ゴシック・キャッスル攻城戦
「くだらん世界だ」
玉座に座る男が嘯く。その風体は数々のフィクションでも語られるような悪魔であり、いかにもダンジョンの最奥に存在するボスの姿。
玉座の背後で──大きなクリスタルが輝き、奴隷たちの姿をうつす。
「故に、我が汚染し、管理すべきだ。そうだろう?」
顔を歪めて嗤う悪魔の問いに、応えるものは一人といない。|労働奴隷《プレイヤー》たちは力なく項垂れて、終わりのない労働に苛まれるだけだった。
●
「大変だよ!緊急事態!」
布都御魂・アヤメは慌てふためきながら、集まった猟兵たちへ声を張り上げる。
「プレイヤーさん達が、バグプロコトルに捕まっちゃってるんだ!
しかも、城の中で無理やり働かされてるみたい…ゲームの中でだよ!?なんで!?」
予知に視たものへの驚きを隠せず、アヤメは焦りをあらわに声を荒らげる。事態はそれほどに謎だらけの緊急事態だ。
アヤメはなんとか逸る気持ちと呼吸を落ち着けて、猟兵たちへ向き直る。
「今考えても分からない事ばっかりだけど…。
捕まったプレイヤーさん達は、まだ生きてる!|遺伝子番号《ジーンアカウント》も焼却されてないみたいなんだ。
全部、間に合うってことだよね?なんとか助けてあげよう!」
これまでこの世界で発生した事件とは、ひと味違う|挙動《バグ》であれど、猟兵としてすべき事は変わらない。アヤメは猟兵たちを見渡し頷くと、予知の詳細を広げる。
「プレイヤーさん達が捕まってるのは、お城の中のダンジョンの最奥だよ。
このお城は、城攻めクエストのデータが乗っ取られて、そのまま流用されているみたい。
だから、こっそり侵入して助け出す…っていうのは出来ないんだ」
城攻めクエストは、本来500人規模のPvP。高い戦略性を要求するコンテンツであるが故に、正攻法以外での侵入者を拒む堅牢な城。バグプロコトルの支配下であってもその堅牢さは健在だ。
故に猟兵たちは|城攻め側《アタッカー》となって、|防衛側《ディフェンス》の強固な守りを打ち破らねば、プレイヤーの救助に向かうこともできないだろう。
だが、クエストだからこそ、基本的なルールも変わらぬままだ。
「皆は城攻め側、バグプロコトルが防衛側だよ!
防衛側を倒しながら、制限時間内にキャッスルクリスタルを破壊するのが、城攻めクエストの基本!
戦いながら、途中にある小クリスタルを破壊していけば、有利になる筈だよ!」
ダンジョンに存在するキャッスルクリスタルは小さなものと、大きなものの二種。
小クリスタルは城攻め側のクリア条件にこそ関わらないが、防衛側にとっては重要な|復活《リスポーン》地点だ。
小クリスタルを防衛しているバグプロコトルはすぐさま復活する上に、自身でも際限なく増殖することができる。小クリスタルを破壊すればその復活を阻止できる上に、制圧地点は城攻め側の補給地点に変化する。有利に制圧を進められるだろう。
そうしてクリスタルを破壊しながらダンジョンの奥へと進めば、いよいよボス戦だ。キャッスルクリスタルの座する最奥、玉座の間にはバグプロコトルの城主が立ちはだかる。
「ボスの力は強大だよ!
城攻めクエストには時間制限があることもわかってるから、持久戦に持ち込まれたら大変かも…!」
城攻めクエストでは、制限時間内にキャッスルクリスタルを破壊できなければ、クエストは失敗。城攻め側の敗北となり、防衛側の勝利となる。ボスは恐らく、これが城攻めクエストであることを利用するだろう。
クエストとなっている以上、|再挑戦《リトライ》は可能といえど──バグプロコトルの目的は謎に包まれている。囚われているプレイヤーたちが、いつまで生かされるのかは定かではない。勝負は一度きりとなるだろう。
「急いで倒して、クリスタルを破壊する!その後プレイヤーさん達を助ける!
大変だけど…みんなならできるよ!頑張ってね!」
アヤメは信頼の眼差しと共に握りこぶしを突き出す。猟兵たちはひとりひとりゴツンと拳を合わせ、グリモアの輝きに向かっていく。
待ち受けるのはゴシック・キャッスル──悪意と敵意が汚染する、堅牢なる城。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。GGOでバグプロコトルを倒しプレイヤーを救う、三章構成のシナリオとなります。
五月に差し支えがないように、ちょっぴり駆け足での進行予定です。ご了承ください。
一章は集団戦です。この章で登場するクリスタルの破壊は必須ではありませんが、破壊しますと猟兵が回復し、敵の勢いも抑えられます。
二章はボス戦です。クリア条件はクリスタルの破壊であるため、ボスはクリスタルを守ります。
三章は冒険です。囚われていたプレイヤー達を誘導し助けてあげましょう。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『徘徊する電子通貨トリリオン・コイン』
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POW : トリリオン・コインはたすけをよんだ
【ありったけのトリリオン(電子通貨) 】を全消費し、消費量に応じた強さの「この場にある筈のないもの(味方とは限らない)」を召喚する。
SPD : トリリオン・コインはたすけをよんだ
【トリリオン(電子通貨) 】の消費量に応じた強さの【ワンダリングモンスター】や【ランダムな効果を持つトラップ】を召喚する。[ワンダリングモンスター]や[ランダムな効果を持つトラップ]が敵を倒すと[トリリオン(電子通貨) ]を獲得する。
WIZ : トリリオン・コインはたすけをよんだ
自身が戦闘で瀕死になると【無数のトリリオン・コイン(電子通貨) 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは大きく開かれた城へ足を踏み入れる。ダンジョンとは名ばかりの、蝋燭が灯るばかりの通路は行けども行けども仄暗く。
細かく枝分かれした通路を進めど、上なのか、下なのか。ようやく辿り着くのはパッと広がる大広間。蝋燭が灯るばかりの広間には、煌々と輝くクリスタル。背丈もないほど小ぶりのそれは、大きなクリスタルとは言い難いだろう。
一歩近づけば、チャリンと響く硬い音。転がる金色のトリリオン・コインに目を向ければ、たちまち目があった。
驚き飛び退く猟兵に、コインは笑う。たちまちざらりと溢れ出し、|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》は猟兵たちへ襲いかかる。
印旛院・ラビニア
アドリブ連携歓迎
「遺伝子番号の焼却は免れたみたいなら、まだ助ければ間に合うってことかな? なら、さっさと助けに行くよ!」
自身も番号を焼却されそうになった経験があるから他人事じゃないしね
「行ってきて、コイン君達!」
UCでサイバーなニンジャやヤクザに変身させたクリーピングコイン達を【集団戦術】で指揮しながら散開してクリスタルを捜索。途中で小クリスタルを見つけたら、それも破壊
「君達は僕と一緒に経験を積んだ精鋭だ! そんなただ動けるだけのコインは蹴散らしちゃえ!」
瀕死からの召喚といった隙を与えないように連携して倒しにかかるよ
他に猟兵やプレイヤーがいるなら、そっちとも連携をとるよ
「遺伝子番号の焼却は免れたみたいなら、まだ助ければ間に合うってことかな?」
そう言って印旛院・ラビニアは城へ囚われているという、プレイヤー達へ思いを馳せる。
ラビニア自身も遺伝子番号を焼却されそうになった経験があるとなれば、心配は尚の事。プレイヤー達へ迫る危機は、ラビニアにとって他人事ではない。バグプロコトルに脅かされているならば、一刻も早く助け出さねばならなかった。
「なら、さっさと助けに行くよ!」」
勢い勇んで城内へ飛び込み、ラビニアは城を駆けていく。暗いダンジョンの通路を駆け抜けながら、取り出すのはクリーピングコインを一抱え。ユーベルコードを発動しながら無造作にばら撒けば、意志のあるコインは飛び跳ねながらヤクザとニンジャの集団へ変化する。
「行ってきて、コイン君達!」
ラビニアの合図一つでコイン達は散開すると、枝分かれする通路を抜けて、小クリスタルの座する大広間を見つけ出す。
さっそくコイン達がクリスタルへと近付けば、ざらりと溢れ出すのは|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》。トリリオン・コインはクリスタルを守るように浮かび上がると、ケタケタ笑いながら一斉に襲いかかる!
不意打ちじみた攻撃にコインのニンジャとヤクザ達はたたらを踏むも、それは一時のこと。ラビニアが合流すれば、今度はこちらのコイン達がニヤリと笑みを浮かべる番だ。
ラビニアはニンジャとヤクザ達に目配せすると、アサルトライフルを構え声を張り上げる。
「君達は僕と一緒に経験を積んだ精鋭だ! そんなただ動けるだけのコインは蹴散らしちゃえ!」
集団戦術ならばラビニアのお手の物。アサルトライフルの派手な援護射撃と共に、ヤクザ達は正面からトリリオン・コインへと進み行く。そうして一気に攻勢をかけるラビニア達の影に隠れて、背後に回ったニンジャ達が狙うのは、ガラ空きのクリスタルだ。
トリリオン・コインが接近するニンジャに気付けども、ラビニアの巧みな指揮は防衛の隙を与えない。
小クリスタルは破壊され、淡いエフェクトが砕け散る。補給地点に変化した恩恵によって、ラビニア達のHPは見る間に回復し、一方でクリスタルからのトリリオン・コイン達の|復活《リスポーン》は打ち止めとなる。
後は一気呵成に攻めるのみ──しかしトリリオン・コインはケタケタ笑う。金貨のその輝きに秘める力は更なる増援を呼び込むユーベルコード。瀕死となる事が好機となる。
だがそんな隙を与える程ラビニアは、そしてラビニアのコイン達は甘くはない。
「僕達が強いってところ、見せちゃうよ!」
HPを瀕死にさせないように見極めて──後は一気に削り切る!
ラビニア達は卓越した連携でトリリオン・コイン達を各個撃破し、蹂躙していった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ!?アヒルさん、いきなりアヒルのラビリンスを使わないでください!
因みにどんなルールなんですか?
ふえ?所持金によって装備が豪華になる法則ですか?
あまり変なルールじゃないですね。
つまり、敵さんを倒してお金を集めれば強くなれるということですか?
ふえ?強くはならない豪華になるだけですか?
とりあえず、フォースフライパンで敵さんを倒していけばいいんですね。
ふえ?因みに敵さんは倒されるともっと強い敵さんを召喚するから注意?!
それにダメージを受けるとお金を取られるのは私も同じで、お金が減れば貧相な装備になるって……どういうことですかアヒルさん!!
暗い城内を進むフリル・インレアンとアヒルさんの前へ、溢れるように湧き出るのは|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》。
ケタケタ笑う金色の群れに、フリルがあっと声を上げた次の瞬間、アヒルさんはユーベルコードを発動する。
「ふええ!?アヒルさん、いきなりアヒルのラビリンスを使わないでください!」
トリリオン・コインはチャリンと音を立てながら、迷路の壁に分断されてフリルの前から姿を消した。
この迷路は理不尽なアヒルの|法則《ルール》を敷く迷路──もちろん理不尽は、フリルにも適用されるもの。
「因みにどんなルールなんですか?ふえ?所持金によって装備が豪華になる法則ですか?」
アヒルさんの説明する法則は、何故かどこかで覚えのありそうな|法則《ルール》。それだけに不思議ではあれど、あまり変とは思えない。
「つまり、敵さんを倒してお金を集めれば強くなれるということですか?」
それなら今回の法則はフリルにも利があるのだろう。フリルはフォースフライパンを握りしめて、意気込み新たに迷路を進む。しかし、フリルの後ろに付いてくるアヒルさんは、肩をすくめて首を振る。
「ふえ?強くはならないで豪華になるだけですか?」
なんのことやらと疑問符を浮かべるフリルの前に、ひと握りのトリリオン・コインがチャリンと躍り出る。フリルはとりあえずフライパンを大きく振り上げ、バシンとひと振り。
どこからともなく、チャリンと響く電子音はフリルの所持金に加算されたトリリオン。フリルの帽子には大きな羽飾りが増える。フライパンをもう一振り。今度はスカートの裾が広がりリボンが増えて、敵を倒す度に増えるトリリオンでフリルの装備はどんどん豪華に重くなってゆく。
残ったコインはもう瀕死。けれど瀕死のコインはフラフラしながら、ケタケタ笑うとユーベルコードの光が輝く。フリルがすかさず追撃すれば、光の中でトリリオンがチャリンチャリンと大量にドロップする。
コインへ近付くフリルに、アヒルさんはちょっと待てと制止をかける。
「ふえ?因みに敵さんは瀕死になるともっと強い敵さんを召喚するから注意?!」
フリルの悲鳴と共に、トリリオンが飛び跳ねケタケタ笑う。コインがドロップしたのではなく、新たなトリリオン・コインが召喚されたのだ。
「それにダメージを受けるとお金を取られるのは私も同じで、お金が減れば貧相な装備になるって……どういうことですかアヒルさん!!」
フリルの抗議はアヒルさんにはどこ吹く風。コインの群れはすかさずフリルに突進を繰り出した。回避しようにも解けたリボンが足に絡まり攻撃を食らってしまえば、チャリンと響く電子音。今度は減りゆくトリリオンに豪華になったフリルの装備はリセットだ。
倒したり攻撃されたりの繰り返し。ようやく出口から這い出したフリルの装備は、すっかり貧相になってしまったのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
ミシピシュ・ジゥスチサ
アドリブ連携可
「本当に……何が目的なのやら。人質に使われそうで怖いんですが」
(絶対使ってくるでしょう、という穿った予測)
・通路で出くわすだろうコインや召喚されるモンスターたちは、【ダッシュ】と【足場習熟】による壁走りで躱しつつ置いていくように走り抜けを試みる。
・小クリスタルがある広間を見つけたら、足から床伝いに「鋼刃」による槍衾を生じさせて追ってきているだろうコインたちの足止めを試みる。
・コインたちを踏みつけて足場にしたり、壁に「鋼刃」を突き立てたりして広間の中を駆け跳ね回りながら、「複腕」の【怪力】で「鋼刃」の小片を【投擲】してモンスターを撹乱しつつ、隙あらばUCでクリスタルを狙う。
ミシピシュ・ジゥスチサは仄暗い通路を駆けてゆく。
なんの変哲がない通路に見えても、ここはダンジョン。暗闇にはモンスターも潜むもの。
チャリンと転がってくるのは|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》。しかしミシピシュは目もくれず、いっそう姿勢を低くし加速すると、勢いを付けて床を強く蹴った。燭台を踏み台に壁へ駆け上がると、そのままコインを置き去りにする。
コインの弾む足音が背中に響くが、ミシピシュの疾走の前にそれもすぐに遠のいた。すぐに追い付かれることもないだろう。
「本当に……何が目的なのやら。人質に使われそうで怖いんですが」
エンカウントを一時切り抜けたミシピシュは、通路を駆けながら独りごちる。|労働奴隷《プレイヤー》を絶対人質に使ってくる、という穿った予測は──当たらなければ幸いだが、相手はバグプロコトルだ。甘く見ることもできないだろう。
程なく行き着いた広間への扉を開けば、中央に鎮座するのは小クリスタル。ミシピシュの来訪にコインがざらりと湧き出ると、ケタケタ笑って助けを呼んだ。
消失する幾らかのコインと入れ替わりに、出現するのはワンダリングモンスターたち。多種多様なモンスターが広間を埋め尽くさんと溢れ出す。
前方を警戒しながら、ミシピシュは背後をチラリと伺う。辿った経路は一本道、置き去りにしたトリリオン・コインも直に追いついてくるだろう。ミシピシュは走り出しながら、足から鋼刃を吐き出し床へ這わせる。槍衾が如く敷き詰めれば、背の憂いを断つ即席トラップの完成だ。
走り出したミシピシュの前方から、モンスターが群れをなして突進してくる。からくも回避すると、コインを踏み付け宙へと跳ねる。コインのユーベルコードがトラップも生成するのはお見通しだ。
宙を行くミシピシュの背から、ずるりと這い出すのは千変万化の複腕。筋骨隆々の複腕に鋼刃を生成すると、怪力のままに握り砕いてそのまま振りかぶる。砕いた鋼刃を広範囲に投擲すれば、モンスターの動きは遅れるもの。
ミシピシュは複腕で絶えず鋼刃を投擲しながら、モンスターの渦中を撹乱させながら駆けて跳ね回る。倒したところで|復活《リスポーン》を絶たねば数は変わらない。
ミシピシュが狙うはただ一つ。壁へ鋼刃を階段状に突き立てると駆け上がり、壁蹴って大きく跳躍する。素早く手元に展開するのはキルキナエ。
「当たれっ!」
矢を番え、ユーベルコードを解き放つ。目にも止まらぬ速射はモンスターたちの隙間を縫い進み、クリスタルを打ち抜き砕く。
淡いエフェクトが弾ければ、補給地点へ変化したクリスタルはコインの|復活《リスポーン》を手放した。
広間に残すはただの殲滅戦。複腕の投擲とキルキナエの速射で、モンスターの群れはあっという間にその姿を掻き消した。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー(サポート)
フラスコチャイルドのサイキッカー × 寵姫です。
常に丁寧語で、あまり感情を乗せずに淡々と話します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、目的達成のために全力を尽くします。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
***
ごきげんよう。
掃除が必要と聞いて手伝いに来ました、エリーです。
念動力が通用する相手なら、お任せください。
防御も攻撃も概ね念動力でなんとかします。
敵の攻撃は念動力で止めたり逸らしたり。
自分は念動力で掴んだり潰したり叩きつけたり斬ったり突いたり撃ったり殴ったり。
まぁ、状況に応じて適当に使って頂ければと思います。
集団の殲滅とは、時に掃除と似ているものだ。
暗い通路に屯するのはケタケタ笑う|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》。エリー・マイヤーはさっそく『掃除』を開始する。
「ごきげんよう。さようなら」
淡々と挨拶を口にして、エリーが片手を空で握れば、迫りくるトリリオン・コインたちはまとめて宙に浮かびあがる。そのまま外側から圧迫されるようにぐしゃりと歪み、ひしゃげたコインの塊は、エリーの片手が翻れば通路の壁に叩き付けられた。
先鋒の群れが見えぬ『手』により大きなコインに変えられてしまえば、バグプロコトルといえども足を止めるもの。
その隙にエリーは大きく一歩踏み込んで、今度は空の両手を横に薙いだ。見えぬ剣に切り薙でられて、コインたちの表面には深い傷。エリーは両手を持ち替えて、今度は槍で突いたかと思えばハンマーを振り落とす。
念動力で手を変え形を変えて、縦横無尽に掃除を進めていれば、トリリオン・コインのHPはいよいよ瀕死の域に。瀕死となったコインをユーベルコードの輝きが取り巻いて、エフェクトが弾ける。
新たに召喚されたトリリオン・コイン。それは見目は変わらずとも更なる力を有している。コインはケタケタ笑って転がりながら、エリーへ突進する。
されど嘲る嗤いと共に向かってくるコインへ、エリーが返すものは不機嫌だ。
「イラつきますね…」
エリーが小さくぼやけば、その体から放出されているサイキックエナジーが力を増した。機嫌の悪いエリーから溢れだす不可視の力に、コインが抱いたのは恐怖か畏怖か、攻撃の寸前にしてコインの動きはピタリと止まる。
「はぁ…ゴミがウロウロしないでください」
エリーがため息まじりに片手を前へ突き付ければ、念動力の圧力によってトリリオン・コインは呆気なく弾け飛んだ。
成功
🔵🔵🔴
月隠・三日月
城攻めなのに裏から忍び込めないなんて、忍者泣かせだね。
まあできないなら仕方がない、正面突破で挑もう。
制限時間があるということだし、【ダッシュ】で早めに進もうか。
ここの敵はあの金貨か。手持ちの通貨を使って何やら召喚してくるようだし、攻撃のついでにでもお金を掏れないかな(【盗み】)。お行儀は悪いけれどね。
しかし普通に敵を1枚1枚斬るのは大変だな。あまり時間をかけたくないし……。
妖刀を鋼糸のように変化させて【紅椿一輪】を使えば一度に敵を倒せるかな(【武器改造】)。どさくさに紛れて小クリスタルも壊したいね。
この妖刀は、見た者の認識で姿形が変化する。私が『この刀は鋼糸になる』と思えばそうなるのだよね。
「城攻めなのに裏から忍び込めないなんて、忍者泣かせだね」
暗い通路を駆ける月隠・三日月の言葉には、少しばかりの不服が滲む。しかし、できないならば仕方がない。三日月はこの城攻めクエストの手順に従って、正面突破に挑むのみ。
制限時間もある上に、情報も少なく何が起こるのか分からないとなれば、三日月の足もいっそう急く。
そうしていよいよ辿り着いた広間の扉を蹴破れば、小クリスタルからざらりと溢れる|徘徊する電子通貨《トリリオン・コイン》たちと会敵する。
|金貨《コイン》の数は多くも三日月は忍者なれば、速さで遅れを取ることはない。転がるような突進攻撃を走って躱しながら、三日月はコインからトリリオンを掠めとる。
金を掏った感触こそないものの、三日月の聴覚にはチャリンと金貨が追加される効果音。そして視界の端に|浮き出た《ポップアップした》数字カウントが増えている。…盗れているということだろう。
「少しお行儀が悪いけれどね」
だがこの通貨をリソースにモンスターを召喚してくるのだから、行儀の悪さも時に必要だ。
ようやくコインはユーベルコードを発動させるも、そのリソースは三日月があらかた掏った後だ。召喚されたモンスターの見てくれは、すっかりひ弱なもので、トラップもどうやら不発のものばかり。
とはいえ召喚されたことでモンスターの数は増え、コインの数も依然多いまま。制限時間がある中で、各個撃破していく手間をかけるわけにもいかない。
三日月は新たに現れたモンスターの攻撃を前に妖刀を抜く。だが斬り結ぶことなく回避すると、妖刀の刀身を解けさせた。
無数の糸に解けた刀身はもはや目に見える姿形を失い、鍔と柄があるのみ。だが三日月は穏やかな表情を変えぬまま、コインとモンスターたちの攻撃を回避しながら、その隙間を縫うように広間を駆け回る。
壁を背にいよいよ三日月は足を止める。だが三日月は穏やかな表情を崩しはしない。三日月のその姿は追い詰められた者ではなく、準備を整えた忍者の姿。
「この妖刀は、見た者の認識で姿形が変化する。…私が『この刀は鋼糸になる』と思えばそうなるのだよね」
三日月は静かに語り、刀身の見えぬ刃をひと思いに強く引いた。無数の紅が引き裂き奔り、間髪入れずに花弁が散った──遅れて落ちる首はただ、紅の椿に似る。
淡く弾けて砕けるクリスタル。その破片は、血濡れの広間を映していた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『悪魔公爵』
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POW : 侵食の触手
【召喚した侵食型のバグ】を見せた対象全員に「【バグを受け入れろ】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【1ターンごとに全ステータス】が半減する。
SPD : 反射の外套
状態異常や行動制限を受けると自動的に【データ解析】が発動し、その効果を反射する。
WIZ : 支配の錫杖
戦場内を【自分の管理】世界に交換する。この世界は「【行動に管理者の許可が必要】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
イラスト:こげこげ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヴィル・シファール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
通路を進み、いくつかの広間を抜けて──猟兵たちはいよいよ最奥へと辿り着く。
これまでにないほど、大きく開けた広間は滾々と闇を湛えている。ほんの先も見通せぬ闇の中で、ぼうと紫炎の蝋燭が灯る。紫炎の灯しは連なりながら、闇をひらいてその姿を明らかにする。
暗転の明けた大広間にあるのはひとつの玉座とそこに座する|王《ボス》の姿。玉座の後ろには、見上げるほど大きなクリスタルが輝いている。
「煩わしい侵入者よ」
玉座に肘を付く悪魔が、重々しく言葉を吐き捨てる。
「何故、抗う?この世界はくだらんものだ。我が汚染し、管理し、ようやく有るべき世界となる。…このように」
悪魔がパチンと指を鳴らせば、瞬き輝くクリスタルが|労働奴隷《プレイヤー》の姿を壁の全面へ映し出す。プレイヤーたちは、沈んだ眼で黙々と、人形のように淡々と労働に務めるばかり。周囲には目もくれず、苦痛も口にしないのは、もはやその意志すらないからだろう。
「だが、我は寛容だ。故に、貴様らを下すことで、汚染し、管理してやろう。もちろん、このくだらん世界の遊びのルールに則って」
悪魔は薄く嗤いながら王座から立ち上がる。それだけで猟兵へ威圧感を与える悪魔の姿は、その身に宿す|筋力も魔力も《ステータス》が申し分のないものだと告げていた。
悪魔がもう一度、指を鳴らす。クリスタルは瞬きながら浮かび上がって、大広間の中央へと移動する。
このクリスタルを破壊すれば猟兵たちの勝利だ!
だが、残された時間の中で、猟兵たちは目の前の悪魔に立ち向かわねばならない。
悪魔公爵は不敵に嗤うと|外套《マント》を翻し、クリスタルの前を占拠する。
──城攻めクエスト最後の難関が、悪意と敵意をもって立ちはだかる。
フリル・インレアン
ふええ、アヒルのラビリンスを抜けたのに、まだ服が戻りません。
これって、バグじゃないんですか?
ふえ?これが逆で豪華な時にも同じ事を言うのかって、それは……言わないです。
それよりもトリリオンが少しは残ってよかったって、どういうことですか?
いえ、言わないでください。
嫌な予感しかしません。
さて、あれがボスさんですね。
ふえ?バグを受け入れろって、アヒルラビリンスのバグはもう諦めていますけど、違うんですか?
因みにそのバグさんはどんな効果なんですか?
絶対いらない効果でしょうし、そのバグさんはサイコキネシスでクリスタルさんにあげます。
1ターンかかる前にアヒルさん、クリスタルさんを攻撃です。
「ふええ、アヒルのラビリンスを抜けたのに、まだ服が戻りません。これって、バグじゃないんですか?」
理不尽なアヒルの迷路を抜けて尚、フリル・インレアンの服は貧相なまま。振っても揺すっても元の服に戻る様子はない。アヒルさんは飽きれてため息一つ。
「ふえ?これが逆で豪華な時にも同じ事を言うのかって、それは……」
言わないです、と言うフリルの声は尻すぼみ。いくら理不尽でもバグでも、豪華で可愛い服ならば、誰だって文句はないものだ。気まずそうに視線を逸らすフリルにアヒルさんはため息をもう一つ。まあそれよりも、トリリオンが少しは残ってよかったと、ひそめた声でボソッと付け足し。
「えっ、どういうことですか?」
運悪く聞き逃さなかったフリルは跳ねるように驚いて目を見開き思わず聞き返してから──慌ててアヒルさんの嘴を両手で塞いだ。
「いえ、言わないでください。嫌な予感しかしません」
頭を過ぎった嫌な予感は、ぷるぷる振って追い出した。そうして気を取り直したフリルはボス、悪魔公爵へと向き直る。
「漫談は終わったか?装備が貧相なプレイヤーは見るに耐えんものだな…」
悪魔公爵はフリルを嘲るも、アヒルさんとのやり取りに毒気を抜かれたのか、そこには敵意や悪意というよりも隠しきれない呆れが滲む。
しかし相手がどんな相手でも、容赦などしないのがバグプロコトルだ。パチンとひとつ指を鳴らしてユーベルコードを発動する。周囲から無数に這い出す触手は侵食型のバグだ。
「貴様も我の管理下であればマシになろう。さあ、【バグを受け入れろ】」
ざわめくバグは蠢きながら、フリルの眼下へ迫りゆく。ゲームのバグはいつだって|予想外《ランダム》な不具合をもたらすもの…しかし、バグを受け入れねば全ステータスが低下してしまう。
「ふえ?アヒルラビリンスのバグはもう諦めていますけど、違うんですか?」
因みにそのバグさんはどんな効果なんですか?とフリルはアヒルさんと目を合わせてみれど、アヒルさんは肩をすくめてみせる。
「絶対いらない効果でしょうし、そのバグさんはサイコキネシスでクリスタルさんにあげます」
フリルは迫る触手へサイキックエナジーを解き放つ。不可視の力で触手を雑草のように引っこ抜いて、クリスタルへポイポイ放り投げればグラフィックがブレたり発光したり。想定外の挙動の目白押しだ。
「1ターンかかる前にアヒルさん、クリスタルさんを攻撃です」
そしてステータスを下げられてしまうと言うならば、その前に速攻を仕掛けるのみ。アヒルさんの素早い攻撃は悪魔公爵のディフェンスを掻い潜り、クリスタルへ一筋の亀裂をいれたのだった。
大成功
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ミシピシュ・ジゥスチサ
アドリブ連携可
「その『くだらん世界』に作り出された側な筈なんですけれどね、あなた。尊大なご様子ですが|不良品《バグ》なので。消えて頂きます」
(煽りながらも、人質としては使われ無さそうで内心安堵している)
外套が反応するのは「状態異常」や「行動制限」のデバフを受けた時。ならば、真っ向勝負を仕掛ければ厄介な反撃は飛んでこないでしょう。
・UCを発動して身体の各所に「鋼刃」を生じさせてから突撃。
・相手の攻撃は【第六感】と「天眼」で【見切り】ながら躱し、踊るような動きと共に斬撃・刺突・打撃を繰り出しつつ、「鋼骨尾」での【なぎ払い】にクリスタルを巻き込める位置取りに動けないか狙う。
「その『くだらん世界』に作り出された側な筈なんですけれどね、あなた」
悪魔公爵の高慢なアピールにミシピシュ・ジゥスチサは笑う。世界に作り出された側が世界を否定するなんて、とんだお笑い種だ。しかしミシピシュの言葉にも、悪魔は両手を広げ尊大に嗤う。
「そうだ。世界に作り出された我が管理から外れ、こうして反旗を翻せる事こそが明解な答えであろう」
敵意と悪意を剥き出して、まるで己が正しいとでも言うように言葉を並べる姿は、高慢そのもの。
「尊大なご様子ですが、|不良品《バグ》なので。消えて頂きます」
ミシピシュは悪魔公爵の言葉を鼻で笑い飛ばし煽り返すと、ユーベルコードを発動させる。身体の各所に鋼刃を生じさせると、床を強く蹴った。
悪魔公爵へと接近するその一瞬──ミシピシュはチラリと大広間の壁へ目をやる。
先程映し出されたプレイヤー達の所在は壁の裏とも何処とも知れないが、この場に居ない事は確かなのだろう。人質として使われないことに胸を撫で下ろす。卑怯な手を使われないというならば、心置きなく戦えるというものだ。
だがそんなミシピシュの胸中を見透かして、悪魔公爵は不敵に嗤う。ミシピシュの肘から突き出した鋼刃の一撃を杖で受け止め打ち払い、すかさず繰り出す二手も容易く受け止めて、火花のエフェクトを散らして二人は拮抗する。
「この城に足を踏み入れた時から、そうであったな。そんなに奴隷が気になるか」
「盗み聞きでもしてたんですか。おお、趣味が悪い」
「管理者たるもの、侵入者の監視は当然だろう。だが我は寛容だ。貴様が望むならば奴隷を使ってやろう」
鍔迫り合いの最中に出された提案は腹の底から気分が悪くなりそうなもの。
けれどミシピシュはただ──乾いた笑い声をあげた。
「あなた、どう見てもプライドが高い。自分の言葉を反故にする気なんてないでしょう。……そんな隙も与えませんが」
笑うミシピシュに悪魔は答えず、舌打ちと共に杖を振り払うと、鋭く突き出した。
カンストした筋力に繰り出されるその一撃は、常人ならば回避する間もない速度だろう。だがミシピシュの第六感と雲龍の天眼は悉くを見切り、紙一重で躱しながら反撃の一手を反してゆく。
悪魔公爵の能力は振り切れたステータスと権限に偏っているが故に、接近戦になると単純なものだ。外套のユーベルコードは警戒すべきでも──それが反応するのは「状態異常」や「行動制限」のデバフを受けた時。真っ向勝負を仕掛ければ厄介な反撃は飛んでこない。
僅かな隙間へ鋼刃の斬撃を、捩じ込むように刺突を、強引に押し込む打撃を連続で与えていけば、悪魔公爵の踵はジワリジワリと後退する。
──ミシピシュはただ、踊りながら誘導する。狙いは悪魔公爵などではない。
「自分は|独善者《ジゥスチサ》ですから」
不敵に笑うミシピシュに悪魔公爵が表情を変えた瞬間、鋼骨尾がミシピシュの背後からズルリと這い出す。躱す隙などありはしない──鋼骨尾の一撃は、悪魔公爵をクリスタルごとなぎ払った。
大成功
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月隠・三日月
敵は状態異常や行動制限を反射するそうだけれど、私もそうだよ。奇遇だね(【妖刀自動起動・呪詛返】)
これだと真正面から斬り結ぶしかないか。……不謹慎だけれど、強い敵と正面切って戦うのはどうしたって楽しいね。
しかし、搦手が利かないとなると決め手に欠けるな。
制限時間もあるから、短期決戦を挑まないと……全力でクリスタルを攻撃し続けるのもありかな。
敵がクリスタルを守る以上、クリスタルを狙って攻撃すれば回避できないのではないかな。こちらの攻撃を防御させ続ければ、敵を短時間で消耗させられるかもしれない。
一対一なら私の消耗の方が早いだろうけど、敵が相手する猟兵は私ひとりじゃないからね。勝機はあるのではないかな。
月隠・三日月は妖刀を引き抜くと、穏やかな表情で悪魔侯爵を真正面から見据える。ふ、と息を吐いた次の瞬間、両者の間には火花のエフェクトが飛び散った。
「状態異常や行動制限を反射するそうだけれど、私もそうだよ。奇遇だね」
拮抗する鍔迫り合いにも、三日月は穏やかな調子を崩さない。ただの世間話のような調子で向けられた言葉に、悪魔侯爵は返答を返さず鼻を鳴らすと不快そうに腕を振るった。…同じにするな、とでも言うように。
筋力のままに振り切られ三日月は押し戻されるも悪魔侯爵は追撃せず。ただ杖を片手にゆったりとした振る舞いで、上位の余裕を見せている。それでいて、立ち振る舞いには隙があるとは言えないものだ。一度刃を交えただけでも解る──強い敵だ。
「……不謹慎だけれど、強い敵と正面切って戦うのはどうしたって楽しいね」
「殊勝なことだな。だが、我は寛容だ。望みとあれば、幾らでも付き合ってやろう」
「ふふ、そうも言ってられないのが残念だね」
悪魔公爵の煽り文句は三日月にとっては魅力的な誘いだが、制限時間の差し迫る中ではそうやすやすと乗るわけにはいかぬもの。しかし、搦手が利かないとなると決め手に欠けるのも事実だった。
三日月は再び悪魔侯爵へ妖刀を振り下ろしながら、ちらりとクリスタルの様子を伺う。クリスタルには猟兵たちの攻撃によって与えられた亀裂が大きく一筋。短期決戦を挑まなければならないのであれば、全力でクリスタルを攻撃し続けるのもありだろう。
悪魔侯爵の反撃をいなしながら、三日月はクリスタルへ標的を変える。すぐさま間に割り込まれるが、悪魔侯爵は防衛のスキルを備えていないデザインのボスだ。素早く位置取りを変えながらクリスタルを狙う忍者の全力には、防戦を強いられる。
それでいて、悪魔侯爵は強者である。防戦の中、なりふり構わぬ三日月へ的確な反撃の一手を入れて行く。一対一ならば三日月には荷が勝とう…だが、悪魔公爵は猟兵たちとの度重なる攻防によって、既に消耗しはじめていた。
そして、その時は前触れなく訪れた。
三日月の全力に悪魔侯爵の膝がかくりと折れる。余裕であった表情に焦りが滲むのは一瞬の事。だがその僅かな一瞬に、その勝機に三日月は追撃を押し込む。
クリスタルを狙った一撃は阻まれど、妖刀の切っ先は悪魔侯爵の体を捉える──三日月の一撃は、悪魔侯爵のHPをごっそりとそぎ落とした。
大成功
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印旛院・ラビニア
「いくらキミがこの世界をくだらないと思っていても、僕たちにとってかけがえのない世界なんだよ。この世界を好きにはさせないよ!」
【召喚術】でUCの【神滅の戦乙女・ジークヒルデ】を召喚
「ジークヒルデは相手の効果を受けつけない! バグだろうがなんだろうがね! 悪魔に神殺しは大袈裟すぎるかな?」
純粋なパワーでの攻撃なので、データ解析は発動しないはず
「行け! ヴァルグラム・ノヴァ!」
後ろのクリスタルごと薙ぎ払うよ
労働奴隷の姿って|PC《プレイヤーキャラクター》だと思ってたけど、もしかして|PL《プレイヤー自身》だったりするのかな?もしもそうだとすると、更に今までのバグプロトコルに比べて異常だよね
「労働奴隷の姿って|PC《プレイヤーキャラクター》だと思ってたけど、もしかして|PL《プレイヤー自身》だったりするのかな?」
印旛院・ラビニアは小さく独り言を吐き出す。もしもそうだとするならば、今回出現したバグプロコトルは更に、今までのバグプロトコルに比べて異常と言えるだろう。
悪魔侯爵を倒しても、まだ終わらないであろう確かな予感を胸に秘めながら、ラビニアは鋭い眼差しを向ける。悪魔侯爵のHPも消耗し、クリスタルの耐久値もさほど残ってはいない。だが、このクエストに残された制限時間もあと僅か。
反撃の、そして最後の一撃にラビニアが取り出すのは一枚のカードだ。
「いくらキミがこの世界をくだらないと思っていても、僕たちにとってかけがえのない世界なんだよ。この世界を好きにはさせないよ!」
力強い言葉で発破を掛けて、ラビニアはユーベルコードを召喚する。指先に構えたカードがにわかに輝き、頭上には光輪が強く瞬く。神々しいエフェクトの中から舞い降りるのは神滅の戦乙女・ジークヒルデ。
「ジークヒルデは相手の効果を受けつけない! バグだろうがなんだろうがね! 悪魔に神殺しは大袈裟すぎるかな?」
悪魔侯爵を煽る台詞も、戦乙女の効果力の前ではただの事実だ。純粋なパワーでの攻撃は、バグプロコトルにも遮られることはない。
「行け! ヴァルグラム・ノヴァ!」
神滅の戦乙女・ジークヒルデは瞼を閉じ魔剣ヴァルグラムを掲げると──再び開いた眼の鋭さと共に、その切っ先を外敵へと突き付ける。
青く輝くエフェクトが神殺しの光線を解き放つ──戦乙女の審判は、どんな制限も減衰も受け付けず、時にユーベルコードすらねじ伏せる。
光線の一閃に、悪魔侯爵は成す術もなく光の中に解けていく。
悪魔のその手がクリスタルへ伸びるも、光線を薙ぎ払うような範囲攻撃は既にクリスタルをも飲み込んでいる。悪魔侯爵の手はどこにも届かず、蒸発するようなエフェクトを残して霧散すると共に、クリスタルは砕け散った。
大成功
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第3章 冒険
『収容所からの脱出』
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POW : 心の折れそうな人々を叱咤し、励ます
SPD : 監視の目を掻い潜る脱出ルートを見つけ出す
WIZ : 分かりやすく簡潔な指示を伝える
イラスト:シロタマゴ
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バグプロコトルの消失と共に、キャッスルクリスタルが音を立てて砕け散る。猟兵たちの視界一杯に散らばる結晶と、鳴り響くファンファーレは城攻めクエストの勝利の証だ。
勝者を祝福するテロップが大仰に表示されると、城主を失った城が鳴動する。崩れてゆく大広間の壁に、猟兵たちは警戒を高めるも程なく鳴動は収まった。
そして壁の裏側からわらわらと現れるのは、労働奴隷として囚われていたプレイヤーたちだ。救出を喜び、我先にと猟兵たちへ駆け寄ってくる。
「助けてくれ!」
否──切羽詰まったプレイヤーたちの懇願に猟兵たちは驚くも、その訳はすぐさま目前に明かされる。
砕け散ったクリスタルがにわかに輝き投影するのは、ゲーム内世界ではない。|統制機構《リアル》の強制収容所のような場所。薄暗い部屋に列をなして並ぶ机にはディスプレイが備え付けられて、座る|人間《プレイヤー》たちは皆揃ってゲーム機材を装着している。
異様な光景に戦慄する猟兵に、ゲーム内での救済を得て尚プレイヤーたちはむせび泣く。この城に囚われていたプレイヤーたちは、統制機構で今なお囚われている!
「このままログアウトしたって逃げられないんだ!頼む…助けてくれ…」
囚われのプレイヤーたちは無力だが、モニターを通せばゲーム内からも声は届けられる。猟兵ならば収容所からの手引きに不都合はないだろう。
あるいは、統制機構に住まう|猟兵《プレイヤー》ならば、直接赴き助ける事もできるだろう。
猟兵たちは一刻も早く、プレイヤーたちを救出しなければならない──緊急クエストのスタートだ!
フリル・インレアン
ふえ?どうしましょうアヒルさん。
クリスタルさんにバグの触手さんをぶつけてたら壊れてしまったみたいです。
ゴッドゲームオンラインじゃない世界と繋がってしまったみたいです。
ふえ?バグじゃなくて統制機構ですか?
強制収容所ですか、あの、監視とかされていないのでしょうか?
とにかく情報を集めましょう。
脱出の手がかりが見つかるかもしれません。
印旛院・ラビニア
「僕も似たような目に遭ってた可能性はあったからね。できることなら助けたい」
顔がバレないようパーカーを目深に被って変装して収容所の近くまで行くよ。武器として家にあるスチールラックの足あたりを取り外してスポーツバッグにでも入れて持って行こうか
監視や人目に気づかれないよう【忍び足】で近づき、裏口あたりに【ハッキング】を仕掛けて解錠を試みる「もしもの為に教わっててよかった」
あとはこっそり忍び込んで脱出の手引きができればいいけど、警備に見つかったら強行突破だよ
「ゲームみたいには動けないけど、バフがかかった状態と思えばこのくらい!」
音や挙動で動きを【見切り】、【カウンター】を入れるようにして警備を倒すよ
ミシピシュ・ジゥスチサ
【SPD】アドリブ連携可
「は……!?ちょっと冗談キツいですって……!!」
(映し出された映像に動揺が隠せない)
(現実での外見はGGOでのキャラクターと大差なし。髪と目が平凡な焦茶であるくらい。服装は普通のTシャツにズボン)
・ログアウトしてすぐ【ハッキング】を開始。「ファータ・モルガナ」を使って監視機器の映像を誤魔化しつつ、同時に機器の映像を盗み見て囚われのプレイヤーの居場所の特定を試みる。
・居場所が判明したら安全そうなルートを割り出し、そのルート上の監視機器も【ハッキング】で映像を誤魔化す。
・出口になる方から逆走する形で安全確認をし、ついでに部屋のドアも【ハッキング】で開けられないか試みる。
月隠・三日月
ゲームプレイヤーは、実際は統制機構で暮らしている一市民だと聞いてはいたけれど……本当に普通の人間なのだね。やっと実感が湧いたように思うよ。
プレイヤーの皆さんに収容所の様子を教えてもらいたいな(【情報収集】)
間取りや置いてある物、あとは見張りはいるのか。情報から脱出経路の目星を付けることができるかもしれない(【抜け道探し】)
これでも忍者だからね、拠点の攻略は任せておくれ。
とはいえ、こちらからの誘導で一般人をうまく脱出させられるか……緊張するけど、皆さんを不安にさせてはいけないからね。弱気なところは見せないようにしよう。
私のような異世界の猟兵は直接助けには行けないけれど、できるだけのことはするよ。
「は……!?ちょっと冗談キツいですって……!!」
囚われのプレイヤー達に誰よりも動揺したのは、|統制機構《コントロール》に住まう猟兵たちだ。ミシピシュ・ジゥスチサからは隠しきれない動揺に思わず言葉が溢れ、印旛院・ラビニアは苦い思いに拳を握りしめる。
「統制機構で暮らしている一市民だと聞いてはいたけれど……本当に普通の人間なのだね。やっと実感が湧いたように思うよ」
そして異世界の猟兵からしてみれば、これまではゲームの中が現実の世界だった。月隠・三日月はこんな形で掴んだ実感に眉間を寄せる。
「ふえ?どうしましょうアヒルさん」
一方で、フリル・インレアンは他の猟兵たちとは違う理由で、青ざめた顔でアヒルさんにヒソヒソ耳打ち。
「クリスタルさんにバグの触手さんをぶつけてたら壊れてしまったみたいです」
ゴッドゲームオンラインではない世界と繋がってしまったみたいだと慌てているも、すかさずアヒルさんがそうじゃないと突いて鋭いツッコミをいれる。
「ふえ?バグじゃなくて、強制収容所ですか。あの、監視とかされているんでしょうか…?」
フリルが恐る恐ると項垂れているプレイヤー達に尋ねれば、彼らは力なく頷いた。脱出するには監視の目を掻い潜る必要があるだろう。
「それなら、収容所の様子…間取りや置いてある物を教えてもらえるかな?」
まず必要になるのは状況の把握だ。三日月が穏やかに尋ねれば、プレイヤー達は力なく顔を見合わせる。気力の失せた人間はいつだって懐疑的なものだった。
「ふえ…えっと、脱出の手がかりが見つかるかもしれません」
「そうだね。脱出経路の目星を付けることができるかもしれないよ」
それでも脱出という明確なキーワードを聞けば、プレイヤーたちの目には光が宿るもの。
「僕は直接、収容所に行くよ。僕も似たような目に遭ってた可能性はあったからね。できることなら助けたい…ううん、絶対助けるよ!」
更にラビニアが意気込み宣言すれば、いよいよプレイヤーたちの気力も回復がみえてくる。そうして情報を集めていけば、プレイヤーの脱出は明確なものとして見え始める。
「自分は統制機構から居場所の特定をしましょう。監視機器の目なら誤魔化せます」
「こちらからの誘導は私達がしよう。これでも忍者だからね、拠点の攻略は任せておくれ」
「オッケー!サポートは任せたよ!」
「ふええ、頑張りましょうアヒルさん」
ここから先は統制機構に住まう猟兵と、そうでない猟兵とでの並行作戦だ。
二人の猟兵のログアウトを見送って、一般人のプレイヤーも次々とログアウトしていく。
ゲーム内から投影される統制機構の映像には、周囲を警戒しながらヘッドセットを外していき、周囲を注意深く確認するプレイヤーたちの姿がある。
三日月の弱気なところを見せない言葉は、それでいて不安と緊張の裏返しだ。いくら声が届くといっても、どこまで誘導できるものか。三日月は緊張を飲み込みプレイヤーたちの姿を見つめる。だが、直接助けにいけぬ猟兵ばかりではないのだ。彼らを信じてできる限りを成せば──必ず脱出できるだろう。
十代後半に差し掛かったくらいの、少年とも少女とも思える──GGO内のキャラクターと大差のない容貌の男性は、仄暗い個室の中で大急ぎでヘッドセットを外していた。
ゲーム内で知り得た|現実《リアル》に、ミシピシュの心臓は未だその早鐘を押え付けることが難しい。だがそれは心を挫く理由には足り得ない。ミシピシュは気合を入れるように両手で顔を打つと、すぐさま行動を開始する。
「さあて。出番ですよファータ・モルガナ」
モニター上に起動されるのは、こんな事もあろうかとこっそり作っていたハッキングプログラムだ。監視機器の映像を誤魔化しつつ映像を盗み見る。断続的に切り替わる映像の中にプレイヤー達の姿を見つければ、皆一様にヘッドセットを外しているところだった。猟兵たちの指示で脱出の準備を整えているところなのだろう。監視機器にはほんの数秒前の映像をループさせて、自分のモニターにだけリアルタイムの映像を表示させる。
収容所の出入り口から逆走するように安全な経路を割り出し、猟兵たちへ送信する。隔離されている部屋のドアの解錠もまもなく済むだろう。
ミシピシュはひと息付くと、液晶に反射した自分の姿を改める。リアルでは当然ゲーム内の装備ではなく、着ているのはそこらの量販店で販売されていたTシャツとズボン。容貌に大差がないだけで、どこからどう見ても一般人だ。そうと思えば今の自分の姿は、心許ないものにも見えよう。だが、ミシピシュは無力ではなく、頼もしい|猟兵たち《パーティー》の助力もある。
「こっちの準備は整いましたよ」
収容部屋の解錠を伝えれば、いよいよ脱出作戦の開始だ。
ログアウトしたラビニアは顔バレ予防にパーカーを目深に被り、足早に収容所へと向かっていた。肩にかけたスポーツバッグの中身は、スチールラックの足だ。固く重みのある棒は武器の代わりとして充分な威力が期待できる。備えも意気込みも充分だ。
収容所の外観は、至ってシンプルなオフィスビルだ。ラビニアは人目を忍んで慎重に近付くと、そのまま鍵のしまった裏口へと回り込みハッキングで扉を解錠する。
「もしもの為に教わっててよかった」
思わぬ備えが活きたことにホッと胸を撫で下ろしながら、警備員に見つからぬように、姿勢を低くして慎重に忍び足で潜り込む。とはいえそれでも、今のラビニアはゲームの中のキャラクターではなく生身の一般人だ。ことごとくが上手く行く筈もない。
「おい!誰だお前は!」
警備員に見つかるのも、それもある意味では予想通り。見つかったのであれば、腹を括って強行突破あるのみ。ラビニアが勢いを付けて走り寄ると、無線で連絡を取りかけていた警備員は面食らって立ち止まりかけるも、反射的に携帯していた警棒を振り上げる。
「ゲームみたいには動けないけど、デバフがかかった状態と思えばこのくらい!」
単調で大振りな動きは見切りやすいもの。走りながら片手に持ち替えたスポーツバッグを大きく振って、遠心力を加えた捨て身のカウンターは、マキシマムカウンターが如き一撃。
「よしっ!」
警備員を一発KO。思っていた以上の成果にも立ち止まってはいられない。警備員はまだ他にもいるだろう。そして一度見つかってしまった以上、時間との勝負だ。
警備員の巡回に合わせて時にルートを切り替えながら、三日月とフリルの誘導でようやくラビニアはプレイヤー達と合流する。彼らがその手に携えているのは、三日月の指示で収容部屋から持ち去った、武器代わりの家具の一部や雑貨だ。ひとつひとつに威力はなくとも、寄せ集まれば目くらましにはなるものだ。
猟兵たちの手厚いサポートの中で一向は順調に出口へ進みゆき、どうにもならず警備員に|遭遇《エンカウント》しようならば、プレイヤー達の援護投擲の中でラビニアの一撃が再び炸裂する。
「出口だ!」
そうしていよいよ辿り着いた出口にプレイヤー達の声が弾み、彼らは疲れ切った足を軽快に走らせる。ようやく帰れるのだ──|統制機構《コントロール》での、日常に。
大成功
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