広い原野に20人から30人ほどの野武士が駆け回っている。彼らは『坂東武者』と呼ばれる戦闘集団だ。このアヤカシエンパイアにおいて、陰陽師たちと並んで妖と戦う能力を持ち合わせている彼らは、現在苦戦を強いられていた。
坂東武者の一人から『父上』と呼ばれた男――人間にはありえぬ黒曜石の角を頭から生やした、老境の人物は思案に暮れていた。引くべきか、留まるべきか。そこに一つの噂が蘇った。どこからともなく現れた『六番目の猟兵』なる凄腕の戦闘集団が、日夜妖と戦っていると。
グリモアベースに出現した黒板に教卓、とくれば句坂・野乃(主婦兼アマチュア作家・f41457)である。「またお前か」と言いたげな猟兵に「それはこちらも同じだ」と言いたげな顔をしてから、黒板に『坂東武者』と書きだした。
「はい注目。アヤカシエンパイアでかつて起きた戦争『禍津妖大戦』。これにより東国……こちらでいうところの関東から東北にかけては強力な妖が発生しやすくなっています。これは過去の激戦の記憶によるものだとされていますが、正確なところは分かっていません。
「北関東の山奥に『仁田』という羅刹の一族がいるのですが、彼らは坂東武者として人間に協力しています。どうもここの頭領が神隠しでサムライエンパイアから渡ってきたそうですが、その辺はまぁ当人から聞いてください。
「現地では仁田一族の皆さんが『叢雲鬼』なる妖と戦っているので、加勢してください。この妖は怨念の集合体で物理攻撃が効きづらいです。なので何かしらの対策が必要です。除霊とかできるといいですね。
で、こいつらを倒したら、近くの荒れ果てた屋敷を探索します。敵のボスはここにいるのですが、先ほども言ったように、声で惑わしてきます。例えば助けを求める声だったり、仲間の声だったり、はたまた死者の声だったり、そこは聞く人によって千差万別です。
そして、声を突破した先に敵のボスがいます。多分声の正体がこれだと思うのですが、こればかりはどうにも予知に引っかからなかったようで、こちらでも詳しい事は不明です。」
武炎鉄
こんにちわ、武炎鉄です。44作目は初のアヤカシエンパイアです。
●『|仁田・義富《にった・よしとみ》』(羅刹の坂東武者×剣豪)
見た目は70代前半の男性です。一人称は『儂』、二人称は「貴殿」or「お前」。サムライエンパイア出身の侍大将です。一族を率い、所領を守る為に戦っています。
なお、仁田一族は全員ユーベルコード『サムライ妖武装変』が使用可能です。
●第1章では『叢雲鬼』の群れと戦います。物理攻撃が効かない相手なので、それ相応の対策をお願いします。
●第2章では荒れ果てた屋敷の中を探索します。何かしらの声が聞こえてきますが、プレイングで内容の指定が可能です。
●第3章はボス戦です。詳細は断章にて。
●途中参加歓迎です。その場合「実は第1章からいた」という扱いになります。
●プレイングボーナス:仁田一族と連携して戦う(第1章・第3章)
第1章 集団戦
『叢雲鬼』
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POW : 叢雲包み
対象の【全身】を【実体なき雲の如き肉体で包み込ん】で締め上げる。解除されるまで互いに行動不能&対象に【死霊】属性の継続ダメージ。
SPD : 叢雲無限刃
【肉体を構成する怨念を遺した者達の死因】に密着した「己が武器とみなしたもの」全てを【怨念】で操作し、同時一斉攻撃及び防御に利用できる。
WIZ : 無尽怨霊波
体内から常に【叢雲の如き無数の怨念】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【恐怖】もしくは【自殺願望】の感情を与える。
イラスト:炭水化物
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●猟兵、彼方より来る
さて、坂東武者たちは攻撃の通じぬ怨霊相手にじわじわと追い詰められていた。
「我らの命運もここまでか……。」
「兄者、まだ諦めてはなりませぬ!」
「ここで我らが諦めたら、誰が村を守るのですか!」
諦めの悪い弟妹たちに叱責され、バツが悪そうな顔を浮かべた青年が改めて太刀を構えたその時だった。遠方に複数の人影が現れたのだ。その人影はこちらへと向かってくるようだ。これはもしや、敵の増援か?それにしては敵意を感じない。
「もしや、あれが噂の『六番目の猟兵』とやらか……!」
自分たちの命運はまだ尽きていないようだ。確信した青年は弟妹たちと共に、再び戦場へと駆けだした。さあ、反撃の時間だ。
鐘射寺・大殺
アヤカシエンパイア遠征も何度目になるかのう。
やはり我輩は都の貴族どもより、東国の荒武者達の方が気が合いそうだのう。
行くぞ、者共!仁田一族とやらに加勢し、アヤカシを討つのだ!
【炎の魔王軍】を召喚し、《悪のカリスマ》《王者のカリスマ》
《大軍指揮》で軍団を統率する。
「相手は通常武器が効かんのか? ならば!」
宮廷魔術師団よ、まずは味方に《武器に魔法を纏う》強化を施すがいい。
騎馬隊は強化魔法を受けたのち、《騎乗突撃》を敢行!
敵陣に風穴を開けてやれ!
続いて悪魔戦士団!精鋭らは我輩と共に《切り込み》をかけるぞ!
残りは仁田一族のフォローに向かえ!
魔術師は後方から《エネルギー弾》を撃ち、我輩らを援護せよ!
●救い、地獄より来る
邪気と瘴気が薄く広がる、荒涼とした原野に一つの影が降り立った。
「アヤカシエンパイア遠征も何度目になるかのう。」
鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は配下のモンスターを召喚すると、周囲の様子を探らせた。
「大殺様、交戦中の坂東武者と妖の姿を確認しました。グリモア猟兵の予知通り攻撃が通じず苦戦している模様です。」
報告を受けた大殺はふむ、と一声呟いた。
「やはり我輩は都の貴族どもより、東国の荒武者達の方が気が合いそうだのう。」
実は大殺、別のグリモア猟兵の依頼で妖に洗脳された坂東武者たちと戦ったことがある。その時に彼らの強さをその身をもって経験したが故の評価である。
大殺の足元で炎が魔方陣を描く。そして炎は無数のモンスター――未来の魔王に最も忠実な軍勢『炎の魔王軍』へと変容する。
「行くぞ、者共!仁田一族とやらに加勢し、アヤカシを討つのだ!」
主の気勢に、一糸乱れぬ『応』の声が上がった。
先行して交戦に入った騎兵から報告が入る。
「報告します!敵にはこちらの攻撃が効かない模様!」
グリモア猟兵は『物理攻撃が効かない』と言っていた。大殺はそれを失念していたのだった。
「相手は通常武器が効かんのか? ならば!」
宮廷魔術師団に武器への魔力付与を命じ、騎兵と歩兵には再度陣形を整えるよう指示を出す。そこに一切の迷いはない。
「仕切り直しだ!行くぞ!」
炎を宿した武器を手に、魔王軍は再度突撃を仕掛けるのだった。
「何だあれは……。」
妖と交戦中の坂東武者たちは、炎と軍勢がこちらへ迫ってくるのを見た。敵か味方か。その答えは、炎を纏いし異形の騎馬兵たちが騎乗突撃で妖を蹴散らしていく様だった。
「我々の味方、なのでしょうか?」
女武者が自信無さげに呟いた。と、軍勢の中から大声が上がった。
「聞け妖ども、我が名は鐘射寺・大殺!仁田一族の援護に参った!」
「やっぱり援軍じゃないか!」
苦戦を強いられていた坂東武者たちも思わず歓喜の声を上げる。そこに炎を纏った『魔剣・オメガ』を手にした大殺が歩兵を率い、妖どもを片っ端から斬り捨てていく。
「皆様、お怪我はありませんか?」
異形の兵士が坂東武者たちに話しかけてきた。外見的には妖とさして変わらない気もするが、こちらの援軍という事がハッキリしている分、恐れはない。
「多少手負いではあるが、完全に動けぬというほどではない。」
「そうですか、ではこの場は我らに任せていただき、皆様は一度本陣に戻って態勢を立て直してください。」
「ならばこの場は貴殿らにお任せしよう。我らは一度本陣に戻るぞ!」
「坂東武者の皆様は本陣へと戻られました。」
兵士より報告を受けた大殺は大きく頷くと、『魔剣・オメガ』を天に翳し叫んだ。
「最早我らに障害は無い!この原野ごと妖を焼き尽くすぞ!」
かくて、地獄の炎纏いし魔王に率いられた悪魔の軍勢が妖を悉く焼き尽くすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?
キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?
●ひょっこりキノコと坂東武者
原野の南東部、こちらでは別の一団が妖と交戦状態にあった。そこにひょっこりと闖入者が現れた。
「子供がいるぞ!」
妖が矢を放つのと、大柄な坂東武者――父である義富に似た、黒曜石の角を持つ羅刹の男――が彼女の存在に気付いたのはほぼ同時だった。咄嗟に少女のもとに駆け寄ろうとする坂東武者だったが、ギリギリのところで間に合いそうにない。だが、最悪の事態は回避できた。少女の前に突如として燃え盛る炎の尾を持った黒猫が現れ、彼女に飛んできた矢を全てはたき落したのだ。
「あれは一体なんだ……?」
疑問を呈する坂東武者に、少女――キノ・コバルトリュフ(キノコつむりの星霊術士・f39074)が声を掛けた。
「キノキノ、火力が足りないんだって?」
驚く坂東武者だったが、一つ思い当たる節があった。近頃、各地で妖を倒している『六番目の猟兵』なる存在がいるという。彼女もその一人なのだろう。そこで彼は現在の苦境を訴えてみた。
「ああ、あいつらはこちらの攻撃が通じない。まるで霧を相手にしているようなもんだ。」
キノは少し考えると、一つの案を提示した。
「だったら、焼き舞茸はいかが?」
「皆、準備はいいか!」
坂東武者の掛け声に、他の者たちが応じる。そして風向きが変じたタイミングで合図が発せられた。
「今だ、一度引くぞ!」
合図と同時に一斉に、妖に背を向けるように走り出す武者たち。敗走の如く走り出す武者たちを妖たちは何の疑いも持たず追いかけた。……それが罠だとも知らずに。
事前に合わせた通り、妖が一か所に集まりだした。
「キノ殿、今です!」
その言葉と同時に、キノがくるくると奉納の舞を踊り始めた。と同時に妖たちの集まった場所に炎が吹き上がる。それもただの炎ではない。エンドブレイカーの世界に語られる『創世記』の炎の渦だ。正邪を問わず全てを灰に帰す炎が怨念の集合体である妖――叢雲鬼を焼いていく。
叢雲鬼が抵抗するように叢雲の如き無数の怨念を放つ。しかしキノも負けてはいない。
「キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!」
尾の先端が燃え盛る炎の黒猫――その正体は『星霊バルカン』――が放つ炎と怨念がぶつかり合う。
膠着状態の攻撃は、意外な形で動き出した。
「『くさびら』が、『くさびら』がございましたぞ!」
坂東武者の一人が群生するキノコを発見したのだ。なお余談ではあるが『くさびら』とはキノコの古い呼び名の一つである。平安時代の日本に近い文化を持つアヤカシエンパイアにはこの呼び名が残っていたのだった。
「キノ殿!受け取り下され!」
彼は毒々しい外見のそれをキノに投げ渡した。と、キノは空中でキノコを華麗に咥えると、もぐもぐと食べ始めた。みるみるうちにキノの顔が赤くなり、舞の速度が上がっていく。舞のテンションと呼応するように炎の渦も勢いを増していく。そしてバルくんの炎もいつしか叢雲鬼の怨念を上回っていた。
「トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。」
ケラケラと酔っぱらったような笑いを浮かべるキノ。彼女の舞もまた、クライマックスへと突入しようとしていた。
「キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!」
足に力が入る。
「いいぞー!」
「頑張れー!」
坂東武者たちからも歓声が上がる。と同時に業火に焼かれた叢雲鬼の、言語にならない断末魔が原野に響いた。
「マツタケ!!おいしく焼けたかな?」
踊り疲れ、倒れそうになったキノを大柄な坂東武者が抱きかかえた。
「キノ殿、ありがとうございます。今度は我々がキノ殿をお守りせねば。」
彼らは安全な場所までキノを連れていくため、一時戦線を離脱するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
天白・イサヤ
坂東武者の者らには、いつも主が世話になっている。であるならば…力を貸すことこそ、我が勤め。
天白家が式神の一、イサヤ。参る。
…守るために戦うは、こちらも同じ。故に加勢は当然のことである。
物理が無効であれば、相応に対処すればよい。
神楽を舞いて【神楽歌-tribute-】。これは五芒星の浄火。怨念の集合体であれば、よく効くであろう。
さらに、そのユーベルコードは遅延する…つまり、怨念が密着する前に全て焼いて浄化してしまおう。
●御恩と助太刀
平安貴族の中には、武に長ける坂東武者と共同戦線を張る者が多い。天白・イサヤ(|紫炎雪《しえんせつ》・f43103)の主もその一人である。故に彼が坂東武者の危機に当たり、助太刀に参るのは当然のことであった。
本陣に現れたイサヤから助太刀の申し出を受けた義富は、喜んでその申し出を受けた。
「天白殿の勇名はこの東国にも聞こえている。その式神がわざわざ来て下さったのだ、負ける訳にはいかぬ!」
「…守るために戦うは、こちらも同じ。故に加勢は当然のことである。」
東国の奥地にすら主の名が知られていることに内心誇らしさを感じながら、イサヤは義富らと共に出陣するのだった。
「天白家が式神の一、イサヤ。参る。」
思業式神が奏でる神楽の音に合わせ、5本の腕を優雅に動かし舞う。その優美さに、芸事に疎い坂東武者たちも息を呑む。そして神楽の音に誘き出された妖たちも集まってきた。
「見よ、炎星。聴けよ、早歌」
イサヤの舞に合わせ、宙に五芒星を描く炎がいくつも現れた。炎は優しい光と熱を放ちながらも的確に妖たちを狙い、悉く焼き尽くしていく。
1体の妖が断末魔の代わりに黒い煙のような怨念を坂東武者たちに向けて放った。しかし、怨念がは炎に阻まれ届くことなく浄化された。
「流石天白殿の式神、大量の妖を瞬く間に倒すとは……。この御恩、必ず返さねばならぬな。」
イサヤの活躍を見守っていた義富が呟いた。東国の武士はその辺義理堅いのである。
成功
🔵🔵🔴
マチルダ・ヴァレンタイン(サポート)
ウォーマシンの鎧装騎兵×電脳魔術士
街中では主にリモート義体で行動し情報収集を行う。
戦闘時はサテライトドローン群を展開し、通信・観測網を構築
観測網を使い、偵察、情報収集を行う。
発見した敵に対し、砲撃、誘導弾による先制攻撃で制圧射撃を行う。
接近戦距離に入ったら高分子レーザーブレード、アサルトバンカーで対応。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の損傷は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」
基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。
探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。
情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。
戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。
●未来領域
戦場の上空を鳥の如く、偵察用サテライトドローンの群れが飛ぶ。ドローンに搭載されたカメラが戦場全域、そして妖の一群を捉えた。
「ほほう、これは便利なものですな。」
「『どろーん』なる式神、初めて見ましたぞ。猟兵は我々田舎侍の知らぬものを大量に持っておられる。」
モニターに映し出された光景を見ながら、思い思いの感想を述べる坂東武者たち。平安時代の技術が関の山な彼らにとって、|宇宙世界《スペースシップ&オペラワールド》の技術は想像をはるかに凌駕するものだ。マチルダ・ヴァレンタイン(ウォーマシンの鎧装騎兵・f19036)は彼らの驚きを聞きながら、内心誇らしく思っていた。
「同期完了……っと、こっちからも映像確認できるよ。」
通信機越しに数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の声が聞こえた。彼女は別の地点から妖を奇襲する算段であった。
「行けますか?」
「いつでも。」
多喜の言葉と同時に、上空で待機していたアサルトドローン群の武装が一斉に火を噴く。それが開戦の合図であった。
「おお、天から炎が降り注いでおりますぞ!」
ドローンの攻撃に驚きを隠せぬ坂東武者たち。火薬の概念もない彼らからすれば十分なまでに驚嘆に値する代物だ。しかしこれは単なる物理攻撃。怨念の塊である妖――叢雲鬼には何の効果もない。だが、マチルダの目的は他にあった。
一方その頃、多喜は妖の群れのど真ん中を宇宙カブ『JD-1725』で駆け抜けていた。
「アタシを止められるなら止めてみなァ!」
叢雲鬼を構成する怨念と残留思念に多喜が纏うサイキックエナジーが干渉し、実際には物理攻撃ではないにもかかわらず、傍目にはバイクで妖を轢いている様に見える。
「あの『ばいく』とやら、馬よりも使い出が良さそうですな。」
「しかし乗り手が良いだけで、我々では扱えぬ代物では?」
坂東武者たちの戯言を聞きながら、マチルダが指示を出す。
「多喜さん、準備はよろしいですか?」
「問題ない、やるよ!」
多喜のサイキックエナジーがマチルダのアサルトドローン群とシンクロする。それに伴い、アサルトドローンの攻撃にサイキックエナジーが宿りだした。サイキックエナジーを帯びた攻撃が上空から叢雲鬼を殲滅していく。
「これで終わりだ!」
サイキックエナジーの嵐が戦場一帯を包み、叢雲鬼を構成する残留思念を消滅させていく。それはまるで風の前の塵のよう。
全てが終わった原野に、何事も無かったような風が吹き抜けていった。
「敵性オブリビオン――妖の全個体消滅を確認。各所からの報告を総合すると、こちらの損害は軽微で済んだ模様です」
ドローンから送られてきた映像を精査しながら、マチルダは内心安堵した。これで一応の危機は去ったと。
だが、その安堵は多喜からの通信で打ち砕かれた。
「今、仁田さんところの別動隊と合流したんだけど彼ら『怪しい屋敷』を見つけたようだ。座標データを送るからそこにドローンを飛ばしてくれないかい?」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
原野の中に怪しい屋敷を発見したという情報を得た猟兵たちは、偵察ドローンにてその外観を確認した。傍目から見ても朽ち果てそうなオンボロ屋敷であったが、最初に屋敷を発見したという別動隊の坂東武者たちは口々にこう語った。
普通の廃屋であれば、過去の生活の痕跡が何かしら残されているはずだ。しかしこの打ち捨てられたような屋敷にはそのようなものが何一つとして存在しなかった。人の手が入らないのであれば積み重なるはずの埃すら存在していないのだ。
間違いない、双子の妹である杏の声だ。しかし杏が何故こんな所にいるのだろうか?疑問に思った祭莉は屋敷の奥へと進もうとした。しかし、後から追いかけてきた坂東武者の青年が彼を引き留める。
それもそうだ、と納得した祭莉が足を止めた。そもそもグリモア猟兵も『敵のボスは声で惑わしてくる』と言っていたではないか。しかし奥に潜むであろう声の正体も気になる。
青年が驚嘆の声を上げる。ニワトリ型ロボに限らず、ドローンのことも式神扱いするなど、どうやら仁田一族に『メカ』の概念は無いらしい。アヤカシエンパイアの民ならば仕方ないのだろう。