オハナミ・コーデ
●三色団子
花見には欠かせないもの。
それが三色団子である――らしい、とヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は次なる季節のイベントを企画するにあたって知る。
「花見イベントには花見団子、すなわち三色団子が必須ってことらしいが」
なんだそれは?
如何にNPCとは言え、知識の全ては外界……すなわち、ゲームの外、現実世界の即している。ゲームプレイヤーたちが好き勝手にエッセンスを追加していっているゴッドゲームオンラインと言えど、知識なくば頓珍漢な代物が出来上がってしまうのは目に見えていた。
12人の妻の内が一人で助っ人NPCの『商人のトア』が言うには、どうやら花見には欠かせないものであるという。
「サンショクダンゴ。別名オハナミダンゴ」
「言葉の響きからして、それって東方地域発祥のものなんじゃあねぇか?」
「そうかも。聞いたことがある、くらいだったし……どう説明すれば良いんだろう。色が三つあって、丸くて串に刺さっていて」
「材料は?」
「小麦粉じゃない?」
「……」
確かに、とヌグエンは思う。
色鮮やかな団子が三つ。
想像の中のサンショクダンゴは、確かに花見イベントの報酬アイテムに似合っているように思える。
けれど、実物がわからない。
果たしてヌグエンが脳裏に描いているものが正しいのか?
「実物を見るのが手っ取り早いってことだな」
「そういうこと。どこか心当たりありそうな世界ってある?」
『商人のトア』の言葉にヌグエンは少し考える。
「団子って言えば、アスリートアースで見かけた気がする。現地通貨もあるし、いっちょ見に行ってみるわ」
「そうして。あ、みんなの分もよろしくね。きっと皆も楽しみにしているから」
「手抜かりがある俺様に見えるか?」
「見えないから楽しみにしてるんでしょ」
「そういうもんか。じゃあ、ちょっくら行ってくらぁ」
ヌグエンはアスリートアースに旅立つ。
以前の世界の命運をかけた戦い『バトル・オブ・オリンピア』以来の来訪である。
今日も今日とて超人アスリートたちが切磋琢磨している。
オブリビオンであるダークリーガーたちも変わらない。ゴッドゲームオンラインにいるバグプロトコルたちも、こうであったのならばよかったのにと思わないでもない。
「おっと、これだな」
ヌグエンはアスリート御用達の低糖質の三色団子を見つける。
「これを2パックもらおうか」
「はいよ。2パックで足りるかい?」
おかしなことを、とヌグエンは思った。
確かに己の妻は人数が多い。所謂ハーレムである。けれど、ああ、と合点がいく。
此処はアスリートアースである。
超人的な運動能力を誇るということは、それだけ消費カロリーも膨大なものになる。確かに、2パックでは足りないかもしれない。
「大丈夫だよ。ありがとな」
そう言ってヌグエンはゴッドゲームオンライン内に戻っていく。
妻たちはアスリートアースの三色団子に目を輝かせていた。
「お茶、お茶が合うんじゃない?」
「温めても良さそうだ。冷めていてもよいが」
「この色って何を表しているんだろうね?」
「ゲームプレイヤーなら知ってるんじゃねーのか?」
いや、とヌグエンは思う。
バレンタインの時もそうだったように、ゲームプレイヤーとて三色団子を知らない者もいるのかもしれない。
なら、と思う。
「こっちで由来を考えてやるとするか!」
たまの戦闘無しイベントだ。
どうせならゲームプレイヤーが最も楽しめるイベントがいい。けれど、自分たちだって企画する以上楽しみたい。
「楽しむなら全力だ!」
「おー!」
妻たちの声と共にヌグエンは三色団子の由来や花見ついてあれこれ設定を膨らせていくのだった――。
成功
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