さくら、まんかい、お子さまランチ!
もうすぐ高校生になる、春休みのある日。
そう……もうすぐ高校生の15才、であるはずなのに。
朝、目覚めたジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)はなんと――。
「えっ!? ちっちゃくなっちゃった……!?」
5歳児になっちゃいました!?
そして、なぜか5さいになったジゼルちゃんが真っ先に頭に浮かんだのは、これ。
「お子さまランチたべたい!」
どうしてこうなったのかとか、これからどうしようとかの不安ではなく――お子さまランチ!
だって、はらぺこの5さいなのだから!
とはいえ、15才までのこれまでの記憶はちゃんとある。けれど、中身は5才。
そしてお子様ランチといって思い出すのは……サクラミラージュの世界の百貨店。
去年も帝都の百貨店でお化粧したりして、それも楽しかったのだけれど。
でもその時にジゼルが何気にずっと気になっていたもの――それが、百貨店のレストランで食べられる、春限定のお子さまランチで。
大人が注文しても問題はなかったのだが……やっぱり子供っぽいかな、なんて。
ちょっぴり恥ずかしさもあって、結局機会を逃してしまっていたのだ。
でも――今なら、堂々と食べられる! だって5さいなのだから!!
とはいえ、5歳児がひとりで百貨店に行くわけにもいかないから。
うーんうーんとジゼルちゃんは考えて。
「そうだ、せいしろうせんぱいにつれていってもらおう!」
おとなの筧・清史郎(桜の君・f00502)に連れて行ってもらおうって、思いついたから。
とてててっと、まずはせんぱいがよくいる、ぐりもあべーすに出発!
というわけで。
「はぐれてはいけないから、手を繋ごうか。向かうのは、百貨店のレストランでよかっただろうか」
迷子にならないよう、せいしろうせんぱいとおててをつないで。
でも、うーんと考えてから、こう答えるジゼルちゃん。
「せっかくだから、お子さまランチたべるまえに、おめかししたい!」
「おお、それは良いな。では、洒落た服が買える店に立ち寄ろう」
そして子供服売り場でジゼルちゃんはきょろり、すたたっと駆け寄って。
「このワンピースがかわいい!」
春色のよそいきワンピ―スを買って、おしゃれにお洋服チェンジ!
「ふふ、春の妖精さんのようで、とても似合っている」
「えへへ、ありがとう!」
そしておめかしして、るんるん向かうのは勿論、最上階の展望レストラン!
メニューをぱらりと開けば、瞳がキラキラ。
「わたしはこれ! 桜お子さまランチ!」
「勿論いいぞ。では俺は、桜もりもり特大パフェにしよう」
それから注文を済ませて、わくわくそわそわ待っていれば。
「オムライスうさぎさんだ! みてみてハンバーグお花のかたち!」
運ばれてきたのは待望の、春限定の桜お子さまランチ!
でもジゼルちゃんはいい子だから、ちゃんとおててを合わせてから。
「いただきます! ……おいしい!」
ぱくりとお花ハンバーグを口にすれば、ぱあっとキラキラ笑顔に!
「あい、せいしろうせんぱいにもミートボールあげる!」
「おお、ありがとうジゼル。では、桜パフェの天辺の苺と交換こだ」
「わぁ、いちご! ありがとう! あっ、デザートはプリンだ! わーい!」
せんぱいと交換こもして、デザートはあまーい桜型のプリン!
ちょこっとずつ最初は大事に食べていたけれど……最後のひとくちは折角だから。
小さなおくちいっぱいに、はむりっ。
ほわほわとしあわせなきもちでいっぱいになれば。
「ごちそうさまでした、おいしかったー」
やっぱりきちんとおててを合わせて、ごちそうさまもよくできました!
それからまた、迷子にならないようにとおててを繋いでくれるせんぱいに、ぺこり。
「きょうはつれてきてくれてありがとう、おにいちゃんといっしょにきてるみたいでたのしい!」
「ふふ、こちらこそ。俺も楽しかった」
それからふと、5歳児の中の、15歳のジゼルは気付くのだった。
(「……ああそうか、わたしお子さまランチが食べたかったのももちろんだけど、家族で一緒にお子さまランチを食べることに憧れがあったのか……」)
出身世界にはお子さまランチなんてなかったし。
お母さんは早くに亡くなって、父親は自分を引き取りはしてもあまりかまってはくれなかった。
だから――お子さまランチ、ひいては大人の人にお子さまランチを食べに連れて行ってもらうというシチュエーションに憧れていたんだな、と。
そして、たくさんはしゃいで、いっぱいたべたから。
「帰るまでが遠足というからな。おうちまで送ろう……ジゼル?」
「ん……せいしろうおにーちゃん、ありがとぉ……」
こっくり、うとうと……眠たくなっちゃって。
大きなおにいちゃんの背中でゆうらゆら、おひるねタイム。
きっと目が覚めたら、この魔法も解けるだろうけれど。
すやぁとすこやかな今のジゼルちゃんに宿るのは――花丸満点、さくらいろの笑顔。
成功
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