斑鳩探偵事務所は歌舞伎町1丁目99番地
「ごめんくださぁい……? きゃあ!?」
『斑鳩探偵事務所』という表札のかかったドアを管理会社の制服を着た女がおそるおそる開けた途端のことだった。
本のようなものがひとりでに飛んでくる。とっさに避けると、廊下の壁に当たって床に落ちた。
「なになになにぃ!? 怪奇現象ってやつ? やめてやめてぇ!」
泣き出しそうになりながら女は逃げ帰った。その間にもドアの中からは部屋内にあると思しきあらゆる物品が投げ出され続ける。
「しまいにはソファや机まで。もちろん、ドア枠に引っかかって即席バリケードの出来上がり」
仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は苦笑し、今回の事件について語り始める。
シルバーレインの世界は、予定通りならば、世界結界――人々を超常現象から隔絶するための魔術防護的存在――がそろそろ完全に崩壊するはずだった。
人類は全て能力者に目覚め、世界的な政治分野に進出した銀誓館出身者たちが道を整え、新たな秩序を築き上げる。友好的なゴーストとは共存の道を、人々に害を為すゴーストに対しては組織的な対策を行う。そのような流れの中で状況が一変する。
「それが皆も知っている、世界結界の復活。再び降り注いだ銀の雨に神秘は隠蔽され、人々からゴーストやそれに纏わる記憶は失われてしまった」
おそらくは世界結界がオブリビオン化したのだろうというのが、現時点におけるもっとも有力な推測だ。
「この探偵事務所は人々との共存を目指すゴーストたちの相談窓口として機能していた痕跡がある。けれど世界結界がよみがえったことで彼らの努力は道半ばで失われてしまった。現在は無人の空き家として放置されている状態。様子を見に来た管理会社の女性も、今ごろはあそこで何が起こったのかすっかり忘れているはず」
では、女性が遭遇した怪奇現象の原因はなんなのか?
「メガリス」
弥鶴は説明を続けた。
「シルバーレインにおいてのメガリスとは、世界各地に眠る、強大な力を秘めた遺産のことだ。たとえばアーサー王の聖杯とか草薙の剣だとか、ああいう『強大な力を秘めたアイテムに関する伝承』は誤った形で伝わったメガリスについての記録なのかもしれないね。だからメガリスは一見して、普通の武器や美術品と変わらない外見をしている」
もっとも、その本質は常軌を逸した強大なる代物なのだが。
「そのメガリスのひとつが、なぜかはわからないけれど、この探偵事務所に保管されていたらしい。急ぎ、怪奇現象の原因となっているメガリスを確保するべきだろうね。放っておけばさらにその力を解放し、とんでもない事件に発展するかもしれないから」
ツヅキ
各章の始めに断章が入ります。
オープニング公開もしくは新章が始まってから2日後の朝8時30分までプレイング受付中。タグに日付を記載しますので、そちらをご確認ください。
期間内に届いたプレイングは内容に問題のない限り、できるだけ採用します。1章のみの飛び入りも歓迎。成功までの人数が足りない場合はサポートをお呼びして進める予定です。
●第1章 冒険
ポルターガイスト現象に対処しつつ、探偵事務所に乗り込んでください。飛んでくる中にはメガリスも含まれていますが、メガリスは簡単には破壊されないので、少々乱暴な手段であっても問題ありません。
●第2章 日常
後片付けをしながらメガリスを見つけ、回収をお願いします。希望があれば個人や旅団にお持ち帰りも可能。なければ銀誓館で保管します。
第1章 冒険
『ポルターガイスト』
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POW : 飛来する物品を叩き落とす
SPD : 物品を俊敏にかわして進む
WIZ : 魔力干渉で物品の飛来を妨げる
イラスト:乙川
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
歌舞伎町の99番地、という本来はあるはずもない住所にそのビルはあった。
今は無人の探偵事務所は4階に入っているようだ。エレベータを上がれば、フロアに出た時点で異様な音が聞こえ始める。
壁にぶつかる音で、だいたいの正体はわかった。
本や書類の類はくぐもった鈍い音、小さな文房具の類は鋭く高く、家具は地響きすら轟かせて。だが、ひとつだけ異様な音を立てて飛ぶ物品がある。
――カァンッ!!
どうやら、重さのある貴金属のようだ。
倒れた戸棚の中から現れたのは鞘に入った西洋剣。その正体は11世紀末、エル・シッドという貴族が使ったとされる『|ティソーナ《炎の剣》』だった。
瀬戸際・御祭
お祖父ちゃんは「ゴーストを見つけたら殺すように」って言ってたけど、
共生しようとする人たちも居たんだねー。
ミサには難しくて分かんないけどー先ずはメガリスの確保だねー。
ミサは【飛来する物品を叩き落としながら】進んでいくよー。
バリケードって、まるで侵入者から部屋を守ってるみたいだよねー。
挑発してこっちに直で物が飛んでくるようにコントロールできないかなー。
「へいへーい、家賃滞納でこの事務所は差し押さえさせて貰うよー」
直接ミサのことを狙って飛んでくるのがあれば遠慮なくユーベルコードを叩き込むねー。
もしメガリスだったとしても丈夫?だからミサの攻撃くらいじゃなんともないでしょー。
(アドリブ歓迎です)
儀水・芽亜
メガリス『ティソーナ』。しっかりした由来のある品物ですね。|再征服《レコンキスタ》の関係ときましたか。
それでは、竪琴を「楽器演奏」しつつヒュプノヴォイスを「歌唱」して、飛び回る物品とメガリスを眠らせてしまいましょう。
さあ、いい子ですから、暴れずに穏やかな眠りに落ちてください。子守歌を歌ってあげますからね。
ポルターガイストが一時的にでも鎮まったら、入口のバリケードを乗り越えて、又はどかして、探偵事務所に入りましょう。
これはまた、年度末の学園事務室よりも酷い有様で。
メガリスは一体どこにあるのやら? 見ればそれと分かるでしょうか?
これを片付けるのかと思うと面倒です。この事務所の家主に任せたいですね。
神楽崎・栗栖
WIZ アドリブ歓迎
メガリス……私は2つほどしか覚えていませんが、今はあちこちにあるものなのですね
しかも自ら飛んでくるとは、本来であればどんな力を秘めているのやら
「姿を隠したところで、逃れられるとは思いませんが……」
UCの【闇のオーラ】を纏いながら背を屈めて進み、当たる面積を最小にして[オーラ防御]
他の参加者にも当たらないよう気をつけて進む
大町・詩乃
被害が出てしまう前にメガリスを回収しないといけませんね~。
グリードオーシャンで入手したメガリスは神社で保管しておりますが、この世界のメガリスはどのようなものなのでしょうか?
興味が有ります。
《慈眼乃光》を使用してポルターガイストさんに「どうかお静まり下さい。
願いがあるのでしたら聞きますよ。」と語り掛ける。
以前のこの場所は人にもゴーストにも役に立つ場所でした。
それが空き家として放置されているのは無念なのかもしれません。
物品回収してリサイクルとかが良いのかな?
それでも襲ってくる相手(炎の剣とか)は第六感で予測して見切りで躱し、念動力で捕縛しましょう(オーラ防御も纏う)。
人を傷つけてはダメですよ。
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
今の世界結界はいずれ何とかしなくてはならない物です。
何とかなったら、また再び人魔共存のために活躍していただけると良いのですが……。
「とりあえず……メガリスはしっかり管理しておいて欲しいものです」
室内ですし大太刀は使わず、UCと格闘戦メインで行きましょう。
心が【落ち着き】【覚悟】を決めたら、バリケードをどかして侵入しましょう。
「さっさとメガリスを回収しましょう」
飛んでくるものは【受け流し】たり、拳で迎撃しながら、
ポルターガイストの原因を探します。
メガリスが原因なら大人しくなるまで殴り、
違うものが原因ならそれを破壊しましょう。
「……暴走メガリスを掴み取るのは止めておきますか」
鳥羽・白夜
そうなんだよなぁ、あのままいけば今頃は世界結界崩壊して…って、能力者引退した俺もまた能力者に復帰してたってことか…
今どういうわけだか猟兵だけどどっちにしても結局戦う羽目になってたんだよなぁ…はぁ。
…今はポルターガイストの対処のことだけ考えよう。
|起動《イグニッション》、紅い刃の大鎌を手に。
ミストファインダーを展開、飛んでくる物品の運動エネルギーを10分の1に減衰させて払いのけるか受けとめるかして対処。
大きい家具なんかは大鎌で【切断】し道を開ける。今どうせ使われてねえんだしいいよな。
…しかしここで探偵事務所やってた奴、たぶん能力者かゴーストだったんだろうけど…メガリスほっぽって今何してるんだ?
……あの頃はまだ物心ついていなかったから、瀬戸際・御祭(高校生ゾンビハンター・f43296)が懐かしく思い出せるのは祖父が繰り返し言っていた言葉だった。
――いいか、ゴーストを見つけたら殺すんだ。必ず、何があろうとも。
ひゅんと飛んでくる灰皿を、御祭は問答無用で叩き落とす。
「だけど、共生できる可能性を持つゴーストもいたんだね」
この場所にも、他のところにも。
色んなゴーストがいて、いろんな価値観があって。でも、御祭には難しいことはわからないから、やれと言われたことをやるだけ。
「あの部屋の奥にメガリスがあるんだよねー?」
どの扉がそうなのかは、廊下にあふれた品々によってすぐにわかった。
バリケード、というか、乱雑に積み上がった家具の山というか。今も新しい棚が廊下の窓に当たってガシャンとガラスの割れる音が鳴り響く。
「懐かしい響きです」
メガリス、と。神楽崎・栗栖(銀朱の魔剣士・f42945)は久しぶりにその名前を舌に乗せた。
「力の片鱗だけでこの有りさまとは、相変わらずのようで」
栗栖の声だけしかしないのは、闇に紛れ、視聴嗅覚による感知から逃れる術を身に着けているからに他ならない。もっとも、姿を見えなくしたくらいで逃れられるような状況にも思えないが……栗栖の予想通り、|ほぼ《・・》自動的に発動するポルターガイスト現象にとってはそこに誰かいようがいまいが無関係のようだった。
だが、まあ、敵認定されるよりはよかろう。
できるだけ当たり判定は小さい方がよい、と栗栖は上半身を屈めた。さっそく頭上を掃除用具が飛んでいった。まったくもって容赦がない。
儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷ザナドゥ』・f35644)は手加減の必要無しと滑らかな旋律と歌声によって飛来する物品を眠りにつかせ、鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は指先でイグニッションカードを弄ぶ。
「ふむ……」
まるでため息を隠すように口元にカードを寄せ、肩を竦める。
思えば何とも奇妙なめぐり合わせだった。あのまま世界結界がなくなった場合、一度は能力者を引退した白夜も再び力に目覚め、結局は再び戦いに身を投じることになっていたのだから。
「今はどういうわけだか猟兵だけど、……どっちにしても結局戦う羽目になってたんだよなぁ。――起動《イグニッション》」
紅い刃の大鎌を振るうと、霧のレンズが盾みたいに現れた。そこを通過した物品は運動エネルギーを奪われ、簡単に払い除けられる程度にまで弱体化する。
「よし、まずはバリケードになってる家具をなんとかしないとな」
「侵入するためには、あれをどかす必要がありますね」
天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)は深く息を吸い、一瞬の精神集中の後に床を蹴った。
「さっさとメガリスを回収しましょう」
「被害が出てしまうと大変ですからね~」
祈るように両手を組み合わせた大町・詩乃(阿斯訶備媛アシカビヒメ・f17458)の慈悲なる視線が飛び交う物品をとらえる。
「どうかお静まり下さい。願いがあるのでしたら聞きますよ」
果たしてこの現象にメガリスの|意思《・・》は関与しているのだろうか? あるいは偶発的なもの? 明らかなのは空き家となった事務所にメガリスが置き去りにされているということだ。そう、それだけは確かな事実。
「どうかしましたか?」
白夜が考え込むような顔をしているので、芽亜が間奏の途中にたずねた。
「いや、ここで探偵事務所やって奴はメガリスほっぽって今なにしてるんだろうかと思ってさ。たぶん能力者かゴーストだったんだろうとは思うが……」
「無念ではあったでしょうねえ」
詩乃は頬に手をあて、深いため息。
飛来するタワシを殴り捨て、紫苑も頷いた。
「事情はあれど、メガリスだけはしっかり管理しておいてほしかったですね」
「ところで、これらは回収してリサイクルに出すべきでしょうか?」
「うーん、さすがにいくつかは粗大ごみ化を免れないだろうな」
結局、白夜は道を塞ぐソファを大鎌で真っ二つにして進むことに決めた。文句があるなら今すぐ出て来いというのだ。立ち入り禁止だと言わんばかりに飛んでくる新手を拳の甲で受け流した紫苑は、あっという間に斬られたソファを廊下へ放り出してしまった。
詩乃の慈眼と芽亜の子守歌によって随分とポルターガイスト現象もおとなしくなっている。これなら問題なさそうだが、栗栖は念のためオーラ防御は解かないままに事務所の中へ飛び込んだ。後に続いた芽亜は軽く中を眺め渡す。
「これはまた、年度末の学園事務室よりも酷い有り様で」
なにしろ散らかっている、というレベルではなかったので、二の句が継げない。
「それで、メガリスは――」
その時、明らかに他の物品とは違う軌跡を描き、鞘に入った剣が飛来する。とっさの勘でそれを察知した詩乃は結界代わりのオーラを纏い、直撃を躱すために身を翻した。同時に御祭がくいっと手招きする。
「へいへーい、家賃滞納でこの事務所は差し押さえさせて貰うよー」
向きを変えた剣の先っぽがこちらを向いたので、さっさと追跡者の刻印を貼っつけ、金属探知機をバットみたいに振り抜いた。
「ほーむらん!」
事務所の壁にぶつかって跳ねかえったところを、詩乃が念動力で抑えつける。
「人を傷つけてはダメですよ……あッ」
力ずくで拘束を抜け出した剣が、再び暴れ回った。
「どうやら、そのメガリスがポルターガイスト現象の原因みたいですね……さすがに、掴み取るのはやめておきますか」
その代わりに紫苑は相手がぶつかってきたタイミングで思いっきり殴り返してやった。メガリスのダメージが蓄積するのに比例してポルターガイスト現象が落ち着き始める。やはり、これが元凶らしい。
「あれが『ティソーナ』ですか、レコンキスタ関係の」
芽亜は剣を追うが、御祭に叩かれ、紫苑に殴り飛ばされた剣は山のように積み重なった家具や書類のどこかに姿を消してしまった。
「ポルターガイスト現象がおさまったのはよいですが、これを片付けながらメガリスを探し出せと? 正直、家主に任せたいところですよ」
「大変だよねー」
御祭は小首を傾げる。
「まあ、乱暴にしても大丈夫って話だからじゃんじゃん片付けていっちゃおー」
「やれやれですね……」
闇を解き、姿を現した栗栖は「それにしても」と思案する。メガリス――記憶の中にあるそれは、銀誓館が初期に入手した2つのみだ。あの頃はとても貴重な品だったが、今や幾つも散逸し、しかもこのような事件を引き起こす元凶になっているとは侮れない。
「本来の力を発揮される前にどうにかしないといけませんね」
「ですね~」
「そういえば、大町さんの神社ではメガリスを保管していらっしゃるのだとか?」
「はい。グリードオーシャンで入手したものなので、この世界のメガリスとは違う部分があるかもしれませんが」
「なるほど……」
「興味深い存在ですよねぇ、メガリスって」
詩乃はおっとりと微笑んだ。
「ええ、本当に」
後を紫苑が継ぐ。
「……それに甦ったという世界結界も、ですね。いずれ何とかなって、この事務所の方々にも再び神馬共存のために活躍していただける日が来るとよいのですが」
大成功
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第2章 日常
『お片付けをしよう』
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POW : 力仕事ならお任せあれ。これ、どこに運ぶ?
SPD : 片付けには速さが必要だ。手際よく、塵一つ残さない。
WIZ : ピカピカ綺麗に磨き上げよう。何か飾るのもいいね!
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
あらためて、事務所の内部はひどい様相を呈していた。
ありとあらゆる家具や物品は投げ出され、一部は廊下にまであふれ出している。元通りの場所にある物などひとつとしてないくらいだ。
床にはペンや書類が散らばり、ファックスやパソコンの類は壊れてもう使い物にならないだろう。棚は倒れ、給湯室には割れたカップや皿が散乱する。
いったい、どこから手をつければよいのやら。
普通の人間なら途方にくれるところだが、皆は何しろ猟兵である。何とかなるだろう……多分、きっと。
問題はメガリス『ティソーナ』の在処だろう。
己が回収される運命を悟って最後の抵抗を試みるかのように『ティソーナ』はどこかに隠れたままだ。大量にちらかった物品に紛れてしまった『ティソーナ』の行方は、今のところ、何も手掛かりがない。
儀水・芽亜
これは、出来れば人海戦術をとりたいところですが、私が召喚出来るのはナイトメアだけですからね。この状況では役に立ちません。
ん、散らかっている物自身に力を借りましょうか。
主に向かいて新しき歌をうたえを「歌唱」しながら、片付けに入ります。
皆さんの元あった場所、教えてもらえますか? 手に取れば、なんとなく元の場所が分かるような? そこへ仕舞っていきましょう。皆さんもいつもの場所の方が落ち着くでしょう?
かさばる物が片付いたら、「掃除」していきましょうか。
歌声は絶やすことなく、軽快に。
メガリス『ティソーナ』も、私の歌で機嫌を直してくれればいいのですけど。
これだけ片付ければ、隠れていられる場所は限られます。
神楽崎・栗栖
POW 連携・アドリブ歓迎
地道ではありますが、大きいものから順に捨てるか、移動していきましょう
元の配置や間取りはわかりませんが、せめていつでも人が戻れるレベルには片づけたいものです
他に希望がなければ、メガリスを個人で持ち帰りたい
使い手を失った剣、まるで記憶を失くした今の私のようで……感傷的に過ぎるでしょうか
鳥羽・白夜
うわぁ…俺散らかってんの無理なんだよ、やんちゃにも程があるだろ…
どのみちこのままにはしとけないしな、地道に片付けますか…
【気配感知】や【第六感】で常にメガリスの場所は探りつつ持参した作業用手袋を嵌めゴミ袋片手に片付け開始。男だし大きいものとか重いものは運ぶよ。
…けどこれ粗大ごみに出すのも俺らがやんないといけないのか…
片付け面倒だけど無心でやってるうちにだんだん楽しく…なるかもしれない(掃除とか実は得意な方)
メガリスが出てきたらダークハンド・改で捕縛し【逃亡阻止】。また暴れられたらたまったもんじゃない。
基本学園に預ける方針で。家じゃ面倒見れねーし。
しかし炎の剣がなんでまたポルターガイスト現象…?
大町・詩乃
それではお掃除いたしましょう。
壊れた物品が大半の状況では、ごみとして回収してもらえるように少しずつ分別していくしかないですね~。
引き続き《慈眼乃光》を使用して、無機物や部屋の助けを借りながら整理していきますよ~。
重い物は念動力で動かします。
集まられた皆さんと協力しながらお掃除を進めていきますよ。
ごみの分別が出来たら、箒で掃いて、雑巾がけして。
ふう、綺麗になりました♪
その過程でメガリス『ティソーナ』は失せ物探しで見つけましょう。
まさか粗大ごみに紛れて脱出を図ろうとか、考えたりはしてないですよね~。
メガリス『ティソーナ』を見つけたら回収しましょう。
特に希望者がいなければ神社で保管でも良いですね。
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
大人しくはなったようですが……。
「中々ひどいものですね」
捜し物のコツは、丁寧に探すことです。
殴り飛ばした方向を集中して探しますが、
基本的には丁寧にひとつずつ片付けていきます。
一応、念の為にUCも使って僅かな動き等の痕跡を見逃さないように、
注意しながら片付けを行います。
「さて、手早く片付けてしまいましょう」
メガリスの取り扱いは、私は持ち帰る予定が無いので、
誰も回収しないのであれば銀誓館に届けます。
「なんつーかこう、大・惨・事って感じだな」
鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は顔をひきつらせた。綺麗好きとしてはなかなか許しがたい光景が広がっているではないか。
同意、と天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)は上着の腕をまくりながら率直な感想を述べる。
「大人しくなったはよいものの……ひどい、の一言です」
「いくらメガリスの暴走が原因とはいえ、ここまでやるか? やんちゃにも程があるだろ……」
とにかく、無事なものが一切ないのだ。
カーテンは引き裂かれているし、壁や床は傷だらけだし、吹っ飛んでいった棚や机などの家具の状態は言わずもがな。
引っ繰り返った机の脚が折れ曲がっているのを見て、神楽崎・栗栖(銀朱の魔剣士・f42945)が言った。
「破損したものは捨てるしかないでしょうね。まずは大きいものから地道に移動していきましょう。元の間取りはさすがにわかりませんね、これでは」
この場所が相談人を迎える応接室であるのは間違いなさそうだ。中の綿を撒き散らしながら壁に立てかかっていたソファを、栗栖は白夜と力を合わせて外の廊下に運び出した。
「……これ粗大ごみに出すのも俺らがやるしかないよな……?」
「重労働ですね」
「マジでな……」
白夜は持ってきていた作業用の手袋をきゅっと嵌め、細かなゴミを拾い集める。ガラスの破片なんかは気を付けて扱わないと危ない。慎重に摘まみ、危なくない状態にしてからゴミ袋へ。こう見えて、掃除はわりと得意な方なんだぞ、と。
「そもそも炎の剣のくさになんでポルタ―ガイストなんだ?」
「なぜでしょうね」
栗栖はぽつりと呟いた。
「もしかしたら、失った使い手に自分の存在を気づいて欲しかった……なんて。いえ、ただの思い付きです」
「はーい、皆さん。分別のお時間ですよ~」
大町・詩乃(阿斯訶備媛アシカビヒメ・f17458)が柏手のように両手を打ち鳴らし、微笑むように細めた慈眼で見つめると、壊れた物品は自分から燃えるゴミと燃えないゴミに分かれていった。ドアや窓も自分から開いて空気を入れ替える。
「その調子です♪」
「素直な子たちでよろしいですね」
人海戦術代わりといってはなんだが、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷ザナドゥ』・f35644)も軽快に聖歌を謳って散らかった物品を味方につけた。拾い上げた本から伝わる感覚を元に本棚へ戻す。
本来の居場所がしっくりくるのか、心なしか、本たちも喜んでいるように見えるの。さすがのナイトメアもこの状況では役に立たないので、コツコツと片付けていくしかあるまい。
「本は儀水さんにお任せして、私は給湯室の方を掃いて来ますね~」
よいしょ、と詩乃は道を塞ぐ小型冷蔵庫を動かした。念動力を使えば、たとえ重いものだろうが詩乃にお任せあれなのだ。あとは箒で陶器の破片を掃き集め、仕上げに雑巾がけを行う。端から端まで、きっちりと満遍なくぴかぴかに。
「剣、剣……確か、こっちに殴り飛ばしたと思うのですが……」
ソファを片付けた後の柱の影を覗き込んだ紫苑は、続けてテレビ台の裏を探した。ふと壁の傷に気づいて指先を這わせる。
「ここ、何か固くて鋭いものがぶつかった跡があります。文房具にしては大きいですし、この辺りにある可能性が高そうですね。物がなくなった方が探しやすいでしょうから、手早くそちらを済ませてしまいましょう」
「異論ありません」
芽亜が言った。
次第に物が片付けば、隠れていられる場所もなくなっていくというわけだ。
「意思を持つメガリスなら、粗大ごみに紛れて脱出を図ろうなんて思ってないですよね~?」
なんて、詩乃が冗談半分に言った時にそれは起こった。
「あ」
最初に紫苑が、短い声を発する。
「あらまあ」
続けて、詩乃が驚いたように目をみはった。
――あった。
鞘に入った年代物の剣は、白夜がガラスの割れた棚を運び出そうと動かしたその裏側に張り付いていたのだ。失せ物探しの得意な詩乃と練武によって行動成功率の高まっていた紫苑が同時にそれを指差した。
「見つけました」
「発見です~♪」
「ちょ、待てよ両手が塞がってんだって!」
白夜は慌ててダークハンド・改を放ち、今度こそ逃げられる前にメガリス『ティソーナ』を影で締め付けるように捕縛を完了。
「おやおや」
魅了の歌にも抵抗する『ティソーナ』に芽亜は苦笑した。
「なかなか強情ですね」
「どうします? これ……私は持ち帰る予定が無いので、誰も回収しないのであれば銀誓館に届けますが」
紫苑がたずねる。
少なくとも、このまま放ってはおけないので保管先を決める必要があった。
「俺も基本学園に預ける方針だな」
と、白夜。
「こんなの家じゃ面倒見きれないぜ」
「特に希望者がいなければ神社で保管してもいいですよ。どうします?」
詩乃の申し出に、栗栖が挙手する。
「……あの、よかったら私が持ち帰ってもいいですか? 感傷的かもしれませんが、なんだか自分の姿に重なるところがあって……」
記憶を失くした栗栖は、過去を持たない。
その境遇が、使い手を失って孤独にも大騒動を起こしたメガリス『ティソーナ』に何か似たものを感じさせたのだろうか。
「これからよろしくお願いしますね」
影を解かれ、栗栖の手に渡った剣は不思議とおとなしいままだった。軽く鞘を撫でると冷たい金属の下に熱く燃え滾るようなエネルギーを感じられる。
炎の剣の異名を持つ、レコンキスタの英雄が振るった『ティソーナ』。
猟兵の手によって無事に回収されたメガリスはこうして新たな持ち主を得ることになったのだ。
「……で、まだこれから粗大ごみ捨てが残ってるんだが?」
「最後まで手が焼けますね……」
「ここまで来たら頑張って運びましょう~。えいえいおーなのですよ!」
大成功
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