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面影見やれば桜門出

#サクラミラージュ #ノベル #猟兵達のバレンタイン2024

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神城・星羅




●贈り物
 親しき仲にも礼儀あり、という言葉がある。
 当然のことだが、家族のように親しく……いや、家族そのものになってくれる者たちがいることは喜ばしいことだ。
 血のつながりではなく、心のつながりを感じることができるのは得難きものであろう。
「ばれんたいんなる催しがあると聞きました」
 神城・星羅(黎明の希望・f42858)は、そう聞き及んでいた。
 バレンタイン。
 それは親しき者たちに贈り物をする行事。
 聞けば、チョコレートが最も良く贈られている行事であると言う。
 けれど、そのチョコレートなる菓子でなくても、お礼の気持ちがこもっていれば何でも良いのだとも聞く。

「それはとても良いことですね」
 お礼がしたい。
 星羅は自然にそう思っていた。
 新しい家族たちは、そんな気を使わなくて良い、と言うかもしれない。
 けれど、自分がしたいのだ。

 まず最初に思いついたのは義母であった。
「燃えるような炎」
 それが彼女に対するイメージであった。
 サクラミラージュのデパアトにて星羅は香水を手に取る。
 薔薇の香りが心地よい。これにしよう。
 次に義父である。
 彼の言葉はいつだって己の心に響くものであった。
「雷鳴のようでした」
 ならば、常に時が測れるような銀の懐中時計が良いだろう。

 思い描く。
 新たな家族たち。
「同じ星のあなた」
 迎えてくれた同じ星として共に歩む義姉には、こんふぇくと……金平糖が良い。甘やかな優しい味わいは姉に似合っているように思えたのだ。
「優しく照らしてくれる月」
 義兄のことを思う。
 彼はいつだって己の道行きをそっと照らしてくれる。
 小手鞠の花を象ったブローチを手に取る。
 品位あふれる兄にぴったりだと思う。

「それと、これも」
 星羅は甘い焼き菓子を手に取る。
 それが最も彼女には楽しみだった。
 今までがんばった自分に対するご褒美だ。
 何故、これを選んだのかと問われたのならば、少し気恥ずかしい。
 それは家族で共に食べたものだから。
 今、一番自分が美味しいと思い、食べたいと思うもの。それがこれなのだ。
 きっと一人で食べたって味気ないだろう。
「少し荷物が多くなってしまいました……けれど」
 いいですよね、と己のが使役する狼と狛犬にも手伝ってもらいながらも、幻朧桜の花弁散る道を駆けていく。
 その度に花弁が舞う。
「ふふふっ」
 笑みが自然と溢れる。
 年頃そのままの笑顔が、其処にはあった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年04月13日


挿絵イラスト