも知らないところだからと言ってもここは猫の場所なので関係ない。
「おーおー、迷子か? ここちょっと危ないからどいてくれねェかなァ?」
手始めにヴォルフが先に2匹の猫に話しかける。
ヴォルフの家系はコントラ・ソール《|精霊猫《ガイストカッツェ》》を持つ、猫に縁のある家系。故にまずは少し遠くから離れて手を差し伸べ、敵ではないことを示す。
なんか真っ黒のおっちゃんが現れたな。ぐらいの感覚でいたナルニアはてくてくとヴォルフに近づいて、すんすんとその手の匂いを嗅ぐ。なんか美味そうな匂いがしたのでペロペロ舐めてみたりもした。
にゃおんと鳴いて、ネーネリアも呼んでみる。彼はヴォルフの服が真っ黒だなあ、ぐらいにしか思ってなかったので、ちょっとスリスリすり寄って真っ黒の服を猫の毛だらけにしてやった。
素早く、2匹の猫を少し遠ざけて休憩所に連れて行くヴォルフ。
休憩所で休んでいた研究員たちも『猫だー!』と嬉しそうにしていた。
「さすがは《|精霊猫《ガイストカッツェ》》の家系。猫はお手の物ってかぁ?」
「まァな。だがこの子達、どっから来たんだろうな?」
「さあ? まあここは|侵略者《インベーダー》みたいな敵性生物でもない限りは受け入れてるし、居着いても全然構わんよ」
「そういうとこはお前さんの気質もあって、おおらかなんだよなァ」
からからと笑いながら、この2匹の猫をどうしようかと悩むヴォルフ。
餌を上げて居着かれても問題はないのだが、あんまり走り回られても迷子になった時が困るよなぁ、と。
対してナルニアとネーネリアの2匹の猫は自由奔放。
ここが何処とか、なんかいっぱい人がいるぐらいの感覚で、いつもの自由度合いは変わらない。
美味しいご飯が食べれるならそこに行くし、楽しいおもちゃがあるならそこに飛びつくし、というか今目の前で喋ってる三つ編みの男の人の髪の毛がゆらゆら揺れてて楽しそう。
てしっと前足でエルドレットの三つ編みを叩いて遊ぶナルニア。猫は揺れ動くものに目がないので、叩けば叩くほどエルドレットの三つ編みが楽しい。
「ドレット、ちょいしばらくはそうしといて。購買部で餌と追加の玩具飼ってくる」
「ちょっとぉー!? 俺の髪の毛は玩具じゃないんですけどー!?」
そう言ってエルドレットを生贄に休憩室から離れようとしたヴォルフ。
だが、彼の黒いコートもまあまあ長くてひらひらしているので、当然ながら猫の恰好の的。
ネーネリアがぴょんっと飛びついて、ヴォルフのコートにがっしり爪を立てて張り付くのだ。
「うおっ!? ちょっ、マジか!?」
「だっはっは! ざまーみろ! 俺を置いていこうとするからだ!」
「うるせー! くそっ、ヴィオに連絡入れるしかねェな!!」
こうして大の大人が2人、猫に翻弄されてしばらく仕事が滞る。
後ほどヴィオットが駆けつけたが、2匹の猫に骨抜きにされてやっぱり仕事が滞る。
猫は仕事なんて知らないので、遊んでもらうだけなのです。
成功
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